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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177740
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20221124BHJP
   B23Q 1/00 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
B23Q1/00 T
B23Q17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084191
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌大
(72)【発明者】
【氏名】井上 篤史
【テーマコード(参考)】
3C029
3C048
【Fターム(参考)】
3C029EE01
3C029FF00
3C048AA03
3C048BB01
(57)【要約】
【課題】加工装置の傾きを連続的に監視し、加工品質への影響を低減できる加工装置を提供すること。
【解決手段】加工装置1は、被加工物100を保持する保持テーブル10と、保持テーブル10に保持された被加工物100を加工する加工ユニット20と、制御ユニット70と、を備える。加工装置1は、加工装置1の任意の箇所に設置され、加工装置1の傾きを検出する傾斜センサ40を有する。制御ユニット70は、傾斜センサ40が検出する傾斜の値を記録する記録部71と、傾斜の値が閾値を超えた場合、報知する報知部72と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、
制御ユニットと、を備えた加工装置であって、
該加工装置は、
該加工装置の任意の箇所に設置され、該加工装置の傾きを検出する傾斜センサを有し、
該制御ユニットは、
該傾斜センサが検出する傾斜の値を記録する記録部と、
該傾斜の値が閾値を超えた場合、報知する報知部と、
を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該加工装置は、第1の表示パネルを有し、
該制御ユニットは、該第1の表示パネルに該傾斜センサが検出する傾きの情報を表示させることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該加工装置は、有線または無線で第2の表示パネルを有する情報機器と接続され、
該制御ユニットは、該加工装置に接続された該情報機器に、該傾斜センサが検出する傾きの情報を送信し、
該情報機器は、該第2の表示パネルに該傾きの情報を表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
保持テーブルによる被加工物の水平保持状態を検出する水準器が設けられた加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-297734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、加工装置の出荷前には、加工装置を組み立てる工場にて、水準器を加工装置内の平坦の箇所に設置して、加工装置を水平にした状態で加工の精度を確認し、求められる加工精度を実現できるよう加工装置の調整を行う。その後、輸送され加工現場に加工装置を設置する際には、加工の精度出しを行ったときと同じ傾きにして加工精度を再現したいため、再度加工装置内に水準器を用いて、水平出しの作業を行う。
【0005】
しかし、例え加工装置の設置時に同じ傾きに調整したとしても、加工装置を稼働していくと、振動や劣化による加工装置内の部品の変形や、加工現場の床の劣化や沈下などにより加工装置が傾き、加工精度が悪化してくる恐れがある。ところが、従来、加工装置の傾きは、設置時しか検出していなかったため、稼働後には管理できていなかった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工装置の傾きを連続的に監視し、加工品質への影響を低減できる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、制御ユニットと、を備えた加工装置であって、該加工装置は、該加工装置の任意の箇所に設置され、該加工装置の傾きを検出する傾斜センサを有し、該制御ユニットは、該傾斜センサが検出する傾斜の値を記録する記録部と、該傾斜の値が閾値を超えた場合、報知する報知部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
該加工装置は、第1の表示パネルを有し、該制御ユニットは、該第1の表示パネルに該傾斜センサが検出する傾きの情報を表示させてもよい。
【0009】
該加工装置は、有線または無線で第2の表示パネルを有する情報機器と接続され、該制御ユニットは、該加工装置に接続された該情報機器に、該傾斜センサが検出する傾きの情報を送信し、該情報機器は、該第2の表示パネルに該傾きの情報を表示してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、加工装置の傾きを連続的に監視し、加工品質への影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、図1の加工装置の記録部が記録する傾斜値データを示す図である。
図3図3は、図1の加工装置の第1の表示パネルが表示する表示画面の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態2に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
図5図5は、実施形態3に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
図6図6は、実施形態4に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工装置1を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る加工装置1の構成例を示す斜視図である。実施形態1に係る加工装置1は、図1に示すように、ベース部2と、コラム3と、フレーム部4と、外装カバー5と、保持テーブル10と、加工ユニット20と、X軸方向移動ユニット31と、Y軸方向移動ユニット32と、Z軸方向移動ユニット33と、傾斜センサ40と、傾斜調整機構50と、第1の表示パネル60と、制御ユニット70と、を備える。ここで、X軸、Y軸及びZ軸は、加工装置1に設定された座標軸であり、互いに直交する。
【0014】
ベース部2は、加工装置1の土台を構成している。ベース部2の上面7は、平坦にかつ、XY平面に平行に形成され、加工装置1の傾斜(傾き)が0である際に水平面と平行となる。コラム3は、ベース部2の上面7に立設されており、実施形態1では門型に形成されている。ベース部2及びコラム3は、フレーム部4及び外装カバー5と比較して剛性が高く、例えば鋼やステンレス等の材料で形成されている。フレーム部4は、外装カバー5を取り付け用の骨格(骨組み)であり、ベース部2の上方に設けられている。外装カバー5は、フレーム部4に取り付けられ、ベース部2及びコラム3の上方を覆う。フレーム部4及び外装カバー5は、ベース部2及びコラム3よりも軽い材料で形成されており、例えば、アルミニウムや樹脂等の材料で形成されている。
【0015】
保持テーブル10は、保持面11を上方に向けて、ベース部2の上方に設けられている。加工ユニット20、Y軸方向移動ユニット32及びZ軸方向移動ユニット33は、コラム3に設けられている。X軸方向移動ユニット31及び制御ユニット70は、ベース部2の内部に設けられている。傾斜調整機構50は、ベース部2の下方に突出して設けられている。第1の表示パネル60は、加工装置1の前方の外装カバー5に、表示側を外側に向けて設けられている。
【0016】
加工装置1が加工する加工対象である被加工物100は、実施形態1では、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素、ガラスなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハなどである。被加工物100は、図1に示すように、平坦な表面101の格子状に形成される複数の分割予定ライン102によって区画された領域にチップサイズのデバイス103が形成されている。被加工物100は、実施形態1では、表面101の裏側の裏面104に粘着テープ105が貼着され、粘着テープ105の外縁部に環状フレーム106が装着されているが、本発明ではこれに限定されない。また、被加工物100は、本発明では、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0017】
保持テーブル10は、凹部が形成された円盤状の枠体と、凹部内に嵌め込まれた円盤形状の吸着部と、を備える。保持テーブル10の吸着部は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。保持テーブル10の吸着部の上面は、図1に示すように、被加工物100が載置されて、載置された被加工物100を吸引保持する保持面11である。保持面11は、実施形態1では、被加工物100が表面101を上方に向けて載置され、載置された被加工物100を裏面104側から粘着テープ105を介して吸引保持する。保持面11と保持テーブル10の枠体の上面とは、同一平面上に配置されており、XY平面に平行に形成され、加工装置1の傾斜が0である際に水平面と平行となる。
【0018】
加工ユニット20は、実施形態1では、スピンドルの先端に装着された切削ブレード21を有する切削ユニットである。加工ユニット20は、スピンドルによりY軸方向と平行な軸心周りの回転動作が加えられた切削ブレード21で、保持テーブル10の保持面11で保持された被加工物100を切削する。
【0019】
X軸方向移動ユニット31は、X軸方向に沿って、保持テーブル10を加工ユニット20に対して相対的に移動させる。Y軸方向移動ユニット32は、Y軸方向に沿って、加工ユニット20を保持テーブル10に対して相対的に移動させる。Z軸方向移動ユニット33は、Z軸方向に沿って、加工ユニット20を保持テーブル10に対して相対的に移動させる。
【0020】
加工装置1は、加工ユニット20の切削ブレード21を回転させながら、X軸方向移動ユニット31、Y軸方向移動ユニット32及びZ軸方向移動ユニット33により、回転中の切削ブレード21を、保持テーブル10上の被加工物100に切り込ませて、被加工物100に対して相対的に分割予定ライン102に沿って移動させることにより、回転中の切削ブレード21で被加工物100を分割予定ライン102に沿って切削加工する。
【0021】
傾斜センサ40は、加工装置1内の任意の箇所に設置されている。ここで、傾斜センサ40が設置される加工装置1内の任意の箇所は、加工装置1の動作により駆動しない固定部であり、具体的には、ベース部2、コラム3、フレーム部4及び外装カバー5である。傾斜センサ40は、実施形態1では、加工装置1の固定部のうち相対的に剛性が高い部分に設置されていることが好ましく、すなわち、フレーム部4及び外装カバー5よりも剛性が高いベース部2及びコラム3に設置されていることが好ましい。加工装置1の固定部のうち相対的に剛性が高い部分は、経時変化により歪むなどの変形の可能性が少ないので、傾斜センサ40は、このような部分に設置されていることにより、加工装置1の経時変化の影響を受けにくい。傾斜センサ40は、具体的には、第1の傾斜センサ41と、第2の傾斜センサ42とを有し、第1の傾斜センサ41がベース部2の上面7に、第2の傾斜センサ42がコラム3に形成された平坦な側面8に、それぞれ設置されている。以下において、第1の傾斜センサ41と第2の傾斜センサ42とを互いに区別する必要がない場合には、単に傾斜センサ40と記載する。
【0022】
傾斜センサ40は、加工装置1の傾斜の値を検出し、検出した加工装置1の傾斜の値を制御ユニット70に出力する。ここで、加工装置1の傾斜の値は、ベース部2の上面7や保持面11等のXY平面に平行に形成された加工装置1の基準面の水平面に対する傾斜の具合を表す数値等である。傾斜センサ40は、実施形態1では、加工装置1の傾斜の値として、加工装置1のX軸方向の傾斜値及び加工装置1のY軸方向の傾斜値を検出する。加工装置1のX軸方向の傾斜値及び加工装置1のY軸方向の傾斜値は、それぞれ、加工装置1の基準面においてX軸方向及びY軸方向のそれぞれに1m(メートル)移動することにより発生する水平面に対する鉛直方向のズレの長さ(例えば、μmの単位)を指す。なお、傾斜センサ40は、本発明ではこれに限定されず、例えば、加工装置1の基準面の水平面に対する傾斜角及び傾斜方向等で加工装置1の傾斜の値を検出してもよい。
【0023】
傾斜センサ40は、具体的には、加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、及びデジタル水準器が使用される。加速度センサや角速度センサは、重力の方向を検出することにより、加工装置1の傾斜の値を検出する。デジタル水準器は、吊るしたおもりの方向や液面の方向等に基づいて重力の方向を検出することにより、加工装置1の傾斜の値を検出する。
【0024】
傾斜調整機構50は、加工装置1の支持脚であり、ベース部2の下方に3本以上設けられていればよく、実施形態1では、ベース部2の下方の四隅に1本ずつ、合計4本設けられている。傾斜調整機構50は、ベース部2の下面からの突出長さを変化させることにより、ベース部2の下面と加工装置1が設置される床とのZ軸方向の間隔を変化させることで、加工装置1の傾斜を変化させる。傾斜調整機構50は、実施形態1ではネジを回すことによりベース部2の下面からの突出長さを変化させるが、本発明ではこれに限定されず、アクチュエータ等によりベース部2の下面からの突出長さを変化させてもよい。
【0025】
第1の表示パネル60は、加工装置1の加工条件及び加工結果の画面や、傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の情報の画面等を表示する。ここで、加工装置1の傾斜の情報は、オペレータが加工装置1の傾斜の大きさ(傾斜値や傾斜角等)及び方向(傾斜方向)を認識可能であればどのような形態でもよく、加工装置1の傾斜の大きさ及び方向に関する数値を表示してもよく、加工装置1の傾斜の大きさ及び方向を認識可能な図やグラフを表示してもよい。第1の表示パネル60は、実施形態1では、液晶表示装置等により構成される。第1の表示パネル60は、オペレータが加工装置1の加工条件等の各種設定に関する情報等を入力する際に使用する入力部61が設けられている。第1の表示パネル60に設けられた入力部61は、実施形態1では、第1の表示パネル60に設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0026】
制御ユニット70は、加工装置1の各構成要素の動作を制御して、被加工物100の加工処理(切削加工処理)を加工装置1に実施させる。制御ユニット70は、図1に示すように、記録部71と、報知部72と、を備える。
【0027】
図2は、図1の加工装置1の記録部71が記録する傾斜値データ200を示す図である。記録部71は、傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の値を記録する。記録部71は、具体的には、第1の傾斜センサ41が検出したX軸方向の傾斜値及びY軸方向の傾斜値(図2の「センサ1」の欄)と、第2の傾斜センサ42が検出したX軸方向の傾斜値及びY軸方向の傾斜値(図2の「センサ2」の欄)とを、当該傾斜値を検出した時間と互いに対照付けて、例えば図2に示すような傾斜値データ200として記録する。
【0028】
図3は、図1の加工装置1の第1の表示パネル60が表示する表示画面300の一例を示す図である。報知部72は、傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の値が所定の閾値を超えたか否かを判定する。報知部72は、具体的には、第1の傾斜センサ41及び第2の傾斜センサ42がそれぞれ検出したX軸方向及びY軸方向の各傾斜値が所定の閾値(例えば、0.1μm~0.3μm)を超えたか否かを判定する。報知部72は、これらの傾斜値の少なくとも1つが所定の閾値を超えた場合、加工装置1の傾斜の値が所定の閾値を超えたと判定し、これらの傾斜値のいずれもが所定の閾値を超えなかった場合、加工装置1の傾斜の値が所定の閾値を超えなかったと判定する。報知部72は、加工装置1の傾斜の値が所定の閾値を超えたという判定結果を得た場合、例えば図3に示すような表示画面300を第1の表示パネル60に表示させることにより、当該判定結果をオペレータに視認可能に報知する。
【0029】
表示画面300は、図3に示す例では、加工装置1の傾斜の値が所定の閾値を超えたという判定結果と、当該判定結果を得た際に傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の情報とを表示する画面である。加工装置1の傾斜の値が所定の閾値を超えたという判定結果は、図3に示す表示画面300の例では、表示画面300の上部に文字列で表示されている。加工装置1の傾斜の情報は、図3に示す表示画面300の例では、加工装置1のX軸方向の傾斜値を表す数値及び図、加工装置1のY軸方向の傾斜値を表す数値及び図、並びに、水平面に対する加工装置1の基準面の傾斜方向を表す図が所定のレイアウトに従って配列されて表されている。報知部72は、これらの表示画面300に表示される数値や図を、第1の傾斜センサ41及び第2の傾斜センサ42がそれぞれ検出したX軸方向及びY軸方向の各傾斜値に基づいて、算出及び生成する。
【0030】
なお、報知部72は、本発明では第1の表示パネル60に表示画面300等を表示させる形態に限定されず、加工装置1の傾斜の判定結果を、例えば、発光ダイオードなどで構成される不図示の発光ユニットの点灯や点滅や光の色彩等によりオペレータに認識可能に報知してもよいし、スピーカなどで構成され音声を発信する音声ユニットの音声によりオペレータに認識可能に報知してもよい。
【0031】
制御ユニット70は、実施形態1では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット70が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット70の演算処理装置は、制御ユニット70の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置1を制御するための制御信号を、制御ユニット70の入出力インターフェース装置を介して加工装置1の各構成要素に出力する。
【0032】
記録部71の機能は、実施形態1では、制御ユニット70の記憶装置により実現される。報知部72の機能は、実施形態1では、制御ユニット70の演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0033】
次に、本明細書は、実施形態1に係る加工装置1の動作を説明する。加工装置1の制御ユニット70は、加工装置1の主電源がONに切り替えられた後、入力部61からオペレータにより被加工物100の加工処理の開始の旨の入力を受け付けると、被加工物100の加工処理を開始する前に、傾斜センサ40により加工装置1の傾斜の値を検出して、検出した加工装置1の傾斜の値を取得する。制御ユニット70は、取得した加工装置1の傾斜の値を、当該傾斜の値を検出した時間と互いに対照付けて記録部71に記録する。制御ユニット70の報知部72は、取得した加工装置1の傾斜の値が所定の閾値を超えたか否かを判定し、判定結果を第1の表示パネル60に表示する。制御ユニット70は、報知部72により加工装置1の傾斜の値が所定の閾値を超えなかったという判定結果を得た場合、入力部61からオペレータにより入力を受け付けていた被加工物100の加工処理を開始する。
【0034】
制御ユニット70は、報知部72により加工装置1の傾斜の値が所定の閾値を超えたという判定結果を得た場合、被加工物100の加工処理の開始を中止し、報知部72により、当該判定結果と、当該判定結果を得た際に傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の情報とを表示する表示画面300を第1の表示パネル60に表示し、通常モードから傾斜調整モードに切り替わる。制御ユニット70は、傾斜調整モードでは、連続的にあるいは一定時間ごとに、傾斜センサ40により加工装置1の傾斜の値を検出し、検出した加工装置1の傾斜の値に基づいて、第1の表示パネル60に表示する表示画面300内の加工装置1の傾斜の情報の部分を更新する。オペレータは、第1の表示パネル60に表示された加工装置1の傾斜の情報を確認しながら、各傾斜調整機構50の突出長さを変化させて、第1の表示パネル60に表示される加工装置1の傾斜がX軸方向及びY軸方向ともに0となるように、加工装置1の傾斜を調整する。制御ユニット70は、加工装置1の傾斜が調整されることにより、傾斜センサ40により検出された加工装置1の傾斜の値が、所定の閾値よりも小さい所定の設定上限値以下に収められると、傾斜調整モードを終了して通常モードに戻り、再び入力部61からオペレータにより被加工物100の加工処理の開始の旨の入力を受け付けることが可能な状態となる。
【0035】
なお、実施形態1では、加工装置1の傾斜の値の検出及び加工装置1の傾斜の調整を、被加工物100の加工処理の開始の前に自動で実施する形態について説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、加工装置1の主電源がONに切り替えられた直後や、加工装置1の各構成要素のメンテナンス時等に、自動で、もしくは、入力部61からオペレータにより加工装置1の傾斜の値の検出を実施する旨の入力の受け付けに応じて、実施してもよい。
【0036】
以上のような構成を有する実施形態1に係る加工装置1は、加工装置1内に傾斜センサ40を備え、傾斜センサ40により加工装置1の傾斜の値を検出し、報知部72により、傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の値が所定の閾値を超えた場合にその旨を報知する。このため、実施形態1に係る加工装置1は、従来のように加工現場に加工装置を設置する際に都度、加工装置内に水準器を設置することを必要とせず、加工装置1の設置後も加工装置1の傾斜を連続的に監視し、加工装置1の傾斜による加工品質への影響を低減できるという作用効果を奏する。
【0037】
また、実施形態1に係る加工装置1は、記録部71により、傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の値の情報を傾斜値データ200として記録して蓄積するので、加工装置1の傾斜の加工品質への影響を明確にでき、加工装置1の傾斜を制御することによるより高い加工品質の実現を可能にする。
【0038】
また、従来では、加工装置内に水準器を設置して、オペレータが水準器を確認しながら、姿勢をかがませて加工装置の下方の傾斜調整機構を調整する(例えばネジを回す)必要があり、加工装置の傾斜の調整作業が面倒であった。そこで、実施形態1に係る加工装置1は、加工装置1内に備えた傾斜センサ40により加工装置1の傾斜の値を検出し、報知部72により、傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の情報を第1の表示パネル60に表示する。このため、実施形態1に係る加工装置1は、オペレータが、加工装置1内に水準器を設置する必要がなく、第1の表示パネル60で傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の情報を確認しながら、各傾斜調整機構50の突出長さを変化させて、加工装置1の傾斜がX軸方向及びY軸方向ともに0となるように、加工装置1の傾斜を調整することができるので、オペレータによる加工装置1の傾斜の調整作業の効率を向上させることができる。
【0039】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る加工装置1-2を図面に基づいて説明する。図4は、実施形態2に係る加工装置1-2の構成例を示す斜視図である。図4は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
実施形態2に係る加工装置1-2は、図4に示すように、実施形態1に係る加工装置1において、制御ユニット70が送信部73をさらに備えたものである。送信部73は、実施形態2では、外部の情報機器400が加工装置1-2の制御ユニット70から所定の範囲内に接近することで、加工装置1-2の制御ユニット70と情報機器400と無線で情報通信可能に接続し、無線で情報機器400に情報を送信する無線送信機であるが、本発明ではこれに限定されず、加工装置1-2の制御ユニット70と有線で情報通信可能に接続された情報機器400に情報を送信する有線送信機でもよい。送信部73の機能は、実施形態2では、制御ユニット70の入出力インターフェース装置により実現される。
【0041】
送信部73から送信される情報を受信する情報機器400は、第2の表示パネル401を有する。第2の表示パネル401は、送信部73からの情報の受信に応じて、傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の情報の画面等を表示する。第2の表示パネル401は、実施形態2では、液晶表示装置等により構成される。情報機器400は、高機能携帯電話(いわゆる、スマートフォン)を含む携帯電話機、タブレット端末、ノート型またはデスクトップ型のPC(Personal Computer)、携帯情報端末であるPDA(Personal Digital Assistant)、及び、眼鏡型や時計型のウェアラブルデバイス(Wearable Device)、ワイヤレスイヤホンやワイヤレスヘッドホン等が例示される。情報機器400は、制御ユニット70と同様のコンピュータシステムを含み、CPUのようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM又はRAMのようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。情報機器400の機能は、実施形態2では、情報機器400が含むコンピュータシステムの演算処理装置が、情報機器400が含むコンピュータシステムの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0042】
実施形態2では、報知部72は、送信部73により加工装置1-2の制御ユニット70と情報機器400とが情報通信可能に接続されており、なおかつ、加工装置1の傾斜の値が所定の閾値を超えたという判定結果を得た場合、送信部73により、当該判定結果と、当該判定結果を得た際に傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の情報とを、情報機器400の第2の表示パネル401にこれらの情報を表示する旨の指令と合わせて情報機器400に送信することにより、第2の表示パネル401にこれらの情報を表示させる。報知部72は、例えば、実施形態1と同様の図3に示すような表示画面300を、第2の表示パネル401に表示させてもよいし、第2の表示パネル401の大きさ及び形状に応じて表示画面300の表示のレイアウトを変更した画面を表示させてもよい。
【0043】
以上のような構成を有する実施形態2に係る加工装置1-2は、実施形態1に係る加工装置1において、制御ユニット70が送信部73をさらに備えたものであり、報知部72により、傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の情報を外部の情報機器400の第2の表示パネル401に表示する。このため、実施形態2に係る加工装置1-2は、オペレータが、情報機器400を手元に置き、情報機器400の第2の表示パネル401で傾斜センサ40が検出した加工装置1の傾斜の情報を確認しながら、加工装置1の傾斜の調整作業ができるので、さらに、オペレータが加工装置1の傾斜の調整作業における姿勢の変化や手間を省略することができる。
【0044】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る加工装置1-3を図面に基づいて説明する。図5は、実施形態3に係る加工装置1-3の構成例を示す斜視図である。図5は、実施形態1及び実施形態2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
実施形態3に係る加工装置1-3は、図5に示すように、実施形態1に係る加工装置1において、加工ユニット20(切削ユニット)を加工ユニット20-3(レーザー加工ユニット)に変更し、この変更に伴う加工装置1-3内のレイアウトの変更により、ベース部2、コラム3、フレーム部4及び外装カバー5の形状及び配置をそれぞれ変更したものである。
【0046】
実施形態3では、X軸方向移動ユニット31及びY軸方向移動ユニット32は、ベース部2の上方に設けられており、Z軸方向移動ユニット33は省略されている。保持テーブル10は、保持面11を上方に向けて、X軸方向移動ユニット31及びY軸方向移動ユニット32の上方に、X軸方向移動ユニット31及びY軸方向移動ユニット32によりそれぞれX軸方向及びY軸方向に移動可能に設けられている。加工ユニット20-3は、コラム3に固定して設けられている。第1の傾斜センサ41は、ベース部2の上面7に設置されており、第2の傾斜センサ42は、コラム3の側面8に設置されている。傾斜調整機構50は、ベース部2の下方に突出して設けられている。第1の表示パネル60は、加工装置1の前方の外装カバー5に、表示側を外側に向けて設けられている。制御ユニット70は、ベース部2の内部に設けられている。
【0047】
加工ユニット20-3は、実施形態3では、被加工物100に対してレーザービームを照射して、レーザービームにより被加工物100を加工するレーザー加工ユニットである。加工ユニット20-3は、被加工物100に対して吸収性を有する波長のレーザービームを照射して、このレーザービームにより被加工物100をアブレーション(昇華もしくは蒸発)させるいわゆるアブレーション加工を実施する。また、加工ユニット20-3は、被加工物100に対して透過性を有する波長のレーザービームを照射して、このレーザービームにより被加工物100の内部に改質層を形成する。
【0048】
加工装置1-3は、加工ユニット20-3によりレーザービームを照射しながら、X軸方向移動ユニット31及びY軸方向移動ユニット32により、被加工物100を加工ユニット20-3に対して相対的に分割予定ライン102に沿って移動させることにより、レーザービームで被加工物100を分割予定ライン102に沿ってレーザー加工する。
【0049】
以上のような構成を有する実施形態3に係る加工装置1-3は、実施形態1に係る加工装置1において、加工ユニット20(切削ユニット)を加工ユニット20-3(レーザー加工ユニット)に変更し、この変更に伴う加工装置1-3内のレイアウトを変更したものである。このため、実施形態3に係る加工装置1-3は、実施形態1と同様に、加工装置1-3内に傾斜センサ40を備え、傾斜センサ40により加工装置1-3の傾斜の値を検出し、報知部72により、傾斜センサ40が検出した加工装置1-3の傾斜の値が所定の閾値を超えた場合にその旨を報知する。したがって、実施形態3に係る加工装置1-3は、実施形態1と同様に、従来のように加工装置内に水準器を設置することを必要とせず、加工装置1-3の設置後も加工装置1-3の傾斜を連続的に監視し、加工装置1-3の傾斜による加工品質への影響を低減できるという作用効果を奏する。また、実施形態3に係る加工装置1-3は、その他についても、実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0050】
また、実施形態3に係る加工装置1-3は、実施形態2と同様に、送信部73をさらに備え、報知部72により、傾斜センサ40が検出した加工装置1-3の傾斜の情報を外部の情報機器400の第2の表示パネル401に表示してもよい。実施形態3に係る加工装置1-3は、このような場合、さらに実施形態2と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0051】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4に係る加工装置1-4を図面に基づいて説明する。図6は、実施形態4に係る加工装置1-4の構成例を示す斜視図である。図6は、実施形態1から実施形態3と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
実施形態4に係る加工装置1-4は、図6に示すように、実施形態1に係る加工装置1において、加工ユニット20(切削ユニット)を加工ユニット20-4(研削ユニット)に変更し、この変更に伴う加工装置1-4内のレイアウトの変更により、ベース部2、コラム3、フレーム部4及び外装カバー5の形状及び配置をそれぞれ変更したものである。
【0053】
実施形態4では、保持テーブル10は、保持面11を上方に向けて、ベース部2の上方に設けられている。保持テーブル10は、実施形態4では、不図示の回転駆動源によりZ軸回りに回転自在に設けられている。X軸方向移動ユニット31及びY軸方向移動ユニット32は省略されている。加工ユニット20-4及びZ軸方向移動ユニット33は、コラム3に設けられている。加工ユニット20-4は、Z軸方向移動ユニット33によりZ軸方向に移動可能に設けられている。第1の傾斜センサ41は、ベース部2の上面7に設置されており、第2の傾斜センサ42は、コラム3の側面8に設置されている。傾斜調整機構50は、ベース部2の下方に突出して設けられている。第1の表示パネル60は、加工装置1-4の前方の外装カバー5に、表示側を外側に向けて設けられている。制御ユニット70は、ベース部2の内部に設けられている。
【0054】
加工ユニット20-4は、実施形態4では、スピンドルの先端に装着された研削ホイール21-4を有する研削ユニットである。加工ユニット20-4は、スピンドルによりZ軸方向と平行な軸心周りの回転動作が加えられた研削ホイール21-4で、保持テーブル10の保持面11で保持された被加工物100を研削する。
【0055】
加工装置1-4は、加工ユニット20-4の研削ホイール21-4及び保持テーブル10をそれぞれ回転させながら、Z軸方向移動ユニット33により、回転中の研削ホイール21-4を回転中の保持テーブル10上の被加工物100にZ軸方向に沿って押圧することにより、回転中の研削ホイール21-4で保持テーブル10上の被加工物100を研削加工する。
【0056】
以上のような構成を有する実施形態4に係る加工装置1-4は、実施形態1に係る加工装置1において、加工ユニット20(切削ユニット)を加工ユニット20-4(研削ユニット)に変更し、この変更に伴う加工装置1-4内のレイアウトを変更したものである。このため、実施形態4に係る加工装置1-4は、実施形態1と同様に、加工装置1-4内に傾斜センサ40を備え、傾斜センサ40により加工装置1-4の傾斜の値を検出し、報知部72により、傾斜センサ40が検出した加工装置1-4の傾斜の値が所定の閾値を超えた場合にその旨を報知する。したがって、実施形態4に係る加工装置1-4は、実施形態1と同様に、従来のように加工装置内に水準器を設置することを必要とせず、加工装置1-4の設置後も加工装置1-4の傾斜を連続的に監視し、加工装置1-4の傾斜による加工品質への影響を低減できるという作用効果を奏する。また、実施形態4に係る加工装置1-4は、その他についても、実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0057】
また、実施形態4に係る加工装置1-4は、実施形態2と同様に、送信部73をさらに備え、報知部72により、傾斜センサ40が検出した加工装置1-4の傾斜の情報を外部の情報機器400の第2の表示パネル401に表示してもよい。実施形態4に係る加工装置1-4は、このような場合、さらに実施形態2と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0058】
また、実施形態4に係る加工装置1-4は、加工ユニット20-4のスピンドルの先端に装着された研削ホイール21-4を研磨パッドに変更することにより、加工ユニット20-4を研削ユニットから研磨ユニットに変更してもよい。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上記実施形態では、加工装置1,1-2,1-3,1-4は、備えられた加工ユニット20,20-3,20-4が切削ユニット、レーザー加工ユニット、研削ユニット及び研磨ユニットである例を説明したが、本発明ではこれに限定されず、被加工物100の加工面を洗浄する洗浄ユニットでもよく、また、被加工物100の裏面104に粘着テープ105を貼着して粘着テープ105の外縁部に環状フレーム106を装着するテープマウンタユニットでもよい。また、本発明の傾斜センサ40は、加工装置1,1-2,1-3,1-4内で被加工物100を加工する際に生じる加工負荷や、加工装置1,1-2,1-3,1-4内で搬送ユニットによって被加工物100を搬送する際に生じる振動によって、加工装置1,1-2,1-3,1-4が傾斜していないかも同様に確認する事ができる。これにより、加工品質に影響する傾斜が加工中の負荷や搬送中に起こっていた場合、傾斜センサ40の検出値が閾値を上回るため、早期に発見し、加工不良を防ぐ事ができる。また、加工結果が悪い原因を解明する際、傾斜センサ40の検出値が閾値を上回っていない場合、加工装置1,1-2,1-3,1-4の剛性に問題ないことを証明でき、加工不良の原因を切り分けて、解決を早期化することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,1-2,1-3,1-4 加工装置
10 保持テーブル
20,20-3,20-4 加工ユニット
40 傾斜センサ
41 第1の傾斜センサ
42 第2の傾斜センサ
60 第1の表示パネル
70 制御ユニット
71 記録部
72 報知部
100 被加工物
400 情報機器
401 第2の表示パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6