(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177835
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】試験測定システム及びビット・エラー・レートを求める方法
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20221124BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H04L1/00 C
H04L25/02 301J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022081509
(22)【出願日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】63/189,886
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/745,797
(32)【優先日】2022-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】マリア・アガストン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジェイ・ピカード
(72)【発明者】
【氏名】カン・タン
【テーマコード(参考)】
5K014
5K029
【Fターム(参考)】
5K014GA02
5K029KK25
5K029KK27
(57)【要約】
【課題】DUTのビット・エラー・レート(BER)の計算時間を短縮する。
【解決手段】試験測定システムは、機械学習システム20と、オシロスコープ14を被試験デバイス(DUT)12に接続するポートを含むオシロスコープ14と、DUT12から波形を取得する処理と、波形を合成波形画像に変換する処理と、合成波形画像を機械学習システム20に送信して、DUT12のビット・エラー・レート(BER)値を得る処理とを1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成されるプロセッサとを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械学習システムと、
試験測定装置を被試験デバイス(DUT)に接続するように構成されたポートを含む上記試験測定装置と、
1つ以上のプロセッサに、
上記DUTからの波形を取り込む処理と、
上記波形を合成波形画像に変換する処理と、
上記合成波形画像を機械学習システムに送信して上記DUTのビット・エラー・レート(BER)値を取得する処理と
を行わせるプログラムを実行するように構成された上記1つ以上のプロセッサと
を具える試験測定システム。
【請求項2】
上記合成波形画像が、ショート・パターン・テンソル、周期的ループ・テンソル又はアイ・ダイアグラム・オーバーレイのいずれかを含む請求項1記載の試験測定システム。
【請求項3】
上記DUTに接続された既知の装置を更に具え、上記既知の装置は、上記DUTへの送信経路に沿って既知のパターンを送信し、受信経路に沿って上記DUTからパターンを受信する請求項1記載の試験測定システム。
【請求項4】
上記ポートは、上記送信経路に接続された上記試験測定装置の第1チャンネル入力と、上記受信経路に接続された上記試験測定装置の第2チャンネル入力とを有する請求項3記載の試験測定システム。
【請求項5】
上記1つ以上のプロセッサが、上記機械学習システムをトレーニングする処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように更に構成され、該プログラムは、上記1つ以上のプロセッサに、
BER値が測定及び記憶された信号に関連するトレーニング波形を取り込む処理と、
上記トレーニング波形を上記トレーニング合成波形画像に変換する処理と、
上記トレーニング合成波形画像と記憶された上記BER値をトレーニング・データ・サンプルとして上記機械学習システムに供給する処理と
を行わせる請求項1記載の試験測定システム。
【請求項6】
上記プロセッサは、十分な数のトレーニング・サンプルが得られるまで、上記機械学習システムをトレーニングする処理を1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを繰り返すように更に構成される請求項5記載の試験測定システム。
【請求項7】
上記1つ以上のプロセッサが、上記DUTから上記波形が取り込まれたときの温度を取得する処理と、上記温度を上記合成波形画像と共に上記機械学習システムに送信する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように更に構成される請求項1記載の試験測定システム。
【請求項8】
被試験デバイス(DUT)のビット・エラー・レートを求める方法であって、
上記DUTから1つ以上の波形を取り込む処理と、
上記1つ以上の波形を合成波形画像に変換する処理と、
上記合成波形画像を機械学習システムに送信して、上記DUTのビット・エラー・レート(BER)値を取得する処理と
を具えるビット・エラー・レートを求める方法。
【請求項9】
上記1つ以上の波形を上記合成波形画像に変換する処理が、1つ以上の波形をショート・パターン・テンソル、周期的ループ・テンソル又はアイ・ダイアグラム・オーバーレイのいずれかに変換する処理を含む請求項8記載のビット・エラー・レートを求める方法。
【請求項10】
既知の装置を上記DUTに接続する処理と、
上記既知の装置を使用して、送信経路に沿って既知のパターンを上記DUTに送信する処理と、
受信経路に沿って上記DUTからパターンを受信する処理と
を更に具える請求項8記載のビット・エラー・レートを求める方法。
【請求項11】
試験測定装置の第1チャンネルを上記送信経路に接続する処理と、
上記試験測定装置の第2チャンネルを上記受信経路に接続する処理と、
上記第1チャンネルと上記第2チャンネルから取り込んだ波形を比較する処理と
を更に具える請求項10記載のビット・エラー・レートを求める方法。
【請求項12】
上記DUT上のトランスミッタとレシーバとの間にループバック経路を接続する処理と、
上記DUTのBERを測定する処理と、
上記DUTの上記BERを記憶する処理と、
上記DUTからトレーニング波形を取り込む処理と、
上記トレーニング波形を上記トレーニング合成波形画像に変換する処理と、
上記トレーニング合成波形画像及び記憶された上記BER値をトレーニング・データ・サンプルとして機械学習システムに供給する処理と
を更に具える請求項8記載のビット・エラー・レートを求める方法。
【請求項13】
上記合成波形画像中の画素にダイナミック・レンジ圧縮を適用して、より大きなカウント値に比較して、より小さなカウント値が上記合成波形画像において、より目立つようにする処理を更に具える請求項8記載のビット・エラー・レートを求める方法。
【請求項14】
上記DUTから上記1つ以上の波形を取り込む処理が、試験温度を取得する処理を更に含む請求項8記載のビット・エラー・レートを求める方法。
【請求項15】
上記1つ以上の波形を上記合成波形画像に変換する処理が、上記試験温度のグラフィカル表現を上記合成波形画像にエンコードする処理を更に含む請求項14記載のビット・エラー・レートを求める方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定システム及び方法に関し、より詳しくは、試験測定装置を使用して取り込まれたデータのビット・エラー・レート(BER)を推定する処理に関する。
【背景技術】
【0002】
ビット・エラー・レート(BER)試験では、誤って受信された送信ビットの量又は割合に基づいて、信号チャンネルの信号インテグリティ(品質、忠実性)を測定する。誤ったビット数が多いほど、チャンネル品質が低いことを示す。
【0003】
従来のBER試験では、通常、被試験デバイス(DUT)中に「オンチップBER試験回路」などの専用のBER試験装置が含まれ、サンプリング・オシロスコープは含まれない。このオンチップBER試験回路は、既知のパターンを送信し、次いで、既知のパターンを受信パターンと比較することによってエラーをチェックしてBER試験結果を生成するというBER試験をDUTについて実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0389349号明細書
【特許文献2】国際公開第2021/252862号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「高速シリアルインターフェースのオンチップテスト回路」、2008年12月01日公開、EDN Japan、[online]、[2022年5月18日検索]、インターネット<https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/0812/01/news134.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この試験方法の問題としては、非常に小さなBER値を計算するためには、十分なデータを取得するために、多数のビットを送信しなければならないことがある。これには多くの時間がかかり、このために、コストが増加する。ある顧客の見積もりでは、1つの製造ラインについて値を取得するのに4分かかる。このラインは、何十万もの光トランシーバ又は他の種類のDUTを試験する必要がある。もう1つの課題は、挙動型(behavioral)レシーバ・イコライザを専用のBER試験システムに実装するのが困難又はコストがかかることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の実施形態は、光学的及び電気的トランシーバを含む被試験デバイス(DUT)のビット・エラー・レート(BER)を計算するのに必要な時間を短縮する。本願の実施形態は、専用のBER試験装置の代わりに、オシロスコープを用いて、ビット・エラー・レート(BER)試験を、従来の試験よりも、はるかに速いやり方で実行するための装置及び方法を提供する。また、本願の実施形態は、ハードウェアに依存せず、特定のタイプのオシロスコープに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、機械学習トレーニング機能を有するビット・エラー・レート試験システムの一実施形態を示す。
【
図2】
図2は、ランタイム環境におけるビット・エラー・レート試験システムの一実施形態を示す。
【
図4】
図4は、合成アイ・ダイアグラムの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、機械学習トレーニング環境において、DUTを試験し、それらのDUTのBER値を取得するように構成された試験測定システムの図を示す。このシステムには、顧客の製造ラインで使用される顧客の試験自動化システム10とDUT12とがあり、DUT12は、合格(pass)/不合格(fail)を試験する必要がある。合格したコンポーネントは、最終的に顧客によって販売される。DUT12は、オーブン(oven)又は温度室(temperature chamber)11内で試験を受けても良い。試験自動化システム10は、オーブンからの温度と、DUT12内のオン・チップBER試験回路13からの従来型又は「低速」BER試験結果とを受ける。
【0010】
試験測定装置14は、典型的には、オシロスコープ(又は、単に「スコープ」と呼ぶ)であるが、他の試験測定装置から構成されても良く、DUT12からの信号を捕捉し、これらの信号から1つ以上の波形を生成する。これら信号は、既知の装置18(この場合は、既知で安定した特性を有する光トランシーバ)と信号を送受信するDUT12から生じたものであっても良い。スコープ14は、DUT12と既知の装置18との間で通信される波形を取り込む。モジュール16は、典型的には、機械学習システム20の一部であり、機械学習システム20で使用するために、これら波形を合成波形画像(composite waveform image)に変換する。試験自動化システム10は、温度をモジュール16に供給し、また、従来のBER試験結果をトレーニングのために機械学習システム20に供給する。いくつかの実施形態では、モジュール16は、スコープ14の一部であってよく、いくつかの実施形態では、モジュール16は、スコープ14及び機械学習システム20から独立していても良い。概して、モジュール16の機能は、試験自動化システム10、スコープ14又は機械学習システム20において、関連するプログラム(コード)を実行する1つ以上のプロセッサによって実現されても良い。加えて、試験自動化システム10、モジュール16及び機械学習システム20は、機能としてスコープ14内で実現されても良い。
【0011】
合成波形画像は、多くの形態をとることができる。例えば、スコープは、PAM4(パルス振幅変調4レベル)信号を受けて、取り込まれた波形から3つのダイアグラムを生成しても良く、それぞれが
図4の左側に示すように「アイ開口」と呼ばれるものを有する。これらは、3つの閾値Th1、Th2及びTh3の組み合わせである単一合成閾値を有する単一の合成アイ・ダイアグラムへと重ね合わせられ(オーバーレイされ)ても良い。
図4の右側は、得られた単一の合成アイ・ダイアグラムの一例を示す。
【0012】
これは、モジュール16によって生成される合成波形画像の一例である。2022年2月3日に出願された米国特許出願第17/592,437号「オーバーレイ及びコンポジット・アイ・クラス・セパレータ並びに人及び機械学習用ダイナミック・アイ・トリガ」は、合成アイ波形画像を生成する方法を記載している。この出願は、その全体が本願に組み込まれる。これは、合成波形画像の一形式の一例である。その他のタイプには、ショート・パターン・テンソル・イメージ、周期的(cyclic)ループ・テンソル、アイ・ダイアグラム・オーバーレイなどがある。2021年6月11日に出願された「波形データに関する周期的ループ画像表現」と題された米国特許出願第17/345,283号明細書は、周期的ループ画像を生成することについて記載している(特許文献1参照)。2021年5月21日に出願された米国特許仮出願第63/191,908号明細書は、ショート・パターン・テンソル画像を生成することについて記載している。これらの出願は、その全体が本願に組み込まれる。
【0013】
機械学習システム20に供給される画像は、RGB画像入力の別々のカラー・チャンネルに配置された複数のテンソル画像を含んでもよい。システムは、スコープのチャンネル1から波形のテンソル画像を作成し、その画像を、これらカラー入力の1つ(例えば、赤色チャンネル)に配置しても良い。システムは、また、スコープのチャンネル2から波形のテンソル画像を作成し、それを青色チャンネルに配置する。次いで、温度を表すグラフを、例えば、緑色チャンネルに供給しても良い。
【0014】
図1は、トレーニング環境を示す。DUT12は、図示のように、「既知の良好な」トランシーバ18に依存して試験されても良い。これに代えて、DUT12が、ループバック方式で一緒に接続された、DUTのレシーバとトランスミッタとを有していても良い。オン・チップBER試験回路13は、既知のパターンを送信し、次いで、受信したパターンをデコード(復号)し、既知のパターンと比較してBER試験結果を生成する機能を有する。BERは、パターン内の受信ビット数に対するビット・エラーの比率である。従来の試験では、1e-4、1e-12などのレンジの比較的小さなBER値を計算するために、非常に多数のビットを用いた送信が必要であった。
【0015】
しかし、機械学習システム20は、トレーニングのために対応する合成波形画像の夫々に関連付けられたBER値を必要とする。各合成波形画像及びそれに関連するBER値は、1つのトレーニング・サイクルの1つのデータ・サンプルとして機械学習システム20に供給される。このプロセスは、所望のレベルの精度を満たすように機械学習システム20を十分にトレーニングするために、必要な数のトランシーバに対して繰り返される。典型的には、機械学習システム20は、予測精度が必要な要件を確実に満たすために、トレーニング中に試験及び検証を受ける。精度を明確する一つの方法は、縦軸の機械学習の「予測値」に対して、横軸に実際のBER値をプロットして、散布図を作ることである。次に、予測値と実際の差の標準偏差を計算し、それを測定の精度の指標として使用できる。これらは、トレーニング時に、多数の波形トレーニング・セットを、関連する実際のBER値と共に使用して行うことができる。複数の波形をトレーニング・ネットワークに供給して、予測値を取得できる。
【0016】
製造プロセスは、比較的小さな範囲内のBER値を達成するように、DUTを組み立てることが想定されている。従って、機械学習システム20は、デバイス(装置)の製造中に見られる、この範囲について、デバイス(装置)のBERを認識するのに十分なトレーニングを必要とする。これには、小さな範囲の観察を可能にする十分に高い解像度の合成波形画像が必要である。
【0017】
小さいBERのカウント値(counts:計数値)を合成波形画像中に表示させる方法の1つは、ダイナミック・レンジの圧縮である。画像のダイナミック・レンジを圧縮することで、小さい方のカウント値が、大きい方のカウント値に比べて画像内で、より目立つ(more visible)ようになる。ダイナミック・レンジ圧縮又は補正は、ガンマ補正又は他の対数関数の形をとることができる。ガンマ補正とは、画像内の線形ゲイン値を非線形関係にエンコードするプロセスを指し、元々はCRTモニタ用として開発されたものである。ダイナミック・レンジを圧縮した画像を使用することで、機械学習システム20のトレーニングが改善され、公称製造値近辺のBERの小さな変化をより容易に判断できるようになる。
図4の右側の図は、単一に合成したアイ・ダイアグラム波形画像を示し、そのダイナミック・レンジは、
図4の左側の図に比較して圧縮されている。
【0018】
機械学習システム20は、トレーニングされると、特定の合成波形画像を、それらの画像で生じるBER値に関連付けることを学習することになる。これにより、実行(ランタイム)時に、新しい合成波形画像をBER値に高精度に関連付けることができる。次いで、試験自動化システム10は、機械学習システムの推定BERをBER値として使用して、DUTの合否(pass or fail)を判定できる。
【0019】
図2にランタイム環境を示す。
図2では、システムは、もはや従来の測定を必要としないが、機械学習の推定値に対する精度チェックとして定期的にそれを実行することもできる。DUT12は、既知の装置18と送受信する。一実施形態では、既知の装置18からDUTへの送信経路は、スコープ14の第1チャンネルに接続され、DUTから既知の装置18への受信経路は、別のチャンネルに接続される。
【0020】
次いで、スコープ14は、波形を取り込み、モジュール16は、波形を受信して、上述したように、この場合に使用されるいずれかの形式の合成波形画像を生成する。合成波形画像は、次いで、試験自動化システム10からの温度とともに、機械学習システム20に送られる。機械学習システム20は、次に、機械学習システムで得られるBERの結果を出力し、このBER値を試験自動化システムにフィードバックする。これにより、試験自動化システムは、DUTを合格又は不合格とする。
【0021】
DUTが不合格の場合、プロセスは、機械学習システムからのBER推定値のダブル・チェックとして、従来の方法でBERを計算することもできるが、それでは、プロセスがあまりにも遅くなる可能性がある。これに代えて、試験自動化システム10は、オプションで、従来の試験を受けて、機械学習システム20からのBER推定値を、オン・チップBER試験回路13からの従来の遅いBER試験結果と比較することもできる。もしこれらの値が、一貫してあまりにも離れている場合、機械学習システム20は、別のトレーニング・プロセスを受ける必要があるかもしれない。
【0022】
波形を取り込む試験測定装置14や合成波形画像をレンダリングするモジュール16は、これらのタスクを実行する1つ以上のプロセッサを有しても良い。
図3は、試験測定装置14の一実施形態を示す。試験測定装置14は、いくつかの構成要素を含むことがあり、ここで説明するものは、全てを網羅することを意図したものではない。試験測定装置14は、1つ以上のプロセッサ30を含んでもよい。1つ以上のプロセッサ30は、本願で説明したプロセスを1つ以上のプロセッサ30に実行させるコード(プログラム)を実行するように構成されるであろう。システム内で実行される様々な処理タスクは、試験自動化システム10、スコープ14内の1つ以上のプロセッサ30及び機械学習システム20の間で分散されても良い。これらのプロセッサは、全て試験測定システムに含まれており、試験測定装置は、試験測定システムの中の一部分である。
【0023】
試験測定装置14には、ポート32も有って良く、これは、上述したように、装置14のチャンネルに接続されるプローブのようなDUTへの接続を提供する。装置14は、入力アナログ信号をデジタル化されたサンプルに変換する1つ以上のアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)34を有していても良い。装置14には、デジタル化されたサンプル、トレーニング等で使用されるBER値などを記憶する少なくとも1つのメモリ(例えば、アクイジション・メモリ36など)があるであろう。メモリ38は、メモリ36と組み合わせられても良く、プロセッサによって実行されるコード(プログラム)に加えて、ユーザの設定などを記憶しても良い。ユーザ入力部44は、ノブ、ボタン、その他の操作装置を有していても良い。表示部42は、波形及び得られた測定値をユーザに表示する。表示部42は、表示部42がタッチスクリーン・ディスプレイである場合、オプションでユーザによる操作機能を組み込んでもよい。次いで、装置14は、通信ポート40を介して、DUT12からの情報を機械学習システム20に送信する。
【0024】
このようにして、機械学習システムは、従来の試験よりも、はるかに高速にDUTのBER推定値を生成できる。従来の試験の見積もりでは、製造ラインでDUTごとに4分かかっていた。機械学習を使用すると、現在のところ、試験は、1DUTあたり約0.45秒で実行され、これは、従来の方法を使用して試験するのにかかる時間の約0.2%である。
【0025】
概して、波形の取り込み(アクイジション)には、2~3秒かかることがある。しかし、機械学習システムからBER推定値を取得するには、波形アクイジションよりも時間がかかる可能性がある。このようなケースが発生した場合、第1波形を取り込んで第1プロセッサに送信して合成波形画像を生成して機械学習システムに送信し、同時に、第1の結果を待っている間に、第2波形を取り込んで第2プロセッサに送信することで、プロセスを並列化できる。全てのプロセッサが結果を受け取ったら、これらBER推定値を平均化して最終的なBER値を得ることができる。しかし、現在の試験では、機械学習システムは、波形を取り込む時間よりもはるかに速くBER値を提供する。
【0026】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0027】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0028】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0029】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0030】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0031】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
実施例
【0032】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0033】
実施例1は、試験測定システムであって、機械学習システムと、試験測定装置を被試験デバイス(DUT)に接続するように構成されたポートを含む上記試験測定装置と、1つ以上のプロセッサに、上記DUTからの波形を取り込む処理と、上記波形を合成波形画像に変換する処理と、上記合成波形画像を機械学習システムに送信して上記DUTのビット・エラー・レート(BER)値を取得する処理とを行わせるプログラム(コード)を実行するように構成された上記1つ以上のプロセッサとを具える。
【0034】
実施例2は、実施例1の試験測定システムであって、上記1つ以上のプロセッサが、上記試験測定装置、試験自動化システム及び上記機械学習システムの間に分散されている。
【0035】
実施例3は、実施例1及び2のいずれかの試験測定システムであって、上記合成波形画像が、ショート・パターン・テンソル、周期的(cyclic)ループ・テンソル又はアイ・ダイアグラム・オーバーレイのいずれかを含む。
【0036】
実施例4は、実施例1から3のいずれかの試験測定システムであって、上記DUTに接続された既知の装置を更に具え、上記既知の装置は、上記DUTへの送信経路に沿って既知のパターンを送信し、受信経路に沿って上記DUTからパターンを受信する。
【0037】
実施例5は、実施例4の試験測定システムであって、上記ポートは、上記送信経路に接続された上記試験測定装置の第1チャンネル入力と、上記受信経路に接続された上記試験測定装置の第2チャンネル入力とを有する。
【0038】
実施例6は、実施例1から5のいずれかの試験測定システムであって、上記1つ以上のプロセッサが、上記機械学習システムをトレーニングする処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラム(コード)を実行するように更に構成され、該プログラム(コード)は、上記1つ以上のプロセッサに、BER値が測定及び記憶された信号に関連するトレーニング波形を取り込む処理と、上記トレーニング波形を上記トレーニング合成波形画像に変換する処理と、上記トレーニング合成波形画像と記憶された上記BER値をトレーニング・データ・サンプルとして上記機械学習システムに供給する処理とを行わせる。
【0039】
実施例7は、実施例6の試験測定システムであって、上記プロセッサは、十分な数のトレーニング・サンプルが得られるまで、上記機械学習システムをトレーニングする処理を1つ以上のプロセッサに行わせるプログラム(コード)を繰り返すように更に構成されている。
【0040】
実施例8は、実施例1から7のいずれかの試験測定システムであって、上記1つ以上のプロセッサが、上記合成波形画像の画素にダイナミック・レンジ圧縮を適用して、上記合成波形画像内の大きい方のカウント値に比較して、上記合成波形画像内の小さい方のカウント値がより目立つ(more visible)ようにする処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラム(コード)を実行するように更に構成される。
【0041】
実施例9は、実施例8の試験測定システムであって、上記ダイナミック・レンジ圧縮は、ガンマ補正又は対数関数のいずれかから構成される。
【0042】
実施例10は、実施例1から9のいずれかの試験測定システムであって、上記1つ以上のプロセッサが、上記DUTから上記波形が取り込まれたときの温度を取得する処理と、上記温度を上記合成波形画像と共に上記機械学習システムに送信する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラム(コード)を実行するように更に構成される。
【0043】
実施例11は、被試験デバイス(DUT)のビット・エラー・レートを求める方法であって、上記DUTから1つ以上の波形を取り込む処理と、上記1つ以上の波形を合成波形画像に変換する処理と、上記合成波形画像を機械学習システムに送信して、上記DUTのビット・エラー・レート(BER)値を取得する処理とを具える。
【0044】
実施例12は、実施例11の方法であって、上記1つ以上の波形を上記合成波形画像に変換する処理が、1つ以上の波形をショート・パターン・テンソル、周期的(cyclic)ループ・テンソル又はアイ・ダイアグラム・オーバーレイのいずれかに変換する処理を含む。
【0045】
実施例13は、実施例11又は12の方法であって、既知の装置(known device)を上記DUTに接続する処理と、上記既知の装置を使用して、送信経路に沿って既知のパターンを上記DUTに送信する処理と、受信経路に沿って上記DUTからパターンを受信する処理とを更に具える。
【0046】
実施例14は、実施例13の方法であって、試験測定装置の第1チャンネルを上記送信経路に接続する処理と、上記試験測定装置の第2チャンネルを上記受信経路に接続する処理と、上記第1チャンネルと上記第2チャンネルから取り込んだ波形を比較する処理とを更に具える。
【0047】
実施例15は、実施例11から12のいずれかの方法であって、上記DUT上のトランスミッタとレシーバとの間にループバック経路を接続する処理と、上記DUTのBERを測定する処理と、上記DUTの上記BERを記憶する処理と、上記DUTからトレーニング波形を取り込む処理と、上記トレーニング波形を上記トレーニング合成波形画像に変換する処理と、上記トレーニング合成波形画像及び記憶された上記BER値をトレーニング・データ・サンプルとして機械学習システムに供給する処理とを更に具える。
【0048】
実施例16は、実施例15の方法であって、十分な数のトレーニング・データ・サンプルが得られるまで、更なるDUTについて上記方法を繰り返す処理を更に具える。
【0049】
実施例17は、実施例11から16のいずれかの方法であって、上記合成波形画像中の画素にダイナミック・レンジ圧縮を適用して、より大きなカウント値に比較して、より小さなカウント値が上記合成波形画像において、より目立つ(more visible)ようにする処理を更に具える。
【0050】
実施例18は、実施例17の方法であって、ダイナミック・レンジを適用する処理が、上記トレーニング合成波形画像中の値にガンマ補正又は対数関数のいずれかを適用する処理を更に含む。
【0051】
実施例19は、実施例11から18のいずれかの方法であって、上記DUTから上記1つ以上の波形を取り込む処理が、試験温度を取得する処理を更に含む。
【0052】
実施例20は、実施例19の方法であって、上記1つ以上の波形を上記合成波形画像に変換する処理が、上記試験温度のグラフィカル表現を上記合成波形画像にエンコードする処理を更に含む。
【0053】
説明の都合上、本開示技術の具体的な態様を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本開示技術は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0054】
10 試験自動化システム
11 温度室(オーブン)
12 DUT
13 オン・チップBER試験回路
14 試験測定装置(オシロスコープ)
16 合成波形画像を生成するモジュール
18 既知の装置(光トランシーバ)
20 機械学習システム
30 プロセッサ
32 入力ポート
34 アナログ・デジタル・コンバータ
36 アクイジション・メモリ
38 メモリ
40 通信ポート
42 表示部
44 ユーザ入力部
【外国語明細書】