(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177886
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】圧力容器の検知孔の洗浄冶具及びこれを用いた検知孔の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 9/027 20060101AFI20221125BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20221125BHJP
B01J 3/04 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B08B9/027
F16J12/00 Z
B01J3/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084313
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】角 雄二
【テーマコード(参考)】
3B116
3J046
【Fターム(参考)】
3B116AA20
3B116BB21
3B116BB83
3B116CD22
3J046AA11
3J046BA03
3J046BD06
3J046BD09
3J046CA02
3J046DA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内表面がライニングされた圧力容器本体の溶接箇所を覆う耐食耐摩耗材からなるプレートの裏側の空間や該溶接箇所に穿孔した検知孔を閉塞させる固形物を効率よく除去することが可能な洗浄冶具を提供する。
【解決手段】内表面が被覆材1でライニングされたクラッド鋼3で作製された圧力容器本体の溶接箇所に穿孔した検知孔6の洗浄冶具であって、検知孔6の内径よりも細い外径を有しその先端部にラジアル方向に洗浄液を放出する吐出口を備えた放出パイプ部11と、放出パイプ部11のうち検知孔6内に挿入されない非挿入部分の外側に同芯軸状に設けられることで上記放出された洗浄液を排出させる排出パイプ部12とから構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内表面がライニングされた圧力容器本体の溶接箇所に穿孔した検知孔の洗浄冶具であって、前記検知孔の内径よりも細い外径を有し且つその先端部にラジアル方向に洗浄液を放出する吐出口を備えた放出パイプ部と、前記放出パイプ部のうち前記検知孔内に挿入されない非挿入部分の外側に同芯軸状に設けられることで前記放出された洗浄液を排出させる排出パイプ部とから構成されることを特徴とする検知孔洗浄冶具。
【請求項2】
前記排出パイプ部は、前記圧力容器本体に固定する係合部を有し、該係合部は、前記放出パイプ部のうち前記検知孔に挿入される部分の長さを調整可能であることを特徴とする、請求項1に記載の検知孔洗浄冶具。
【請求項3】
前記吐出口は、前記放出パイプ部の先端に周方向に均等な間隔をあけて設けられている複数の切り欠き部であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の検知孔洗浄冶具。
【請求項4】
内表面がライニングされた圧力容器本体の溶接箇所を覆うプレートの裏側の空間及び該溶接箇所に穿孔した検知孔を請求項1~3のいずれか1項に記載の検知孔洗浄冶具を用いて洗浄する方法であって、前記放出パイプ部をその先端部が前記プレートの裏面に当接するまで前記検知孔内に挿入する工程と、前記放出パイプ部の前記先端部とは反対側の端部から洗浄液を導入する工程とからなることを特徴とする検知孔の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートクレーブ等の圧力容器に設けられているライニングの液漏れの検知孔を洗浄する洗浄冶具及びこれを用いた検知孔の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬法として、低品位ニッケル鉱石に水を加えて調製した鉱石スラリー原料を高温高圧下で硫酸により酸浸出処理し、得られたニッケルやコバルトなどの有価金属を含む浸出液を硫化処理することによりこれら有価金属を硫化物の形態で回収するHPAL法(High Pressure Acid Leaching法)が知られている。このHPAL法では、一般的にオートクレーブと呼ばれる撹拌機付きの圧力容器が用いられ、このオートクレーブ内に硫酸と共に装入された上記の鉱石スラリー原料は、更に高圧蒸気が吹き込まれることで高温高圧の条件下で撹拌されながら酸浸出処理が施される。
【0003】
上記のように、オートクレーブの内部は過酷な条件下にさらされるので、チタンに代表される高耐食性で且つ耐摩耗性を有する材料でオートクレーブの本体を作製するのが望ましい。しかしながら、チタンは炭素鋼に比べて高価であるので、チタンをライニング材(被覆材)として用いることが一般的に行なわれている。例えば特許文献1には、オートクレーブの本体の母材に炭素鋼を用いると共に、その内側をチタンで被覆する技術が開示されている。これにより、高温高圧に対する強度を確保しつつ高耐食性で且つ耐摩耗性を有するオートクレーブをコストをあまりかけることなく作製することが可能になる。
【0004】
上記のように炭素鋼の母材をチタンで被覆する方法としては、肉盛法、ストリップライニング法、クラッディング法などが知られているが、近年はクラッディング法の一つである爆発圧着法が好適に用いられている。爆発圧着法は、爆薬が爆発する際の瞬間的な高エネルギーを利用して異種金属同士を冷間で冶金的に接合させる貼付法であり、残留応力が少なく耐食性に優れているという利点を有している。
【0005】
上記の爆発圧着法で作製したいわゆる爆着クラッド鋼からなる板材を用いてオートクレーブに代表される大型の圧力容器を作製する場合は、上記の爆着クラッド鋼からなる板材を複数枚用意し、それらを圧力容器の形状に合わせて各々曲げ加工した後、隣接する板材同士の互いに接合する部分を突き合わせ溶接する。この溶接の際、接合強度を高めるために上記の接合部分には開先加工が施される。特に、オートクレーブのように肉厚が100mmを超える板材の場合は、板材の両面に溝状の開先加工を施すため、溶接箇所では被覆材が除去される。そこで、帯状のチタンプレートでこの溶接箇所を覆うと共に、このチタンプレートの周囲を全周に亘って隅肉溶接することで母材の炭素鋼に容器内の処理液が接触するのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のオートクレーブのように、反応効率を高めるために撹拌機を用いて圧力容器内の処理液を撹拌させる場合は、内側に突出する上記のチタンプレートやその溶接箇所の摩耗が進みやすく、その結果、チタンプレートに穴が開いたり、チタンプレートの溶接箇所が割れたりすることがあった。このように被覆材に穴が開いたりその溶接箇所に割れが生じたりすると、その部分から圧力容器内の処理液が漏れて母材の炭素鋼に直接触れるため腐食が急速に進行し、圧力容器内の高温高圧の処理液が外部に噴出して操業停止などのトラブルに発展するおそれがある。
【0008】
そこで、上記の被覆材に穴が開いたりその溶接箇所に割れが生じたりしたときに早期に発見できるように、該被覆材の裏側の母材の溶接部分にいわゆる知らせ穴と呼ばれる液漏れの検知孔が設けられている。そして、例えば定期修理のタイミングで該検知孔を点検することで、被覆材において液漏れが発生しているか否かを確認することが可能になる。なお、この知らせ穴は、圧力容器の製造後や補修後の溶接箇所のシール性を確認するための気密試験時の点検口としても使用することができる。
【0009】
上記のオートクレーブにおいて運転中に検知孔から処理液が外部に噴出した場合は、プラント全体の操業停止に至るおそれがあるので、該検知孔における液漏れの有無をできるだけ早期かつ確実に検知できることが望ましいが、オートクレーブ内の処理液は外部に漏れると蒸発や外気温の影響により温度が低下して晶析し、上記チタンプレートの裏側の空間や検知孔を閉塞することがあった。
【0010】
上記のように、晶析物によってチタンプレートの裏側の空間や検知孔が閉塞してしまうと、液漏れの発生を見逃すおそれがあった。また、補修後の気密試験を正確に行なうことも困難になる。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内表面がライニングされた圧力容器本体の溶接箇所を覆う耐食耐摩耗材からなるプレートの裏側の空間や該溶接箇所に穿孔した検知孔を閉塞させる固形物を効率よく除去することが可能な洗浄冶具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る検知孔洗浄冶具は、内表面がライニングされた圧力容器本体の溶接箇所に穿孔した検知孔の洗浄冶具であって、前記検知孔の内径よりも細い外径を有し且つその先端部にラジアル方向に洗浄液を放出する吐出口を備えた放出パイプ部と、前記放出パイプ部のうち前記検知孔内に挿入されない非挿入部分の外側に同芯軸状に設けられることで前記放出された洗浄液を排出させる排出パイプ部とから構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内表面がライニングされた圧力容器本体の溶接箇所を覆うプレートの裏側の空間や該溶接箇所に穿孔した検知孔を効率よく洗浄することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の洗浄冶具の洗浄対象となる検知孔が穿孔されたオートクレーブ本体の溶接箇所の模式的な部分断面図である。
【
図2】本発明の実施形態の洗浄冶具の正面図である。
【
図4】
図2の洗浄冶具を用いて
図1の検知孔を洗浄するときの洗浄液の流れを示す説明図である。
【
図6】従来の洗浄法で検知孔を洗浄するときの洗浄液の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、内表面がライニングされた圧力容器本体の溶接箇所を覆うプレートの裏側の空間、及び該溶接箇所に穿孔した検知孔の洗浄時に用いる本発明に係る検知孔洗浄冶具の実施形態、及び該洗浄冶具を用いた洗浄方法について、該圧力容器がHPAL法により酸浸出処理を行なう際に使用するオートクレーブの場合を例に挙げて詳細に説明する。オートクレーブは、一般的に略円筒形の容器を横向きにした形状を有しており、その内部は仕切板により各々撹拌機を備えた複数の区画室に区分されている。
【0015】
HPAL法においては、このオートクレーブ内にニッケル酸化鉱石に水を加えて調製した鉱石スラリーが硫酸と共に装入され、更に高圧蒸気が吹き込まれることで、温度230~270℃程度、圧力3~5MPa程度の高温高圧の条件下で酸浸出処理が行なわれる。この酸浸出処理では、ニッケル酸化鉱石に含まれるニッケルやコバルト等の有価金属のみならず鉄も浸出させるため、浸出液のpHが0.1~1.0程度に維持されるように硫酸を過剰に添加する。これにより、該有価金属の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行なわれ、該有価金属を不純物成分と共に含む浸出液と、ヘマタイト等を含む浸出残渣とからなる浸出スラリーが生成される。
【0016】
上記のように、オートクレーブの内側は、腐食及び摩耗が生じやすい過酷な条件にさらされるので、オートクレーブの本体は、
図1に示すように炭素鋼からなる母材2がチタンからなる被覆材1で被覆された構造のクラッド鋼3で形成されている。また、隣接するクラッド鋼3の母材2同士を接合する溶接箇所4は、開先加工によって被覆材1が除去されるので、代わりに帯状のチタンプレート5が溶接されている。これにより、オートクレーブの本体内側の接液部を全面的にチタンで被覆することができる。
【0017】
しかしながら、
図1に示すように、チタンプレート5は容器の内側に突出して設けられているため、鉱石スラリーや浸出スラリーによって摩耗されやすく、チタンプレート5自体に穴が開いたり、チタンプレート5とクラッド鋼3の被覆材1とのシール溶接箇所が割れたりすることがあり、ここからオートクレーブ内部の浸出液が液漏れすることがある。そこで、この液漏れの発生の有無を確認するため、母材2同士の溶接箇所4には厚み方向に貫通する検知孔6が穿孔されている。
【0018】
上記の検知孔6の内径は、6~12mm程度が好ましく、約8mmがより好ましい。なお、この検知孔6は一般的なドリルで穿孔することができる。検知孔6の容器外側の出口には、後述する洗浄冶具との接合用の容器側雌ネジ部7が設けられている。この容器側雌ネジ部7は、限定するものではないが、呼び1/8インチの管用テーパーメネジを用いるのが好ましい。
【0019】
上記の検知孔6及びチタンプレート5の裏面5a側の空間を洗浄する本発明の実施形態の洗浄冶具を
図2に示す。この本発明の実施形態の洗浄冶具10は、検知孔6の内径よりも細い外径を有し且つその先端部にラジアル方向に洗浄液を放出する複数の吐出口11aを備えた放出パイプ部11と、この放出パイプ部11のうち検知孔6内に挿入されない非挿入部分の外側に同芯軸状に設けられており、上記の複数の吐出口11aから放出した洗浄液を排出させる排出パイプ部12とから構成される。
【0020】
より具体的に説明すると、洗浄冶具10の一方の構成要素である放出パイプ部11は、先端部に複数の吐出口11aが周方向に均等な間隔をあけて設けられており、この先端部とは反対側の端部に、図示しない洗浄液供給チューブとの螺合用兼連通用の螺刻された貫通部を中心軸部に有する洗浄液導入用雌ネジ部11bが設けられている。この放出パイプ部11のうち、検知孔6内に挿入されない非挿入部分と、後述する排出パイプ部12とは二重管構造になっている。
【0021】
放出パイプ部11の複数の吐出口11aの形状や個数は、限定するものではないが、例えば
図3に示すような略矩形の4個の切り欠き部を周方向に均等な間隔をあけて設けるのが好ましい。これにより、検知孔6に放出パイプ部11を挿入してその先端開口部をチタンプレート5の裏面5aで塞ぐことで、
図3の白矢印のように該放出パイプ部11の軸方向に対して垂直な四方に洗浄液を放散させることができる。その結果、チタンプレート5の裏面5a側の空間をより効率的に洗浄することが可能になる。
【0022】
洗浄冶具10のもう一方の構成要素である排出パイプ部12は、螺刻された流路を中心軸部に有する洗浄排液回収用雌ネジ部12aと、該雌ネジ部12a及び前述した容器側雌ネジ部7の両方に螺合することでこれら両雌ネジ部同士を結合すると共に、これら両雌ネジ部に連通する流路を中心軸部に有する雄ネジ部12bとが先端部に設けられている。なお、これら洗浄排液回収用雌ネジ部12a及び雄ネジ部12bをまとめて係合部と称する。この排出パイプ部12の上記先端部とは反対側の端部は、環状部材によって閉鎖されており、その直近の側部に図示しない洗浄排液抜出チューブとの螺合用兼連通用の螺刻された貫通部を中心軸部に有する洗浄排液抜出用雌ネジ部12cが設けられている。
【0023】
上記の洗浄冶具10を用いてオートクレーブ本体の検知孔6を洗浄する場合は、
図4に示すように洗浄冶具10の放出パイプ部11の挿入部分を検知孔6内に挿入すると共に、排出パイプ部12の先端部に設けられている雄ネジ部12bを検知孔6出口の容器側雌ネジ部7に螺合させる。このとき、放出パイプ部11の先端をチタンプレート5の裏面5aに当接させるのが好ましい。このため、予め検知孔6の深さを測定しておき、放出パイプ部11の挿入部分の長さがこの検知孔6の深さに一致するように仮合わせした後に洗浄排液回収用雌ネジ部12aを排出パイプ部12の先端部に溶接するのが好ましい。あるいは、洗浄排液回収用雌ネジ部12aを排出パイプ部12の先端部に溶接せずに、そのネジ込みの程度を調節自在となるようにしてもよく、これにより放出パイプ部11の挿入部分の長さを検知孔6の深さに合わせてある程度調節することが可能になる。
【0024】
次に、放出パイプ部11の洗浄液導入用雌ネジ部11bに洗浄液供給チューブ8の雄ネジ部8aを螺合させると共に、排出パイプ部12の洗浄排液抜出用雌ネジ部12cに洗浄排液抜出チューブ9の雄ネジ部9aを螺合させる。そして、洗浄液供給チューブ8における雄ネジ部8aとは反対側の端部に接続した例えば工業用水の供給源のバルブを開くことで、放出パイプ部11の先端部の吐出口11aから洗浄液を放出させる。これにより、チタンプレート5の裏面5a側の空間内の閉塞箇所等に堆積している浸出液の晶析物やスケール等の固形物に洗浄水を直接吹き付けることができるので、該固形物を効率よく除去することが可能になる。このようにして除去された固形物は、
図4及び
図5の黒矢印で示すように、洗浄水と共に排出パイプ部12及び洗浄排液抜出チューブ9を経て抜き出される。
【0025】
このように、本発明の実施形態の洗浄冶具10を用いて、放出パイプ部11をその先端部がチタンプレート5の裏面5aに当接するまで検知孔6内に挿入する工程と、放出パイプ部11の先端部とは反対側の端部から洗浄液を導入する工程とからなる洗浄方法でプレート5の裏側の空間及び検知孔6を洗浄することで、従来のように超音波振動の周波数をスイープ又は変調させながら超音波洗浄したり、あるいは複数種類の洗浄液の調製槽を複数基用意して長時間かけて洗浄したりする必要がなくなり、検知孔6内に堆積している晶析物やスケールなどの固形物を簡易かつ効率的に除去することが可能になる。
【0026】
以上、本発明の液漏れ検知孔の洗浄冶具及びこれを用いた液漏れ検知孔の洗浄方法について実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更例や代替例を含むことができる。すなわち、本発明の権利は特許請求の範囲及びその均等の範囲に及ぶものである。
【実施例0027】
炭素鋼の母材にチタンが被覆された構造の肉厚約130mmの爆着クラッド鋼の板材を複数枚継ぎ合わせて作製したオートクレーブの本体において、
図1に示すように隣接する爆着クラッド鋼3の板材同士の溶接箇所4を覆うようにして設けたチタンプレート5の裏面5a側の空間、及び該空間に連通させるべく溶接箇所4に穿孔した内径8mmの検知孔6を洗浄するため、
図2及び
図5に示す構造の洗浄冶具10を作製した。
【0028】
具体的には、放出パイプ部11には内径4mm、外径6mmの炭素鋼鋼管を使用し、そのうち検知孔6に挿入されない非挿入部分の外側に、排出パイプ部12として内径8mm、外径10mmの炭素鋼鋼管を同芯軸状に設けて二重管構造にした。この排出パイプ部12の先端部に、洗浄排液回収用雌ネジ部12aとしてNPT1/8の雌ネジを螺合させると共に、ここに雄ネジ部12bとしてNPT1/8の雄ネジを螺合させた。なお、上記の洗浄排液回収用雌ネジ部12aは排出パイプ部12に溶接しないことで、放出パイプ部11の検知孔への挿入部分の長さを130mmからプラスマイナス数mm程度調整できるようにした。
【0029】
この放出パイプ部11の先端に、吐出口11aとして幅2mm深さ4mmの4個の矩形の切り欠き部を周方向に均等な間隔をあけて設けた。そして、放出パイプ部11の挿入部分を検知孔6に挿入して上記の雄ネジ部12bを検知孔6の出口に予め設けておいたNPT1/8の容器側雌ネジ部7に螺合させた。なお、雄ネジ部12bを容器側雌ネジ部7に螺合する際はシールテープを雄ネジ部12bに巻いて液漏れが生じないようにした。
【0030】
そして、放出パイプ部11の洗浄液導入用雌ネジ部11bに洗浄液供給チューブ8の一端部の雄ネジを螺合により取り付けると共に、他端部を水道水の蛇口に取り付けた。また、排出パイプ部12の洗浄排液抜出用雌ネジ部12cに洗浄排液抜出チューブ9の一端部の雄ネジを螺合により取り付けると共に、他端部を排液溝内に垂らした。
【0031】
この状態で、上記水道水の蛇口の栓を開けることで、300~400kPaG程度の水圧を有する水道水を洗浄液として約5L/minの流量で検知孔内に導入した。その結果、洗浄排液抜出チューブ9の上記他端部から晶析物と思われる固形物が混ざった洗浄排液が排出されるのを目視にて確認することができた。この固形物の混入が目視にて認められなくなった時点で洗浄が完了したと判断した。上記の手順で3名の作業員が8時間ずつ交代することで1日当たり延べ24時間かけてオートクレーブの本体に設けられている全ての検知孔6を洗浄したところ、5日程度で済ますことができた。
【0032】
比較のため、
図6に示す方法で上記と同様のオートクレーブの本体のチタンプレートの裏面側の空間及び検知孔の洗浄を行った。すなわち、この
図6の洗浄方法は、上記の洗浄冶具10による洗浄に代えて、洗浄液供給チューブ8の雄ネジ部8aを容器側雌ネジ部7に直接螺合して洗浄を行った。この洗浄方法は、洗浄排液を検知孔6から抜き出すためにわざわざ洗浄液供給チューブ8を取り外す必要があるうえ、
図6の矢印に示すように洗浄水が一方向に流れるのみで循環しないので洗浄効率が悪く、洗浄排液に固形物が混入しなくなるまでに1箇所の検知孔6につき3~5回程度洗浄液供給チューブ8を着脱して洗浄液の導入と洗浄排液の抜き出しの作業を繰り返す必要が生じた。そのため、3名の作業員が8時間ずつ交代することで1日当たり延べ24時間かけてオートクレーブの全ての検知孔6を洗浄したところ、10日程度を要した。