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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178030
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】竜巻発生装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/24 20060101AFI20221125BHJP
   B60H 3/06 20060101ALI20221125BHJP
   F24F 7/00 20210101ALI20221125BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20221125BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20221125BHJP
   F24F 9/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B60H1/24
B60H3/06 Z
F24F7/00 E
F24F7/007 101
F24F7/06
F24F9/00 A
F24F9/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084523
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森西 洋平
(72)【発明者】
【氏名】玉野 真司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 みゆき
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
3L211
【Fターム(参考)】
3L056BG04
3L058BD06
3L211BA09
3L211BA12
3L211DA57
3L211DA73
(57)【要約】
【課題】竜巻の到達距離が従来よりも長くなるような竜巻発生装置を提供する。
【解決手段】竜巻発生装置1は、回転軸CLを中心に回転する回転部6を備え、回転部6は、回転軸CLの方向の一方側に面するガイド面641を含むガイド部64を有し、ガイド面641は、回転軸CLに対して径方向外側に向かうにつれて回転軸CLの方向の一方側に延びる形状を有するガイド傾斜面を有し、回転部6が回転することによって、ガイド傾斜面に沿って回転軸から遠ざかるように且つ回転軸CLの一方側に空気が流れることにより、ガイド面641に対して回転軸CLの一方側に竜巻が発生する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が回転軸(CL)を中心に回転する回転部(6)を備え、
前記回転部は、前記回転軸の方向の一方側に面するガイド面(641)を含むガイド部(64)を有し、
前記ガイド面は、前記回転軸に対して径方向外側に向かうにつれて前記回転軸の方向の前記一方側に延びる形状を有するガイド傾斜面を有し、
前記少なくとも一部が回転することによって、前記ガイド傾斜面に沿って前記回転軸から遠ざかるように且つ前記回転軸の前記一方側に空気が流れることにより、前記ガイド面に対して前記回転軸の前記一方側に竜巻が発生する、竜巻発生装置。
【請求項2】
開口する吸込口(62b)を介して前記吸込口に対して前記回転軸の前記一方側にある空気を吸引する吸引装置(2)を備えた、請求項1に記載の竜巻発生装置。
【請求項3】
前記少なくとも一部は前記ガイド面を含み、
前記ガイド面が前記回転軸を中心に回転することにより前記ガイド傾斜面が空気を引き摺り、その結果、前記ガイド傾斜面に沿って前記回転軸から遠ざかるように空気が流れる、請求項1または2に記載の竜巻発生装置。
【請求項4】
前記回転部の前記少なくとも一部は、前記ガイド傾斜面に対して前記回転軸の前記一方側に配置されるインナーフィン(65)を含み、
前記インナーフィンは、前記回転軸を中心に回転することで、前記ガイド傾斜面に対して前記回転軸の前記一方側にある空気を前記ガイド傾斜面に沿って前記回転軸から遠ざかるように流す、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の竜巻発生装置。
【請求項5】
前記ガイド部における、前記ガイド面とは反対側にある裏面(642)は、前記回転軸に対して径方向外側に向かうにつれて前記回転軸の前記一方側に延びる形状を有する裏面側傾斜面を有し、
前記裏面側傾斜面に沿って前記回転軸から遠ざかるように空気が流れることにより、前記裏面の外周縁から前記回転軸の前記一方側に空気が流れる、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の竜巻発生装置。
【請求項6】
前記回転部の前記少なくとも一部は、前記裏面側傾斜面に対して前記回転軸の他方側に配置されるアウターフィン(66)を備え、
前記アウターフィンは、前記回転軸を中心に回転することで、前記裏面側傾斜面に対して前記回転軸の他方側にある空気を前記裏面側傾斜面に沿って前記回転軸から遠ざかるように流し、
前記裏面側傾斜面に沿って前記回転軸から遠ざかるように空気が流れることにより、前記裏面の外周縁から前記回転軸の前記一方側に向けて、空気が流れる、請求項5に記載の竜巻発生装置。
【請求項7】
当該竜巻発生装置は、車両に搭載されるものであって、
前記吸引装置は、前記車両の車室内に空調風を吹き出す吹出口(71)から吹き出された前記空調風を前記竜巻に沿って吸引し、吸引した前記空調風を、前記車室内のうち前記吹出口への方向とは異なる位置に向けて吹き出す、請求項2に記載の竜巻発生装置。
【請求項8】
前記吹出口は、前記車室内の前側に配置され、
前記吸引装置は、前記吹出口から吹き出された前記空調風を前記竜巻に沿って吸引し、吸引した前記空調風を、前記車室内の後側または前記車室内の前記車両の幅方向の少なくとも一方側に向けて吹き出す、請求項7に記載の竜巻発生装置。
【請求項9】
当該竜巻発生装置は、車両に搭載されるものであって、
前記吸込口は、前記車両の座席に対向し、
前記吸引装置は、前記竜巻に沿って前記車室内において前記座席に着座する乗員の周囲の空気を吸引し、吸引した空気を車室外に排出する、請求項2に記載の竜巻発生装置。
【請求項10】
当該竜巻発生装置は、車両に搭載されるものであって、
前記吸込口は、前記車両の座席に対向し、
前記吸引装置は、前記竜巻に沿って前記車室内において前記座席に着座する乗員の周囲の空気を吸引し、吸引した空気を清浄化して前記車室内に排出する、請求項2に記載の竜巻発生装置。
【請求項11】
当該竜巻発生装置は、車両に搭載されるものであって、
前記吸引装置は、前記竜巻に沿って前記車室内において座席に着座する乗員の口の周囲の空気を吸引する、請求項2に記載の竜巻発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竜巻発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人工的に竜巻を発生させる竜巻発生装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の竜巻発生装置は、空気を吸い込む吸込口の周囲に円盤が形成され、円盤および円盤に取り付けられたフィンが回転することで、竜巻が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-165640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような竜巻発生装置に対して、竜巻の到達距離を伸ばすことが望ましい。本発明は、竜巻の到達距離が従来よりも長くなるような竜巻発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、
少なくとも一部が回転軸(CL)を中心に回転する回転部(6)を備え、
前記回転部は、前記回転軸の方向の一方側に面するガイド面(641)を含むガイド部(64)を有し、
前記ガイド面は、前記回転軸に対して径方向外側に向かうにつれて前記回転軸の方向の前記一方側に延びる形状を有するガイド傾斜面を有し、
前記少なくとも一部が回転することによって、前記ガイド傾斜面に沿って前記回転軸から遠ざかるように且つ前記回転軸の前記一方側に空気が流れることにより、前記ガイド面に対して前記回転軸の前記一方側に竜巻が発生する、竜巻発生装置。
【0006】
このように、回転部の上記少なくとも一部が回転し、ガイド傾斜面に沿って回転軸から遠ざかるように且つ回転軸の一方側に空気が流れることにより、竜巻が発生する。このような回転軸に対して斜めの気流により、ガイド面から回転軸の一方側に離れた位置に空気が十分に供給される。これにより、ガイド面から遠ざかった後にまた近付く強い循環流が生じる。このような強い循環流により、竜巻が強化され、ガイド面からより遠方まで竜巻が到達する。
【0007】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】竜巻発生装置の斜視図である。
図2】竜巻発生装置から吸引装置を除いた部分の、回転軸CLを含む断面図である。
図3】回転部のIII矢視図(すなわち底面図)である。
図4】竜巻発生装置の作動時の風の流れを示す図である。
図5】竜巻発生装置の作動時の風の流れを示す斜視図である。
図6】竜巻発生装置のパラメータを示す斜視図である。
図7】竜巻発生装置のパラメータを示す表である。
図8A】一例における襟部、ガイド部、インナーフィン、アウターフィンを示す断面図である。
図8B】一例における襟部、ガイド部、インナーフィンを示す底面図である。
図8C図8BのVIIIC部拡大図である。
図9A】一例における筒部61の平面図である。
図9B】一例における筒部61の回転軸CLを含む断面図である。
図10A】一例における動力伝達部42の平面図である。
図10B】一例における動力伝達部42の側面図である。
図11A】アウターフィンがない例における襟部、ガイド部の側面図である。
図11B】アウターフィンがない例における襟部、ガイド部、インナーフィンの底面図である。
図12A】実験例における竜巻形成の様子をカメラで撮影した映像である。
図12B】実験例における竜巻形成の様子をカメラで撮影した映像である。
図13】傾斜角度θとして、30°、45°、60°が採用された例の側面図である。
図14A】実験例における竜巻形成の様子をカメラで撮影した映像である。
図14B】実験例における竜巻形成の様子をカメラで撮影した映像である。
図15A】実験例における竜巻形成の様子をカメラで撮影した映像である。
図15B】実験例における竜巻形成の様子をカメラで撮影した映像である。
図16】各実験において竜巻が発生する最も小さい流量Qを示す表である。
図17】実験例において回転軸に沿った気流の速度Vzの分布を示すグラフである。
図18】実験例において竜巻内で上昇する空気の流量Qtの分布を示すグラフである。
図19A】実験例における回転軸に沿った気流の速度のヒートマップである。
図19B】実験例における回転軸に沿った気流の速度のヒートマップである。
図20A】実験例における気流の速度ベクトルの分布図である。
図20B】実験例における気流の速度ベクトルの分布図である。
図21】実験例における気流の周方向速度Vφの径方向分布を示す。
図22】実験例における気流の径方向速度Vrの径方向分布を示す。
図23A】実験例における回転軸に直交する断面内の気流の速度のヒートマップである。
図23B】実験例における回転軸に直交する断面内の気流の速度のヒートマップである。
図24A】実験例における回転軸に直交する断面内の気流の速度ベクトルの分布図である。
図24B】実験例における気流の速度ベクトルの分布図である。
図25】第2実施形態における竜巻発生装置の車両への搭載形態を示す模式図である。
図26】第3実施形態における竜巻発生装置の車両への搭載形態を示す模式図である。
図27】第4実施形態における竜巻発生装置の車両への搭載形態を示す模式図である。
図28】第5実施形態における竜巻発生装置の車両への搭載形態を示す模式図である。
図29】第6実施形態における竜巻発生装置の車両への搭載形態を示す模式図である。
図30】第7実施形態における竜巻発生装置の車両への搭載形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。図1図2に示すように、本実施形態に係る竜巻発生装置1は、吸引装置2、ダクト3、駆動部4、支持部5、回転部6を備えている。この竜巻発生装置1は、車両に搭載されている。より具体的には、車室内に搭載されている。搭載先の車両は、乗用車であってもよいし、バス等の商用車であってもよい。
【0010】
吸引装置2は、空気を吸引する装置である。例えば、吸引装置2は、吸引ポンプでもよいし吸引ファンでもよい。ダクト3は、一方側の端部が吸引装置2に接続され、他端が支持部5に接続される。
【0011】
駆動部4は、回転部6を回転させる装置であり、動力発生部41と、動力伝達部42を、有している。動力発生部41は、回転部6を回転させるための動力を発生する装置である。例えば動力発生部41は、回転部6を回転させるための回転力を発生する電動モータであってもよい。動力伝達部42は、動力発生部41に接続され、動力発生部41で発生した動力を回転部6に伝達する装置である。例えば、動力伝達部42は、上述の電動モータの出力軸と連動する歯車であってもよい。
【0012】
支持部5は、ダクト3、駆動部4、回転部6を支持する部材であり、本体部51、複数の取付部52、保持部53、および複数の軸受54を有している。
【0013】
本体部51は、無底筒形状の部材であり、その内周面は、円筒形状になっている。当該内周面に囲まれた内部空間には、回転部6の一部が挿入された状態となっている。本体部51のダクト3側端には、ダクト3の回転部6側端が固定されている。
【0014】
複数の取付部52は、本体部51に固定されると共に、竜巻発生装置1の周囲の物体(例えば、車両のボディ、車室内の装備品)に取り付けられるための構造(例えばボルト孔)を有している。取付部52が当該周囲の物体に取り付けられることで、竜巻発生装置1が車両に取り付けられた状態になる。
【0015】
保持部53は、本体部51に固定される。また、保持部53には、動力発生部41が固定される。これにより、保持部53は駆動部4を保持する。
【0016】
複数の軸受54は、本体部51の内周に取り付けられて回転部6を軸支する。これにより、回転部6の全体は、支持部5に支持されながら支持部5に対して回転軸CLを中心として回転軸CLの周りに回転可能となる。
【0017】
回転部6は、筒部61、受動部62、襟部63、ガイド部64、複数のインナーフィン65、複数のアウターフィン66を有する。
【0018】
筒部61は、無底筒形状の部材であって、一部が支持部5の本体部51の内部空間に配置される。筒部61のうち、本体部51の内部空間に配置された部分の外周面は、円筒形状を有している。そして、当該円筒形状の外周面が、軸受54によって回転可能に軸支されている。
【0019】
また、筒部61のダクト3側端部は、本体部51からダクト3側に突出すると共に、本体部51の内周面の径よりも径が大きくなっている。これにより、筒部61のダクト3側端部は、本体部51のダクト3側端部と当接し、本体部51によってダクト3側に付勢される。これにより、本体部51から筒部61が抜け落ちることが防止される。
【0020】
また、筒部61のダクト3側端部において、筒部61の内周面に囲まれる内部空間と、ダクト3の内周面に囲まれる内部空間とが、互いに連通する。なお、筒部61とダクト3との間には、筒部61とダクト3の両方に接触するガスケットが配置されていてもよい。このガスケットにより、ダクト3と筒部61のつなぎ目における空気の漏れが防止されてもよい。
【0021】
受動部62は、筒部61のダクト3とは反対側の端部に一体に固定されている。受動部62は、無底筒形状を有している。受動部62の内周に囲まれた内部空間は、筒部61の内部空間と連通している。また、受動部62の外周には、結合部62aが形成されている。
【0022】
結合部62aは、駆動部4の動力伝達部42と結合することで、動力発生部41で発生した動力が動力伝達部42を介して伝達される。例えば、動力伝達部42が歯車である場合、結合部62aは、動力伝達部42と噛み合う歯であってもよい。結合部62aに動力が伝達されることで、受動部62が回転軸CLを中心に回転軸CLの周りを回転する。このとき、回転部6の受動部62以外の部分も受動部62と一体的に回転することで、回転部6全体が回転軸CLを中心に回転軸CLの周りを回転する。受動部62は、受動部62に対してボルト等で一体的に固定されている。
【0023】
襟部63は、無底筒形状の部材である。襟部63の内周面で囲まれる内部空間には、受動部62のうち結合部62aが形成されていない部分が配置されている。受動部62のうち結合部62aが形成された部分は、襟部63よりもダクト3側に突出している。
【0024】
受動部62のダクト3とは反対側の端部は、襟部63の内部空間において、吸い込み対象の空気が存在する空間に連通する吸込口62bである。吸引装置2が作動すると、吸い込み対象の空気がこの吸込口62bから吸引され、受動部62、筒部61、ダクト3の内部空間をこの順に通り、その後吸引装置2に吸い込まれる。
【0025】
ガイド部64は、襟部63と一体に形成された板形状の部材であり、その表面は、ガイド面641と、裏面642と、これら2つの面を繋ぐ側面と、それらガイド面641、裏面642、側面に囲まれた肉部を有している。
【0026】
ガイド面641は、回転軸CLの方向の一方側に面している。一方側とは、吸入される空気の流れにおける吸込口の上流側であり、吸入対象の空気がある側である。ガイド面641は、中央部に環状の内周縁を有し、当該内周縁の全周において、襟部63のうち、回転軸CLの方向の一方側の端面と、面一に繋がっている。この内周縁は、上述の吸込口62bも囲んでいる。
【0027】
ガイド面641は、回転軸CLに対して径方向外側に向かうにつれて回転軸CLの方向の一方側に延びる形状を有するガイド傾斜面である。ガイド面641の傾斜角度は、ガイド面641の全体において概ね同じである。つまり、ガイド面641は、円錐面の一部と同様の形状を有している。なお、ガイド面641の傾斜角度は、回転軸CLに直交する平面に対する傾きであって、ガイド面641の法線が回転軸CLに平行な場合0°である。そして、ガイド面641が回転軸CLに対向する場合に、傾きは正の値をとる。
【0028】
裏面642は、回転軸CLの方向の一方側の反対側すなわち他方側に面している。裏面642は、中央部に環状の内周縁を有し、この内周縁の全周において、襟部63の側面と繋がっている。この内周縁は、上述の吸込口62bも囲んでいる。裏面642は、回転軸CLに対して径方向外側に向かうにつれて回転軸CLの方向の一方側に延びる形状を有する裏面側傾斜面である。裏面642は、ガイド面641に対して概ね平行となっている。裏面642の回転軸CLに対する傾斜角度は、裏面642の全体において概ね同じである。つまり、裏面642は、円錐面の一部と同様の形状を有している。
【0029】
複数のインナーフィン65は、ガイド面641に対して回転軸CLの方向の一方側に配置される。より具体的には、これらインナーフィン65は、ガイド面641に対して一体的に固定される。
【0030】
各インナーフィン65は、板形状の部材であり、その板面が回転軸CLを基準とする周方向に対して交差するように配置されている。また、各インナーフィン65は、ガイド面641に沿って、回転軸CLから遠ざかる方向に、延びている。より具体的には、各インナーフィン65は、その板面が当該周方向に対して直交するように、吸込口の周囲から放射状に、回転軸CLを基準とする径方向に、延びていている。各インナーフィン65は、このような形状および配置になっていることで、回転軸CLを中心に回転した際、ガイド面641に対して回転軸CLの方向の一方側にある空気をガイド面641に沿って吸込口から遠ざかるように流すよう、当該空気を付勢する。
【0031】
なお、インナーフィン65の形状は、上記のようなものに限らず、例えば特許文献1に記載されたような種々の形状を取ることができる。
【0032】
複数のアウターフィン66は、裏面642に対して回転軸CLの方向の他方側に配置される。より具体的には、これらアウターフィン66は、裏面642に対して一体的に固定される。
【0033】
各アウターフィン66は、板形状の部材であり、その板面が回転軸CLを基準とする周方向に対して交差するように配置されている。また、各アウターフィン66は、裏面642に沿って、回転軸CLから遠ざかる方向に、延びている。より具体的には、各アウターフィン66は、その板面が当該周方向に対して直交するように、吸込口の周囲から放射状に、回転軸CLを基準とする径方向に、延びていている。
【0034】
なお、アウターフィン66の形状は、上記のようなものに限られず、例えば特許文献1に記載されたような種々の形状を取ることができる。
【0035】
次に、上記のような構成の竜巻発生装置1の作動について、説明する。竜巻発生装置1の使用時には、動力発生部41および吸引装置2が始動する。これにより、動力伝達部42が動力発生部41の動力を結合部62aを介して受動部62に伝達し、その結果、図4図5に示すように、回転部6全体が回転軸CLを中心として一体に同期して同じ方向に回転する。それと共に、吸込口62bから空気が吸い込まれる。なお、図4では、インナーフィン65、アウターフィン66の図示は省略されている。
【0036】
回転部6の回転により、ガイド面641において、境界層91が、回転軸CLから遠ざかる方向に発達していく。より具体的には、ガイド面641の傾斜に沿って、回転軸CLから遠ざかる方向に、かつ回転軸CLの一方側に向かって、境界層91が発達する。この境界層91は、ガイド面641の回転に引き摺られることで回転軸CLの周りを旋回しながら、ガイド面641に沿って吸込口から遠ざかるように流れる気流92の層である。
【0037】
境界層91の発達と同時に、ガイド面641と同じ方向に回転する複数枚のインナーフィン65の作用により、ガイド面641に沿って、吸込口の周りを回転しながら回転軸CLから遠ざかる方向に、かつ回転軸CLの一方側に向かって、空気が流される。すなわち、ガイド面641付近の境界層91がより大きく発達する。
【0038】
この結果、境界層において空気が回転軸CLを中心とする径方向外側に、かつ回転軸CLに交差する方向に、排出される。これにより、ガイド面641の外周縁から更に回転軸CLに関して径方向外側かつ一方側に向けて、気流92が流れる。
【0039】
このとき、エントレインメントが発生する。すなわち、図4に示すように、排出された分の空気を補うように、境界層の下方の空間において、回転軸CLに沿ってガイド面641に近付く気流94が発生する。
【0040】
このような気流94があることに加え、ガイド面641および複数枚のインナーフィン65が回転していることで、ガイド面641の下方の空間が、回転系の流体力学に支配される。具体的には、テイラー・プラウドマンの定理に概ね従った空気の流れ場、すなわち、回転軸CL方向に概ね一様な、すなわち概ね2次元的な、流れ場が形成される。
【0041】
この流れ場においては、図4のグラフGFに示すように、空気流の速度ベクトルの回転軸CLを中心とする周方向成分すなわち周方向速度Vφは、回転軸CLからある程度の半径までの領域である中心部において、半径rの増大に比例して増大する。すなわち、剛体回転的に振る舞う。そして、この中心部のエントレインメント速度が回転軸CL方向の一方側に伝達する。なお、半径rとは、回転軸CLを中心とする円筒座標における半径rをいう。グラフGFの横軸は半径rであり、縦軸は上記周方向速度Vφである。
【0042】
このように、地衡流に相当する流れ場、すなわち、圧力勾配と回転座標系におけるコリオリ力とが釣り合った流れ場が、ガイド面641の下側、より具体的にはガイド面641から壁面Wの間に、発生する。この回転座標系は、回転部6に固定されて回転する座標系である。また、壁面Wは、吸込口に対して回転軸CLの一方側において、回転軸CLに対して交差する(例えば直交する)壁面である。
【0043】
また、吸引装置2が作動することにより、ガイド面641に対する回転軸CL方向の一方側の空気が、矢印90のように、吸込口に吸い込まれる。そして、吸い込まれた空気は、吸込口から、受動部62、ダクト3を通って、吸引装置2に吸い込まれる。
【0044】
上述のように、テイラー・プラウドマンの定理に概ね従った流れ場が存在する状況において、さらにこのような吸い込みによる流れが存在することで、気流94が強化される。その結果、図4図5に示すように、強い竜巻95が発生し、発達し、安定して持続する。このとき発生する竜巻95は、ガイド面641の外縁よりも回転軸CLに近い位置にあることが多い。
【0045】
このように、テイラー・プラウドマンの定理に概ね従った流れ場が、竜巻95の発生、発達、安定化を促進する。具体的には、地衡流に相当する流れ場があるので、竜巻95の形状が、回転軸CL方向にあまり変化しない。すなわち、吸込口から遠い場所において竜巻95が拡散して弱まってしまうことを抑制できる。
【0046】
なお、竜巻95は、吸込口から吸い込まれる空気の流れの下流側から上流側に発達していく。より具体的には吸込口またはその近傍から、吸込口に対して回転軸CL方向の一方側に向けて、竜巻95が発達していく。また、回転部6の回転数Nと竜巻95の渦の回転数とは、ほぼ同じになる。
【0047】
この際、竜巻95は、吸込口から吸い込まれる流体の流れの上流側の端部(すなわち先端部)から主に空気を吸引し、その側面からはあまり吸引しない。よって、竜巻発生装置15は、指向性のある吸引を行える。この指向性のある吸引は、空中に存在する気体および浮遊物を効率的に吸引する遠隔吸引を、可能にする。また、この指向性のある吸引は、図4図5のような壁面Wに置かれた物体も吸引する。壁面Wに竜巻95が到達するからである。
【0048】
このとき、ガイド面641に沿って回転軸CLを中心する径方向外側に流れる気流92は、回転軸CLの一方側に、回転軸CLに対して斜めに、進む。すなわち、気流92は、ガイド面641に沿って回転軸CLから遠ざかるように且つ回転軸CLの一方側に流れる。この斜めの気流92により、ガイド面641から回転軸CLの一方側に離れた位置の壁面W付近に空気が十分に供給され、気流94が強い循環流となる。この循環流は、回転軸CLに沿ってガイド面641に近付き、その後ガイド面641に沿って壁面Wに近づき、更にその後壁面Wに沿って回転軸CLに近付く。この循環流は、回転軸CLを中心とする周方向にも旋回する流れである。このような循環流である気流94と上述のエントレインメントとが強め合うことで、更に竜巻95が強化され、吸込口からより遠方まで気流94および竜巻95が到達する。
【0049】
竜巻95に対して回転軸CLを中心とする径方向外側における気流94において、旋回成分と上昇成分の比が大きいほど、竜巻95がより強化される。ガイド面641が、回転軸CLに対して径方向外側に向かうにつれて回転軸CLの一方側に延びる形状を有していることで、上記のように、気流94が吸込口に対してより遠方に到達し、気流94旋回成分と上昇成分の比が増大する。そしてその結果、竜巻95が強化され、吸込口に対してより遠方まで到達する。
【0050】
また、回転部6の回転により、裏面642の傾斜に沿って、回転軸CLから遠ざかる方向に、かつ回転軸CLの一方側に向かう、気流96が発生する。この気流96は、裏面642の回転に引き摺られることで、回転軸CLの周りを旋回しながら、裏面642に吸込口から遠ざかるように流れる。この気流92は更に、裏面642の外周縁から、回転軸CLに関する径方向外側かつ一方側に向けて、流れる。このような気流96が発生するのは、ガイド面641の内側において発生しガイド面641の外周縁から回転軸CLの一方側に向かって流れる気流92によって、裏面642における空気が誘引されるからである。
【0051】
このような気流92、96が互いに強め合うことで、ガイド面641の傾斜および裏面642の傾斜に沿った回転軸CLに関する径方向外側かつ一方側の流れが強化される。それにより、気流92、96の回転軸CLに関する径方向内側および外側周囲に、気流92、96と同様に流れる随伴流である気流93が発生する。その結果、旋回流かつ循環流である気流94が、吸込口に対してより遠方まで伝達し、ひいては、竜巻95が強化され、竜巻95が吸込口に対してより遠方まで到達する。
【0052】
また、ガイド面641におけるインナーフィン65が回転することで、ガイド面641における気流92がより強化され、ひいては、竜巻95が強化され、竜巻95が吸込口に対して更に遠方まで到達する。また、裏面642に配置されるアウターフィン66が回転することで、裏面642における気流96がより強化され、ひいては、竜巻95が強化され、竜巻95が吸込口に対して更に遠方まで到達する。
【0053】
また、回転軸CLは、回転部6における吸込口からダクト3側の端部までの内部空間を貫く。このようになっていることで、吸込口の回転時における回転部6の重心の移動量が低減される。すなわち、回転部6のぶれが抑制される。したがって、竜巻発生装置1の安定的な作動が実現し、ひいては、回転部6の回転数を高くすることができる。
【0054】
以下、このような竜巻発生装置1の複数の例について、実験結果を示す。なお、この実験結果の範囲内でのみ竜巻95の強化が実現することを意味するものではなく、実験結果として得られていない範囲においても、竜巻95の強化が実現可能である。なお、この実験においては、吸引装置2は、特許文献1における吸引装置、遠心分離機、配管、エアフロメータから構成されていてもよい。
【0055】
図6に、実験で用いられたパラメータの範囲を示す。また、図7に、各パラメータの特徴を示す。Qは、吸引装置2の吸引力によって吸込口からダクト3に吸引される空気の流量である。また、dは、吸込口62bの直径である。なお、この実験においては吸込口62bは円形となっているが、円形でない形態を排除するものではない。Nは、回転部6の回転数である。
【0056】
Dは、ガイド部64の外周縁の直径である。なお、この実験においてはガイド部64bの外周縁は円形であるが、他の例として円形でない形態があってもよい。θはガイド面641および裏面642の傾斜角度である。なお、この実験において、ガイド面641の傾斜角度と裏面642の傾斜角度は同じであるが、他の例として同じでない形態があってもよい。
【0057】
壁距離Hは、ガイド部64の外周縁から壁面Wまでの回転軸CLに沿った距離である。なお、この実験においては、回転軸CLは鉛直方向に平行で、壁面Wは水平面に平行であるが、他の例としてそうでない形態があってもよい。
【0058】
フィン高さHfは、インナーフィン65のガイド面641の法線方向における寸法であり、アウターフィン66の裏面642の法線方向における寸法である。なお、この実験において、インナーフィン65、アウターフィン66は、同形状であるが、そうでない例があってもよい。
【0059】
また、この実験において、インナーフィン65の数は6個、アウターフィン66の数は6個であるが、そうでない例があってもよい。また、この実験において、回転軸CLに関する周方向のインナーフィン65の位置とアウターフィン66の位置は一致するが、そうでない例があってもよい。また、この実験において、インナーフィン65、アウターフィン66は、回転軸CLを中心として放射状に配置されているが、そうでない例があってもよい。
【0060】
撮影高さHcは、実験において竜巻を撮影するカメラのレンズの、回転軸CLまでの距離である。なお、この実験においては、カメラの光軸方向は、回転軸CLに90°に交わる。
【0061】
図8A図8B図8Cに、実験で用いた襟部63、ガイド部64、インナーフィン65、アウターフィン66の一例を示す。これらの図における寸法は、ミリ単位で表されている。この例では、傾斜角度θが45°となっている。また、インナーフィン65の板厚は、回転軸CLから遠ざかるほど増大するが、他の例としてそのようになっていない形態があってもよい。
【0062】
また、図9A図9Bに、実験で用いられた筒部61、受動部62の構成例を示す。この例では、結合部62aを構成する歯の数は48個である。なお、他の例として、図9A図9Bに示すような形態以外の形態があってもよい。
【0063】
また、図10A図10Bに、実験で用いられた動力伝達部42の構成を示す。この例では、動力伝達部42を構成する歯車の歯の数は48個である。なお、他の例として、図10A図10Bに示すような形態以外の形態があってもよい。
【0064】
また、実験では、図8A図8B図8C図9A図9B図10A図10Bのような実験例(以下、実験例Aという)に加え、図11A図11Bに示すようにアウターフィン66を取り除いただけの実験例(以下、実験例Bという)も使用された。実験例A、Bでは、回転数Nは550rpmが採用されている。
【0065】
図12A図12Bは、それぞれ、実験例Aと実験例Bにおける竜巻形成の様子をカメラで撮影した映像である。画像の上側に回転部6があり、下側に壁面Wがある。なお、各実験においては、空気の流れを可視化するために、回転部6と壁面Wの間にドライアイスミストが散布されている。
【0066】
図12Aに示すように、実験例Aでは、安定した強い竜巻が発生している。図12Bに示すように、実験例Bでは、壁面Wまで旋回流が到達していない。このように、アウターフィン66があることで、裏面642に沿って回転軸CLから離れる空気の流れが強化され、竜巻発生に寄与する。
【0067】
なお、実験例Bでは竜巻が発生していない。しかし、アウターフィン66が無い場合であっても、裏面642の表面がアウターフィン66と同様の機能を果たすことで、他のパラメータの値(例えば、より高い回転数N、より短い壁距離H)によっては、竜巻が発生する場合もある。
【0068】
また、裏面642に沿って回転軸CLから離れる空気の流れがなかったとしても、他のパラメータの値(例えば、より高い回転数N、より短い壁距離H)によっては、竜巻が発生する場合もある。なお、実験例A、Bにおいては、壁距離Hは500mmとなっている。実験例Aにおいては、このような遠距離にまで竜巻が到達することができる。
【0069】
また、図13に示すように、傾斜角度θとして、30°、45°、60°等が、実験において用いられている。例えば、図14A図14Bの実験例においては、H=500mm、D=250mm、d=16mm、Q=55m/h、Hf=16mm、N=300rpmが採用され、傾斜角度θのみが異なっている。図14Aの実験例では、θ=45°であり、図14Bの実験例では、θ=60°である。
【0070】
図14Aの実験例では、旋回流が壁面Wまで到達せず、竜巻が発生しなかった。図14Bの実験例では、旋回流が壁面Wまで到達し、竜巻が発生した。したがって、θが大きい方が、竜巻発生に適している。なお、θ以外のパラメータは、θ=45°と60°の一方で竜巻が発生し他方で竜巻が発生しないよう、意図的に調整されたものである。したがって、パラメータによっては、θ=45°でも竜巻は発生する。
【0071】
また例えば、図15A図15Bの実験例においては、H=500mm、D=250mm、d=32mm、Q=100m/h、Hf=32mm、N=550rpmが採用され、傾斜角度θのみが異なっている。図15Aの実験例では、θ=30°であり、図15Bの実験例では、θ=45°である。
【0072】
図15Aの実験例では、旋回流が壁面Wまで到達せず、竜巻が発生しなかった。図15Bの実験例では、旋回流が壁面Wまで到達し、竜巻が発生した。したがって、θが大きい方が、竜巻発生に適している。なお、θ以外のパラメータは、θ=30°と45°の一方で竜巻が発生し他方で竜巻が発生しないよう、意図的に調整されたものである。したがって、パラメータによっては、θ=30°でも竜巻は発生し得る。
【0073】
なお、図15Aの実験例における襟部63、ガイド部64の回転軸CL方向の長さは、64mmである。また、図14A図15Bの実験例における襟部63、ガイド部64の回転軸CL方向の長さは、100mmである。また、図14Bの実験例における襟部63、ガイド部64の回転軸CL方向の長さは、167mmである。
【0074】
また、H=500mm、d=32mm、θ=45°、60°、Hf=16mm、32mmで、実験が行われた。この実験においては、回転数Nについては、200rpmから550rpmまで50rpm刻みで設定され、各回転数で竜巻が発生する最も小さい流量Qが計測された。図16は、その結果を示す表である。例えば、H=500mm、d=32mm、θ=45°、Hf=16mm、N=450rpmの実験においては、竜巻が発生する最も小さいQは15m/hである。
【0075】
図16の表中、ハイフンが付された実験例では、旋回流が発生しないか、あるいは漏斗状の旋回流が確認され、竜巻の発生は確認されなかった。0が付された実験例では、Qがゼロとなる場合でも、竜巻が発生した。これは、吸引装置2が非作動でも、ガイド面641の表面付近で回転軸CLから遠ざかる強い気流92、93が発生した結果、吸込口62b付近で負圧が発生し、その結果、上昇気流が発生し、その上昇気流と旋回流の作用により、竜巻が発生したと考えられる。
【0076】
また、図17に、H=500mm、N=400rpm、D=250mm、d=32mm、Q=100m/h、Hf=32mmの実験例において、ガイド面641と壁面Wの間の複数の位置における回転軸CLに沿った気流の速度Vzがプロットされている。これら速度Vzは、上記パラメータにおいて目視で渦芯を確認できた175ペアの画像データを基に算出されている。
【0077】
図17において、横軸は、竜巻の渦芯からの距離rであり、縦軸は、空気の流速ベクトルの回転軸CLに平行な方向の成分すなわち速度Vzであり、壁面Wから遠ざかる側が正の向きである。また、zは、回転軸CLに沿った壁面Wからの距離である。速度Vzは、粒子画像流速計測法によって計測されている。この図に示す通り、回転軸CLに沿った壁面Wからの距離zが増加するにつれて、速度Vzが増加している。これにより、竜巻による上昇流が確認される。
【0078】
また、図18に、H=500mm、N=400rpm、D=250mm、d=32mm、Q=100m/h、Hf=32mmの実験例において、ガイド面641と壁面Wの間の複数の位置における竜巻内で上昇する空気の流量Qtがプロットされる。これら流量Qtは、上記パラメータにおいて目視で渦芯を確認できた175ペアの画像データを基に算出されている。図18において、横軸は流量Qtであり、縦軸は、回転軸CLに沿った壁面Wからの距離zである。この図に示されるように、竜巻内の空気の流量Qtは、zが増大するほど大きくなる。これにより、竜巻の遠隔吸引性能が確認できる。
【0079】
図19Aに、H=500mm、N=400rpm、D=250mm、d=32mm、Q=100m/h、Hf=32mmの実験例における、回転軸CLに沿った気流の速度Vz(図中ではνと表示)のヒートマップを示す。図19Bは、回転数N=0とする以外、図19Aと同じ条件における、速度Vzのヒートマップである。図19A図19Bでは、横軸xは回転軸CLの位置をゼロとする回転軸CLに直交する方向の位置、縦軸zは回転軸CLに沿った壁面Wからの距離である。
【0080】
また、図20Aに、図19Aと同じ実験例における気流のx方向成分とz方向成分からなる速度ベクトルの分布を示す。図20Bは、回転数N=0とする以外、図20Aと同じ条件における、気流のx方向成分とz方向成分からなる速度ベクトルの分布である。
【0081】
図19A図19B図20A図20Bからわかるように、回転数Nがゼロである場合は、吸込口62bがその周囲から一様に吸引を行っているため、吸込流れが吸込口62bの近傍に限定され、遠方まで到達しない。それに比べ、回転数Nがゼロでない場合は、竜巻の特性により吸い込み流れが下方まで到達する。そして、高い速度の領域は、回転軸CL付近に集中する。
【0082】
また、図21に、H=500mm、D=250mm、d=32mm、Q=100m/h、Hf=32mm、Hc=50mm、N=400rpm、450rpm、500rpm、550rpmの実験例について、気流の周方向速度Vφの径方向分布を示す。周方向、径方向は、竜巻の渦芯を基準とする方向である。横軸は径方向位置rであり、縦軸は周方向速度Vφである。各所における周方向速度Vφは、15000ペアの画像データを基に計算、解析されている。この図に示すように、回転数Nが大きいほど、旋回流が強化される。
【0083】
また図22に、図21と同じ実験例について、気流の径方向速度Vrの径方向分布を示す。横軸は径方向位置rであり、縦軸は周方向速度Vφである。各所における径方向速度Vrは、15000ペアの画像データを基に計算、解析されている。Vrが負の値であるということは、空気が竜巻中心へ流入する方向へ流れていることを意味する。図22に示すように、回転数Nが大きいほど、径方向速度Vrの最小値の絶対値が大きい。すなわち、回転数Nが大きいほど、周囲からより多くの空気が竜巻に吸引されている。
【0084】
図23Aに、H=500mm、D=250mm、d=32mm、Q=100m/h、Hf=32mm、Hc=250mmの実験例における、回転軸CLに直交する断面内の気流の速度νのヒートマップを示す。図23Bは、回転数N=0とする以外、図23Aと同じ条件における、回転軸CLに直交する断面内の気流の速度νのヒートマップである。図23A図23Bでは、横軸x、縦軸yは、回転軸CLに直交する断面における直交座標位置を示し、x=0、y=0の位置が回転軸CLの位置に該当する。
【0085】
また、図24Aに、図23Aと同じ実験例における気流のx方向成分とy方向成分からなる速度ベクトルの分布を示す。図24Bは、回転数N=0とする以外、図24Aと同じ条件における、気流のx方向成分とy方向成分からなる速度ベクトルの分布である。
【0086】
図23A図23B図24A図24Bからわかるように、回転数Nがゼロである場合は、旋回流が確認できない。それに比べ、回転数Nがゼロでない場合は、竜巻の渦芯付近に強い旋回流が確認された。
【0087】
以上説明した通り、回転軸CLを中心に回転する回転部6のガイド部64は、回転軸CLの方向の一方側に面するガイド面641を有する。そして、ガイド面641は、回転軸CLに対して径方向外側に向かうにつれて回転軸CLの方向の一方側に延びる形状を有するガイド傾斜面となっている。そして、当該回転部6が回転することによって、ガイド傾斜面に沿って回転軸CLから遠ざかるように且つ回転軸CLの一方側に空気が流れることにより、ガイド面641に対して回転軸CLの当該一方側に竜巻が発生する。
【0088】
このように、回転部6が回転し、ガイド傾斜面に沿って回転軸CLから遠ざかるように且つ回転軸CLの一方側に空気が流れることにより、竜巻が発生する。このような回転軸CLに対して斜めの気流により、ガイド面641から回転軸CLの一方側に離れた位置に空気が十分に供給される。これにより、ガイド面641から遠ざかった後にまた近付く強い循環流が生じる。このような強い循環流により、竜巻が強化され、ガイド面からより遠方まで竜巻が到達する。すなわち、竜巻の到達距離が伸びる。
【0089】
また、吸引装置2は、開口する吸込口62bを介して吸込口62bに対して回転軸CLの当該一方側にある空気を吸引する。このようになっていることで、竜巻の到達距離がより長くなり、かつ、竜巻が竜巻周囲の物(例えば埃、空気)を吸引することができる。
【0090】
また、ガイド面641が回転軸CLを中心に回転することによりガイド傾斜面が空気を引き摺り、その結果、ガイド傾斜面に沿って回転軸CLから遠ざかるように空気が流れる。このように、ガイド面641が回転することで、そうでない場合に比べ、竜巻の到達距離がより長くなる。
【0091】
また、インナーフィン65は、回転軸CLを中心に回転することで、ガイド傾斜面に対して回転軸CLの一方側にある空気をガイド傾斜面に沿って回転軸CLから遠ざかるように流す。このように、回転するインナーフィン65が設けられることで、そうでない場合に比べ、竜巻の到達距離がより長くなる。
【0092】
また、インナーフィン65における裏面642は、回転軸CLに対して径方向外側に向かうにつれて回転軸の一方側に延びる形状を有する裏面側傾斜面である。そして、裏面側傾斜面に沿って回転軸CLから遠ざかるように空気が流れることにより、裏面642の外周縁から回転軸CLの一方側に空気が流れる。このようになっていることで、循環流が強化され、ひいては、竜巻の到達距離がより長くなる。
【0093】
また、アウターフィン66は、回転軸CLを中心に回転することで、裏面側傾斜面に対して回転軸の他方側にある空気を裏面側傾斜面に沿って回転軸から遠ざかるように流す。そして、裏面側傾斜面に沿って回転軸CLから遠ざかるように空気が流れることにより、裏面642の外周縁から回転軸CLの当該一方側に向けて、空気が流れる。このようになっていることで、循環流が強化され、ひいては、竜巻の到達距離がより長くなる。
【0094】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について、図25を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態に係る竜巻発生装置1の車両への搭載形態の一例を示すものである。本実施形態の竜巻発生装置1の構成は、車両への搭載形態と、吸引装置2の構成以外は、第1実施形態と同じである。
【0095】
本実施形態の竜巻発生装置1は、車両の車室内の天井部等に配置され、車載用の空調装置70から吹き出された空調風を吸引し、車室内の車両前後方向の後側等に吹き出すように構成されている。
【0096】
空調装置70は、例えば車両のダッシュボード内に配置され、車室内または車室外から取り込んだ空気に対して加熱、冷却、除湿のうち1つまたは複数を行い、その結果得られた空調風を車室内に吹き出す装置である。空調装置70は、空調風を、ダッシュボード等に配置された吹出口71から、車室内に吹き出す。吹出口71は、車両のウインドシールドに対向するデフロスタ吹出口であってもよいし、車両の運転席または助手席に対向するフェイス吹出口であってもよい。吹出口71は、車室内における車両前後方向中央よりも前側、より具体的には、車両の前席よりも車両前後方向前側に配置されている。
【0097】
竜巻発生装置1は、その吸込口62bが吹出口71に対向すると共に、回転軸CLが吹出口71を貫くような姿勢で、車室内に配置されている。また、吹出口71から空調風が吹き出される方向は、回転軸CLにほぼ平行である。ほぼ平行であるとは、回転軸CLに対して成す角が例えば10°以内をいう。吹出口71から空調風が吹き出される方向は、回転軸CLにほぼ平行であるので、竜巻95の吸引方向(すなわち、竜巻95の伸びる方向)ともほぼ平行である。吸込口62bから吹出口71までの距離は、500mm程度(より具体的には、例えば、450mm以上550mm未満)であるが、それに限られない。
【0098】
また、竜巻発生装置1のダクト3は、吸込口62b側とは反対側の端部が、吸引装置2に接続されている。吸引装置2は、車室内の天井等に取り付けられ、ダクト3に接続する空気導入口21と、当該空気導入口21から導入した空気を車室内よりも車両前後方向の後側に排出するための排出口22と、不図示の吸引機構を有している。排出口22は、車両の前後方向の後方側かつ車両の天地方向の下側に向けて開口している。
【0099】
吸引機構は、空気導入口21から空気を吸引し、当該吸引した空気を排出口22から車室内に吹き出す機構である。吸引機構は、例えばファンであってもよいし、ポンプであってもよい。
【0100】
以下、上記のように構成された竜巻発生装置1の作動について説明する。空調装置70が作動して吹出口71から車室内に空調風が吹き出され続けているときに、竜巻発生装置1が作動したとする。
【0101】
すると、第1実施形態で説明した通りに竜巻発生装置1が作動することにより、吸込口62bから回転軸CLに沿って伸びる竜巻95が発生する。そして、その竜巻95が吹出口71またはその近傍まで到達する。そして、竜巻発生装置1の吸引装置2が作動することにより、吹出口71から出た直後の空調風がこの竜巻95に沿って吸込口62bに吸引される。このように、吹出口71から出た直後で車室内と温度交換をしていない空調風が、竜巻95によって吸引される。そして吸引された空調風は、吸込口62bからダクト3を通り、更に空気導入口21から吸引装置2内に入り、更に排出口22から再度車室内に吹き出される。
【0102】
排出口22から吹き出された空調風は、矢印2aのように、排出口22に対して車両前後方向の後側かつ車両の天地方向下側に向けて流れる。これにより、排出口22から吹き出された空調風は、後席に向けて流れる。
【0103】
以上の通り、竜巻発生装置1の吸込口62bは、車両の車室内に空調風を吹き出す吹出口71に対向する。そして、吸引装置2は、吹出口71から吹き出された空調風を竜巻95に沿って吸引し、吸引した空調風を、車室内のうち吹出口71への方向とは異なる位置に向けて(すなわち、後席へ向けて)に吹き出す。
【0104】
このようになっていることの技術的意義について以下説明する。例えば、本実施形態のように、空調装置70から吹き出される空調風が車室内の前席よりも前にある吹出口(例えば吹出口71)からしか吹き出されない場合、車両の前後方向の中央よりも後方側の後部座席への空調風の到達性が悪くなる。ひいては、車室内における温度、湿度等の空調の効き度合いに偏りが生じてしまう。また例えば、車両の窓からの日射負荷により、車両の幅方向における温度にも偏りが生じてしまう。つまり、吹出口71から吹き出される空調風による空調の効き度合いが、位置によって大きく異なってしまう場合がある。
【0105】
このような偏りをなくすため天井サーキュレータなどを搭載した車両により後部座席の快適感を向上することが、例えば特開2017-213920に記載されている。しかし、このような技術では、天井付近の空気を後方へ送るに過ぎないため、空調の効き度合いの偏りを十分無くすほど十分に空調風を送ることができない。
【0106】
そこで、本実施形態のように、吹出口71から吹き出された空調風が竜巻95に沿って吸引された後に吹出口71への方向とは異なる位置(例えば後席)に向けて吹き出されることで、より積極的に空調風の偏りを軽減させることができる。したがって、車室内における空調の効き度合いの偏りを効果的に低減できる。
【0107】
また、吹出口71から吹き出された直後の空気が竜巻95によって吸い込まれるため、快適性が向上する。また、吹出口71から空調風が吹き出される方向が回転軸CLにほぼ平行であるから、竜巻95の到達距離が向上する。
【0108】
また、吹出口71は、車室内における車両前後方向中央よりも前側に配置される。そして吸引装置2は、吹出口71から吹き出された空調風を竜巻95に沿って吸引し、吸引した空調風を、車室内における車両前後方向の中央よりも後側に向けて吹き出す。このようになっていることで、吹出口71が車室内の前側にあることが原因で車室内の前後に発生する空調の効きの偏りを軽減または解消することができる。ひいては、乗員の快適感が向上する。
【0109】
また、吸引装置2は、吹出口71から吹き出された空調風を竜巻95に沿って吸引し、吸引した空調風を、矢印2b、2cに示すように、車室内における車両幅方向の左側と右側のうち一方または両方に向けて吹き出してもよい。このようにすることで、日射による車室内の空調の効きの偏りを軽減することができる。なお、吸引装置2が空調風を吹き出す向きは、車両の乗員によって手動で調整可能であってもよい。
【0110】
このように、本実施形態における吸引装置2は、サーキュレータとして機能する。あるいは、吸引装置2は、サーキュレータとして機能すると共に、竜巻95の流れに沿って空気導入口21から導入した空調風を清浄化する空気清浄機として機能してもよい。吸引装置2が空調風を清浄化する手法としては、活性炭、殺菌作用のある光触媒等を有して空調風の悪臭を除去する手法を採用してもよいし、フィルタを有して空調風に含まれる埃を除去する手法を採用してもよい。
【0111】
また、本実施形態において第1実施形態と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。例えば、本実施形態の竜巻発生装置1は、第1実施形態と同様、吸込口62bから遠方まで竜巻95を到達させることができる。竜巻発生装置1を車両に搭載する場合も、例えば吸込口62bからより遠くの位置(例えば、500mm以上離れた位置)まで竜巻95を到達させることが望ましい。そして上述の通り、本実施形態の竜巻発生装置1は、それを実現可能な構成となっている。
【0112】
(第2実施形態の変形例1)
上記第2実施形態では、竜巻発生装置1は車室内の天井に配置されているが、必ずしもこのようになっていなくてもよい。例えば竜巻発生装置1は、車体のうち、車両幅方向一方側の前席用のサイド窓と後席用の当該一方側のサイド窓の間に配置されるピラーに取り付けられてもよい。その場合、吹出口71は、ダッシュボードのうち車両幅方向の当該一方側の端にあるフェイス吹出口であってもよい。この場合、吸引装置2は、吹出口71から吹き出された空調風を竜巻95の流れに沿って吸引し、吸引した空調風を後席に向けて吹き出す。
【0113】
(第2実施形態の変形例2)
上記第2実施形態では、竜巻発生装置1の吸込口62bは、車両の車室内に空調風を吹き出す吹出口71に対向し、回転軸CLが吹出口71を貫く。また、吹出口71から空調風が吹き出される方向が回転軸CLにほぼ平行である。しかし、必ずしもこれらのようになっていなくても、第2実施形態と類似の効果を得る構成は可能である。
【0114】
例えば、吹出口71が車両天地方向に対して直交する方向(以下、車両水平方向という)に対向し、当該車両水平方向に空調風を吹き出す例について説明する。この例において、竜巻発生装置1の吸込口62bは吹出口71に対向せず、回転軸CLは吹出口71を貫かない。したがって、吹出口71から空調風が吹き出される方向が回転軸CLにほぼ平行であるということもない。
【0115】
しかしこの例においても、吹出口71から車両水平方向に吹き出した空調風が更に拡散して到達した拡散領域に、吸込口62bが対向し、回転軸CLが当該拡散領域を貫く場合がある。この拡散領域は、例えば吹出口71に対して車両天地方向上側であってもよいし、下側であってもよい。この場合、当該拡散領域に竜巻95が到達し、当該拡散領域に到達した空調風が竜巻95に沿って吸込口62bに吸い込まれる。
【0116】
このような例では、吹出口71から吹き出されて拡散領域にある空調風が竜巻95に沿って吸引された後に吹出口71への方向とは異なる位置(例えば後席)に向けて吹き出される。この場合も、第2実施形態と同様に、より積極的に空調風の偏りを軽減させることができる。したがって、車室内における空調の効き度合いの偏りを効果的に低減できる。
【0117】
(第3実施形態)
次に第3実施形態について、図26を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態に係る竜巻発生装置1の車両への搭載形態の一例を示すものである。
【0118】
本実施形態に係る車両には2個の竜巻発生装置1が搭載されている。そして、これら2つの竜巻発生装置1は、同じ吸引装置2、ダクト3、駆動部4を共有している。それ以外の各竜巻発生装置1の構成は、車室内への配置形態を除いて、第1実施形態と同じである。
【0119】
一方の竜巻発生装置1の回転部6は、車両の対応する前席(例えば運転席、助手席)の車両天地方向上側に配置され、その吸込口62bが、当該前席のシートクッションの座面81に対向し、その回転軸CLが、当該座面81を貫いている。他方の竜巻発生装置1の回転部6は、車両の対応する後席の車両天地方向上側に配置され、その吸込口62bが、当該前席のシートクッションの座面82に対向し、その回転軸CLが、当該座面82を貫いている。本実施形態において、各竜巻発生装置1の車両に対する位置および姿勢は、固定されている。
【0120】
したがって、各竜巻発生装置1について、当該竜巻発生装置1が作動すると、当該回転軸CLに沿って、対応する座席に着座する乗員の周囲に、竜巻95が発生する。そして、当該竜巻発生装置1の吸引装置2の吸引作用により、この竜巻95の流れに沿って、当該乗員の周囲の空気が当該吸込口62bに向かって流れ、吸込口62bに吸い込まれる。
【0121】
なお、当該座席のシートクッションの車体に対する位置すなわちシートポジションは調整によって変動してもよい。その場合、当該座席が使用可能な状態となるシートポジションの範囲の一部のみにおいて、吸込口62bが対応する座面81、82に対向し回転軸CLが対応する座面81、82を貫いてもよい。あるいは、当該座席が使用可能な状態となるシートポジションの範囲の全部において、吸込口62bが対応する座面81、82に対向し回転軸CLが対応する座面81、82を貫いてもよい。
【0122】
2つの竜巻発生装置1に共有されるダクト3は、車両の天板と車室内の天井トリムの間に配置され、更に車体のうち後方窓と後席窓の間のピラーおよび車両後部の荷室を通って排気口83から車室外に連通している。このダクト3は、両方の竜巻発生装置1の吸込口62bに連通する。そして、不図示の吸引装置2は、このダクト3に配置され、各竜巻発生装置1の吸込口62bから空気を吸引し、吸引した空気を排気口83から車室外に排出する。なお、ダクト3の配置は、このようなものに限られず、各吸込口62bおよび車両の外部に連通していれば、他の配置であってもよい。
【0123】
以下、このような2つの竜巻発生装置1の作動について説明する。各竜巻発生装置1が作動すると、第1実施形態と同様の作用で、対応する回転軸CLに沿って竜巻95が発生する。この竜巻95は、対応する座席に着座する乗員の周囲に発生する。そして、吸引装置2によって各吸込口62bから空気が吸入されることにより、竜巻95の流れに沿って、当該乗員の周囲の空気が、吸込口62bに吸い込まれ、更にダクト3を通り、排気口83から車室外に排出される。
【0124】
以上のように、各吸込口62bは、車両の座席に対向する。そして吸引装置2は、各竜巻発生装置1により発生した竜巻95に沿って車室内において対応する座席に着座する乗員の周囲の空気を吸引し、吸引した空気を車室外に排出する。
【0125】
以下、このようになっていることの技術的意義について説明する。車室内を喚起するため、車両の窓を開けたりエアコンを外気モードにしたりすることが従来知られている。しかし、このような方法では、車室内全体の空気が入れ替わるため、車室内を最適な温度にするために空調のエネルギーを多く消費してしまう。
【0126】
そこで、本実施形態のように、換気を必要とする部位(すなわち、臭いの発生源となり易い乗員の周辺)を狙って吸引し、外部へ排出することにより、換気する空気量を減らし、不図示の空調装置による換気のためのエネルギー消費を低減させることができる。
【0127】
また、本実施形態において第1実施形態と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。例えば、本実施形態の竜巻発生装置1は、第1実施形態と同様、吸込口62bから遠方まで竜巻95を到達させることができる。竜巻発生装置1を車両に搭載する場合も、例えば吸込口62bからより遠くの位置(例えば、500mm以上離れた位置)まで竜巻95を到達させることが望ましい。そして上述の通り、本実施形態の竜巻発生装置1は、それを実現可能な構成となっている。
【0128】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図27を用いて説明する。本実施形態は、第3実施形態に対して、ダクト3の構成を変更し、さらに、空気清浄機85を追加したものである。他の構成は、第3実施形態と同じである。
【0129】
より具体的には、本実施形態のダクト3は、第3実施形態のダクト3に対して、後席に対応する竜巻発生装置1の吸込口62bと排気口83の間において分岐している点が、異なる。ダクト3のうち分岐した先の部分の端部84は、空気清浄機85に連通している。また、ダクト3は、この分岐箇所において、切替ドア86を有している。
【0130】
空気清浄機85は、ダクト3の端部84から当該空気清浄機85内に流入する空気を清浄化して車室内に排出する装置である。空気を清浄化する手法としては、活性炭、殺菌作用のある光触媒等を有して空調風の悪臭を除去する手法を採用してもよいし、フィルタを有して空調風に含まれる埃を除去する手法を採用してもよい。
【0131】
切替ドア86は、ダクト3において、上記分岐箇所に配置される可動部材である。切替ドア86は、第1位置と第2位置に切り替え可能となっている。第1位置では、切替ドア86は、各竜巻発生装置1の吸込口62bに連通する箇所を、排気口83と連通させて端部84から遮断する。第2位置では、切替ドア86は、各竜巻発生装置1の吸込口62bに連通する箇所を、排気口83から遮断して端部84と連通させる。
【0132】
切替ドア86の第1位置と第2位置の切り替えは、乗員が手動で操作することによって実現してもよいし、切替ドア86を駆動する不図示のモータを不図示の制御装置が制御することで実現してもよい。後者の場合、制御装置は、乗員のスイッチ操作に従ってモータを制御して第1位置と第2位置を切り替えてもよいし、不図示のセンサ(例えば湿度センサ)からの信号に基づいてモータを制御して第1位置と第2位置を切り替えてもよい。また、第1位置と第2位置の間の中間位置が実現してもよい。
【0133】
このようになっていることで、切替ドア86が第1位置にある場合は、第3実施形態と同様の作動および効果が実現する。
【0134】
また、切替ドア86が第2位置または中間位置にある場合は、各吸込口62bからダクト3に入った空気は、端部84から空気清浄機85に流入し、空気清浄機85で浄化された後に、車室内に戻る。このようになっていても、浄化を必要とする部位(すなわち、臭いの発生源となり易い乗員の周辺)を狙って吸引し、清浄化することにより、換気する空気量を減らし、不図示の空調装置による換気のためのエネルギー消費を低減させることができる。また、第1-第3実施形態と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。
【0135】
また、本実施形態において第1実施形態と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。例えば、本実施形態の竜巻発生装置1は、第1実施形態と同様、吸込口62bから遠方まで竜巻95を到達させることができる。竜巻発生装置1を車両に搭載する場合も、例えば吸込口62bからより遠くの位置(例えば、500mm以上離れた位置)まで竜巻95を到達させることが望ましい。そして上述の通り、本実施形態の竜巻発生装置1は、それを実現可能な構成となっている。
【0136】
(第3、第4実施形態の変形例A)
ここで、第3、第4実施形態の変形例Aについて説明する。第3、第4実施形態においては、各竜巻発生装置1の車両に対する位置および姿勢は、固定されている。これに対し、本実施形態では、回転部6の車両に対する位置および姿勢が、可変となっている。
【0137】
回転部6の位置が変化することにより、吸込口62bの位置、すなわち、竜巻95の端部の位置が変化する。回転部6の姿勢が変化することにより、吸引装置2の作動時に吸込口62bから受動部62の内部空間を介してダクト3へと流れる空気の向きが変化すると共に、回転軸CLの向きも変化する。これにより、吸込口62bから竜巻95が伸びる向きも変化する。
【0138】
回転部6の位置および姿勢は、例えば、乗員の操作によって手動で変更可能になっていてもよい。このような場合、各竜巻発生装置1は、車体に対して回転部6の位置および姿勢が変化可能となるよう回転部6を車室内に取り付ける不図示の機構を有している。この機構により、乗員の操作がない場合には回転部6の位置および姿勢は固定され、乗員が操作を行ったときに回転部6の位置および姿勢のうち一方または両方が変化する。そのような機構としては、ヒンジ機構、スライドレール機構等、およびその他のどのような機構が採用されてもよい。
【0139】
この場合、座席に着座する乗員は、当該座席のシートポジションおよび自分の体格に合わせて、対応する竜巻発生装置1の回転部6の位置および姿勢を手動で調整することにより、自分の周りに到達する竜巻95を発生させることができる。
【0140】
(第3、第4実施形態の変形例B)
上記変形例Aでは、回転部6の位置および姿勢は、乗員の操作によって手動で変更可能になっている。しかし、回転部6の位置および姿勢は、乗員の操作によらず自動的に変更可能になっていてもよい。
【0141】
このような場合、各竜巻発生装置1は、各座席(すなわち上記前席および後席)に着座する乗員の位置を検出するための不図示のセンサと、車体に対して回転部6の位置および姿勢が変化可能となるよう回転部6を車室内に取り付ける不図示の変位機構を有している。また、各竜巻発生装置1は、当該機構を駆動する不図示のアクチュエータと、当該アクチュエータを制御する不図示のコントローラとを有している。
【0142】
センサは、例えば、車室内を撮影し、撮影結果の画像を出力するカメラである。変位機構としては、ヒンジ機構、スライドレール機構等、およびその他のどのような機構が採用されてもよい。アクチェータは、例えば、変位機構を駆動するモータである。コントローラは、センサが出力する画像に基づいて、画像認識処理により、各座席に着座する乗員の車室内における位置を特定する。そしてコントローラは、特定した位置に基づき、当該位置にいる乗員の周囲に竜巻95が発生するよう、アクチュエータを駆動することで、回転部6の位置および姿勢を調整する。
【0143】
このような処理を実現するコントローラは、例えば上記処理を実現するためのプログラム等が記録されたメモリ、および、当該プログラムを実行するCPUを備えていてもよい。この場合、乗員の車室内における位置と、その位置の周囲に竜巻95を発生させるための回転部6の位置および姿勢との対応関係は、あらかじめメモリに記録されている。なお、メモリは、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0144】
あるいは、コントローラは上記処理を実現するためにあらかじめ回路が構成されたICであってもよい。その場合、乗員の車室内における位置と、その位置の周囲に竜巻95を発生させるための回転部6の位置および姿勢との対応関係は、あらかじめ回路構成として実現されている。
【0145】
このように構成されることで、各竜巻発生装置1において、乗員が対象の座席に着座すると、当該乗員の周囲に到達する竜巻95が発生するよう、コントローラがセンサの出力に基づいて回転部6の位置および姿勢を調整する。その後、吸引装置2および駆動部4が作動することで、当該竜巻発生装置1から当該乗員の周囲に到達する竜巻95が発生する。
【0146】
(第5実施形態)
次に第5実施形態について、図28を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態に係る竜巻発生装置1の車両への搭載形態の一例を示すものである。本実施形態に係る竜巻発生装置1は、搭載位置が第1実施形態と異なる。それ以外の竜巻発生装置1の構成は、第1実施形態と同じである。
【0147】
本実施形態の竜巻発生装置1は、車両のダッシュボードに取り付けられる。より具体的には、回転部6は、ダッシュボードの表面部分に配置され、吸込口62bは、前席(例えば運転席、助手席)に着座する乗員の口元に対向するよう、配置されている。このために、吸込口62bは、前席のヘッドレストよりも20cmだけ車両前後方向前側にずれた目標位置に対向して配置され、かつ、竜巻発生装置1の回転軸CLは、当該目標位置を中心とする半径10cmの仮想的な球体を貫く。また、吸込口62bは当該ヘッドレストのうち車両前方側を向く面に対向し、回転軸CLは当該ヘッドレストを貫く。
【0148】
なお、当該前席のヘッドレストの位置は、シートクッションの位置および姿勢、当該シートクッションに対するシートバックの傾斜角度、および、当該シートバックに対する当該ヘットレストの相対位置を調整することにより、可変となっていてもよい。そのような場合、当該ヘッドレストの特定位置においてのみ、当該ヘッドレストの当該特定位置に対応する目標位置に対向して吸込口62bが配置され、かつ、回転軸CLが当該目標位置を中心とする半径10cmの仮想的な球体を貫いてもよい。そして、当該ヘッドレストの当該特定位置においてのみ、吸込口62bは当該ヘッドレストのうち車両前方側を向く面に対向し、回転軸CLは当該ヘッドレストを貫いてもよい。
【0149】
特定位置は例えば、シートクッションの車両前後方向位置、車両幅方向位置、姿勢を可動範囲内の中央とし、シートバックの上記傾斜角度を90°に最も近い位置とし、ヘッドレストをシートバックに最も近い位置としたときのヘッドレストの位置であってもよい。本実施形態において、竜巻発生装置1の車両に対する位置および姿勢は、固定されている。
【0150】
ダクト3は、一方の端部が吸込口62bに連通すると共に、ダッシュボード内を通り、車室内とエンジンルームとを仕切るダッシュパネル87を貫通し、他方の端部の排気口83がエンジンルーム内に連通している。なお、図示してはいないが、本実施形態においても、第1-第4実施形態と同様、竜巻発生装置1は吸引装置2、駆動部4を有している。ただし、吸引装置2は、ダクト3の途中に配置されていてもよい。
【0151】
以下、上記のように構成された竜巻発生装置1の作動について説明する。竜巻発生装置1が作動すると、第1実施形態で説明した通りに竜巻発生装置1が作動することにより、吸込口62bから回転軸CLに沿って伸びる竜巻95が発生する。そして、その竜巻95が前席の乗員の口元またはその近傍まで到達する。そして、竜巻発生装置1の吸引装置2が作動することにより、当該乗員の呼気がこの竜巻95に沿って吸込口62bに吸引される。そして吸引された呼気は、吸込口62bからダクト3を通り、更に排気口83から車室外であるエンジンルーム内に排出される。
【0152】
以上のように、吸込口62bは、車両の前席のヘッドレストに対向する。そして吸引装置2は、竜巻発生装置1により発生した竜巻95に沿って車室内において対応する座席に着座する乗員の周囲の空気(特に呼気)を吸引し、吸引した空気を車室外に排出する。
【0153】
このように、換気を必要とする部位(すなわち、呼気が発生する口の周囲)を狙って吸引し、外部へ排出することにより、換気する空気量を減らし、不図示の空調装置による換気のためのエネルギー消費を低減させることができる。また、本実施形態では、第3、第4実施形態と比べて、竜巻95の太さを低減することで、竜巻95の及ぶ範囲を口の周辺に限定している。例えば、特許文献1で定義されるスワール数を第3、第4実施形態と同じにしながら、ガイド部64の外周縁の直径Dを低減することにより、第3、第4実施形態と同等の強さの細い竜巻95を実現できる。スワール数Sは、S=ω×D/(4×Vax×d)で定義される量であって、旋回流の強さを表す無次元数である。Vaxは、吸込口62bにおける空気の平均流速である。ω=2π×Nは回転部6の角速度である。このようにすることで、人体の必要とする範囲以外に竜巻95の影響が及ぶことによる違和感を低減すると共に、竜巻95発生のために要するエネルギーを低減することができる。また、本実施形態において、他の実施形態と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。
【0154】
また、本実施形態において第1実施形態と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。例えば、本実施形態の竜巻発生装置1は、第1実施形態と同様、吸込口62bから遠方まで竜巻95を到達させることができる。竜巻発生装置1を車両に搭載する場合も、例えば吸込口62bからより遠くの位置(例えば、500mm以上離れた位置)まで竜巻95を到達させることが望ましい。そして上述の通り、本実施形態の竜巻発生装置1は、それを実現可能な構成となっている。
【0155】
(第6実施形態)
次に第6実施形態について、図29を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態に係る竜巻発生装置1の車両への搭載形態の一例を示すものである。本実施形態に係る車両には、2つの竜巻発生装置1が搭載されている。各竜巻発生装置1は、搭載位置が第1実施形態と異なるが、それ以外の構成は、第1実施形態と同じである。
【0156】
本実施形態における2つの竜巻発生装置1のうち、前席側の竜巻発生装置1は、車両の車体のうち、ウインドシールドと前席窓の間にあるピラー(以下、第1ピラーという)等に取り付けられる。より具体的には、回転部6は、第1ピラーに配置され、その吸込口62bは、前席(例えば運転席、助手席)に着座する乗員の口元に対向するよう、配置されている。
【0157】
このために、当該吸込口62bは、前席のヘッドレストよりも20cmだけ車両前後方向前側にずれた目標位置に対向して配置され、かつ、竜巻発生装置1の回転軸CLは、当該目標位置を中心とする半径10cmの仮想的な球体を貫く。また、吸込口62bは当該ヘッドレストのうち車両前方側を向く面に対向し、回転軸CLは当該ヘッドレストまたはシートバックを貫いてもよい。
【0158】
なお、当該前席のヘッドレストの位置は、第5実施形態と同様の形態で可変となっていてもよい。そのような場合、当該ヘッドレストの特定位置においてのみ、当該ヘッドレストの当該特定位置に対応する目標位置に対向して吸込口62bが配置され、かつ、回転軸CLが当該目標位置を中心とする半径10cmの仮想的な球体を貫いてもよい。そして、当該ヘッドレストの当該特定位置においてのみ、吸込口62bは当該ヘッドレストのうち車両前方側を向く面に対向し、回転軸CLは当該ヘッドレストまたはシートバックを貫いてもよい。特定位置については、第5実施形態と同様である。本実施形態において、各竜巻発生装置1の車両に対する位置および姿勢は、固定されている。
【0159】
当該前席側の竜巻発生装置1のダクト3は、一方の端部が同じ竜巻発生装置1の吸込口62bに連通すると共に、第1ピラーおよびダッシュボード内を通り、ダッシュパネル87を貫通し、他方の端部の排気口83がエンジンルーム内に連通している。
【0160】
本実施形態における2つの竜巻発生装置1のうち、後席側の竜巻発生装置1は、車両の車体のうち、前席窓と後席窓の間にあるピラー(以下、第2ピラーという)等に取り付けられる。より具体的には、回転部6は、第2ピラーに配置され、その吸込口62bは、後席に着座する乗員の口元に対向するよう、配置されている。
【0161】
このために、当該吸込口62bは、後席のヘッドレストよりも20cmだけ車両前後方向前側にずれた目標位置に対向して配置され、かつ、竜巻発生装置1の回転軸CLは、当該目標位置を中心とする半径10cmの仮想的な球体を貫く。また、吸込口62bは当該ヘッドレストのうち車両前方側を向く面に対向し、回転軸CLは当該ヘッドレストまたはシートバックを貫いてもよい。
【0162】
なお、当該後席のヘッドレストの位置は、本実施形態の前席と同様の形態で可変となっていてもよい。そのような場合、当該ヘッドレストの特定位置においてのみ、当該ヘッドレストの当該特定位置に対応する目標位置に対向して吸込口62bが配置され、かつ、回転軸CLが当該目標位置を中心とする半径10cmの仮想的な球体を貫いてもよい。そして、当該ヘッドレストの当該特定位置においてのみ、吸込口62bは当該ヘッドレストのうち車両前方側を向く面に対向し、回転軸CLは当該ヘッドレストまたはシートバックを貫いてもよい。特定位置については、第5実施形態と同様である。
【0163】
当該後席側の竜巻発生装置1のダクト3は、一方の端部が同じ竜巻発生装置1の吸込口62bに連通すると共に、第2ピラーを通り、更に天板と車室内の天井トリムとの間を通り、更に後部荷室を通り、排気口83から車室外に連通している。
【0164】
なお、図示してはいないが、本実施形態においても、第1-第5実施形態と同様、各竜巻発生装置1は吸引装置2、駆動部4を有している。ただし、吸引装置2は、同じ竜巻発生装置1に属するダクト3の途中に配置されていてもよい。
【0165】
以下、上記のように構成された竜巻発生装置1の作動について説明する。竜巻発生装置1が作動すると、第1実施形態で説明した通りに各竜巻発生装置1が作動する。すると、各竜巻発生装置1において、吸込口62bから回転軸CLに沿って伸びる竜巻95が発生する。
【0166】
そして、前席側の竜巻発生装置1においては、発生した竜巻95が前席の乗員の口元またはその近傍まで到達する。そして、当該竜巻発生装置1の吸引装置2が作動することにより、当該乗員の呼気がこの竜巻95に沿って吸込口62bに吸引される。そして吸引された呼気は、吸込口62bからダクト3を通り、更に排気口83から車室外であるエンジンルーム内に排出される。
【0167】
また、後席側の竜巻発生装置1においては、発生した竜巻95が後席の乗員の口元またはその近傍まで到達する。そして、当該竜巻発生装置1の吸引装置2が作動することにより、当該乗員の呼気がこの竜巻95に沿って吸込口62bに吸引される。そして吸引された呼気は、吸込口62bからダクト3を通り、更に排気口83から車室外に排出される。
【0168】
以上のように、各吸込口62bは、車両の前席または後席のヘッドレストに対向する。そして各吸引装置2は、竜巻発生装置1により発生した竜巻95に沿って車室内において対応する座席に着座する乗員の周囲の空気(特に呼気)を吸引し、吸引した空気を車室外に排出する。
【0169】
このように、換気を必要とする部位(すなわち、呼気が発生する口の周囲)を狙って吸引し、外部へ排出することにより、換気する空気量を減らし、不図示の空調装置によるエネルギー消費を低減させることができる。また、本実施形態では、第3、第4実施形態と比べて、竜巻95の太さを低減することで、竜巻95の及ぶ範囲を口の周辺に限定している。例えば、特許文献1で定義されるスワール数を第3、第4実施形態と同じにしながら、ガイド部64の外周縁の直径Dを低減することにより、第3、第4実施形態と同等の強さの細い竜巻95を実現できる。また、本実施形態において、他の実施形態と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。
【0170】
また、本実施形態において第1実施形態と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。例えば、本実施形態の竜巻発生装置1は、第1実施形態と同様、吸込口62bから遠方まで竜巻95を到達させることができる。竜巻発生装置1を車両に搭載する場合も、例えば吸込口62bからより遠くの位置(例えば、500mm以上離れた位置)まで竜巻95を到達させることが望ましい。そして上述の通り、本実施形態の竜巻発生装置1は、それを実現可能な構成となっている。
【0171】
(第7実施形態)
次に第7実施形態について、図30を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態に係る竜巻発生装置1の車両への搭載形態の一例を示すものである。本実施形態に係る竜巻発生装置1は、搭載位置が第1実施形態と異なるが、それ以外の構成は、第1実施形態と同じである。
【0172】
本実施形態における2つの竜巻発生装置1は、車両の車体のうち、ウインドシールドと前席窓の間にあるピラー等に取り付けられる。より具体的には、回転部6は、当該ピラーに配置され、その吸込口62bは、前席(例えば運転席、助手席)に着座する乗員の口元に対向するよう、配置されている。
【0173】
このために、当該吸込口62bは、前席のヘッドレストよりも20cmだけ車両前後方向前側にずれた目標位置に対向して配置され、かつ、竜巻発生装置1の回転軸CLは、当該目標位置を中心とする半径10cmの仮想的な球体を貫く。また、吸込口62bは当該ヘッドレストのうち車両前方側を向く面に対向し、回転軸CLは当該ヘッドレストを貫く。
【0174】
なお、当該前席のヘッドレストの位置は、第5実施形態と同様の形態で可変となっていてもよい。そのような場合、当該ヘッドレストの特定位置においてのみ、当該ヘッドレストの当該特定位置に対応する目標位置に対向して吸込口62bが配置され、かつ、回転軸CLが当該目標位置を中心とする半径10cmの仮想的な球体を貫いてもよい。そして、当該ヘッドレストの当該特定位置においてのみ、吸込口62bは当該ヘッドレストのうち車両前方側を向く面に対向し、回転軸CLは当該ヘッドレストまたはシートバックを貫いてもよい。特定位置については、第5実施形態と同様である。本実施形態において、竜巻発生装置1の車両に対する位置および姿勢は、固定されている。
【0175】
当該前席側の竜巻発生装置1のダクト3は、一方の端部が竜巻発生装置1の吸込口62bに連通すると共に、第1ピラーおよびダッシュボード内を通り、ダッシュパネル87を貫通し、他方の端部の排気口83が空調装置70に接続している。より具体的には、排気口83は、空調装置70の空調ケーシング72内の空間に連通している。
【0176】
空調装置70は、車室内または車室外から取り込んだ空気に対して加熱、冷却、除湿のうち少なくとも1つ以上を行い、その結果得られた空調風を車室内に吹き出す装置である。空調装置70は、空調風を、ダッシュボード等に配置された吹出口71から、車室内に吹き出す。
【0177】
このような空調装置70は、ダッシュボード内に搭載された空調ケーシング72と、フィルタ73と、送風機74と、不図示の温度調整部を有する。空調ケーシング72は、フィルタ73、送風機74、温度調整部等を収容する。この空調ケーシング72は、車室内に送風するための空気を車室内または車室外から導入するための導入開口部と、吹出口71に連通する吹出開口部とを有している。
【0178】
フィルタ73は、車室内または車室外から導入された空気を清浄化する部材である。空気を清浄化する手法としては、活性炭、殺菌作用のある光触媒等を有して空調風の悪臭を除去する手法を採用してもよいし、不織布、スポンジ等の部材を有して空調風に含まれる埃を捕捉する手法を採用してもよい。
【0179】
送風機74は、空調ケーシング72内において空気を吸い込んで吹き出す。これにより送風機74は、上記導入開口部から空気を導入し、導入した空気をフィルタ、送風機、温度調整部の順にあるいは別の順に通過させ、通過後の空気を吹出開口部から吹出口71に送り、吹出口71から車室内に送る。
【0180】
温度調整部は、空調ケーシング72において自機を通過する空気を冷却または加熱する部材である。例えば、温度調整部は、不図示の冷凍サイクルにおいて冷媒を空調ケーシング72内の空気と熱交換させて蒸発させることで当該空気を冷却する蒸発器でもよい。あるいは、温度調整部は、ヒートポンプサイクルにおいて圧縮機で圧縮された冷媒を空調ケーシング72内の空気と熱交換させることで当該空気を加熱する熱交換器でもよい。あるいは、温度調整部は、電気ヒータでもよい。
【0181】
ダクト3の排気口83は、空調ケーシング72内において、フィルタ73よりも空気流れ上流側に開口している。これにより、ダクト3内の空気は、排気口83を介して、空調ケーシング72内におけるフィルタ73よりも空気流れ上流側に、排出される。
【0182】
以下、上記のように構成された竜巻発生装置1の作動について説明する。竜巻発生装置1が作動すると、第1実施形態で説明した通りに各竜巻発生装置1が作動する。すると、各竜巻発生装置1において、吸込口62bから回転軸CLに沿って伸びる竜巻95が発生する。
【0183】
そして、前席側の竜巻発生装置1においては、発生した竜巻95が前席の乗員の口元またはその近傍まで到達する。そして、当該竜巻発生装置1の吸引装置2が作動することにより、当該乗員の呼気がこの竜巻95に沿って吸込口62bに吸引される。そして吸引された呼気は、吸込口62bからダクト3を通り、更に排気口83から、空調ケーシング72内におけるフィルタ73よりも空気流れ上流側に、排出される。更に呼気は、フィルタ73を通過することで清浄化され、更に温度調整部を通過して加熱または冷却され、更に吹出口71から車室内に吹き出される。
【0184】
以上のように、吸込口62bは、車両の前席または後席のヘッドレストに対向する。そして各吸引装置2は、竜巻発生装置1により発生した竜巻95に沿って車室内において対応する座席に着座する乗員の周囲の空気(特に呼気)を吸引し、吸引した空気を車室外に排出する。
【0185】
このように、換気を必要とする部位(すなわち、呼気が発生する口の周囲)を狙って吸引し、空調装置70を利用して清浄化して外部へ排出することにより、換気する空気量を減らし、不図示の空調装置によるエネルギー消費を低減させることができる。また、本実施形態では、第3、第4実施形態と比べて、竜巻95の太さを低減することで、竜巻95の及ぶ範囲を口の周辺に限定している。例えば、特許文献1で定義されるスワール数を第3、第4実施形態と同じにしながら、ガイド部64の外周縁の直径Dを低減することにより、第3、第4実施形態と同等の強さの細い竜巻95を実現できる。また、本実施形態において、他の実施形態と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。
【0186】
また、本実施形態において第1実施形態と同様の構成からは、同様の効果を得ることができる。例えば、本実施形態の竜巻発生装置1は、第1実施形態と同様、吸込口62bから遠方まで竜巻95を到達させることができる。竜巻発生装置1を車両に搭載する場合も、例えば吸込口62bからより遠くの位置(例えば、500mm以上離れた位置)まで竜巻95を到達させることが望ましい。そして上述の通り、本実施形態の竜巻発生装置1は、それを実現可能な構成となっている。
【0187】
(第5、第6、第7実施形態の変形例X)
ここで、第5、第6、第7実施形態の変形例Xについて説明する。第5、第6、第7実施形態においては、各竜巻発生装置1の車両に対する姿勢は、固定されている。これに対し、本実施形態では、回転部6の車両に対する姿勢が、可変となっている。
【0188】
回転部6の姿勢が変化することにより、吸引装置2の作動時に吸込口62bから受動部62の内部空間を介してダクト3へと流れる空気の向きが変化すると共に、回転軸CLの向きも変化する。これにより、吸込口62bから竜巻95が伸びる向きも変化する。
【0189】
回転部6の姿勢は、例えば、乗員の操作によって手動で変更可能になっていてもよい。このような場合、各竜巻発生装置1は、車体に対して回転部6の姿勢が変化可能となるよう回転部6を車室内に取り付ける不図示の機構を有している。この機構により、回転部6は、乗員が付勢しないときには姿勢が固定され、乗員が付勢したときに姿勢が変化する。そのような機構としては、ヒンジ機構等どのような機構が採用されてもよい。
【0190】
この場合、座席に着座する乗員は、当該座席の位置および姿勢、シートバックの角度、および自分の体格に合わせて、対応する竜巻発生装置1の回転部6の姿勢を手動で調整することにより、自分の口の周りに到達する竜巻95を発生させることができる。
【0191】
(第5、第6、第7実施形態の変形例Y)
上記変形例Xでは、回転部6の姿勢は、乗員の操作によって手動で変更可能になっている。しかし、回転部6の姿勢は、乗員の操作によらず自動的に変更可能になっていてもよい。
【0192】
このような場合、各竜巻発生装置1は、各座席(すなわち上記前席および後席)に着座する乗員の位置を検出するための不図示のセンサと、車体に対して回転部6の姿勢が変化可能となるよう回転部6を車室内に取り付ける不図示の変位機構を有している。また、各竜巻発生装置1は、当該機構を駆動する不図示のアクチュエータと、当該アクチュエータを制御する不図示のコントローラとを有している。
【0193】
センサは、例えば、車室内を撮影し、撮影結果の画像を出力するカメラである。変位機構としては、ヒンジ機構等、どのような機構が採用されてもよい。アクチェータは、例えば、変位機構を駆動するモータである。コントローラは、センサが出力する画像に基づいて、画像認識処理により、各座席に着座する乗員の口の、車室内における位置を特定する。そしてコントローラは、特定した口の位置に基づき、当該位置の周囲に竜巻95が発生するよう、アクチュエータを駆動することで、回転部6の姿勢を調整する。
【0194】
このような処理を実現するコントローラは、例えば上記処理を実現するためのプログラム等が記録されたメモリ、および、当該プログラムを実行するCPUを備えていてもよい。この場合、乗員の口の車室内における位置と、その位置の周囲に竜巻95を発生させるための回転部6の姿勢との対応関係は、あらかじめメモリに記録されている。なお、メモリは、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0195】
あるいは、コントローラは上記処理を実現するためにあらかじめ回路が構成されたICであってもよい。その場合、乗員の口の車室内における位置と、その位置の周囲に竜巻95を発生させるための回転部6の姿勢との対応関係は、あらかじめ回路構成として実現されている。
【0196】
このように構成されることで、各竜巻発生装置1において、乗員が対象の座席に着座すると、当該乗員の口の周囲に到達する竜巻95が発生するよう、コントローラがセンサの出力に基づいて回転部6の姿勢を調整する。その後、吸引装置2および駆動部4が作動することで、当該竜巻発生装置1から当該乗員の口の周囲に到達する竜巻95が発生する。なお、上記変形例X、Yにおいては、回転部6の姿勢のみならず位置も手動または自動的に変更可能となっていてもよい。
【0197】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本発明は、上記各実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
【0198】
(変形例1)
上記実施形態では、竜巻発生装置1は、吸引装置2、ダクト3を有している。しかし、これらの部材は、必須の構成ではない。竜巻発生装置1は、駆動部4、支持部5、回転部6のみから構成されていてもよい。そしてその場合、吸込口62bは塞がれていてもよい。そのような竜巻発生装置1は、吸込口62bから空気が吸引されることがない。しかし、回転部6が回転し、ガイド面641に沿って回転軸CLから遠ざかるように且つ回転軸CLの一方側に空気が流れることにより、竜巻95が発生する。このような回転軸CLに対して斜めの気流により、ガイド面641から回転軸の一方側に離れた位置に空気が十分に供給される。また、ガイド面641の表面付近で回転軸CLから遠ざかる強い気流92、93が発生した結果、ガイド面641と回転軸CLの近傍で負圧が発生し、その結果、回転軸CLの一方側から回転軸CLに沿ってガイド面641に向かう上昇気流が発生する。この上昇気流により、ガイド面641から遠ざかった後にまた近付く強い循環流が生じる。このような強い循環流と旋回流の作用により、ガイド面641から遠方まで到達する竜巻95が発生する。
【0199】
(変形例2)
上記実施形態では、ガイド面641の全体がガイド傾斜面である。しかし、ガイド面641の一部のみがガイド傾斜面であってもよい。その場合、インナーフィン65が設けられる場合は、インナーフィン65の一部または全部は、ガイド傾斜面に取り付けられる。すなわち、インナーフィン65が回転軸CLに沿ってガイド面641側に投影された場合、その投影像の一部または全部は、ガイド傾斜面内にある。また、発生する竜巻95が回転軸CLに沿ってガイド面641に投影された場合、その投影像の一部または全部は、ガイド傾斜面内にある。このようになっていることで、ガイド傾斜面に沿った気流92が強化される。
【0200】
また、ガイド面641の一部のみがガイド傾斜面である場合、ガイド面641の面積の半分以上をガイド傾斜面が占めていてもよい。このようになっていることで、ガイド傾斜面の効果が顕著になる。
【0201】
(変形例3)
上記実施形態では、裏面642の全体が裏面側傾斜面である。しかし、裏面642の一部のみが裏面側傾斜面であってもよい。その場合、アウターフィン66が設けられる場合は、アウターフィン66の一部または全部は、裏面側傾斜面に取り付けられる。すなわち、アウターフィン66が回転軸CLに沿って裏面642側に投影された場合、その投影像の一部または全部は、裏面側傾斜面内にある。また、発生する竜巻95が回転軸CLに沿って裏面642側に投影された場合、その投影像の一部または全部は、裏面側傾斜面内にある。このようになっていることで、裏面側傾斜面に沿った気流96が強化される。
【0202】
また、裏面642の一部のみが裏面側傾斜面である場合、裏面642の面積の半分以上を裏面側傾斜面が占めていてもよい。このようになっていることで、裏面側傾斜面の効果が顕著になる。
【0203】
(変形例4)
上記実施形態では、回転部6の全体が回転している。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、ガイド部64は回転せず、インナーフィン65、アウターフィン66が回転してもよい。この場合でも、インナーフィン65の回転によって、ガイド面641に沿った気流92が発生するので、上記実施形態と同様に、遠方まで到達する竜巻95を発生させることができる。
【0204】
(変形例5)
上記実施形態において、表2を用いて、壁距離Hの影響について説明しているが、竜巻発生装置1の構成要素として壁面Wが必須であることを意味しているわけではない。
【0205】
(変形例6)
上記実施形態において、竜巻発生装置1の搭載先は車両であるが、竜巻発生装置1を配置する対象は車両に限らず、どのような対象であってもよい。また、竜巻発生装置1は持ち運び可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0206】
1 竜巻発生装置
2 吸引装置
3 ダクト
6 回転部
62b 吸込口
64 ガイド部
65 インナーフィン
66 アウターフィン
641 ガイド面
642 裏面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図21
図22
図23A
図23B
図24A
図24B
図25
図26
図27
図28
図29
図30