(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178034
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】生体磁場計測処理装置、生体磁場計測システム、生体磁場計測処理装置の制御方法および生体磁場計測処理装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/242 20210101AFI20221125BHJP
A61B 5/248 20210101ALI20221125BHJP
A61B 5/388 20210101ALI20221125BHJP
A61B 5/389 20210101ALI20221125BHJP
【FI】
A61B5/242
A61B5/248
A61B5/388
A61B5/389
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084530
(22)【出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(71)【出願人】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 洸樹
(72)【発明者】
【氏名】渡部 泰士
(72)【発明者】
【氏名】川端 茂▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】橋本 淳
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA04
4C127AA10
4C127DD03
4C127HH13
(57)【要約】
【課題】内向き電流の電流波形が、評価対象部位の周囲の組織の影響により乱れる場合にも、神経機能または筋機能を正しく評価可能な内向き電流の電流波形を生成する。
【解決手段】生体磁場計測処理装置は、生体磁場信号から電流信号を再構成する再構成解析部と、前記電流信号から電流成分を抽出する電流抽出部と、前記電流抽出部が抽出した電流成分に基づいて、神経軸索の周囲から神経軸索に向かう電流成分である複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つ、または、筋線維の周囲から筋線維に向かう電流成分である複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つを加算し、表示装置に表示させる電流波形を生成する波形演算部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体磁場信号から電流信号を再構成する再構成解析部と、
前記電流信号から電流成分を抽出する電流抽出部と、
前記電流抽出部が抽出した電流成分に基づいて、神経軸索の周囲から神経軸索に向かう電流成分である複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つ、または、筋線維の周囲から筋線維に向かう電流成分である複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つを加算し、表示装置に表示させる電流波形を生成する波形演算部と、
を有することを特徴とする生体磁場計測処理装置。
【請求項2】
前記波形演算部は、神経軸索または筋線維の横断面方向に沿う複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つを加算すること
を特徴とする請求項1に記載の生体磁場計測処理装置。
【請求項3】
前記波形演算部は、
複数の内向き電流の電流波形のうち、外部入力により選択された少なくとも2つの電流波形を加算すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の生体磁場計測処理装置。
【請求項4】
前記波形演算部は、
前記表示装置に表示させる複数の内向き電流の電流波形を生成し、
前記表示装置に表示された複数の電流波形のうち、外部入力により選択された少なくとも2つの電流波形を加算し、
加算した電流波形を、外部入力により選択された電流波形とともに前記表示装置に表示させること
を特徴とする請求項3に記載の生体磁場計測処理装置。
【請求項5】
前記波形演算部は、外部入力により選択された電流波形の少なくともいずれかと、加算した電流波形とを、重畳指示に基づいて重畳し、
重畳した電流波形を前記表示装置に表示させること
を特徴とする請求項3または請求項4に記載の生体磁場計測処理装置。
【請求項6】
前記表示装置に表示された被検体の形態画像上で指定された神経軸索または筋線維の経路に基づいて、前記経路上に位置する複数の第1仮想電極と、前記複数の第1仮想電極の各々に対して前記経路の両側に位置する複数の第2仮想電極とを生成する仮想電極生成部を有し、
前記電流抽出部は、前記複数の第1仮想電極および前記複数の第2仮想電極の電流成分を抽出し、
前記波形演算部は、前記電流抽出部が抽出した前記複数の第1仮想電極および前記複数の第2仮想電極の電流成分の時間変化を示す電流波形を生成する
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の生体磁場計測処理装置。
【請求項7】
生体磁場信号を計測する磁場計測装置と、表示装置と、生体磁場計測処理装置とを有し、
前記生体磁場計測処理装置は、
生体磁場信号から電流信号を再構成する再構成解析部と、
前記電流信号から電流成分を抽出する電流抽出部と、
前記電流抽出部が抽出した電流成分に基づいて、神経軸索の周囲から神経軸索に向かう電流成分である複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つ、または、筋線維の周囲から筋線維に向かう電流成分である複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つを加算し、表示装置に表示させる電流波形を生成する波形演算部と、
を有することを特徴とする生体磁場計測システム。
【請求項8】
生体磁場信号から電流信号を再構成し、
前記電流信号から電流成分を抽出し、
抽出した電流成分に基づいて、神経軸索の周囲から神経軸索に向かう電流成分である複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つ、または、筋線維の周囲から筋線維に向かう電流成分である複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つを加算し、表示装置に表示させる電流波形を生成すること
を特徴とする生体磁場計測処理装置の制御方法。
【請求項9】
生体磁場信号から電流信号を再構成し、
前記電流信号から電流成分を抽出し、
抽出した電流成分に基づいて、神経軸索の周囲から神経軸索に向かう電流成分である複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つ、または、筋線維の周囲から筋線維に向かう電流成分である複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つを加算し、表示装置に表示させる電流波形を生成する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする生体磁場計測処理装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体磁場計測処理装置、生体磁場計測システム、生体磁場計測処理装置の制御方法および生体磁場計測処理装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体磁場計測処理装置は、磁場計測装置による生体磁場の計測で得られた磁場データに基づいて、空間フィルター法により被検体の体内での電流分布を推定する。そして、生体磁場計測処理装置は、推定した電流分布に基づいて、例えば、被検体の計測対象部位を写した形態画像において脊柱管に沿って配置された複数の仮想電極上での電流波形を生成し、生成した電流波形を表示装置に表示する。これにより、体内の任意の位置での電気活動が可視化可能になる。
【0003】
例えば、神経活動は、神経軸索に沿って発生する電流成分である細胞内電流と、脱分極によって生じる電流成分である体積電流とに分けられる。体積電流は、神経軸索外を流れ、脱分極点に帰ってくる。細胞内電流は、軸索内電流とも称され、脱分極点に帰ってくる体積電流は、内向き電流とも称される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
推定する電流分布が評価対象部位の周囲の骨などの組織の影響を受けると、電流分布に基づいて生成される内向き電流に偏りが生じ、電流波形が乱れる場合がある。内向き電流の電流波形は、神経機能の評価の指標にされるため、電流波形の乱れは、神経機能の過小評価または過大評価につながるおそれがある。
【0005】
開示の技術は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、内向き電流の電流波形が、評価対象部位の周囲の組織の影響により乱れる場合にも、神経機能または筋機能を正しく評価可能な内向き電流の電流波形を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一形態の生体磁場計測処理装置は、生体磁場信号から電流信号を再構成する再構成解析部と、前記電流信号から電流成分を抽出する電流抽出部と、前記電流抽出部が抽出した電流成分に基づいて、神経軸索の周囲から神経軸索に向かう電流成分である複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つ、または、筋線維の周囲から筋線維に向かう電流成分である複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つを加算し、表示装置に表示させる電流波形を生成する波形演算部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
内向き電流の電流波形が、評価対象部位の周囲の組織の影響により乱れる場合にも、神経機能または筋機能を正しく評価可能な内向き電流の電流波形を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る生体磁場計測処理装置を含む生体磁場計測システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】神経・筋活動電流のモデルの一例を示す説明図である。
【
図3】
図1の仮想電極生成部により生成される仮想電極での電流強度の算出方法の一例を示す説明図である。
【
図4】被検体(健常者)の示指と中指とに同時に刺激を印加したときの手根管手掌部での内向き電流の電流波形の変化と加算波形との例を示す図である。
【
図5】被検体(健常者)の尺骨神経に刺激を印加したときの肘部管での内向き電流の電流波形の変化と加算波形との例を示す図である。
【
図6】被検体(患者)の示指と中指とに同時に刺激を印加したときの手根管手掌部での内向き電流の電流波形の変化と加算波形との例を示す図である。
【
図7】
図1の表示装置に表示される電流波形を選択するための表示ウィンドウの一例を示す図である。
【
図8】
図1の演算部の動作の一例を示すフロー図である。
【
図10】
図1の表示装置の表示画面に表示される形態画像と加算前後の電流波形との一例を示す図である。
【
図11】
図1の表示装置の表示画面に表示される形態画像と加算前後の電流波形との別の例を示す図である。
【
図12】
図1のデータ処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態の説明を行う。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る生体磁場計測処理装置を含む生体磁場計測システムの一例を示すブロック図である。
図1に示す生体磁場計測システム100は、磁場計測装置10、神経刺激装置20、X線撮影装置30、マウス40a、キーボード40b、表示装置40cおよび生体磁場計測処理装置として機能するデータ処理装置50を有する。
【0011】
例えば、磁場計測装置10は、複数の超伝導量子干渉素子(SQUID:Superconducting QUantum Interference Device)を含むSQUIDセンサアレイと信号処理装置とを有する。磁場計測装置10は、神経刺激装置20による電気刺激により被検体Pの計測対象の神経または筋に誘発された生体磁場を計測可能である。
【0012】
例えば、磁場計測装置10は、脊磁計(MSG:Magnetospinograph)または筋磁計(MMG:Magnetomyograph)として使用される。なお、磁場計測装置10は、脳磁計(MEG:Magnetoencephalograph)または心磁計(MCG:Magnetocardiograph)として使用可能である。以下では、超伝導量子干渉素子をSQUIDとも称する。
【0013】
神経刺激装置20は、被検体Pの体表(皮膚)に貼り付けられる電極を介して被検体Pの神経または筋を電気的に刺激する。X線撮影装置30は、被検体Pにおいて生体磁場の計測対象部位の形態画像を撮影する。なお、被検体Pの筋に誘発された生体磁場を計測する場合、X線撮影装置30の代わりにMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置が使用されてもよい。あるいは、X線撮影装置30と図示しないMRI装置との両方を使用して被検体Pの形態画像が撮影されてもよい。
【0014】
データ処理装置50は、神経刺激装置20による生体への電気刺激のタイミング等を制御する機能と、磁場計測装置10が計測した生体磁場等の生体情報の情報処理を実行する機能とを有する。また、データ処理装置50は、X線撮影装置30による被検体PのX線画像の撮影を制御する機能を有する。データ処理装置50は、マウス40aおよびキーボード40b等の入出力装置からの入力を受け付ける機能を有する。
【0015】
さらに、データ処理装置50は、磁場計測装置10が計測した磁場に応じて発生する電流の向きをX線画像に重畳させて表示装置40cに表示する機能を有する。データ処理装置50は、表示装置40cに表示された画像に対して、マウス40aを操作する操作者により指示される連続する複数の位置(仮想電極)での電流値の時間変化を計算する機能を有する。
【0016】
例えば、操作者は、マウス40aを使用して、表示装置40cの画面に表示されるX線画像により認識される末梢神経または筋(例えば、手内筋または前脛骨筋)に沿って複数の位置を入力する。データ処理装置50は、例えば、入力された複数の位置に基づいて末梢神経または筋に沿うベジェ曲線等の曲線を生成し、予め設定された設定値に基づいて、曲線に沿って複数の仮想電極を生成する機能を有する。さらに、データ処理装置50は、各仮想電極での電流波形を表示装置40cに表示させる機能を有する。
【0017】
データ処理装置50は、入力制御部510、演算部520、表示制御部530および記憶部540を有する。例えば、入力制御部510、演算部520および表示制御部530の機能は、データ処理装置50に搭載されるCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが実行する制御プログラムにより実現される。
【0018】
なお、入力制御部510、演算部520および表示制御部530は、FPGA等のハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより実現されてもよい。
【0019】
例えば、記憶部540は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリ等の半導体記憶装置の少なくともいずれかにより実現される。なお、記憶部540は、半導体記憶装置とHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)を含んで実現されてもよい。
【0020】
入力制御部510は、位置入力部511、波形領域指定部512および波形選択部513を有する。演算部520は、経路生成部521、仮想電極生成部522、再構成解析部523、電流抽出部524および波形演算部525を有する。表示制御部530は、画像表示部531および波形表示部532を有する。記憶部540には、生体磁場信号データ541、形態画像データ542、波形データ543および解析設定値544を記憶する記憶領域が割り当てられる。
【0021】
入力制御部510は、磁場計測装置10の操作者によるマウス40aおよびキーボード40b等の操作を受け付ける。マウス40aおよびキーボード40b等の操作による情報の入力は、外部入力の一例である。位置入力部511は、表示装置40cの画面に表示されるX線画像等の形態画像上において、生体磁場を評価する末梢神経の位置または筋線維の位置を受け付ける。位置入力部511が受け付けた位置情報は、解析設定値544として記憶部540に格納される。
【0022】
波形領域指定部512は、仮想電極上での電流波形を表示装置40cに表示する時間範囲を受け付ける。波形選択部513は、マウス40aおよびキーボード40b等の操作に基づいて、表示装置40cに表示させる電流波形を選択する。また、波形選択部513は、マウス40aおよびキーボード40b等の操作に基づいて、表示装置40cに表示された電流波形のうち、加算する電流波形を選択する。さらに、波形選択部513は、マウス40aおよびキーボード40b等の操作に基づいて、表示装置40cに表示された電流波形のうち、重畳して表示させる電流波形を選択する。
【0023】
経路生成部521は、位置入力部511から入力された、形態画像上での複数の末梢神経の位置または筋線維の位置を示す位置情報に基づいて、末梢神経または筋線維の経路を算出する。末梢神経および筋線維の生体磁場を計測する手法は同じであるため、以下の説明では、主に末梢神経の生体磁場を計測する例について説明される。また、以下では、経路生成部521により算出された末梢神経の経路は、神経走行(路)とも称される。ここで、経路生成部521により算出された末梢神経の経路は、複数の座標情報または曲線を示す式等により表され、解析設定値544として記憶部540に記憶される。
【0024】
仮想電極生成部522は、経路生成部521が算出した神経走行上に、例えば、等間隔に複数の第1仮想電極を生成する。さらに、仮想電極生成部522は、第1仮想電極において神経走行の走行方向の両側の直交方向に第2仮想電極を生成する。
【0025】
神経走行上に生成される第1仮想電極の数および間隔、第1仮想電極から第2仮想電極までの距離は、マウス40aまたはキーボード40b等の入力装置を介して操作者により予め入力される。そして、第1仮想電極および第2仮想電極の位置情報は、入力制御部510により解析設定値544として記憶部540に記憶される。以下では、第1仮想電極と第2仮想電極とを区別なく説明する場合、単に仮想電極と称する。
【0026】
再構成解析部523は、磁場計測装置10による生体磁場の計測により得られた被検体Pの生体磁場データ(生体磁場信号)を使用して、所定の間隔を置いてマトリックス状に配置されるボクセル毎に電流成分(電流信号)を再構成する。ボクセルについては、
図2で説明される。
【0027】
電流抽出部524は、各仮想電極とボクセルとの位置関係に基づいて、再構成解析部523により算出されたボクセルでの電流成分を使用して各仮想電極の電流成分を抽出する。例えば、電流抽出部524は、波形領域指定部512で受け付けた時間範囲において、神経走行に沿う第1仮想電極での電流成分(頭側を正、尾側を負とする)を、神経走行における神経軸索を伝導する軸索内電流として抽出する。また、電流抽出部524は、波形領域指定部512で受け付けた時間範囲において、神経軸索の周囲に位置する第2仮想電極から神経軸索に向かう電流成分を内向き電流として抽出する。
【0028】
波形演算部525は、電流抽出部524により抽出された第1仮想電極での軸索内電流の時間変化を示す電流波形を生成する。また、波形演算部525は、電流抽出部524により抽出された第2仮想電極での内向き電流の時間変化を示す電流波形を生成する。神経軸索外を流れる体積電流のうち、脱分極点に流入する電流成分である内向き電流は、神経機能を評価する上で重要である。
【0029】
画像表示部531は、後述する
図4から
図6に示すように、再構成解析部523により再構成された各ボクセルでの電流の向きと強度とを表す白い小さい矢印を、形態画像(X線画像)に重畳させて表示装置40cに表示させる。また、画像表示部531は、
図4から
図6に示すように、経路生成部521により算出された神経経路と、仮想電極生成部522により生成された仮想電極とをX線画像に重畳させて表示装置40cに表示させる。
【0030】
波形表示部532は、軸索内電流の電流データ値および内向き電流の電流データ値を時間順に並べることで、仮想電極での軸索内電流および内向き電流のそれぞれの時間変化を示す電流波形を画像データとして生成する。そして、波形表示部532は、生成した仮想電極毎の電流波形を、X線画像に重畳された仮想電極に対応付けて表示装置40cに表示させる。
【0031】
生体磁場信号データ541の記憶領域には、磁場計測装置10による被検体Pから発生する磁場の計測により得られた磁場データが格納される。形態画像データ542の記憶領域には、X線撮影装置30により撮影された被検体Pの磁場計測対象部位のX線画像データが格納される。
【0032】
解析設定値544の記憶領域には、磁場計測装置10による生体磁場の計測に必要な各種パラメータと、生体磁場の計測により得られた磁場データに使用するフィルター(ハイパスフィルター、ローパスフィルター)等の各種設定値とが予め格納される。また、解析設定値544の記憶領域には、表示装置40cに表示する画像上における電流の算出点であるボクセルの位置および電流波形を取得する仮想電極の位置等を示す位置情報が予め格納される。
【0033】
図2は、神経・筋活動電流のモデルの一例を示す説明図である。神経活動電流のモデルと筋活動電流のモデルとは互いに同様であるため、以下では、神経活動電流のモデルが説明される。
【0034】
図2は、図の上下方向に直線状に走行する神経の活動により電流が発生する様子を示しており、
図2の下側が末梢側であり、
図2の上側が中枢側である。例えば、末梢神経に電気刺激を与えることで、刺激が電流として神経軸索を下側から上側に向けて伝導される。
【0035】
このとき、
図2の上側(順方向)に向けて流れる軸索内電流および
図2の下側(逆方向)に向けて流れる軸索内電流と、神経軸索外を流れ、脱分極点に帰ってくる電流成分である体積電流とが発生する。
図2の上側に向けて流れる軸索内電流は、リーディング成分と称され、
図2の下側に向けて流れる軸索内電流は、トレイリング成分と称される。
【0036】
神経機能を詳細に評価するために、例えば、電流抽出部524は、ボクセル毎に再構成された電流成分に基づいて、神経軸索に沿って流れる軸索内電流の電流成分と脱分極点に流入する内向き電流の電流成分とを抽出する。軸索内電流は、神経走行に沿った方向の電流成分であり、内向き電流は、神経軸索の周囲から神経軸索に向かう電流成分である。例えば、内向き電流は、神経軸索の横断面方向に沿って神経軸索に向かう電流成分である。
【0037】
なお、筋活動電流を評価する場合、電流抽出部524は、筋線維に沿って筋線維を流れる筋線維内電流の電流成分と脱分極点に流入する内向き電流の電流成分とを抽出する。筋線維内電流は、筋線維に沿って筋線維中に流れる電流成分であり、内向き電流は、筋線維の周囲から筋線維に向かう電流成分である。例えば、内向き電流は、筋線維の横断面方向に沿って筋線維に向かう電流成分である。
【0038】
ここで、神経活動の原理を考えると、内向き電流の起源は、軸索内を伝導する神経信号または筋線維内を伝導する筋活動信号である。このため、神経に流入する内向き電流の総量は、神経軸索内を流れる軸索内電流の総量と等しい。また、筋線維に流入する内向き電流の総量は、筋線維内を流れる筋活動電流の総量と等しい。したがって、ある一方向から流入する内向き電流が弱くなった場合、別の方向から流入する内向き電流は強くなる。
【0039】
図3は、
図1の仮想電極生成部522により生成される仮想電極での電流強度の算出方法の一例を示す説明図である。
図3では、線形補間の手法により、マトリックス状に配置されたボクセル上で再構成された電流の強度から仮想電極の電流強度が算出される。この操作により仮想電極のX方向、Y方向、Z方向での電流の推定強度を算出することができる。
【0040】
なお、
図3では、説明を分かりやすくするため、ボクセルの間隔と仮想電極の間隔とを同程度にしているが、実際には、仮想電極の間隔は、ボクセルの間隔の数倍でもよく、任意に設定可能である。また、例えば、SQUID磁気センサが数cm間隔で配置されるのに対して、ボクセルは数mm間隔で配置される。
【0041】
なお、仮想電極での電流強度は、本発明者により検討されたRENS(REcursive Null Steering)フィルターを用いる手法を使用して算出されてもよい。この場合、各仮想電極での電流強度を線形補間法で算出する場合に比べて、短時間で精度よく算出することができる。
【0042】
図4は、被検体P(健常者)の示指と中指とに同時に刺激を印加したときの手根管手掌部での内向き電流の電流波形の変化と加算波形との例を示す図である。
図4の左側には、被検体Pの手掌部のX線画像に神経走行路、第1仮想電極および第2仮想電極を重ね合わせた重畳画像が示される。重畳画像には、マトリックス状に配置されたボクセルでの電流の向きと強度とを表す白い小さい矢印も含まれる。また、重畳画像には、同じ電流強度の位置を示す電流強度分布線(等高線状の曲線)が含まれる。電流強度分布線は、色が白いほど電流が強いことを示し、色が黒いほど電流が弱いことを示す。
【0043】
図4では、第1仮想電極は、丸印で示され、第2仮想電極は、X印で示される。第2仮想電極は、神経軸索(各第1仮想電極)の横断面方向に配置される。このため、各第2仮想電極の電流成分に基づいて神経軸索の横断面方向に沿う内向き電流の電流波形を生成することができる。
【0044】
符号Ltは、第1仮想電極の母指側に位置する第2仮想電極の列を示し、符号Rtは、第1仮想電極の小指側に位置する第2仮想電極の列を示す。列Rtの仮想電極に付した0から7までの数値は、電流波形との対応付けを示す電極番号を示す。列Ltの第2仮想電極の電極番号は、列Rtにおいて対応する第2仮想電極の電極番号と同じである。
【0045】
X線画像において母指と小指の外側にそれぞれ写っているケーブルに接続された端子は、X線画像(形態画像)とSQUID磁気センサによる磁場データの計測位置とを対応付けるために被検体Pとともに撮影される電極である。
【0046】
図4の右側には、列Ltの第2仮想電極での電流波形および列Rtの第2仮想電極での電流波形が示される。各第2仮想電極の電流波形は、神経軸索に伝導する内向き電流の時間変化を示す。また、
図4の右側には、列Ltの第2仮想電極での電流波形と列Rtの第2仮想電極での電流波形とを、電極番号毎に加算した電流波形(Lt+Rt)が示される。電流波形(Lt+Rt)のグラフ中に示す下向きの矢印は、内向き電流が、末梢側から中枢側に伝導していることを示す。電流波形の3つのグラフの右下に示す数値(この例では、4nAm)は、電流双極子を示す。
【0047】
図4に示す電流波形は、手根管手掌部の神経に異常がない健常者の計測結果を示すが、例えば、列Ltの電極番号6、5、4の電流波形は、振幅のピークがそろっており、正常ではない。また、列Ltの電極番号3の電流波形は、振幅のピークが減少しており、正常ではない。列Rtの電流波形は、正常に伝導しているものの、電流波形の振幅の大きさが不安定である。
【0048】
これに対して、電流波形(Lt)と電流波形(Rt)とを第2仮想電極毎に加算した電流波形(Lt+Rt)は、神経活動電流の正常な伝導を示している。このように、各第1仮想電極に対応する複数の第2仮想電極の電流波形を加算することで、正常な電流波形が示されることが分かる。したがって、電流波形(Lt)および電流波形(Rt)の少なくともいずれかの電流波形が正常でない場合にも、手根管手掌部の神経が圧迫されているか否かの診断に電流波形(Lt+Rt)を利用することができる。
【0049】
なお、
図4では、2つの電流波形(Lt)、(Rt)を加算する例が示されるが、加算する電流波形の数は、3以上でもよい。内向き電流は、第1仮想電極毎に、第1仮想電極の横断面方向の全周囲から第1仮想電極に向けて流れる。このため、2つの電流波形(Lt)、(Rt)に加えて、
図2のZ方向の内向き電流の電流波形が加算されてもよい。この際、Z方向の内向き電流は、第1仮想電極に向かう正方向と負方向の内向き電流(絶対値)を加算したものでもよい。
【0050】
図5は、被検体(健常者)の尺骨神経に刺激を印加したときの肘部管での内向き電流の電流波形の変化と加算波形との例を示す図である。
図4と同様の要素については、詳細な説明は省略する。
図5の左側に示す被検体Pの肘部のX線画像に重ね合われる要素は、
図4と同様である。例えば、列Rtの仮想電極に付した0から8までの数値は、電流波形との対応付けを示す電極番号を示す。
【0051】
図5においても、第2仮想電極は、神経軸索(各第1仮想電極)の横断面方向に配置される。このため、各第2仮想電極の電流成分に基づいて神経軸索の横断面方向に沿う内向き電流の電流波形を生成することができる。
【0052】
図5に示す電流波形において、例えば、列Ltの電極番号2の電流波形は、ピークが観測されず、正常でない。これに対して、電流波形(Lt)と電流波形(Rt)とを第2仮想電極毎に加算した電流波形(Lt+Rt)は、神経活動電流の正常な伝導を示している。したがって、電流波形(Lt)および電流波形(Rt)の少なくともいずれかの電流波形が正常でない場合にも、電流波形(Lt+Rt)を肘部管の神経が圧迫されているか否かの診断に電流波形(Lt+Rt)を利用することができる。
【0053】
図6は、被検体(患者)の示指と中指とに同時に刺激を印加したときの手根管手掌部での内向き電流の電流波形の変化と加算波形との例を示す図である。
図4と同様の要素については、詳細な説明は省略する。
【0054】
図6では、電流波形(Lt)および電流波形(Rt)の各々において、隣接する第2仮想電極間での振幅のピークの有無および伝導遅延にばらつきが見られ、電流波形が不安定である。このため、電流波形(Lt)および電流波形(Rt)では、どの仮想電極間で障害が発生しているかを判別することが困難である。
【0055】
一方、電流波形(Lt)と電流波形(Rt)とを第2仮想電極毎に加算した電流波形(Lt+Rt)では、不安定な電流波形の要素が改善され、破線枠で示す電極番号4の電流波形と電極番号5の電流波形との間で、振幅のピークの低下および伝導遅延が見られることが観測される。このため、電流波形(Lt+Rt)により神経機能の評価が可能になる。
【0056】
図7は、
図1の表示装置40cに表示される電流波形を選択するための表示ウィンドウの一例を示す図である。
図7に示す例では、表示ウィンドウの左側、中央、右側にそれぞれ軸索内電流の電流波形、内向き電流(Lt)の電流波形、内向き電流(Rt)の電流波形が表示される。
【0057】
表示ウィンドウへの電流波形の表示、非表示または電流波形の加算の指示は、マウス40aおよびキーボード40b等のユーザインタフェースにより、プルダウンメニューを表示させ、表示されたプルダウンメニューから選択することで受け付けられる。そして、プルダウンメニューから受け付けられた指示に応じた電流波形が、表示ウィンドウに再表示される。
【0058】
表示装置40cの表示ウィンドウに表示された複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つを、プルダウンメニュー等のユーザインタフェースを使用して選択することで、加算した電流波形を容易に得ることができる。また、神経機能の評価する医師等の評価者は、表示ウィンドウに表示された複数の内向き電流の電流波形を見ながら選択する内向き電流を決めることができる。これにより、評価者は、神経機能の評価に適切な内向き電流の電流波形を選択することができる。
【0059】
図8および
図9は、
図1の演算部520の動作の一例を示すフロー図である。
図8および
図9に示すフローは、データ処理装置50の制御方法の一例を示し、データ処理装置50に搭載されるCPU等のプロセッサが実行する制御プログラムにより実現される。
【0060】
まず、ステップS10において、演算部520の経路生成部521は、位置入力部511により受け付けられた経路情報に基づいて、末梢神経の神経走行路を算出する。例えば、位置入力部511は、操作者が表示装置40cに表示された形態画像を見ながら指定した画像上の複数の位置の座標を経路情報として受け付ける。
【0061】
例えば、経路生成部521は、操作者が指定した複数の位置の座標から神経走行路に沿うベジェ曲線を生成し、画像表示部531を制御して、生成したベジェ曲線を形態画像上に重畳して表示させる。これにより、実際の神経軸索または筋線維の曲線形状に合わせて神経経路を設定することができる。
【0062】
次に、ステップS12において、演算部520の仮想電極生成部522は、経路生成部521が算出した経路上(すなわち、神経走行上)に、間隔を置いて複数の第1仮想電極を配置する。なお、第1仮想電極の数および配置間隔は、マウス40aまたはキーボード40b等を介して予め入力される。次に、ステップS14において、演算部520の仮想電極生成部522は、第1仮想電極に対して神経走行路の両側に第2仮想電極をそれぞれ配置する。これにより、経路生成部521が設定した神経経路に沿う任意の位置に第1仮想電極および第2仮想電極を設定することができる。
【0063】
次に、ステップS16において、演算部520の再構成解析部523は、被検体Pの生体磁場データを使用して、ボクセル毎に電流成分を再構成する。次に、ステップS18において、演算部520の電流抽出部524は、各仮想電極とボクセルとの位置関係に基づいて、再構成解析部523により算出されたボクセルでの電流成分を使用して各仮想電極の電流成分を抽出する。例えば、電流抽出部524は、神経走行に沿う第1仮想電極での電流成分を、軸索内電流として抽出し、第2仮想電極から神経軸索上の第1仮想電極に向かう電流成分を内向き電流として抽出する。
【0064】
次に、ステップS20において、演算部520の波形演算部525は、電流抽出部524により抽出された第1仮想電極での軸索内電流および第2仮想電極での内向き電流の時間変化を示す電流波形をそれぞれ生成する。次に、ステップS22において、波形演算部525は、生成した電流波形を表示装置40cに表示させる指示を波形表示部532に出力する。これにより、
図7に示したように、軸索内電流および内向き電流の電流波形が表示装置40cの画面内の表示ウィンドウに表示される。
【0065】
次に、
図9のステップS24において、波形演算部525は、入力制御部510を介して電流波形の加算の指示の有無を判定する。波形演算部525は、電流波形の加算の指示がある場合、ステップS26を実行し、電流波形の加算の指示がない場合、ステップS30を実行する。ステップS26において、波形演算部525は、電流波形の加算の指示に基づいて電流波形を加算し、加算した電流波形を生成する。
【0066】
次に、ステップS28において、波形演算部525は、加算した電流波形を表示装置40cに表示させる指示を波形表示部532に出力する。これにより、例えば、
図4から
図6に示したように、加算後の電流波形が、加算前の電流波形とともに表示装置40cに表示される。ステップS28の後、処理はステップS30に移行される。
【0067】
ステップS30において、波形演算部525は、入力制御部510を介して電流波形を重畳表示させる重畳指示の有無を判定する。波形演算部525は、重畳指示がある場合、ステップS32を実行し、重畳指示がない場合、ステップS36を実行する。ステップS32において、波形演算部525は、重畳指示に基づいて電流波形を重畳し、重畳した電流波形を生成する。
【0068】
次に、ステップS34において、波形演算部525は、重畳した電流波形を表示装置40cに表示させる指示を波形表示部532に出力する。波形表示部532は、波形演算部525により重畳された電流波形を、重畳前の電流波形とともに表示装置40cに表示する。これにより、例えば、重畳した電流波形が、重畳前の電流波形とともに表示装置40cに表示される。ステップS34の後、処理はステップS36に移行される。
【0069】
例えば、波形演算部525は、外部入力に基づいて、電流波形(Lt)と電流波形(Rt)とを重畳し、あるいは電流波形(Lt)と電流波形(Lt+Rt)とを重畳する。重畳する電流波形の数は、3以上でもよい。電流波形を重畳して表示装置40cに表示することにより、評価者は、複数の電流波形の相違の程度を視覚的に認識することができる。この結果、例えば、評価者は、重畳された電流波形を参考にして、加算する電流波形を選択することができる。
【0070】
次に、ステップS36において、波形演算部525は、入力制御部510を介して電流波形の加算または重畳の終了の指示の有無を判定する。波形演算部525は、終了の指示がある場合、
図8および
図9に示す処理を終了し、終了の指示がない場合、処理をステップS24に戻す。
【0071】
図10および
図11は、
図1の表示装置40cの表示画面に表示される形態画像と加算前後の電流波形との一例を示す図である。
図10は、
図4に示した形態画像および内向き電流の電流波形に加えて、軸索内電流の電流波形が表示画面に表示される例が示される。
図11は、
図5に示した形態画像および内向き電流の電流波形に加えて、軸索内電流の電流波形が表示画面に表示される例が示される。
【0072】
図10および
図11に示すように、外部入力により選択された任意の電流波形を表示画面に表示することで、例えば、加算された電流波形(Lt+Rt)を加算前の電流波形(Lt)、(Rt)と並べて表示することができる。これにより、評価者は、加算前後の電流波形を視覚的に容易に認識することができ、加算後の電流波形が妥当であるか否かを判断することができる。
【0073】
図12は、
図1のデータ処理装置50のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。データ処理装置50は、CPU51とROM52とRAM53と外部記憶装置54とを有する。また、データ処理装置50は、入力インタフェース部55と出力インタフェース部56と入出力インタフェース部57と通信インタフェース部58とを有する。例えば、CPU51とROM52とRAM53と外部記憶装置54と入力インタフェース部55と出力インタフェース部56と入出力インタフェース部57と通信インタフェース部58とは、バスBUSを介して相互に接続される。
【0074】
CPU51は、OS(Operating System)およびアプリケーション等の各種プログラムを実行し、データ処理装置50の全体の動作を制御する。また、CPU51は、上述した制御プログラムを実行することにより生体磁場計測処理装置として機能するデータ処理装置50の制御方法を実施する。CPU51は、制御プログラムを実行するコンピュータの一例である。
【0075】
ROM52は、CPU51により実行される制御プログラムを含む各種プログラムおよび各種パラメータ等を保持する。RAM53は、CPU51により実行される各種プログラムや、プログラムで使用するデータ等を記憶する。外部記憶装置54は、HDDまたはSSD等であり、RAM53に展開される各種プログラムを記憶する。
【0076】
入力インタフェース部55には、データ処理装置50を操作する操作者等からの入力を受け付ける入力装置60が接続される。例えば、入力装置60は、
図1のマウス40a、キーボード40bまたはタブレット等である。出力インタフェース部56には、データ処理装置50が生成する各種画像、テキストまたは図形等を出力する出力装置70が接続される。例えば、出力装置70は、CPU51が実行する各種プログラムにより生成される表示画面等を表示する表示装置40c(
図1)またはプリンタ等である。
【0077】
入出力インタフェース部57には、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体80が接続される。例えば、記録媒体80には、CPU51が実行する制御プログラム等の各種プログラムが格納されてもよい。この場合、各種プログラムは、入出力インタフェース部57を介して記録媒体80からRAM53に転送される。なお、記録媒体80は、CD-ROMやDVD(Digital Versatile Disc:登録商標)等でもよく、この場合、入出力インタフェース部57は、接続する記録媒体80に対応するインタフェースを有する。通信インタフェース部58は、データ処理装置50をネットワーク等に接続する。
【0078】
以上、この実施形態では、第1仮想電極に対応する第2仮想電極の電流波形が正常でない場合にも、第1仮想電極毎に少なくとも2つの第2仮想電極の電流波形を加算することで、正常な電流波形を示すことができる。したがって、手根管手掌部または肘部管等の末梢神経が圧迫されているか否かの診断に加算した電流波形を利用することができる。この際、第2仮想電極を、各第1仮想電極の横断面方向に配置することで、各第2仮想電極の電流成分に基づいて神経軸索または筋線維の横断面方向に沿う内向き電流の電流波形を生成することができる。
【0079】
また、表示装置40cの表示ウィンドウに表示された複数の内向き電流の電流波形の少なくとも2つを、プルダウンメニュー等のユーザインタフェースを使用して選択することで、加算した電流波形を容易に得ることができる。神経機能の評価する評価者は、複数の内向き電流の電流波形を見ながら選択する内向き電流を決めることができるため、神経機能の評価に適切な内向き電流の電流波形を選択することができる。
【0080】
さらに、外部入力により選択された任意の電流波形を表示画面に表示することで、例えば、加算された電流波形(Lt+Rt)を加算前の電流波形(Lt)、(Rt)と並べて表示することができる。これにより、評価者は、加算前後の電流波形を視覚的に容易に認識することができ、加算後の電流波形が妥当であるか否かを判断することができる。
【0081】
電流波形を重畳することにより、評価者は、複数の電流波形の相違の程度を視覚的に認識することができる。この結果、例えば、評価者は、重畳された電流波形を参考にして、加算する電流波形を選択することができる。
【0082】
経路生成部521により、実際の神経軸索または筋線維の曲線形状に合わせて神経経路を設定することができる。また、仮想電極生成部522により、経路生成部521が設定した神経経路に沿う任意の位置に第1仮想電極および第2仮想電極を設定することができる。これにより、電流抽出部524は、神経軸索または筋線維の形状に沿う任意の位置での電流波形を抽出することができる。
【0083】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0084】
10 磁場計測装置
20 神経刺激装置
30 X線撮影装置
40a マウス
40b キーボード
40c 表示装置
50 データ処理装置
51 CPU
52 ROM
53 RAM
54 外部記憶装置
55 入力インタフェース部
56 出力インタフェース部
57 入出力インタフェース部
58 通信インタフェース部
60 入力装置
70 出力装置
80 記録媒体
100 生体磁場計測システム
510 入力制御部
511 位置入力部
512 波形領域指定部
513 波形選択部
520 演算部
521 経路生成部
522 仮想電極生成部
523 再構成解析部
524 電流抽出部
525 波形演算部
530 表示制御部
531 画像表示部
532 波形表示部
540 記憶部
541 生体磁場信号データ
542 形態画像データ
543 波形データ
544 解析設定値
BUS バス
P 被検体
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0085】
【非特許文献1】日本生体磁気学会誌 特別号、Vol.28 No.1 2015、第30回日本生体磁気学会大会論文集、脊磁計による中高年健常者の馬尾神経誘発磁界と馬尾神経伝導速度の測定
【非特許文献2】Senichi Ishii et al, "Conductive neuromagnetic fields in the lumbar spinal canal", Clinical Neurophysiology, Volume 123(2012) 1656-1661