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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178368
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】外装体
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20221125BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20221125BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20221125BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H02G3/30
B60R16/02 623U
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085131
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】押野 貴志
(72)【発明者】
【氏名】須山 博史
(72)【発明者】
【氏名】児島 直之
【テーマコード(参考)】
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD04
5G357DE08
5G363AA08
5G363BA02
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】補強部材に連結でき、また、少なくとも1本の線材を、補強部材とは分離した状態で保護しかつ補強部材の周りの比較的狭いスペースに配線できる外装体を提供する。
【解決手段】本発明の外装体1,1Aは、内部に少なくとも1本の線材2を配置した状態で被装着部3に取り付けられるように構成され、第1開口部6を有するアーチ状の外殻部材4と、第2開口部9を有しかつ外殻部材4の内側に配置されるアーチ状の内殻部材5とを備え、外殻部材4の内面と内殻部材5の外面とで区画される配線スペース12が形成され、内殻部材5の内側に被装着部3が配置され、外殻部材4と内殻部材5とはそれらの少なくとも一部が接合によって一体化され、第1開口部6および第2開口部9の各開口幅W1,W2を変化させたときに、配線スペース12の大きさが変化するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に少なくとも1本の線材を配置した状態で棒状の被装着部に取り付けられるように構成された外装体において、
前記被装着部の軸線方向に沿って延びる第1開口部を有するアーチ状の外殻部材と、
前記軸線方向に沿って延びる第2開口部を有し、かつ、前記外殻部材のアーチ長さよりも短いアーチ長さをもち、前記第2開口部を前記第1開口部と同じ向きに合わせた状態で前記外殻部材の内側に配置されるアーチ状の内殻部材と、
を備え、
前記外殻部材の内面と前記内殻部材の外面とで区画され、前記少なくとも1本の線材が配置される配線スペースが形成され、
前記内殻部材の内側に、前記被装着部が配置され、
前記外殻部材と前記内殻部材とはそれらの少なくとも一部が接合によって一体化されており、
前記第1開口部および前記第2開口部の各開口幅を変化させたときに、前記配線スペースの大きさが変化するように構成される
ことを特徴とする外装体。
【請求項2】
前記第1開口部および前記第2開口部の各開口幅を拡大する方向に外力を加えて、前記外殻部材および前記内殻部材を弾性変形させることによって、前記配線スペースを構成する前記外殻部材と前記内殻部材の間隔を増大させることができ、かつ、
前記第1開口部および前記第2開口部の各開口幅が狭くなる方向に作用する弾性復元力によって、前記配線スペースを構成する前記外殻部材と前記内殻部材の間隔を減少させるように構成される、請求項1に記載の外装体。
【請求項3】
前記外殻部材と前記内殻部材の少なくとも一方に、変形しやすくする変形容易部を有する、請求項1または2に記載の外装体。
【請求項4】
前記変形容易部は、前記外殻部材と前記内殻部材の少なくとも一方に、前記軸線方向に線状に延びかつ板厚を薄くした複数本の凹部として形成されている、請求項3に記載の外装体。
【請求項5】
前記配線スペースを挟んで互いに対向している前記外殻部材の内面と前記内殻部材の外面とのうちの少なくとも一方に、前記配線スペース内での前記線材の移動を抑制する移動抑制部を有する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の外装体。
【請求項6】
前記内殻部材の内側に配置された前記被装着部に対して前記内殻部材の移動を抑制する係止部材を更に備えている、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の外装体。
【請求項7】
前記外殻部材と前記内殻部材とのうちの少なくとも一方は、樹脂によって構成されている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の外装体。
【請求項8】
前記樹脂は発泡樹脂である、請求項7に記載の外装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に配索される線材を保護する外装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のインストルメントパネルの裏面側に配置された補強部材に、複数の電線を束ねて構成されるワイヤハーネスを組み付ける方法が記載されている。具体的には、特許文献1では、先ず、補強部材に当該補強部材とワイヤハーネスとの接触を抑制する干渉抑制部材を取り付け、次いで、干渉抑制部材に対して予めワイヤハーネスに取り付けたクランプを介してワイヤハーネスを取り付ける方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-73373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法では、補強部材とワイヤハーネスとの間に干渉抑制部材が配置されるため、この干渉抑制部材が介在することによるワイヤハーネスの設置高さが高くなってしまう問題点がある。言い換えれば、補強部材の外面に沿って配線されるワイヤハーネスのいわゆる設置スペースを大きく取らなければならなくなる。また、インストルメントパネルの裏面側に存在する内部スペースには制限があるため、上記のような設置構造にしてワイヤハーネスを取り付けると、ワイヤハーネスとその周辺に位置する他の部材との干渉が生じる可能性があり、また、他の部材の配置が困難になる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、例えば車両のインストルメントパネルの裏面側の内部スペースに配置された棒状の補強部材に連結でき、また、少なくとも1本の線材を、補強部材とは分離した状態で保護し、かつ補強部材の周りに存在する比較的狭いスペースに補強部材の軸線方向に沿って配線することができる外装体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、被装着部の外周側に取り付けられるアーチ状の内殻部材に対して内殻部材よりもアーチ長さの長いアーチ状の外殻部材を重ね合わせて外装体を構成し、それらの外殻部材と内殻部材とによって区画された配線スペースに少なくとも1本の線材を配置することによって、前記少なくとも1本の線材を、補強部材とは分離した状態で保護し、かつ補強部材の周りに存在する比較的狭いスペースに補強部材の軸線方向に沿って配線することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)本発明は、内部に少なくとも1本の線材を配置した状態で棒状の被装着部に取り付けられるように構成された外装体において、前記被装着部の軸線方向に沿って延びる第1開口部を有するアーチ状の外殻部材と、前記軸線方向に沿って延びる第2開口部を有し、かつ、前記外殻部材のアーチ長さよりも短いアーチ長さをもち、前記第2開口部を前記第1開口部と同じ向きに合わせた状態で前記外殻部材の内側に配置されるアーチ状の内殻部材と、を備え、前記外殻部材の内面と前記内殻部材の外面とで区画され、前記少なくとも1本の線材が配置される配線スペースが形成され、前記内殻部材の内側に、前記被装着部が配置され、前記外殻部材と前記内殻部材とはそれらの少なくとも一部が接合によって一体化されており、前記第1開口部および前記第2開口部の各開口幅を変化させたときに、前記配線スペースの大きさが変化するように構成されることを特徴とする外装体である。
【0008】
(2)前記第1開口部および前記第2開口部の各開口幅を拡大する方向に外力を加えて、前記外殻部材および前記内殻部材を弾性変形させることによって、前記配線スペースを構成する前記外殻部材と前記内殻部材の間隔を増大させることができ、かつ、前記第1開口部および前記第2開口部の各開口幅が狭くなる方向に作用する弾性復元力によって、前記配線スペースを構成する前記外殻部材と前記内殻部材の間隔を減少させるように構成される、上記の(1)に記載の外装体である。
【0009】
(3)前記外殻部材と前記内殻部材の少なくとも一方に、変形しやすくする変形容易部を有する、上記の(1)または(2)に記載の外装体である。
【0010】
(4)前記変形容易部は、前記外殻部材と前記内殻部材の少なくとも一方に、前記軸線方向に線状に延びかつ板厚を薄くした複数本の凹部として形成されている、上記の(3)に記載の外装体である。
【0011】
(5)前記配線スペースを挟んで互いに対向している前記外殻部材の内面と前記内殻部材の外面とのうちの少なくとも一方に、前記配線スペース内での前記線材の移動を抑制する移動抑制部を有する、上記の(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の外装体である。
【0012】
(6)前記内殻部材の内側に配置された前記被装着部に対して前記内殻部材の移動を抑制する係止部材を更に備えている、上記の(1)ないし(5)のいずれか一項に記載の外装体である。
【0013】
(7)前記外殻部材と前記内殻部材とのうちの少なくとも一方は、樹脂によって構成されている、上記の(1)ないし(6)のいずれか一項に記載の外装体である。
【0014】
(8)前記樹脂は発泡樹脂である、上記の(7)に記載の外装体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、例えば車両のインストルメントパネルの裏面側の内部スペースに配置された棒状の補強部材に連結でき、また、少なくとも1本の線材を、補強部材とは分離した状態で保護し、かつ補強部材の周りに存在する比較的狭いスペースに補強部材の軸線方向に沿って配線することができる外装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る外装体の一例を示す断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態における外殻部材を構成するアウタープレートと内殻部材を構成するインナープレートとを示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る外装体を弾性変形させて配線スペースを構成する外殻部材と内殻部材の間隔を増大させた状態を示す斜視図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る外装体の一例を示す断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る外装体の一例を示す斜視図である。
図6】本発明の第2の実施形態における外殻部材を構成するアウタープレートと内殻部材を構成するインナープレートとを示す斜視図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る外装体を弾性変形させて配線スペースを構成する外殻部材と内殻部材の間隔を増大させた状態を示す斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る外装体の斜視図であって、配線スペースに線材を配置した後、被装着部への取り付け前の外装体の状態を示す図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る外装体の一例を示す断面図である。
図10】本発明の第4の実施形態に係る外装体の一例を示す断面図である。
図11】本発明の第5の実施形態に係る外装体の一例を示す断面図である。
図12】本発明の第6の実施形態に係る外装体の一例を示す断面図である。
図13】本発明の第7の実施形態に係る外装体の一例を示す断面図である。
図14】本発明の第8の実施形態に係る外装体の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態に係る外装体について、以下で説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
(外装体)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る外装体の一例を示す断面図である。図1に示す外装体1は、内部に少なくとも1本の線材2(図1では二点鎖線で示す。)を配置した状態で棒状の被装着部3(図1では一点鎖線で示す。)に取り付けられるように構成されている。上記でいう「線材」としては、一例として、電線やケーブルなどを挙げることができ、また、これらに加え、複数の電線または複数のケーブルなどを束ねた電線束やワイヤハーネスなどを挙げることができる。上記の「被装着部」は、棒状をなし、あるいは、そのような棒状の部分を有していればよく、特に限定はしないが、例えば車両のインストルメントパネルの裏面側の内部スペースに配置された棒状をなす補強部材、あるいは、そのような棒状の部分を有する補強部材が挙げられる。つまり、外装体1は、被装着部3の軸線方向に延びており、外装体1の幾何学的な中心軸線Cは、被装着部3の軸線とほぼ平行になっている。また、外装体1は以下に説明するように、上述した構成の被装着部3に対して着脱可能に構成されている。なお、このような補強部材は、インパネ用のリインフォースメントと称されることがある。
【0019】
外装体1は、主要な構成要素として外殻部材4と内殻部材5とを備えている。
【0020】
(外殻部材)
外殻部材4は被装着部3の軸線方向に沿って延びる第1開口部6を有していて、外殻部材4の外形は、図1に示す中心軸線Cに対して直交する断面図で見てアーチ状に形成されている。具体的には、図1に示す実施形態の外装体1では、外殻部材4の外形は、滑らかに湾曲したアーチ状を成している。ここで、アーチ状とは、有端のリング状、すなわち図1に示す断面図において、第1開口部6の縁部7,8同士が互いに離隔していて環状に閉じていない筒形状を意味している。具体的には、アーチ状としてはC字形状やU字形状、馬蹄形状などを挙げることができる。第1開口部6の開口幅W1は、図1に示す実施形態では、被装着部3の外形寸法(図1では径寸法)よりも狭く設計される。これは、被装着部3に取り付けた外装体1の脱落を抑制するためである。
【0021】
外殻部材4を構成する材料としては、弾性変形することが可能な材料であればよく、特に限定はしないが、例えば樹脂等が挙げられる。樹脂としては、成形性や加工性、溶接性あるいは接着性などの点で熱可塑性樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂としては例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0022】
また、上記の樹脂は、発泡樹脂であることが好ましい。外殻部材4を構成する材料に発泡樹脂を用いることで、外殻部材4をソリッド樹脂によって構成する場合と比較して、軽量化が図れ、加えて、外殻部材4の曲げ弾性率を小さくできる。つまり、外殻部材4、および、その外殻部材4によって構成された外装体1を柔らかくすることができ、外装体1を容易に弾性変形させて後述する配線スペースに線材2を配置あるいは挿入することができる。また、外装体1を容易に弾性変形させて被装着部3に外装体1を取り付けると共に、弾性変形した外装体1をその弾性復元力によって容易に元の形状に復元できる。さらに、配線スペース内に挿入あるいは配置した線材2と、外殻部材4とが繰り返し接触することによる、線材2の損傷や摩耗を防止もしくは抑制することができる。
【0023】
発泡樹脂の発泡密度は特には限定されないが、例えば200kg/m以上、1000kg/m以下の範囲にすることが好ましい。特に、外装体1の弾性変形の容易さや、軽量性、機械的強度などのバランスを向上させる点で、発泡樹脂の発泡密度は250kg/m以上、600kg/m以下の範囲であることがより好ましく、300kg/m以上、550kg/m以下の範囲であることが特に好ましい。
【0024】
外殻部材4の板厚は、特には限定されないが、外殻部材4の弾性変形の容易さや、軽量化、機械的強度などのバランス性能をより向上させる点で、例えば0.50mm以上、5.0mm以下の範囲であることが好ましく、1.0mm以上、2.0mm以下の範囲であることがより好ましい。
【0025】
(内殻部材)
内殻部材5は、被装着部3の軸線方向に沿って延びる第2開口部9を有し、アーチ状に形成されている。内殻部材5の外形は、図1に示す例では、外殻部材4と同様に、滑らかに湾曲したアーチ状を成している。第2開口部9の開口幅W2は、第1開口部6の開口幅W1とほぼ同じ開口幅に設定されていてもよく、あるいは、僅かに広くあるいは狭く設定されていてもよい。図1に示す実施形態では、各開口幅W1,W2をほぼ同じ開口幅に形成した場合を示している。
【0026】
内殻部材5のアーチ長さは、外殻部材4のアーチ長さよりも短く設定されている。ここで、アーチ長さとは、図1に示す断面図において、外殻部材4や内殻部材5の外面に沿って測定したときの沿面距離を意味している。
【0027】
内殻部材5を構成する材料については、弾性変形することが可能な材料であればよく、特に限定はしないが、例えば樹脂等が挙げられる。樹脂としては、外殻部材4のところで挙げたのと同様の熱可塑性樹脂等を用いればよい。また、その樹脂は上記の発泡樹脂であることが好ましい。内殻部材5を構成する材料に発泡樹脂を用いることで、内殻部材5をソリッド樹脂によって構成する場合と比較して、軽量化が図れ、加えて、内殻部材5の曲げ弾性率を小さくできる。つまり、内殻部材5、および、その内殻部材5によって構成された外装体1を柔らかくすることができ、外装体1を容易に弾性変形させて上述した配線スペースに線材2を配置あるいは挿入することができる。また、外装体1を弾性変形させて被装着部3に外装体1を取り付けたり、弾性変形した外装体1をその弾性復元力によって容易に元の形状に復元したりできる。さらに、配線スペース12内に挿入あるいは配置した線材2と、内殻部材5とが繰り返し接触することによる、線材2の損傷や摩耗を防止もしくは抑制することができる。これと同様に、装着スペース13内の被装着部3と内殻部材5とが繰り返し接触することによる、被装着部3の損傷や摩耗を防止もしくは抑制することができる。
【0028】
なお、外殻部材4と内殻部材5とのうち、少なくとも一方が上述した樹脂によって構成されていることが好ましく、両方が上述した樹脂によって構成されていることがより好ましい。外殻部材4と内殻部材5との両方を上述した樹脂によって構成すれば、いずれか一方を上述した樹脂によって構成し、いずれか他方を前記樹脂よりも硬い材料によって構成した場合と比較して、外装体1を容易に弾性変形させることができる。また、外殻部材4と内殻部材5とのうち、少なくとも一方が上述した発泡樹脂によって構成されていることが好ましく、両方が上述した発泡樹脂によって構成されていることが更に好ましい。外殻部材4と内殻部材5との両方を上述した発泡樹脂によって構成すれば、外殻部材4と内殻部材5との両方を前記樹脂によって構成した場合と比較して、外装体1を更に容易に弾性変形させることができる。また、外殻部材4や内殻部材5に対して線材2や被装着部3などが繰り返し接触することによる、それらの損耗を更に防止もしくは抑制することができる。
【0029】
内殻部材5の板厚は、特には限定されないが、内殻部材5の弾性変形の容易さや、軽量化、機械的強度などのバランス性能をより向上させる点で、例えば0.50mm以上、5.0mm以下の範囲であることが好ましく、1.0mm以上、2.0mm以下の範囲であることがより好ましい。
【0030】
そして、第1開口部6と第2開口部9とを同じ向きに合わせた状態で外殻部材4の内側に内殻部材5が配置されている。具体的には、外殻部材4の縁部7,8に対して、内殻部材5における第2開口部9の縁部10,11をほぼ重ね合わせた状態で外殻部材4の内側に内殻部材5が配置されている。つまり、内殻部材5は、外殻部材4の内面側のスペースに対して第1開口部6の側に偏った状態で外殻部材4の内側に配置されている。
【0031】
外殻部材4と内殻部材5とはそれらの少なくとも一部が互いに接合されて一体化されている。具体的には、外殻部材4の縁部7,8のうちの一方の縁部7と、これに対向し、あるいは、接触している内殻部材5の縁部10,11のうちの一方の縁部10とが互いに接合されて一体化されている。これと同様に、外殻部材4の縁部7,8のうちの他方の縁部8と、これに対向し、あるいは、接触している内殻部材5の縁部10,11のうちの他方の縁部11とが互いに接合されて一体化されている。つまり、上述した「それらの少なくとも一部」とは、互いに対向し、あるいは、互いに接触している一方の縁部7,10同士、および、他方の縁部8,11同士を意味している。それら外殻部材4と内殻部材5とを接合する手段や方法は従来知られている接合手段や接合方法であってよく、例えば、超音波溶着や接着剤、両面テープ、リベット止め、ボルト止めなどであってよい。
【0032】
そして、図1に示すように、外殻部材4の内面と内殻部材5の外面とで区画され、少なくとも1本の線材2が配置される配線スペース12が形成されている。その配線スペース12は、外装体1の中心軸線Cに沿って延びている。外装体1は、上述したように弾性変形する材料によって構成されているため、詳細は後述するが、第1開口部6および第2開口部9の各開口幅W1,W2を変化させたときに、配線スペース12の大きさが変化するようになっている。具体的には、第1開口部6および第2開口部9の各開口幅W1,W2を拡大する方向に外装体1に外力を加えて、外殻部材4および内殻部材5を弾性変形させることによって、配線スペース12を構成する外殻部材4と内殻部材5との間隔、すなわち配線スペースの高さHを増大させることができ、かつ、第1開口部6および第2開口部9の各開口幅W1,W2が狭くなる方向に作用する弾性復元力によって、配線スペース12を構成する外殻部材4と内殻部材5との間隔Hを減少させるようになっている。すなわち、外装体1に上述した外力を加えると、上述した外力を外装体1に加えていない場合と比較して、配線スペース12は、全体的に広くなって、高さHが増大するようになっている。一方、上述した外力を取り除くと、外装体1はその弾性復元力によって元の形状に戻り、配線スペース12は、全体的に狭くなって、高さHが低くなるようになっている。なお、図1は、外装体1に外力を加えていない状態を示している。
【0033】
内殻部材5の内面側に、被装着部3を配置(収容)するための装着スペース13が形成されている。そのため、被装着部3に外装体1を取り付けると、外装体1は被装着部3に沿った状態となり、あるいは、巻き付けられた状態となる。
【0034】
次に、本発明の第1の実施形態に係る外装体1の製造方法の一例について説明する。先ず、上述した樹脂や発泡樹脂によって構成された素材プレートを用意し、これに打ち抜き加工を行って外殻部材4となるアウタープレート14と、内殻部材5となるインナープレート15とをそれぞれ形成する。上記の打ち抜き加工は従来知られた打ち抜き加工、例えば、トムソン加工などであってよい。
【0035】
図2は、素材プレートから打ち抜いて形成したアウタープレート14とインナープレート15との一例を示す斜視図である。なお、図2において、矢印L1で示す方向(以下、L1方向と記す。)における各プレート14,15の長さが上述したアーチ長さに相当している。そのため、L1方向における各プレート14,15の長さを変更すると、外殻部材4および内殻部材5の各アーチ長さを変更することができる。ここに示す例では、L1方向におけるアウタープレート14の長さはインナープレート15よりも長く設定されている。また、それらのプレート14,15の各長さ、すなわち、各プレート14,15の長さの差や比を変更することによって、図1に示す外装体1の完成品の状態での配線スペース12の高さHを変更できる。また、矢印L2で示す方向(以下、L2方向と記す。)は、図1に示す完成品の状態での外装体1の中心軸線Cや被装着部3の軸線が延在する方向に相当する。なお、図2において、L2方向での各プレート14,15の長さはほぼ同じ長さに設定されており、また、各プレート14,15の板厚はほぼ同じに設定されている。
【0036】
次いで、各プレート14,15を互いに重ね合わせる。また、アウタープレート14がインナープレート15の外側に位置するように、各プレート14,15をアーチ状に撓ませて、あるいは、折り曲げてアウタープレート14の一方の縁部7とインナープレート15の一方の縁部10とをほぼ一致させると共に、アウタープレート14の他方の縁部8とインナープレート15の他方の縁部11とをほぼ一致させる。一致させた縁部7および縁部10ならびに縁部8および縁部11をそれぞれ接合する。こうして図1に示す外装体1を構成する。
【0037】
本発明の実施形態に係る外装体1の作用および効果について説明する。図1に示す外装体1の開口部の開口幅、つまり上述した各開口部6,9の開口幅W1,W2を拡大させる方向の外力を外装体1に加えると、外装体1を構成する外殻部材4および内殻部材5は、アーチ状から、それぞれ外装体1をアーチ状に変形させる前のアウタープレート14およびインナープレート15の形状(平面状)に近づくように弾性変形する。外殻部材4は、内殻部材5よりもアーチ長さが長いため、例えば図3に示すように、内殻部材5を平面状になるように弾性変形させた場合には、外殻部材4は、内殻部材5とのアーチ長さの差分だけ内殻部材5の外面から(山状に)大きく離隔するように弾性変形する。その結果、外殻部材4の内面と内殻部材5の外面との間隔は、図1に示すアーチ状の外装体1における外殻部材4の内面と内殻部材5の外面との間隔に比べて増大する。
【0038】
このように外装体1に上述したような外力を加えて、外殻部材4と内殻部材5との間隔を増大させ、配線スペース12の高さHを高くすることによって、線材2だけではなく、例えば線材に連結されたコネクタなどのある程度サイズの大きい部材についても、配線スペース12を容易に通過させることができる。また、外装体1は、図3に示すように丸みを帯びた扁平な三角形状になるので、被装着部3とその周囲の部材との間のスペースが狭い場合であっても、外装体1の縁部7、8、10、11のうち、例えば、一方の縁部7、10をそのスペースに挿入して被装着部3の外周部に外装体1を巻き付けることができる。
【0039】
外装体1は、上述した外力を取り除くと、第1開口部6および第2開口部9の各開口幅W1、W2が狭くなる方向に作用する弾性復元力によって、配線スペース12を構成する外殻部材4と内殻部材5との間隔が減少する。具体的には、上述した外力を取り除くと、外殻部材4および内殻部材5には、弾性復元力によって、アーチ状に戻る方向に変形する。その結果、外装体1は、図3に示す丸みを帯びた扁平な三角形状から図1に示すようなアーチ状に戻り、配線スペース12は三日月状となって、配線スペース12の高さHは、図1に示すように減少する。また、これにより、つまり復元の過程で被装着部3の外周部に外装体1が巻き付けられ、装着スペース13内に被装着部3が配置される。
【0040】
このように、本開示によれば、例えば車両のインストルメントパネルの裏面側の内部スペースに配置された棒状の補強部材である被装着部3に外装体1を連結できる。つまり、被装着部3に対して沿わせた状態で外装体1を取り付けることができるため、外装体1の設置スペースを従来の構成に比べて低減することができる。また、少なくとも1本の線材2を、配線スペース12に配置し、その状態で被装着部3に外装体1を連結するので、被装着部3とは分離した状態で線材2を保護することができる。しかも、被装着部3に外装体1を取り付けた図1に示す状態での配線スペース12の高さHは、図3に示す状態での配線スペース12の高さHよりも低いから、被装着部3の周りに存在する比較的狭いスペースに被装着部3の軸線方向に沿って配線することができる。さらに、図1に示す状態では、配線スペース12を構成している外殻部材4の内面と内殻部材5の外面とによって線材2が挟み付けられ、あるいは、配線スペース12が狭いことによって線材2はその内部で移動しにくくなる。そのため、配線スペース12内で線材2が移動することによる線材2の摩耗や損傷を防止もしくは抑制することができる。
【0041】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態に係る外装体の一例を示す断面図であり、図5は、本発明の第2の実施形態に係る外装体の一例の斜視図である。なお、図4および図5で示す第2の実施形態の外装体1Aにおいて、第1の実施形態の外装体1と同じ構成要素については、同じ符号を付してその説明を省略する。図4および図5に示す第2の実施形態の外装体1Aは、第1開口部6および第2開口部9の各開口幅W1、W2を拡大する方向に外力が加えられた場合、外装体1Aを変形しやすい構成にするため、外殻部材4と内殻部材5の少なくとも一方に、変形しやすくする変形容易部16を有する場合の構成を示したものであり、好適な実施形態である。なお、図4および図5には、外殻部材4の外面と内殻部材5の外面の双方に変形容易部16を形成した例を示してあるが、外殻部材4と内殻部材5とのうちの一方に変形しやすくする変形容易部が形成されていてよい。
【0042】
変形容易部16は、外殻部材4と内殻部材5の少なくとも一方に、軸線方向に線状に延びかつ板厚を薄くした複数本の凹部として形成されていることが好ましい。また、変形容易部16は、外殻部材4の外面に形成されていることが好ましい。さらに、各変形容易部16は、互いにほぼ平行であって、かつ、変形容易部16同士の間の間隔はほぼ一定に設定されていることが好ましい。なお、変形容易部16は、図5に示すように、中心軸線Cに沿って連続的に延在するように形成されていてよい。あるいは、これに替えて、中心軸線Cに沿って断続的に延在するように形成されていてもよい。
【0043】
それらの変形容易部16は、例えば、外殻部材4や、外殻部材4を構成するアウタープレート14を切削したり、外殻部材4やアウタープレート14に切り込みを入れたりして形成することができる。あるいは、変形容易部16は、外殻部材4やアウタープレート14の板厚方向に貫通して形成したスリットや孔であってもよい。要は、変形容易部16は、変形容易部16が形成されている部分における、外殻部材4やアウタープレート14の剛性や強度を低下させて、全体として外殻部材4やアウタープレート14の弾性変形を容易に生じさせるように構成されていればよい。言い換えれば、変形容易部16は脆弱部と言うことができる。そのため、変形容易部16の数や深さを増減することによって、外殻部材4やアウタープレート14に容易に弾性変形を生じさせたり、あるいは、弾性変形を生じさせにくくしたりすることができる。例えば、変形容易部16の数や深さを増大すると、その数が少なくまた深さが浅い場合と比較して、外殻部材4やアウタープレート14を容易に弾性変形させることができる。
【0044】
外殻部材4における変形容易部16同士の間の部分は、中心軸線Cに沿って延びるパネルとなっている。そのため、外殻部材4は、図4図5に示すように、変形容易部16が形成されている部分を角とした多角形を成している。外殻部材4に形成する変形容易部16の数を増加させると、図4に示す断面図において、外殻部材4のアーチ長さに沿う各パネルの幅が狭くなるので外殻部材4は全体として丸みを帯びた形状あるいは湾曲した形状になる。これに対して外殻部材4に形成する変形容易部16の数を減少させると、図4に示す断面図において、各パネルの幅が拡大するので外殻部材4は全体としていわゆる角張った形状になる。
【0045】
内殻部材5の外面に、外殻部材4と同様に、内殻部材5を変形しやすくする変形容易部16が形成されている。すなわち、変形容易部16は、軸線方向に線状に延びかつ板厚を薄くした複数本の凹部として形成されている。また、各変形容易部16は図4および図5に示すように、互いにほぼ平行であって、かつ、変形容易部16同士の間の間隔はほぼ一定に設定されている。なお、変形容易部16は図5に示すように、中心軸線Cに沿って連続的に延在するように形成されていてよい。あるいは、これに替えて、中心軸線Cに沿って断続的に延在するように形成されていてもよい。
【0046】
内殻部材5における変形容易部16同士の間の部分は、中心軸線Cに沿って延びるパネルとなっている。そのため、内殻部材5は、図4図5に示すように、外殻部材4と同様に、変形容易部16が形成されている部分を角とした多角形を成している。そのため、内殻部材5に形成する変形容易部16の数を増加させると、図4に示す断面図において、内殻部材5のアーチ長さに沿う各パネルの幅が狭くなるので内殻部材5は全体として丸みを帯びた形状あるいは湾曲した形状になる。これに対して内殻部材5に形成する変形容易部16の数を減少させると、図4に示す断面図において、各パネルの幅が拡大するので内殻部材5は全体としていわゆる角張った形状になる。つまり、内殻部材5の外面に形成する変形容易部16の数を増減することによって、内殻部材5の形状を被装着部3の外形に倣った形状とすることができる。なお、他の構成は図1ないし図3に示す構成と同様であるため、図1ないし図3に示す構成と同様の部分には図1ないし図3と同様の符号を付してその説明を省略する。
【0047】
本発明の第2の実施形態に係る外装体1Aの製造方法の一例について説明する。先ず、上述した樹脂や発泡樹脂によって構成された素材プレートを用意し、これに打ち抜き加工を行って外殻部材4となるアウタープレート14と、内殻部材5となるインナープレート15とをそれぞれ形成する。また、これとほぼ同時に各プレート14,15に変形容易部16を形成する。上記の打ち抜き加工としては、いわゆるトムソン加工やビク抜き加工などと称される打ち抜き加工を挙げることができる。そのような打ち抜き加工であれば、素材プレートから各プレート14,15を打ち抜くときに、各プレート14,15に変形容易部16をほぼ同時に形成することができる。
【0048】
図6は、アウタープレート14とインナープレート15との一例を示す斜視図である。なお、図6において、L1方向での各プレート14,15の長さが図4図5に示す外装体1Aの完成品の状態での各殻部材4,5のアーチ長さに相当しており、変形容易部16が延びているL2方向が被装着部3の軸線方向に相当している。ここに示す例では、L1方向における各プレート14,15の各長さ、すなわち、各プレート14,15の長さの差や比を変更することによって、図4図5に示す外装体1Aの完成品の状態での配線スペース12の高さHを変更できる。なお、図6において、L2方向での各プレート14,15の長さはほぼ同じ長さに設定されており、また、各プレート14,15の板厚はほぼ同じに設定されている。
【0049】
次いで、インナープレート15における変形容易部16が形成されている面と、アウタープレート14における変形容易部16が形成されていない面とを互いに重ね合わせる。そして、アウタープレート14がインナープレート15の外側に位置するように、各プレート14,15をアーチ状に撓ませて、あるいは、折り曲げてアウタープレート14の一方の縁部7とインナープレート15の一方の縁部10とをほぼ一致させると共に、アウタープレート14の他方の縁部8とインナープレート15の他方の縁部11とをほぼ一致させる。第2の実施形態では、各プレート14,15の外面に変形容易部16が形成されているため、第1の実施形態と比較して、各プレート14,15を容易に撓ませたり、折り曲げたりすることができる。また、縁部7,8,10,11同士がほぼ一致している状態で、縁部7,8,10,11同士を互いに接合する。こうして図4図5に示す外装体1Aを構成する。
【0050】
本発明の第2の実施形態に係る外装体1Aの作用および効果について説明する。第2の実施形態に係る外装体1Aは、上述したように、各殻部材4,5の外面に変形容易部16が形成されているため、第1の実施形態に係る外装体1と比較して弾性変形しやくなっている。そのため、第1の実施形態に係る外装体1を弾性変形させる上述した外力よりも小さい外力によって第2の実施形態に係る外装体1Aを容易に弾性変形させることができる。
【0051】
すなわち、図4図5に示す外装体1Aの各開口幅W1,W2を拡大させる方向の外力を外装体1Aに加えると、外装体1Aを構成する外殻部材4および内殻部材5は、アーチ状から、それぞれ外装体1Aをアーチ状に変形させる前のアウタープレート14およびインナープレート15の形状(平面状)に近づくように弾性変形する。外殻部材4は、内殻部材5よりもアーチ長さが長いため、例えば図7に示すように、内殻部材5を平面状になるように弾性変形させた場合には、外殻部材4は、内殻部材5とのアーチ長さの差分だけ内殻部材5の外面から(山状に)大きく離隔するように弾性変形する。その結果、外殻部材4の内面と内殻部材5の外面との間隔は、図4図5に示すアーチ状の外装体1Aにおける外殻部材4の内面と内殻部材5の外面との間隔に比べて増大する。
【0052】
このように外装体1Aに上述したような外力を加えて、外殻部材4と内殻部材5との間隔を増大させ、配線スペース12の高さHを高くすることによって、線材2だけではなく、例えば線材2に連結されたコネクタなどのある程度サイズの大きい部材についても、第1の実施形態と同様に、配線スペース12を容易に通過させることができる。また、外装体1Aは、図7に示すように丸みを帯びた扁平な三角形状になるので、被装着部3とその周囲の部材との間のスペースが狭い場合であっても、外装体1Aの縁部7、8、10、11のうち、例えば、一方の縁部7、10をそのスペースに挿入して被装着部3の外周部に外装体1Aを巻き付けることができる。
【0053】
外装体1Aは、上述した外力を取り除くと、第1開口部6および第2開口部9の各開口幅W1、W2が狭くなる方向に作用する弾性復元力によって、配線スペース12を構成する外殻部材4と内殻部材5との間隔が減少する。具体的には、上述した外力を取り除くと、外殻部材4および内殻部材5には、弾性復元力によって、アーチ状に戻る方向に変形する。その結果、外装体1Aは、図7に示す丸みを帯びた扁平な三角形状から図4図5に示すようなアーチ状に戻り、配線スペース12は三日月状となって、配線スペース12の高さHは、図4図5に示すように減少する。また、これにより、つまり復元の過程で被装着部3の外周部に外装体1Aが巻き付けられ、装着スペース13内に被装着部3が配置される。
【0054】
このように、本開示によれば、例えば車両のインストルメントパネルの裏面側の内部スペースに配置された棒状の補強部材である被装着部3に外装体1Aを連結できる。つまり、被装着部3に対して沿わせた状態で外装体1Aを取り付けることができるため、外装体1Aの設置スペースを従来の構成に比べて低減することができる。また、少なくとも1本の線材2を、配線スペース12に配置し、その状態で被装着部3に外装体1Aを連結するので、被装着部3とは分離した状態で線材2を保護することができる。図8はその状態を示している。しかも、被装着部3に外装体1Aを取り付けた図4図5に示す状態での配線スペース12の高さHは、図7に示す状態での配線スペース12の高さHよりも低いから、被装着部3の周りに存在する比較的狭いスペースに被装着部3の軸線方向に沿って線材2を配線することができる。さらに、図4図5図8に示す状態では、配線スペース12を構成している外殻部材4の内面と内殻部材5の外面とによって線材2が挟み付けられ、あるいは、配線スペース12が狭いことによって線材2はその内部で移動しにくくなる。そのため、配線スペース12内で線材2が移動することによる線材2の摩耗や損傷を防止もしくは抑制することができる。そして、第2の実施形態では、外殻部材4と内殻部材5とは共に、変形容易部16が形成されている部分を角とした多角形を成しているため、配線スペース12内において、外殻部材4や内殻部材5のパネルに沿って線材2を這わせて配置することができる。すなわち、線材2の配置位置をほぼ定めることができ、これにより、配線スペース12内での線材2の位置ずれのリスクを低減できる。また、外殻部材4の外面に、平坦なパネルが形成されているので、そのパネルに対して、例えば、テープ巻きクランプなどの固定部材を溶着やテープなどによって容易に取り付けることができる。そして、車両に形成された取り付け孔に、上記のテープ巻きクランプの突起部分を嵌合することによって、車両に外装体1Aを容易に固定することができる。
【0055】
このように、第2の実施形態に係る外装体1Aは、第1の実施形態に係る外装体1よりも小さい外力によって容易に弾性変形させることができると共に、第1の実施形態に係る外装体1とほぼ同様の作用・効果を得ることができる。
【0056】
<第3の実施形態>
図9は、本発明の第3の実施形態に係る外装体の一例を示す斜視図である。ここに示す外装体1Bの外殻部材4と内殻部材5とのそれぞれは、いわゆるプラスチックダンボールによって構成されてよい。内殻部材5を例として説明する。内殻部材5を構成するインナープレート15は、一対の平板状のライナー18と、細長い板状の複数のリブ17とを有しており、一対のライナー18によって、互いにほぼ平行であってかつ一定の間隔で配置された複数のリブ17を挟みつけて構成されている。そのため、互いに隣接するリブ17同士の間には、リブ17の長さ方向に延びるスペースが形成される。各ライナー18における上記のスペースに対応する部分は、リブ17によって特には支持されていない。そのため、上記のスペースに対応する部分は、リブ17が設けられている部分と比較して変形しやすい構成となっている。その変形しやすい部分が変形容易部16として機能するようになっている。なお、外殻部材4を構成するアウタープレート14も、インナープレート15と同様に、プラスチックダンボールによって構成されている。各プレート14,15の板厚は一例として1.5mm以上7.0mm以下であって、上記の間隔は数mm程度であることが好ましい。また、各ライナー18およびリブ17は上述した樹脂や発泡樹脂などによって構成されることが好ましい。
【0057】
そして、プラスチックダンボールによって構成した各プレート14,15を使用して、上記の製造方法で図9に示す外装体1Bを構成する。なお、各プレート14,15を重ね合わせて一体化した状態から、図9に示す外装体1Bを形成するときに、前記重ね合わせて一体化したプレート14,15に、平板状の治具などを当てて変形させると、変形容易部16として機能させる部分を特定でき、設計した形状の外装体1Bを得ることができる。また、治具に替えて前記重ね合わせて一体化したプレート14,15にケガキ線を形成してもよく、あるいは、ケガキ線を予め形成した各プレート14,15を一体化し、これを使用して外装体1Bを形成してもよい。
【0058】
図9に示す外装体1Bでは、各プレート14,15の前記スペースに対応する部分のうち、治具やケガキ線などによって変形を生じた部分が変形容易部16として機能する。そのため、第2の実施形態に係る外装体1Aとほぼ同様に、上述した外力によって弾性変形しやすくなる。したがって、図9に示す外装体1Bは、第2の実施形態に係る外装体1Aとほぼ同様の作用・効果を得ることができる。また、図9に示す外装体1Bでは、各プレート14,15がプラスチックダンボールによって構成されるから、中心軸線Cに対して直交する方向には変形しにくくなる。そのため、より効果的に配線スペース12に配置された線材2を保護することができる。
【0059】
以上、本発明の第1の実施形態ないし第3の実施形態について説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。例えば、各実施形態に係る外装体1,1A,1Bにおいて、配線スペース12を挟んで互いに対向している外殻部材4の内面と内殻部材5の外面とのうちの少なくとも一方に、配線スペース12内での線材2の移動を抑制する移動抑制部が設けられていてよい。その移動抑制部としては、アーチ長さ方向に配線スペース12を少なくとも2つに区画するように構成された仕切り部やクッションなどを挙げることができる。配線スペース12を区画することによって、配線スペース12内での線材2の配置位置をほぼ定めることができ、その結果、配線スペース12内で線材2が移動することによる線材2の損耗を更に防止もしくは抑制することができる。
【0060】
<第4の実施形態>
具体的には、図10は、本発明の第4の実施形態に係る外装体の一例を示す断面図である。図10に示す例は、外装体1Aの配線スペース12に移動抑制部として仕切り部19を設けた例である。図10に示すように、内殻部材5のアーチ状の外面に沿って予め定めた間隔で3つ仕切り部19が設けられている。各仕切り部19は内殻部材5から外殻部材4に向かって延びて形成されており、その先端部と外殻部材4の内面との間には、僅かなクリアランスが設定されている。これは、外装体1Aに上述した外力を加えた場合における外装体1Aの弾性変形を阻害しないようにするためである。
【0061】
仕切り部19を構成する材料について説明する。仕切り部19は線材2に接触する可能性があるから、仕切り部19と接触することによる線材2の損耗を防止もしくは抑制するために、線材2よりも柔らかい上述した樹脂や発泡樹脂などによって構成されること好ましい。
【0062】
なお、上記の仕切り部19は、本発明の第1の実施形態に係る外装体1における配線スペース12に設けられていてもよい。また、図10には、内殻部材5のアーチ状の外面に沿って一定の間隔で仕切り部19を設けた例を記載してあるが、外殻部材4のアーチ状の内面に沿って一定の間隔で設けられていてもよい。さらに、図10に示す例では、内殻部材5のアーチ状の外面に沿って仕切り部19が3つ設けられているが、その数は特には限定されない。また同様に、仕切り部19の板厚は特には限定されない。要は、配線スペース12を区切って線材2の移動を抑制するように構成されていればよい。
【0063】
したがって、図10に示す構成の外装体1Aでは、仕切り部19によって配線スペース12が区画されるため、配線スペース12内での線材2の移動を抑制でき、また、線材2の配置位置をほぼ定めることができる。その結果、配線スペース12内で線材2が移動することによる線材2の損耗を防止もしくは抑制することができる。
【0064】
<第5の実施形態>
図11は、本発明の第5の実施形態に係る外装体の一例を示す断面図である。図11に示す例は、外装体1Aに対して、これとは別体品の仕切り部19を設けることに替えて、内殻部材5の一部を外殻部材4側に突出させて仕切り部19Aとした例である。具体的には、例えば、内殻部材5のパネルにアーチ状あるいは軸線方向に延びる長尺のC字形状もしくはU字形状の切り込みを形成する。そして、前記切り込みによって囲われた部分を外殻部材4側に突出するように屈曲させて、仕切り部19Aを形成する。図11に示す例では、仕切り部19Aは、内殻部材5のアーチ状の外面に沿って予め定めた間隔をあけて3つ形成されている。また、仕切り部19Aの先端部と外殻部材4の内面との間には、図10に示す例と同様に、僅かなクリアランスが設定されている。
【0065】
したがって、図11に示す構成の外装体1Aであっても、仕切り部19Aによって配線スペース12を区画できるため、配線スペース12内での線材2の移動を抑制して線材2の配置位置をほぼ定めることができる。その結果、図10に示す例と同様に、配線スペース12内で線材2が移動することによる線材2の損耗を防止もしくは抑制することができる。なお、仕切り部19Aは、外殻部材4に形成されていてもよい。また、仕切り部19Aは、本発明の第1の実施形態に係る外装体1や、本発明の第3の実施形態に係る外装体1Bの内殻部材5あるいは外殻部材4に形成されていてもよい。要は、仕切り部19Aは、配線スペース12を区切って線材2の移動を抑制するように構成されていればよい。
【0066】
<第6の実施形態>
図12は、本発明の第6の実施形態に係る外装体の一例を示す断面図である。図12に示す例は、上述した仕切り部19,19Aに替えて、外装体1Aにおける配線スペース12に移動抑制部としてクッション材20を設けた例である。すなわち、ここに示す例は、線材2とクッション材20とが接触した場合に、クッション材20を弾性変形させて、線材2がクッション材20から受ける荷重(反発力)を低減するように構成した例である。クッション材20は、一例として上述した発泡樹脂などの線材2よりも柔らかい部材や材料によって構成することが好ましい。図12に示す例では、クッション材20は、内殻部材5のアーチ状の外面に沿って予め定めた間隔で3つ設けられている。そのクッション材20は、一例として内殻部材5の外面に対して接着剤や両面テープなどによって貼り付けられる。一方、クッション材20は、外殻部材4の内面に対しては特には接着されておらず、いわゆるフリーな状態となっている。そのため、外装体1Aに上述した外力を加えた場合には、クッション材20は、当該外装体1Aの弾性変形を特には阻害しないようになっている。
【0067】
したがって、図12に示す構成の外装体1Aであっても、クッション材20によって配線スペース12を区画できるため、配線スペース12内での線材2の移動を抑制して線材2の配置位置をほぼ定めることができる。また、配線スペース12内で線材2が移動することによる線材2の損耗を防止もしくは抑制することができる。さらに、線材2が移動してクッション材20に接触した場合には、線材2に押圧されてクッション材20が弾性変形する。つまり、クッション材20に線材2が強く押し付けられない。そのため、より効果的に線材2の損傷を防止もしくは抑制することができる。
【0068】
また、仕切り部19,19Aやクッション材20などに替えて、配線スペース12内に線材2の滑り止めを設けてもよい。その滑り止めは従来知られたテープやゴムなどであってよく、これによっても配線スペース12内で線材2が移動することによる線材2の損耗を防止もしくは抑制することができる。なお、その滑り止めは、線材2の損傷や摩耗などを防止もしくは抑制するために、線材2よりも柔らかい上述した樹脂や発泡樹脂などによって構成されること好ましい。
【0069】
<第7の実施形態>
また、各実施形態に係る外装体1,1A,1Bは、例えば、係止部材によって内殻部材5の内側に配置された被装着部3に対して内殻部材5の移動を抑制するように構成されていてよい。その係止部材は、一例として結束バンドを挙げることができる。図13は、その一例を示しており、図13に示す例では、被装着部3に取り付けた外装体1Aは、結束バンドによって被装着部3に対して固定されている。その結束バンド21は従来知られている結束バンドであってよい。
【0070】
図13に示すように、被装着部3に取り付けた外装体1Aを、結束バンド21によって被装着部3に拘束すれば、より確実に被装着部3に外装体1Aを固定することができる。例えば、車両の振動によって被装着部3から外装体1Aが脱落することを効果的に防止もしくは抑制することができる。なお、結束バンド21に替えて、ロープや紐などによって被装着部3に外装体1Aを縛り付けてもよい。なおまた、本発明の第1の実施形態に係る外装体1、あるいは、本発明の第3の実施形態に係る外装体1Bを、結束バンド21によって被装着部3に固定してもよい。
【0071】
<第8の実施形態>
結束バンド21Aは、外装体1Aに一体に形成されていてもよい。図14は、その一例を示している。内殻部材5を例として説明する。図14に示すように、外装体1Aの中心軸線C方向で内殻部材5の他方の縁部11の中央部分に、帯状のバンド部22が一体に形成されており、そのバンド部22の幅方向での両側に、鋸歯状の係合片が一定の間隔で複数形成されている。また、内殻部材5の一方の縁部10側に、内殻部材5の板厚方向に貫通して大小の開口部を有する係止部23が形成されている。その係止部23の開口部のうち、第1開口部24は、バンド部22を挿入可能にするために、バンド部22の外形よりも僅かに大きく形成されている。係止部23の開口部のうち、第2開口部25は第1開口部24に連通して形成されると共に、第1開口部24よりも開口幅が狭く設定されている。具体的には、中心軸線C方向での第2開口部25の開口幅はバンド部22における係合片の根元部分の幅よりも僅かに広く設定されている。これと同様に、外殻部材4においても、バンド部22と係止部23とが形成されている。そして、上記のようにして外装体1Aを作製する。またこのときに、内殻部材5および外殻部材4の各バンド部22と各係止部23とを互いに重ね合わせて一体化する。
【0072】
図14に示す結束バンド21Aによる外装体1Aの固定方法、および、作用・効果について説明する。被装着部3に外装体1Aを取り付けた状態で、係止部23の第1開口部24に対して、内殻部材5側から外殻部材4側に向かってバンド部22を通す。また、被装着部3に対して内殻部材5の内面を密着させる。次いで、第1開口部24から第2開口部25にバンド部22を移動させる。これにより、第2開口部25に係合片の根元部分が配置され、あるいは、嵌り合う。その結果、係合片の顎の部分は、外殻部材4の外面に接触する。つまり、第2開口部25からバンド部22を引き抜く方向の荷重が外装体1Aに作用すると、係合片の顎の部分が、外殻部材4の外面に引っかかる。そのため、車両の振動によって被装着部3から外装体1Aが脱落することを防止もしくは抑制することができる。このように、図14に示す構成の外装体1Aであっても、図13に示す構成とほぼ同様の作用・効果を得ることができる。なお、本発明の第1の実施形態に係る外装体1、あるいは、本発明の第3の実施形態に係る外装体1Bに、図14に示す結束バンド21Aが一体に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1,1A,1B 外装体
2 線材
3 被装着部
4 外殻部材
5 内殻部材
6 第1開口部
9 第2開口部
12 配線スペース
16 変形容易部
W1 第1開口部の開口幅
W2 第2開口部の開口幅
H 配線スペースの高さ(外殻部材と内殻部材の間隔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14