(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178698
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】冷却構造体
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20221125BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085664
(22)【出願日】2021-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福川 裕二
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】庄田 広明
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA07
5E322AA11
5E322AB01
5E322AB08
5E322BA05
5E322DA04
5E322EA10
5E322FA01
5F136CB07
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA52
5F136GA35
(57)【要約】
【課題】冷却効率に優れる樹脂製の冷却構造体の提供。
【解決手段】冷却構造体10は、冷媒を流通させる流路12を形成する樹脂製の流路形成部材14と、端子部28Aと、端子部28Bと、端子部28A及び端子部28Bを連結する連結部30とを有するバスバー26と、流路形成部材14の外壁面に設けられ、バスバー26が有する端子部28A及び端子部28Bを流路形成部材14に固定する締結部36A及び締結部36Bと、を有し、締結部36A及び締結部36Bが、各々ボルト32A又はボルト32Bと、ボルト32A又はボルト32Bと螺合し流路形成部材14に埋設されたナット34A又はナット34Bを含み、流路14内を冷媒の流れ方向から観察したときに、ナット34A又はナット34Bのボルト32A又はボルト32Bが取り付けられる側とは反対側が、流路形成部材14に覆われた状態で流路12内に突き出ているものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を流通させる流路を形成する樹脂製の流路形成部材と、
複数の端子部と前記複数の端子部を連結する連結部とを有するバスバーと、
前記流路形成部材の外壁面に設けられ、前記バスバーが有する前記複数の端子部を前記流路形成部材に固定する締結部と、を有し、
前記締結部が、ボルトと、前記ボルトと螺合し前記流路形成部材に埋設されたナットとを含み、
前記流路内を前記冷媒の流れ方向から観察したときに、前記ナットの前記ボルトが取り付けられる側とは反対側が、前記流路形成部材に覆われた状態で前記流路内に突き出ている冷却構造体。
【請求項2】
前記流路内を前記冷媒の流れ方向から観察したときに、前記ボルトの先端が、前記流路内にまで到達している請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項3】
前記ナットの外形が、円筒又は多角柱である請求項1又は請求項2に記載の冷却構造体。
【請求項4】
前記ナットの外周面が、ローレット加工又はセレーション加工されている請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の冷却構造体。
【請求項5】
前記ボルト及び前記ナットを構成する金属が、銅又は銅含有合金である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の冷却構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車、電気自動車等のモータを搭載する車両には、モータを駆動する駆動手段が搭載されている。駆動手段は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体を複数備えるパワーモジュール、キャパシタ等の電子部品、これら電子部品を電気的に接合するバスバーなどから構成される。
モータを駆動する際には、パワー半導体、キャパシタ等、これら電子部品を接合するバスバーに大電流が流れることがある。バスバーに大電流が流れた場合、スイッチング損失、抵抗損失等によって駆動手段が発熱するため、駆動手段を効率的に冷却する必要がある。
【0003】
駆動手段を冷却するための冷却手段としては、熱伝導性の高さから、アルミニウム、銅等の金属製のヒートシンクが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
また、バスバーを締結するナットとヒートシンクとを、絶縁プレートを介して樹脂により一体化した端子台が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-182831号公報
【特許文献2】特開2012-151038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属製のヒートシンクを製造するためには、押出成形、スカイブ加工、カシメ加工等の複雑な製造工程を経る必要がある。そのため、金属製のヒートシンクはコストが高くなりやすい。
また、金属製のヒートシンクを駆動手段等の冷却対象に組み込むためには、多くの工数を要することがある。そのため、金属製のヒートシンクを用いることなく冷却効率に優れる冷却方法が求められている。
【0006】
本開示の一形態は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、冷却効率に優れる樹脂製の冷却構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 冷媒を流通させる流路を形成する樹脂製の流路形成部材と、
複数の端子部と前記複数の端子部を連結する連結部とを有するバスバーと、
前記流路形成部材の外壁面に設けられ、前記バスバーが有する前記複数の端子部を前記流路形成部材に固定する締結部と、を有し、
前記締結部が、ボルトと、前記ボルトと螺合し前記流路形成部材に埋設されたナットとを含み、
前記流路内を前記冷媒の流れ方向から観察したときに、前記ナットの前記ボルトが取り付けられる側とは反対側が、前記流路形成部材に覆われた状態で前記流路内に突き出ている冷却構造体。
<2> 前記流路内を前記冷媒の流れ方向から観察したときに、前記ボルトの先端が、前記流路内にまで到達している<1>に記載の冷却構造体。
<3> 前記ナットの外形が、円筒又は多角柱である<1>又は<2>に記載の冷却構造体。
<4> 前記ナットの外周面が、ローレット加工又はセレーション加工されている<1>~<3>のいずれか1項に記載の冷却構造体。
<5> 前記ボルト及び前記ナットを構成する金属が、銅又は銅含有合金である<1>~<4>のいずれか1項に記載の冷却構造体。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一形態によれば、冷却効率に優れる樹脂製の冷却構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】冷却構造体10の
図1におけるA-A線断面を示す図である。
【
図3】冷却構造体10の
図1におけるB-B線端面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0011】
<冷却構造体>
本開示の冷却構造体は、冷媒を流通させる流路を形成する樹脂製の流路形成部材と、複数の端子部と前記複数の端子部を連結する連結部とを有するバスバーと、前記流路形成部材の外壁面に設けられ、前記バスバーが有する前記複数の端子部を前記流路形成部材に固定する締結部と、を有し、前記締結部が、ボルトと、前記ボルトと螺合し前記流路形成部材に埋設されたナットとを含み、前記流路内を前記冷媒の流れ方向から観察したときに、前記ナットの前記ボルトが取り付けられる側とは反対側が、前記流路形成部材に覆われた状態で前記流路内に突き出ているものである。
本開示の冷却構造体では、流路内を冷媒の流れ方向から観察したときに、ナットのボルトが取り付けられる側とは反対側が流路形成部材に覆われた状態で流路内に突き出ているため、ナットの絶縁性を確保したまま流路形成部材を介したナットへの冷媒の接触量を多くすることができる。そのため、バスバーからナットに伝わった熱を効率的に冷媒に移動することが可能となり、冷却構造体の冷却効率が向上する。
【0012】
以下、本開示の冷却構造体を、図面を参照して説明する。なお、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0013】
図1乃至
図3は、冷却構造体10の要部を示す図であり、
図1は冷却構造体10の要部の平面図を示し、
図2は冷却構造体10の
図1におけるA-A線断面を示し、
図3は冷却構造体10の
図1におけるB-B線端面を示す。
図2の矢印は、冷媒の流れ方向を示し、
図3は、流路12内を冷媒の流れ方向から観察した図に該当する。
冷却構造体10は、断面が略矩形とされた冷媒を流通させる流路12を形成する樹脂製の流路形成部材14を備える。流路12は、対向する一対の内壁のうちの一方側の内壁に相当する上部内壁16及び他方側の内壁に相当する下部内壁18並びに上部内壁16及び下部内壁18を接続する側部内壁20及び側部内壁22に取り囲まれて構成されている。
【0014】
バスバー26は、端子部28Aと、端子部28Bと、端子部28A及び端子部28Bを連結する連結部30とを有する。
端子部28Aは、ボルト32A及びボルト32Aと螺合するナット34Aで構成される締結部36Aにより他のバスバー38における端子部28Cと重ね合わされて流路形成部材14の外壁面に締結され固定されている。
端子部28Bは、ボルト32B及びボルト32Bと螺合するナット34Bで構成される締結部36Bにより他のバスバー40における端子部28Dと重ね合わされて流路形成部材14の外壁面に締結され固定されている。
バスバー38及びバスバー40は、パワー半導体、キャパシタ等の不図示の電子部品と接続されている。
【0015】
ナット34Aのボルト32Aが挿入される側とは反対側の部分及びナット34Bのボルト32Bが挿入される側とは反対側の部分は、流路形成部材14の外壁面に埋設されている。また、
図2及び
図3に示すように、流路12内を冷媒の流れ方向から観察したときに、ナット34Aのボルト32Aが挿入される側とは反対側の部分及びナット34Bのボルト32Bが挿入される側とは反対側の部分は、流路形成部材14に覆われた状態で上部内壁16から流路12内に突き出ている。
ナット34A及びナット34Bの流路形成部材14で覆われた部分における樹脂厚みは、冷却性を向上する観点から2.5mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましく、1.5mm以下がさらに好ましい。一方、ナット34A及びナット34Bの流路形成部材14で覆われた部分における樹脂厚みは、ナット34A及びナット34Bの絶縁性を確保するため、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1.0mm以上がさらに好ましい。
【0016】
ナット34Aのボルト32Aが挿入される側とは反対側の部分、及び、ナット34Bのボルト32Bが挿入される側とは反対側の部分が流路形成部材14に覆われた状態で流路12内に突き出た構造とすることで、ナット34A及びナット34Bの一部を流路12内に配置することが可能となり、冷却構造体10の低背化が可能となる。
冷却構造体10では、ナット34Aのボルト32Aが挿入される側とは反対側の先端部分、及び、ナット34Bのボルト32Bが挿入される側とは反対側の先端部分は下部内壁18に到達しない構成とされているが、これら先端部分は下部内壁18に到達していてもよい。
【0017】
また、
図2及び
図3に示すように、流路12内を冷媒の流れ方向から観察したときに、ボルト32A及びボルト32Bの先端は、流路12内にまで到達している。
ボルト32A及びボルト32Bの先端が流路12内まで到達することで、バスバーからボルトに伝わった熱を効率的に流路12内に伝えることが可能となり、冷却構造体10の冷却効率がさらに向上する。
【0018】
ナット34A及びナット34Bは、金属製の汎用ナットを使用することができ、その形状に特に限定はない。ナット34A及びナット34Bの外形は、円筒又は多角柱であってもよい。
また、ナット34A及びナット34Bの外周面は、流路形成部材14との間の接合強度を向上する観点、及び、冷却効果を向上する観点から、ローレット加工又はセレーション加工されていてもよい。
【0019】
バスバーを構成する金属は特に限定されるものではなく、銅、銅含有合金、アルミニウム等が挙げられる。バスバーはニッケル、スズ等でめっきされていてもよい。
ボルト及びナットを構成する金属は特に限定されるものではなく、銅、銅含有合金、アルミニウム、鉄等が挙げられる。ボルト及びナットはニッケル、三価クロメート、亜鉛等でめっきされていてもよい。
一般に、バスバーを構成する金属は導電性の観点から銅又は銅含有合金が用いられる。そのため、銅製又は銅含有合金製のバスバーを用いた際の電蝕の発生を抑制する観点から、ボルト及びナットを構成する金属は銅又は銅含有合金が好ましく、真鍮がより好ましい。
【0020】
流路12を流通する冷媒の種類は、特に限定されるものではない。冷媒としては、水、有機溶媒等の液体、空気等の気体が挙げられる。冷媒として用いられる水には、不凍液等の成分が含まれていてもよい。
【0021】
(流路形成部材の製造方法)
流路形成部材14は、いかなる方法により製造されたものであってもよく、インジェクション成形法、ダイスライドインジェクション成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、トランスファ成形法、押出成形法、注型成形法等の通常の樹脂成形体の成形方法を採用することができる。なお、冷却構造体の製造には高い位置精度を要求される場合があることから、ダイスライドインジェクション成形法が好ましい。
また、流路形成部材14におけるナット34A及びナット34Bの埋設されている箇所は、別途、インサート成形法により製造されてもよい。
【0022】
流路形成部材14を構成する樹脂の種類は特に限定されるものではない。樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂(PP)、複合ポリプロピレン系樹脂(PPC)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂(PPS)、ポリフタルアミド系樹脂(PPA)、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(PBT)、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
【0023】
流路形成部材14を構成する樹脂は、無機充填材を含有してもよい。無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコン、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、ベリリア及びジルコニアが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填材としては、水酸化アルミニウム、硼酸亜鉛等が挙げられる。
【0024】
(冷却構造体の用途)
本開示の冷却構造体は、ハイブリッド自動車、電気自動車等のモータを搭載する車両における、パワー半導体を複数備えるパワーモジュール、キャパシタ等の電子部品を電気的に接合するバスバーの冷却に有効である。
【符号の説明】
【0025】
10 冷却構造体
12 流路
14 流路形成部材
16 上部内壁
18 下部内壁
20、22 側部内壁
26、38、40 バスバー
28A、28B、28C、28D 端子部
30 連結部
32A、32B ボルト
34A、34B ナット
36A、36B 締結部