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特開2022-178817シリコン単結晶インゴットの評価方法、シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法、シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法およびシリコン鏡面ウェーハの評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178817
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】シリコン単結晶インゴットの評価方法、シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法、シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法およびシリコン鏡面ウェーハの評価方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20221125BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20221125BHJP
   C30B 25/20 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C30B29/06 502Z
H01L21/66 L
C30B25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085883
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】古川 純
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 憲哉
(72)【発明者】
【氏名】森 敬一朗
(72)【発明者】
【氏名】長澤 崇裕
【テーマコード(参考)】
4G077
4M106
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077GA03
4G077GA06
4G077GA10
4G077HA12
4M106AA01
4M106AA10
4M106BA05
4M106CB30
4M106DH32
4M106DJ27
(57)【要約】
【課題】双晶発生領域に関する評価を行うことが可能なシリコン単結晶インゴットの新たな評価方法を提供すること。
【解決手段】評価対象のシリコン単結晶インゴットから3枚以上の複数のシリコンウェーハを切り出すこと、上記複数のシリコンウェーハを、鏡面加工を施すことによってシリコン鏡面ウェーハに加工すること、上記複数のシリコン鏡面ウェーハを、鏡面加工された表面上にエピタキシャル層を形成することによってシリコンエピタキシャルウェーハに加工すること、レーザー表面検査装置によって上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について輝点マップを取得すること、および、上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について取得された輝点マップを重ね合わせた重ね合わせマップを作成すること、を含むシリコン単結晶インゴットの評価方法。上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認されない場合、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおける上記複数のシリコンウェーハが切り出された領域は双晶発生領域ではないと推定し、上記重ね合わせマップにおいて上記ライン状に分布した輝点群が確認された場合、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおいて上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンウェーハが切り出された領域を双晶発生領域と推定する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象のシリコン単結晶インゴットから3枚以上の複数のシリコンウェーハを切り出すこと、
前記複数のシリコンウェーハを、鏡面加工を施すことによってシリコン鏡面ウェーハに加工すること、
前記複数のシリコン鏡面ウェーハを、鏡面加工された表面上にエピタキシャル層を形成することによってシリコンエピタキシャルウェーハに加工すること、
レーザー表面検査装置によって、前記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について輝点マップを取得すること、および、
前記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について取得された輝点マップを重ね合わせた重ね合わせマップを作成すること、
を含み、
前記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認されない場合、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおける前記複数のシリコンウェーハが切り出された領域は双晶発生領域ではないと推定し、
前記重ね合わせマップにおいて前記ライン状に分布した輝点群が確認された場合、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおいて前記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンウェーハが切り出された領域を双晶発生領域と推定する、
シリコン単結晶インゴットの評価方法。
【請求項2】
前記ライン状に分布した輝点群は、長さ2mm以上のライン状に分布した輝点群である、請求項1に記載のシリコン単結晶インゴットの評価方法。
【請求項3】
前記エピタキシャル層の形成は、0.5μm以上の膜厚のエピタキシャル層を形成することである、請求項1または2に記載のシリコン単結晶インゴットの評価方法。
【請求項4】
前記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、前記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンウェーハについて、輝点の位置座標と前記シリコン単結晶インゴットの軸方向における切り出し位置との間に比例関係が成り立つことを、前記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンウェーハが切り出された領域を双晶発生領域と推定する推定基準として更に採用する、請求項1~3のいずれか1項に記載のシリコン単結晶インゴットの評価方法。
【請求項5】
評価対象のシリコン単結晶インゴットの面方位は<100>であり、該シリコン単結晶インゴットにおいて{111}面が存在する2つの領域を双晶発生領域と更に推定する、請求項1~4のいずれか1項に記載のシリコン単結晶インゴットの評価方法。
【請求項6】
評価対象のシリコン単結晶インゴットの面方位は<100>であり、
前記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、前記複数の輝点の少なくとも1つについて、輝点が確認された位置に存在する欠陥を原子間力顕微鏡によって観察し、観察された欠陥の形状に基づき、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおいて{111}面が存在する2つの領域のいずれか一方を双晶発生領域と更に推定する、請求項1~4のいずれか1項に記載のシリコン単結晶インゴットの評価方法。
【請求項7】
シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法であって、
評価対象のシリコンエピタキシャルウェーハは、同一のシリコン単結晶インゴットから切り出されて鏡面加工が施されたシリコン鏡面ウェーハの鏡面加工された表面上にエピタキシャル層が形成された3枚以上のシリコンエピタキシャルウェーハであり、
レーザー表面検査装置によって、前記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について輝点マップを取得すること、および、
前記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について取得された輝点マップを重ね合わせた重ね合わせマップを作成すること、
を含み、
前記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認されない場合、評価対象のシリコンエピタキシャルウェーハには双晶起因欠陥は存在しないと推定し、
前記ライン状に分布した輝点群が確認された場合、該輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハには双晶起因欠陥が存在すると推定する、シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法。
【請求項8】
前記ライン状に分布した輝点群は、長さ2mm以上のライン状に分布した輝点群である、請求項7に記載のシリコンエピタキシャルウェーハの評価方法。
【請求項9】
前記エピタキシャル層は、0.5μm以上の膜厚のエピタキシャル層である、請求項7または8に記載のシリコンエピタキシャルウェーハの評価方法。
【請求項10】
前記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、前記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハについて、輝点の位置座標と前記シリコン単結晶インゴットの軸方向における切り出し位置との間に比例関係が成り立つことを、前記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハに双晶起因欠陥が存在すると推定する推定基準として更に採用する、請求項7~9のいずれか1項に記載のシリコンエピタキシャルウェーハの評価方法。
【請求項11】
シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
同一のシリコン単結晶インゴットから3枚以上の複数のシリコンウェーハを切り出すこと、
前記複数のシリコンウェーハを、鏡面加工を施すことによってシリコン鏡面ウェーハに加工すること、
前記複数のシリコン鏡面ウェーハを、鏡面加工された表面上にエピタキシャル層を形成することによってシリコンエピタキシャルウェーハに加工すること、
前記複数のシリコンエピタキシャルウェーハを請求項7~10のいずれか1項に記載の評価方法によって評価すること、および、
前記評価の結果、双晶起因欠陥が存在しないと推定されたシリコンエピタキシャルウェーハを製品シリコンエピタキシャルウェーハとして出荷するための1つ以上の工程に付すこと、
を含む、シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項12】
シリコン鏡面ウェーハの評価方法であって、
評価対象のシリコン鏡面ウェーハは、同一のシリコン単結晶インゴットから切り出され、鏡面加工が施されたシリコン鏡面ウェーハであって、
前記複数のシリコン鏡面ウェーハを、鏡面加工が施された表面上にエピタキシャル層を形成することによってシリコンエピタキシャルウェーハに加工すること、
レーザー表面検査装置によって、前記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について輝点マップを取得すること、および、
前記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について取得された輝点マップを重ね合わせた重ね合わせマップを作成すること、
を含み、
前記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認されない場合、評価対象のシリコン鏡面ウェーハには双晶は存在しないと推定し、
前記ライン状に分布した輝点群が確認された場合、該輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハに含まれるシリコン鏡面ウェーハには双晶が存在すると推定する、シリコン鏡面ウェーハの評価方法。
【請求項13】
前記ライン状に分布した輝点群は、長さ2mm以上のライン状に分布した輝点群である、請求項12に記載のシリコン鏡面ウェーハの評価方法。
【請求項14】
前記エピタキシャル層は、0.5μm以上の膜厚のエピタキシャル層である、請求項12または13に記載のシリコン鏡面ウェーハの評価方法。
【請求項15】
前記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、前記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハについて、輝点の位置座標と前記シリコン単結晶インゴットの軸方向における切り出し位置との間に比例関係が成り立つことを、前記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハに含まれるシリコン鏡面ウェーハに双晶が存在すると推定する推定基準として更に採用する、請求項12~14のいずれか1項に記載のシリコン鏡面ウェーハの評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶インゴットの評価方法、シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法、シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法およびシリコン鏡面ウェーハの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板として広く用いられているシリコンウェーハは、シリコン単結晶インゴットから切り出したウェーハを研磨、成膜等の各種工程に付すことによって製造される。シリコンウェーハに結晶欠陥が含まれることは、半導体デバイスのデバイス特性を低下させる原因となる。そのような結晶欠陥としては双晶が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-105653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の段落0002に記載されているように、双晶は、シリコン単結晶の育成中にある一定方向に応力が加わり、隣接する部分の一方が他方の鏡像となるような規則的原子配列の塑性変形が生じた場合に発生する面欠陥である。シリコン単結晶インゴットにおいて双晶の発生が推定される領域を特定し、かかる領域をウェーハ切り出し領域から除外することは、優れたデバイス特性を示す半導体デバイスの提供を可能にすることにつながるため望ましい。
【0005】
本発明の一態様は、双晶発生領域に関する評価を行うことが可能なシリコン単結晶インゴットの新たな評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
評価対象のシリコン単結晶インゴットから3枚以上の複数のシリコンウェーハを切り出すこと、
上記複数のシリコンウェーハを、鏡面加工を施すことによってシリコン鏡面ウェーハに加工すること、
上記複数のシリコン鏡面ウェーハを、鏡面加工された表面上にエピタキシャル層を形成することによってシリコンエピタキシャルウェーハに加工すること、
レーザー表面検査装置によって、上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について輝点マップを取得すること、および、
上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について取得された輝点マップを重ね合わせた重ね合わせマップを作成すること、
を含み、
上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認されない場合、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおける上記複数のシリコンウェーハが切り出された領域は双晶発生領域ではないと推定し、
上記重ね合わせマップにおいて上記ライン状に分布した輝点群が確認された場合、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおいて上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンウェーハが切り出された領域を双晶発生領域と推定する、
シリコン単結晶インゴットの評価方法、
に関する。
【0007】
一形態では、上記シリコン単結晶インゴットの評価方法において、上記ライン状に分布した輝点群は、長さ2mm以上のライン状に分布した輝点群であることができる。
【0008】
一形態では、上記シリコン単結晶インゴットの評価方法において形成される上記エピタキシャル層は、0.5μm以上の膜厚のエピタキシャル層であることができる。
【0009】
一形態では、上記シリコン単結晶インゴットの評価方法において、上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンウェーハについて、輝点の位置座標と上記シリコン単結晶インゴットの軸方向における切り出し位置との間に比例関係が成り立つことを、上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンウェーハが切り出された領域を双晶発生領域と推定する推定基準として更に採用することができる。
【0010】
一形態では、評価対象のシリコン単結晶インゴットの面方位は<100>であることができ、このシリコン単結晶インゴットにおいて{111}面が存在する2つの領域を双晶発生領域と更に推定することができる。
【0011】
一形態では、評価対象のシリコン単結晶インゴットの面方位は<100>であることができ、上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、上記複数の輝点の少なくとも1つについて、輝点が確認された位置に存在する欠陥を原子間力顕微鏡によって観察し、観察された欠陥の形状に基づき、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおいて{111}面が存在する2つの領域のいずれか一方を双晶発生領域と更に推定することができる。
【0012】
本発明の一態様は、
シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法であって、
評価対象のシリコンエピタキシャルウェーハは、同一のシリコン単結晶インゴットから切り出されて鏡面加工が施されたシリコン鏡面ウェーハの鏡面加工された表面上にエピタキシャル層が形成された3枚以上のシリコンエピタキシャルウェーハであり、
レーザー表面検査装置によって、上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について輝点マップを取得すること、および、
上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について取得された輝点マップを重ね合わせた重ね合わせマップを作成すること、
を含み、
上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認されない場合、評価対象のシリコンエピタキシャルウェーハには双晶起因欠陥は存在しないと推定し、
上記ライン状に分布した輝点群が確認された場合、この輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハには双晶起因欠陥が存在すると推定する、シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法、
に関する。
【0013】
一形態では、上記シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法において、上記ライン状に分布した輝点群は、長さ2mm以上のライン状に分布した輝点群であることができる。
【0014】
一形態では、上記シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法において、上記エピタキシャル層は、0.5μm以上の膜厚のエピタキシャル層であることができる。
【0015】
一形態では、上記シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法において、上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハについて、輝点の位置座標と上記シリコン単結晶インゴットの軸方向における切り出し位置との間に比例関係が成り立つことを、上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハに双晶起因欠陥が存在すると推定する推定基準として更に採用することができる。
【0016】
本発明の一態様は、
シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
同一のシリコン単結晶インゴットから3枚以上の複数のシリコンウェーハを切り出すこと、
上記複数のシリコンウェーハを、鏡面加工を施すことによってシリコン鏡面ウェーハに加工すること、
上記複数のシリコン鏡面ウェーハを、鏡面加工された表面上にエピタキシャル層を形成することによってシリコンエピタキシャルウェーハに加工すること、
上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハを上記シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法によって評価すること、および、
上記評価の結果、双晶起因欠陥が存在しないと推定されたシリコンエピタキシャルウェーハを製品シリコンエピタキシャルウェーハとして出荷するための1つ以上の工程に付すこと、
を含む、シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法、
に関する。
【0017】
本発明の一態様は、
シリコン鏡面ウェーハの評価方法であって、
評価対象のシリコン鏡面ウェーハは、同一のシリコン単結晶インゴットから切り出され、鏡面加工が施されたシリコン鏡面ウェーハであって、
上記複数のシリコン鏡面ウェーハを、鏡面加工が施された表面上にエピタキシャル層を形成することによってシリコンエピタキシャルウェーハに加工すること、
レーザー表面検査装置によって、上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について輝点マップを取得すること、および、
上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について取得された輝点マップを重ね合わせた重ね合わせマップを作成すること、
を含み、
上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認されない場合、評価対象のシリコン鏡面ウェーハには双晶は存在しないと推定し、
上記ライン状に分布した輝点群が確認された場合、この輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハに含まれるシリコン鏡面ウェーハには双晶が存在すると推定する、シリコン鏡面ウェーハの評価方法、
に関する。
【0018】
一形態では、上記シリコン鏡面ウェーハの評価方法において、上記ライン状に分布した輝点群は、長さ2mm以上のライン状に分布した輝点群であることができる。
【0019】
一形態では、上記シリコン鏡面ウェーハの評価方法において、上記エピタキシャル層は、0.5μm以上の膜厚のエピタキシャル層であることができる。
【0020】
一形態では、上記シリコン鏡面ウェーハの評価方法において、上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハについて、輝点の位置座標と上記シリコン単結晶インゴットの軸方向における切り出し位置との間に比例関係が成り立つことを、上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハに含まれるシリコン鏡面ウェーハに双晶が存在すると推定する推定基準として更に採用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、双晶発生領域に関する評価を行うことが可能なシリコン単結晶インゴットの新たな評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について取得された輝点マップを重ね合わせた重ね合わせマップの具体例を示す。
図2図1に示す重ね合わせマップにおいてライン状に分布した輝点群に含まれる輝点が確認されたシリコンウェーハについて、各輝点の位置座標(X座標またはY座標)を、評価対象のシリコン単結晶インゴットの軸方向における各シリコンウェーハの切り出し位置に対してプロットしたグラフである。
図3】面方位が<100>のシリコン単結晶の結晶格子の説明図である。
図4図1に示す重ね合わせマップにおいてライン状に分布した輝点群に含まれる輝点の1つを原子間力顕微鏡(AFM)によって観察して取得したAFM像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[シリコン単結晶インゴットの評価方法]
本発明の一態様にかかるシリコン単結晶インゴットの評価方法は、評価対象のシリコン単結晶インゴットから3枚以上の複数のシリコンウェーハを切り出すこと、上記複数のシリコンウェーハを、鏡面加工を施すことによってシリコン鏡面ウェーハに加工すること、上記複数のシリコン鏡面ウェーハを、鏡面加工された表面上にエピタキシャル層を形成することによってシリコンエピタキシャルウェーハに加工すること、レーザー表面検査装置によって、上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について輝点マップを取得すること、および、上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について取得された輝点マップを重ね合わせた重ね合わせマップを作成すること、を含む。上記シリコン単結晶インゴットの評価方法では、上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認されない場合、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおける上記複数のシリコンウェーハが切り出された領域は双晶発生領域ではないと推定し、上記重ね合わせマップにおいて上記ライン状に分布した輝点群が確認された場合、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおいて上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンウェーハが切り出された領域を双晶発生領域と推定する。
【0024】
本発明者は、双晶発生領域に関する評価を行うことが可能なシリコン単結晶インゴットの新たな評価方法を提供するために検討を重ねる中で、以下の新たな知見を得た。
(1)双晶を含むシリコンウェーハに鏡面加工を施し、鏡面加工された表面上にエピタキシャル層を成膜すると、成膜されたエピタキシャル層においてクレバス状に凹んだ表面欠陥が形成される。これは、双晶の直上の部分とそれ以外の部分でエピタキシャル成長レートに差が生じ、成膜されたエピタキシャル層において双晶の直上の部分にクレバス状に凹んだ表面欠陥が形成されるためと推察される。したがって、こうして形成された表面欠陥は、双晶起因欠陥と推定できる。
(2)上記表面欠陥は、レーザー表面検査装置によって輝点(LPD;Light Point Defects)として検出できる。
(3)双晶は、シリコン単結晶インゴットにおいて一定方向に発生する。したがって、同一シリコン単結晶インゴットから切り出した3枚以上の複数のシリコンウェーハをシリコン鏡面ウェーハに加工し、鏡面加工された表面上にエピタキシャル層を形成してエピタキシャル層表面についてレーザー表面検査装置によって輝点マップを取得し、それら複数の輝点マップを重ね合わせたマップを作成すると、この重ね合わせマップにおいて、双晶起因欠陥と推定される表面欠陥に対応する輝点は、ライン状に分布した輝点群として確認できる。
そして、本発明者は、かかる知見に基づき更に鋭意検討を重ねた結果、上記の新たなシリコン単結晶インゴットの評価方法を完成させるに至った。
【0025】
以下、上記シリコン単結晶インゴットの評価方法について、更に詳細に説明する。
【0026】
<評価対象のシリコン単結晶インゴット>
上記シリコン単結晶インゴットの評価方法における評価対象のシリコン単結晶インゴットは、例えばチョクラルスキー(CZ)法によって育成されたシリコン単結晶インゴットであることができる。先に記載したように、双晶は、シリコン単結晶の育成中にある一定方向に応力が加わり、隣接する部分の一方が他方の鏡像となるような規則的原子配列の塑性変形が生じた場合に発生する面欠陥である。双晶は、チョクラルスキー(CZ)法によって育成されたシリコン単結晶インゴットに発生し得る面欠陥として知られている。シリコン単結晶インゴットの育成については、CZ法に関する公知技術を適用できる。
【0027】
<シリコンウェーハの切り出し、シリコン鏡面ウェーハへの加工>
上記シリコン単結晶インゴットの評価方法では、シリコン単結晶インゴットにおける双晶発生領域に関する評価を行うために、評価対象のシリコン単結晶インゴットから3枚以上の複数のシリコンウェーハを切り出す。これらシリコンウェーハの切り出しは、例えば以下のように行うことができる。評価対象のシリコン単結晶インゴットをカットしてブロックを得る。得られたブロックをスライスしてウェーハとする。CZ法によって育成されたシリコン単結晶インゴットは、軸方向において育成時の引き上げ方向を上方と呼び、他方を下方と呼ぶと、上方の円錐形状部(「肩部」と呼ばれる。)と下方の円錐形状部(「テール部」と呼ばれる。)との間に、直胴部と呼ばれる円柱形状部分が存在する。上記ブロックは、例えば直胴部の一部領域を切り出して得られた円柱形状のブロックであることができる。また、上記の3枚以上の複数のシリコンウェーハは、一形態では、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおいて連続する領域から切り出された複数のシリコンウェーハ、即ち、所謂連続サンプリングにより得られたシリコンウェーハであることができる。また、他の一形態では、上記の3枚以上の複数のシリコンウェーハは、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおいて離間した領域から切り出された複数のシリコンウェーハ、即ち、所謂抜き取りサンプリングにより得られたシリコンウェーハであることができる。抜き取りサンプリングを行うと、抜き取りサンプリングが行われた領域の間に位置する領域に含まれる双晶の評価を行うことはできないため、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおける双晶発生領域の推定結果の信頼性をより高める観点からは、上記の3枚以上の複数のシリコンウェーハを連続サンプリングによって得ることが好ましい。上記の複数のシリコンウェーハの1枚あたりの厚みは、例えば750μm~1mmであることができる。また、連続サンプリングを行う領域は、シリコン単結晶インゴットの軸方向の80mm以上にわたる領域であることができ、また、かかる領域の長さは、例えば440mm以下であることができるが、より長い場合もあり得る。上記の複数のシリコンウェーハの合計枚数は、例えば10枚以上、50枚以上、70枚以上もしくは100枚以上であることができ、また、例えば500枚以下、300枚以下もしくは200枚以下であることができ、ここに例示した値を超える合計枚数であることもできる。
【0028】
評価対象のシリコン単結晶インゴットから切り出された3枚以上の複数のシリコンウェーハは、2つの主面のうちの一方または両方に鏡面加工が施されてシリコン鏡面ウェーハに加工される。本発明および本明細書において、「シリコン鏡面ウェーハ」とは、2つの主面のうちの一方または両方に鏡面加工が施されたシリコン単結晶ウェーハをいうものとする。鏡面加工は公知の方法で行うことができる。また、鏡面加工前のシリコンウェーハには、面取り、ラップ、研削、粗研磨等のシリコン鏡面ウェーハを得るために通常行われる各種加工を公知の方法によって施すことができる。こうして、3枚以上の複数のシリコン鏡面ウェーハが得られる。
【0029】
<シリコンエピタキシャルウェーハへの加工>
上記で得られた3枚以上の複数のシリコン鏡面ウェーハは、それぞれシリコンエピタキシャルウェーハに加工される。シリコンエピタキシャルウェーハとは、シリコン単結晶ウェーハを基板とし、この基板の上にエピタキシャル層を有するウェーハである。本発明および本明細書において、エピタキシャル層とは、シリコン単結晶のエピタキシャル層をいうものとする。上記で得られた3枚以上の複数のシリコン鏡面ウェーハへのエピタキシャル層の形成は、各シリコン鏡面ウェーハを基板とし、この基板の鏡面加工された表面上でシリコン単結晶をエピタキシャル成長させることによって行うことができる。ここでのエピタキシャル層の形成については、シリコンエピタキシャルウェーハに関する公知技術を適用できる。シリコン鏡面ウェーハが双晶発生領域から切り出されたシリコンウェーハに鏡面加工が施されたウェーハである場合、先に記載したように、鏡面加工された表面上にエピタキシャル層を成膜すると、成膜されたエピタキシャル層において、双晶の直上の部分にクレバス状に凹んだ表面欠陥が形成されると本発明者は推察している。したがって、かかる表面欠陥は、双晶起因欠陥と推定できる。上記シリコン単結晶インゴットの評価方法では、かかる表面欠陥の有無および存在状態に基づき、以下に詳述するように、双晶発生領域に関する推定を行う。エピタキシャル層表面に双晶に起因する表面欠陥をより顕在化させてレーザー表面検査装置による検出をより容易にする観点からは、各シリコン鏡面ウェーハ上には、膜厚0.5μm以上のエピタキシャル層を形成することが好ましい。形成するエピタキシャル層の膜厚は、例えば1.0μm以下とすることができ、または1.0μm超とすることもできる。
【0030】
<レーザー表面検査装置による輝点マップの取得>
上記シリコン単結晶インゴットの評価方法では、上記で得られた3枚以上の複数のシリコンエピタキシャルウェーハにおいて、それぞれのエピタキシャル層表面についてレーザー表面検査装置によって輝点マップを取得する。レーザー表面検査装置としては、光散乱式表面検査装置、面検機等とも呼ばれる半導体ウェーハの表面を検査するための装置として公知の構成のレーザー表面検査装置を何ら制限なく用いることができる。レーザー表面検査装置は、通常、半導体ウェーハの評価対象の表面をレーザー光によって走査し、放射光(散乱光または反射光)によってウェーハの評価対象表面の微小凹部または微小凸部(例えば凹状の表面欠陥または凸状の表面付着異物)を輝点(LPD;Light Point Defects)として検出する。また、輝点からの放射光を測定することにより、半導体ウェーハの評価対象の表面における微小凹部または微小凸部の位置および/またはサイズを認識することができる。レーザー光としては、紫外光、可視光等を用いることができ、その波長は特に限定されるものではない。紫外光とは、400nm未満の波長域の光をいい、可視光とは、400~600nmの波長域の光をいうものとする。レーザー表面検査装置の解析部は、通常、検出された複数の輝点のそれぞれについて、評価対象の表面における二次元位置座標(X座標およびY座標)の情報を取得し、取得された二次元位置座標の情報から評価対象の表面における面内の輝点分布状態を示す輝点マップを作成することができる。市販されているレーザー表面検査装置の具体例としては、KLA TENCOR社製SurfscanシリーズSP1、SP2、SP3、SP5、SP7等を挙げることができる。ただしこれら装置は例示であって、その他のレーザー表面検査装置も使用可能である。
【0031】
<双晶発生領域に関する推定>
先に記載したように、シリコン鏡面ウェーハが双晶発生領域から切り出されたシリコンウェーハに鏡面加工が施されたウェーハである場合、鏡面加工された表面上にエピタキシャル層を成膜すると、成膜されたエピタキシャル層において、双晶の直上の部分にクレバス状に凹んだ表面欠陥が形成されると本発明者は推察している。レーザー表面検査装置によれば、評価対象の表面における微小凹部を輝点として検出することができるため、かかる表面欠陥はレーザー表面検査装置によって輝点として検出することができる。ただし、上記の複数のシリコンエピタキシャルウェーハの各エピタキシャル層表面においてレーザー表面検査装置により輝点として検出される微小凹部または微小凸部は、双晶に起因する表面欠陥のみではない可能性がある。そこで、上記シリコン単結晶インゴットの評価方法では、双晶がシリコン単結晶インゴットにおいて一定方向に発生する面欠陥であるという点を利用して、評価対象のシリコン単結晶インゴットについて双晶発生領域に関する推定を行う。詳しくは、双晶はシリコン単結晶インゴットにおいて一定方向に発生するため、先に記載したように、同一シリコン単結晶インゴットから切り出されて上記のように加工されたシリコンエピタキシャルウェーハの各エピタキシャル層の表面についてレーザー表面検査装置によって輝点マップを取得し、それら複数の輝点マップを重ね合わせたマップを作成すると、この重ね合わせマップにおいて、双晶起因欠陥と推定される表面欠陥に対応する輝点は、ライン状に分布した輝点群として確認できる。そこで、上記シリコン単結晶インゴットの評価方法では、以下のように、評価対象のシリコン単結晶インゴットについて双晶発生領域に関する評価を行う。
上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について取得された輝点マップを重ね合わせた重ね合わせマップを作成する。重ね合わせマップの作成は、レーザー表面検査装置の解析部において行うことができ、または公知の解析ソフトによって行うことができる。そして、以下の推定基準Aを採用し、双晶発生領域に関する推定を行う。
【0032】
(推定基準A)
作成された重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認されない場合、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおいて、上記複数のシリコンウェーハが切り出された領域は双晶発生領域ではないと推定する。他方、上記重ね合わせマップにおいて、3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおいて、上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンウェーハが切り出された領域を双晶発生領域と推定する。
【0033】
一例として、図1に、重ね合わせマップの具体例を示す。図1に示す重ね合わせマップは、以下の方法によって作成された重ね合わせマップである。
チョクラルスキー法によって、面方位が<100>のシリコン単結晶インゴットを育成した。
育成されたシリコン単結晶インゴットの直胴部から軸方向の長さ約110mmにわたる領域をカットしてブロックを得た。得られたブロックから連続して厚み1mmのウェーハをスライスし、連続サンプリングによって合計78枚のシリコンウェーハを得た。
上記で得られた複数のシリコンウェーハを、それぞれ公知の方法によってシリコン鏡面ウェーハに加工した。
上記で得られた複数のシリコン鏡面ウェーハについて、それぞれ鏡面加工された表面上で公知の方法によってシリコン単結晶をエピタキシャル成長させ、膜厚0.5μmのエピタキシャル層を形成してシリコンエピタキシャルウェーハへの加工を行った。
上記で得られた複数のシリコンエピタキシャルウェーハ(直径300mm)の各エピタキシャル層表面について、レーザー表面検査装置としてKLA TENCOR社製SurfscanシリーズSP5を使用してエピタキシャル層表面の輝点マップを取得した。同レーザー表面検査装置の解析部において上記の複数のシリコンエピタキシャルウェーハについて得られた輝点マップを重ね合わせて得られた重ね合わせマップが、図1に示す重ね合わせマップである。
【0034】
図1に示す重ね合わせマップでは、図1中に点線で囲んだ部分に長さ約60mmのライン状に分布した輝点群が確認できる。本発明および本明細書において、「ライン状に分布した輝点群」とは、輝点群の分布形状が直線状の輝点群をいうものとする。ここに記載の直線状は、完全な直線に限定されず、略直線と通常認識され得る形状も包含される。また、ライン状に分布した輝点群において、隣り合う輝点同士が接していることは必須ではなく、隣り合う輝点同士は接していてもよく離間していてもよい。また、ライン状に分布した輝点群の長さは、実寸サイズ、即ちエピタキシャル層表面における実際のサイズ、をいうものとする。ライン状に分布した輝点群の長さとは、ライン状に分布した輝点群の中で一方の端の輝点と他方の端の輝点との距離をいうものとし、例えば2mm以上であることができ、また、例えば100mm以下であることができるが、より長い場合もあり得る。なお、図1に示す重ね合わせマップは、レーザー表面検査装置としてKLA TENCOR社製SurfscanシリーズSP5を使用して取得されたものであるが、同シリーズのSP1、SP2、SP3、SP5およびSP7を使用して同様の重ね合わせマップが得られることを確認した。
【0035】
一形態では、推定基準Aに加えて、双晶がシリコン単結晶インゴットにおいて一定方向に発生する面欠陥である点を利用して、以下の追加推定基準1A~3Aの中の1つ、2つまたは3つを更に採用することができる。
【0036】
(追加推定基準1A)
上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、かかる輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンウェーハについて、輝点の位置座標と上記シリコン単結晶インゴットの軸方向における切り出し位置との間に比例関係が成り立つことを、上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンウェーハが切り出された領域を双晶発生領域と推定する。
【0037】
図2は、図1に示す重ね合わせマップにおいてライン状に分布した輝点群に含まれる輝点が確認されたシリコンウェーハについて、各輝点の位置座標(X座標またはY座標)を、評価対象のシリコン単結晶インゴットの軸方向における各シリコンウェーハの切り出し位置に対してプロットしたグラフである。図2に示したグラフにおいて、横軸はシリコン単結晶インゴットの肩部側頂部の位置をゼロmmとした軸方向位置を示している。追加推定基準1Aについて、「比例関係が成り立つ」とは、縦軸yと横軸xについて最小二乗法によるフィッティングによって相関係数の二乗Rが0.80以上1.00以下の直線を作成できることを意味するものとする。図2に示されているグラフでは、X座標およびY座標のいずれについても、縦軸yと横軸xについて最小二乗法によるフィッティングによって、R=0.80以上の1.00以下の直線を作成することができた。追加推定基準1について記載する比例関係は、輝点の位置座標の中のX座標およびY座標の少なくとも一方について成り立つものとし、両方について成り立つことが好ましい。
【0038】
(追加推定基準2A)
評価対象のシリコン単結晶インゴットの面方位は<100>であり、このシリコン単結晶インゴットにおいて{111}面が存在する2つの領域を双晶発生領域と更に推定する。
【0039】
(追加推定基準3A)
評価対象のシリコン単結晶インゴットの面方位は<100>であり、上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、かかる複数の輝点の少なくとも1つについて、輝点が確認された位置に存在する欠陥を原子間力顕微鏡によって観察し、観察された欠陥の形状に基づき、評価対象のシリコン単結晶インゴットにおいて{111}面が存在する2つの領域のいずれか一方を双晶発生領域と更に推定する。
【0040】
上記追加推定基準2Aおよび3Aは、以下の結晶学的知見に基づいている。
知見1:面方位が<100>のシリコン単結晶において、双晶は{111}面に伝播する。
知見2:図3は、面方位が<100>のシリコン単結晶の結晶格子の説明図である。面方位が<100>のシリコン単結晶インゴットについて、上記のように作成された重ね合わせマップにおいてライン状に分布した輝点群の分布ラインは、{111}面と{110}面との境界線上に現れる。かかる境界線は、図3中の実線で示された境界線および点線で示された境界線である。
【0041】
追加推定基準2Aによれば、知見1および知見2に基づき、結晶成長方向(シリコン単結晶インゴットの軸方向)に対する傾きから、図3中のマル1、マル2、マル3およびマル4の{111}面が存在する領域の中で、マル3およびマル4の{111}面が存在する2つの領域を双晶発生領域と推定することができる。
【0042】
追加推定基準3Aでは、重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、かかる複数の輝点の少なくとも1つについて、輝点が確認された位置に存在する欠陥を原子間力顕微鏡によって観察する。図4は、図1に示す重ね合わせマップにおいてライン状に分布した輝点群に含まれる輝点の1つを原子間力顕微鏡(AFM)によって観察して取得したAFM像である。図4に示すAFM像において、実線を付した方向に双晶が生じていると推定することができる。また、図4に示すAFM像において、点線を付した方向に部分転位が生じていると推定することができる。図4中に点線を付した方向は、図3に示す結晶格子における点線で示した境界線の方向と一致する。上記の通り、追加推定基準2Aでは、図3中のマル3およびマル4の{111}面が存在する2つの領域を双晶発生領域と推定することができる。これに対し、追加推定基準3Aによれば、結晶成長方向(シリコン単結晶インゴットの軸方向)に対する傾きおよびAFM像における双晶が生じていると推定された方向(例えば図4中に実線を付した方向)から、図3中のマル3の{111}面が存在する領域を双晶発生領域と推定することができる。
【0043】
上記シリコン単結晶インゴットの評価方法によれば、以上のようにシリコン単結晶インゴットにおける双晶発生領域に関する評価を行うことができる。
【0044】
[シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法]
本発明の一態様にかかるシリコンエピタキシャルウェーハの評価方法は、評価対象のシリコンエピタキシャルウェーハは同一のシリコン単結晶インゴットから切り出されて鏡面加工が施されたシリコン鏡面ウェーハの鏡面加工された表面上にエピタキシャル層が形成された3枚以上のシリコンエピタキシャルウェーハであり、レーザー表面検査装置によって上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について輝点マップを取得すること、および、上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について取得された輝点マップを重ね合わせた重ね合わせマップを作成すること、を含む。そして、上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認されない場合、評価対象のシリコンエピタキシャルウェーハには双晶起因欠陥は存在しないと推定し、上記ライン状に分布した輝点群が確認された場合、この輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハには双晶起因欠陥が存在すると推定する。
【0045】
上記シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法に関して、シリコン単結晶インゴット、シリコン鏡面ウェーハ、シリコンエピタキシャルウェーハ、輝点マップの取得、重ね合わせマップの作成については、上記シリコン単結晶インゴットの評価方法に関する先の記載を参照できる。そして、上記シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法では、以下の推定基準Bを採用し、双晶起因欠陥に関する評価を行う。双晶起因欠陥とは、シリコンエピタキシャルウェーハにおいてエピタキシャル層が設けられた基板(即ちシリコン鏡面ウェーハ)に含まれる双晶に起因してシリコンエピタキシャルウェーハの表面に現れる表面欠陥をいうものとする。かかる表面欠陥は、先に記載したように、クレバス状に凹んだ表面欠陥であり得る。推定基準Bについては、推定基準Aに関する先の記載を参照できる。
【0046】
(推定基準B)
作成された重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認されない場合、評価対象のシリコンエピタキシャルウェーハには双晶起因欠陥は存在しないと推定する。他方、上記重ね合わせマップにおいて、3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、この輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハには双晶起因欠陥が存在すると推定する。
【0047】
更に、上記シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法では、推定基準Bに加えて、双晶がシリコン単結晶インゴットにおいて一定方向に発生する面欠陥である点を利用して、以下の追加推定基準1Bを更に採用することができる。追加推定基準1Bについては、追加推定基準1Aに関する先の記載を参照できる。
【0048】
(追加推定基準1B)
上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、この輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハについて、輝点の位置座標と上記シリコン単結晶インゴットの軸方向における切り出し位置との間に比例関係が成り立つことを、上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハに双晶起因欠陥が存在すると推定する。
【0049】
[シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法]
本発明の一態様にかかるシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法は、同一のシリコン単結晶インゴットから3枚以上の複数のシリコンウェーハを切り出すこと、上記複数のシリコンウェーハを、鏡面加工を施すことによってシリコン鏡面ウェーハに加工すること、上記複数のシリコン鏡面ウェーハを鏡面加工された表面上にエピタキシャル層を形成することによってシリコンエピタキシャルウェーハに加工すること、上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハを上記シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法によって評価すること、および、上記評価の結果、双晶起因欠陥が存在しないと推定されたシリコンエピタキシャルウェーハを製品シリコンエピタキシャルウェーハとして出荷するための1つ以上の工程に付すことを含む。製品シリコンエピタキシャルウェーハとして出荷するための工程の具体例としては、梱包工程等を挙げることができる。
【0050】
上記シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法によれば、双晶起因欠陥、即ちシリコンエピタキシャルウェーハの基板(シリコン鏡面ウェーハ)に含まれる双晶に起因してシリコンエピタキシャルウェーハの表面に現れる表面欠陥が存在しないと推定されたシリコンエピタキシャルウェーハを製品シリコンエピタキシャルウェーハとして出荷することができる。こうして出荷された製品シリコンエピタキシャルウェーハを用いて半導体デバイスを作製することは、優れたデバイス特性を示すことができる半導体デバイスの提供に寄与し得る。
【0051】
上記シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法の詳細については、上記シリコン単結晶インゴットの評価方法に関する先の記載および上記シリコンエピタキシャルウェーハの評価方法に関する先の記載を参照できる。
【0052】
[シリコン鏡面ウェーハの評価方法]
本発明の一態様にかかるシリコン鏡面ウェーハの評価方法は、評価対象のシリコン鏡面ウェーハは同一のシリコン単結晶インゴットから切り出され鏡面加工が施されたシリコン鏡面ウェーハであって、上記複数のシリコン鏡面ウェーハを鏡面加工が施された表面上にエピタキシャル層を形成することによってシリコンエピタキシャルウェーハに加工すること、レーザー表面検査装置によって上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について輝点マップを取得すること、および、上記複数のシリコンエピタキシャルウェーハのエピタキシャル層表面について取得された輝点マップを重ね合わせた重ね合わせマップを作成すること、を含む。上記シリコン鏡面ウェーハの評価方法に関して、シリコン単結晶インゴット、シリコン鏡面ウェーハ、シリコンエピタキシャルウェーハ、輝点マップの取得、重ね合わせマップの作成については、上記シリコン単結晶インゴットの評価方法に関する先の記載を参照できる。そして、上記シリコン鏡面ウェーハの評価方法では、以下の推定基準Cを採用し、シリコン鏡面ウェーハについて双晶に関する評価を行う。推定基準Cについては、推定基準Aに関する先の記載を参照できる。
【0053】
(推定基準C)
上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認されない場合、評価対象のシリコン鏡面ウェーハには双晶は存在しないと推定する。他方、上記重ね合わせマップにおいて、3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、この輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハに含まれるシリコン鏡面ウェーハには双晶が存在すると推定する。
【0054】
更に、上記シリコン鏡面ウェーハの評価方法では、推定基準Cに加えて、双晶がシリコン単結晶インゴットにおいて一定方向に発生する面欠陥である点を利用して、以下の追加推定基準1Cを更に採用することができる。追加推定基準1Cについては、追加推定基準1Aに関する先の記載を参照できる。
【0055】
(追加推定基準1C)
上記重ね合わせマップにおいて3点以上の複数の輝点がライン状に分布した輝点群が確認された場合、この輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハについて、輝点の位置座標と上記シリコン単結晶インゴットの軸方向における切り出し位置との間に比例関係が成り立つことを、上記輝点群に含まれる輝点が確認された複数のシリコンエピタキシャルウェーハに含まれるシリコン鏡面ウェーハに双晶が存在すると推定する。
【0056】
先に記載したように、双晶はシリコン単結晶インゴットにおいて一定方向に発生する。そのため、例えば、同じシリコン単結晶インゴットから切り出されてシリコン鏡面ウェーハに加工された複数のシリコン鏡面ウェーハの一部について上記シリコン鏡面ウェーハの評価方法によって評価を行うことにより、上記シリコン単結晶インゴットについて双晶発生領域の有無の推定および双晶発生領域の位置の推定を行うことができる。かかる推定の結果、上記シリコン単結晶インゴットについて、双晶が発生していないと推定される領域を特定することができる。更に、こうして特定された領域から切り出されたウェーハを加工して得られたシリコン鏡面ウェーハを、製品ウェーハとして出荷するための1つ以上の工程に付すことができる。例えば上記のように製品ウェーハとして出荷するシリコン鏡面ウェーハを決定することは、双晶を含まないシリコン鏡面ウェーハを製品ウェーハとして出荷することに寄与し得る。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の一態様は、シリコン単結晶インゴットの製造分野、シリコンエピタキシャルウェーハの製造分野およびシリコン鏡面ウェーハの製造分野において有用である。
図1
図2
図3
図4