(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022178857
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン樹脂組成物、シリコーン樹脂硬化物、ダム材、封止材及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20221125BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221125BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20221125BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K3/013
C08L83/05
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085952
(22)【出願日】2021-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】正田 沙和子
(72)【発明者】
【氏名】水梨 友之
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002CP043
4J002CP141
4J002CP142
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GQ05
4M109AA01
4M109EA10
4M109EB09
4M109EB12
4M109EB13
(57)【要約】
【課題】周辺部材への汚染が少なく、ブリードアウトが起こりにくい硬化性シリコーン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】硬化性シリコーン樹脂組成物であって、前記組成物は直鎖状オルガノポリシロキサンを含み、該直鎖状オルガノポリシロキサンは下記式(I)で表されるAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角の変化率が70%未満であるもののみからなるものであることを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
[{(滴下2s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)-(滴下60s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)}/(滴下2s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)]×100(%) (I)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーン樹脂組成物であって、前記組成物は直鎖状オルガノポリシロキサンを含み、該直鎖状オルガノポリシロキサンは下記式(I)で表されるAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角の変化率が70%未満であるもののみからなるものであることを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
[{(滴下2s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)-(滴下60s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)}/(滴下2s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)]×100(%) (I)
【請求項2】
前記硬化性シリコーン樹脂組成物が、
(A-1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(A-2)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を含有するレジン構造のオルガノポリシロキサン、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個有し、前記式(I)で表されるAu基板に対する前記接触角の変化率が70%未満であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金族金属系触媒、及び
(D)無機充填剤、
を含み、前記直鎖状オルガノポリシロキサンを(A-1)成分として含むものであることを特徴とする請求項1に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A-2)成分がSiO4/2単位及びR1SiO3/2単位のうち少なくともいずれかを有するアルケニル基含有レジン構造のオルガノポリシロキサン(ここで、R1は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基である)を含むものであることを特徴とする請求項2に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化性シリコーン樹脂組成物のひずみ速度1(1/s)における粘度が、ひずみ速度10(1/s)における粘度の2.0倍以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化して成るものであることを特徴とするシリコーン樹脂硬化物。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物からなるものであることを特徴とするダム材。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物からなるものであることを特徴とする封止材。
【請求項8】
請求項5に記載のシリコーン樹脂硬化物を備えるものであることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性シリコーン樹脂組成物、該組成物からなるダム材及び封止材、前記組成物を硬化してなるシリコーン樹脂硬化物、該硬化物を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂組成物は、低弾性かつ低応力であり、耐熱性、電気絶縁性等の信頼性に優れることから電子部品や半導体用途などに広く用いられている。
【0003】
しかしながら、シリコーン樹脂組成物を電子部品や半導体用途などに用いる場合、シリコーン樹脂組成物中に含有される低分子シロキサンが問題となることがある。このような問題には、例えば、低分子シロキサンが揮発し、周囲に付着することによる曇りの発生、接点障害、接着阻害、表面の疎水化などが挙げられる。
【0004】
上記問題を解決する方法として、例えば特許文献1では、付加硬化性シリコーン樹脂組成物に含有される低分子シロキサン化合物を樹脂組成物全体の一定質量%以下とすることで、加熱硬化時の周囲への汚染を抑えることが可能であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、電子部材の小型化に伴い、部材がより集積化・高密度化する傾向にあり、その結果、電子部材用途に使用されるシリコーン樹脂組成物には、低分子シロキサン含有量が少ないことに加え、周辺部材への干渉を防ぐ目的で、シリコーン樹脂組成物を基材(基板)に塗布した際に、シリコーン樹脂組成物からのブリードアウトが少ないことが求められている。
【0007】
しかし、上記特許文献1には低分子シロキサンの除去について言及されているが、シリコーン樹脂組成物からのブリードアウトについては言及されず、近年、電子材料用途の部材に求められる要求を満たすのに十分ではない。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、周辺部材への汚染が少なく、ブリードアウトが起こりにくい硬化性シリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、硬化性シリコーン樹脂組成物であって、前記組成物は直鎖状オルガノポリシロキサンを含み、該直鎖状オルガノポリシロキサンは下記式(I)で表されるAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角の変化率が70%未満であるもののみからなるものであることを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物を提供する。
[{(滴下2s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)-(滴下60s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)}/(滴下2s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)]×100(%) (I)
【0010】
このような硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、周辺部材への汚染が少なく、ブリードアウトが起こりにくい。
【0011】
また、本発明では、前記硬化性シリコーン樹脂組成物が、
(A-1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(A-2)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を含有するレジン構造のオルガノポリシロキサン、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個有し、前記式(I)で表されるAu基板に対する前記接触角の変化率が70%未満であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金族金属系触媒、及び
(D)無機充填剤、
を含み、前記直鎖状オルガノポリシロキサンを(A-1)成分として含むものであることが好ましい。
【0012】
本発明には、このような硬化性シリコーン樹脂組成物が好適に用いられる。
【0013】
また、本発明では、前記(A-2)成分がSiO4/2単位及びR1SiO3/2単位のうち少なくともいずれかを有するアルケニル基含有レジン構造のオルガノポリシロキサン(ここで、R1は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基である)を含むものであることが好ましい。
【0014】
このような硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、周辺部材への汚染がより少なく、ブリードアウトがより起こりにくいものとなる。
【0015】
また、本発明では、前記硬化性シリコーン樹脂組成物のひずみ速度1(1/s)における粘度が、ひずみ速度10(1/s)における粘度の2.0倍以上であることが好ましい。
【0016】
このような硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、周辺部材への汚染がさらに少なく、ブリードアウトがさらに起こりにくいものとなる。
【0017】
また、本発明では、上記硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化して成るシリコーン樹脂硬化物を提供する。
【0018】
このようなシリコーン樹脂硬化物であれば、周辺部材への汚染が少なく、ブリードアウトが起こりにくい硬化物となる。
【0019】
また、本発明では、上記硬化性シリコーン樹脂組成物からなるダム材及び封止材を提供する。
【0020】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物はこのような部材に好適に用いることができる。
【0021】
また、本発明では、上記シリコーン樹脂硬化物を備える半導体装置を提供する。
【0022】
このような半導体装置であれば、シリコーン樹脂から周辺部材への汚染が少なく、ブリードアウトが起こりにくいため、周辺部材への干渉を十分防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、封止材やダム材として、電子部品用途に使用した際に、周辺部材への汚染が少なく、かつブリードアウトしにくく、精密なフローコントロール性を備えた硬化性シリコーン樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の各実施例及び比較例の硬化性シリコーン樹脂組成物をAu基板に塗布して硬化させ、SEM-EDXにより分析した際に検出されたSi検出量をシリコーン樹脂硬化物からの距離に対してプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述のように、周辺部材への汚染が少なく、ブリードアウトが起こりにくい硬化性シリコーン樹脂組成物の開発が求められていた。
【0026】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記式(I)により表される、Au基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角の変化率が特定の範囲内にある直鎖状オルガノポリシロキサンを使用するとブリードアウトしにくい硬化性シリコーン樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0027】
即ち、本発明は、硬化性シリコーン樹脂組成物であって、前記組成物は直鎖状オルガノポリシロキサンを含み、該直鎖状オルガノポリシロキサンは下記式(I)で表されるAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角の変化率が70%未満であるもののみからなるものであることを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物である。
[{(滴下2s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)-(滴下60s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)}/(滴下2s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)]×100(%) (I)
【0028】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
[硬化性シリコーン樹脂組成物]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は直鎖状オルガノポリシロキサンを含み、該直鎖状オルガノポリシロキサンはAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角の変化率が70%未満であるもののみからなるものであることを特徴とする。ここで、前記接触角の変化率は下記式(I)で表される。
[{(滴下2s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)-(滴下60s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)}/(滴下2s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)]×100(%) (I)
【0030】
なお、本発明における接触角は、接触角計(協和界面科学社製:自動表面張力計PD-V)を用いて、直鎖状オルガノポリシロキサンのAu基板に対する接触角を25℃、湿度50%で測定した。なお、接触角は、4μlの液滴をサンプル表面に着滴させた後、2秒後から60秒後まで測定を行った。Au基板は、金メッキ基板(面粗さパラメータSa:0.3μm、Sz:5μm)を用いた。
【0031】
上記式(I)で表されるAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角の変化率(以下、「接触角変化率」とも言う)が70%以上であると、硬化性シリコーン樹脂組成物を基板に塗布後に、硬化性シリコーン樹脂組成物中のオルガノポリシロキサンが濡れ広がりやすくなるため、硬化性シリコーン樹脂組成物からのブリードアウトを抑えることが出来ない。
【0032】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、直鎖状オルガノポリシロキサンを(A-1)成分として含む下記(A)成分としての(A-1)及び(A-2)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含むものであることが好適である。
(A-1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(A-2)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を含有するレジン構造のオルガノポリシロキサン、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個有し、前記式(I)で表されるAu基板に対する前記接触角の変化率が70%未満であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金族金属系触媒、及び
(D)無機充填剤。
【0033】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上記(A)~(D)成分のほか、必要に応じて(E)硬化抑制剤、(F)接着性付与剤等の添加剤を含むことができる。以下、これらの成分について説明する。
【0034】
[(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン]
(A)成分は、下記(A-1)、(A-2)成分を含むアルケニル基含有オルガノポリシロキサンである。
【0035】
[(A-1)オルガノポリシロキサン]
(A-1)は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。前記直鎖状オルガノポリシロキサンは(A-1)成分として含まれ、前記式(I)で表されるAu基板に対する接触角の変化率が、70%未満であり、好ましくは65%以下である。
【0036】
(A-1)成分は炭素数6~12の芳香族炭化水素基、好ましくは炭素数6~8の芳香族炭化水素基を一分子中の15mol%以上、40mol%以下の数含むことが好ましい。芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、及びビフェニル基等のアリール基や、ベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
【0037】
上記範囲内の接触角変化率を有する直鎖状オルガノポリシロキサンは、基板表面へ塗布した際の濡れ広がりが小さくなるため、該直鎖状オルガノポリシロキサンを使用すると基材塗布時の良好なフローコントロール性を備え、かつ硬化性シリコーン樹脂組成物からのブリードアウトを抑制することが出来る。
【0038】
(A-1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンの配合量としては、(A)~(D)成分全体に対して5~90質量%の配合量であればよく、好ましくは10~80質量%の範囲内である。
【0039】
上記ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンは粘度が単一な1種類のみを使用しても、粘度と接触角が異なる2種類以上を使用しても良い。
【0040】
上記ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンは、JIS K 7117-1:1999に準拠してブルックフィールド形回転粘度計により測定される25℃での粘度10~100,000mPa・sを有することが好ましく、より好ましくは100~50,000mPa・s、さらに好ましくは1,000~30,000mPa・sを有するのがよい。粘度が10mPa・s以上であれば、組成物がブリードしにくくなり、100,000mPa・s以下であれば、作業性が悪くなることがない。
【0041】
(A―1)成分としては例えば、下記構造式で表されるオルガノポリシロキサンを例示できるが、これらに限定されない。
【化1】
(式中、xは10~5,000の数、yは1~100の数、zは1~100の数であり、yが15mol%以上、40mol%以下の数、zが15mol%以上、40mol%以下の数であることが好ましい。)
【0042】
[(A-2)レジン構造のオルガノポリシロキサン]
(A-2)成分は1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を含有するレジン構造のオルガノポリシロキサンである。
【0043】
レジン構造(網目鎖状)のオルガノポリシロキサンは、重量平均分子量(Mw)1,000~6,000を有することが好ましく、より好ましくは1,100~5,500である。重量平均分子量が1,000以上であれば硬化性シリコーン樹脂組成物が脆くなる恐れがない。また、重量平均分子量が6,000以下であると硬化性シリコーン樹脂組成物の作業性が悪くなる恐れがないため好ましい。
【0044】
なお、本発明における重量平均分子量(Mw)とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量を指す。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
【0045】
上記レジン構造のオルガノポリシロキサンが有する、ケイ素原子に結合したアルケニル基の量は、通常0.01~0.5mol/100gであり、好ましくは0.05~0.3mol/100g、より好ましくは0.10~0.25mol/100gである。ケイ素原子に結合したアルケニル基の量が上記下限値以上であれば、硬化性シリコーン樹脂組成物が固まるのに十分な架橋点を有し、上記上限値以下であれば、架橋密度が上がり過ぎて靱性を失ってしまう恐れがないため好ましい。
【0046】
(A―2)成分において、ケイ素原子に結合した水酸基の量は、通常0.001~1.0mol/100gであることが好ましく、より好ましくは0.005~0.8mol/100g、更に好ましくは0.008~0.6mol/100gであるのがよい。ケイ素原子に結合した水酸基の量が上記下限値以上であれば、硬化性シリコーン樹脂組成物が固まるのに十分な架橋点を有し、上記上限値以下であれば架橋密度が上がり過ぎて靱性を失ってしまう恐れがないため好ましい。
【0047】
(A-2)成分において、ケイ素原子に結合したアルコキシ基の量は、通常1.0mol/100g以下であることが好ましく、より好ましくは0.8mol/100g以下、更に好ましくは0.5mol/100g以下であるのがよい。該アルコキシ基は、通常、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5を有する。アルコキシ基の量が上記上限値以下であれば、硬化時に副生成物のアルコールガスが発生しづらく、硬化物にボイドが残る恐れもない。尚、本発明におけるケイ素原子に結合した水酸基量、アルコキシ基量は1H-NMR及び29Si-NMRによって測定された値を指す。
【0048】
(A―2)成分(レジン構造のオルガノポリシロキサン)は、SiO4/2単位及びR1SiO3/2単位のうち少なくともいずれかを有するアルケニル基含有レジン構造のオルガノポリシロキサンを含むものであることが好ましく、その和が50mol%以上であることがより好ましく、60~90mol%であることがさらに好ましい。また、SiO4/2単位(Q単位)を通常0~60mol%、好ましくは0~50mol%有し、R1SiO3/2単位(T単位)を通常0~90mol%、好ましくは30~80mol%有し、(R1)2SiO2/2単位(D単位)を通常0~50mol%、好ましくは0~20mol%有し、及び、(R1)3SiO1/2単位(M単位)を通常0~50mol%、好ましくは10~30mol%有することが好ましい。ここで、R1は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基である。
【0049】
上記M単位、D単位、及びT単位中のR1は、互いに独立して、炭素数1~10、好ましくは炭素数2~5の置換または非置換の1価アルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10、好ましくは炭素数6~8のアリール基である。但し、アルキニル基ではない。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基;及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子やシアノ基等で置換した基、例えばクロロメチル基、シアノエチル基、及び3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも、メチル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。より好ましくは、(R1)3SiO1/2単位(M単位)に結合した置換基R1の少なくとも1つが炭素数2~10のアルケニル基である。
【0050】
SiO4/2単位(Q単位)を得るための材料としては、例えば、ケイ酸ソーダ、テトラアルコキシシラン、またはその縮合反応物等を例示できるが、これらに限定されない。
【0051】
R
1SiO
3/2単位(T単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式(1)で表されるオルガノトリクロロシラン、オルガノトリアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物、又はこれらの縮合反応物等を例示できるが、これらに限定されない。
【化2】
(上記式中、Meはメチル基を示す。)
【0052】
(R
1)
2SiO
2/2単位(D単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式(2)で表されるジオルガノジクロロシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、環状ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物や下記構造式(3)、(4)のジオルガノポリシロキサン等を例示できるが、これらに限定されない。
【化3】
(上記式中、Meはメチル基を示す。)
【0053】
【化4】
(上記式中、Meはメチル基を示す。nは5~80の整数、mは5~80の整数であり、ただしn+m≦78である。)
【0054】
【化5】
(上記式中、Meはメチル基を示す。nは5~80の整数、mは5~80の整数であり、ただしn+m≦78である。)
【0055】
(R
1)
3SiO
1/2単位(M単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式で表されるトリオルガノクロロシラン、トリオルガノアルコキシシラン、ヘキサオルガノジシロキサン等の有機ケイ素化合物等を例示できるが、これらに限定されない。
【化6】
(上記式中、Meはメチル基を示す。)
【0056】
[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個有し、式(I)で表されるAu基板に対する接触角の変化率が70%未満、好ましくは65%以下であることを特徴とするオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0057】
(B)成分は炭素数数6~12の芳香族炭化水素基、好ましくは炭素数6~8の芳香族炭化水素基を一分子中の15mol%以上、40mol%以下の数含むことが好ましい。芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、及びビフェニル基等のアリール基や、ベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
【0058】
上記範囲内の接触角変化率を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、基板表面へ塗布した際の濡れ広がりが小さくなるため、該オルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用すると基板塗布時の硬化性シリコーン樹脂組成物からのブリードアウトを抑制することが出来る。
【0059】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、(A)成分中のアルケニル基の合計個数に対する(B)成分中のヒドロシリル基(SiH基)の個数比が0.1~4となる量であり、好ましくは0.4~2となる量であり、より好ましくは0.5~1.6となる量である。
【0060】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは例えば、下記構造式で表されるオルガノポリハイドロジェンシロキサンを例示できるが、これらに限定されない。
【化7】
(式中、a=3~50、b=5~20であり、c=1~10、bが15mol%以上、40mol%以下、cが60mol%以下の数であることが好ましい。)
【0061】
[(C)白金族金属系触媒]
(C)白金族金属系触媒は、硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれる(A)成分と(B)成分の付加硬化反応を促進すればよく、公知の付加反応触媒が使用できる。例えば、白金系、パラジウム系、ロジウム系のものが挙げられる。コスト等を考慮して、白金、白金黒、塩化白金酸などの白金系のもの、例えば、H2PtCl6・pH2O、K2PtCl6、HPtCl6・pH2O、K2PtCl4、K2PtCl4・pH2O、PtO2・pH2O、PtCl4・pH2O、PtCl2、H2PtCl4・pH2O(ここで、pは、正の整数)等やこれらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等、ビス(アセチルアセナト)白金(II)などの白金2価錯体や、(トリメチル)メチルシクロペンタジエニル白金(IV)などの白金4価錯体を例示することができる。これらの触媒は1種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0062】
触媒の配合量は触媒量であればよい。例えば、白金族金属系触媒を用いる場合には、上記(A)~(C)成分の合計100質量部に対して、白金族金属換算(質量)で好ましくは0.0001~0.2質量部、より好ましくは0.0001~0.05質量部となる量であれば良い。
【0063】
[(D)無機充填剤]
無機充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ、ヒュームド二酸化チタン等が例示できる。特に得られるシリコーン樹脂硬化物の強度を向上させる目的と、硬化性シリコーン樹脂組成物のフローコントロールの観点から、ヒュームドシリカを用いることが好ましい。
【0064】
無機充填剤は、(A)~(C)成分の合計100質量部当たり50質量部以下、好ましくは5~30質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0065】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、ひずみ速度1(1/s)における粘度が、ひずみ速度10(1/s)における粘度の2.0倍以上であることができ、好ましくは、ひずみ速度1(1/s)における粘度が、ひずみ速度10(1/s)における粘度の2.5倍以上である。粘度(Pa・s)は、例えば25℃において、ティー・エイ・インスツルメンツジャパン株式会社製のレオメーター(DHR-3)を用い、ひずみ速度0.01(1/s)から1000(1/s)までの範囲で測定することができる。
【0066】
[添加剤]
また、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物には、(A)~(D)成分以外にも、必要に応じて各種の添加剤、例えば(E)~(F)成分を配合することができる。
【0067】
[(E)硬化抑制剤]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物には、硬化速度を調整する等の目的で硬化抑制剤を配合することができる。硬化抑制剤としては、例えば、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンやヘキサビニルジシロキサンのようなビニル基高含有オルガノポリシロキサン;トリアリルイソシアヌレート、アルキルマレエート、アセチレンアルコール類及びそのシラン変性物やシロキサン変性物;ハイドロパーオキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール及びこれらの混合物からなる群から選ばれる化合物等が挙げられる。
【0068】
硬化抑制剤を配合する場合は、(A)~(C)成分の合計100質量部当たり、通常0.001~1質量部、好ましくは0.005~0.5質量部添加される。
【0069】
[(F)接着性付与剤]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上述した(A)~(E)成分以外に、更に(F)接着性付与剤を配合することができる。該(F)接着性付与剤としては、加水分解性シリル基、及び被着体に対する親和性及び/又は反応性を有する官能基を有する化合物が挙げられる。前記化合物を添加することで、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に接着性を付与することができる。
【0070】
ここで、加水分解性シリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロポキシシリル基、トリイソプロペノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、ジメトキシフェニルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジエトキシエチルシリル基、ジエトキシフェニルシリル基などのジアルコキシアルキルシリル基などが例示でき、また被着体に対する親和性及び/又は反応性を有する官能基としては、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、N-アルキルアミノ基、N-アリールアミノ基、メルカプト基、アルケニル基、及びヒドロシリル基などが挙げられる。
【0071】
(F)接着性付与剤としては、エポキシ基、(メタ)アクリル基、アミノ基、及びメルカプト基から選ばれる基を有するアルコキシシラン、クロロシラン又はこれらの(部分)共加水分解縮合物;アルケニル基又は水素原子(ヒドロシリル基)を有するアルコキシシラン;アルコキシシリル基含有イソシアヌル酸、ヒドロシリル基とアルコキシシリル基及び/又はエポキシ基とを有する環状シロキサン等が例示できる。
【0072】
(F)接着性付与剤としては、例えば2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、及びこれらアルコキシシラン及び/又は相当するクロロシランの(部分)共加水分解縮合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及びトリメトキシシラン等;1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、ポリエチレングリコール変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールA(ポリ)エトキシジアクリレート、ビスフェノールA(ポリ)プロポキシジアクリレート、ビスフェノールF(ポリ)エトキシジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD R-604)、ジシクロペンタニルジメチレンジアクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD R-684)、(ポリ)エチレングリコールジアクリレートヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン付加物のジアクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX-220、HX-620等)等を挙げることができる。
【0073】
さらに(F)接着性付与剤として、更に下記に示すようなイソシアヌル環やヒドロシリル基を有する環状のポリシロキサンに、加水分解性シリル基及び被着体に対する親和性及び/又は反応性を有する官能基を変性したものが挙げられる。
【化8】
【0074】
【0075】
【0076】
上記(F)接着性付与剤は、1種単独でも2種以上の併用であってもよい。接着性接着付与剤の量は、上記(A)~(C)成分の合計100質量部に対し0.001~10質量部であればよく、好ましくは0.001~5質量部であればよい。
【0077】
[シリコーン樹脂硬化物]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、該硬化性シリコーン樹脂組成物を、用途に応じて所定の基材に塗布した後、硬化して成るシリコーン樹脂硬化物とすることができる。硬化条件は、例えば、60~200℃で加熱する方法や、紫外線照射により、硬化性シリコーン樹脂組成物を増粘させた後に、60~200℃で加熱して硬化させる方法が挙げられる。
【0078】
[ダム材]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、該硬化性シリコーン樹脂組成物からなるダム材とすることができる。
【0079】
[封止材]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、該硬化性シリコーン樹脂組成物からなる封止材とすることができる。
【0080】
[半導体装置]
本発明では、シリコーン樹脂硬化物を備える半導体装置を提供する。
【0081】
[硬化性シリコーン樹脂組成物の製造方法]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物の製造方法は、直鎖状オルガノポリシロキサンが下記式(I)で表されるAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角の変化率が70%未満であるもののみを選択し準備する工程を含めば特に限定されない。例えば、前記準備する工程の後、(A-1)、(A-2)、(D)成分を混合しベースコンパウンドとした後、次いで(E)、(C)成分を添加して混合し、更に(B)成分を添加して混合することで製造できる。混合装置については特に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えばプラネタリーミキサーや3本ロールが好ましい。(A-1)、(A-2)、(B)成分は薄膜蒸留を行った後使用してもよい。
[{(滴下2s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)-(滴下60s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)}/(滴下2s後のAu基板に対する直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角)]×100(%) (I)
【実施例0082】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、Phはフェニル基を、部は質量部を示す。
【0083】
[実施例1]
(A-1)成分として、下記式(1-1)で示される直鎖状オルガノポリシロキサン(粘度700mPa・s、ビニル基当量0.050mol/100g)100部、(A-2)成分として、CH2=CH(CH3)PhSiO1/2単位13mol%、(CH3)3SiO1/2単位30mol%、SiO4/2単位51mol%、R2SiO4/2単位6mol%で構成されるレジン構造のオルガノポリシロキサン(R2はメトキシ基及びイソプロポキシ基及びヒドロキシ基である)(2-1)を(Mw=4,400、ビニル基当量0.16mol/100g)40部、(D)成分として平均一次粒径が7nmであるナノシリカ(日本アエロジル株式会社製:RX-300)35部とをプラネタリーミキサーを用いて混合し、さらに、この混合物を3本ロールで練り、ベースコンパウンドを得た。得られたベースコンパウンド175部に、(E)成分として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.05部を加えてよく混合し、次いで(C)成分として塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.1部を添加して混合した。更に(B)成分として、下記式(3-1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを23.7部添加し、混合することで硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
なお、(1-1)、(2-1)、(3-1)は薄膜蒸留を行った後使用した。
【0084】
【0085】
[実施例2]
実施例1において、(A-1)成分を、下記式(1-3)で示される直鎖状オルガノポリシロキサン(粘度1,800mPa・s、ビニル基当量0.009mol/100g)100部に変更し、(B)成分(3-1)の添加量を15.1部に変更した以外は、実施例1を繰り返して硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
なお、(1-3)、(2-1)、(3-1)は実施例1と同様に薄膜蒸留を行った後使用した。
【0086】
【0087】
[実施例3]
実施例2において、(1-3)、(2-1)、(3-1)の薄膜蒸留をせずに使用した以外は、実施例2を繰り返して硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0088】
[実施例4]
(A-1)成分として、(1-1)を100部、下記式(1-2)で示される直鎖状オルガノポリシロキサン(粘度4,000mPa・s、ビニル基当量0.013mol/100g)90部、(A-2)成分としてレジン構造のオルガノポリシロキサン(2-1)を130部、(D)成分として平均一次粒径が7nmであるナノシリカ(日本アエロジル株式会社製:RX-300)41部をプラネタリーミキサーを用いて混合し、さらに、この混合物を3本ロールで練り、ベースコンパウンドを得た。得られたベースコンパウンド361部に、(E)成分として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.1部を加えてよく混合し、次いで(C)成分として塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.2部を添加して混合した。更に(B)成分として、(3-1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを56部添加し、混合することで硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
なお、(1-1)、(1-2)、(2-1)、(3-1)は薄膜蒸留を行った後使用した。
【0089】
【0090】
[実施例5]
実施例4において(D)成分を80部に変更した以外は実施例4を繰り返して、硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0091】
[実施例6]
実施例4において(B)成分を28部に変更した以外は実施例4を繰り返して、硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0092】
[実施例7]
実施例5において(B)成分を28部に変更した以外は実施例5を繰り返して、硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0093】
[比較例1]
実施例1において(A-1)成分を下記式(1-4)で表される直鎖状オルガノポリシロキサン100部、(A-2)成分を、CH2=CH(CH3)2SiO1/2単位6.9mol%、(CH3)3SiO1/2単位37.3mol%、SiO4/2単位55.8mol%で構成されるレジン構造のオルガノポリシロキサン(2-2)(重量平均分子量:5,200、ビニル基当量0.095mol/100g)40部、(B)成分を下記式(3-2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(ヒドロシリル基当量1.51mol/100g)3.2部に変更した以外は実施例1を繰り返して、硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
なお、各(A)成分(B)成分は、薄膜蒸留した後、使用した。
【0094】
【0095】
[比較例2]
比較例1において、各成分を薄膜蒸留せずに使用した以外は比較例1を繰り返して硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0096】
[比較例3]
実施例2において、(B)成分を(3-2)3.2部に変更した以外は、実施例2を繰り返してシリコーン樹脂組成物を調製した。
【0097】
[比較例4]
(A-1)成分として、下記式(1-6)で示される直鎖状オルガノポリシロキサン(粘度30,000mPa・s、ビニル基当量0.0040mol/100g)30部、下記式(1-5)で示される直鎖状オルガノポリシロキサン(粘度5,000mPa・s、ビニル基当量0.006mol/100g)100部、(A-2)成分として、CH2=CH(CH3)2SiO1/2単位6.9mol%、(CH3)3SiO1/2単位37.3mol%、SiO4/2単位55.8mol%で構成されるレジン構造のオルガノポリシロキサン(2-2)(重量平均分子量:5,200、ビニル基当量0.095mol/100g)25部、(D)成分として平均一次粒径が7nmであるナノシリカ(日本アエロジル株式会社製:RX-300)10部をプラネタリーミキサーを用いて混合し、さらに、この混合物を3本ロールで練り、ベースコンパウンドを得た。得られたベースコンパウンド165部に(E)成分として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.05部を加えてよく混合し、次いで(C)成分として塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.1部を添加して混合した。更に(B)成分として、上記式(3-2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(ヒドロシリル基当量1.53mol/100g)2.4部添加し、混合することで硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0098】
【0099】
[比較例5]
実施例2において、(A-1)成分を下記式(1-7)で表される直鎖状オルガノポリシロキサン(粘度1,000mPa・s、ビニル基当量0.013mol/100g)に、(B)成分(3-1)を33部に変更した以外は、実施例2を繰り返して硬化性シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0100】
【0101】
(1)直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角の測定
直鎖状オルガノポリシロキサンの接触角の測定は、Auめっき基板(面粗さパラメータSa:0.3μm、Sz:5μm)上に各オルガノポリシロキサンの液滴を4μlサンプル表面に着滴させ、接触角計(協和界面科学社製:自動表面張力計PD-V)を用いてAuめっき基板に対する接触角を25℃、湿度50%で2秒後から60秒後まで2s間隔で測定した。2s後と60s後の接触角と、接触角の変化率を表1にまとめた。
【0102】
(2)粘度
25℃における粘度(Pa・s)は、ティー・エイ・インスツルメンツジャパン株式会社製のレオメーター(DHR-3)を用い、ひずみ速度0.01(1/s)から1000(1/s)までの範囲で測定した。結果を表2に示す。
【0103】
(3)揮発分の測定
アルミニウム製のシャーレに実施例及び比較例の硬化性シリコーン樹脂組成物を1.5g入れ、熱風循環式乾燥機を使用して、150℃で3時間加熱し、該硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させた。加熱後、上記容器を25℃まで冷却し、加熱により減少した質量を求め、揮発分を算出した。結果を表2に示す。
【0104】
(4)ブリードアウトの確認
Auめっき基板上に、実施例および比較例の硬化性シリコーン樹脂組成物をディスペンスし、容積30cm
3のアルミニウム製の密封容器中にいれ、熱風循環式乾燥機を使用して、135℃で20分加熱し、該硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させた。加熱後、容器が密封された状態で該容器を25℃まで冷却し、容器の中から金めっき板を取り出し、SEM-EDXを用いて、シリコーン樹脂硬化物からの距離が20μm、500μm、1000μm、1300μmにおけるAu原子の検出量に対するSi原子の検出量の比を算出した。結果を表3と
図1に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
表3、
図1に示す通り、接触角変化率が70%未満である直鎖状オルガノポリシロキサンのみを用いた実施例1~7の場合では、粘度やチキソ比の値にかかわらずSEM-EDXによるSi原子の検出量が少なく良好な結果であった。一方で、接触角変化率が70%以上である直鎖状オルガノポリシロキサンを一部でも使用した比較例1~5においては、実施例と比較してSEM-EDXによるSi原子の検出量が多く、即ち硬化性シリコーン樹脂組成物からのブリードアウトが確認された。
【0109】
また、実施例2及び3と比較例1及び2を比較すると、実施例2及び3では(A)成分及び(B)成分の低分子シロキサンの除去の有無にかかわらず、SEM-EDXによるSi原子の検出量が少なく良好な結果であった。一方で、比較例1及び2においては、低分子成分を除去してもSEM-EDXによるSi原子の検出量が多い。以上の結果より、ブリードアウトには、低分子成分の有無よりも、使用する直鎖状オルガノシロキサンの接触角変化率の寄与の方が大きいことが明らかとなった。
【0110】
従って本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物により、ブリードアウトしにくく、周辺部材への汚染が少ない硬化性シリコーン樹脂組成物を提供することが出来る。
【0111】
[産業上の利用可能性]
本発明の硬化性シリコーン接着剤組成物は、基材に塗布した際のシリコーン樹脂からのブリードアウトが起こりにくく、周辺部への汚染が少ない。このようなシリコーン樹脂組成物は、特に電子部材用途として使用すれば、シリコーン成分の他部材への干渉を抑制できるため、部材をより高密度で高集積化することが可能となる。
【0112】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
(F)接着性付与剤としては、例えば2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、及びこれらアルコキシシラン及び/又は相当するクロロシランの(部分)共加水分解縮合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及びトリメトキシシラン等;1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、ポリエチレングリコール変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールA(ポリ)エトキシジアクリレート、ビスフェノールA(ポリ)プロポキシジアクリレート、ビスフェノールF(ポリ)エトキシジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD R-604)、ジシクロペンタニルジメチレンジアクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD R-684)、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン付加物のジアクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX-220、HX-620等)等を挙げることができる。