(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179329
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】研磨用組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/149 20060101AFI20221125BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C01B33/149
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036107
(22)【出願日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2021086075
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 将志
(72)【発明者】
【氏名】篠田 敏男
(72)【発明者】
【氏名】石黒 諭
(72)【発明者】
【氏名】鎗田 哲
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA28
4G072BB05
4G072CC13
4G072DD06
4G072EE01
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH17
4G072HH30
4G072LL06
4G072MM01
4G072QQ06
4G072RR05
4G072RR12
4G072TT30
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】カチオン性基を有するシランカップリング剤を用いてシリカを変性させることを含む研磨用組成物の製造方法において、カチオン性基を有するシランカップリング剤の添加後における粗大粒子の発生を抑制しうる手段を提供する。
【解決手段】シリカを含む分散液と、カチオン性基を有するシランカップリング剤を0.03質量%以上1質量%未満の濃度で含む溶液と、を混合して、カチオン変性シリカを含む分散液を得ることを含む、研磨用組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含む分散液と、カチオン性基を有するシランカップリング剤を0.03質量%以上1質量%未満の濃度で含む溶液と、を混合して、カチオン変性シリカを含む分散液を得ることを含む、研磨用組成物の製造方法。
【請求項2】
前記シリカと前記カチオン性基を有するシランカップリング剤との混合質量比(シリカ/カチオン性基を有するシランカップリング剤)は、100/0.05~100/0.8である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶液中の前記カチオン性基を有するシランカップリング剤の濃度が0.05質量%以上0.6質量%以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記混合は、前記シリカを含む分散液に対して、前記カチオン性基を有するシランカップリング剤を含む溶液を添加することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記シリカはコロイダルシリカである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記カチオン性基を有するシランカップリング剤は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シラン、[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(6-アミノヘキシルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、N-メチル-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ブタン-1-アミン、およびビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]アミンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記カチオン変性シリカを含む分散液をろ過することをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記カチオン変性シリカを含む分散液と、pH調整剤とを混合することをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
カチオン性基を有するカチオン変性シリカと、
分散媒と、を含み、
前記カチオン変性シリカは、下記の測定方法により測定される粒子径が0.7μmを超える粗大粒子の数が500,000個/mL以下である、研磨用組成物:
(測定方法)
水中にカチオン変性シリカを0.27質量%の濃度で分散させ、かつpHを4.0に調整した水分散液を調製した後、得られたカチオン変性シリカ水分散液中に存在する粒子径が0.7μmを超える粗大粒子の単位体積(1mL)当たりの数を、液中パーティクルカウンターを用いて測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造プロセスにおいては、半導体デバイスの性能の向上につれて、配線をより高密度かつ高集積に製造する技術が必要とされている。このような半導体デバイスの製造プロセスにおいてCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)は、必須のプロセスとなっている。半導体回路の微細化が進むにつれ、パターンウェハの凹凸に要求される平坦性が高く、CMPによりナノオーダーの高い平滑性を実現することも求められている。CMPにより高い平滑性を実現するためには、パターンウェハの凸部を高い研磨速度で研磨する一方で凹部はあまり研磨しないことが好ましい。
【0003】
ここで、CMPの際には、砥粒と呼ばれる研磨剤に加えて、研磨促進剤、pH調整剤等の各種添加剤を含む組成物(研磨用組成物)を用いることが一般的である。ここで、砥粒(研磨剤)は研磨対象物の表面に付着して当該表面を物理的作用によって削り取る機能を有する粒子である。そして、研磨用組成物を製造する際の砥粒(研磨剤)の原料としては、通常、砥粒(研磨剤)となりうるシリカ(酸化ケイ素;SiO2)粒子を分散質とする、コロイダルシリカ等のシリカ分散体が用いられる。
【0004】
このシリカ分散体は、酸性条件下にてシリカ粒子どうしが凝集してしまい、安定性に劣ることが知られており、幅広いpH領域で安定性に優れたシリカ分散体が従来求められていた。
【0005】
安定性を向上させたコロイダルシリカとしては、例えば、水性コロイダルシリカを塩基性塩化アルミニウムの水溶液で処理したコロイダルシリカや、水性コロイダルシリカを塩基性アルミニウム塩の水溶液で処理した後に、水溶性有機脂肪族ポリカルボン酸で安定化処理したコロイダルシリカなどが知られていた。
【0006】
しかしながら、これらのコロイダルシリカによると、安定性は向上できたものの、金属不純物の含有量が多く、例えば半導体ウェハなどを研磨するための砥粒(研磨剤)のように、高純度であることが求められる用途に使用できないという問題があった。
【0007】
このような金属不純物の混入量を低減させるための技術として、特許文献1では、加水分解可能なケイ素化合物を加水分解して製造したコロイダルシリカを、シランカップリング剤等の変性剤を用いて変性処理して、変性コロイダルシリカを製造する技術が開示されている。特許文献1によれば、かような手法により、コロイダルシリカの凝集やゲル化を起こすことがなく、長期間安定分散可能であり、しかも金属不純物の含有量が極めて少なく、高純度である変性コロイダルシリカが得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らが上記特許文献に記載された技術について検討を進めたところ、シランカップリング剤の添加後において、粗大粒子が生じる場合があることが判明した。このような粗大粒子が生じた場合、変性コロイダルシリカの生産性が低下するという問題が生じる。
【0010】
そこで本発明は、カチオン性基を有するシランカップリング剤を用いてシリカを変性させることを含む研磨用組成物の製造方法において、カチオン性基を有するシランカップリング剤の添加後における粗大粒子の発生を抑制しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を積み重ねた。その結果、シリカを含む分散液と、カチオン性基を有するシランカップリング剤を0.03質量%以上1質量%未満の濃度で含む溶液と、を混合して、カチオン変性シリカを含む分散液を得ることを含む、研磨用組成物の製造方法により上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カチオン性基を有するシランカップリング剤を用いてシリカを変性させることを含む研磨用組成物の製造方法において、カチオン性基を有するシランカップリング剤の添加後における粗大粒子の発生を抑制しうる手段が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物の製造方法は、シリカを含む分散液と、カチオン性基を有するシランカップリング剤を0.03質量%以上1質量%未満の濃度で含む溶液と、を混合して、カチオン変性シリカを含む分散液を得ることを含む。かような構成を有する本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、カチオン性基を有するシランカップリング剤の添加後における粗大粒子の発生を抑制することができる。また、本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、ろ過性に優れたカチオン変性シリカ水分散液を利用することができ、研磨用組成物のろ過を行う際に、目の細かいフィルターを使用することが可能となり、研磨用組成物中の粗大粒子数の低減に有利となる。
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。
【0015】
本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
【0016】
また、本明細書において、カチオン変性シリカとは、シリカ(好ましくはコロイダルシリカ)の表面にカチオン性基(例えば、アミノ基または第四級アンモニウム基)が結合している化合物を指す。本発明の好ましい実施形態によれば、カチオン変性シリカは、アミノ基変性シリカであり、より好ましくはアミノ基変性コロイダルシリカである。
【0017】
[シリカを含む分散液]
本発明の一実施形態に係る製造方法においては、原料としてシリカを含む分散液(以下、単に「シリカ分散液」とも称する)を用いる。シリカ分散液に含まれるシリカは、後述するカチオン性基を有するシランカップリング剤を用いてカチオン変性(改質)される前の原料である。
【0018】
本発明で用いられる原料としてのシリカは、天然結晶シリカ、天然非晶質シリカ、合成結晶シリカおよび合成非晶質シリカのいずれであってもよい。しかしながら、シリカとしては、非晶質シリカ(アモルファスシリカ)であることが好ましく、合成非晶質シリカ(合成アモルファスシリカ)であることがより好ましい。なお、シリカは、1種単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、シリカは、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0019】
非晶質シリカの製造方法としては、例えば、ケイ酸ナトリウムを鉱酸で中和する方法(ケイ酸ソーダ法)、アルコキシシランを加水分解する方法(ゾルゲル法)等の湿式法;ケイ素塩化物を気化し、高温の水素炎中において気相反応によってシリカ粒子を合成する方法(気相法、ガス燃焼法)、微粉砕された珪石シリカと、金属シリコン粉末や炭素粉末などの還元剤と、スラリー状にするための水とからなる混合原料を、還元雰囲気下、高温で熱処理してSiOガスを発生させ、当該SiOガスを、酸素を含む雰囲気下で冷却する方法(溶融法)等の乾式法が挙げられ、特に制限されない。しかしながら、金属不純物低減の観点から、非晶質シリカはコロイダルシリカが好ましく、ゾルゲル法により製造されたコロイダルシリカがより好ましい。ゾルゲル法によって製造されたコロイダルシリカは、半導体中に拡散性のある金属不純物や塩化物イオン等の腐食性イオンの含有量が少ないため好ましい。ゾルゲル法によるコロイダルシリカの製造は、従来公知の手法を用いて行うことができ、具体的には、加水分解可能なケイ素化合物(例えば、アルコキシシランまたはその誘導体)を原料とし、水中、または水と有機溶媒との混合溶媒中で加水分解・縮合反応を行うことにより、コロイダルシリカを得ることができる。得られたコロイダルシリカは、そのままカチオン性シランカップリング剤を含む溶液との混合に用いてもよいが、分散媒を用いて希釈してもよい。
【0020】
シリカ分散液に用いられる分散媒としては、水、または水と有機溶媒との混合溶媒が用いられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の親水性有機溶媒が挙げられる。これら有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。水と有機溶媒との混合比率は、特に制限されず、任意に調整することができる。
【0021】
シリカ分散液に含まれるシリカは、通常、一次粒子の凝集体である二次粒子の形態として存在している。シリカの二次粒子の平均粒子径(平均二次粒子径)の下限は特に制限されないが、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。また、当該平均二次粒子径の上限は、300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、60nm以下であることがさらに好ましい。すなわち、シリカの平均二次粒子径は、10nm以上300nm以下であることが好ましく、15nm以上100nm以下であることがより好ましく、20nm以上60nm以下であることがさらに好ましい。平均二次粒子径が10nm以上であれば、シリカが高濃度であっても分散性が十分に確保され、一方、平均二次粒子径が300nm以下であれば、粗大粒子の発生が防止される。なお、当該平均二次粒子径の値としては、動的光散乱法により、体積平均粒子径として測定された値を採用することができる。
【0022】
シリカ分散液に含まれるシリカの平均一次粒子径の下限は、5nm以上であることが好ましく、7nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。また、シリカの平均一次粒子径の上限は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。すなわち、シリカの平均一次粒子径は、5nm以上100nm以下であることが好ましく、7nm以上50nm以下であることがより好ましく、10nm以上30nm以下であることがさらに好ましい。シリカの平均一次粒子径は、シリカの比表面積(SA)を基に、シリカの粒子形状が真球であると仮定して、SA=4πR2(Rは半径)の公式を用いて算出することができる。なお、これらの値から算出される会合度(平均二次粒子径/平均一次粒子径)の値についても特に制限はなく、好ましくは1.0以上5.0以下程度である。
【0023】
シリカ分散液に含まれるシリカの比表面積は、特に制限されず、カチオン変性シリカの利用形態に合わせて適宜選択できる。当該比表面積は、10m2/g以上600m2/g以下であることが好ましく、15m2/g以上300m2/g以下であることがより好ましく、20m2/g以上200m2/g以下であることがさらに好ましい。なお、当該比表面積の値としては、窒素吸着法(BET法)により算出された値を採用することができる。
【0024】
シリカ分散液におけるシリカの濃度(含有量)の下限は、特に制限されないが、生産性の観点から、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、シリカ分散液におけるシリカの濃度(含有量)の上限は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。すなわち、シリカ分散液におけるシリカの濃度(含有量)は、5質量%以上40質量%以下が好ましく、8質量%以上35質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
シリカ分散液のpHは、特に制限されないが、好ましくは5.0以上11.0以下であり、より好ましくは6.0以上10.5以下であり、さらに好ましくは7.0以上10.0以下である。
【0026】
また、必要に応じて、上記で準備したシリカ分散液に対して各種の処理工程をさらに施してもよい。かような処理工程としては、例えば、シリカ分散液の粘度を低減させる工程が例示される。シリカ分散液の粘度を低減させる工程は、例えば、シリカ分散液にアルカリ溶液(アンモニア水等の各種塩基の水溶液)または有機溶媒を添加する工程が挙げられる。この際、添加されるアルカリ溶液または有機溶媒の量については特に制限はなく、添加後に得られるシリカ分散液の粘度を考慮して適宜設定すればよい。このように、シリカ分散液の粘度を低下させる工程を実施することで、カチオン性シランカップリング剤のシリカ分散液への初期分散性の向上や、シリカ粒子どうしの凝集を抑制できるという利点がある。
【0027】
[カチオン性基を有するシランカップリング剤]
上記したように、シリカ(コロイダルシリカ)をカチオン変性するには、シリカを含む分散液と、カチオン性基(例えば、アミノ基または第四級アンモニウム基)を有するシランカップリング剤を含む溶液とを混合して、所定の温度で所定時間反応させればよい。なお、以下では、カチオン性基を有するシランカップリング剤を、単に「シランカップリング剤」とも称し、カチオン性基を有するシランカップリング剤を含む溶液を、単に「シランカップリング剤溶液」とも称する。
【0028】
用いられるシランカップリング剤の例としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(2-プロポキシ)シラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジメトキシエチルシラン、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シラン、[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、N-2-(2-アミノエチル)アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、[3-(6-アミノヘキシルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、N-メチル-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ブタン-1-アミン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリエトキシシラン、メチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-[2-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、トリメトキシ[2-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル]シラン、ジアミノメチルメチルジエトキシシラン、メチルアミノメチルメチルジエトキシシラン、p-アミノフェニルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルジメトキシメチルシラン、(フェニルアミノメチル)トリメトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、アセトアミドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、(2-アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、(アミノメチル)ジメトキシメチルシラン、(アミノメチル)トリメトキシシラン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N,N'-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンなどのアミノ基含有シラン類;オクタデシルジメチル-(γ-トリメトキシシリルプロピル)-アンモニウムクロライド、N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム基含有シラン類;等が挙げられる。
【0029】
これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、シランカップリング剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0030】
上記シランカップリング剤の中でも、水溶性が高く、表面における均一な変性処理が望めることから、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジメトキシエチルシラン、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シラン、[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(6-アミノヘキシルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、N-メチル-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ブタン-1-アミン、およびビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]アミンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。該シランカップリング剤は、より好ましくは、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジメトキシエチルシラン、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シラン、[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(6-アミノヘキシルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、N-メチル-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ブタン-1-アミン、およびビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]アミンからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0031】
シランカップリング剤溶液は、溶媒とシランカップリング剤とを混合攪拌することにより得ることができる。この際、シランカップリング剤溶液に用いられる溶媒は、シランカップリング剤を溶解できるものであれば、特に制限されない。溶媒の例としては、上記[シリカを含む分散液]の項で分散媒として例示した、水および有機溶媒等が挙げられる。
【0032】
本発明に係る製造方法において、シランカップリング剤溶液中のシランカップリング剤の濃度(含有量)は、0.03質量%以上1質量%未満である。当該濃度(含有量)が0.03質量%未満の場合、表面修飾の効果が十分に得られない。また、当該濃度(含有量)が1質量%以上の場合、粗大粒子が増加し、カチオン変性シリカの生産性が低下する。シランカップリング剤溶液中のシランカップリング剤の濃度(含有量)の下限は、0.04質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、シランカップリング剤溶液中のシランカップリング剤の濃度(含有量)の上限は、0.8質量%以下が好ましく、0.5質量以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらにより好ましく、0.15質量%以下が最も好ましい。すなわち、シランカップリング剤溶液中のシランカップリング剤の濃度(含有量)は0.04質量%以上0.8質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.3質量%以下がさらにより好ましく、0.05質量%以上0.15質量%以下が最も好ましい。
【0033】
[シリカを含む分散液とシランカップリング剤溶液との混合]
本形態に係るカチオン変性シリカは、上記したシリカを含む分散液とカチオン性基を有するシランカップリング剤溶液とを混合することにより得られる。具体的には、当該混合により、シリカとカチオン性基を有するシランカップリング剤とが反応し、シリカ粒子の表面に変性基としてのカチオン性基が導入され、カチオン変性シリカが生成し、当該カチオン変性シリカを含む分散液が得られる。
【0034】
本発明に係る製造方法において、シリカ分散液とシランカップリング剤溶液とを混合する方法は、特に制限されない。例えば、シリカ分散液に対して、シランカップリング剤溶液を添加してもよく、シランカップリング剤溶液に対して、シリカ分散液を添加してもよい。また、シリカ分散液とシランカップリング剤溶液とを同時に添加してもよい。混合する方法は、粗大粒子の発生をさらに抑えるという観点から、シリカ分散液に対して、シランカップリング剤を含む溶液を添加する方法が好ましい。この場合、シランカップリング剤溶液の添加形態については、一括で添加してもよいし、分割してもよいし、連続的に添加してもよい。連続的に添加する場合の添加速度は、シリカ分散液の濃度、シランカップリング剤溶剤の濃度などに応じて適宜調整されるが、例えば、添加全量が10mL程度の場合、1mL/min以上10mL/min以下である。
【0035】
シリカとカチオン性基を有するシランカップリング剤との混合質量比(シリカ/カチオン性基を有するシランカップリング剤)は、カチオン性基の導入量等によって適宜選択されるが、100/0.01~100/1であることが好ましく、100/0.05~100/0.8であることがより好ましい。混合質量比がこのような範囲であれば、粗大粒子の発生をより抑えることができる。
【0036】
混合する際のシリカ分散液およびシランカップリング剤溶液の温度は、特に限定されないが、常温から溶媒(分散媒)の沸点までの範囲が好ましい。本形態において、シリカとシランカップリング剤との反応が常温程度でも進行しうることから、常温付近の温度(例えば、20℃以上35℃以下)で反応を進行させることが好ましい。常温付近の温度(例えば、20℃以上35℃以下)の条件下であっても、反応系を数時間攪拌するというきわめて簡便な操作により、添加されたシランカップリング剤のほぼ全量がシリカと反応し、未反応のシランカップリング剤がほとんど残らないという利点もある。言い換えると、本形態では、シリカ分散液とシランカップリング剤溶液との反応系を加熱する工程を含まないことが好ましい。
【0037】
シリカとシランカップリング剤との反応時間(シリカ分散液シランカップリング剤溶液との混合時間)は、特に限定されないが、10分以上10時間以下が好ましく、30分以上5時間以下がより好ましい。反応を効率的に進行させるという観点からは、反応系を攪拌しながら反応を実施するとよい。この際用いられる攪拌手段や攪拌条件について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、攪拌速度は、成分を均一に分散させるという観点から、通常、20rpm(0.33s-1)以上800rpm(13.3s-1)以下であり、好ましくは50rpm(0.83s-1)以上700rpm(11.7s-1)以下である。
【0038】
反応系の圧力についても、常圧下(大気圧下)、加圧下、減圧下のいずれであってもよく、特に制限されない。本発明に係る反応は、常圧下(大気圧下)で進行しうることから、常圧下(大気圧下)で反応を実施することが好ましい。
【0039】
上記の方法に従って得られたカチオン変性シリカが、水以外の分散媒を含んでいる場合には、当該カチオン変性シリカの長期保存安定性を高めるために、必要に応じて、水以外の分散媒を水で置換してもよい。水以外の分散媒を水で置換する方法は特に限定されず、例えば、当該カチオン変性シリカを加熱しながら水を一定量ずつ滴下する方法が挙げられる。また、当該カチオン変性シリカを沈殿・分離、遠心分離等により水以外の分散媒と分離した後に、水に再分散させる方法も挙げられる。
【0040】
得られるカチオン変性シリカのゼータ電位の下限は、6mV以上が好ましく、8mVがより好ましく、10mV以上がさらに好ましい。また、得られるカチオン変性シリカのゼータ電位の上限は、70mV以下が好ましく、60mV以下がより好ましく、50mV以下がさらに好ましい。すなわち、得られるカチオン変性シリカのゼータ電位は、6mV以上70mV以下が好ましく、8mV以上60mV以下がより好ましく、10mV以上50mV以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、カチオン変性シリカのゼータ電位は、実施例に記載の方法によって測定される値を採用する。カチオン変性シリカのゼータ電位は、カチオン変性シリカが有するカチオン性基の量等により調整することができる。
【0041】
[粗大粒子の数]
本発明に係る製造方法によれば、カチオン性基を有するシランカップリング剤の添加後における粗大粒子の発生を抑制することができる。具体的には、下記の測定方法により測定される、カチオン変性シリカ水分散液中に存在する粒子径が0.7μmを超える粗大粒子の単位体積(1mL)当たりの数が、好ましくは2,000,000個/mL以下であり、より好ましくは1,000,000個/mL以下であり、さらに好ましくは500,000個/mL以下であり、さらにより好ましくは100,000個/mL以下であり、特に好ましくは50,000個/mL以下であり、特により好ましくは10,000個/mL以下であり、特により好ましくは、8,000個/mL以下であり、最も好ましくは5,000個/mL以下である。
【0042】
(粗大粒子数の測定方法)
水中にカチオン変性シリカを0.27質量%の濃度で分散させ、かつpHを4.0に調整した水分散液を調製し、得られたカチオン変性シリカ水分散液中に存在する粒子径が0.7μmを超える粗大粒子の単位体積当たりの数を、液中パーティクルカウンターを用いて測定する。なお、粗大粒子数の測定方法の詳細は、実施例に記載の通りである。
【0043】
[他の工程]
本発明に係る研磨用組成物の製造方法は、本発明の効果を阻害しない範囲において、他の工程をさらに含んでもよい。このような他の工程の例としては、カチオン変性シリカを含む分散液をろ過する工程、カチオン変性シリカを含む分散液と他の添加剤(好ましくはpH調整剤)とを混合する工程、他の添加剤を混合した後カチオン変性シリカを含む分散液をさらにろ過する工程、等が挙げられる。以下では、これらの工程について説明する。
【0044】
<カチオン変性シリカを含む分散液をろ過する工程(第1段目のろ過)>
本工程では、上記で得られたカチオン変性シリカを含む分散液をろ過する。本工程を行うことにより、分散液中の粗大粒子の数をさらに低減することができる。
【0045】
本発明に係る製造方法において、ろ過工程は1段のみであってもよいし、2段以上の多段であってもよい。本項で説明する技術内容は、ろ過工程が1段のみの場合のろ過、およびろ過工程が多段である場合の第1段目のろ過に適用される。ろ過工程が多段である場合の第2段目以降のろ過の技術内容については、後述する。
【0046】
本工程で使用されるフィルターのメディア形状は特に制限されず、種々の構造、形状、機能を有するフィルターを適宜採用することができる。具体例としては、ろ過性に優れるプリーツ型やデプス型、デプスプリーツ型、メンブレン型、吸着型のフィルターを採用することが好ましい。フィルターの構造は特に制限されず、袋状のバッグ式であってもよく、中空円筒状のカートリッジ式であってもよい。カートリッジ式フィルターは、ガスケットタイプであってもよく、Oリングタイプであってもよい。ろ過の条件(例えばろ過差圧、ろ過速度)については、この分野の技術常識に基づき、目標品質や生産効率等を考慮して適宜設定すればよい。
【0047】
本工程で使用されるフィルターの目開き(孔径)は、歩留まり向上の観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上である。また、異物や凝集物の除去効果を高める観点から、本工程で使用されるフィルターの目開き(孔径)は、好ましくは100μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0048】
すなわち、本工程で使用されるフィルターの目開き(孔径)は、好ましくは0.05μm以上100μm以下、より好ましくは0.1μm以上30μm以下、さらに好ましくは0.2μm以上20μm以下である。
【0049】
本工程で使用されるフィルターの材質は特に制限されず、例えば、セルロース、ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート、ガラス等が挙げられる。
【0050】
ろ過の方法も特に制限されず、例えば、常圧で行う自然ろ過の他、吸引ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過等の公知のろ過方法を適宜採用することができる。
【0051】
本工程で使用されるフィルターは市販品であってもよい。市販品のフィルターの例としては、例えば、ニュークリポアメンブレンフィルター(ワットマン社製)や、ポリプロピレン不織布を濾材として備える株式会社ロキテクノ製のHCシリーズ、BOシリーズ、SLFシリーズ、SRLシリーズ、MPXシリーズ等が挙げられる。
【0052】
<他の添加剤を混合する工程>
本工程では、上記で得られたカチオン変性シリカを含む分散液と他の添加剤とを混合する。本工程は、上記のカチオン変性シリカを含む分散液をろ過する工程の前でも後でもよいが、後工程への異物の持ち込みを最小限にする観点から、上記のカチオン変性シリカを含む分散液をろ過する工程の後が好ましい。
【0053】
他の添加剤の例としては、pH調整剤、分散媒、防腐剤、防錆剤、酸化防止剤、安定化剤、pH緩衝剤等の研磨用組成物の成分となり得る添加剤が挙げられる。ここでは、pH調整剤について説明する。
【0054】
(pH調整剤)
pH調整剤は、本発明に係る研磨用組成物のpHを所望の値へと調整する役割を有する。
【0055】
pH調整剤としては、特に制限されず、研磨用組成物の分野で用いられる公知のpH調整剤を用いることができる。これらの中でも、公知の酸、塩基、塩、アミン、キレート剤等を用いることが好ましい。pH調整剤の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、アミノ酸、アントラニル酸、ニトロカルボン酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸、イセチオン酸、タウリン等のスルホン酸;炭酸、塩酸、硝酸、リン酸、次亜リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸などの無機酸;水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ金属の水酸化物;第2族元素の水酸化物;アンモニア;水酸化第四アンモニウムなどの有機塩基;脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン;N-メチル-D-グルカミン、D-グルカミン、N-エチル-D-グルカミン、N-プロピル-D-グルカミン、N-オクチル-D-グルカミン、N-アセチル-D-グルコサミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、イミノ二酢酸、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシン、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、N,N,N-トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン-N,N,N’,N’-テトラメチレンスルホン酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、1,2-ジアミノプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンオルトヒドロキシフェニル酢酸、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N-(2-カルボキシラートエチル)-L-アスパラギン酸、β-アラニンジ酢酸、ホスホノブタントリカルボン酸(2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸)、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)(1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、N,N’-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N’-ジ酢酸、1,2-ジヒドロキシベンゼン-4,6-ジスルホン酸、ポリアミン、ポリホスホン酸、ポリアミノカルボン酸、ポリアミノホスホン酸等のキレート剤、またはこれらの塩等が挙げられる。これらpH調整剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらpH調整剤のうち、窒化ケイ素および/またはTEOSタイプの酸化ケイ素膜の除去速度抑制の観点から、10-カンファースルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびイセチオン酸などの比較的嵩高い骨格を有する強酸が好ましい。
【0056】
pH調整剤の添加量は、所望の研磨用組成物のpH値となるような量を適宜選択すればよい。
【0057】
なお、上記pH調整剤は、研磨用組成物のpHを調整する役割以外に、カチオン変性シリカを含む分散液を保管するためのpHに調整する役割で用いられてもよい。すなわち、本工程の他に、カチオン変性シリカを含む分散液にpH調整剤を添加して保管する工程が含まれていてもよい。この保管する工程においては、ろ過後のカチオン変性シリカの分散性を維持する観点から、保管時の分散液のpHが酸性となるようにpH調整剤を添加することが好ましい。
【0058】
<カチオン変性シリカを含む分散液をさらにろ過する工程(第2段目以降のろ過)>
本工程では、上記で得られたカチオン変性シリカを含む分散液をさらにろ過する。本項で説明する技術内容は、ろ過工程が多段(2段以上)である場合の第2段目以降のろ過に適用される。
【0059】
本工程で使用されるフィルターのメディア形状、構造、および材質、ろ過条件、ろ過方法等については、上記の<カチオン変性シリカを含む分散液をろ過する工程(第1段目のろ過)>の項で説明したものと同様のものが使用できる。
【0060】
ただし、工業的には、フィルターのメディア形状は、プリーツ型やデプス型、デプスプリーツ型が生産効率の観点で好まれる。また、歩留まり向上と異物や凝集物の除去効果向上とを兼ね備える観点からは、上記プリーツ型やデプス型、デプスプリーツ型のフィルターを多段のろ過工程にて使用することが好ましい。
【0061】
その際、フィルターの目開き(孔径)は、多段のろ過工程における前段から後段にかけて、同等の大きさであるか徐々に小さくなっていくことが好ましい。
【0062】
本工程で使用されるフィルターの目開き(孔径)は、歩留まり向上の観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.15μm以上である。また、異物や凝集物の除去効果を高める観点から、本工程で使用されるフィルターの目開き(孔径)は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下、さらにより好ましくは0.7μm以下、特に好ましくは0.4μm以下である。すなわち、本工程で使用されるフィルターの目開き(孔径)は、好ましくは0.05μm以上10μm以下、より好ましくは0.1μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.15μm以上1μm以下、さらにより好ましくは0.15μm以上0.7μm以下、特に好ましくは0.15μm以上0.4μm以下である。
【0063】
本工程においても、市販のフィルターを用いることができる。本工程で用いられるフィルターの市販品の例としては、例えば、日本ポール株式会社製のウルチプリーツ(登録商標)P-ナイロン66、ウルチポア(登録商標)N66等が挙げられる。
【0064】
[研磨用組成物]
上記の製造方法により得られた研磨用組成物は、粗大粒子数が低減したものとなる。すなわち、本発明の好ましい一実施形態によれば、カチオン性基を有するカチオン変性シリカと、分散媒と、を含み、前記カチオン変性シリカは、下記の測定方法により測定される粒子径が0.7μmを超える粗大粒子の数が500,000個/mL以下である、研磨用組成物が提供される。研磨用組成物中の粗大粒子の数は、100,000個/mL以下であると好ましく、10,000個/mL以下であるとより好ましく、5,000個/mL以下であるとさらに好ましい。
【0065】
(粗大粒子数の測定方法)
水中にカチオン変性シリカを0.27質量%の濃度で分散させ、かつpHを4.0に調整した水分散液を調製し、得られたカチオン変性シリカ水分散液中に存在する粒子径が0.7μmを超える粗大粒子の単位体積当たりの数を、液中パーティクルカウンターを用いて測定する。
【0066】
研磨用組成物に含まれる上記の分散媒としては、[シリカを含む分散液]の項で挙げた分散媒が同様に挙げられる。
【0067】
本実施形態に係る研磨用組成物に含まれるカチオン変性シリカは、砥粒として機能する。研磨用組成物中の当該カチオン変性シリカの含有量の下限は、研磨用組成物の総質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、研磨用組成物中のカチオン変性シリカの含有量の上限は、研磨用組成物の総質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。すなわち、カチオン変性シリカの含有量は、研磨用組成物の総質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.2質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
【0068】
本実施形態に係る研磨用組成物は、本発明の効果が阻害されない範囲で、pH調整剤、錯化剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0069】
本実施形態に係る研磨用組成物は、例えば、ポリシリコン、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素(SiCN)、酸化ケイ素、金属、SiGe等の研磨に好適に用いられる。
【0070】
酸化ケイ素を含む研磨対象物の例としては、例えば、オルトケイ酸テトラエチルを前駆体として使用して生成されるTEOSタイプ酸化ケイ素面(以下、単に「TEOS」とも称する)、HDP(High Density Plasma)膜、USG(Undoped Silicate Glass)膜、PSG(Phosphorus Silicate Glass)膜、BPSG(Boron-Phospho Silicate Glass)膜、RTO(Rapid Thermal Oxidation)膜等が挙げられる。
【0071】
上記金属としては、例えば、タングステン、銅、アルミニウム、コバルト、ハフニウム、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等が挙げられる。
【実施例0072】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0073】
[各種物性の測定方法]
本実施例において、各種物性は、以下の方法により測定した。
【0074】
<粒子径の測定>
原料として用いたシリカの平均一次粒子径の値は、BET法から算出したシリカの比表面積(SA)を基に、シリカの形状が真球であると仮定して、SA=4πR2(Rは半径)の式を用いて算出した。
【0075】
<pHの測定>
各種水分散液および水溶液のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製、型番:F-71)により確認した。
【0076】
[カチオン変性シリカの製造]
(実施例1)
2Lのプラスチックジョッキにおいて、脱イオン水と、合成アモルファスシリカ(コロイダルシリカ、シリカの平均一次粒子径:24nm、シリカの平均二次粒子径:47nm、ゼータ電位:5.5mV)と、を混合し、合成アモルファスシリカの最終濃度が19.88質量%である水分散液(pH7.5)を得た。
【0077】
別途、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)0.771gと、脱イオン水 231gとを混合し、濃度0.33質量%のAPTES水溶液(pH7.0)を調製した。
【0078】
シリカの水分散液1000gを230rpmで攪拌しながら、上記で調製したAPTES水溶液の全量を、12mL/minの滴下速度で滴下した。その後、室温(25℃)にて50分攪拌状態を維持し、シリカの表面にアミノ基が導入されたカチオン変性(アミノ変性)シリカの水分散液を得た。
【0079】
(実施例2~3、実施例5~20、比較例1~3)
合成アモルファスシリカの平均一次粒子径、シリカ水分散液中のシリカの濃度、シランカップリング剤の種類および使用量、ならびにシランカップリング剤水溶液を調製する際の水の使用量を下記表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン変性シリカの水分散液を調製した。
【0080】
(実施例4)
2Lのプラスチックジョッキにて、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)0.771gと、脱イオン水 771gとを混合し、濃度0.10質量%のAPTES水溶液を調製した。
【0081】
別途、脱イオン水と、合成アモルファスシリカ(平均一次粒子径:24nm、平均二次粒子径:47nm)と、を混合し、合成アモルファスシリカの最終濃度が19.88質量%であるシリカの水分散液(pH7.46)を調製した。
【0082】
上記で調製したAPTES水溶液の全量を230rpmで攪拌しながら、上記で調製したシリカの水分散液1000gを、16mL/minの滴下速度で滴下した。その後、室温(25℃)にて50分攪拌状態を維持し、シリカの表面にアミノ基が導入されたカチオン変性(アミノ変性)シリカの水分散液を得た。
【0083】
各実施例および比較例で用いたシリカの水分散液およびシランカップリング剤水溶液の構成を、下記表1に示す。
【0084】
【0085】
[評価]
<粗大粒子数の測定>
試料として、カチオン変性シリカの濃度が0.27質量%となるようにカチオン変性シリカを脱イオン水に分散させた後、硫酸を用いてpHを4.0に調整した水分散液を用いた。
【0086】
得られたカチオン変性シリカ水分散液中に存在する単位体積(1mL)当たりの0.7μmを超える粗大粒子の数を、液中パーティクルカウンター(LPC、Liquid Particle Counter、AccuSizer(登録商標) FX(日本インテグリス合同会社製))を用いて測定した。この際、n=3の平均値を求め、小数点以下は四捨五入した。
【0087】
<ゼータ電位の測定>
得られたカチオン変性シリカのゼータ電位の測定は、大塚電子株式会社製のゼータ電位測定装置(商品名「ELS-Z」)を用いて行った。試料として、カチオン変性シリカの濃度が1.8質量%となるように脱イオン水に分散させた後、硫酸を用いてpHを3.0に調整した水分散液を用いた。
【0088】
<ろ過速度>
上記実施例および比較例で得られたカチオン変性シリカの水分散液について、孔径3.0μmである直径47mmのニュークリポアメンブレンフィルター(ワットマン社製)を用いて吸引ろ過を行い、ろ過速度(単位時間(1分間)当たりのろ過量)を測定した。なお、ろ過速度は、ろ過を5分間行った際の平均速度である。
【0089】
以上の評価結果を下記表2に示す。なお、下記表2の空欄は、未評価であることを表す。
【0090】
【0091】
上記表2から明らかなように、実施例で得られた水分散液中のカチオン変性シリカのゼータ電位は、原料である合成アモルファスシリカのゼータ電位より高くなっていた。このことから、実施例の製造方法によって、合成アモルファスシリカの表面にカチオン性基が結合しているカチオン変性シリカが得られることが分かった。
【0092】
比較例1~2のカチオン変性シリカ水分散液は、5分間のろ過通液中にフィルターが閉塞し、ろ過速度も低かった。一方、実施例で得られたカチオン変性シリカの水分散液は、比較例の水分散液に比べて、粗大粒子が少なく優れたろ過性を有していることが分かった。このことから、研磨用組成物の製造の際に、ろ過性に優れた実施例のカチオン変性シリカ水分散液を使用すれば、目の細かいフィルターを使用することが可能となり、研磨用組成物中の粗大粒子数低減に有利となる。
【0093】
(実施例21、比較例4)
上記実施例7で得られたカチオン変性シリカ水分散液を、孔径10μmのフィルター(SLFタイプ(デプス型)、株式会社ロキテクノ製)を用いてろ過を行った。このろ過後のカチオン変性シリカ水分散液を、カチオン変性シリカの濃度が5.4質量%となるように脱イオン水に分散させた後、10-カンファースルホン酸を用いてpHを4.0に調整した。さらに、このカチオン変性シリカ水分散液を、孔径0.2μmのフィルター(ウルチポア(登録商標)N66(プリーツ型)、日本ポール株式会社製)を用いてろ過を行い、実施例21の研磨用組成物(スラリー)を調製した。
【0094】
また、上記比較例1で得られたカチオン変性シリカ水分散液を、孔径10μmのフィルター(SLFタイプ(デプス型)、株式会社ロキテクノ製)を用いてろ過を行った。このろ過後のカチオン変性シリカ水分散液を、カチオン変性シリカの濃度が5.4質量%となるように脱イオン水に分散させた後、10-カンファースルホン酸を用いてpHを4.0に調整した。さらに、このカチオン変性シリカ水分散液を孔径3.0μmのフィルター(SLFタイプ(デプス型)、株式会社ロキテクノ製)を用いてろ過を行い、比較例4の研磨用組成物(スラリー)を調製した。
【0095】
実施例21および比較例4の研磨用組成物に存在する粗大粒子の数を、上記粗大粒子数の測定と同様にLPCにより測定した。
【0096】
【0097】
上記表3から明らかなように、実施例で得られた水分散液中のカチオン変性シリカ水分散液を用いて調整した実施例21の研磨用組成物では、比較例4と比べて粗大粒子の個数が少なかった。粗大粒子の少ない研磨用組成物を用いて研磨を行うことにより、研磨時にディフェクトが発生することを抑制できる。