(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179451
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】送電装置、電力伝送システム及び電力伝送方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20221125BHJP
H02J 50/05 20160101ALI20221125BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20221125BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20221125BHJP
H01M 10/46 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
H02J50/05
H02J50/10
H02J7/00 301C
H01M10/44 Q
H01M10/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082793
(22)【出願日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2021086151
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木下 岳
(72)【発明者】
【氏名】東 純史
(72)【発明者】
【氏名】内野 直孝
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA02
5G503GB08
5H030AS08
5H030BB01
5H030DD18
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】充電開始時の二次電池の充電状態にかかわらず、充電制御以外の要因に起因する満充電の誤検知を防止し、充電が完了した場合に、送電装置と受電装置とが通信することなく、送電装置から受電装置への無線電力伝送を適切に停止することができる送電装置、電力伝送システム及び電力伝送方法を提供すること。
【解決手段】実施形態の送電装置は、電源部、送電部及び処理部を備える。電源部は、送電部に第1の電力を供給する。送電部は、前記電源部から供給される電力を、受電装置に無線で伝送する。処理部は、前記第1の電力が前記電源部より後段側の回路で反射された第2の電力の時間変化を示すグラフの傾きが正で、前記グラフが上に凸である場合、前記受電装置によって受電された電力によって動作する充電器が定電圧充電を実行中であると判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電部に第1の電力を供給する電源部と、
前記電源部から供給される電力を、受電装置に無線で伝送する前記送電部と、
前記第1の電力が前記電源部より後段側の回路で反射された第2の電力の時間変化を示すグラフの傾きが正で、前記グラフが上に凸である場合、前記受電装置によって受電された電力によって動作する充電器が定電圧充電を実行中であると判定する処理部と、を備える送電装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記グラフの傾きが正で、前記グラフが上に凸である状態が所定の時間以上継続した場合に、前記充電器が定電圧充電を実行中であると判定する、請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記充電器が定電圧充電を実行中であると判定した場合、前記充電器による充電の完了までの推定時間を求め、前記推定時間が経過したならば、前記送電部による電力の伝送を停止する、請求項1に記載の送電装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記電源部に、前記第1の電力より小さい第3の電力を供給させ、前記第3の電力に対する、前記第3の電力が前記電源部より後段側の回路で反射された第4の電力の比が、所定の閾値未満となった場合、前記電源部に、前記第1の電力の供給を開始させる、請求項1に記載の送電装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記受電装置が所定の位置にあることを検知するセンサーからの信号の入力を受けた場合に、前記電源部に、前記第3の電力の供給を開始させる、請求項4に記載の送電装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記受電装置が所定の位置にあることを検知するセンサーからの信号の入力を受けた場合に、前記電源部に、前記第1の電力の供給を開始させる、請求項1に記載の送電装置。
【請求項7】
前記受電装置が所定の位置にあること及び前記受電装置が前記所定の位置から離脱したことを検知するセンサーをさらに備える、請求項1に記載の送電装置。
【請求項8】
前記センサーは、前記受電装置の形状に応じた形状又は構造である、請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記第1の電力に対する前記第2の電力の比が所定の範囲外となった場合、前記送電部による電力の伝送を停止する、請求項1に記載の送電装置。
【請求項10】
前記処理部は、前記第1の電力が異常な値である場合、前記送電部による電力の伝送を停止する、請求項1に記載の送電装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記第2の電力が異常な値である場合、前記送電部による電力の伝送を停止する、請求項1に記載の送電装置。
【請求項12】
送電装置及び受電装置を含み、
前記送電装置は、
送電部に第1の電力を供給する電源部と、
前記電源部から供給される電力を、受電装置に無線で伝送する前記送電部と、
前記第1の電力が前記電源部より後段側の回路で反射された第2の電力の時間変化を示すグラフの傾きが正で、前記グラフが上に凸である場合、前記受電装置によって受電された電力によって動作する充電器が定電圧充電を実行中であると判定する処理部と、を備え
前記受電装置は、
前記送電部から電力を受電する受電部と、
前記受電部によって受電された電力を前記充電器に供給する供給部と、を備える、電力伝送システム。
【請求項13】
前記処理部は、
前記電源部に、前記第1の電力より小さい第3の電力を供給させ、前記第3の電力に対する、前記第3の電力が前記電源部より後段側の回路で反射された第4の電力の比が、所定の閾値未満となった場合、前記電源部に、前記第1の電力の供給を開始させ、
前記充電器が定電圧充電を実行中であると判定した場合、前記充電器による充電の完了までの推定時間を求め、前記推定時間が経過したならば、前記送電部による電力の伝送を停止する、請求項12に記載の電力伝送システム。
【請求項14】
前記処理部は、前記受電装置が所定の位置にあることを検知するセンサーからの信号の入力を受けた場合に、前記電源部に、前記第1の電力又は前記第1の電力より小さい第3の電力の供給を開始させる、請求項12又は請求項13に記載の電力伝送システム。
【請求項15】
送電部に第1の電力を供給し、
前記送電部に供給される電力を、前記送電部から受電装置に無線で伝送し、
前記第1の電力が電源部より後段側の回路で反射された第2の電力の時間変化を示すグラフの傾きが正で、前記グラフが上に凸である場合、前記受電装置によって受電された電力によって動作する充電器が定電圧充電を実行中であると判定する、電力伝送方法。
【請求項16】
前記送電部に前記第1の電力より小さい第3の電力を供給し、前記第3の電力に対する、前記第3の電力が前記電源部より後段側の回路で反射された第4の電力の比が、所定の閾値未満となった場合、前記第1の電力の供給を開始し、
前記充電器が定電圧充電を実行中であると判定した場合、前記充電器による充電の完了までの推定時間を求め、前記推定時間が経過したならば、電力の伝送を停止する、請求項15に記載の電力伝送方法。
【請求項17】
前記受電装置が所定の位置にあることを検知した場合に、前記第1の電力又は前記第1の電力より小さい第3の電力の供給を開始する、請求項15又は請求項16に記載の電力伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電装置、電力伝送システム及び電力伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電装置から受電装置にワイヤレス(無線)で電力を伝送する無線電力伝送と呼ばれる技術がある。受電側は、二次電池を充電する充電機能を備える場合がある。この場合、当該充電が完了したならば、送電装置は、過充電の防止及び電力の消費を抑えるためなどの理由から、受電装置への送電を停止した方が良い。このため、従来の受電装置は、充電が完了したことを送電装置に通知するための通信手段を備える。また、従来の送電装置は、受電装置からの通知を受信するための通信手段を備える。しかしながら、受電装置及び送電装置への通信手段の搭載は、受電装置及び送電装置のコストの増加及び装置の大型化に繋がる。なお、受電側は、受電装置及び受電装置から供給される電力で動作する装置を含む。
【0003】
特許文献1には、送電装置が、受電装置との通信を行わずに充電の完了を検知する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、充電器が定電流充電から定電圧充電に移行したことを検知する。したがって、特許文献1に記載の方法では、例えば二次電池が満充電に近いなどの理由で、定電流充電などの急速充電を行わずに充電を開始する場合には検知不可となり、充電完了の判定ができない可能性がある。
【0006】
また無線電力伝送においてはカプラの位置ずれ等の要因によって反射電力が時間的に変動することがある。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、反射電力の変動が、設計された充電制御に伴うものであるのか、充電制御以外の要因によるものであるかを切り分けることができない。そのため、特許文献1に記載の方法では、満充電を誤検知する可能性がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、充電開始時の二次電池の充電状態にかかわらず、充電制御以外の要因に起因する満充電の誤検知を防止し、受電側の充電が完了した場合に、送電装置と受電装置とが通信することなく、送電装置から受電装置への無線電力伝送を適切に停止することができる送電装置、電力伝送システム及び電力伝送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の送電装置は、電源部、送電部及び処理部を備える。電源部は、送電部に第1の電力を供給する。送電部は、前記電源部から供給される電力を、受電装置に無線で伝送する。処理部は、前記第1の電力が前記電源部より後段側の回路で反射された第2の電力の時間変化を示すグラフの傾きが正で、前記グラフが上に凸である場合、前記受電装置によって受電された電力によって動作する充電器が定電圧充電を実行中であると判定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、充電制御以外の要因に起因する満充電の誤検知を防止し、受電側の充電が完了した場合に、送電装置と受電装置とが通信することなく、送電装置から受電装置への無線電力伝送を適切に停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る電力伝送システムの概要を示す図。
【
図2】
図1中の電力伝送システム及び当該電力伝送システムに含まれる構成要素の要部回路構成の一例を示すブロック図。
【
図3】
図2中の送電装置のプロセッサーによる第1実施形態に係る処理の一例を示すフローチャート。
【
図4】第1実施形態に係る電源の出力電力(進行波)の波形の一例を示す図。
【
図5】充電器がバッテリーを充電する際の各種波形を示す図。
【
図6】充電器がバッテリーを充電する際の各種波形を示す図。
【
図7】第3実施形態に係る電力伝送システムの概要を示す図。
【
図8】
図7中の電力伝送システム及び当該電力伝送システムに含まれる構成要素の要部回路構成の一例を示すブロック図。
【
図9】
図8中の送電装置のプロセッサーによる第1実施形態に係る処理の一例を示すフローチャート。
【
図10】受電カプラの位置ずれが発生した場合の各種波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、いくつかの実施形態に係る電力伝送システムについて図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、各部の縮尺を適宜変更している場合がある。また、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、説明のため、構成を省略して示している場合がある。また、各図面及び本明細書中において、同一の符号は同様の要素を示す。
【0012】
〔第1実施形態〕
図1及び
図2を用いて第1実施形態に係る電力伝送システム1の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る電力伝送システム1の概要を示す図である。
図2は、第1実施形態に係る電力伝送システム1及び電力伝送システム1に含まれる構成要素の要部回路構成の一例を示すブロック図である。
電力伝送システム1は、送電装置100から受電装置210にワイヤレスで電力伝送するシステムである。電力伝送システム1は、一例として、送電装置100及びカート200を含む。
【0013】
送電装置100は、カート200の受電装置210にワイヤレスで電力を伝送する装置である。送電装置100は、例えば、床などの地面Gに固定されている。送電装置100は、例えば、地面Gの下に埋め込まれている。あるいは、送電装置100は、地面G上にあっても良い。送電装置100は、一例として、送電カプラ110、電源120、制御部130及び電力検出部140を含む。
【0014】
送電カプラ110は、受電装置210の受電カプラ211にワイヤレスで電力を伝送する。送電カプラ110から受電カプラ211への電力伝送の方式は、例えば、電界結合、磁界結合、又はその他の電力伝送方式である。また、送電カプラ110から受電カプラ211への電力伝送の方式は、電界結合の一種である電界共鳴であっても良い。また、送電カプラ110から受電カプラ211への電力伝送の方式は、磁界結合の一種である磁界共鳴であっても良い。なお、送電カプラ110は、電源120から供給される電力を受電装置210に無線で伝送する送電部の一例である。
【0015】
電界結合によって送電する送電カプラ110は、例えば、2枚1組の送電用電極などを備える。
電界共鳴によって送電する送電カプラ110は、例えば、2枚1組の送電用電極と、共振(共鳴)用コイルなどを備える。
磁界結合によって送電する送電カプラ110は、例えば、送電用のインダクターなどを備える。
磁界共鳴によって送電する送電カプラ110は、例えば、送電用のインダクターと、共振用のインダクター又はキャパシターなどを備える。
【0016】
電源120は、例えば高周波電源である。電源120は、送電カプラ110に交流電力を供給する。電界共鳴又は磁界共鳴方式の送電装置100である場合、電源120は、共振周波数と同じ周波数の交流電力を送電カプラ110に供給する。なお、電源120は、送電カプラ110に電力を供給する電源部の一例である。
【0017】
制御部130は、送電装置100の動作に必要な演算及び制御などの処理を行うコンピューターである。制御部130は、一例として、プロセッサー131、ROM(read-only memory)132、RAM(random-access memory)133及び補助記憶装置134を含む。そして、バス135などが、これら各部を接続する。
【0018】
プロセッサー131は、制御部130の中枢部分であり、各種演算及び処理などを行う。プロセッサー131は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)などである。あるいは、プロセッサー131は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。また、プロセッサー131は、これらにハードウェアアクセラレーターなどを組み合わせたものあっても良い。プロセッサー131は、ROM132又は補助記憶装置134などに記憶されたファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアなどのプログラムに基づいて、送電装置100の各種の機能を実現するべく各部を制御する。また、プロセッサー131は、当該プログラムに基づいて後述する処理を実行する。なお、当該プログラムの一部又は全部は、プロセッサー131の回路内に組み込まれていても良い。また、プロセッサー131は、処理部の一例である。
【0019】
ROM132及びRAM133は、制御部130の主記憶装置である。
ROM132は、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリである。ROM132は、上記のプログラムのうち、例えばファームウェアなどを記憶する。また、ROM132は、プロセッサー131が各種の処理を行う上で使用するデータなども記憶する。
RAM133は、データの読み書きに用いられるメモリである。RAM133は、プロセッサー131が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶するワークエリアなどとして利用される。RAM133は、典型的には揮発性メモリである。
【0020】
補助記憶装置134は、制御部130の補助記憶装置である。補助記憶装置134は、例えばEEPROM(electric erasable programmable read-only memory)、HDD(hard disk drive)又はフラッシュメモリなどである。補助記憶装置134は、上記のプログラムのうち、例えば、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアなどを記憶する。また、補助記憶装置134は、プロセッサー131が各種の処理を行う上で使用するデータ、プロセッサー131での処理によって生成されたデータ及び各種の設定値などを記憶する。
【0021】
バス135は、コントロールバス、アドレスバス及びデータバスなどを含み、制御部130の各部で授受される信号を伝送する。
【0022】
電力検出部140は、進行波電力及び反射波電力を検出する。進行波電力は、電源120から送電カプラ110に入力する進行波の電力である。反射波電力は、進行波が電源120より後段側の回路で反射された反射波の電力である。当該後段側の回路は、電源120から出力された電力が直接又は他の回路を介して間接的に入力する回路である。当該後段側の回路は、例えば、送電カプラ110、受電装置210及び負荷230などを含む。このうち、主に送電カプラ110が進行波を反射する。反射波は、例えば、送電側インピーダンスと受電側インピーダンスとの不整合により発生する。これらのインピーダンスの差が小さければ反射電力は小さく、インピーダンスの差が大きければ反射電力は大きくなる。定電流充電の場合、反射電力の値は一定となる。インピーダンス整合状態(送電側と受電側のインピーダンスの差が小さい状態)では、定電流充電などを用いる急速充電が可能である。
【0023】
カート200は、例えばショッピングカートなどの荷物運搬用のカートである。カート200は、一例として、受電装置210、カート部220及び負荷230を含む。なお、カート200及び受電装置210は、受電装置の例である。
【0024】
受電装置210は、送電装置100からワイヤレスで伝送される電力を受電する装置である。受電装置210は、一例として、受電カプラ211、整流部212、充電器213及びバッテリー214を含む。
【0025】
受電カプラ211は、送電装置100の送電カプラ110からワイヤレスで電力を受電する。なお、受電カプラ211は、送電カプラ110から電力を受電する受電部の一例である。
【0026】
電界結合によって受電する受電カプラ211は、例えば、2枚1組の受電用電極などを備える。
電界共鳴によって受電する受電カプラ211は、例えば、2枚1組の受電用電極と、共振(共鳴)用コイルなどを備える。
磁界結合によって受電する受電カプラ211は、例えば、受電用のインダクターなどを備える。
磁界共鳴によって受電する受電カプラ211は、例えば、受電用のインダクターと、共振用のインダクター又はキャパシターなどを備える。
【0027】
整流部212は、受電カプラ211が出力する交流電力を直流に整流して充電器213に出力する回路である。なお、整流部212は、受電カプラ211によって受電された電力を充電器213に供給する供給部の一例である。
【0028】
充電器213は、受電カプラ211が受電する電力を用いてバッテリー214を充電する。充電器213は、定電流定電圧充電(CCCV(constant-current, constant voltage)充電)などの、急速充電と定電圧充電を併用した充電方法を用いてバッテリー214を充電する。充電器213は、バッテリー214の残量が所定より少ない場合はバッテリー214に対して急速充電する。すなわち、充電器213は、バッテリー214の電圧が所定の電圧V1未満である間、バッテリー214に対して急速充電する。そして、充電器213は、バッテリー214の残量が所定以上である場合はバッテリー214に対して定電圧充電する。すなわち、充電器213は、バッテリー214の電圧がV1以上である間、バッテリー214に対して定電圧充電する。なお、充電器213は、CCCVによって充電する場合には、例えば定電流充電することで急速充電する。
【0029】
バッテリー214は、受電カプラ211が受電する電力によって充電される二次電池である。バッテリー214は、充電器213によって充電される二次電池である。また、バッテリー214は、負荷230などに電力を供給する電源である。
【0030】
カート部220は、例えば、ショッピングカートとしての一般的な機能などを備える。例えば、カート部220は、買い物かごなどを載せることができる。例えば、カート部220は、商品などを載せることができるかごなどを備える。また、カート部220は、移動のための車輪などを備える。
【0031】
負荷230は、バッテリー214が出力する電力を消費する。負荷230は、例えば、タブレット端末などの、電力で動作する装置である。当該タブレット端末は、例えば、カート200の使用者に、買い物などに関する各種情報の通知を行う。また、当該タブレット端末は、例えば、カート200のかごに入れる商品の、買い上げのための登録などを行う。
【0032】
以下、第1実施形態に係る電力伝送システム1の動作を
図3などに基づいて説明する。なお、以下の動作説明における処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
図3は、送電装置100のプロセッサー131による第1実施形態に係る処理の一例を示すフローチャートである。プロセッサー131は、例えば、ROM132又は補助記憶装置134などに記憶されたプログラムに基づいて
図3の処理を実行する。
プロセッサー131は、例えば、送電装置100の起動などにともなって
図3に示す処理を開始する。
【0033】
ステップST11においてプロセッサー131は、スタンバイ動作を開始する。スタンバイ動作は、受電装置210の受電カプラ211が、送電装置100の送電カプラ110から送信される電力を受電可能な位置にあることを検出するための動作である。プロセッサー131は、スタンバイ動作中、
図4の期間D1に示すような波形を出力するように電源120を制御する。
図4は、第1実施形態に係る電源120の出力電力(進行波)の波形の一例を示す図である。期間D1は、スタンバイ動作が実行されている期間である。電源120は、スタンバイ動作中、電力P1の出力のオンとオフを繰り返す。電力P1は、送電装置100から受電装置210に電力を伝送する際の電力である電力P2より小さい電力である。スタンバイ動作における消費電力を抑えるために、電力P2は、受電カプラ211の検知が可能な範囲で小さい方が良い。また、プロセッサー131は、スタンバイ動作において、電力検出部140を用いて進行波電力及び反射波電力を監視する。受電カプラ211が受電効率の高い位置に近付くほど進行波電力に対する反射波電力の比(以下「電力比」という。)が小さくなる。すなわち、(電力比)=(反射波電力)÷(進行波電力)である。なお、電力P1、すなわちスタンバイ動作中の進行波電力は、第3の電力の一例である。また、スタンバイ動作中の反射波電力は、第4の電力の一例である。
【0034】
ステップST12においてプロセッサー131は、電力比が所定の閾値TH1未満であるか否かを判定する。閾値TH1は、送電装置100から受電装置210への送電を開始するか否かを決定するための閾値である。閾値TH1は、例えば、電力伝送システム1の設計者又は管理者などによって予め設定される。プロセッサー131は、電力比が閾値TH1以上であるならば、ステップST12においてNoと判定してステップST12の処理を繰り返す。対して、プロセッサー131は、電力比が閾値TH1未満であるならば、ステップST12においてYesと判定してステップST13へと進む。
図4には、プロセッサー131が電力比が閾値TH1未満となったと判定した時点を時間t1として示している。
【0035】
ステップST13においてプロセッサー131は、ワイヤレス電力伝送による送電カプラ110から受電カプラ211への送電を開始する。このために、プロセッサー131は、スタンバイ動作を終了する。そして、プロセッサー131は、待機動作を所定の期間実行した後、送電動作を開始する。
図4には、スタンバイ動作を終了して待機動作を開始した時点を時間t2として示している。また、
図4には、待機動作を終了して送電動作を開始した時点を時間t3として示している。また、
図4に示す期間D2は、待機動作が実行されている期間である。期間D3は、送電動作が実行されている期間である。
【0036】
プロセッサー131は、待機動作中、進行波電力が0になるように電源120を制御する。待機動作は、例えば、人間がカート200から離れるのを待つための時間である。なお、プロセッサー131は、待機動作を実行せず、スタンバイ動作から直接送電動作に移行しても良い。
【0037】
プロセッサー131は、送電動作中、進行波電力が電力P2となるように電源120を制御する。送電動作は、送電カプラ110から受電カプラ211への送電するための動作である。なお、電力P2、すなわち送電動作中の進行波電力は、第1の電力の一例である。また、送電動作中の反射波電力は、第2の電力の一例である。
【0038】
ステップST14においてプロセッサー131は、電力比が所定の範囲外であるか否かを判定する。当該所定の範囲は、例えば、閾値TH2以上の範囲である。閾値TH2は、閾値TH1と同一の値であっても良いし異なる値であっても良い。閾値TH2は、例えば、閾値TH1より大きい値である。閾値TH2は、例えば、電力伝送システム1の設計者又は管理者などによって予め設定される。プロセッサー131は、電力比が所定の範囲外であると判定しないならば、ステップST14においてNoと判定してステップST15へと進む。
【0039】
ステップST15においてプロセッサー131は、反射波電力が異常な値であるか否かを判定する。プロセッサー131は、例えば、反射波電力が所定の閾値TH3以上である場合に反射波電力が異常な値であると判定する。閾値TH3は、例えば、電力伝送システム1の設計者又は管理者などによって予め設定される。閾値TH3は、反射波電力が異常に大きくなっていることを検知するための閾値である。例えば、送電カプラ110に対する受電カプラ211の位置がずれた場合、又は送電カプラ110と受電カプラ211の間に異物がある場合などにおいて、反射波電力が異常な値となる場合がある。プロセッサー131は、反射波電力が異常な値であると判定しないならば、ステップST15においてNoと判定してステップST16へと進む。
【0040】
ステップST16においてプロセッサー131は、進行波電力が異常な値であるか否かを判定する。プロセッサー131は、例えば、進行波電力が所定の閾値TH4以上又は所定の閾値TH5未満である場合に進行波電力が異常な値であると判定する。閾値TH4及び閾値TH5は、例えば、電力伝送システム1の設計者又は管理者などによって予め設定される。閾値TH4は、進行波電力が異常に大きくなっていることを検知するための閾値である。閾値TH4は、例えば、電力P2より大きい値である。閾値TH5は、進行波電力が異常に小さくなっていることを検知するための閾値である。閾値TH5は、例えば、電力P2より小さい値である。例えば、送電装置100内の電気回路に異常があった場合、又は電源120に異常がある場合に、進行波電力が異常な値となる場合がある。プロセッサー131は、進行波電力が異常な値であると判定しないならば、ステップST16においてNoと判定してステップST17へと進む。
【0041】
ステップST17においてプロセッサー131は、受電装置210の充電器213が定電圧充電を実行中であるか否かを判定する。判定方法について
図5を用いて説明する。
【0042】
図5は、充電器213がバッテリー214を充電する際の各種波形を示す図である。
図5の各グラフ(a)~(d)は、充電器213が時間t11まで急速充電でバッテリー214を充電し、時間t11から定電圧充電でバッテリー214を充電する場合の各波形を示すグラフである。波形W1は、充電器213がバッテリー214を充電する際の充電電流の時間変化を示すグラフである。波形W2は、充電器213がバッテリー214を充電する際の充電電圧の時間変化を示すグラフである。波形W3は、反射波電力の時間変化を示すグラフである。波形W4は、反射波電力の時間変化率を示すグラフである。すなわち、波形W4は、波形W3の1階微分を示すグラフである。波形W5は、反射波電力の時間変化率の傾きを示すグラフである。すなわち、波形W5は、波形W3の2階微分を示すグラフである。
【0043】
定電圧充電時、充電器213の出力電力は波形W1と同様の形状で低下するため、反射波電力は、波形W3に示すように、傾き(微分係数)が正で上に凸となる。波形W3の傾きが正である場合、波形W4の値は正である。すなわち、波形W3の傾きが正である場合、波形W3の1階微分が正である。波形W3が上に凸である場合、波形W4の傾きは負である。すなわち、波形W3が上に凸である場合、波形W3の2階微分が負である。波形W5においては時間t11より後において負の値である状態が継続している状態である。以上より、プロセッサー131は、波形W3の傾きが正で、波形W3が上に凸である状態の継続時間が所定の閾値TH6以上であるならば、充電器213が定電圧充電を実行中であると判定する。閾値TH6は、例えば、電力伝送システム1の設計者又は管理者などによって予め設定される。あるいは、プロセッサー131は、波形W3の傾きが正で、波形W3が上に凸であるならば、継続時間に拘らず、充電器213が定電圧充電を実行中であると判定しても良い。
プロセッサー131は、充電器213が定電圧充電を実行中であると判定しないならば、ステップST17においてNoと判定してステップST18へと進む。
【0044】
ステップST18においてプロセッサー131は、タイマーの経過時間が時間Tp以上であるか否かを判定する。タイマー及び時間Tpについては後述する。プロセッサー131は、タイマーの経過時間が時間Tp未満である場合又はタイマーが停止している場合、ステップST18においてNoと判定してステップST14へと戻る。かくして、プロセッサー131は、電力比が所定の範囲外であると判定するか、反射波電力が異常な値であると判定するか、進行波電力が異常な値であると判定するか、充電器213が定電圧充電を実行中であると判定するか、タイマーの経過時間が時間Tp以上となるまでステップST14~ステップST18を繰り返す待受状態となる。
【0045】
プロセッサー131は、ステップST14~ステップST18の待受状態にあるときに充電器213が定電圧充電を実行中であると判定するならば、ステップST17においてYesと判定してステップST19へと進む。
ステップST19においてプロセッサー131は、バッテリー214が満充電となるまでの推定時間Tpを求める。時間Tpを算出するための計算式及び閾値は、必ずしもバッテリーの充電率が100%となるよう設定される必要はなく、充電率と過充電防止のバランスを考慮して設定することができる。プロセッサー131は、例えば、反射波電力の時間変化率がR1未満となった場合にバッテリー214が満充電であるとみなす。したがって、プロセッサー131は、反射波電力の時間変化率がR1未満となるまでの推定時間を推定時間Tpとして求める。プロセッサー131は、例えば、反射波電力の時間変化率及び当該時間変化率の少なくともいずれかを用いて推定時間Tpを求める。プロセッサー131は、例えば、所定の計算式を用いて、又はテーブルを用いて推定時間Tpを求める。例えば、補助記憶装置134などが当該テーブルを記憶する。また、プロセッサー131は、ステップST19においてタイマーを開始させる。当該タイマーは、時間Tpが経過したことを判定するために用いられる。
図4にはタイマー開始時点を時間t4として示している。
【0046】
なお、プロセッサー131は、推定時間Tpを求めた後(充電器213が定電圧充電を実行中であると判定した後)は、例えば、送電を停止するまで(ステップST21の処理を行うまで)ステップST17の処理をスキップする。スキップする場合、プロセッサー131は、例えば、ステップST16においてNoと判定したならば、ステップST18へと進む。
【0047】
ステップST20においてプロセッサー131は、送電動作を終了して間欠動作を開始する。間欠動作は、送電を急に停止しないようにするための動作である。したがって、間欠動作における送電電力は、送電動作における送電電力よりも小さい。プロセッサー131は、間欠動作中、
図4の期間D4に示すような波形を出力するように電源120を制御する。期間D4は、間欠動作が実行されている期間である。電源120は、間欠動作中、電力P2の出力のオンとオフを繰り返す。
図4には、送電動作を終了して間欠動作を開始した時点を時間t6として示している。プロセッサー131は、ステップST20の処理の後、ステップST14へと戻る。なお、送電装置100は、間欠動作を実行しなくても良い。この場合、送電装置100のプロセッサー131は、ステップST20の処理を行わず、ステップST19の処理の後、ステップST14へと戻る。
【0048】
プロセッサー131は、ステップST14~ステップST18の待受状態にあるときにタイマーの経過時間が時間Tp以上であると判定するならば、ステップST18においてYesと判定してステップST21へと進む。プロセッサー131は、例えば、タイマーの計測時間が時間Tp以上となったならば、バッテリー214が満充電であると判定する。
【0049】
ステップST21においてプロセッサー131は、充電を完了させるための処理として充電完了処理を行う。充電完了処理として、プロセッサー131は、送電動作又は間欠動作を終了して送電カプラ110から受電カプラ211への送電を停止する。すなわち、プロセッサー131は、電源120を制御して電力の出力を停止させることで、送電カプラ110から受電カプラ211への送電を停止させる。なお、
図4には、間欠動作を終了した時点を時間t7として示している。また、プロセッサー131は、充電完了処理として、タイマーの停止及びタイマーのリセットを行う。プロセッサー131は、ステップST21の処理の後、ステップST11へと戻る。
なお、
図4には、ステップST21の処理の後、ステップST11においてスタンバイ動作を再度開始した時点を時間t8として示している。
【0050】
プロセッサー131は、ステップST14~ステップST18の待受状態にあるときに電力比が所定の範囲外であると判定するならば、ステップST14においてYesと判定してステップST22へと進む。また、プロセッサー131は、ステップST14~ステップST18の待受状態にあるときに、反射波電力が異常な値であると判定するならば、ステップST15においてYesと判定してステップST22へと進む。また、プロセッサー131は、ステップST14~ステップST18の待受状態にあるときに、進行波電力が異常な値であると判定するならば、ステップST16においてYesと判定してステップST22へと進む。
【0051】
ステップST22においてプロセッサー131は、異常が発生したことを理由に充電を停止させるための処理として充電停止処理を行う。充電停止処理として、プロセッサー131は、送電動作又は間欠動作を終了して送電カプラ110から受電カプラ211への送電を停止する。すなわち、プロセッサー131は、電源120を制御して電力の出力を停止させることで、送電カプラ110から受電カプラ211への送電を停止させる。また、プロセッサー131は、充電停止処理として、タイマーの停止及びタイマーのリセットを行う。プロセッサー131は、ステップST22の処理の後、ステップST11へと戻る。
【0052】
第1実施形態の電力伝送システム1によれば、送電装置100と受電装置210とは、通信を行わない。このため、第1実施形態の送電装置100及び受電装置210は、送電装置100と受電装置210との間で通信を行うための構成が不要である。
また、第1実施形態の電力伝送システム1によれば、送電装置100は、波形W3の傾きが正で、波形W3が上に凸である場合、充電器213が定電圧充電を実行中であると判定する。したがって、第1実施形態の送電装置100は、充電器213が急速充電を経ずに定電圧充電を開始した場合でも、充電器213による充電が完了した場合に送電を適切に停止することができる。例えば、充電器213は、バッテリー214の電圧が最初から電圧V1以上である場合に、急速充電を経ずに定電圧充電を開始する。
【0053】
一例として、
図6に充電器213が急速充電を経ずに定電圧充電を開始した場合の各種波形を示す。
図6は、充電器213がバッテリー214を充電する際の各種波形を示す図である。
図6に示す時間t21は、充電器213がバッテリー214への充電を開始した時点を示す。時間t22は、送電カプラ110から受電カプラ211への送電を停止した時点を示す。波形W11~波形W14は、時間t21から時間t22までの波形を示す。波形W11は、充電器213がバッテリー214を充電する際の充電電流の時間変化を示すグラフである。波形W12は、充電器213がバッテリー214を充電する際の充電電圧の時間変化を示すグラフである。波形W12からも分かるように、充電器213は、定電圧充電のみを行っている。波形W13は、反射波電力の時間変化を示す。波形W14は、反射波電力の時間変化率を示すグラフである。すなわち、波形W14は、波形W13の1階微分を示すグラフである。なお、
図6には、比較のために波形W1~波形W3も破線で示している。
このような場合でも、プロセッサー131は、波形W3の傾きが正で、波形W3が上に凸であることが判定可能であるので、充電器213が定電圧充電を行っていることを検知可能である。
【0054】
また、第1実施形態の電力伝送システム1によれば、送電装置100は、波形W3の傾きが正で、波形W3が上に凸である場合、充電器213が定電圧充電を実行中であると判定する。したがって、第1実施形態の送電装置100は、送電カプラ110に対する受電カプラ211の位置ずれが発生した場合に、満充電あると誤検知しない。
【0055】
一例として、
図10に受電カプラ211の位置ずれが発生した場合の各種波形を示す。
図10は、受電カプラ211の位置ずれが発生した場合の各種波形を示す図である。波形W21は、受電カプラ211の位置ずれが発生した場合の反射波電力の時間変化を示すグラフである。波形W22は、受電カプラ211の位置ずれが発生した場合の反射波電力の時間変化を示すグラフである。波形W23は、受電カプラ211の位置ずれが発生した場合の反射波電力の時間変化率を示すグラフである。
図10に示す時間t31は、受電カプラ211が移動し始めた時間である。時間t32は、受電カプラ211の移動が止まった時間である。すなわち、受電カプラ211は、時間t31から時間t32にかけて、受電効率が低くなる方向へ移動することにより位置ずれが発生したものとする。
【0056】
波形W21は、傾きは正であるが上に凸ではない。このため、送電装置100は、充電器213が定電圧充電を実行中であると判定しない。
【0057】
また、波形W23は、値が負である時間が短く、インパルス状となっている。これに対して
図5の波形W5においては時間t11より後において負の値である状態が継続している。このことからも、受電カプラ211の位置ずれでは波形が上に凸とならないことが分かる。
【0058】
また、第1実施形態の電力伝送システム1によれば、送電装置100は、波形W3の傾きが正で、波形W3が上に凸である時間が閾値TH6以上継続した場合に充電器213が定電圧充電を実行中であると判定する。これにより、第1実施形態の送電装置100は、何らかの理由で一瞬だけ波形W3の傾きが正で、波形W3が上に凸となったような場合の誤判定を防ぐことができる。
【0059】
また、第1実施形態の電力伝送システム1によれば、送電装置100は、充電器213が定電圧充電を実行中であると判定した場合、時間Tpを求めて、時間Tpが経過したならば送電を停止する。これにより、第1実施形態の送電装置100は、充電器213による充電が完了した場合に送電を適切に停止することができる。
【0060】
また、第1実施形態の電力伝送システム1によれば、送電装置100は、スタンバイ動作中に電力比が閾値TH1未満となった場合に送電を開始する。このように、第1実施形態の送電装置100は、送電カプラ110に対する受電カプラ211の位置が適切な位置にある場合に送電を開始することができる。
【0061】
また、第1実施形態の電力伝送システム1によれば、送電装置100は、電力比が所定の範囲外である場合に送電を停止する。これにより、第1実施形態の送電装置100は、電力伝送システム1に異常がある場合などにおいて送電を停止することができる。
【0062】
また、第1実施形態の電力伝送システム1によれば、送電装置100は、進行波電力が異常な値であるに送電を停止する。これにより、第1実施形態の送電装置100は、電力伝送システム1に異常がある場合などにおいて送電を停止することができる。
【0063】
また、第1実施形態の電力伝送システム1によれば、送電装置100は、反射波電力が異常な値であるに送電を停止する。これにより、第1実施形態の送電装置100は、電力伝送システム1に異常がある場合などにおいて送電を停止することができる。
【0064】
〔第2実施形態〕
図7及び
図8を用いて第2実施形態に係る電力伝送システム1bの構成について説明する。
図7は、第2実施形態に係る電力伝送システム1bの概要を示す図である。
図8は、第2実施形態に係る電力伝送システム1b及び電力伝送システム1bに含まれる構成要素の要部回路構成の一例を示すブロック図である。なお、第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0065】
電力伝送システム1bは、一例として、送電装置100b、カート200及び停車検知装置300を含む。
すなわち、電力伝送システム1bは、送電装置100に代えて送電装置100bを備える。また、電力伝送システム1bは、電力伝送システム1の構成要素に加えて停車検知装置300を含む。
【0066】
送電装置100bは、一例として、送電カプラ110、電源120、制御部130、電力検出部140及び検知インターフェース150を含む。すなわち、送電装置100bは、送電装置100の構成要素に加えて検知インターフェース150を備える。
【0067】
検知インターフェース150は、送電装置100bが停車検知装置300の出力する信号を受信するためのインターフェースである。送電装置100bは、検知インターフェース150を介して停車検知装置300と通信する。当該通信は、有線通信でも無線通信でも良い。
【0068】
停車検知装置300は、カート200が所定位置に停車したことを検知する。所定位置は、受電装置210が送電装置100bから伝送される電力を受電可能な位置である。停車検知装置300は、一例として、スイッチ301及び出力部302を含む。
【0069】
スイッチ301は、一例として、モーメンタリ動作の押しボタンスイッチなどのスイッチである。例えば、カート200の一部がスイッチ301を押すことで、スイッチ301がオンになる。そして、カート200がスイッチ301から離れることで、スイッチ301がオフになる。このようにして、スイッチ301は、カート200が所定位置に停車したこと及び所定位置から離脱したことを検知する。
【0070】
なお、スイッチ301は、カート200以外のカート及びカート以外の物体がスイッチ301を押さないような構造になっていることが好ましい。例えば、スイッチ301は、カート200の形状に応じた複数の押しボタンスイッチなどのスイッチを含む。すなわち、カート200が所定位置にある場合にスイッチ301に含まれる全てのスイッチ押されるように、各スイッチが配置される。そして、スイッチ301は、例えば、スイッチ301に含まれる複数のスイッチの全てが同時に押された場合、オンになる。このような場合、カート200以外の物体は、カート200とは形状が違うため、全てのスイッチを同時に押すことが難しい。このような仕組みにより、停車検知装置300は、スイッチ301を用いて、所定位置にある物体がカート200であるかカート200以外の物体であるかを判別することができる。
あるいは、スイッチ301は、カート200でなければ押すのが難しいような形状をしていても良い。また、カート200がスイッチ301の形状に合わせた、スイッチ301を押すための突起などを備えていても良い。このような場合でも、同様に停車検知装置300は、スイッチ301を用いて、所定位置にある物体がカート200であるかカート200以外の物体であるかを判別することができる。
【0071】
出力部302は、スイッチ301がオンになったことに応じて、検知信号を出力する。検知信号は、カート200が所定位置に停車したことを検知したことを示す信号である。検知信号は、送電装置100bの検知インターフェース150によって受信される。検知インターフェース150は、検知信号を受信したことを示す信号をプロセッサー131に出力する。プロセッサー131は、当該信号の入力を受ける。
【0072】
なお、停車検知装置300は、スイッチ301以外のセンサーを用いてカート200が所定位置に停車したことを検知しても良い。例えば、停車検知装置300は、カメラ、レーダー、LIDAR(light detection and ranging)、赤外線センサー、超音波センサー、ToF(time of flight)センサー、誘導型、静電容量型若しくは磁気型などの近接センサー又はその他のセンサーを用いてカート200が所定位置に停車したことを検知しても良い。出力部302は、これらのセンサーが、カート200が所定位置に停車したことを検知したならば、検知信号を出力する。また、この場合も、停車検知装置300は、カート200以外のカート及びカート以外の物体を検知しないような構造になっていることが好ましい。例えば、停車検知装置300は、カート200の形状に応じた、カート200を検知するための複数のセンサーを含む。すなわち、カート200が所定位置にある場合にこれらのセンサーの全てがカート200を検知するように、各センサーが配置される。そして、停車検知装置300は、カート200を検知するための複数のセンサーが全てカート200を検知した場合に、カート200が所定位置にあると判定する。このような場合、カート200以外の物体は、カート200とは形状が違うため、全てのセンサーに同時に物体を検出させることは難しい。
【0073】
また、停車検知装置300は、スイッチ301以外のセンサーを用いて所定位置にある物体がカート200であるかカート200以外の物体であるかを判別しても良い。例えば、停車検知装置300は、例えば、画像認識、カート200との通信、又はカート200に付されたバーコードなどの読み取りなどのカート200に特有の情報の読み取りなどによってカート200とカート200以外の物体との判別を行う。
【0074】
以下、第2実施形態に係る電力伝送システム1bの動作を
図9などに基づいて説明する。なお、以下の動作説明における処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
図9は、送電装置100のプロセッサー131による第2実施形態に係る処理の一例を示すフローチャートである。プロセッサー131は、例えば、ROM132又は補助記憶装置134などに記憶されたプログラムに基づいて
図9の処理を実行する。
プロセッサー131は、例えば、送電装置100の起動などにともなって
図9に示す処理を開始する。
【0075】
ステップST31においてプロセッサー131は、カート200が所定位置に停車したか否かを判定する。プロセッサー131は、例えば、検知インターフェースが検知信号を受信したならば、カート200が所定位置に停車したと判定する。プロセッサー131は、カート200が所定位置に停車していないならば、ステップST31においてNoと判定してステップST31の処理を繰り返す。対して、プロセッサー131は、カート200が所定位置に停車したならば、ステップST31においてYesと判定してステップST11へと進む。
【0076】
第2実施形態において、プロセッサー131は、ステップST21の処理の後及びステップST22の処理の後、ステップST31へと戻る。
【0077】
第2実施形態の電力伝送システム1bは、第1実施形態の電力伝送システム1と同様の効果が得られる。さらに、第2実施形態の電力伝送システム1bでは、以下のような効果も得られる。
第2実施形態の電力伝送システム1bによれば、送電装置100bは、停車検知装置300を用いてカート200が所定位置に停車したことを検出する。そして、送電装置100bは、カート200が所定位置に停車したことを検出したならば、スタンバイ動作を開始する。したがって、第2実施形態の送電装置100bは、カート200の位置に拘らずスタンバイ動作を実行し続ける場合に比べて電力の消費量を抑えることができる。
【0078】
また、第2実施形態の電力伝送システム1bによれば、送電装置100bは、カート200が所定位置に停車したことを検出した場合にスタンバイ動作を開始する。そして、送電装置100bは、スタンバイ動作中に電力比が閾値TH1未満となった場合に送電を開始する。このように、送電装置100bは、停車を検出する動作と、電力比が閾値TH1未満となったことを判定する動作の二段階の動作を経て送電を開始する。したがって、第2実施形態の送電装置100bは、所定位置にカート200以外の異物がある場合に電力の送電を開始することを、一段階だけの動作の場合よりも防ぐことができる。
【0079】
上記の実施形態は、以下のような変形も可能である。
上記の実施形態では、プロセッサー131は、時間Tpを求め、タイマーを用いて時間Tpが経過したこと判定した。これに代えて、プロセッサー131は、現在時刻から時間Tp後の時刻(以下「推定時刻」という。)を求めても良い。そして、プロセッサー131は、現在時刻が推定時刻以降であるならば、バッテリー214が満充電であると判定し、ステップST18においてYesと判定する。
【0080】
上記の実施形態では、送電装置100のプロセッサー101は、充電器213が定電圧充電を実行中であると判定した場合に間欠動作を開始する。しかしながら、プロセッサー101は、時間Tpからタイマーの時間を引いた時間が、閾値TH7以下である場合に間欠動作を開始しても良い。
図4には、時間Tpからタイマーの時間を引いた時間が、閾値TH7以下となる時点を時間t5として示している。
【0081】
第2実施形態の送電装置100bは、スタンバイ動作を実行せずに送電を開始しても良い。この場合、送電装置100bのプロセッサー131は、例えば、ステップST31においてYesと判定したならばステップST13へと進む。この場合、送電装置100bは、スタンバイ動作を実行する場合に比べて電力の消費量を抑えることができる。なお、ここで送電開始される電力は、前述のように第1の電力の一例である。
【0082】
上記の実施形態では、カート200が受電装置210を備える場合を例に説明した。しかしながら、カート200以外にも、自動車、自動二輪車、電動自転車、鉄道車両又はその他車などが受電装置210を備えていても良い。あるいは、車以外の乗り物、無人機又はロボットなどが受電装置210を備えていても良い。また、受電装置210は、人などが手に持って運ぶものであっても良い。
【0083】
充電器及びバッテリーは、受電装置に接続している装置内にあっても良い。この場合、受電装置は、送電装置100から受電した電力を当該装置に出力する。当該装置は、当該電力によって充電を行う。負荷230が当該装置であっても良い。送電装置100は、このように受電装置の外部に充電器がある場合でも、上記の実施形態と同様に動作可能である。
【0084】
プロセッサー131は、上記実施形態においてプログラムによって実現する処理の一部又は全部を、回路のハードウェア構成によって実現するものであっても良い。
【0085】
実施形態の処理を実現するプログラムは、例えば装置に記憶された状態で譲渡される。しかしながら、当該装置は、当該プログラムが記憶されない状態で譲渡されても良い。そして、当該プログラムが別途に譲渡され、当該装置へと書き込まれても良い。このときのプログラムの譲渡は、例えば、リムーバブルな記憶媒体に記録して、あるいはインターネット又はLAN(local area network)などのネットワークを介したダウンロードにより実現できる。
【0086】
以上、本発明の実施形態を説明したが、例として示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0087】
1,1b 電力伝送システム
100,100b 送電装置
110 送電カプラ
120 電源
130 制御部
131 プロセッサー
132 ROM
133 RAM
134 補助記憶装置
135 バス
140 電力検出部
150 検知インターフェース
200 カート
210 受電装置
211 受電カプラ
212 整流部
213 充電器
214 バッテリー
220 カート部
230 負荷
300 停車検知装置
301 スイッチ
302 出力部