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特開2022-179568AG処理が施された偏光板用表面保護フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179568
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】AG処理が施された偏光板用表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20221125BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221125BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20221125BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J11/06
C09J133/14
B32B27/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156058
(22)【出願日】2022-09-29
(62)【分割の表示】P 2021127577の分割
【原出願日】2015-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 健太郎
(57)【要約】
【課題】低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、粘着力が小さいにもかかわらず偏光板に対する密着力が良好で、耐久性、リワーク性、及び帯電防止性能に優れたAG処理が施された偏光板用表面保護フィルムの提供。
【解決手段】粘着剤層が、(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーと、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーと、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(E)水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、を共重合したアクリル系ポリマーと、3官能のイソシアネート化合物と、(F)HLB値が7~12のポリエーテル変性シロキサン化合物と、帯電防止剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させてなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AG処理が施された偏光板用表面保護フィルムであって、
樹脂フィルムの片面に、アクリル系ポリマーと、架橋剤と、帯電防止剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が形成されてなり、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計を100重量部と、
(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を2~10重量部と、
(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.05~0.3重量部と、
(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計を3~40重量部と、
(E)水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.1~20重量部と、
を共重合した共重合体からなり、
前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であり、
前記粘着剤組成物が、前記(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、前記架橋剤として、3官能のイソシアネート化合物を0.1~6重量部の割合で含有してなり、さらに、(F)HLB値が7~12のポリエーテル変性シロキサン化合物の少なくとも1種以上の合計を0.001~0.5重量部の割合で含有してなることを特徴とするAG処理が施された偏光板用表面保護フィルム。
【請求項2】
前記樹脂フィルムの片面の、前記粘着剤層が形成された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理がされている請求項1に記載のAG処理が施された偏光板用表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、粘着力が小さいにもかかわらず偏光板への密着力が優れ、耐久性およびリワーク性、帯電防止性能にも優れた偏光板用表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶ディスプレイを構成する部材である偏光板、位相差板などの光学部材の製造工程においては、光学部材の表面を一時的に保護するための表面保護フィルムが貼着される。このような表面保護フィルムは、光学部材を製造する工程のみに使用され、光学部材を液晶ディスプレイに組み込む時点で、光学部材から剥離して除去される。このような光学部材の表面を保護するための表面保護フィルムは、製造工程においてのみに使用されるため、一般には、工程フィルムと呼ばれることもある。
【0003】
このように光学部材を製造する工程において使用される表面保護フィルムは、光学的に透明性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムの片面に粘着剤層が形成されているが、光学部材に貼り合わせるまで、その粘着剤層を保護するための剥離処理された剥離フィルムが、粘着剤層の上に貼り合わされている。
また、偏光板、位相差板などの光学部材は、表面保護フィルムを貼り合わされた状態で、液晶表示板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う製品検査を行うため、表面保護フィルムに対する要求性能としては、粘着剤層に気泡や異物が付着していないことが求められている。
また、近年では、偏光板、位相差板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときに、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電が、液晶ディスプレイの電気制御回路の故障に影響することが懸念され、粘着剤層に対して優れた帯電防止性能が求められている。
また、偏光板、位相差板などの光学部材に表面保護フィルムを貼り合わせるときに、各種の理由により、一旦、表面保護フィルムを剥がして、再度、表面保護フィルムを貼り直すことがあり、そのときに被着体の光学部材から剥がし易いこと(リワーク性)が求められている。
また、最終的に偏光板、位相差板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときには、速やかに剥離できることが求められている。いわゆる、高速剥離によっても、速やかに剥離できるように、粘着力が剥離速度によっても変化が少ないことが求められている。
【0004】
このように、近年においては、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能として、(i)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(ii)優れた帯電防止性能、(iii)リワーク性などが、表面保護フィルムを使用するに当たっての使い易さの点から求められている。
【0005】
例えば、(i)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ることについては、次のような提案が知られている。
【0006】
炭素数が7以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有共重合性化合物との共重合体を主成分とし、これを架橋剤で架橋処理してなるアクリル系の粘着剤層では、長期間接着した場合に粘着剤が被着体側へ移着し、また被着体に対する接着力の経時上昇性が大きいという問題があった。これを回避するため、炭素数が8~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルコール性水酸基を有する共重合性化合物との共重合体を用い、これを架橋剤で架橋処理した粘着剤層を設けたものが知られている(特許文献1)。
また、上記と同様の共重合体に(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有共重合性化合物との共重合体を少量配合し、これを架橋剤で架橋処理した粘着剤層を設けたものなどが提案されている。しかし、これらは、表面張力が低くて表面が平滑なプラスチック板などの表面保護に使用すると、加工時や保存時の加熱により浮きなどの剥離現象を生じる問題や、手作業領域である高速での剥離時の再剥離性に劣るという問題もあった。
【0007】
これらの問題を解決するため、a)炭素数が8~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする(メタ)アクリル酸アルキルエステル100重量部に、b)カルボキシル基含有共重合性化合物1~15重量部と、c)炭素数が1~5の脂肪族カルボン酸のビニルエステル3~100重量部とを加えてなる単量体混合物の共重合体に、上記のb)成分のカルボキシル基に対して当量以上の架橋剤を配合した粘着剤組成物が提案されている(特許文献2)。
特許文献2に記載の粘着剤組成物では、加工時や保存時などに浮きなどの剥離現象を生じることがなく、そのうえ接着力の経時上昇性が小さくて再剥離性に優れており、長期保存、特に高温雰囲気下で長期保存しても小さな力で再剥離でき、その際被着体上に糊残りを生じず、また高速剥離を行ったときでも小さな力で再剥離できるとしている。
【0008】
また、(ii)優れた帯電防止性能については、表面保護フィルムに帯電防止性能を付与するための方法として、基材フィルムに帯電防止剤を練り込む方法などが示されている。帯電防止剤としては、例えば、(a)第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1~3級アミノ基などのカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤、(b)スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性帯電防止剤、(c)アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性帯電防止剤、(d)アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性帯電防止剤、(e)上記の様な帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤、などが開示されている(特許文献3)。
また、近年では、このような帯電防止剤を基材フィルムに含有させたり、あるいは基材フィルムの表面に塗布するのではなく、直接に粘着剤層に含有させたりすることが提案されている。
【0009】
また、(iii)リワーク性については、例えば、アクリル樹脂中に、イソシアネート系化合物の硬化剤と、特定のシリケートオリゴマーをアクリル系樹脂100重量部に対して0.0001~10重量部で配合した粘着剤組成物が提案されている(特許文献4)。
特許文献4では、アルキル基の炭素数が2~12程度のアクリル酸アルキルエステルやアルキル基の炭素数が4~12程度のメタクリル酸アルキルエステル等を主モノマー成分とし、例えば、カルボキシル基含有モノマーなどの他の官能基含有モノマー成分を含むことができるとしている。一般的には上記主モノマーを50重量%以上含有させることが好ましい、又、官能基含有モノマー成分の含有量は0.001~50重量%、好ましくは0.001~25重量%、更に好ましくは0.01~25重量%であることが望まれる、としている。このような特許文献4に記載の粘着剤組成物は、高温下又は高温高湿下でも凝集力及び接着力の経時変化が小さく、かつ、曲面に対する接着力にも優れた効果を示すことから、リワーク性を有するとしている。
一般に、粘着剤層を柔らかい性状のものにすると、糊残りが発生し易くなり、リワーク性が低下し易い。すなわち、誤って貼合したときに剥離がし難く、貼り直しが困難となり易い。このことから、カルボキシル基などの官能基を有するモノマーを主剤に架橋させて、粘着剤層を一定の硬さにすることが、リワーク性を持たせるためには必要と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭63-225677号公報
【特許文献2】特開平11-256111号公報
【特許文献3】特開平11-070629号公報
【特許文献4】特開平8-199130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、液晶ディスプレイなどの、各種ディスプレイの大画面化が急速に進展している。しかし、液晶ディスプレイの大画面化に伴い、液晶ディスプレイの部材を製造する工程において、新たな問題が発生している。例えば、偏光板の表面に貼合して偏光板を保護するための、偏光板用の表面保護フィルムに関して、次のような問題が発生している。
従来技術では、液晶ディスプレイの部材である偏光板の製造工程において、表面保護フィルムを被着体である偏光板に貼合した後、偏光板から表面保護フィルムを剥がす時に、剥がし易くしたいという要望に対して、表面保護フィルムに形成されている粘着剤層の粘着力を小さくすることで、この要望を満たすことを行ってきた。
しかし、粘着剤層の粘着力を小さくして、表面保護フィルムを被着体から剥がし易くすると、表面保護フィルムの偏光板に対する密着力が低下するため、液晶ディスプレイの大画面化に伴い、偏光板の大きさが従来に比べて大面積化した場合には、偏光板の端部において、表面保護フィルムが剥がれてしまうという問題が生じている。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、粘着力が小さいにもかかわらず偏光板に対する密着力が良好で、耐久性、リワーク性、及び帯電防止性能に優れた偏光板用表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は、樹脂フィルムの片面に、アクリル系ポリマーと、架橋剤と、帯電防止剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が形成されてなる偏光板用表面保護フィルムであって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上と、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上と、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上と、(E)水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上と、を共重合させた共重合体からなり、前記架橋剤が、3官能のイソシアネート化合物であり、前記粘着剤組成物が、さらに、(F)HLB値が7~12のポリエーテル変性シロキサン化合物を含有してなり、AG処理が施された偏光板に貼り合わせた、幅25mm×長さ35mmの寸法に裁断した前記偏光板用表面保護フィルムに、荷重500gを掛けて、温度23℃の雰囲気で24hr放置して行う、偏光板に対するせん断保持力試験においてズレの無いことを特徴とする偏光板用表面保護フィルムを提供する。
【0014】
また、本発明は、樹脂フィルムの片面に、アクリル系ポリマーと、架橋剤と、帯電防止剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が形成されてなる偏光板用表面保護フィルムであって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計を100重量部と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を2~10重量部と、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.05~0.3重量部と、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計を3~40重量部と、(E)水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.1~20重量部と、を共重合した共重合体からなり、前記架橋剤が、3官能のイソシアネート化合物であり、前記粘着剤組成物が、さらに、前記(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、(F)HLB値が7~12のポリエーテル変性シロキサン化合物の少なくとも1種以上の合計を0.001~0.5重量部の割合で含有してなり、AG処理が施された偏光板に貼り合わせた、幅25mm×長さ35mmの寸法に裁断した前記偏光板用表面保護フィルムに、荷重500gを掛けて、温度23℃の雰囲気で24hr放置して行う、偏光板に対するせん断保持力試験においてズレの無いことを特徴とする偏光板用表面保護フィルムを提供する。
【0015】
前記(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上で、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であり、モノマー中のジエステル分が0.2%以下であり、水分含有率が0.1%以下であり、且つ、水に対する溶解性が、20%水溶液状態でのヘイズ値が2%以下であることが好ましい。
【0016】
前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0017】
前記(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0018】
前記3官能のイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、イソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体、トリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、キシリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、水添キシリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、キシリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、水添キシリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、からなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0019】
前記(J)帯電防止剤が、前記(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、前記粘着剤組成物中に0.01~5.0重量部含まれる、融点が25~50℃の25℃で固体のイオン性化合物であることが好ましい。
【0020】
前記粘着剤層の、偏光板に対する低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.04~0.2N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が2.0N/25mm以下であることが好ましい。
【0021】
前記粘着剤層の、表面抵抗率が9.0×10+11Ω/□以下であり、剥離帯電圧が±0~0.5kVであることが好ましい。
【0022】
前記樹脂フィルムの片面の、前記粘着剤層が形成された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理がされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、粘着力が小さいにもかかわらず偏光板に対する密着力が良好で、耐久性、リワーク性、及び帯電防止性能に優れた偏光板用表面保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
本発明の偏光板用表面保護フィルムは、樹脂フィルムの片面に、アクリル系ポリマーと、架橋剤と、帯電防止剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が形成されてなる偏光板用表面保護フィルムであって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上と、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上と、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上と、(E)水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上と、を共重合させた共重合体からなり、前記架橋剤が、3官能のイソシアネート化合物であり、前記粘着剤組成物が、さらに、(F)HLB値が7~12のポリエーテル変性シロキサン化合物を含有してなり、AG処理が施された偏光板に貼り合わせた、幅25mm×長さ35mmの寸法に裁断した前記偏光板用表面保護フィルムに、荷重500gを掛けて、温度23℃の雰囲気で24hr放置して行う、偏光板に対するせん断保持力試験においてズレの無いことを特徴とする偏光板用表面保護フィルムである。
【0025】
また、本発明の偏光板用表面保護フィルムは、樹脂フィルムの片面に、アクリル系ポリマーと、架橋剤と、帯電防止剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が形成されてなる偏光板用表面保護フィルムであって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計を100重量部と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を2~10重量部と、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.05~0.3重量部と、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計を3~40重量部と、(E)水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.1~20重量部と、を共重合した共重合体からなり、前記架橋剤が、3官能のイソシアネート化合物であり、前記粘着剤組成物が、さらに、前記(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、(F)HLB値が7~12のポリエーテル変性シロキサン化合物の少なくとも1種以上の合計を0.001~0.5重量部の割合で含有してなり、AG処理が施された偏光板に貼り合わせた、幅25mm×長さ35mmの寸法に裁断した前記偏光板用表面保護フィルムに、荷重500gを掛けて、温度23℃の雰囲気で24hr放置して行う、偏光板に対するせん断保持力試験においてズレの無いことを特徴とする偏光板用表面保護フィルムである。
【0026】
(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられる。
8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を2~10重量部の割合で含有することが好ましく、3.5~10重量部の割合で含有することがより好ましく、4.2~10重量部の割合で含有することが特に好ましい。
【0028】
(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.05~0.3重量部の割合で含有することが好ましく、0.05~0.25重量部の割合で含有することがより好ましく、0.05~0.2重量部の割合で含有することが特に好ましい。
【0029】
(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールの有する複数の水酸基のうち、一つの水酸基が(メタ)アクリル酸エステルとしてエステル化された化合物であればよい。(メタ)アクリル酸エステル基が重合性基となるので、主剤ポリマーに共重合することができる。他の水酸基は、OHのままでもよく、メチルエーテルやエチルエーテル等のアルキルエーテルや、酢酸エステル等の飽和カルボン酸エステル等となっていてもよい。
ポリアルキレングリコールの有するアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられるが、これらに限定されない。ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の2種以上のポリアルキレングリコールの共重合体であってもよい。ポリアルキレングリコールの共重合体としては、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール等が挙げられ、該共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体であってもよい。
【0030】
(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であることが好ましい。「アルキレンオキサイドの平均繰り返し数」とは、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの分子構造に含まれる「ポリアルキレングリコール鎖」の部分において、アルキレンオキサイド単位が繰り返す平均の数である。
【0031】
(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、モノマー中のジエステル分が0.2%以下であり、水分含有率が0.1%以下であり、且つ、水に対する溶解性が、20%水溶液状態でのヘイズ値が2%以下であることが好ましい。
「モノマー中のジエステル分」とは、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中に含まれるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステルの含有率(重量%)である。
「水分含有率」とは、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中に含まれる水分の含有率(重量%)である。
「20%水溶液状態でのヘイズ値」とは、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを20重量%の水溶液とした状態における該水溶液のヘイズ値(%)である。つまり、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、20%水溶液となるだけの水溶性(水に対する溶解性)を有するのみならず、20%水溶液においてヘイズ値(%)が低い(白濁が少ない)ことを必要とする。
なお、本明細書において、20%水溶液のヘイズ値は、光路長さが10mmの石英セルに該水溶液を入れ、ヘイズメーターにより測定した値である。この指標は、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの親水性の程度として、高濃度でも白濁のない溶液が得られる、親水性の高いモノマーを選択するために導入されたものである。
【0032】
(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
より具体的には、ポリエチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート;エトキシポリエチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0033】
(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計を3~40重量部の割合で含有することが好ましく、3~30重量部の割合で含有することがより好ましく、5~30重量部の割合で含有することが特に好ましい。
【0034】
アクリル系ポリマーは、さらに、(E)水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種を含むことができる。(E)のうち、(E-1)窒素含有ビニルモノマーとしては、アミド結合を含有するビニルモノマー、アミノ基を含有するビニルモノマー、窒素含有の複素環式構造を有するビニルモノマー等が挙げられる。より具体的には、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルラウリロラクタム等の、N-ビニル置換の複素環式構造を有する環状窒素ビニル化合物;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペラジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、N-(メタ)アクリロイルアゼチジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルアゼパン、N-(メタ)アクリロイルアゾカン等の、N-(メタ)アクリロイル置換の複素環式構造を有する環状窒素ビニル化合物;N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等の、窒素原子及びエチレン系不飽和結合を環内に有する複素環式構造を有する環状窒素ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド等の無置換又はモノアルキル置換の(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル置換(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノイソプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-エチル-N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノ(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル置換アミノプロピル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の、(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和カルボン酸ニトリル類;などが挙げられる。
【0035】
(E-1)窒素含有ビニルモノマーとしては、水酸基を含有しないものが好ましく、水酸基およびカルボキシル基を含有しないものがより好ましい。このようなモノマーとしては、上に例示したモノマー、例えば、N,N-ジアルキル置換アミノ基やN,N-ジアルキル置換アミド基を含有するアクリル系モノマー;N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピペリドンなどのN-ビニル置換ラクタム類;N-(メタ)アクリロイルモルホリンやN-(メタ)アクリロイルピロリジンなどのN-(メタ)アクリロイル置換環状アミン類が好ましい。
【0036】
(E)のうち、(E-2)アルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2-イソプロポキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、2-イソプロポキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、3-イソプロポキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレート、4-プロポキシブチル(メタ)アクリレート、4-イソプロポキシブチル(メタ)アクリレート、4-ブトキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらのアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基の原子がアルコキシ基で置換された構造を有する。
【0037】
(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、(E)水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.1~20重量部の割合で含有することが好ましく、0.3~10重量部の割合で含有することがより好ましく、0.3~8重量部の割合で含有することが特に好ましい。(E-1)水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマー及び(E-2)アルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーを、それぞれ1種または2種以上併用することもできる。
【0038】
本発明に係わる粘着剤組成物は、(F)HLB値が7~12のポリエーテル変性シロキサン化合物を含有することができる。ポリエーテル変性シロキサン化合物は、ポリエーテル基を有するシロキサン化合物であり、通常のシロキサン単位〔-SiR -O-〕の他に、ポリエーテル基を有するシロキサン単位〔-SiR(RO(RO))-O-〕を有する。ここで、Rは1種又は2種以上のアルキル基又はアリール基、R及びRは1種又は2種以上のアルキレン基、Rは1種又は2種以上のアルキル基やアシル基等(末端基)を示す。ポリエーテル基としては、ポリオキシエチレン基〔(CO)〕やポリオキシプロピレン基〔(CO)〕等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。
【0039】
(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、(F)HLB値が7~12のポリエーテル変性シロキサン化合物の少なくとも1種以上の合計を0.001~0.5重量部の割合で含有することが好ましい。より好ましくは、0.01~0.5重量部である。HLB値とは、例えばJIS K3211(界面活性剤用語)等に規定する親水親油バランス(親水性親油性比)である。
【0040】
ポリエーテル変性シロキサン化合物は、例えば、水素化ケイ素基を有するポリオルガノシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリオキシアルキレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることができる。具体的には、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン重合体等が挙げられる。ポリエーテル変性シロキサン化合物のHLB値は、ポリエーテル基とシロキサン基との比率を選択することにより、調整することができる。(F)HLB値が7~12のポリエーテル変性シロキサン化合物を粘着剤組成物に配合することにより、粘着剤の粘着力及びリワーク性能を改善することができる。
【0041】
3官能のイソシアネート化合物としては、1分子中に3個のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物から選択される、少なくとも1種または2種以上であればよい。ポリイソシアネート化合物には、脂肪族系イソシアネート、芳香族系イソシアネート、非環式系イソシアネート、脂環式系イソシアネートなどの分類があるが、いずれでもよい。
【0042】
3官能のイソシアネート化合物としては、2官能イソシアネート化合物(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパン(TMP)やグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
【0043】
3官能のイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、イソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体、トリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、キシリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、水添キシリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、キシリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、水添キシリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、からなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、3官能のイソシアネート化合物の少なくとも1種以上の合計を0.1~10重量部の割合で含有することが好ましく、0.1~6重量部の割合で含有することがより好ましい。
【0044】
架橋触媒は、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする場合に、アクリル系ポリマーと架橋剤との反応(架橋反応)に対して触媒として機能する物質であればよく、第三級アミン等のアミン系化合物、金属キレート化合物、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等の有機金属化合物等が挙げられる。
第三級アミンとしては、トリアルキルアミン、N,N,N’,N’-テトラアルキルジアミン、N,N-ジアルキルアミノアルコール、トリエチレンジアミン、モルホリン誘導体、ピペラジン誘導体等が挙げられる。
【0045】
金属キレート化合物としては、中心金属原子Mに、1以上の多座配位子Lが結合した化合物である。金属キレート化合物は、金属原子Mに結合する1以上の単座配位子Xを有してもよく、有しなくてもよい。例えば、金属原子Mが1つである金属キレート化合物の一般式を、M(L)(X)で表すとき、m≧1、n≧0である。mが2以上の場合、m個のLは同一の配位子でもよく、異なる配位子でもよい。nが2以上の場合、n個のXは同一の配位子でもよく、異なる配位子でもよい。
【0046】
金属原子Mとしては、Fe,Ni,Mn,Cr,V,Ti,Ru,Zn,Al,Zr,Sn等が挙げられる。
多座配位子Lとしては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン(別名2,4-ペンタンジオン)、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらは、ケトエノール互変異性体化合物であり、多座配位子Lにおいてはエノールが脱プロトンしたエノラート(例えばアセチルアセトネート)であってもよい。
単座配位子Xとしては、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、2-エチルヘキサノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基等のアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基などが挙げられる。
【0047】
金属キレート化合物の具体例としては、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、鉄トリスアセチルアセトネート、チタニウムトリスアセチルアセトネート、ルテニウムトリスアセチルアセトネート、亜鉛ビスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)鉄(III)、ビス(2,4-ヘキサンジオナト)亜鉛、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)チタン、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)アルミニウム、テトラキス(2,4-ヘキサンジオナト)ジルコニウム等が挙げられる。
【0048】
有機錫化合物としては、ジアルキル錫オキシドや、ジアルキル錫の脂肪酸塩、第1錫の脂肪酸塩等が挙げられる。
架橋触媒は、金属キレート化合物または有機錫化合物であるのが好ましい。金属キレート化合物としては、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物、錫キレート化合物等が好ましい。有機錫化合物としては、ジオクチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、架橋触媒の少なくとも1種以上の合計を0.001~0.5重量部の割合で含有することが好ましい。
【0049】
ケトエノール互変異性体化合物としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。ケトエノール互変異性体化合物は、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする粘着剤組成物において、架橋剤の有するイソシアネート基をブロックすることにより、架橋剤の配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。
ケトエノール互変異性体化合物として、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、ケトエノール互変異性体化合物の少なくとも1種以上の合計を0.1~300重量部の割合で含有することが好ましく、1.0~30.0重量部の割合がより好ましい。
【0050】
ケトエノール互変異性体化合物は、架橋触媒とは反対に、架橋を抑制する効果を有することから、架橋触媒に対するケトエノール互変異性体化合物の割合を適切に設定することが好ましい。粘着剤組成物のポットライフを長くし、貯蔵安定性を向上させるには、ケトエノール互変異性体化合物に対する架橋触媒の、重量比率(ケトエノール互変異性体化合物/架橋触媒)が70~1000であることが好ましい。
【0051】
(J)帯電防止剤は、融点が25~50℃の25℃で固体のイオン性化合物であることが好ましい。
本発明では、(J)帯電防止剤として、融点が25~50℃の25℃で固体のイオン性化合物を粘着剤組成物中に添加する。これらの(J)帯電防止剤は、融点が低いため、また、長鎖のアルキル基を有するため、アクリル系ポリマーとの親和性は高いと推測される。
【0052】
(J)帯電防止剤として、粘着剤組成物中に含まれる融点が25~50℃の25℃で固体のイオン性化合物が挙げられる。
【0053】
融点が25~50℃の25℃で固体のイオン性化合物としては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物であって、カチオンが、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の含窒素オニウムカチオンや、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等であり、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF )、チオシアン酸塩(SCN)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(RCSO )、過塩素酸塩(ClO )、四フッ化ホウ酸塩(BF )、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩(FSI)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(TFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸塩(TF)等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。常温(例えば25℃)で固体であることが好ましく、アルキル基の鎖長や置換基の位置、個数等の選択により、融点が25~50℃のものを得ることができる。カチオンは、好ましくは4級含窒素オニウムカチオンであり、1-アルキルピリジニウム(2~6位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級ピリジニウムカチオン、や1,3-ジアルキルイミダゾリウム(2,4,5位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。
(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、融点が25~50℃の25℃で固体のイオン性化合物の少なくとも1種以上の合計を0.01~5.0重量部の割合で含有することが好ましい。
【0054】
(J)帯電防止剤の具体例としては、特に限定されるものでないが、融点が25~50℃の25℃で固体のイオン性化合物の具体例としては、例えば、1-オクチルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、1-ノニルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、2-メチル-1-ドデシルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、1-オクチルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩、1-ドデシルピリジニウム チオシアン酸塩、1-ドデシルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩、4-メチル-1-オクチルピリジニウム 六フッ化リン酸塩等が挙げられる。
【0055】
さらに、その他の成分として、アルキレンオキサイドを含有する共重合可能な(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、ジアルキル置換アクリルアミドモノマー、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することが出来る。これらは、単独で、もしくは2種以上を併せて用いられる。
【0056】
本発明の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上と、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上と、を共重合させた共重合体からなる。また、アクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC4~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上と、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上と、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種と、(E)水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上と、を共重合させた共重合体であってもよい。アクリル系ポリマーの重合方法は特に限定されるものではなく、溶液重合、乳化重合等、適宜の重合方法が使用可能である。
本発明の粘着剤組成物は、さらに、上記のアクリル系ポリマーに、(F)HLB値が7~12のポリエーテル変性シロキサン化合物と、架橋剤として、3官能のイソシアネート化合物と、帯電防止剤として、融点が25~50℃の25℃で固体のイオン性化合物、さらに適宜任意の添加剤を配合することで調製することができる。
【0057】
アクリル系ポリマーの製造時には、粘着剤組成物への水分の混入を低減するため、無水の有機溶剤を用いた溶液重合など、無水条件で重合反応を行うことが好ましい。特に、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、親水性が高いため、水分含有率の低いものを用いることが好ましい。
主剤のアクリル系ポリマーの製造に使用される各モノマーは、粘着剤組成物の粘度上昇を避けるためには、架橋剤として機能し得る、多官能性(二官能性以上)のモノマーの量を極力低減することが好ましい。特に、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、対応するジエステル分が二官能性モノマーのジ(メタ)アクリル酸エステルであるため、ジエステル分の少ないものを用いることが好ましい。
【0058】
前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルモノマーや(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド類などのアクリル系モノマーを、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、50~100重量部の割合で含むことが好ましい。
また、アクリル系ポリマーの酸価は、0.01~8.0であることが好ましい。これにより、汚染性を改善し、糊残りの発生防止性能を向上することができる。
ここで、「酸価」とは、酸の含有量を表す指標の一つであり、カルボキシル基を含有するポリマー1gを中和するのに要する、水酸化カリウムのmg数で表される。
【0059】
前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、偏光板に対する粘着力は、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.04~0.2N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が2.0N/25mm以下であることが好ましい。これにより、粘着力が剥離速度によっても変化が少ない性能が得られ、高速剥離によっても、速やかに剥離することが可能になる。また、貼り直しのため、一旦、表面保護フィルムを剥がすときにも、過大な力を必要とせず、被着体から剥がし易い。
【0060】
前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、表面抵抗率が9.0×10+11Ω/□以下であり、剥離帯電圧が±0~0.5kVであることが好ましい。なお、本発明において、「±0~0.5kV」とは、0~-0.5kV及び0~+0.5kV、すなわち、-0.5~+0.5kVを意味する。表面抵抗率が大きいと、剥離時に帯電で発生した静電気を逃がす性能に劣る。このため、表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体の電気制御回路等に影響することを抑制することができる。
【0061】
前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層のゲル分率は、95~100%であることが好ましい。このようにゲル分率が高いことにより、低速の剥離速度において、粘着力が過大にならず、アクリル系ポリマーからの未重合モノマーあるいはオリゴマーの溶出が低減して、リワーク性や高温・高湿度における耐久性が改善され、被着体の汚染を抑制することができる。
【0062】
前記粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面または両面に形成することにより、粘着フィルムが得られる。また、本発明の偏光板用表面保護フィルムは、樹脂フィルムの片面に、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が形成されてなる表面保護フィルムである。本発明の偏光板用表面保護フィルムは、偏光板に貼り合わせたときの、せん断保持力試験でズレの無く、粘着力が小さいにもかかわらず偏光板に対する密着力が良好で、耐久性、リワーク性、及び帯電防止性能に優れている。このため、偏光板の表面保護フィルムの用途として好適に使用することができる。偏光板としては、グレア、プレーン(汎用)、アンチグレア(AG)等が挙げられる。偏光板の表面の保護膜材料としては、TAC系フィルム(トリアセチルセルロース系化合物)、アクリル系フィルム等が挙げられる。
【0063】
せん断保持力の試験条件としては、例えば、荷重(重りの質量)500g、環境温度23℃、放置時間24hrが挙げられる。この試験条件は、偏光板に対する表面保護フィルムの密着力が良好であることの判断指針として、好適である。せん断保持力試験の被着体である偏光板に対する偏光板用表面保護フィルムの接触面積(寸法)としては、25mm×35mmが挙げられる。試験方法の詳細(装置等)は、例えば、JIS Z 0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)の保持力試験などに準じてもよい。
【0064】
粘着剤層の基材となる樹脂フィルムや、粘着面を保護する剥離フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材となる樹脂フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
剥離フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
【実施例0065】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0066】
<アクリル系ポリマーの製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に2-エチルヘキシルアクリレート100重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート8.0重量部、アクリル酸0.1重量部、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数n=12、モノマー中のジエステル分が0.1%、水に対する溶解性が、20%水溶液状態でのヘイズ値が0.8%、水分含有率が0.05%)8重量部、N-ビニルピロリドン1重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、重量平均分子量50万の、実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマーの一部を採取し、後述する酸価の測定試料として用いた。
[実施例2~8及び比較例1~4]
単量体の組成を各々、表1の(A)~(E)の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液と同様にして、実施例2~8及び比較例1~4に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0067】
<粘着剤組成物及び表面保護フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル系ポリマー溶液に対して、ポリエーテル変性シロキサン化合物(HLB値が7)0.05重量部、1-オクチルピリジニウム 六フッ化リン酸塩1.0重量部、アセチルアセトン8.5重量部を加え撹拌したのち、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)4.0重量部、チタニウムトリスアセチルアセトネート0.1重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが25μmである粘着シートを得た。
その後、一方の面に帯電防止及び防汚処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの帯電防止及び防汚処理された面とは反対の面に粘着シートを転写させ、「帯電防止及び防汚処理されたPETフィルム/粘着剤層/剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)」の積層構成を有する実施例1の表面保護フィルムを得た。
[実施例2~8及び比較例1~4]
添加剤の組成を各々、表2の(F)~(J)の記載のようにする以外は、上記の実施例1の表面保護フィルムと同様にして、実施例2~8及び比較例1~4の表面保護フィルムを得た。
【0068】
表1及び表2において、各成分の配合比は、(A)群の合計を100重量部として求めた重量部の数値を括弧で囲んで示す。
また、表1及び表2に用いた各成分の略記号の化合物名を、表3及び表4に示す。なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同Lは日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、タケネート(登録商標)D-140N、D-127N、D-110N、D-120Nは三井化学株式会社の商品名である。表3の(D)群に関し、「n」の数値は、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数である。「ジエステル」の数値は、モノマー中のジエステル分(%)である。「水分」の数値は、水分含有率(%)である。「ヘイズ」の数値は、20%水溶液状態でのヘイズ値(%)である。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
<試験方法及び評価>
実施例1~8及び比較例1~4における表面保護フィルムを、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させたものを、ゲル分率及び表面抵抗率の測定試料とした。
さらに、この粘着剤層を表出させた表面保護フィルムを、粘着剤層を介して液晶セルに貼られた偏光板の表面に貼り合わせ、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力、剥離帯電圧、せん断保持力(ズレ)、リワーク性及び耐久性の測定試料とした。被着体の偏光板は、表面にAG処理がされた偏光板である。
【0074】
<ゲル分率>
エージング終了後、偏光板に貼り合わせる前の測定試料から分離した、粘着剤層の質量を正確に測定し、トルエン中に24時間浸漬後、200メッシュの金網で濾過する。その後、濾過物を100℃、1時間乾燥した後、残渣の質量を正確に測定して、以下の式から粘着剤層(架橋後の粘着剤層)のゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=不溶部分質量(g)/粘着剤層の質量(g)×100
【0075】
<粘着力>
上記で得られた測定試料(25mm幅の表面保護フィルムを、表面にAG処理がされた偏光板の表面に貼り合わせたもの)を、180°方向に引張試験機を用いて低速の剥離速度(0.3m/min)及び高速の剥離速度(30m/min)において剥がして、測定した剥離強度を粘着力(N/25mm)とした。
【0076】
<表面抵抗率>
エージングした後、偏光板に貼り合わせる前に、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP-HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0077】
<剥離帯電圧>
上記で得られた測定試料を、30m/minの引張速度で180°剥離した際に、表面にAG処理がされた偏光板が帯電して発生する電圧(帯電圧)を、高精度静電気センサSK-035、SK-200(株式会社キーエンス製)を用いて測定し、測定値の最大値を剥離帯電圧(kV)とした。
<偏光板に対するせん断保持力>
表面にAG処理が施された偏光板に、幅25mm×長さ35mmの寸法に裁断した表面保護フィルム(粘着剤層の厚さが20μm)を貼り合わせ、温度23℃雰囲気中で偏光板に貼り合わせた表面保護フィルムに500gの荷重を掛け、24hr放置した後の表面保護フィルムのズレ(mm)を測定した。
【0078】
<リワーク性>
上記で得られた測定試料の表面保護フィルムの上を、ボールペンで(荷重500g、3往復)なぞった後、偏光板から表面保護フィルムを剥離して偏光板の表面を観察し、偏光板に汚染移行の無いことを確認した。評価目標基準は、偏光板に汚染移行の無い場合を「○」、ボールペンでなぞった軌跡に沿って少なくとも一部に汚染移行が確認された場合を「△」、ボールペンでなぞった軌跡に沿って汚染移行が確認され、粘着剤表面からも粘着剤の離脱が確認された場合を「×」と評価した。
【0079】
<耐久性>
上記で得られた測定試料を、60℃、90%RHの雰囲気下に250時間放置後、室温に取り出し、さらに12時間放置した後、粘着力を測定して初期の粘着力と比較して明らかな増加が無いことを確認した。評価目標基準は、試験後の粘着力が初期粘着力の1.5倍以下である場合を「○」、1.5倍を超えた場合を「×」と評価した。
【0080】
表5に、評価結果を示す。なお、表面抵抗率は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
また、表5に記載のズレは、偏光板に対するせん断保持力の試験における、表面保護フィルムのズレ(mm)の測定値を示している。
【0081】
【表5】
【0082】
実施例1~8の表面保護フィルムは、被着体の偏光板に対して、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.04~0.2N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が2.0N/25mm以下であり、表面抵抗率が9.0×10+11Ω/□以下であり、剥離帯電圧が±0~0.5kVであり、荷重500gで23℃×24hr放置後のせん断保持力試験でズレの無く、粘着剤層を介して表面保護フィルムの上をボールペンでなぞった後に被着体に汚染移行の無く、60℃、90%RHの雰囲気下に250時間放置したときの耐久性にも優れていた。
すなわち、(1)粘着力が小さいにもかかわらず偏光板に対する密着力が良好で、(2)耐久性、(3)リワーク性、及び(4)帯電防止性能に優れ、全ての要求性能を、同時に満たしている。
【0083】
比較例1の表面保護フィルムは、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが過多であり、アクリル系ポリマーが(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含まず、粘着剤組成物が、(F)HLB値が7~12のポリエーテル変性シロキサン化合物を含まず、(G)3官能のイソシアネート化合物が過少であり、(J)帯電防止剤を含まないためか、低速の剥離速度0.3m/minと高速の剥離速度30m/minでの粘着力が大きすぎ、表面抵抗率及び剥離帯電圧が高く、せん断保持力試験でズレがあり、リワーク性、及び耐久性が劣っていた。
【0084】
比較例2の表面保護フィルムは、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが過少であり、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーのジエステル分が多く、水分含有率が高く、水に対する溶解性が低く、(F)ポリエーテル変性シロキサン化合物のHLB値が過大であるためか、低速の剥離速度0.3m/minと高速の剥離速度30m/minでの粘着力が大きすぎ、表面抵抗率及び剥離帯電圧が高く、せん断保持力試験でズレがあり、耐久性が劣っていた。
【0085】
比較例3の表面保護フィルムは、アクリル系ポリマーが(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーを含まず、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが過多であり、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーのジエステル分が多く、水分含有率が高く、水に対する溶解性が低いため、ゲル分率が低く、低速の剥離速度0.3m/minと高速の剥離速度30m/minでの粘着力が非常に大きく、表面抵抗率が低くても剥離帯電圧が高く、リワーク性が劣っていた。
【0086】
比較例4の表面保護フィルムは、(F)ポリエーテル変性シロキサン化合物のHLB値が過大であり、せん断保持力試験でズレがあった。
【0087】
このように、比較例1~4の表面保護フィルムでは、(1)粘着力が小さいにもかかわらず偏光板に対する密着力が良好で、(2)耐久性、(3)リワーク性、及び(4)帯電防止性能に優れているという、全ての要求性能を、同時に満たすことができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係わる偏光板用表面保護フィルムは、従来技術の課題であった、粘着剤層の粘着力を小さくして、表面保護フィルムを被着体から剥がし易くすると、表面保護フィルムの偏光板に対する密着力が低下するため、液晶ディスプレイの大画面化に伴い、偏光板の大きさが従来に比べて大面積化した場合には、偏光板の端部において、表面保護フィルムが剥がれてしまうという問題を解決しているから、産業上の利用価値が大である。