(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179810
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ワーク分割方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
H01L21/78 W
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166573
(22)【出願日】2022-10-18
(62)【分割の表示】P 2021096478の分割
【原出願日】2017-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】清水 翼
(57)【要約】
【課題】チップサイズが小チップの場合に生じる分割予定ラインの未分割問題を解消することができるワーク分割方法を提供する。
【解決手段】ダイシングテープの拡張率の単位時間当たりの上昇率を拡張率速度とした場合、拡張分割条件設定工程は、最大拡張率速度が拡張分割工程において一定時間維持されるように、拡張分割条件としてエキスパンドリングの突き上げ速度を設定する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングテープをエキスパンドリングによって突き上げて拡張することにより、前記ダイシングテープに貼付されたワークを個々のチップに分割するワーク分割方法において、
前記ダイシングテープの拡張率の単位時間当たりの上昇率を拡張率速度とした場合、前記エキスパンドリングを突き上げて前記ワークを分割する際に、最大拡張率速度が一定時間維持されるように、前記エキスパンドリングを突き上げる、ワーク分割方法。
【請求項2】
前記ワークを分割する際に、拡張規制リングの開口部の内縁部に前記ダイシングテープを当接させる、請求項1に記載のワーク分割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク分割方法に係り、特に、半導体ウェーハ等のワークを分割予定ラインに沿って個々のチップに分割するワーク分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップ(以下、チップと言う。)の製造にあたり、ダイシングブレードによるハーフカット或いはレーザ照射による改質領域形成により予めその内部に分割予定ラインが形成された半導体ウェーハ(以下、ウェーハと言う。)を、分割予定ラインに沿って個々のチップに分割するワーク分割装置が知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
図12は、ワーク分割装置にて分割される円盤状のウェーハ1が貼付されたウェーハユニット2の説明図であり、
図12(A)はウェーハユニット2の斜視図、
図12(B)はウェーハユニット2の縦断面図である。
【0004】
ウェーハ1は、片面に粘着層が形成された厚さ約100μmのダイシングテープ(拡張テープ又は粘着シートとも言う。)3の中央部に貼付され、ダイシングテープ3は、その外周部が剛性のあるリング状フレーム(以下、フレームと言う。)4に固定されている。
【0005】
ワーク分割装置では、ウェーハユニット2のフレーム4が、二点鎖線で示すフレーム固定部材(フレーム固定機構とも言う。)7に当接されて固定される。この後、ウェーハユニット2の下方から二点鎖線で示すエキスパンドリング(突上げリングとも言う。)8が突き上げ(上昇)移動され、このエキスパンドリング8によってダイシングテープ3が突き上げられて放射状に拡張される。このときに生じるダイシングテープ3の張力が、ウェーハ1の分割予定ライン5に付与されることにより、ウェーハ1が個々のチップ6に分割される。分割予定ライン5は、互いに直交するX方向及びY方向に形成されている。分割予定ライン5に関して、X方向と平行な本数とY方向と平行な本数とが同数の場合であって、それぞれの方向の間隔が等しい場合には、分割されたチップ6の形状は正方形となる。また、X方向と平行な本数とY方向と平行な本数とが異なる場合であって、それぞれの方向の間隔が等しい場合には、分割されたチップ6の形状は長方形となる。
【0006】
ところで、ダイシングテープ3はヤング率が低く柔軟な部材である。このため、ウェーハ1を個々のチップ6に円滑に分割するためには、ダイシングテープ3を冷却し、ダイシングテープ3のバネ定数を大きくした状態でダイシングテープ3を拡張することが考えられる。
【0007】
特許文献2のテープ拡張装置(ワーク分割装置)は、冷気供給手段を備えている。特許文献2によれば、冷気供給手段を作動して、処理空間内に冷気を供給し、処理空間内を例えば0℃以下に冷却することにより、ダイシングテープを冷却している。
【0008】
一方、特許文献3のチップ分割離間装置(ワーク分割装置)では、ダイシングテープに異方性があることに着目し、その異方性を加味してダイシングテープを一様にエキスパンドさせるために、フィルム面支持機構を備えている。このフィルム面支持機構は、円周方向において独立した複数の支持機構を備え、複数の支持機構の相対的な高さを個別に制御してダイシングテープの張力を調整することにより、ダイシングテープのX方向の伸びとY方向の伸びを独立して制御している。
【0009】
ここで、本願明細書において、ダイシングテープ3のうち、ウェーハ1が貼付される平面視円形状の領域を中央部領域3Aと称し、中央部領域3Aの外縁部とフレーム4の内縁部4Aとの間に備えられる平面視ドーナツ形状の領域を環状部領域3Bと称し、フレーム4に固定される最外周部分の平面視ドーナツ形状の領域を固定部領域3Cと称する。環状部領域3Bが、エキスパンドリング8に突き上げられて拡張される領域である。
【0010】
なお、ウェーハ1の分割に要する力は、すなわち、ウェーハ1を分割するために環状部領域3Bに発生させなければならない張力は、分割予定ライン5の本数が多くなるに従って高くしなければならないことが知られている。分割予定ライン5の本数について、例えば、直径300mmのウェーハ1でチップサイズが5mmの場合には約120本(XY方向に各60本)の分割予定ライン5が形成され、チップサイズが1mmの場合は約600本の分割予定ライン5が形成される。よって、環状部領域3Bに発生させなければならない張力は、チップサイズが小さくなるに従って高くしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2016-149581号公報
【特許文献2】特開2016-12585号公報
【特許文献3】特許第5912274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、直径300mmのウェーハ1がマウントされるフレーム4の内径(フレームの内縁部の径)は、SEMI規格(G74-0699 300mmウェーハに関するテープフレームのための仕様)により350mmと定められている。この規格により、
図13のウェーハユニット2の縦断面図の如く、ウェーハ1の外縁部とフレーム4の内縁部との間には、25mmの幅寸法を有する環状部領域3Bが存在することになる。また、
図14(A)、(B)で示すワーク分割装置の要部縦断面図の如く、フレーム4を固定するフレーム固定部材7は、エキスパンドリング8によって拡張される環状部領域3Bに接触しないように、矢印Aで示すダイシングテープ3の面内方向において環状部領域3Bから外方に離間した位置に設置されている。
【0013】
このため、エキスパンドリング8の突き上げ動作によって生じるウェーハ1を分割する力は、(i)環状部領域3Bの全領域を拡張する力、(ii)ウェーハ1をチップ6に分割する力、(iii)隣接するチップ6とチップ6との間のダイシングテープ3を拡張する力の3つの力に分解される。
【0014】
図15(A)~(E)に示すワーク分割装置の動作図の如く、ダイシングテープ3の環状部領域3Bにエキスパンドリング8が当接し、エキスパンドリング8の突き上げ動作によってダイシングテープ3の拡張が始まると(
図15(A))、まず最もバネ定数の低い環状部領域3Bの拡張が始まる(
図15(B))。これにより、環状部領域3Bに張力が発生し、この張力がある程度高まると、高まった張力がウェーハ1に伝達されてウェーハ1のチップ6への分割が始まる(
図15(C))。ウェーハ1が個々のチップ6に分割されると、環状部領域3Bの拡張とチップ間のダイシングテープ3の拡張とが同時に進行する(
図15(D)~(E))。
【0015】
従来のワーク分割装置では、直径300mmのウェーハ1において、チップサイズが5mm以上の場合には、環状部領域3Bで発生した張力により、個々のチップ6に問題無く分割することができた。しかしながら、ウェーハ1に形成される回路パターンの微細化に伴いチップサイズがより小さい1mm以下のチップも現れてきた。この場合、ウェーハ1を分割する分割予定ライン5の本数が増大することに起因して、ウェーハ1の分割に要する力が大きくなり、環状部領域3Bの拡張による張力以上の力が必要となる場合があった。そうすると、
図16のウェーハユニット2の縦断面図の如く、エキスパンドリング8による拡張動作が終了しても、ウェーハ1に形成された分割予定ライン5の一部が分割されずに未分割のまま残存するという問題が発生した。
【0016】
このような分割予定ライン5の未分割の問題は、ダイシングテープ3の拡張量や拡張速度を増加させても解消することはできない。例えば、ダイシングテープ3の拡張量を増やした場合には、環状部領域3Bが塑性変形を始めてしまうからである。塑性変形中の環状部領域3Bのバネ定数は、弾性変形中のバネ定数よりも小さいことから、環状部領域3Bの弾性変形を超えた領域では、ウェーハ1を個々のチップ6に分割する張力は発生しない。一方、ダイシングテープ3の拡張速度を増やした場合でも、環状部領域3Bの一部分が塑性変形を始めてしまうので、ウェーハ1を個々のチップ6に分割する張力は発生しない。これはダイシングテープ3の周波数応答が低いため、ダイシングテープ3の全体に時間差なく力が伝達しないからである。
【0017】
分割予定ライン5の未分割の問題を解消するために特許文献2では、ダイシングテープを冷却し、ダイシングテープのバネ定数を大きくすることで対応しているが、近年の1mm以下の小チップに対しては十分な効果を得ることができない。
【0018】
また、特許文献3のチップ分割離間装置は、ダイシングテープのX方向の伸びとY方向の伸びを独立して制御することはできるが、環状部領域3Bの拡張による張力以上の力をウェーハ1に付与することができないので、分割予定ラインの未分割の問題を解消することはできない。
【0019】
本発明はこのような問題に鑑みて成されたものであり、チップサイズが小チップの場合に生じる分割予定ラインの未分割問題を解消することができるワーク分割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のワーク分割方法は、本発明の目的を達成するために、ワークの外径よりも大きい内径を有するリング状フレームにダイシングテープの外周部が固定され、ダイシングテープに貼付されたワークを分割予定ラインに沿って個々のチップに分割するワーク分割方法であって、リング状フレームの内径よりも小さく、かつワークの外径よりも大きい開口部を有するリング状に形成されたエキスパンドリングを用いて、ダイシングテープにおけるワークの貼付面と反対側の裏面を貼付面側に突き上げるワーク分割方法において、リング状フレームの内径よりも小さく、かつエキスパンドリングの外径よりも大きい開口部を有するリング状に形成された拡張規制リングであって、開口部の径が異なる複数の拡張保持リングの中から選択した一つの拡張規制リングを、ダイシングテープにおけるワークの貼付面と同一側に配置する配置工程と、ダイシングテープに対するエキスパンドリングの突き上げ量と突き上げ速度を設定する拡張分割条件設定工程と、拡張分割条件設定工程によって設定された突き上げ量及び突き上げ速度で、ダイシングテープの裏面をエキスパンドリングによって突き上げてダイシングテープの拡張を開始し、ダイシングテープの拡張の際にダイシングテープを拡張規制リングに当接させてワークを個々のチップに分割する拡張分割工程と、を備え、拡張分割条件設定工程は、開口部の径が異なる複数の拡張規制リング毎に対応した拡張終了後のダイシングテープの目標拡張率に基づいて突き上げ量を設定する。
【0021】
本発明の一態様は、拡張分割条件設定工程は、拡張規制リングの開口部の径が小さくなるに従って突き上げ量を小さく設定することが好ましい。
【0022】
本発明の一態様は、ダイシングテープの拡張率の単位時間当たりの上昇率を拡張率速度とした場合、拡張分割条件設定工程は、最大拡張率速度が拡張分割工程において一定時間維持されるように、突き上げ速度を設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、チップサイズが小チップの場合に生じる分割予定ラインの未分割問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図4】拡張途中の環状部領域の形状を示したウェーハユニットの断面図
【
図5】ウェーハ分割方法の一例を示したフローチャート
【
図6】ウェーハ分割方法の他の一例を示したフローチャート
【
図7】突き上げ量に対する拡張率の変化を算出したグラフ
【
図9】突き上げ速度に対する拡張率速度の変化を算出したグラフ
【
図10】突き上げ速度に対する拡張率速度の変化を算出したグラフ
【
図11】拡張分割条件設定工程を備えたワーク分割方法のフローチャート
【
図12】ウェーハが貼付されたウェーハユニットの説明図
【
図16】ウェーハが分割されたウェーハユニットの縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に従って本発明に係るワーク分割方法の好ましい実施形態について詳説する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲であれば、以下の実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0026】
図1は、ワーク分割装置10に備えられた分割ステージの要部縦断面図であり、
図2は、分割ステージの要部拡大斜視図である。なお、ワーク分割装置10によって分割処理されるウェーハユニットのサイズは限定されるものではないが、実施形態では、
図13に示した直径300mmのウェーハ1がマウントされたウェーハユニット2を例示する。
【0027】
ワーク分割装置10は、ウェーハ1を分割予定ライン5に沿って個々のチップ6に分割する装置である。分割予定ライン5は、互いに直交するX方向及びY方向に複数本形成される。実施形態では、X方向と平行な分割予定ライン5の本数と、Y方向と平行な分割予定ライン5の本数とがそれぞれ300本でそれぞれの間隔が等しいウェーハ1、すなわち、チップサイズが1mmのチップ6に分割されるウェーハ1を例示する。
【0028】
ウェーハ1は
図1、
図2の如く、フレーム4に外周部が固定されたダイシングテープ3の中央部に貼付される。ダイシングテープ3は、ウェーハ1が貼付される平面視円形状の中央部領域3A、及び中央部領域3Aの外縁部とフレーム4の内縁部との間の平面視ドーナツ形状の環状部領域3Bを有する。
【0029】
ウェーハ1の厚さは、例えば50μm程度である。また、ダイシングテープ3としては、例えばPVC(polyvinyl chloride:ポリ塩化ビニール)系のテープが使用される。なお、ウェーハ1をDAF(Die Attach Film)等のフィルム状接着材を介してダイシングテープ3に貼付してもよい。フィルム状接着材としては、例えばPO(polyolefin:ポリオレフィン)系のものを使用することができる。
【0030】
ワーク分割装置10は、フレーム4を固定するフレーム固定部材7(
図14参照:既存のフレーム固定部材)と、ダイシングテープ3の拡張の際にダイシングテープ3が当接される拡張規制リング16と、ダイシングテープ3の環状部領域3Bに下方側から当接されるエキスパンドリング14と、を備える。
【0031】
拡張規制リング16は、フレーム固定部材7とは別体で構成され、フレーム固定部材7の下面7Aに着脱自在に固定される。下面7Aに対する拡張規制リング16の着脱構造は、特に限定されるものでないが、一例としてボルトを使用した締結構造でもよく、クランプ機構によるクランプ構造でもよい。
【0032】
フレーム固定部材7は、ダイシングテープ3におけるウェーハ1の貼付面と同一側に配置され、その下面7Aにフレーム4が拡張規制リング16を介して固定される。これにより、拡張規制リング16は、フレーム4とフレーム固定部材7との間に保持される。
【0033】
また、フレーム固定部材7は、エキスパンドリング14によって拡張される環状部領域3Bに接触しないように、矢印Aで示すダイシングテープ3の面内方向において環状部領域3Bから外方に離間した位置に設置されている。
図2の如く、フレーム固定部材7の形状は、一例として直径が361mmの開口部7Bを有するリング状であるが、その形状は特に限定されるものではなく、拡張規制リング16が着脱自在に固定可能な形状であればよい。フレーム固定部材7としては、例えば、開口部7Bを有する矩形状の板状材を例示することもでき、フレーム4の外周に沿って所定の間隔で配置された複数の固定部材からなるフレーム固定部材を例示することもできる。これらの固定部材の内接円が、開口部7Bの直径と等しく設定される。
【0034】
エキスパンドリング14は、ダイシングテープ3におけるウェーハ1の貼付面と反対側の裏面側に配置され、フレーム4の内径(350mm)よりも小さく、かつウェーハ1の外径(300mm)よりも大きい拡張用の開口部14Aを有するリング状に形成される。エキスパンドリング14は、ダイシングテープ3の環状部領域3Bの裏面を貼付面側に突き上げて環状部領域3Bを拡張する。すなわち、エキスパンドリング14は、環状部領域3Bに対してダイシングテープ3の矢印Aで示す面内方向と直交するB方向に突き上げ移動される。これによって、環状部領域3Bがエキスパンドリング14に突き上げられて放射状に拡張される。なお、エキスパンドリング14を固定して、ウェーハユニット2を矢印C方向に下降移動させることにより、環状部領域3Bをエキスパンドリング14によって拡張してもよい。環状部領域3Bは、エキスパンドリング14による拡張の際に、拡張規制リング16に当接される。
【0035】
拡張規制リング16は、ダイシングテープ3におけるウェーハ1の貼付面と同一側に配置され、フレーム4の内径(350mm)よりも小さく、かつエキスパンドリング14の外径よりも大きい拡張規制用の開口部16Aを有するリング状に形成される。
【0036】
実施形態では、拡張規制リング16をフレーム固定部材7の下面7Aに着脱自在に設け、フレーム4とフレーム固定部材7との間に保持させた形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、
図3(A)に示す第1変形例の拡張規制リング17Aの如く、フレーム固定部材7の上面7Cに着脱自在に固定される形態であってもよい。更に、
図3(B)に示す第2変形例の拡張規制リング17Bの如く、フレーム固定部材7の開口部7Bの内周部に着脱自在に固定される形態であってもよい。更に、フレーム固定部材7に対して離間した位置でワーク分割装置10の他の構成部材(不図示)に着脱自在に固定される形態であってもよい。
【0037】
図4は、エキスパンドリング14によって拡張途中の環状部領域3Bの形状を示したウェーハユニット2の縦断面図である。
【0038】
図4に示すように、エキスパンドリング14による環状部領域3Bの拡張の際に、環状部領域3Bが拡張規制リング16に当接される。具体的には、開口部16Aの内縁部16Bに環状部領域3Bが当接される。
【0039】
実施形態では、
図1の如く、開口部16Aの径が338mmに設定されている。これにより、拡張規制リング16によって拡張が規制される外周側領域3Eの幅寸法が6mmに設定され、環状部領域3Bのうち外周側領域3Eを除く内周側領域3Fの幅寸法が19mmに設定される。
【0040】
ここで、環状部領域3Bのうち拡張規制リング16によって拡張が規制されない内周側領域3Fが、ウェーハ1の分割に実質的に寄与する領域となる。すなわち、内周側領域3Fの幅寸法を小さくするに従って、内周側領域3Fのバネ定数が大きくなるので、内周側領域3Fからウェーハ1に付与する張力を増大することができる。よって、内周側領域3Fの幅寸法は、分割予定ライン5の本数に応じて設定することが好ましい。
【0041】
以下、
図5のフローチャートに従って、ワーク分割装置10によるワーク分割方法の一例を説明する。このワーク分割方法は、固定工程と、配置工程と、拡張分割工程とを有する。また、拡張分割工程は、拡張開始工程と、拡張規制工程と、分割工程とからなる。
【0042】
まず、
図5のステップS100において、
図1の如く、ウェーハユニット2のフレーム4を、拡張規制リング16を介してフレーム固定部材7に固定する(固定工程、配置工程)。このとき、拡張規制リング16がフレーム固定部材7に対して離間して配置された場合には、拡張規制リング16の配置工程と、フレーム固定部材7による固定工程とを独立して行う。
【0043】
次に、
図5のステップS110において、エキスパンドリング14を
図1の位置から矢印B方向に突き上げ移動させ、環状部領域3Bの全領域の拡張を開始する(拡張開始工程)。
【0044】
次に、
図5のステップS120において、エキスパンドリング14の突き上げ移動量が、フレーム4の厚さを超えると、環状部領域3Bが拡張規制リング16に当接する。このとき、
図4の如く環状部領域3Bは、拡張規制リング16の内縁部16Bに当接した当接部3Dを境界として、外周側に位置する外周側領域3Eと、内周側に位置する内周側領域3Fとに分けられる。そして、環状部領域3Bのうち、外周側領域3Eの拡張が拡張規制リング16によって規制される(拡張規制工程)。
【0045】
次に、
図5のステップS130において、エキスパンドリング14の突き上げ移動を続行し、環状部領域3Bのうち、外周側領域3Eの拡張を規制しながら、外周側領域3Eを除く内周側領域3Fの拡張を継続して行うことにより、ウェーハ1を個々のチップ6に分割する(分割工程)。この後、エキスパンドリング14の突き上げ移動を停止する。
【0046】
分割工程(S130)において、環状部領域3Bが拡張規制リング16の内縁部16Bに当接した以降のエキスパンドリング14による拡張動作では、外周側領域3Eの拡張が拡張規制リング16によって規制され、内周側領域3Fのみが拡張されていく。つまり、環状部領域3Bのバネ定数よりも大きくなった内周側領域3Fのバネ定数の張力がウェーハ1に付与される。
【0047】
具体的に説明すると、ウェーハ1の分割に寄与する環状部領域3Bの長さが25mm(環状部領域3Bの幅寸法)から19mm(内周側領域3Fの幅寸法)に短くなるので、バネ定数はそれに反比例して増大する。これにより、内周側領域3Fのみを拡張しても、内周側領域3Fのバネ定数は環状部領域3Bのバネ定数よりも大きいので、チップサイズが小チップ(1mm)であっても個々のチップ6に分割するだけの張力をウェーハ1に付与することができる。よって、ワーク分割装置10によれば、チップサイズが小チップ(1mm)の場合に生じる分割予定ラインの未分割問題を解消することができる。
【0048】
なお、環状部領域3Bの粘着層に線接触される拡張規制リング16の内縁部16Bには、一例として算術平均粗さ(Ra)が1.6(μm)となる表面加工が施されている。これにより、内縁部16Bと環状部領域3Bとの間の摩擦力によって、内縁部16Bと環状部領域3Bとが相対的に滑ることを防止することができる。また、内縁部16Bには、一例としてC0.2の面取り加工が行われている。これにより、環状部領域3Bから拡張力を受けた際に、その反力で環状部領域3Bが破れることを防止することができる。
【0049】
一方、ワーク分割装置10は、フレーム固定部材7に対して拡張規制リング16が着脱自在であるため、以下のワーク分割方法を特に採用することができる。
【0050】
図6は、ワーク分割方法の他の一例を示すフローチャートである。
【0051】
図6に示すワーク分割方法は、分割処理するウェーハ1に形成された分割予定ライン5の本数に基づいて、拡張規制リング16を使用するか否かを判断し、ウェーハ1を個々のチップ6に分割する方法である。
【0052】
まず、
図6のステップS200において、ウェーハ1に形成された分割予定ライン5の本数が規定数よりも多い場合には、つまり、ウェーハ1を分割する際に環状部領域3Bの拡張による張力以上の力を必要とする場合には、前述の如く、拡張規制リング16をフレーム固定部材7に取り付ける。そして、
図5に示したステップS100の固定工程、ステップS110の拡張工程、ステップS120の拡張規制工程、及びステップS130の分割工程を経ることにより、ウェーハ1を個々のチップ6に分割する。これにより、分割予定ラインの未分割問題を解消することができる。
【0053】
一方、
図6のステップS200において、ウェーハ1に形成された分割予定ライン5の本数が規定数よりも少ない場合には、つまり、環状部領域3Bの拡張による張力でウェーハ1を分割可能な場合には、ステップS210において、拡張規制リング16をフレーム固定部材7から取り外す(拡張規制リング取り外し工程)。
【0054】
次に、ステップS220において、フレーム固定部材7によってフレーム4を固定する(固定工程)。
【0055】
次に、ステップS230において、エキスパンドリング14によって環状部領域3Bを拡張し、環状部領域3Bの張力でウェーハ1を個々のチップ6に分割する(拡張分割工程)。
【0056】
分割予定ライン5の本数が規定数よりも少なく、拡張規制リング16を用いることなく分割可能なウェーハ1を、拡張規制リング16を用いて分割しようとすると、内周側領域3Fの高まった張力で分割予定ライン5が分割される他、チップ6自体も破損する虞がある。具体的には、直径300mmのウェーハ1において、分割予定ライン5の本数が60本でチップサイズが10mmのチップ6に分割するウェーハ1では、チップ6自体が破損する虞がある。よって、分割予定ライン5の本数が規定数よりも少なく、拡張規制リング16を用いることなく分割できるウェーハ1の場合には、拡張規制リング16をフレーム固定部材7から取り外してウェーハ1を個々のチップ6に分割することが好ましい。
【0057】
なお、分割予定ライン5の規定数とは、ウェーハ1を個々のチップ6に分割するに際し、環状部領域3Bの拡張による張力以上の力が必要となる本数である。一例として、
図13に示した直径300mmのウェーハ1の場合には、その規定数が600本に設定されている。
【0058】
また、ワーク分割装置10では、開口部16Aの径が異なる複数の拡張規制リング16が揃えられおり、その中から選択した一つの拡張規制リング16が使用される。これにより、開口部16Aの径が変更可能となって、内周側領域3Fの幅寸法を変更することができるので、内周側領域3Fからウェーハ1に付与する張力を変更することができる。ウェーハ1には、分割予定ライン5の本数が異なる複数のものが存在するので、それらのウェーハ1の分割予定ライン5の本数に対応した、開口部16Aの径の異なる複数の拡張規制リング16を揃えておく。これにより、ウェーハ1の分割予定ライン5の本数に対応する一つの拡張規制リング16を、複数の拡張規制リング16の中から選択して使用することができる。開口部16Aの径としては、338mmの他、例えば346mm、342mm、334mmを例示することができる。
【0059】
これらの拡張規制リング16は、ワーク分割装置10に設けられたリング格納部(不図示)に予め格納しておくことが好ましい。リング格納部に格納された複数の拡張規制リング16のうち選択した一つの拡張規制リング16を、リング格納部から手作業にて取り出し、フレーム固定部材7に固定してもよく、リング格納部から搬送装置によって搬出し、ワーク分割装置10の分割ステージまで搬送してよい。また、リング格納部からの拡張規制リング16の搬出作業、拡張規制リング16の分割ステージまでの搬送作業、及び分割ステージにて拡張規制リング16をフレーム固定部材7に対する固定作業を自動化してもよい。
【0060】
また、フレーム固定部材7に対して拡張規制リング16が着脱可能なので、拡張規制リング16を備えていない既存(出荷済み)のワーク分割装置に拡張規制リング16を後付けすることができる。また、ウェーハ1の分割予定ライン5の本数に対応した拡張規制リング16を、既存のワーク分割装置に後付けすることもできる。これにより、既存のワーク分割装置を使用して、大きなチップから小さなチップまで処理することが可能となる。また、チップサイズが大チップの場合には、つまり、分割予定ライン5の本数が規定数よりも少ない場合には、拡張規制リング16を既存のワーク分割装置から取り外すことができる。
【0061】
ところで、
図5に示したS110~S130の拡張分割工程では、ウェーハ1を個々のチップ6に分割するために、フレーム4とエキスパンドリング14との相対位置(突き上げ量)及び相対速度(突き上げ速度)等の拡張分割条件を設定して分割処理を行う。
【0062】
開口部16Aの径が異なる複数の拡張規制リング16のうち一つの拡張規制リング16を選択使用するダイシング装置10の場合、突き上げ量と突き上げ速度を一定に設定して分割処理を行うと、以下の不具合が生じる。このため、拡張規制リング16毎に拡張分割条件を設定する必要がある。
【0063】
突き上げ量を一定に設定した場合には、ダイシングテープ3の拡張終了後の拡張率が、選択した拡張規制リング16によって異なってしまう。
【0064】
ここで、ダイシングテープ3の拡張率を以下に定義する。
【0065】
〔拡張率E(%)〕
拡張率Eはフレーム4にダイシングテープ3のみが貼り付けられている状態での エキスパンド工程におけるテープ径の伸び率を表す。また、ダイシングテープ3の伸びは拡張が規制されない限り、均一であると考える。例えば、350mmの距離が380mmに伸びたとすると、その拡張率Eは、
{(380/350)-1}×100=8.6%となる。
【0066】
図1及び
図4において拡張率Eは以下のように定義される。以下、3Aとは中央部領域3Aを指し、3Bとは環状部領域3Bを指す。
【0067】
(i)ダイシングテープ3が拡張規制リング16に接触する前、あるいは拡張規制リング16が無い場合の拡張率E。
【0068】
拡張率E={(拡張後の3B+3A+3B)/(拡張前の3B+3A+3B)-1}×100
本実施形態のフレーム4の場合、拡張前の3B+3A+3Bは350mmである。 この数式でダイシングテープ3が拡張規制リング16に接触した際の拡張率をEcとする。
【0069】
(ii)ダイシングテープ3が拡張規制リング16に接触した後の場合の拡張率E。
【0070】
拡張率E=[(1+Ec/100)×{(拡張後の3F+3A+3F)/(規制リング接触時の3F+3A+3F)}-1]×100
これは拡張規制リング16に接触した時を境にして拡張される領域が3B+3A+3Bから3F+3A+3Fに変化するためである。
【0071】
図7のグラフは、エキスパンドリング14の突き上げ量を一定に設定した場合に、選択した拡張規制リング16によってダイシングテープ3の拡張率が異なることを示している。
【0072】
図7のグラフは、縦軸が拡張率(%)を示し、横軸が突き上げ量(mm)を示し、突き上げ量(mm)に対する拡張率(%)の変化が線A、B、Cに示されている。線Aは、拡張規制リング16を使用しない場合(開口部16Aの径が350mmに相当)のダイシングテープ3の拡張率(%)の変化を示し、線Bは、開口部16Aの径が342mmの拡張規制リング16を使用した場合のダイシングテープ3の拡張率(%)の変化を示し、線Cは、開口部16Aの径が338mmの拡張規制リング16を使用した場合のダイシングテープ3の拡張率(%)の変化を示している。
【0073】
図8は、拡張分割工程時の動作を示した概略図であり、
図8には線A、B、Cの拡張率(%)を算出するための各部材の寸法が示されている。
図8によれば、フレーム4の内径D1が350mm、フレーム4の厚さtが1.5mm、拡張規制リング16の開口部16Aの径D2が342mm又は338mmであることが示されている。また、
図8のxはエキスパンドリング14の突き上げ量(mm)を示している。更に、エキスパンドリング14の上端には、ダイシングテープ3との摩擦力を低減するローラ32が配置され、ローラ32の配置径D3が323.2mmであることが示されている。拡張率(%)の算出に当たっては通常の三角関数等の公式を使用した。また、線Aの拡張率(%)は、ローラ32の直径dを5mmとして算出し、線B、Cの拡張率(%)は、ローラ32の直径dを7mmとして算出した。
【0074】
まず、ウェーハ1を個々のチップ6に円滑に分割するための拡張終了後の目標拡張率を設定する。本実施形態では、その目標拡張率を6.6%に設定した。なお、この目標拡張率は一例であり、6.6%に限定されるものではない。
【0075】
図7の如く、目標拡張率を6.6%に設定した場合、線Aで示す拡張規制リング16を使用しない形態では、20.0mmの突き上げ量xを必要とする。これに対し、線Bで示す拡張規制リング16を使用する形態では、エキスパンドリング14を20mm突き上げると、その時の拡張率は7.3%となる。また、線Cで示す拡張規制リング16を使用する形態では、エキスパンドリング14を20mm突き上げると、その時の拡張率は8.2%となる。つまり、拡張規制リング16を使用した場合には、拡張規制リング16を使用しない場合と比較して、拡張率が大きくなり目標拡張率を超えてしまう。これにより、ダイシングテープ3の拡張過多に起因して、分割したチップ6がダイシングテープ3から剥離すると言う問題が発生する場合がある。よって、開口部16Aの径に応じて突き上げ量xを変更する必要がある。
【0076】
そこで、本実施形態のワーク分割方法では、開口部16Aの径に関わらずエキスパンドリング14の突き上げ量xを一定に設定するのではなく、開口部16Aの径が異なる拡張規制リング16毎に突き上げ量xを設定する。具体的には、線Bで示す拡張規制リング16を使用する形態では、突き上げ量xを18.7mmに設定し、拡張終了後の拡張率を目標拡張率(6.6%)と等しくする。同様に、線Cで示す拡張規制リング16を使用する形態では、突き上げ量xを17.3mmに設定し、拡張終了後の拡張率を目標拡張率(6.6%)と等しくする。
【0077】
以上の如く、本実施形態のワーク分割方法は、ウェーハ1を個々のチップ6に円滑に分割するための拡張終了後の目標拡張率に基づいて、開口部16Aの径が異なる拡張規制リング16毎に突き上げ量xを設定する。すなわち、拡張規制リング16の開口部16Aの径が小さくなるに従って突き上げ量xを小さく設定する。これにより、本実施形態のワーク分割方法によれば、開口部16Aの径が異なる拡張規制リング16を使用しても、全てのチップ6を円滑に分割することができる。よって、分割したチップ6がダイシングテープ3から剥離すると言う問題を解消することができる。
【0078】
一方、エキスパンドリング14の突き上げ速度が一定の場合、突き上げ速度が減速を開始する直前でダイシングテープ3の拡張率速度が最大(最大拡張率速度)となる。ここで、ダイシングテープ3の拡張率速度を以下に定義する。
【0079】
〔拡張率速度(%/sec)〕
拡張率速度=拡張率の単位時間当たりの上昇率
図9のグラフは、左縦軸が拡張率速度(%/sec)を示し、右縦軸が突き上げ速度(mm/sec)を示し、横軸が突き上げ量x(mm)を示し、エキスパンドリング14の突き上げ速度(mm/sec)に対する拡張率速度(%/sec)の変化が示されている。すなわち、
図9の線Dが、エキスパンドリング14の突き上げ速度(%/sec)を示し、線Eが拡張率速度(%/sec)を示している。
【0080】
図9の如く、突き上げ速度(200mm/sec)が一定の場合には、突き上げ量xに応じて最大拡張率速度は上昇していく。そして、F点で示す最大拡張率速度(113(%/sec))に到達すると、突き上げ速度が減速を開始するので、拡張率速度が下降していく。よって、突き上げ速度が一定の場合には、最大拡張率速度に到達するのはF点での一瞬であり、この最大拡張率速度に到達した時点で、ダイシングテープ3の張力が最大となる。拡張分割工程では、最大拡張率速度を一定時間維持した状態、つまり、ダイシングテープ3の最大張力を一定時間維持した状態で分割処理を行うことが望ましいが、
図9の如く、突き上げ速度が一定の場合には、F点での一瞬でしか最大拡張率速度を得ることができない。これにより、ダイシングテープ3の最大張力をウェーハ1に有効に伝達することができず、分割予定ラインの一部が分割されない場合がある。
【0081】
そこで、本実施形態のワーク分割方法では、
図10のグラフの如く、最大拡張率速度(113(%/sec))が拡張分割工程において一定時間維持されるように、突き上げ速度を設定する。
【0082】
図10のグラフは、
図9のグラフと同様に、左縦軸が拡張率速度(%/sec)を示し、右縦軸が突き上げ速度(mm/sec)を示し、横軸が突き上げ量(mm)を示し、エキスパンドリング14の突き上げ速度(mm/sec)に対する拡張率速度(%/sec)の変化が示されている。すなわち、
図10の線Gが、エキスパンドリング14の突き上げ速度(mm/sec)を示し、線Hが拡張率速度(%/sec)を示している。
【0083】
図10の線Gの如く、エキスパンドリング14の突き上げ速度を、突き上げ開始から突き上げ量5.0mmまで等速(400mm/sec)に設定する。そして、突き上げ量5.0mmから突き上げ量18.0mmまでの区間において、突き上げ速度を400mm/secから200mm/secに二次曲線状に減速する。
【0084】
これにより、本実施形態のワーク分割方法では、
図10の線Hで示すように最大拡張率速度(113(%/sec))を、突き上げ量6.0mmから18.0mmまでの区間で安定して得ることができる。よって、本実施形態のワーク分割方法によれば、ダイシングテープ3の最大張力をウェーハ1に有効に伝達することができるので、分割予定ラインの一部が分割されないと言う問題を解消することができる。
【0085】
なお、
図10のグラフは、突き上げ量xを20.0mmに設定した場合の突き上げ速度の一例が示されているが、突き上げ量xを18.7mmに設定した場合(開口部16Aの径が342mmの拡張規制リング16を使用した場合)、又は突き上げ量xを17.3mmに設定した場合(開口部16Aの径が338mmの拡張規制リング16を使用した場合)においても、最大拡張率速度が拡張分割工程において一定時間維持されるように、突き上げ速度を設定することが好ましい。
【0086】
すなわち、本実施形態のワーク分割方法によれば、開口部16Aの径が異なる拡張規制リング16毎の最大拡張率速度が、拡張分割工程において一定時間維持されるように、突き上げ速度を設定することが好ましい。
【0087】
図11は、
図5に示したワーク分割方法の工程に、拡張分割条件設定工程(S105)を備えたワーク分割方法のフローチャートである。
【0088】
図11の如く、本実施形態のワーク分割方法は、固定工程・配置工程(S100)と拡張開始工程(S110)との間に、拡張分割条件設定工程(S105)を備えている。この拡張分割条件設定工程(S105)では、開口部16Aの径が異なる複数の拡張規制リング16毎に対応した拡張終了後の拡張率に基づいて突き上げ量xを設定するので、開口部16Aの径が異なる拡張規制リング16を使用しても、全てのチップ6を円滑に分割することができる。これにより、分割したチップ6がダイシングテープ3から剥離すると言う問題を解消することができる。
【0089】
また、拡張分割条件設定工程(S105)では、最大拡張率速度が拡張分割工程において一定時間維持されるように、突き上げ速度を設定するので、分割予定ラインの一部が分割されないと言う問題を解消することができる。
【0090】
なお、本実施形態のワーク分割方法によっても、チップサイズが小チップの場合に生じる分割予定ラインの未分割問題を解消することができることは当然である。
【符号の説明】
【0091】
1…ウェーハ、2…ウェーハユニット、3…ダイシングテープ、3A…中央部領域、3B…環状部領域、3C…固定部領域、3D…当接部、3E…外周側領域、3F…内周側領域、3FA…内周側領域、3FB…内周側領域、4…フレーム、5…分割予定ライン、6…チップ、7…フレーム固定部材、8…エキスパンドリング、10…ワーク分割装置、14…エキスパンドリング、14A…開口部、16…拡張規制リング、16A…開口部、16B…内縁部、17A、17B、17C…拡張規制リング、20…拡張規制リング、20A…開口部、22…ウェーハ、24…チップ、26…拡張規制リング、26A…開口部、28…ウェーハ、30…チップ、32…ローラ