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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180110
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/369 20110101AFI20221129BHJP
   H04N 5/347 20110101ALI20221129BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221129BHJP
   G02B 7/34 20210101ALI20221129BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20221129BHJP
【FI】
H04N5/369 600
H04N5/347
H04N5/225 300
G02B7/34
G03B13/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087031
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】喜多 祐起
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 敏之
【テーマコード(参考)】
2H011
2H151
5C024
5C122
【Fターム(参考)】
2H011BA23
2H011BB04
2H151BA14
2H151BA17
2H151CB02
2H151CB09
2H151CB21
5C024CY17
5C024EX12
5C024EX34
5C024EX43
5C024EX52
5C024GY39
5C024GY41
5C024GZ24
5C122EA01
5C122FB05
5C122FC06
5C122FD07
5C122HA88
(57)【要約】
【課題】像面位相差焦点検出の低照度下での検出精度を向上させる。
【解決手段】撮像装置は、第1方向を検出方向とし、第1方向と交差する第2方向の異なる位置にそれぞれ配置された、設計瞳距離がそれぞれ異なる複数の像面位相差検出部を含む合焦状態検出部を有する撮像素子と、合焦状態検出部に含まれる複数の像面位相差検出部が検出した複数の検出信号のうちの少なくとも2つを加算して加算信号を生成する加算部と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向を検出方向とし、前記第1方向と交差する第2方向の異なる位置にそれぞれ配置された、設計瞳距離がそれぞれ異なる複数の像面位相差検出部を含む合焦状態検出部を有する撮像素子と、
前記合焦状態検出部に含まれる複数の前記像面位相差検出部が検出した複数の検出信号のうちの少なくとも2つを加算して加算信号を生成する加算部と、
を備える撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記像面位相差検出部は、
撮像光学系の射出瞳の前記第1方向の一方の側を通った光を、前記射出瞳の前記一方の側とは反対側の他方の側を通った光よりも多く検出する第1受光部が前記第1方向に複数配置された第1検出部と、
前記射出瞳の前記第1方向の前記他方の側を通った光を、前記射出瞳の前記一方の側を通った光よりも多く検出する第2受光部が前記第1方向に複数配置された第2検出部と、
を含む、撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置において、
前記加算部は、
複数の前記像面位相差検出部に含まれる前記第1検出部からの複数の検出信号のうちの少なくとも2つを加算し、
複数の前記像面位相差検出部に含まれる前記第2検出部からの複数の検出信号のうちの少なくとも2つを加算する、
撮像装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の撮像装置において、
前記第2検出部は、前記第1検出部に対し前記第2方向に第1距離だけ離れて配置され、
複数の前記像面位相差検出部のそれぞれは、前記第2方向に、前記第1距離よりも長い第2距離だけ離れて複数配置されている、
撮像装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記加算部は、前記撮像素子に入射する光の量が少なく前記撮像素子が出力する撮像信号の強度が小さいときには、前記撮像信号の強度が大きいときに比べて多くの前記検出信号を加算する、撮像装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記加算部は、撮像光学系の絞り値が小さいときには、前記撮像光学系の絞り値が大きいときに比べて多くの前記検出信号を加算する、撮像装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、前記合焦状態検出部を複数有するとともに、
前記加算部は、前記合焦状態検出部の前記第1方向の位置が前記撮像素子の中心に近いときには、前記合焦状態検出部の前記第1方向の位置が前記撮像素子の中心から遠いとき比べて多くの前記検出信号を加算する、撮像装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、前記合焦状態検出部を複数有するとともに、
前記加算部は、複数の前記合焦状態検出部のうちの選択された前記合焦状態検出部の前記第1方向の位置が前記撮像素子の中心に近いときには、選択された前記合焦状態検出部の前記第1方向の位置が前記撮像素子の中心から遠いとき比べて、複数の前記合焦状態検出部において前記像面位相差検出部からの前記検出信号を多く加算する、撮像装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記加算部は、撮像光学系の射出瞳距離に応じて、加算する前記複数の検出信号を選択する、撮像装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記加算部は、前記撮像素子の有効撮像領域の大きさに応じて、加算する前記検出信号の数を変更する、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影光学系の射出瞳の一部の領域を通過した光束を受光する焦点検出画素を備える撮像素子が知られている(例えば特許文献1)。従来から、焦点検出の精度向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-66051号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、撮像装置は、第1方向を検出方向とし、前記第1方向と交差する第2方向の異なる位置にそれぞれ配置された、設計瞳距離DPDがそれぞれ異なる複数の像面位相差検出部を含む合焦状態検出部を有する撮像素子と、前記合焦状態検出部に含まれる複数の前記像面位相差検出部が検出した複数の検出信号のうちの少なくとも2つを加算して加算信号を生成する加算部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】実施形態の撮像装置の構成を模式的に示す断面図。
図2】撮像光学系から像面位相差検出部に入射する光線束の一例を示す図。
図3】実施形態の撮像素子を撮像面側から見た平面図。
図4】画素に含まれる電気回路を示す図。
図5】像面位相差検出部の拡大図。
図6】射出瞳を通過した光線束が、像面位相差検出部に入射する状態を示す図。
図7】合焦状態検出部における像面位相差検出部の配置例を示す図。
図8】撮像素子上の合焦状態検出部の位置のいくつかの例を示す図。
図9】合焦状態検出部における像面位相差検出部の配置の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の撮像装置1と、撮像装置1に取り付けて使用する撮像光学系2との構成を模式的に示す断面図である。
【0007】
図1に矢印で示したX方向、Y方向およびZ方向は、相互に直交する方向である。なお、以降の各図に示したX方向、Y方向およびZ方向は、それぞれ図1に示したX方向、Y方向およびZ方向と同一の方向を示している。矢印の向きの方向が、ぞれぞれ+X方向、+Y方向および+Z方向である。
以下では、X方向における位置をX位置と、Y方向における位置をY位置と、Z方向における位置をZ位置ともいう。
【0008】
図1は、撮像装置1と撮像光学系2とを+X方向から見た断面図である。
撮像装置1は、撮像素子3、撮像制御部4、レンズ駆動部6、表示部7、操作部8、および第1通信部9を備える。
撮像光学系2は、撮像素子3の撮像面3sに被写体像を結像させる。撮像光学系2は、開口22を有する絞り21と、絞り21よりも被写体側に配置されている前群レンズ20a、絞り21よりも撮像素子3側に配置されている後群レンズ20b、および第2通信部23を含む。前群レンズ20a、および後群レンズ20bは、いずれも複数のレンズから構成されていても良い。
【0009】
また、絞り21は光彩絞りであっても良く、所定の直径の開口部を有する遮光部材であっても良く、所定のレンズの有効径自体によって、撮像光学系2を通過する光線束の有効径を制限するものであっても良い。前群レンズ20aまたは後群レンズ20bのうちの一方は、配置されていなくても良い。
【0010】
前群レンズ20aまたは後群レンズ20b、あるいはそれらを構成する複数のレンズの中の少なくとも1枚のレンズは、撮像光学系2の焦点調節を行うために光軸AX方向(Z方向)に移動可能な焦点調節用レンズであっても良い。
また、前群レンズ20aまたは前群レンズ20a、あるいはそれらを構成する複数のレンズの中の少なくとも1枚のレンズは、撮像光学系2の焦点距離を変更するために光軸AX方向(Z方向)に移動可能な変倍(ズーム)用レンズであっても良い。
【0011】
撮像光学系2の焦点距離、絞り値(F値)、光軸AX方向に可動なレンズの現在の位置情報のうちの少なくとも一部は、撮像光学系2の第2通信部23から撮像装置1の第1通信部9に伝達され、さらに撮像制御部4に伝達される。
【0012】
撮像素子3は、被写体像を撮像して信号を出力する。撮像制御部4は、撮像素子3等の各部を制御する。撮像制御部4は、撮像素子3により出力された画像信号に画像処理等を施して画像データを生成する。撮像制御部4は、不図示の記録媒体に画像データを記録し、表示部7に画像データに基づく画像を表示する等の処理を行う。表示部7は、例えば液晶パネル等の表示部材を有する表示装置である。
【0013】
撮像制御部4は、さらに、公知の像面位相差検出方式により撮像光学系2の自動焦点調節(AF)に必要な焦点検出処理を行う。具体的には、撮像制御部4は、後述するように撮像素子3から出力される少なくとも一対の焦点検出信号から、それらの焦点検出信号の間の位相のずれ量である位相差を検出する。
【0014】
撮像制御部4は、検出した位相差に基づいて、撮像光学系2の被写体の結像位置と撮像素子3の撮像面3sとのずれ量(デフォーカス量)を算出する。そして、デフォーカス量に応じて、撮像光学系2の中の上述した焦点調節用レンズの合焦のための光軸AX方向への駆動量を算出する。この駆動量に応じた信号が、レンズ駆動部6から第1通信部9および第2通信部23を経て撮像光学系2内の不図示のアクチュエータに送られ、焦点調節用レンズが光軸AX方向に移動されることにより、焦点調節が自動で行われる。
【0015】
図2は、撮像装置1と撮像光学系2とを-Y方向から見た断面図であり、撮像光学系2を通り、撮像素子3上の1つの合焦状態検出部FAに入射する光線束LRBの一例を示す図である。
【0016】
図2に示した光線束LRBは、前群レンズ20aにより屈折された後、絞り21により、その径を制限される。光線束LRBは、開口22を通過した後、後群レンズ20bにより再度屈折され、撮像素子3の合焦状態検出部FAの近傍の像側焦点FPに入射する。ここで、撮像素子3の入射側面(+Z側面)は、光線束LRBの集光点、すなわち、撮像光学系2の像側焦点FPと概ね一致するように配置されている。図2では、撮像素子3の合焦状態検出部FAは、一例として、撮像光学系2の光軸AXから+X方向に距離X1だけ離れた位置に配置されるものとしている。
【0017】
射出瞳EPは、像側焦点FPの側から見た、後群レンズ20bによる絞り21の開口22の虚像である。換言すれば射出瞳EPは、光線束LRBのうち、絞り21が配置されているXY面と光軸AXとの交点PCを通る主光線LPRの、後群レンズ20bと撮像素子との間の光路を、直線的に延長した線分PRIと光軸AXとの交点PCIを含むXY平面と一致している。交点PCIは、射出瞳EPの中心(中心PCI)であるということができる。
【0018】
本明細書では、射出瞳EPから像側焦点FPまでのZ方向の距離を、射出瞳距離LPDともいう。
また、上述したとおり、射出瞳EPは、絞り21の開口22の虚像であり、光学的に等価であることから、開口22を通過する光線束LRBのことを、射出瞳EPを通過する光線束LRBであるともいう。
【0019】
撮像光学系2の射出瞳距離LPDは、上述した撮像光学系2の焦点距離等の情報と同様に、撮像光学系2の第2通信部23から撮像装置1の第1通信部9に伝達され、さらに撮像制御部4に伝達される。
【0020】
(撮像素子)
図3は、撮像素子3を撮像面3s側から、すなわち+Z側から見た図である。撮像素子3は、半導体基板30と、半導体基板30上にX方向およびY方向に配列される複数の画素40とを有している。画素40のX方向の並びを「行」とも呼び、画素40のY方向の並びを「列」とも呼ぶ。図2では一部を省略して描いているが、画素40は、X方向およびY方向にそれぞれ例えば1000個以上に渡って多数配列されていても良い。
【0021】
複数の画素40のそれぞれは、異なる3波長の光の中のいずれか1つに対する分光感度が他の波長に対する分光感度よりも高い。Rと付記された画素40(以降「R画素」とも呼ぶ)は赤色光に対する分光感度が高く、Gと付記された画素40(以降「G画素」とも呼ぶ)は緑色光に対する分光感度が高く、Bと付記された画素40(以降「B画素」とも呼ぶ)は青色光に対する分光感度が高い。これらのRGBの各画素40は、例えばベイヤー配列で撮像領域内に配列されている。
R画素、G画素、およびB画素の上述した分光感度は、一例としてそれぞれの画素40内に設けられている後述するカラーフィルタにより設定される。
【0022】
複数の画素40が配列された領域である有効撮像領域IAの、図3中の左端には水平制御部31Hが設けられ、図3中の上端には垂直制御部31Vが設けられている。水平制御部31Hおよび垂直制御部31Vを併せて、または個々に、制御部31とも呼ぶ。
【0023】
水平制御部31Hからは複数の制御線32がX方向に延び、それぞれの制御線32は、複数の画素40のうちX方向に1行に並ぶ複数の画素40に接続されている。撮像素子3の中の複数の画素40のうちY方向に1列に並ぶ複数の画素40のそれぞれには信号線33が接続されている。
【0024】
画素40のそれぞれは、所定の撮像期間内に入射した光の量に基づく信号を生成する。水平制御部31Hから所定の制御電圧が印加された1つまたは複数の制御線32と接続されている画素40で生成された信号は、その画素40に接続されている信号線33を経由して、所定の読出部34により読み出される。一例として、各画素40から出力される信号はアナログ信号であり、読出部34は、アナログ信号をデジタル信号に変換(A/D変換)するアナログ/デジタル変換器である。
読出部34によりA/D変換等された画素40からの信号は、データレーン35を経て撮像素子3の出力部36から、出力信号Sgとして撮像制御部4に出力される。
【0025】
複数の画素40の一部は、上述した位相差検出方式において撮像光学系2のAFに必要な焦点検出処理に用いる一対の検出信号のそれぞれを検出するための、第1AF画素Pと第2AF画素Mとなっている。第1AF画素Pは符号Pが付記された画素40であり、第2AF画素Mは符号Mが付記された画素40である。
【0026】
第1AF画素Pは、Y方向の所定の位置において、X方向に並んで複数配置されている。同一のY位置においてX方向に並んで配置されている複数の第1AF画素Pを、第1検出部F1とも呼ぶ。第1検出部F1から出力される信号が、上述した一対の検出信号のうちの一方の第1検出信号である。
【0027】
第2AF画素Mも、第1検出部F1とは異なるY方向の所定の位置においてX方向に並んで複数配置されている。同一のY位置においてX方向に並んで配置されている複数の第2AF画素Mを、第2検出部F2とも呼ぶ。第2検出部F2から出力される信号が、上述した一対の検出信号のうちの他方の第2検出信号である。
【0028】
なお、図2においては、図示の都合上、第1検出部F1および第2検出部F2を示す破線の枠中にG画素Gが含まれているが、第1検出部F1および第2検出部F2はG画素Gを含まなくても良い。
また、図2においては、第1検出部F1および第2検出部F2が、有効撮像領域IAの-X側の略端部から+X側の略端部に渡って配置されているものとしているが、第1検出部F1および第2検出部F2は、有効撮像領域IAのX方向の一部に配置されるものであっても良い。また、第1検出部F1および第2検出部F2は、有効撮像領域IAのX方向に、離散的に、複数配置されていても良い。
【0029】
1つの第1検出部F1と1つの第2検出部F2との対を、像面位相差検出部FSとも呼ぶ。像面位相差検出部FSは、第1検出部F1に形成されている撮像光学系2の像のX方向の強度分布の位相と、第2検出部F2に形成されている撮像光学系2の像のX方向の強度分布の位相との間の、位相差を検出するための検出信号の対を生成する。
【0030】
第1AF画素Pおよび第2AF画素Mが並んで配置されているX方向を、検出方向ということもでき、第1方向ということもできる。また、Y方向を第2方向ということもできる。
第1AF画素Pと第2AF画素Mとを合せて、または個々に、AF画素とも呼ぶ。
一方、上記の複数の画素40のうちの、AF画素以外の画素(R画素、G画素、B画素)を合せて、または個々に、撮像画素とも呼ぶ。
【0031】
一例として、第1AF画素Pおよび第2AF画素Mは、いずれも本来のベイヤー配列においてB画素が配置されるべき位置に配置されている。ただし、第1AF画素Pおよび第2AF画素Mは、いずれも本来のベイヤー配列においてR画素が配置されるべき位置に配置されていても良い。
【0032】
図3においては、第1検出部F1と第2検出部F2とのY方向の間隔は、その間に5個の画素40が配置される間隔であるとしたが、3個または7個等の任意の奇数個の画素40が配置される間隔であっても良い。
【0033】
図4は、画素40に含まれる電気回路を示す図である。画素40は、光電変換部41および増幅回路42を含んでいる。なお、画素40の構造については後述する。
光電変換部41は、フォトダイオード等から成り、入射した光を光電変換する。光電変換部41での光電変換により生成された電荷は、転送部TXに転送信号が入力されると、転送部TXにより蓄積部FDに転送される。増幅部TAには、電源から所定の電圧VDDが供給され、蓄積部FDに転送された電荷に応じた信号が、増幅されて選択部TSに出力される。
【0034】
選択部TSには制御線32が接続されており、水平制御部31Hから制御線32に所定の信号が入力されると、選択部TSから出力された信号は、信号線33に出力される。
リセット部TRには、電源から所定の電圧VDDが供給され、所定のタイミングでリセット部にリセット信号が入力されると、リセット部は導通し、蓄積部FDは電圧VDDにリセットされる。
【0035】
転送部TX、増幅部TA、選択部TS、およびリセット部TRは、MOSトランジスタであっても良い。そして、画素40を構成する電気回路は、一例として、従来のいわゆる4トランジスタ型のCMOS撮像素子の画素に含まれる電気回路と同様であっても良い。
上述した転送信号およびリセット信号は、制御線32と同様のX方向に延びる制御線を介して、水平制御部31Hから供給されても良い。
【0036】
以下、図5から図6を参照して、第1AF画素Pおよび第2AF画素Mを含む画素40の構成について説明する。
図5は、図2に示した合焦状態検出部FAに含まれる像面位相差検出部FS(図3参照)の拡大図を示す図である。
図5(a)は、像面位相差検出部FSに含まれる第1検出部F1(図3参照)内の画素40(G画素G、および第1AF画素P)のXZ断面図を示す図である。
図5(b)は、像面位相差検出部FSに含まれる第2検出部F2(図3参照)内の画素40(G画素G、および第2AF画素M)のXZ断面図を示す図である。
【0037】
図5(a)および図5(b)に示したとおり、半導体基板30は、一例として、フォトダイオード等の光電変換部41および増幅回路42が形成されている上層基板30aと、配線層が形成されている下層基板30bとが積層されたものである。上層基板30aと下層基板30bとは、バンプを介して電気的に接続されていても良い。
【0038】
上層基板30aの上(+Z方向)には、透明な保護膜43が形成され、保護膜43の上方には、上述したカラーフィルタ44が形成されている。カラーフィルタ44の上方には、撮像する光を光電変換部41に集光するマイクロレンズ45が形成されている。
上方(+Z方向)から画素40に照射される光は、マイクロレンズ45により屈折され、カラーフィルタ44により透過光の波長域が概ね選択された後、光電変換部41に入射する。
【0039】
第1AF画素Pおよび第2AF画素Mに配置されているカラーフィルタ44は、上述の青色光、緑色光または赤色光のいずれかを優先的に透過するカラーフィルタであっても良く、上述の青色光、緑色光及び赤色光のいずれか2色の光を優先的に透過するカラーフィルタであっても良く、可視光の全域を透過するフィルタまたは赤外線を透過するフィルタであっても良い。
【0040】
光電変換部41は、上層基板30a中に形成されたフォトダイオードであっても良く、上層基板30aよりも上方(+z側)に形成された有機膜による光電変換部であっても良い。
なお、光電変換部41の分光感度自体が、複数の画素40のそれぞれで異なる場合には、カラーフィルタ44を省略しても良い。
【0041】
図5(a)に示したとおり、第1AF画素Pは、光電変換部41の上端(+Z側端)側に、光電変換部41の+X側に入射する光を遮光する第1遮光部46Pを有している。また、図5(b)に示したとおり、第2AF画素Mは、光電変換部41の上端(+Z側端)側に、光電変換部41の-X側に入射する光を遮光する第2遮光部46Mを有している。
【0042】
図6は、撮像光学系2の射出瞳EPを通過した光線束LRBが、撮像素子3の合焦状態検出部FA内の像面位相差検出部FSに含まれる第1AF画素Pと第2AF画素Mとに入射する状態を示す図であり、撮像素子3を-Y方向から見たXZ断面を示している。
なお、図6においては、像面位相差検出部FS内で同一のX位置に配置されている、すなわち紙面の奥行方向に重なって配置されている第1AF画素Pと第2AF画素Mとを重ねて表している。
【0043】
マイクロレンズ45の頂点45cと、第1遮光部46Pまたは第2遮光部46Mとの間のZ方向の距離を、距離DMLとする。
第1遮光部46Pおよび第2遮光部46Mは、上述した撮像光学系2の射出瞳EPに対してマイクロレンズ45を介して概ね共役(結像関係)であるZ位置Z1に配置されている。換言すれば、第1遮光部46Pおよび第2遮光部46Mは、マイクロレンズ45および後群レンズ20b(図4参照)を介して上述した撮像光学系2の絞り21と概ね共役となるZ位置Z1に配置されている。
【0044】
このため、第1AF画素Pの光電変換部41には、射出瞳EPの中の光軸AXよりも+X側を通過した光が多く入射する。また、第2AF画素Mの光電変換部41には、射出瞳EPの中の光軸AXよりも-X側を通過した光が多く入射する。
第1AF画素Pの光電変換部41は、撮像光学系2の射出瞳EPのX方向の+側(一方の側)を通った光を、射出瞳のX方向の-側(他方の側)を通った光よりも多く検出する第1受光部であるということもできる。
第2AF画素Mの光電変換部41は、撮像光学系2の射出瞳EPのX方向の-側(上述した他方の側)を通った光を、射出瞳のX方向の+側(上述した一方の側)を通った光よりも多く検出する第2受光部であるということもできる。
【0045】
図2および図6に示した合焦状態検出部FAは、一例として、撮像素子3のX方向の中心、および撮像光学系2の光軸AXから+X方向に距離X1だけ離れた位置に配置されている。このため、合焦状態検出部FAには、光線束LRBが、+Z方向よりもやや-X方向に傾いた方向を中心とする方向から入射する。
【0046】
これに対応して、光電変換部41の受光効率を高めるために、合焦状態検出部FAの各画素40においては、マイクロレンズ45のX方向の中心位置は、光電変換部41のX方向の中心位置に対して、-X方向にずれて配置されている。逆に言えば、光電変換部41のX方向の中心位置は、マイクロレンズ45のX方向の中心位置に対して、+X方向にずれて配置されている。
【0047】
このため、図5(a)に示したとおり、第1AF画素Pの中の第1遮光部46Pの-X側エッジ46PEの位置は、マイクロレンズ45の頂点45c(最も+Z側にある点)から距離XPだけ+X側にずれた位置に配置されている。また、図5(b)に示したとおり、第2AF画素Mの中の第2遮光部46Mの+X側エッジ46MEの位置も、マイクロレンズ45の頂点45cから距離XMだけ+X側にずれた位置に配置されている。
【0048】
マイクロレンズ45の頂点45cは、光軸AXから+X方向に距離X1だけ離れて配置されている。また、射出瞳EPとマイクロレンズ45の頂点45cとの間のZ方向の距離は、射出瞳距離LPDである。従って、射出瞳EPの中心PCIを通過して、第1AF画素Pおよび第2AF画素Mのマイクロレンズ45の頂点45cに入射する光線束LRBの主光線LPRは、-Z方向から以下の式(1)で決まる角θだけ+X方向に傾いた方向に進む。
tan(θ) = X1/LPD ・・・(1)
【0049】
すなわち、主光線LPRは、Z方向に平行な光軸AXと、撮像素子3の撮像面3sに対する法線NLとに対して、ともに角θだけ傾いた方向に進む。
主光線LPRは、マイクロレンズ45の頂点45c近傍で屈折され、マイクロレンズ45、カラーフィルタ44、および保護膜43を透過して、第1遮光部46Pまたは第2遮光部46Mに遮光されるか、または光電変換部41に入射する。
【0050】
第1遮光部46Pまたは第2遮光部46Mが配置されているZ位置Z1における、マイクロレンズ45の頂点45cから主光線LPRまでのX方向の距離を、距離XCとする。幾何光学的な考察により、距離XCは近似的に以下の式(2)により求まる。
XC = tan(θ)×DML/n ・・・(2)
【0051】
ここで、距離DMLは、上述したとおりマイクロレンズ45の頂点45cと第1遮光部46Pまたは第2遮光部46Mとの間のZ方向の距離であり、nはマイクロレンズ45を構成するレンズ材料の屈折率である。
また、式(1)と式(2)より、以下の式(3)が導ける。
XC = X1×DML/(n×LPD) ・・・(3)
【0052】
このとき、距離XCが、上述した距離XPと距離XMの平均値に等しければ、第1AF画素Pの光電変換部41に入射する光量と、第2AF画素Mの光電変換部41に入射する光量とを、概ね等しくすることができる。すなわち、射出瞳EPの+X側を通過し、第1AF画素Pの第1遮光部46Pに遮光されずに光電変換部41に入射する光量と、射出瞳EPの-X側を通過し、第2AF画素Mの第2遮光部46Mに遮光されずに光電変換部41に入射する光量とを、概ね等しくできる。従って、このときに像面位相差検出部FSの焦点位置検出の精度を高めることができる。
【0053】
逆に、像面位相差検出部FSの構成に関する量である距離X1、距離DML、距離XP、距離XM、および屈折率nが決まれば、その合焦状態検出部FAに適した射出瞳距離LPDの値を求めることができる。このように所定の像面位相差検出部FSに適した射出瞳距離LPDのことを、以下では、像面位相差検出部FSの設計瞳距離DPDともいう。
【0054】
設計瞳距離DPDは、一例として式(3)に、上述したXC=(XP+XM)/2の条件を代入して変形し、射出瞳距離LPDを設計瞳距離DPDに置き換えた、以下の式(4)により求めることができる。
DPD = X1×DML/{n×(XP+XM)/2}・・・(4)
【0055】
像面位相差検出部FSの焦点位置検出の精度を高めるためには、その設計瞳距離DPDを、撮像光学系2の射出瞳距離LPDと一致させることが望ましい。しかしながら、射出瞳距離LPDは、撮像光学系2によって異なり、また撮像光学系2がズームレンズである場合には射出瞳距離LPDはズーミングによっても変動する。このため、1つの像面位相差検出部FSの設計瞳距離DPDを、常に撮像光学系2の射出瞳距離LPDと一致させることは困難である。
【0056】
そこで、第1実施形態の撮像素子3においては、図7に示すように、1つの合焦状態検出部FA内に、設計瞳距離DPDがそれぞれ異なる複数の像面位相差検出部FS(FSA~FSE)を設けている。像面位相差検出部FSA~FSEのそれぞれは、第1検出部F1(F1A~F1E)および第2検出部F2(F2A~F2E)を含んでいる。
【0057】
そして、これらの第1検出部F1A~F1Eにそれぞれ含まれる第1AF画素Pにおいては、一例として上述した距離XPが相互に異なっている。また、これらの第2検出部F2A~F2Eにそれぞれ含まれる第2AF画素Mにおいては、一例として上述した距離XMが相互に異なっている。これにより、像面位相差検出部FSA~FSEの設計瞳距離DPDは、それぞれ異なった値となる。
【0058】
第1実施形態の撮像装置1においては、撮像制御部4は、撮像光学系2の射出瞳距離LPDに近い設計瞳距離DPDを有する像面位相差検出部FSを像面位相差検出部FSA~FSEから選択し、選択した像面位相差検出部FSからの検出信号を用いて焦点位置を検出する。これにより、装着する撮像光学系2を交換した場合であっても、あるいは撮像光学系2をズーミングした場合であっても、高精度に焦点位置の検出を行うことができる。
【0059】
1つの合焦状態検出部FA内に設けられる像面位相差検出部FSA~FSEの数は、上述した5個に限られるわけではなく、任意のm個(mは2以上の自然数)であっても良い。像面位相差検出部FSA~FSEのそれぞれの射出瞳距離LPDは、一例として、10mm程度から150mm程度までの間の任意の任意の長さとして良い。さらなる一例として、撮像素子3の有効撮像領域IAの対角線長の0.6倍程度の長さから、5倍程度の長さまでの間の任意の長さとして良い。
【0060】
複数の像面位相差検出部FSA~FSEのそれぞれの射出瞳距離LPDは、それらの中の最小値から最大値までの間で略等間隔に増加するようにそれぞれ設定しても良い。あるいは、それぞれの射出瞳距離LPDにある射出瞳EPから第1AF画素Pおよび第2AF画素Mに入射する主光線LPRの図6に示した法線NLに対する傾き角θが、それらの中の最小値から最大値までの間で略等間隔に増加するようにそれぞれ設定しても良い。
【0061】
第1検出部F1A~F1Eにそれぞれ含まれる第1AF画素Pにおいて、上述した距離XPに代えて、あるいは距離XPに加えてさらに、上述した距離DMLの値が相互に異なっていても良い。また、第2検出部F2A~F2Eにそれぞれ含まれる第2AF画素Mにおいて、上述した距離XMに代えて、あるいは距離XMに加えてさらに、上述した距離DMLの値が相互に異なっていても良い。
【0062】
なお、複数の像面位相差検出部FSA~FSEのそれぞれの射出瞳距離LPDは、それぞれのY位置の応じて単調に増加、あるいは単調に減少しても良く、あるいは、それぞれのY位置とは無関係にランダムに変化しても良い。
【0063】
なお、図7においては、図面の煩雑化を避けるために、第1検出部F1A~F1Eおよび第2検出部F2A~F2EのそれぞれのY方向の間に配置されている撮像画素(G画素G、B画素B、R画素R)の図示を省略している。しかし、1つの合焦状態検出部FA内には、第1検出部F1A~F1Eおよび第2検出部F2A~F2EのそれぞれのY方向の間に、例えば3個以上の撮像画素が配置されていても良い。
【0064】
1つの像面位相差検出部FSA~FSEにおける第1検出部F1A~F1Eと第2検出部F2A~F2Eとの間のY方向の距離を第1距離P1と呼ぶことができる。また、複数の像面位相差検出部FSA~FSEのそれぞれの間のY方向の距離を第2距離P2と呼ぶことができる。第2距離P2は、第1距離P1よりも長くても良い。
逆に、第2距離P2は、第1距離P1より短くても良い。
【0065】
ところで、撮像装置1を用いて、例えば低照度下で撮影を行う場合には、被写体からの光線束LRBの光量が低下し、これにより像面位相差検出部FSA~FSEのいずれか1つから得られる検出信号のS/Nが低下する。この場合には、像面位相差検出部FSA~FSEによる焦点位置の検出の精度が低下する恐れがある。
【0066】
実施形態の撮像装置1および撮像素子3においては、Y方向の異なる位置に配置されている複数の合焦状態検出部FAが検出した複数の検出信号のいくつかを加算して加算信号を生成し、この加算信号を検出信号として用いることで焦点位置の検出の精度を向上させる。
【0067】
具体的には、1つの合焦状態検出部FA内にある複数の像面位相差検出部FSA~FSE内の、同一のX位置であって異なるY位置にある複数の第1AF画素Pで生成された信号を加算する。同様に、1つの合焦状態検出部FA内にある複数の像面位相差検出部FSA~FSE内の、同一のX位置であって異なるY位置にある複数の第2AF画素Mで生成された信号を加算する。
【0068】
複数の検出信号の加算は、1つの例として、いわゆるソースフォロワ加算により行う。すなわち、異なる合焦状態検出部FAに含まれ同一のX位置にある複数の第1AF画素Pで生成された信号を、それらの第1AF画素Pに接続されている信号線33に略同時に出力させる。同様に、異なる合焦状態検出部FAに含まれ同一のX位置にある複数の第2AF画素Mで生成された信号を、それらの第2AF画素Mに接続されている信号線33に略同時に出力させる。そして、信号線33上のこれらの加算された信号を、読出部34により読み出す。
【0069】
水平制御部31Hは、制御線32を介して信号を相互に加算される第1AF画素Pまたは第2AF画素Mに制御信号を送り、それらの画素からの信号を略同時に信号線33に出力させる。
この場合、信号線33、および読出部34は、複数の検出信号のうちの少なくとも2つを加算して加算信号を生成する加算部を構成する。
【0070】
複数の検出信号の加算は、他の構成により行っても良い。例えば、撮像素子3の出力部36に、所定のAF画素(P、M)からデータレーン35を介して出力されたデジタル信号を一時的に記憶するメモリーと、所定の複数のAF画素からの信号を加算する加算回路を設け、この加算回路により複数の検出信号を加算しても良い。
この場合には、撮像素子3の出力部36に設けた加算回路が、複数の検出信号のうちの少なくとも2つを加算して加算信号を生成する加算部を構成する。
【0071】
なお、これらのメモリーおよび加算回路は、撮像素子3にではなく、撮像制御部4に、加算回路部5として設けられていても良い。この場合には、複数の検出信号のうちの少なくとも2つを加算して加算信号を生成する加算部は、撮像制御部4に含まれる。
【0072】
加算信号は、一例として、設計瞳距離DPDが、撮像光学系2の射出瞳距離LPDに1番目からk番目(kはm以下の自然数)に近い像面位相差検出部FSからの検出信号を加算することにより生成される。一例として、撮像光学系2の射出瞳距離LPDが100mmであり、複数の像面位相差検出部FSA~FSEの設計瞳距離DPDが、それぞれ50mm、70mm、90mm、110mm、130mmであるとする。このとき、加算部は、一例として、設計瞳距離DPDが90mmと110mmである2つ(k=2)の像面位相差検出部FSからの検出信号を加算する。
【0073】
なお、上述したように、像面位相差検出部FSの焦点位置検出の精度を高めるためには、その設計瞳距離DPDを、撮像光学系2の射出瞳距離LPDと一致させることが望ましい。このため、撮像光学系2の射出瞳距離LPDと大きく異なる設計瞳距離DPDを有する像面位相差検出部FSからの検出信号を加算して加算信号を生成すると、焦点位置検出の精度が低下してしまう恐れもある。
【0074】
従って、加算信号の生成に際しては、光線束LRBの光量、すなわち像面位相差検出部FSからの検出信号の大きさに基づいて、加算する検出信号の数を変更しても良い。すなわち、加算部は、撮像素子3に入射する光の量が少なく撮像素子3が出力する撮像信号の強度が小さいときには、撮像信号の強度が大きいときに比べて多くの検出信号を加算するようにしても良い。ここで、撮像素子3が出力する撮像信号とは、AF画素が出力する検出信号であっても良く、撮像画素(G画素G、B画素B、R画素R)が出力する画像形成用の信号であっても良い。
【0075】
なお、撮像光学系2の射出瞳距離LPDと像面位相差検出部FSの設計瞳距離DPDとの不一致に伴う焦点位置検出の精度への影響は、撮像光学系2の絞り値(F値)の値が大きい程、大きい。従って、加算信号の生成に際しては、加算部は、撮像光学系2の絞り値が小さいときには、撮像光学系2の絞り値が大きいときに比べて多くの検出信号を加算するようにしても良い。
【0076】
ところで、撮像光学系2の射出瞳距離LPDと像面位相差検出部FSの設計瞳距離DPDとの不一致に伴う焦点位置検出の精度への影響は、撮像素子3における合焦状態検出部FAの位置にも依存する。すなわち、合焦状態検出部FAが有効撮像領域IAの検出方向(X方向)の中央付近、すなわち撮像光学系2の光軸AXから検出方向の近傍にある場合にはその影響は少なく、合焦状態検出部FAが光軸AXから検出方向に離れている場合にはその影響が大きい。
【0077】
従って、加算信号の生成に際しては、加算部は、合焦状態検出部FAの検出方向(X方向)の位置が撮像素子3の中心に近いときには、合焦状態検出部FAの第1方向の位置が撮像素子3の中心から遠いとき比べて多くの検出信号を加算するようにしても良い。
【0078】
図8は、撮像素子3上の合焦状態検出部FA(FA1~FA6)の位置のいくつかの例を示す図である。例えば、撮像素子3の撮像面3s上の有効撮像領域IAのX方向の中心CLからのX方向の距離が距離D1未満である合焦状態検出部FA1、FA2においては、m個の像面位相差検出部FSからの検出信号の全てを加算しても良い。
【0079】
一方、加算部は、中心CLからのX方向の距離が距離D2以上である合焦状態検出部FA5、FA6においてはk1個の検出信号を加算し、中心CLからのX方向の距離が距離D1以上、かつ距離D2未満である合焦状態検出部FA3、FA4においてはk2個の検出信号を加算しても良い。ここで、k1、K2はいずれも自然数であり、1≦k1<k2<mである。
【0080】
なお、有効撮像領域IA内の複数の合焦状態検出部FA(FA1~FA6)がある場合、加算部は、選択された合焦状態検出部FAの検出方向(X方向)の位置に応じて、全ての合焦状態検出部FAからの検出信号の加算方法を決定しても良い。すなわち、加算部は、選択された合焦状態検出部FAのX方向の位置が撮像素子3の中心に近いときには、撮像素子3の中心から遠いとき比べて、複数の合焦状態検出部FAにおいて像面位相差検出部FSからの検出信号を多く加算しても良い。
【0081】
複数の合焦状態検出部FAのうちのどの合焦状態検出部FAを選択するかは、ユーザーが操作部8から入力しても良く、撮像素子3から出力される画像に基づいて撮像制御部4が決定しても良い。
【0082】
なお、以上においては、1つの合焦状態検出部FAは、設計瞳距離DPDがそれぞれ異なる複数の像面位相差検出部FSを含んでいるものとしたが、1つの合焦状態検出部FAは、さらに同一の設計瞳距離DPDを有する像面位相差検出部FSを含んでいても良い。この場合、加算部は、同一の設計瞳距離DPDを有する像面位相差検出部FSからの検出信号を加算しても良い。
【0083】
このような合焦状態検出部FAの一例として、図7に示した合焦状態検出部FAの複数が、同一のX位置においてY方向に近接して配置されたものであっても良い。
あるいは、同一の設計瞳距離DPDを有する像面位相差検出部FSの複数を一群としてY方向に近接して複数配置し、これらとは設計瞳距離DPDが異なる像面位相差検出部FSの一群は、これらとはY方向に比較的離れた位置に配置しても良い。
【0084】
なお、撮像装置1によっては、撮像素子3上の有効撮像領域IAの大きさが変更可能となっている場合がある。例えば、有効撮像領域IAの大きさを、いわゆる35mmフルフレームサイズと、それより小さいサイズに切り替えて使用可能な場合がある。そして、有効撮像領域IAの変更により、最適な像面位相差検出部FSの検出条件が変化する場合がある。従って、加算部は、撮像素子3の有効撮像領域IAの大きさに応じて、加算する検出信号の数を変更しても良い。
【0085】
(像面位相差検出部の配置の変形例)
図9は、合焦状態検出部FAにおける像面位相差検出部FSの配置の変形例を示す図である。
上述の第1実施形態においては、合焦状態検出部FAにおいて、AF画素である第1AF画素Pおよび第2AF画素Mは、いずれも本来のベイヤー配列においてB画素B(またはR画素R)が配置されるべき位置に配置されているものとしている。このため、AF画素のX位置は、画素40の2個分の間隔をおいて配置されている。
【0086】
図9に示す変形例の配置では、AF画素は、Y方向に奇数番目の像面位相差検出部FSA、FSC、FSEでは本来のベイヤー配列のB画素Bの位置に配置され、Y方向に偶数番目の像面位相差検出部FSBs、FSDsではR画素Rの位置に配置されている。このため、合焦状態検出部FAの内部において、AF画素のX位置は、画素40の1個分の間隔で配置される。
【0087】
このため、この変形例の配置においては、撮像光学系2が形成する像に対するAF画素である第1AF画素Pおよび第2AF画素Mによるサンプリングの密度が向上するため、より高精度な像面位相差検出を行うことができる。
【0088】
なお、図9の例は一例であり、AF画素は、Y方向に奇数番目の像面位相差検出部FSA、FSC、FSEでは本来のベイヤー配列のR画素Rの位置に配置され、Y方向に偶数番目の像面位相差検出部FSBs、FSDsではB画素Bの位置に配置されていても良い。
【0089】
以上の実施形態および変形例において、例えば、上述したように、加算部が信号線33、および読出部34により構成される場合、または、撮像素子3の出力部36に設けられた加算回路により構成される場合には、撮像素子3を撮像装置であるということもできる。加算回路は、撮像素子3の撮像部に積層されて設けられていてもよい。
【0090】
(実施形態および変形例の効果)
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)以上の各実施形態の撮像装置1は、第1方向(X方向)を検出方向とし、第1方向と交差する第2方向(Y方向)の異なる位置にそれぞれ配置された、設計瞳距離DPDがそれぞれ異なる複数の像面位相差検出部FSを含む合焦状態検出部FAを有する撮像素子3と、合焦状態検出部FAに含まれる複数の像面位相差検出部FSが検出した複数の検出信号のうちの少なくとも2つを加算して加算信号を生成する加算部(読出部34等、または撮像制御部4)と、を有している。
この構成により、低照度下の被写体に対しても、焦点位置の検出の精度を向上させることができる。
【0091】
(2)像面位相差検出部FSは、撮像光学系2の射出瞳EPの第1方向(X方向)の一方の側を通った光を、射出瞳EPの一方の側とは反対側の他方の側を通った光よりも多く検出する第1受光部(第1AF画素Pの光電変換部41)が第1方向に複数配置された第1検出部F1と、射出瞳EPの第1方向の他方の側を通った光を、射出瞳EPの一方の側を通った光よりも多く検出する第2受光部(第2AF画素Mの光電変換部41)が第1方向に複数配置された第2検出部F2と、を含んでも良い。そして、加算部は、複数の像面位相差検出部FSに含まれる第1検出部F1からの複数の検出信号のうちの少なくとも2つを加算し、複数の像面位相差検出部FSに含まれる第2検出部F2からの複数の検出信号のうちの少なくとも2つを加算しても良い。
この構成により、低照度下の被写体に対しても、焦点位置の検出の精度を一層向上させることができる。
【0092】
(3)加算部は、撮像素子3に入射する光の量が少なく撮像素子3が出力する撮像信号の強度が小さいときには、撮像信号の強度が大きいときに比べて多くの検出信号を加算しても良い。この場合、撮像素子3に入射する光の量が少なく撮像素子3が出力する撮像信号の強度が小さいときには、多くの検出信号を加算することで検出信号のS/Nを向上させることができ、これにより高精度な焦点位置検出を行うことができる。一方、撮像素子3に入射する光の量が多く撮像素子3が出力する撮像信号の強度が大きいときには、最も検出精度の高い検出信号、すなわち設計瞳距離DPDが撮像光学系2の射出瞳距離LPDに最も近い像面位相差検出部FSからの検出信号を優先的に用いて、高精度な焦点位置検出を行うことができる。
【0093】
(4)加算部は、撮像光学系2の絞り値(F値)が小さいときには、撮像光学系2の絞り値が大きいときに比べて多くの検出信号を加算しても良い。撮像光学系2の絞り値(F値)が小さいときには、撮像光学系2の射出瞳距離LPDと像面位相差検出部FSの設計瞳距離DPDとの不一致に伴う焦点位置検出の精度への影響が少ない。このため、撮像光学系2の絞り値が小さいときには、多くの検出信号を加算することによる検出信号S/Nの向上に伴う焦点位置検出精度の向上分が、射出瞳距離LPDと設計瞳距離DPDとの不一致に伴う焦点位置検出の精度の低下分よりも、大きくなる。これにより、高精度な焦点位置検出を行うことができる。
【0094】
(5)撮像素子3は、合焦状態検出部FA複数有するとともに、加算部は、合焦状態検出部FAの第1方向の位置が撮像素子3の中心に近いときには、合焦状態検出部FAの第1方向の位置が撮像素子3の中心から遠いとき比べて多くの検出信号を加算しても良い。合焦状態検出部FAの第1方向の位置が撮像素子3の中心に近いときには、撮像光学系2の射出瞳距離LPDと像面位相差検出部FSの設計瞳距離DPDとの不一致に伴う焦点位置検出の精度への影響が少ない。合焦状態検出部FAの第1方向の位置が撮像素子3の中心に近いときには、多くの検出信号を加算することによる検出信号S/Nの向上に伴う焦点位置検出精度の向上分が、射出瞳距離LPDと設計瞳距離DPDとの不一致に伴う焦点位置検出の精度の低下分よりも、大きくなる。これにより、高精度な焦点位置検出を行うことができる。
【0095】
上述では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、各実施形態および変形例は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1:撮像装置、2:撮像光学系、3:撮像素子、4:撮像制御部、6:レンズ駆動部、7:表示部、8:操作部、30:半導体基板、31:制御部、40:画素、P:第1AF画素、M:第2AF画素、F1:第1検出部、F2:第2検出部、FS:像面位相差検出部、32:制御線、33:信号線、34:読出部、36:出力部、41:光電変換部、42:増幅回路、44:カラーフィルタ、45:マイクロレンズ、46P:第1遮光部、46M:第2遮光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9