(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180124
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】磁性体装置
(51)【国際特許分類】
G11B 5/65 20060101AFI20221129BHJP
G11B 5/706 20060101ALI20221129BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G11B5/65
G11B5/706
G11B5/02 R
G11B5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087055
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】堀 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】中谷 真規
(72)【発明者】
【氏名】宮本 泰敬
【テーマコード(参考)】
5D006
5D091
【Fターム(参考)】
5D006AA02
5D006AA06
5D006BB01
5D006BB05
5D006BB06
5D006BB07
5D091AA20
5D091DD30
(57)【要約】
【課題】磁性体の酸化を抑制するとともに、磁性体/絶縁層/導電層の積層体の静電容量を低減し、高周波駆動することが可能な磁性体装置を提供する。
【解決手段】磁性体装置としての、磁性細線装置60は、絶縁層63を介して、磁性体としての、磁性細線61および導線62が配置されている。絶縁層63は、絶縁性非酸化膜および絶縁性酸化膜の積層体である。絶縁性非酸化膜は、磁性細線61と接している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層を介して、磁性体および導電層が配置されており、
前記絶縁層は、絶縁性非酸化膜および絶縁性酸化膜の積層体であり、
前記絶縁性非酸化膜は、前記磁性体と接している、磁性体装置。
【請求項2】
前記絶縁性非酸化膜が絶縁性窒化膜である、請求項1に記載の磁性体装置。
【請求項3】
前記絶縁性非酸化膜の膜厚が1nm以上10nm以下である、請求項1または2に記載の磁性体装置。
【請求項4】
前記絶縁性酸化膜の膜厚が5nm以上30nm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の磁性体装置。
【請求項5】
前記磁性体は、磁性細線であり、
前記導電層は、導線であり、
前記磁性細線が、前記導線に対して、ねじれの位置となるように配置されている磁性細線装置である、請求項1から4のいずれか一項に記載の磁性体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(HDD)に代表される磁気メモリーは、磁気データが半永久的に記録されるものの、磁気ディスクの回転機構、磁気記録ヘッドの位置合わせ機構等の機械的な動作部を有するという制約から、磁気データの記録・再生速度を飛躍的に向上させることが難しい。また、機械的な動作部は、故障の原因ともなっていた。このような機械的な動作部を用いずに、磁気データを電気的に制御することができれば、磁気データの記録・再生速度が高く、信頼性の高いメモリーを実現することができる。
【0003】
このため、近年では、数百nmから数μmの幅に加工した磁性体、すなわち、磁性細線中に磁区を生成させて、磁気データを記録した後、磁性細線にパルス電流を流すことにより、磁壁を駆動させる磁性細線装置に注目が集まっている。
【0004】
中でも、並列して配置されている複数本の磁性細線を有し、磁気記録ヘッドおよび磁気再生ヘッドにより、磁気データを記録および再生する磁性細線装置は、記録・再生速度が高い磁気記録装置として期待されている(例えば、特許文献1参照)。また、この磁性細線装置は、形成される磁区の形成と磁壁の駆動を高精度に繰り返し制御することにより、立体映像を表示するための空間光変調器としても期待されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6417259号公報
【特許文献2】特許第4939489号公報
【特許文献3】特許第5782334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、従来のHDD用の磁気記録ヘッドを磁性細線上に接触配置し、磁性細線に磁気データを記録する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、磁気記録ヘッドに厚み数百nmの保護膜が形成されているために、磁性細線に最も近接した状態で磁気記録ヘッドを配置することができない問題や、磁気記録ヘッドがメカニカルな部分を有するために、位置合わせの際にずれが生じる問題があった。
【0008】
そこで、
図1に示すように、磁性細線11に対して、ねじれの位置となるように、磁気記録素子としての、導線12を配置して、磁性細線装置10とすることが考えられる。ここで、磁性細線11と、導線12は、絶縁層13により、電気的に隔離されている。この場合、
図2に示すように、導線12にパルス電流21を流すと、導線12の周囲に磁界22が生成する。このとき、磁界22の強度が、垂直磁気異方性を有する磁性細線11の異方性磁界よりも大きいと、磁性細線11中に、上向き(または下向き)の磁区23が生成する。
【0009】
ここで、
図2(a)および(b)は、それぞれ斜視図および断面図である。
【0010】
一方、磁性細線11を構成する磁性材料として、一般的に用いられる、テルビウム(Tb)、ガドリニウム(Gd)等の金属は、耐酸化性が低い。このため、絶縁層13を構成する材料として、二酸化ケイ素(SiO2)、炭素添加酸化シリコン(SiOC)等の絶縁性酸化物を用いると、成膜時、または、リソグラフィー・エッチング等のプロセスにおける加熱時に、絶縁層13から磁性細線11に酸素が拡散して、磁性細線11が酸化する問題があった。
【0011】
そこで、絶縁層13を構成する材料として、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁性非酸化物を用いることが考えられるが、絶縁性非酸化物の誘電率は、絶縁性酸化物の誘電率の約2倍であるため(表1参照)、磁性細線11/絶縁層13/導線12の積層体の静電容量が増大する。
【0012】
【0013】
このため、例えば、基板31上に、磁性細線11/絶縁層13/導電層32の積層体を形成し(
図3参照)、
図4(a)に示す波形の高周波パルス電流を導電層32に流すと、
図4(b)に示す波形の誘導電流が、導電層32から絶縁層13を介して磁性細線11へ流れる。このとき、高周波パルス電流の微分波形に対応する誘導電流の正負のピークA、Bが発生する。また、磁性細線11/絶縁層13/導電層32の積層体の静電容量に比例して、誘導電流が大きくなる。さらに、印加する高周波パルス電流の周波数にも比例して、誘導電流が大きくなる。
【0014】
図5に、絶縁層として、窒化シリコン膜を用いた場合の、導電層32に流す高周波パルス電流と、導電層32から絶縁層13を介して磁性細線11に流れる誘導電流の実測値を示す。ここで、破線は、導電層32に印加する高周波パルス電流であり、実線は、導電層32から絶縁層13を介して磁性細線11へ流れる誘導電流の実測値である。
【0015】
図5から、高周波パルス電流、例えば、磁区を形成するために、矩形のパルス電流を導電層32に流すと、高周波成分に起因する誘導電流(破線で囲まれている領域参照)が、導電層32から絶縁層13を介して磁性細線11へ流れることがわかる。誘導電流がある閾値以上になると、不用意に磁性細線11上にすでに形成している、もしくは導電層32によって形成した磁壁を駆動させる原因となり、磁区の長さのバラツキが発生して、磁区の形状安定性に問題が生じ、ビットエラー等に繋がる。また、磁性細線装置の駆動を高速化するために、印加する高周波パルス電流の周波数あげることも考えられるが、その周波数に比例して大きな誘導電流が生じるため、同様にビットエラー等に繋がる。したがって、磁性細線11/絶縁層13/導電層32の積層体の静電容量を低減し、高周波駆動することが求められる。
【0016】
本発明は、磁性体の酸化を抑制するとともに、磁性体/絶縁層/導電層の積層体の静電容量を低減し、高周波駆動することが可能な磁性体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、磁性体装置において、絶縁層を介して、磁性体および導電層が配置されており、前記絶縁層は、絶縁性非酸化膜および絶縁性酸化膜の積層体であり、前記絶縁性非酸化膜は、前記磁性体と接している。
【0018】
前記絶縁性非酸化膜が絶縁性窒化膜であってもよい。
【0019】
前記絶縁性非酸化膜の膜厚が1nm以上10nm以下であってもよい。
【0020】
前記絶縁性酸化膜の膜厚が5nm以上30nm以下であってもよい。
【0021】
前記磁性体は、磁性細線であり、前記導電層は、導線であり、前記磁性細線が、前記導線に対して、ねじれの位置となるように配置されている磁性細線装置であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、磁性体の酸化を抑制するとともに、磁性体/絶縁層/導電層の積層体の静電容量を低減し、高周波駆動することが可能な磁性体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】磁性細線装置の主要部の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の磁性細線装置の磁性細線に磁区を形成する方法を示す図である。
【
図3】磁性細線/絶縁層/導電層の積層体の構造を示す断面図である。
【
図4】
図3の導電層に印加するパルス電流の波形と、導電層から磁性細線に流れる誘導電流の波形を示す図である。
【
図5】絶縁層として、窒化シリコン膜を用いた場合の、
図3の導電層に流すパルス電流と、導電層から磁性細線に流れる誘導電流の実測値を示す図である。
【
図6】本実施形態の磁性体装置の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態の磁性細線/絶縁層/導線の積層体の構造の一例を示す断面図である。
【
図8】本実施形態の磁性細線/絶縁層/導線の積層体の構造の他の例を示す断面図である。
【
図9】磁性細線/絶縁層/導電層の積層体の静電容量を説明する断面図である。
【
図10】実施例1の磁性細線装置の構造を示す上面図である。
【
図11】実施例1、2および比較例1の磁性体/絶縁層/導電層の積層体の静電容量の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
図6に、本実施形態の磁性体装置の一例として、磁性細線装置を示す。なお、
図6(a)および(b)は、それぞれ斜視模式図および断面模式図である。
【0026】
磁性細線装置60は、磁性体としての、磁性細線61に対して、ねじれの位置となるように、磁気記録素子としての、導線62が配置されており、絶縁層63を介して、磁性細線61と、導線62が配置されている。また、磁性細線装置60は、導線62にパルス電流を流すパルス電源64と、磁性細線61にパルス電流を流すパルス電源65と、を有する。
【0027】
パルス電源64を用いて、導線62の周囲に生成する電流磁界の強度が、垂直磁気異方性を有する磁性細線61の異方性磁界よりも大きくなるように、導線62にパルス電流を流すと、磁性細線61中に、上向き(または下向き)の磁区が生成し、2値の磁気データが記録される。この状態で、パルス電源65を用いて、磁性細線61にパルス電流を流すと、磁壁を駆動させ、その結果、磁壁に挟まれている磁区が移動する。また、磁区の生成と駆動を繰り返すことにより、磁性細線61中に磁気データを複数の磁区列として記録蓄積することができる。このとき、図示しない磁気再生素子を磁性細線61の右端付近に設けた場合、磁性細線61中を右方向に磁区をパルス電流で移動させることにより、磁気データを磁気再生素子により順次再生することができる。あるいは、磁性細線61中に複数の磁区列が蓄積された段階で、コヒーレント光を入射させることにより、磁性細線61の表面で起こる磁気光学カー効果に従い、磁区列を構成する個々の磁区の磁化方向に対応して反射光の偏光面が左右の2方向に回転するため、偏光フィルターを透過させることで、この反射光から明暗の2値の空間光変調出力を得ることができる。
【0028】
ここで、絶縁層63は、絶縁性非酸化膜および絶縁性酸化膜の積層体であり、絶縁性非酸化膜は、磁性細線61と接している。このため、磁性細線61の酸化を抑制するとともに、磁性細線61/絶縁層63/導線62の積層体の静電容量を低減し、高周波駆動することができる。その結果、磁性細線11と、導電層32との間に流れる誘導電流66を小さくすることができる。
【0029】
図7に、本実施形態の磁性細線/絶縁層/導電層の積層体の構造の一例を示す。
【0030】
基板71上に、磁性細線61/絶縁層63/導電層72の積層体が形成されている。ここで、絶縁層63は、絶縁性非酸化膜63aおよび絶縁性酸化膜63bの積層体であり、絶縁性非酸化膜63aは、磁性細線61と接している。
【0031】
基板71を構成する材料としては、例えば、表面熱酸化シリコン、サファイア、酸化マグネシウム、ガラス、石英等が挙げられる。
【0032】
磁性細線61を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、テルビウム-コバルト(Tb-Co)合金、テルビウム-鉄-コバルト(Tb-Fe-Co)合金、ガドリニウム-コバルト(Gd-Co)合金、ガドリニウム-鉄-コバルト(Gd-Fe-Co)合金等が挙げられる。これらの中でも、垂直磁気異方性を有する材料が好ましい。
【0033】
なお、磁性細線61は、テルビウム(Tb)/コバルト(Co)の多層積層体、ガドリニウム(Gd)/コバルト(Co)の多層積層体等であってもよい。
【0034】
絶縁性非酸化膜を構成する絶縁性非酸化物としては、例えば、窒化シリコン(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁性窒化物等が挙げられる。これらの中でも、絶縁性窒化物が好ましい。
【0035】
絶縁性酸化膜を構成する絶縁性酸化物としては、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、炭素添加酸化シリコン(SiOC)等が挙げられる。
【0036】
表2に、絶縁性非酸化物および絶縁性酸化物の組み合わせの例を示す。
【0037】
【0038】
導電層72を構成する材料としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の一般的に使用される公知の導電材料を用いることができる。
【0039】
磁性細線61/絶縁層63/導電層72の積層体は、例えば、基板71上に、スパッタ法を用いて、磁性細線61と、絶縁層63(絶縁性非酸化膜63a/絶縁性酸化膜63bの積層体)と、導電層72と、を順次形成することで得られる。
【0040】
絶縁性非酸化膜63aの膜厚は、磁性細線61の表面を一様に覆うことが可能であれば、特に限定されないが、1nm以上10nm以下であることが好ましい。
【0041】
絶縁性酸化膜63bの膜厚は、磁性細線61と導電層72を電気的に絶縁し、絶縁層63の誘電率を担保することが可能であれば、特に限定されないが、5nm以上30nm以下であることが好ましい。絶縁性非酸化膜63aの膜厚に対して絶縁性酸化膜63bの膜厚の割合を大きくすれば、相対的に誘電率を下げることができる。一方、絶縁性非酸化膜63aと絶縁性酸化膜63bの合計膜厚が厚くなりすぎると、磁性細線61と導電層72が離れてしまい、磁区を形成するために必要な記録電流が増大する。このため、絶縁性酸化膜63bの膜厚は、絶縁性と誘電率を担保したうえで可能な限り薄い膜厚を選択すればよい。
【0042】
導電層72の厚みは、5nm以上5μm以下であることが好ましい。
【0043】
図8に、本実施形態の磁性細線/絶縁層/導電層の積層体の構造の他の例を示す。
【0044】
ここで、
図8の積層体は、絶縁層63が、絶縁性非酸化膜63a、絶縁性酸化膜63bおよび絶縁性酸化膜63cの積層体である、すなわち、絶縁性酸化膜が積層構造を有する以外は、
図7の積層体と同一の構成である。
【0045】
このとき、絶縁性酸化膜63bおよび絶縁性酸化膜63cを構成する絶縁性酸化物は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、絶縁性酸化膜63bおよび絶縁性酸化膜63cとして、それぞれ二酸化ケイ素膜および炭素添加酸化シリコン膜を用いると、絶縁層63の表面平坦性を向上させることができる。
【0046】
絶縁性酸化膜63bおよび63cの合計膜厚は、絶縁層63の誘電率を担保することが可能であれば、特に限定されないが、5nm以上30nm以下であることが好ましい。絶縁性非酸化膜63aの膜厚に対して絶縁性酸化膜63bおよび63cの合計膜厚の割合を大きくすれば、相対的に誘電率を下げることができる。一方、絶縁性非酸化膜63aと絶縁性酸化膜63bおよび63cの合計膜厚が厚くなりすぎると、磁性細線61と導電層72が離れてしまい、磁区を形成するために必要な記録電流が増大する。このため、絶縁性酸化膜63bおよび63cの合計膜厚は、絶縁性と誘電率を担保したうえで可能な限り薄い合計膜厚を選択すればよい。
【0047】
図9を用いて、磁性細線/絶縁層/導電層の積層体の静電容量を説明する。ここで、
図9(a)および(b)は、それぞれ絶縁層が絶縁性非酸化膜の単層構造および絶縁性非酸化膜/絶縁性酸化膜の積層構造である場合である。
【0048】
図9(a)において、絶縁性非酸化膜63aの膜厚をa+b、誘電率をε
aとする。
【0049】
図9(b)において、絶縁性非酸化膜63aの膜厚をa、誘電率をε
a、絶縁性酸化膜63bの膜厚をb、誘電率をε
bとすると、絶縁性非酸化膜63aの誘電率が絶縁性酸化膜63bの誘電率よりも高いため、式
ε
a>ε
b
を満たす。このとき、式
a<b
を満たすように、絶縁性非酸化膜63aおよび絶縁性酸化膜63bを構成し、
図9(a)の積層体の静電容量をC、
図9(b)の積層体の静電容量をC’とすると、式
【0050】
【数1】
を満たし、C’をCよりも小さくすることができる。
【0051】
ここで、式
a≪b
を満たすように、絶縁性非酸化膜63aおよび絶縁性酸化膜63bを構成すると、式
【0052】
【数2】
を満たすため、C’をさらに小さくすることができる。
【実施例0053】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【0054】
(実施例1)
フォトリソグラフィー、イオンビームスパッタおよびリフトオフにより、
図10に示す構造を有する磁性細線装置を作製した。なお、
図10(b)は、
図10(a)の破線で囲まれている領域の拡大図である。
ここで、
図10(b)の点線で囲まれている領域の中心部(3μm×3μm)の断面構造は、
図7の構造である。
基板71としては、表面熱酸化シリコン基板を用いた。
基板71上に、膜厚3nmのPt膜を形成した後、膜厚0.3nmのCo膜/膜厚0.6nmのTb膜の5層積層体を形成し、幅3μm、長さ40μmの磁性細線61とした。
磁性細線61上に、絶縁性非酸化膜63aとして、膜厚5nmのSi
3N
4膜を形成した後、絶縁性酸化膜63bとして、膜厚13nmのSiO
2膜を形成し、40μm×40μmの絶縁層63とした。
絶縁層63上に、導電層72として、膜厚90nm、幅3μm、長さ40μmのAg膜を形成した。
磁性細線61の両端部に磁区駆動用電極AおよびBが形成されており、導電層72の両端部に磁気記録用電極CおよびDが形成されている。
(実施例2)
磁性細線61上に、絶縁性非酸化膜63aとして、膜厚3nmのSi
3N
4膜を形成した後、絶縁性酸化膜63bとして、膜厚15nmのSiO
2膜を形成し、40μm×40μmの絶縁層63とした以外は、実施例1と同様にして、磁性細線装置を作製した。
(比較例1)
絶縁層63として、膜厚18nmのSiO
2膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、磁性細線装置を作製した。
(磁性体/絶縁層/導電層の積層体の静電容量)
LCRメータZM2371(エヌエフ回路設計ブロック製)を用いて、磁性体/絶縁層/導電層の積層体の静電容量を評価した。このとき、電圧測定端子(L)および(H)を磁区駆動用電極AおよびBに接続し、電流印加端子(L)および(H)を磁気記録用電極CおよびDに接続した状態で、周波数を掃引し、PCにデータを取り込んだ。
図11に、磁性体/絶縁層/導電層の積層体の静電容量の評価結果を示す。
図11から、実施例1、2の磁性細線装置は、比較例1の磁性細線装置よりも、磁性体/絶縁層/導電層の積層体の静電容量が低いことがわかる。