(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180406
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20221129BHJP
B24B 7/00 20060101ALI20221129BHJP
B24B 41/047 20060101ALI20221129BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221129BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B7/00 A
B24B41/047
H01L21/304 631
H01L21/68 N
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139573
(22)【出願日】2022-09-01
(62)【分割の表示】P 2021036787の分割
【原出願日】2016-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2015235201
(32)【優先日】2015-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】下田 誠
(72)【発明者】
【氏名】金澤 雅喜
(57)【要約】 (修正有)
【課題】脆性モード研削を抑制してウェハを安定して研削する加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置1は、粗研削ステージS2から精研削ステージS3にウェハWを移動させるインデックステーブル2と、粗研削ステージS2及び精研削ステージS3の上方を跨ぐように設けられたコラム4と、粗研削ステージS2の上方でコラム4に設けられ、ウェハWを粗研削加工する粗研削手段と、精研削ステージS3の上方でコラム4に設けられ、ウェハWを精研削加工する精研削手段と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハに粗研削加工及び精研削加工を行う加工装置であって、
粗研削ステージと精研削ステージとが少なくとも設けられ、前記粗研削ステージから前記精研削ステージに前記ウェハを移動させるインデックステーブルと、
前記粗研削ステージ及び前記精研削ステージの上方を跨ぐように設けられたコラムと、
前記粗研削ステージの上方で前記コラムに設けられ、前記ウェハを粗研削加工する粗研削手段と、
前記精研削ステージの上方で前記コラムに設けられ、前記ウェハを精研削加工する精研削手段と、
前記粗研削手段と前記コラムとの間に介装されて、前記粗研削手段を一定圧力で送る定圧送り機構と、
を備え、
前記粗研削手段の加工点と前記定圧送り機構が前記粗研削手段を送る送り込み方向とは、同一直線上に配置されていることを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハに粗研削加工及び精研削加工を行う加工装置に関し、特に、ウェハにダメージを与えることなく粗研削と精研削とを連続して行う加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)を薄膜に形成するために、ウェハの裏面を研削する裏面研削が行われている。
【0003】
ウェハの裏面研削を行う加工装置として、特許文献1には、カセット収納ステージ、アライメントステージ、粗研削ステージ、精研削ステージ、研磨ステージ、研磨布洗浄ステージ、研磨布ドレッシングステージ、及びウェハ洗浄ステージが設けられ、インデックステーブルがウェハを各ステージに移動させる平面加工装置が知られている。このような平面加工装置では、インデックステーブルの外側に配置された砥石送り装置の先端にそれぞれ片持ち支持された2つの砥石が設けられており、一方の砥石がウェハを粗研削し、他方の砥石がウェハを精研削する。
【0004】
このような加工装置では、
図9(a)に示すように、コラム91と、コラム91にボールネジ92を介して片持ち支持されたスピンドル93と、スピンドル93の下端に取り付けられた砥石94と、を備え、スピンドル93を回転させながら、ボールネジ92でスピンドル793を下降させ、砥石94でチャック95に載置されたウェハWを研削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような特許文献1記載の平面加工装置では、研削加工中に大きな垂直抗力が生じると、片持ち支持された砥石が跳ね上がるように傾く、いわゆる軸倒れが生じ、ウェハの研削面にあやめ形状の研削痕が残る等してウェハにダメージを与える虞があった。
【0007】
すなわち、
図9(a)に示したような砥石94を支持する点が加工する作用点(加工点)と離れた片持ち式の加工装置の場合、
図10(b)に示すように、研削加工中に砥石94の片方が持ち上がると、砥石94の姿勢をウェハWに対して平行に維持することができなくなる。その結果、局所的な部分に過剰な力がかかって、
図10に示すように、砥粒先端がウェハWに大きく切り込む箇所が発生し、クラックが生じてしまう問題があった。
【0008】
また、砥石送り機構を介して2つの砥石が連結されているため、研削加工中に砥石が振動すると、2つの砥石が共振して振幅が増幅され、ウェハの加工精度が低下する虞があった。
【0009】
そこで、ウェハの粗研削及び精研削を連続して高品位で行うという解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は、この課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ウェハに粗研削加工及び精研削加工を行う加工装置であって、粗研削ステージと精研削ステージとが少なくとも設けられ、前記粗研削ステージから前記精研削ステージに前記ウェハを移動させるインデックステーブルと、前記粗研削ステージ及び前記精研削ステージの上方を跨ぐように設けられたコラムと、前記粗研削ステージの上方で前記コラムに設けられ、前記ウェハを粗研削加工する粗研削手段と、前記精研削ステージの上方で前記コラムに設けられ、前記ウェハを精研削加工する精研削手段と、前記粗研削手段と前記コラムとの間に介装されて、前記粗研削手段を一定圧力で送る定圧送り機構と、を備え、前記粗研削手段の加工点と前記定圧送り機構が前記粗研削手段を送る送り込み方向とは、同一直線上に配置されている加工装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、コラムがインデックステーブルの粗研削ステージ及び精研削ステージを跨ぐように設けられ、粗研削手段が粗研削ステージの上方でコラムに支持されると共に精研削手段が精研削ステージの上方でコラムに支持される。すなわち、コラムが粗研削手段を支持する点と粗研削手段の加工点とが近くに配置され、コラムが精研削手段を支持する点と精研削手段の加工点とが近くに配置される。これにより、研削加工中に生じた垂直抗力に起因する粗研削手段及び精研削手段の軸倒れが抑制されるため、ウェハを高位品に研削加工することができる。
【0012】
また、ウェハが粗研削加工及び精研削加工で同一のチャックに保持されることにより、ウェハを保持するチャックを高剛性に形成可能で、砥石に対するウェハのチルト角等の加工条件が粗研削加工と精研削加工とで統一されるため、研削加工のスループットが向上する。さらに、コラムがインデックステーブルより広径で高剛性に形成可能なため、粗研削手段及び精研削手段の共振が抑制され、ウェハを高品位で研削加工することができる。
【0013】
さらに、粗研削加工の際に粗研削手段に作用する背分力が過大となる場合には、定圧送り機構が、粗研削手段を一時的に上昇させることにより、粗研削手段がフローティングした状態でウェハが延性モード研削されるため、ウェハにダメージを与えることなく安定して研削することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、コラムがインデックステーブルの粗研削ステージ及び精研削ステージを跨ぐように設けられ、粗研削手段が粗研削ステージの上方でコラムに支持されると共に精研削手段が精研削ステージの上方でコラムに支持されることにより、研削加工中に生じた垂直抗力に起因する粗研削手段及び精研削手段の軸倒れが抑制されるため、ウェハを高位品に研削加工することができる。また、ウェハが粗研削加工及び精研削加工で同一のチャックに保持されることにより、ウェハを保持するチャックを高剛性に形成可能で、砥石に対するウェハのチルト角等の加工条件が粗研削加工と精研削加工とで統一されるため、研削加工のスループットが向上する。さらに、コラムがインデックステーブルより広径で高剛性に形成可能なため、粗研削手段及び精研削手段の共振が抑制され、ウェハを高品位で研削加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例に係る加工装置を示す斜視図。
【
図3】
図1に示す加工装置の一部を省略した斜視図。
【
図9】従来の加工装置を示す模式図であり、(a)は、研削前の様子を示す図であり、(b)は、研削中の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る加工装置は、ウェハの粗研削及び精研削を連続して高品位で行うという目的を達成するために、ウェハに粗研削加工及び精研削加工を行う加工装置であって、粗研削ステージと精研削ステージとが少なくとも設けられ、粗研削ステージから精研削ステージにウェハを移動させるインデックステーブルと、粗研削ステージ及び精研削ステージの上方を跨ぐように設けられたコラムと、粗研削ステージの上方でコラムに設けられ、ウェハを粗研削加工する粗研削手段と、精研削ステージの上方でコラムに設けられ、ウェハを精研削加工する精研削手段と、を備えていることにより実現する。
【実施例0017】
以下、本発明の一実施例に係る加工装置1について、図面に基づいて説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0018】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0019】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0020】
図1は、加工装置1の基本的構成を示す斜視図である。
図2は、加工装置1の平面図である。
図3は、定圧送り機構を省略した加工装置1を示す斜視図である。
図4は、定圧送り機構を省略した加工装置1の平面図である。
【0021】
加工装置1は、並列に並べられた2つの砥石でウェハを連続的に研削加する。加工装置1は、ウェハWを裏面研削して薄膜に形成する。加工装置1を用いて研削加工が施されるウェハWは、シリコンウェハ、シリコンカーバイドウェハ等の高硬度・高脆性を示すものが好適であるが、これらに限定されるものではない。加工装置1は、インデックステーブル2と、インデックステーブル2の上方に配置されたメインユニット3と、を備えている。
【0022】
インデックステーブル2は、図示しないモータに連結された回転軸21回りに回転可能である。インデックステーブル2は、回転軸21を中心として円周上に120度の間隔を空けて配置された3つのチャック22を備えている。チャック22には、図示しない真空源に接続されており、チャック22上に載置されたウェハWを負圧で吸着する。チャック22は、図示しないモータに連結されており回転可能である。インデックステーブル2は、アライメントステージS1、粗研削ステージS2、精研削ステージS3に区画されている。チャック22の間には仕切板23が配置されており、各ステージで使用する加工液が隣接するステージに飛散することを抑制する。
【0023】
アライメントステージS1は、図示しない搬送装置等によってウェハWをチャック22上に搬送し、ウェハWを所定の位置に位置合わせするステージである。チャック22上に吸着保持されたウェハWは、粗研削ステージS2に送られる。
【0024】
粗研削ステージS2は、ウェハWが粗研削加工されステージである。粗研削加工されたウェハWは、精研削ステージS3に送られる。
【0025】
精研削ステージS3は、ウェハWが精研削加工されるステージである。精研削加工されたウェハWは、アライメントステージS1に送られ、図示しない搬送装置等によってチャック22から図示しないラック等に収容される。
【0026】
メインユニット3は、インデックステーブル2を跨ぐように配置されたアーチ状のコラム4と、粗研削ステージS2の上方でコラム4に取り付けられた粗研削手段5と、精研削ステージS3の上方でコラム4に取り付けられた精研削手段6と、を備えている。
【0027】
粗研削手段5は、粗研削砥石51と、粗研削砥石51が下端に取り付けられた第1のスピンドル52と、第1のスピンドル52を鉛直方向Vに昇降させる第1のスピンドル送り機構53と、を備えている。また、粗研削手段5には、第1の定圧送り機構としての定圧シリンダ54が設けられている。
【0028】
精研削手段6は、精研削砥石61と、精研削砥石61が下端に取り付けられた第2のスピンドル62と、第2のスピンドル62を鉛直方向Vに昇降させる第2のスピンドル送り機構63と、を備えている。また、精研削手段6には、第2の定圧送り機構としての定圧シリンダ64が設けられている。
【0029】
加工装置1には、第1のスピンドル52を鉛直方向Vに摺動可能に支持する第1のガイド7と、第2のスピンドル62を鉛直方向Vに摺動可能に支持する第2のガイド8と、が設けられている。
【0030】
加工装置1の動作は、図示しない制御ユニットによって制御される。制御ユニットは、加工装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御ユニットは、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御ユニットの機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0031】
このように、加工装置1は、アライメントステージS1のチャック22に吸着保持されたウェハWを同一のチャック22に載置した状態で、粗研削ステージS2、精研削ステージS3の順に連続して送る。また、ウェハWを吸着保持するチャック22は、ベルトコンベヤ等の他のウェハ保持装置に比べて、高剛性に形成可能である。これらにより、研削加工のスループットが向上すると共に、ウェハWを高品位に研削加工することができる。
【0032】
次に、コラム4について図面に説明する。コラム4は、平面視でコ字状に形成された基部41と、基部41の中央から突設された中央柱部42と、を備え、平面視でE字状に形成されている。
【0033】
基部41は、粗研削ステージS2及び精研削ステージS3を跨ぐように設けられている。これにより、平面視で、アライメントステージS1はコラム4の側方に露出している。したがって、ウェハWをチャック22に搬送したりチャック22から搬出したりする際に、搬送装置等が、コラム4に干渉されることなくチャック22にアクセスすることができる。基部41は、インデックステーブル2の外周に立設された2本の支柱41aを連結することで基部41の剛性が増大されている。
【0034】
中央柱部42は、平面視で粗研削ステージS2と精研削ステージS3の間に配置されている。中央柱部42の下端は、インデックステーブル2の上方までに延伸されている。中央柱部42は、後述する前方ガイド71、81が設置可能な長さを確保できれば如何なる長さであっても構わない。
【0035】
コラム4の前面4aには、鉛直方向Vに亘って凹設された溝4b、4cが並んで配置されている。溝4bには、粗研削手段5が収容されている。また、溝4cには、精研削手段6が収容されている。
【0036】
次に、粗研削手段5及び第1のガイド7について、
図5~8に基づいて説明する。
図5は、メインユニット3の側面図である。
図6は、メインユニット3の平面図である。
図7は、メインユニット3の上部を示す斜視図である。
図8は、延性モード研削の様子を示す模式図である。
【0037】
粗研削砥石51は、周方向に複数のカップ型砥石を下端に配置して構成されている。
【0038】
第1のスピンドル52は、粗研削砥石51を下端に取り付けたサドル52aと、サドル52a内に設けられて粗研削砥石51を回転させる図示しないモータと、を備えている。
【0039】
第1のスピンドル送り機構53は、サドル52aと後述する後方ガイド72とを連結するナット53aと、ナット53aを昇降させるボールネジ53bと、ボールネジ53bを回転させるモータ53cと、を備えている。
【0040】
モータ53cが駆動してボールネジ53bが正回転し、ナット53aが鉛直方向Vと平行なボールネジ53bの送り込み方向Dに下降することにより、サドル52aが下降する。
図5に示すように、送り込み方向Dは、粗研削砥石51がウェハWを加工する加工点P1を通って鉛直方向Vに平行な直線上にある。換言すると、ボールネジ53bの回転軸Oと粗研削砥石51の加工点P1とは、鉛直方向Vにおいて同一直線上に配置されている。
【0041】
メインユニット3には、ウェハWの厚みを計測する図示しないインプロセスゲージが設けられている。インプロセスゲージが計測したウェハWの厚みが所望の値に達すると、モータ53cが駆動してボールネジ53bが逆回転し、ナット53aに連結されたサドル52aが上昇することで、ウェハWと粗研削砥石51とが離間する。
【0042】
図6、7に示すように、定圧シリンダ54は、第1のスピンドル送り機構53のナット53aを挟んで水平方向Hの両側に1つずつ設けられている。定圧シリンダ54は、第1のスピンドル52及び第1のスピンドル送り機構53を溝4b内で吊設している。具体的には、定圧シリンダ54のピストンロッドの下端がナット53aに連結されている。定圧シリンダ54が第1のスピンドル送り機構53を挟んで水平方向Hの両側に設けられることにより、第1のスピンドル送り機構53が上昇する際に、第1のスピンドル送り機構53が水平方向Hに傾くことが規制される。
【0043】
定圧シリンダ54は、図示しないシリンダ、ピストン、ピストンロッド、コンプレッサ等から成る公知の構成を採用したエアシリンダである。定圧シリンダ54は、研削加工時に粗研削砥石51に作用する背分力がピストンロッドに伝わると、定圧シリンダ54のシリンダ内に充填された圧縮空気を押し戻すようにピストンを上昇させる。定圧シリンダ54の駆動圧は、粗研削砥石51がウェハWの臨界切り込み深さ(Dc値)だけ切り込んだ際に粗研削砥石51に作用する背分力に対応した値以下に設定される。Dc値は、ウェハWの材料毎に異なり、例えば、シリコンウェハで0.09μm、シリコンカーバイドウェハで0.15μmである。
【0044】
粗研削砥石51が所望の研削量(例えば、Dc値)より深く切り込もうとして、粗研削砥石51に作用する背分力が過大となる場合には、第1のスピンドル52及び第1のスピンドル送り機構53が一時的に上昇するため、粗研削砥石51がDc値以上に切り込むことが抑制される。
【0045】
第1のガイド7は、基部41及び中央柱部42の前面にそれぞれ1つずつ配置された前方ガイド71と、溝4bに配置された1つの後方ガイド72と、で構成される。前方ガイド71及び後方ガイド72は、例えば、リニアガイドである。前方ガイド71には、サドル52aが直接取り付けられている。また、後方ガイド72には、ナット54aを介してサドル52aが取り付けられている。
【0046】
前方ガイド71及び後方ガイド72は、鉛直方向Vに沿って互いに平行に設けられている。これにより、前方ガイド71及び後方ガイド72は、サドル52aを鉛直方向Vに沿って移動するように規制する。また、前方ガイド71及び後方ガイド72は、粗研削砥石51の加工点P1を挟むように配置されている。
【0047】
第1のガイド7は、
図6に示すように、平面視で、前方ガイド71及び後方ガイド72で形成される三角形T1内に、第1のスピンドル52が配置されている。具体的には、第1のスピンドル52の重心G1が、平面視で、前方ガイド71及び後方ガイド72で形成される三角形T1内に配置されている。なお、第1のガイド7は、第1のスピンドル52の軸倒れを抑制可能であれば如何なるものであっても良く、例えば、2本のリニアガイドを設け、平面視でこれらリニアガイドを結ぶ直線上に重心G1が配置されるように配置されるものであっても構わない。
【0048】
上述したように、粗研削砥石51の加工点P1がボールネジ53bの回転軸O上に配置されていることにより、粗研削砥石51に作用する背分力が過大となる場合には、第1のスピンドル52及び第1のスピンドル送り機構53が鉛直方向Vに逃げるようになっている。また、第1のスピンドル52の重心G1が前方ガイド71、後方ガイド72で形成される三角形T1内に配置されることにより、粗研削手段5の軸倒れが抑制されている。さに、粗研削砥石51に作用する背分力が過大となる場合に、定圧シリンダ54が第1のスピンドル52及び第1のスピンドル送り機構53が一時的に上昇させ、粗研削手段5の自重で一定の圧力で粗研削加工するため、
図8に示すように、粗研削砥石51の砥粒が研削加工中にウェハWに過剰に接触しない、いわゆるフローティングした状態でウェハWを延性モード研削することができる。
【0049】
次に、精研削手段6及び第2のガイド8について、
図6、7に基づいて説明する。なお、精研削手段6の基本的な構成は、粗研削手段5の基本的構成に対応するため、重複する説明を省略する。
【0050】
精研削砥石61は、周方向に複数のカップ型砥石を下端に配置して構成されている。
【0051】
第2のスピンドル62は、精研削砥石61を下端に取り付けたサドル62aと、サドル62a内に設けられて精研削砥石61を回転させる図示しないモータと、を備えている。
【0052】
第2のスピンドル送り機構63は、第1のスピンドル送り機構53と同様の構成であり、サドル62aと後方ガイド82とを連結する図示しないナットと、ナットを昇降させる図示しないボールネジと、ボールネジを回転させるモータ63aと、を備えている。ボールネジの回転軸と精研削砥石61の加工点P2とは、鉛直方向Vにおいて同一直線上に配置されている。モータ63aの運転は、上述したインプロセスゲージが計測した膜厚に基づいて制御される。
【0053】
定圧シリンダ64は、第2のスピンドル送り機構63を挟んで水平方向Hの両側に1つずつ設けられており、コラム4とナットとの間に介装されている。定圧シリンダ64は、第2のスピンドル62及び第2のスピンドル送り機構63を溝4c内で吊設している。精研削砥石61がDc値より深く切り込もうとして、精研削砥石61に作用する背分力が過大となる場合には、定圧シリンダ64が、第2のスピンドル62及び第2のスピンドル送り機構63を一時的に上昇させるため、精研削砥石61がDc値以上に切り込むことが抑制される。
【0054】
第2のガイド8は、基部41及び中央柱部42の前面にそれぞれ1つずつ配置された前方ガイド81と、溝4bに配置された1つの後方ガイド82と、で構成される。前方ガイド81及び後方ガイド82は、例えば、リニアガイドである。前方ガイド81には、サドル62aが直接取り付けられている。また、後方ガイド82には、第2のスピンドル送り機構63のナットを介してサドル62aが取り付けられている。
【0055】
前方ガイド81と後方ガイド82とは、鉛直方向Vに沿って互いに平行に設けられている。これにより、前方ガイド81及び後方ガイド82は、サドル62aを鉛直方向Vに沿って移動するように規制する。また、前方ガイド81及び後方ガイド82は、精研削砥石61の加工点P2を挟むように配置されている。
【0056】
第2のガイド8は、平面視で、前方ガイド81及び後方ガイド82とで形成される三角形T2内に、第2のスピンドル62が配置されている。具体的には、第2のスピンドル62の重心G2が、平面視で、前方ガイド81及び後方ガイド82で形成される三角形T2内に配置されている。これにより、第2のスピンドル62の周囲に配置された前方ガイド81及び後方ガイド82が、第2のスピンドル62の軸倒れを抑制している。なお、第2のガイド8は、第2のスピンドル62の軸倒れを抑制可能であれば如何ものであっても良く、例えば、2本のリニアガイドを設け、平面視でこれらリニアガイドを結ぶ直線上に重心G2が配置されるように配置されるものであっても構わない。
【0057】
上述したように、精研削砥石61の加工点P2が第2のスピンドル送り機構63のボールネジの回転軸上に配置されていることにより、精研削砥石61に作用する背分力が過大となる場合には、第2のスピンドル62及び第2のスピンドル送り機構63が鉛直方向Vに逃げるようになっている。また、第2のスピンドル62の重心G2が前方ガイド81、後方ガイド82で形成される三角形T2内に配置されることにより、精研削手段6の軸倒れが抑制されている。さらに、精研削砥石61に作用する背分力が過大となる場合に、定圧シリンダ64が第2のスピンドル62及び第2のスピンドル送り機構63が一時的に上昇させ、精研削手段6の自重で一定の圧力で粗研削加工するため、精研削砥石61の砥粒が研削加工中にウェハWに過剰に接触しない、いわゆるフローティングした状態でウェハWを延性モード研削することができる。
【0058】
上述した加工装置1を用いてSiC基板を延性モード研削する際の具体的な加工条件の一例について説明する。
【0059】
粗研削加工の加工条件を、粒度#400、結合度Mの粗研削砥石51を用意し、第1のスピンドル52の回転速度を2000rpm、チャック32の回転速度を301rpm、定圧シリンダ55の駆動圧力を0.4MPa、第1のスピンドル送り機構53の送り速度を1μm/sに設定し、研削量(厚み)を40μmとすると、算術平均粗さRaが34.5nmであった。
【0060】
また、精研削加工の加工条件を、粒度#3000、結合度Jの精研削砥石61を用意し、第2のスピンドル62の回転速度を2000rpm、チャック32の回転速度を301rpm、定圧シリンダ65の駆動圧力を0.8MPa、第2のスピンドル送り機構63の送り速度を0.4μm/sに設定し、研削量(厚み)を10μmとすると、算術平均粗さRaが6.9nmであった。
【0061】
このようにして、上述した加工装置1は、コラム4がインデックステーブル2の粗研削ステージS2及び精研削ステージS3を跨ぐように設けられ、粗研削手段5が前方ガイド71及び後方ガイド72に支持され、精研削手段6が前方ガイド81及び後方ガイド82に支持されている。すなわち、コラム4が粗研削手段5を支持する点と粗研削手段5の加工点P1とが近くに配置され、また、コラム4が精研削手段6を支持する点と精研削手段6の加工点P2とが近くに配置される。これにより、研削加工中に生じた垂直抗力に起因する粗研削手段5及び精研削手段6の軸倒れが抑制されるため、ウェハWを高位品に研削加工することができる。
【0062】
また、ウェハWが粗研削加工及び精研削加工で同一のチャック22に保持されることにより、ウェハWを保持するチャック22を高剛性に形成可能で、粗研削砥石51及び精研削砥石61に対するウェハWのチルト角等の加工条件が統一されるため、研削加工のスループットが向上する。さらに、コラム4が高剛性に形成可能なため、粗研削手段5及び精研削手段6の共振が抑制され、ウェハWを高品位で研削加工することができる。
【0063】
さらに、定圧シリンダ54、64の駆動圧を調整することにより、粗研削手段5及び精研削手段6の振動周期がずれるため、粗研削手段5及び精研削手段6が共振することを更に抑制することができる。
【0064】
なお、定圧送り機構の具体的構成は上述したものに限定されるものではなく、砥石に作用する過剰な背分力を逃がすようにスピンドルを上昇可能なものであれば如何なる構成であっても構わない。
【0065】
以下に、いくつかの加工装置の例を付記する。
[1]ウェハに粗研削加工及び精研削加工を行う加工装置であって、粗研削ステージと精研削ステージとが少なくとも設けられ、前記粗研削ステージから前記精研削ステージに前記ウェハを移動させるインデックステーブルと、前記粗研削ステージ及び前記精研削ステージの上方を跨ぐように設けられたコラムと、前記粗研削ステージの上方で前記コラムに設けられ、前記ウェハを粗研削加工する粗研削手段と、前記精研削ステージの上方で前記コラムに設けられ、前記ウェハを精研削加工する精研削手段と、前記粗研削手段の加工点を挟むように前記粗研削手段の外周に配置され、前記粗研削手段を前記コラムに対して鉛直方向に摺動可能に支持する少なくとも3つの第1のガイドと、を備えている加工装置。
この構成によれば、コラムがインデックステーブルの粗研削ステージ及び精研削ステージを跨ぐように設けられ、粗研削手段が粗研削ステージの上方でコラムに支持されると共に精研削手段が精研削ステージの上方でコラムに支持される。すなわち、コラムが粗研削手段を支持する点と粗研削手段の加工点とが近くに配置され、コラムが精研削手段を支持する点と精研削手段の加工点とが近くに配置される。これにより、研削加工中に生じた垂直抗力に起因する粗研削手段及び精研削手段の軸倒れが抑制されるため、ウェハを高位品に研削加工することができる。
また、ウェハが粗研削加工及び精研削加工で同一のチャックに保持されることにより、ウェハを保持するチャックを高剛性に形成可能で、砥石に対するウェハのチルト角等の加工条件が粗研削加工と精研削加工とで統一されるため、研削加工のスループットが向上する。さらに、コラムがインデックステーブルより広径で高剛性に形成可能なため、粗研削手段及び精研削手段の共振が抑制され、ウェハを高品位で研削加工することができる。
さらに、第1のガイドが粗研削手段を鉛直方向にのみ摺動可能に支持することにより、研削加工中に生じた垂直抗力に起因する粗研削手段の軸倒れが抑制されるため、ウェハを高位品に研削加工することができる。また、第1のガイドが粗研削手段の発振を垂直方向のみに限定するため、粗研削手段に並設された精研削手段への振動の影響を抑制することができる。
【0066】
[2]ウェハに粗研削加工及び精研削加工を行う加工装置であって、粗研削ステージと精研削ステージとが少なくとも設けられ、粗研削ステージから精研削ステージに前記ウェハを移動させるインデックステーブルと、粗研削ステージ及び精研削ステージの上方を跨ぐように設けられたコラムと、粗研削ステージの上方でコラムに設けられ、ウェハを粗研削加工する粗研削手段と、精研削ステージの上方でコラムに設けられ、ウェハを精研削加工する精研削手段と、前記精研削手段の加工点を挟むように前記精研削手段の外周に配置され、前記精研削手段を前記コラムに対して鉛直方向に摺動可能に支持する少なくとも3つの第2のガイドと、を備えている加工装置。
この構成によれば、コラムがインデックステーブルの粗研削ステージ及び精研削ステージを跨ぐように設けられ、粗研削手段が粗研削ステージの上方でコラムに支持されると共に精研削手段が精研削ステージの上方でコラムに支持される。すなわち、コラムが粗研削手段を支持する点と粗研削手段の加工点とが近くに配置され、コラムが精研削手段を支持する点と精研削手段の加工点とが近くに配置される。これにより、研削加工中に生じた垂直抗力に起因する粗研削手段及び精研削手段の軸倒れが抑制されるため、ウェハを高位品に研削加工することができる。
また、ウェハが粗研削加工及び精研削加工で同一のチャックに保持されることにより、ウェハを保持するチャックを高剛性に形成可能で、砥石に対するウェハのチルト角等の加工条件が粗研削加工と精研削加工とで統一されるため、研削加工のスループットが向上する。さらに、コラムがインデックステーブルより広径で高剛性に形成可能なため、粗研削手段及び精研削手段の共振が抑制され、ウェハを高品位で研削加工することができる。
さらに、第2のガイドが精研削手段を鉛直方向にのみ摺動可能に支持することにより、研削加工中に生じた垂直抗力に起因する精研削手段の軸倒れが抑制されるため、ウェハを高位品に研削加工することができる。また、第2のガイドが精研削手段の発振を垂直方向のみに限定するため、精研削手段に並設された粗研削手段への振動の影響を抑制することができる。
【0067】
[3]前記粗研削手段の加工点の鉛直上に配置され、前記粗研削手段と前記コラムとの間に介装されて、前記粗研削手段を一定圧力で送る第1の定圧送り機構を備えている[1]又は[2]に記載の加工装置。
この構成によれば、粗研削加工の際に粗研削手段に作用する背分力が過大となる場合には、第1の定圧送り機構が、粗研削手段を一時的に上昇させることにより、粗研削手段がフローティングした状態でウェハが延性モード研削されるため、ウェハにダメージを与えることなく安定して研削することができる。
【0068】
[4]前記精研削手段の加工点の鉛直上に配置され、前記精研削手段と前記コラムとの間に介装されて、前記精研削手段を一定圧力で送る第2の定圧送り機構を備えている[1]乃至[3]の何れか1つに記載の加工装置。
この構成によれば、精研削手段が所望の研削量より深く切り込もうとして、砥石に作用する背分力が過大となる場合には、第2の定圧送り機構が、精研削手段を一時的に上昇させることにより、精研削手段の砥石がフローティングした状態でウェハが延性モード研削されるため、ウェハにダメージを与えることなく安定して研削することができる。
【0069】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。