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特開2022-180795粘着剤組成物、粘着剤組成物の粘着剤層を有する積層体及び該積層体を用いた再シール可能な包装材
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  • 特開-粘着剤組成物、粘着剤組成物の粘着剤層を有する積層体及び該積層体を用いた再シール可能な包装材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180795
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤組成物の粘着剤層を有する積層体及び該積層体を用いた再シール可能な包装材
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20221130BHJP
   C09J 107/02 20060101ALI20221130BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221130BHJP
   C09D 177/00 20060101ALI20221130BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20221130BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20221130BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221130BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J107/02
C09J7/38
C09D177/00
C09D7/65
C09D201/00
B32B27/00 D
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087489
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 克則
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 貴司
(72)【発明者】
【氏名】中村 真
(72)【発明者】
【氏名】大原 伸一
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J004
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
3E086AD02
3E086AD05
3E086AD06
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB57
3E086CA01
3E086CA22
3E086CA25
3E086CA28
3E086DA08
4F100AJ11A
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4F100AK01C
4F100AK12A
4F100AK25A
4F100AK46C
4F100AK52C
4F100AL01A
4F100AL05A
4F100AL05C
4F100AN01A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA18A
4F100CA30A
4F100CB05A
4F100EH46
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4F100GB15
4F100GB18
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4F100YY00A
4J004AA10
4J004AB01
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4J038PB04
4J040DF021
4J040JA03
4J040JB09
4J040KA23
4J040KA29
4J040KA38
4J040LA02
4J040MA10
4J040NA06
(57)【要約】
【課題】初期接着性、リシール性を満足すると共に、開封時に必要以上の粘着性(べたつき)を抑えられるリシール性感圧粘着剤の提供。
【解決手段】(メタ)アクリレート(a1)とスチレン(a2)とを、(メタ)アクリレート(a1):スチレン(a2)=85:15~99:1の質量比で含有し、ガラス転移温度が-60℃~30℃の範囲であるスチレンアクリル共重合体(A)を含むエマルジョンと、天然ゴム(B)を含むラテックスエマルジョンと、水性媒体とを含有し、粘着剤組成物中の固形分全量において前記スチレンアクリル共重合体(A)を主成分とすることを特徴とする粘着剤組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート(a1)とスチレン(a2)とを、(メタ)アクリレート(a1):スチレン(a2)=85:15~99:1の質量比で含有し、ガラス転移温度が-60℃~30℃の範囲であるスチレンアクリル共重合体(A)を含むエマルジョンと、
天然ゴム(B)を含むラテックスエマルジョンと、
水性媒体とを含有し、粘着剤組成物中の固形分全量において前記スチレンアクリル共重合体(A)を主成分とすることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記粘着剤組成物において、スチレンアクリル共重合体(A)と前記天然ゴム(B)とを、質量比でスチレンアクリル共重合体(A):天然ゴム(B)=51:49~99:1の割合で含有する請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
更に、ガラス転移温度が40℃~120℃の範囲であるスチレンアクリル共重合体エマルジョン(C)を含有する請求項1又は2に記載の粘着剤組成物
【請求項4】
更に、界面活性剤、防腐剤、抗菌剤、ワックス及び消泡剤の少なくともいずれか一つを含有する請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記粘着剤組成物が再シール性を有する感圧性粘着剤である請求項1~4のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
基材の片面側に請求項1~5のいずれかに記載の粘着剤組成物の粘着剤層を有する積層体。
【請求項7】
前記基材の前記粘着剤層が設けられた面と反対の面に、付着防止層を有する請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記付着防止層が、熱可塑性ポリアミド系の樹脂を含有する付着防止組成物の塗膜である請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記付着防止組成物が、シリコーンオイルエマルジョン又はシリコーンオイルを含有する請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記付着防止組成物が、長鎖アルキルペンダント型ポリマーを更に含有する請求項8又は請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
少なくとも請求項6~10の積層体と他の基材とが前記粘着剤層を介して接着封止された包装材であって、
前記積層体と他の基材とを剥離して開封した場合に、前記粘着剤層が前記他の基材と再シール可能な包装材。
【請求項12】
前記積層体がプラスチック製の蓋材であり、前記他の基材がプラスチック製の容器であり、
前記粘着剤層が、前記蓋材の前記プラスチック容器との接着部分にのみ設けられた請求項11に記載の再シール可能な包装材。
【請求項13】
食品用の包装材である請求項11又は請求項12に記載の再シール可能な包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤組成物の粘着剤層を有する積層体及び該積層体を用いた再シール可能な包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプラスチックを始めとする海洋汚染問題を解決すべく、食品を始めとするパッケージ分野では、リサイクル、ゴミの削減などを見据えた素材の開発が盛んである。トレンドとしては、モノマテリアル化フィルムによるリサイクル適性向上や、使い捨てプラスチックの削減、ケミカルリサイクルが大きな潮流となっている。
【0003】
再シール(リシール)可能な感圧粘着剤を使用したパッケージは、嵌合蓋容器からトップシール化によるプラチックゴミの削減か可能となり、また、リシールによって食品内容物の長期保存が可能となることから、環境対策に適した素材である。このようなリシール性感圧粘着剤は、ハム・ソーセージ等の加工食品、ナッツ・菓子類、野菜、サラダ、惣菜類など、種々のパッケージにおいて利用が広がりつつある。例えば特許文献1には、第1と第2のシール部分の間に形成された感圧粘着剤が分離されて、感圧粘着剤が第1と第2のシール部分にそれぞれ部分的に接着する構成の再閉可能な包装が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-162693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成をナッツ、菓子類のようなパッケージに適用した場合、すなわち容器と蓋とをリシール性感圧粘着剤により接着する場合、粘着剤が容器側にも蓋側にも共に付着することから、容器側に付着した接着剤により食べづらくなったり、内容物がリシール部分に付着しやすくなるという問題がある。
【0006】
また、リシール性感圧粘着剤は、一度開封すると二回目以降の接着性が大幅に低下し、リシール性がほとんどなくなるという問題がある。その一方で、接着性を高くすると開封性が困難となり、易開封性が損なわれたり、パッケージ自体が破けてしまったりしてしまう。そのため、初期接着性、リシール性を満足すると共に、開封性も兼ね備えるリシール性感圧粘着剤の開発が望まれている。特にハム・ソーセージ等の加工食品、野菜、サラダ、惣菜類等の冷蔵・チルドの用途で使用する場合、初期接着性や再開封性が低下する事が課題となる。
【0007】
更に、接着性を高めると、製造時に塗工物を積層した際に、積層面で接着しやすくなってしまうことから、作業性が損なわれるという問題もある。
また、近年では消費者の増加、高齢化社会の到来に伴って、易開封技術(イージーオープン技術)のニーズが高まっており、開封を容易にすることはバリアーフリーのひとつでもあり、注目されている技術になっている。易開封技術にはシール蓋が簡単に剥がせる易剥離包装など、シール強度を弱くして剥離させる方法があるが、シール層自身が破壊されて剥離する凝集剥離タイプ、フィルム蓋材とシール層から剥離するようになっている層間剥離タイプ、異種の樹脂を接着させ、フィルム蓋材の容器の剥離強度を調節させた界面剥離タイプがあり、また、凝集剥離タイプはポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)とポリエチレン(PE)など、異種のプラスチック同士が熱シールできない事を利用して、容易に剥離できる設計にしたものがある。このフィルム蓋材に使われるフィルムはイージーピールフィルムと呼ばれており、易開封技術を施したものである。このような易開封技術は需要の高まりに伴い、更なる改良が求められている。
【0008】
本発明の構成は易開封技術を付与したものであり、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、初期接着性、リシール性を満足すると共に、開封時に必要以上の粘着性(べたつき)を抑えられるリシール性感圧粘着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリレート(a1)とスチレン(a2)とを、(メタ)アクリレート(a1):スチレン(a2)=85:15~99:1の質量比で含有し、ガラス転移温度が-60℃~30℃の範囲であるスチレンアクリル共重合体(A)を含むエマルジョンと、天然ゴム(B)を含むラテックスエマルジョンと、水性媒体とを含有し、粘着剤組成物中の固形分全量において前記スチレンアクリル共重合体(A)を主成分とすることを特徴とする粘着剤組成物である。
【0010】
また、本発明は、上記粘着剤組成物を用いた積層体又は包装材を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘着剤組成物は、初期接着性に優れ、また、一度開封した後の2回目以降の接着性(リシール性)に優れる。また、本発明の粘着剤組成物を用いた粘着層は、開封時に必要以上の粘着性(べたつき)が抑えられることから、内容物が接着層に付着することを防止できる等、利便性がよい。更に、適度な接着力を有することから開封性にも優れている。
【0012】
また、本発明の粘着剤組成物は、環境や人体への安全性が高い材料により形成できることから、食品パッケージに安心して用いられ、該粘着剤組成物を用いた再シール性を有する包装材等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の粘着剤組成物を設けた積層体の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の粘着剤組成物を設けた積層体の包装体の一例を示す概略断面図である。
図3図3は、図2に示す包装体を開封した状態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリレート(a1)とスチレン(a2)とを、(メタ)アクリレート(a1):スチレン(a2)=85:15~99:1の質量比で含有し、ガラス転移温度が-60℃~30℃の範囲であるスチレンアクリル共重合体(A)を主成分として含むエマルジョンと、天然ゴム(B)を含むラテックスエマルジョンと、水性媒体とを含有する。
【0015】
本発明の粘着剤組成物は食品パッケージの衛生性、安全性、食品への非移行性を考慮して、米国のFDA規格(Food and Drug Administration)や日本の食品衛生法(平成30年6月13日公布)のポジティブリストやその規則、欧州のプラスチック施行規則(PIM:Reg.No.10/2011)等に準拠した構成成分であることが好ましい。
【0016】
尚、本発明において「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称を表し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸の総称を表す。
【0017】
[スチレンアクリル共重合体(A)を含むエマルジョン]
スチレンアクリル共重合体(A)の構成成分として用いられる(メタ)アクリレート(a1)としては特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸iso-アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸ペンタフルオロプロピル、メタクリル酸オクタフルオロペンチル、メタクリル酸ペンタデカフルオロオクチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレンオキサイド基含有(メタ)アクリル単量体等、汎用の(メタ)アクリレートを使用することが出来る。
【0018】
中でも、アクリレートを有するホモポリマーがより低いガラス転移温度を呈することから好ましく、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましく、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましい。このような炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸iso-プロピル、アクリル酸アリル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-アミル、アクリル酸iso-アミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等が挙げられる。本発明のスチレンアクリル共重合体(A)の構成成分として用いられる(メタ)アクリレートは、1種類であっても2種類以上であってもよいが、2種類以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、中でも、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレート2種類以上を主成分として用いることが好ましい。
【0019】
スチレンアクリル共重合体(A)の構成成分として用いられるスチレン類(a2)は、スチレン、αメチルスチレン(o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレンのいずれかまたは混合物)、スチレンダイマー、スチレントリマー、スチレン誘導体(p-ジメチルシリルスチキシスチレン、p-tert-ブチルジメチルシロキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン)等のスチレン骨格を有する重合性化合物である。スチレン類は、1種類であっても2種類以上であってもよい。中でも、スチレンを用いることが好ましく、2種類以上のスチレン類を用いる場合は、全スチレン類のうちスチレンの質量割合を最も多くする等、スチレンを主成分として用いることが好ましい。
【0020】
スチレンアクリル共重合体(A)の構成成分として、(メタ)アクリル酸を含有していてもよい。また、スチレンアクリル共重合体(A)の構成成分として、スチレン類、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸以外の他の公知の重合性化合物を含有していてもよい。
【0021】
スチレンアクリル系共重合体(A)は、スチレン類と(メタ)アクリレートの共重合体がコアシェル構造を形成していてもよく、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体、及びスチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体がコアシェル構造を形成していてもよい。例えば、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体、及びスチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体のコアシェル構造とは、「スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体」が多く存在する領域と、「スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体」が多く存在する領域を有することにより、コアシェル構造を形成するものである。該コアシェル構造において、例えば、「スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体」が多く存在する領域に「スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体」が存在していてもよいし、また、これらの共重合体が互いに重合していてもよい。水媒体中での安定性を高めるためには、酸性基を有する「スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体」がシェル成分となることが好ましいが、「スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体」の一部がコア部に存在していてもよい。
【0022】
スチレンアクリル共重合体(A)において、(メタ)アクリレート(a1)とスチレン(a2)の割合は、質量比で85:15~99:1の範囲が好ましく、90:10~98:2の範囲がより好ましく、95:5~97:3の範囲が最も好ましい。(メタ)アクリレート(a1)とスチレン(a2)の割合を上記範囲にすることにより、粘着性を向上させることができる。
【0023】
スチレンアクリル共重合体(A)において、スチレン(a2)の割合は0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量%であることがより好ましく、1~10質量%であること最もが好ましい。また、スチレンアクリル共重合体(A)において、(メタ)アクリレート(a1)の割合は50~99.9質量%であることが好ましく、70~99.5質量%であることがより好ましく、80~99質量%であることが最も好ましい。
【0024】
スチレンアクリル共重合体(A)において、スチレン類、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸以外の他の公知の重合性化合物を含有する場合は、スチレンアクリル共重合体(A)における他の重合性化合物の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましい。
【0025】
スチレンアクリル共重合体(A)は、粘着剤組成物中の固形分全量において主成分として含まれる。粘着剤組成物中の固形分全量においてスチレンアクリル共重合体(A)を主成分とすることにより、常温領域だけでなく、冷蔵・チルド温度領域でも接着性強度を有しつつ、過剰な粘着性を抑えられたバランスの良い粘着層とすることができる。ここで、本発明において「主成分とする」とは、最も多い構成を占める成分を言う。すなわち、「粘着剤組成物中の固形分全量における主成分」とは、組成物中の固形分全量において最も多い成分を言う。具体的には、スチレンアクリル共重合体(A)は、粘着剤組成物中の固形分全量において50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが最も好ましい。
【0026】
スチレンアクリル共重合体(A)を含む前記エマルジョンのガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)は、-60℃~30℃の範囲であることが好ましく、中でも-60℃~20℃の範囲が好ましく、-60~-10℃の範囲がより好ましい。
【0027】
本発明においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0028】
スチレンアクリル共重合体(A)は公知の方法により製造することができる。例えば、シェルポリマーを形成するモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてシェルポリマーを形成する工程(i)と、コアポリマーを形成するモノマー混合物を工程(i)のシェルポリマーに供給し、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーにシェルを形成する工程(ii)により得られる。また、コアポリマーを形成するモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーを形成する工程(1)と、シェルポリマーを形成するモノマー混合物を工程(1)のコアポリマーに供給し、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーにシェルを形成する工程(2)により得られる。
【0029】
開始剤としては特に限定なく、乳化重合法等で使用される過酸化物、過硫酸塩、アゾ化合物、又はレドックス系、或いはこれらの混合物を使用すればよい。過酸化物としては例えば、過酸化水素、過酸化アンモニウム、過酸化ナトリウム、又は過酸化カリウム、t-ブチルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、及びベンゼンペルオキシドが挙げられる。また過硫酸塩としては例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、又は過硫酸カリウムが挙げられる。またアゾ化合物としては例えば、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、及び4,4’-(4-シアノバレリン酸)が挙げられる。またレドックス系は酸化剤と還元剤とから成り、酸化剤としては例えば先に挙げたうちの1の過酸化物、過硫酸塩、若しくはアゾ化合物、又は塩化ナトリウム若しくは塩化カリウム、又は臭化ナトリウム若しくは臭化カリウムが挙げられる。還元剤としては例えばアスコルビン酸、グルコース、又はアンモニウム、硫酸水素ナトリウム若しくは硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム若しくは亜硫酸水素カリウム、ナトリウムチオスルフェート若しくはカリウムチオスルフェート、又は硫化ナトリウム若しくは硫化カリウム、又は鉄(II)アンモニウムスルフェートが挙げられる。
中でも過硫酸塩、より好ましくは過硫酸アンモニウムが好ましい。
【0030】
前記モノマー混合物の重合は、例えば界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤等の添加剤の存在下で、例えば界面活性剤及び連鎖移動剤の存在下で行うことができる。これらの添加剤は、工程(i)及び/又は工程(ii)、工程(1)及び/又は工程(2)で使用する水性媒体に予め添加させておいてもよいし、工程(i)及び/又は工程(ii)、工程(1)及び/又は工程(2)で供給するモノマー混合物と混合させておいてもよい。
中でも、スチレンアクリル共重合体(A)は、モノマー混合物の重合をワックス(W2)の存在下で行うことが好ましい。ワックス(W2)を、工程(i)及び/又は工程(ii)、工程(1)及び/又は工程(2)で使用する水性媒体に予め添加させておいてもよいし、工程(i)及び/又は工程(ii)、工程(1)及び/又は工程(2)で供給するモノマー混合物と混合させておくことにより、スチレンアクリル共重合体(A)中にワックス(W2)がとりこまれた状態のコアシェル構造が形成できる。
【0031】
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば二ナトリウムドデシルジフェニルオキシド、ジスルホン酸塩等が挙げられる。また連鎖移動剤としても特に限定されないが、例えばα-メチルスチレン二量体、チオグリコール酸、亜リン酸水素ナトリウム、2-メルカプトエタノール、N-ドデシルメルカプタン、及びt-ドデシルメルカプタン等が挙げられる。キレート剤としては特に限定されないが、例えばエチレンジアミン四酢酸が挙げられる。
【0032】
また中和が必要な場合は、中和剤としてアンモニア、トリエチルアミン、アミノメチルプロパノール、モノエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の塩基類等を使用することができる。
【0033】
(天然ゴム(B)を含むラテックスエマルジョン)
天然ゴム(B)は、天然ラテックスを含有する材料、または、天然ラテックスから製造される材料をいう。天然ラテックスから製造される材料として、変性天然ゴムがあげられる。本発明の粘着剤組成物は、これらの1種又は2種以上の天然ゴムを用いることができる。
【0034】
天然ゴム(B)は、粘着剤組成物中の固形分全量において、5質量%以上含有することが好ましく、8質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましい。粘着剤組成物に天然ゴム(B)を含有させることにより、形成される粘着層の柔軟性と粘着性の維持、向上することから、可撓性のパッケージ材料に粘着層を設けた場合にも粘着層の密着性が向上する。
【0035】
粘着剤組成物において、スチレンアクリル共重合体(A)と前記天然ゴム(B)との割合は、質量比でスチレンアクリル共重合体(A):天然ゴム(B)=51:49~99:1の割合で含有することが好ましく、55:45~90:10の割合で含有することがより好ましく、60:40~85:15の割合で含有することが最も好ましい。
【0036】
(その他の樹脂)
粘着性組成物は、前記スチレンアクリル共重合体(A)及び天然ゴム(B)以外に、他の公知の樹脂を含有してもよい。他の樹脂としては特に限定されるものではないが、スチレン-(メタ)アクリル系共重合体(A)以外のスチレンアクリル共重合体を含有することが好ましく、ガラス転移温度が40℃~120℃の範囲であるスチレンアクリル共重合体を含有することがより好ましい。ガラス転移温度が40℃~120℃の範囲であるスチレンアクリル共重合体を含有することにより、例えば蓋材に粘着層を設けて容器と接着した包装体において、蓋を開封した際に容器側に粘着層が付着することによるベタツキを効果的に抑えられる。
【0037】
ガラス転移温度が40℃~120℃の範囲であるスチレンアクリル共重合体等のその他の樹脂は、粘着剤組成物中の固形分全量において、15質量%以下含有することが好ましく、10質量%以下含有することが好ましい。
【0038】
(その他の添加剤)
粘着剤組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において前記成分の他に、更に、界面活性剤、防腐剤、抗菌剤、ワックス、消泡剤等の添加剤が配合されていてもよい。中でも界面活性剤が更に配合されていることが好ましい。消泡剤としては、ポリマー系消泡剤、シリコン系消泡剤、フッ素系消泡剤が好ましく使用される。これら消泡剤としては乳化分散型及び可溶化型などいずれも使用できる。中でもポリマー系消泡剤が好ましい。前記消泡剤の添加量としては、全量の0.01重量%~1.0重量%が好ましい。
【0039】
(水性媒体)
粘着剤組成物に用いる水性媒体としては、水、水に溶解する水溶性有機溶剤等が使用できる。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、前記水としては、紫外線照射または過酸化水素添加等によって滅菌された水を用いることが、長期保存する場合に、カビまたはバクテリアの発生を防止することができるため好適である。
【0040】
水溶性有機溶剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシル、カルビトールなどのジエチレングリコールエーテル類;プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコールなどのアルコール類;スルホラン、エステル、ケトン、γ-ブチロラクトンなどのラクトン類、N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類、グリセリンおよびそのポリアルキレンオキサイド付加物など、水性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤などを挙げることができる。これらの水性有機溶剤は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。中でも水が最も好ましい。
【0041】
本発明の粘着剤組成物は、再シール性を有する感圧性粘着剤として用いることができ、再閉可能な包装材に好適に用いることができる。
【0042】
<積層体>
本発明の積層体は、基材の片面側に粘着剤組成物の粘着剤層を少なくとも有するものである。粘着剤層は、最終的な包装材や容器の形状及び用途に応じてプラスチック基材上の適切な部分に設けられるが、例えば図1に示すように、積層体10は、プラスチック基材2の片面側に粘着剤層1を有する構成とすることができる。粘着剤層1は上述した粘着剤組成物により形成される。
【0043】
積層体10は、粘着剤層1が設けられた面と反対の面に、付着防止層3を有することが好ましい。付着防止層3を有することにより、製造時に積層体が重ねられたときに、粘着剤層1と基材とが接着してしまうことを防止でき、作業性を大幅に向上できる。
【0044】
(付着防止層)
付着防止層は、積層体1の粘着剤層1と付着防止層3とが直接接触するように重ねた状態で、下記(1)及び(2)の両方の条件においてシール強度が0.5N/15mm以下の条件を満たすものが好ましい。
(1)10t荷重、室温、24時間
(2)5t荷重、40℃、8時間
このような条件を満たす材料として、付着防止層は熱可塑性ポリアミド樹脂を含むことが好ましく、軟化点80~140℃の熱可塑性ポリアミド樹脂を含むことがより好ましい。熱可塑性ポリアミド樹脂としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミドが挙げられる。
【0045】
付着防止層における熱可塑性ポリアミド樹脂の含有量は、固形分換算量で5質量%以上であることが好ましく、5~50質量%であることが好ましく、10~30質量%であることが更に好ましい。
【0046】
付着防止層は、シリコーンオイルエマルジョン又はシリコーンオイルを更に含むことが好ましい。シリコーンオイルエマルジョン又はシリコーンオイルを含有することにより、粘着剤組成物が裏面に付着するのを防止でき、抵抗なくスムーズな剥離性が付与できる。シリコーンオイルエマルジョン又はシリコーンオイルは、低粘度のものが好ましく、ジメチルシリコーンオイルエマルジョン又はジメチルシリコーンオイルがより好ましい。
【0047】
付着防止層におけるシリコーンオイルエマルジョン又はシリコーンオイルの含有量は、固形分換算量で0.1~2.0質量%であることが好ましく、0.2~1.5質量%であることがより好ましく、0.3~1.0質量%であることが更に好ましい。
【0048】
付着防止層は、長鎖アルキルペンダント型樹脂を更に含むことが好ましい。長鎖アルキルペンダント型樹脂は、以下の(a)~(c)のいずれかの繰り返し単位を有することが好ましい。中でも、(c)のポリビニルオクタデシルカーバメイトを繰り返し単位に有することが好ましい。その含有量は、固形分換算量で0.1~5.0質量%であることが好ましく、0.2~3.0質量%であることがより好ましく、0.5~2.0質量%であることが更に好ましい。
【0049】
【化1】
【0050】
本発明の積層体は、粘着層、付着防止層以外に、印刷インキ層、オーバーコート層、アンカーコート層等の他の層を有していてもよい。
【0051】
(基材)
本発明の基材は、プラスチックを材料に含む基材であることが好ましい。プラスチック基材として例えば、各種のプラスチックフィルムを用いることができる。利用可能なプラスチックフィルムとしては特に限定は無く、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)、CPP(無延伸ポリプロピレン)などのポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム;ナイロン6、ナイロン6,6、メタキシレンアジパミド(N-MXD6)などのポリアミド系フィルム;ポリ乳酸などの生分解性フィルム;ポリアクリロニトリル系フィルム;ポリ(メタ)アクリル系フィルム;ポリスチレン系フィルム;ポリカーボネート系フィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)系フィルム;ポリビニルアルコール系フィルム;ポリ塩化ビニリデン、等のKコート等、これらの顔料を含むフィルムが挙げられる。また、これらフィルムの表面にアルミナやシリカ等の無機や有機のバリアコート材が塗布された種々高機能フィルム、及びこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。また、複数のフィルムが積層されたラミネートフィルムであってもよい。
【0052】
本発明のプラスチック基材は、アルミ等の金属シートであることも好ましい。また、紙やアルミ等の金属箔又は金属シートにポリエチレン等のプラスチックフィルムがラミネートされた構成であってもよい。
【0053】
本発明の積層体は、例えば、プラスチック基材に粘着剤組成物を塗布することにより設けられる。塗布する場合の塗工方法としては公知の方法が使用できる。例えばロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を使用できる。また塗工後オーブン等で乾燥工程を設けてもよい。
【0054】
接着剤組成物の塗工後の固形分の膜厚としては所望の膜厚でよいが、例えば食品用のパッケージに使用する場合は、固形分として、2~15g/mの範囲であれば初期接着性と再シール性を十分に得ることができる。中でも3~10g/mの範囲であることがより好ましい。
【0055】
付着防止層を設ける場合は、付着防止層を構成する樹脂を溶剤に溶解した付着防止組成物をプラスチック基材に塗布することにより設けられる。塗工方法は上述した粘着剤組成物と同様の方法で行うことができる。溶剤は、各種有機溶剤を使用することができ、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤があげられ、これらを単独または2種以上の混合物で用いることができる。
【0056】
付着防止組成物の塗工後の固形分の膜厚としては所望の膜厚でよいが、例えば食品用のパッケージに使用する場合は、固形分として、0.01~5.0g/mの範囲であれば初期接着性と再シール性を十分に維持することができる。中でも0.1~3.0g/mの範囲であることがより好ましい。
【0057】
<包装材>
図2に、本発明の付着防止組成物を用いた包装体の一例を示す。図2に示すように、包装体100は、蓋材20と凹部を有する容器30とを有する包装体であり、内容物40(例えば、ハムや野菜、サラダなどの食品)が収容されている。
【0058】
蓋材20は、上述した積層体10を用いることができる。また、蓋材20は積層体10と他のプラスチックフィルム等の基材とがラミネートされているものでもよい。容器30は、可撓性の材料でも、硬質材料でもいずれでもよく、プラスチック、発泡性樹脂容器、フィルムがラミネートされた紙や金属等の種々の材料を用いることができる。プラスチックを用いる場合は、上述した積層体のプラスチック基材と同様の材料を用いることができる。蓋材20及び容器30を共に上述した積層体10で構成してもよいし、容器30のみを上述した積層体10を用いた構成としてもよい。リサイクル性の観点から、蓋材20と容器30とは同質の材料で構成されることが好ましく、例えば、蓋材20と容器30とが共にポリエチレンテレフタレート(PET)で構成されていたり、蓋材20と容器30とが共にポリスチレンやポリプロピレンで構成されていることが好ましい。
【0059】
蓋材20と容器30は、粘着剤層を介して接着される。本発明の粘着剤層は感圧性粘着剤により形成されているため、蓋材20と容器30とを粘着剤層を介して重ね合わせた後に適度な圧力を加えることにより密着される。このときの初期シール強度は、1.0~10.0N/15mmの範囲であることが好ましく、2.0~10.0N/15mmの範囲であることがより好ましい。2.0N/15mm以上であれば信頼性の高い密着性を得られ、一方、10.0N/15mm以下に調節することにより、開封時に蓋材が破壊することなく、優れた開封性を得られる。
【0060】
本発明の粘着剤層は再シール性を有することから、初期開封後にも再び蓋材20と容器30とを接着することができる。2回目以降のシール強度は、0.1~7.0N/15mmであることが好ましく、0.2~5.0N/15mmであることが好ましい。0.1N/15mm以上であれば接着性を保つことができ、一方、7.0N/15mm以下であると開封状態で過剰なベタツキが抑えられてパッケージとしての利便性に優れている。
【0061】
本発明の粘着剤層は蓋材20と容器30の接着面に粘着剤層が設けられていればよい。そのため、粘着剤層が、包装材の接着部分にのみ部分的に設けられている構成とすることが好ましい。例えば、図3図2に示す包装体を開封した状態の図であるが、蓋材20と容器30は接着部分4aと4bにおいて粘着剤層を介して接着される。この場合、粘着剤層は接着部分4aにのみ設ければよい。すなわち、粘着剤層は、粘着剤層はプラスチック基材2の周縁部の接着部分4aにのみ設けることが好ましい。もちろん、蓋材30の周縁部の接着部分4bに粘着剤層を設けてもよい。このように、基材に対し粘着剤層を部分的に設けることによって、内容物40と粘着剤組成物が直接接触することがなくなり、蓋材20の透明性を維持できる。また、内容物40が蓋材20に付着して商品の見栄えが悪くなることも防止できる。さらに、粘着剤層の塗布部分が削減することから、製造コストを削減することができる。
【0062】
本発明の粘着剤組成物を用いた包装材は、接着性及び再シール性に優れていることから、箱、袋、容器への加工性に優れており、図1に示す包装体以外の各種の包装体又は容器として利用できる。包装体は、例えば、パッケージ用の袋、ラッピングシート、箱、カップスリーブ、蓋、容器、皿、トレイ、カップ、カップホルダー等が挙げられる。これらの包装材は、菓子、ナッツ類、穀類、デザート、惣菜、サラダ、肉、魚、加工食品、生鮮食品等の食品用、薬、絆創膏、カット綿等の医薬・医療品、洗剤、サニタリー用品をはじめとする衛生品用、クリップ等の文具用等、各種の用途に利用できる。本発明の粘着剤組成物の再シール性を利用して、使い途中の物や食べ途中の食品を密閉保存する際に好適である。
【0063】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【実施例0064】
以下の実施例中の「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0065】
ガラス転移温度の測定は、示差走査熱量計(株式会社TAインスツルメント製「DSC Q100」)を用い、窒素雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲-80~450℃、昇温温度10℃/分の条件で走査を行う事で行った。
【0066】
<積層体の作製>
(実施例1~9、比較例1~8)
表1~表4の組成に従って混合した組成物をディスパーにて十分攪拌し粘着剤組成物を調整した。該粘着剤組成物を、表1及び表2に示す蓋材(10cm×10cm)となる基材に容器30の縁部分が接着する部分(8cm×8cm、幅3mm)に膜厚の厚みが固形分として、5g/mになるように部分塗布(パートコート)し、積層体をそれぞれ作製した。
【0067】
得られた積層体について、以下の評価を行った。
【0068】
(初期シール強度)
実施例1~9、比較例1~8の積層体を表1~4に示す被着体(シート)と重ね合わせ、2kgf/cmの荷重をかけてローラーを2往復することによりシールして、冷蔵庫で24時間放保管した(初期シール)。
【0069】
その後、冷蔵庫から取り出し、速度150mm/分で180°剥離することにより、初期シール強度を測定した。評価基準は以下のとおりである。
◎:シール強度3.0以上10.0N/15mm以下
〇:シール強度2.0以上3.0N/15mm未満
△:シール強度2.0N/15mm未満
×:接着しない
(2回目シール強度)
初期シール強度測定後の積層体を用いて同じ被着体(シート)と重ね合わせ、2kgf/cmの荷重をかけてローラーを1往復することによりシールして、速度150mm/分で180°剥離することにより、再シール強度を測定した。評価基準は以下のとおりである。
◎:シール強度1.5以上7.0N/15mm以下
〇:シール強度0.1以上1.5N/15mm未満
△:シール強度0.1N/15mm未満
×:接着しない
(3回目以降のシール強度)
初期シールを1回目として、速度150mm/分で180°剥離と、kgf/cmの荷重をかけてローラーを1往復することによりシールを繰り返して、再シール性を以下のように評価した。
◎:シール強度0.1N/15mm以上を10回以上保った
〇:シール強度0.1N/15mm以上を4回~9回以上保った
△:シール強度0.1N/15mm以上を1回~3回保った
×;接着しない
(剥離界面の状態)
初期シール強度測定後に、蓋材20と容器30側の粘着層の剥離界面の状態を確認した。
◎:剥がした部分が白く残らず、容器30側にベタツキもない
〇:剥がした部分が白く残らないが、容器30側を触るとベタツキがある
×:剥がした部分が白く残る
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
表中の記載の詳細は、以下のとおりである。
・スチレンアクリル系共重合体(A-1):アクリル酸ブチル/アクリル酸2エチルヘキシル/スチレン=5/90/5を重合して得られた共重合体を含むスチレンアクリル系共重合体(A-1)の分散体。なお、共重合体(A-1)のガラス転移温度は-58℃である。また、共重合体(A-1)の固形分は67%である。
・スチレンアクリル系共重合体(A-2):アクリル酸ブチル/アクリル酸メチル/アクリル酸/アクリル酸2エチルヘキシル/スチレン=2/15/80/3を重合して得られた共重合体を含むスチレンアクリル系共重合体(A-1)の分散体。なお、共重合体(A-2)のガラス転移温度は-43℃である。また、共重合体(A-2)の固形分は69%である。
・天然ゴム(R-1):固形分は60%の天然ゴムラテックス
・他樹脂(A-3:ガラス転移温度98℃、固形分46%のスチレンアクリル系エマルジョン
・PET:厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム
・PS:厚さ25μmのポリスチレンテレフタレートフィルム
・VMPET:厚さ25μmの酸化アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム
・アルミ:厚さ30μmのアルミ箔
・紙PE:ポリエチレンでラミネートされた紙(坪量200g/m
(実施例10~15)
実施例1と同様にして表5に記載の組成を用いて作製した積層体について、付着防止層を設けたフィルムと重ね合わせて剥離性を評価した。付着防止層を設けたフィルムは、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに表3の組成に従って混合した組成物を、塗工量が固形分として、0.1g/mになるように塗布して作製した。
【0075】
得られた積層体について、以下の評価を行った。
【0076】
(付着性)
実施例10~15の積層体を、付着防止層を設けたPETフィルムと粘着剤層と付着防止層とが重なり合うように重ね合わせて、10トン荷重、25℃で24時間加圧した。
【0077】
その後、速度150mm/分で180°剥離することにより、剥離強度を測定した。評価基準は以下のとおりである。
〇:シール強度0.5N以下で、粘着組成物が付着防止層に残らない
△:シール強度0.5N以下で、粘着組成物が付着防止層にやや残る
×:シール強度0.5Nより大きい
【0078】
【表5】
【0079】
表中の記載の詳細は、以下のとおりである。
・長鎖アルキルペンダント系樹脂:下記(c)のポリビニルオクタデシルカーバメイト構造を繰り返し単位に有する長鎖アルキルペンダント系樹脂
・脂肪酸アミド:軟化点130℃の熱可塑性ポリアミド樹脂
・シリコーンオイルエマルジョン:ジメチルシリコーンオイルエマルジョン
【0080】
【化2】
【0081】
(実施例16、17)
実施例1と同様にして作製した積層体をポリエチレンテレフタレート製の被着体(容器)と重ね合わせ、0.2MPa・sの加圧により接着して図2に示す容器を作製した。その際、実施例16は付着防止層を蓋材の前面に設けて作製した。実施例17は、付着防止層を図2に示すように容器との接着部分にのみ部分的に設けた。
図1
図2
図3