(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180882
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】締結部材用キャップの接着方法及びその接着構造
(51)【国際特許分類】
F16B 37/14 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
F16B37/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087621
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
(71)【出願人】
【識別番号】395013212
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラ建設
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】390012689
【氏名又は名称】株式会社エポゾール
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下里 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】田井 政行
(72)【発明者】
【氏名】赤松 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】石川 直
(72)【発明者】
【氏名】岩本 達志
(72)【発明者】
【氏名】赤嶺 健一
(72)【発明者】
【氏名】井合 雄一
(72)【発明者】
【氏名】福岡 麻里
(72)【発明者】
【氏名】矢ヶ部 菜月
(72)【発明者】
【氏名】吉田 利樹
(57)【要約】
【課題】キャップの接着に透明の接着剤を用いた場合でも、接着部分の変色を防止または大幅に抑制することのできる締結部材用キャップの接着方法及びその接着構造を提供する。
【解決手段】つば部12の接着面12aを透明なコーティング材30で被覆した後、接着剤20をコーティング材30の上に塗布し、コーティング材30の上に塗布された接着剤20によってつば部12を締結対象物の表面に接着するようにしたので、例えば接着剤20がキャップ10の樹脂に直接接触することによる接着部分の変色を防止することができ、接着部分の透明性を維持することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトを含む締結部材のうち締結対象物の表面から突出する部分に透明樹脂製のキャップを被着するとともに、キャップに形成されたつば部と締結対象物の表面とを透明な接着剤によって接着するようにした締結部材用キャップの接着方法であって、
前記キャップのうち少なくともつば部の接着面を透明なコーティング材で被覆した後、
前記接着剤をコーティング材の上に塗布し、
コーティング材の上に塗布された接着剤によってつば部を締結対象物の表面に接着する
ことを特徴とする締結部材用キャップの接着方法。
【請求項2】
ボルトを含む締結部材のうち締結対象物の表面から突出する部分に透明樹脂製のキャップを被着するとともに、キャップに形成されたつば部と締結対象物の表面とを透明な接着剤によって接着するようにした締結部材用キャップの接着方法であって、
前記キャップのうち少なくともつば部の接着面に前記接着剤を薄膜状に塗布して硬化させることにより第1の接着剤層を形成した後、
前記接着剤を第1の接着剤層の上に塗布することにより第2の接着剤層を形成し、
第2の接着剤層の接着剤によってつば部を締結対象物の表面に接着する
ことを特徴とする締結部材用キャップの接着方法。
【請求項3】
前記キャップのつば部のみを締結対象物の表面に接着する
ことを特徴とする請求項1または2記載の締結部材用キャップの接着方法。
【請求項4】
ボルトを含む締結部材のうち締結対象物の表面から突出する部分に透明樹脂製のキャップを被着するとともに、キャップに形成されたつば部と締結対象物の表面とを透明な接着剤によって接着するようにした締結部材用キャップの接着構造であって、
前記キャップのうち少なくともつば部の接着面を被覆する透明なコーティング材を備え、
コーティング材の上に塗布された前記接着剤によってつば部が締結対象物の表面に接着されている
ことを特徴とする締結部材用キャップの接着構造。
【請求項5】
ボルトを含む締結部材のうち締結対象物の表面から突出する部分に透明樹脂製のキャップを被着するとともに、キャップに形成されたつば部と締結対象物の表面とを透明な接着剤によって接着するようにした締結部材用キャップの接着構造であって、
前記キャップのうち少なくともつば部の接着面に前記接着剤を薄膜状に塗布して硬化させることにより形成された第1の接着剤層と、
第1の接着剤層の上に前記接着剤を塗布することによって形成された第2の接着剤層とを備え、
第2の接着剤層の接着剤によってつば部が締結対象物の表面に接着されている
ことを特徴とする締結部材用キャップの接着構造。
【請求項6】
前記キャップのつば部のみが締結対象物の表面に接着されている
ことを特徴とする請求項4または5記載の締結部材用キャップの接着構造。
【請求項7】
前記締結対象物の表面から突出する部分は、前記締結部材としてのボルトの先端側、ナット及びワッシャからなる
ことを特徴とする請求項4、5または6記載の締結部材用キャップの接着構造。
【請求項8】
前記締結対象物の表面から突出する部分は、前記締結部材としてのボルトの頭部側及びワッシャからなる
ことを特徴とする請求項4、5または6記載の締結部材用キャップの接着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば橋梁等の構造物の鋼製部分において、部材締結部分に用いられるボルトやナット等の締結部材の腐食を防止するための締結部材用キャップの接着方法及びその接着構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁等の構造物の鋼製部分においては、ボルトやナット等の締結部材によって鋼材を締結する部分が多く存在するが、ボルトやナットは風雨による錆等の腐食を生じやすいため、防錆塗装を施すなどの対策がとられている。しかしながら、ボルトやナットは形状が複雑であるため、塗料の塗布ムラを生じやすく、塗装のみでは長期間に亘って防食効果を維持することが困難であった。
【0003】
そこで、ボルトやナット等の締結部材のうち鋼材の表面から突出する部分に透明樹脂製のキャップを被着し、キャップを鋼材に接着することにより、ボルト及びナットの突出部分への雨水の浸入を防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように透明のキャップでボルト及びナットを覆うようにしたものでは、キャップの内部のボルトやナット等を外部から視認することができるため、ボルトやナット等の状態をキャップを外すことなく外部から目視点検することができる。また、キャップの接着には有色の接着剤が用いられるが、ボルト及びナットへの視認性を確保するため、キャップのつば部のみを接着剤で接着するようにしている。
【0006】
しかしながら、つば部のみを接着するようにしても、接着剤がナットやワッシャの周縁まで達し、接着剤で覆われた部分を目視することができなくなる場合があった。また、鋼材側の色が接着剤の色と異なる場合は、接着剤がリング状の異色部分として目立ち、構造物の鋼製部分の外観が損なわれる場合もあった。
【0007】
そこで、キャップの接着に透明の接着剤を用いれば、接着剤によって視認性が損なわれることがなくなる。しかしながら、キャップに用いられる透明の樹脂や接着剤には、樹脂と接着剤との接触により化学変化を生ずる物質が含まれている場合がある。例えば、キャップの樹脂に含まれる紫外線吸収剤は、接着剤に含まれる他の物質に反応して接着部分を黄変させる場合があり、このような接着部分の変色(例えば、透明から黄色みがかった透明に変色)を生ずると、前述のように有色の接着剤を用いた場合よりは改善されるものの、やはり視認性や外観が損なわれるという不具合を生ずる可能性がある。また、キャップの接着部分の変色による外観上の経時変化は、構造物の製造者や使用者にキャップの劣化を印象づけるおそれもあった。
【0008】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、キャップの接着に透明の接着剤を用いた場合でも、接着部分の変色を防止または大幅に抑制することのできる締結部材用キャップの接着方法及びその接着構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の締結部材用キャップの接着方法は、前記目的を達成するために、ボルトを含む締結部材のうち締結対象物の表面から突出する部分に透明樹脂製のキャップを被着するとともに、キャップに形成されたつば部と締結対象物の表面とを透明な接着剤によって接着するようにした締結部材用キャップの接着方法であって、前記キャップのうち少なくともつば部の接着面を透明なコーティング材で被覆した後、前記接着剤をコーティング材の上に塗布し、コーティング材の上に塗布された接着剤によってつば部を締結対象物の表面に接着するようにしている。
【0010】
また、本発明の締結部材用キャップの接着構造は、前記目的を達成するために、ボルトを含む締結部材のうち締結対象物の表面から突出する部分に透明樹脂製のキャップを被着するとともに、キャップに形成されたつば部と締結対象物の表面とを透明な接着剤によって接着するようにした締結部材用キャップの接着構造であって、前記キャップのうち少なくともつば部の接着面を被覆する透明なコーティング材を備え、コーティング材の上に塗布された前記接着剤によってつば部が締結対象物の表面に接着されている。
【0011】
これにより、接着剤とキャップとの間にコーティング材が介在することから、接着剤がキャップに直接接触することがなく、例えばキャップの樹脂と接着剤との化学変化による接着部分の変色を生じさせることがない。
【0012】
また、本発明の締結部材用キャップの接着方法は、前記目的を達成するために、ボルトを含む締結部材のうち締結対象物の表面から突出する部分に透明樹脂製のキャップを被着するとともに、キャップに形成されたつば部と締結対象物の表面とを透明な接着剤によって接着するようにした締結部材用キャップの接着方法であって、前記キャップのうち少なくともつば部の接着面に前記接着剤を薄膜状に塗布して硬化させることにより第1の接着剤層を形成した後、前記接着剤を第1の接着剤層の上に塗布することにより第2の接着剤層を形成し、第2の接着剤層の接着剤によってつば部を締結対象物の表面に接着するようにしている。
【0013】
また、本発明の締結部材用キャップの接着構造は、前記目的を達成するために、ボルトを含む締結部材のうち締結対象物の表面から突出する部分に透明樹脂製のキャップを被着するとともに、キャップに形成されたつば部と締結対象物の表面とを透明な接着剤によって接着するようにした締結部材用キャップの接着構造であって、前記キャップのうち少なくともつば部の接着面に前記接着剤を薄膜状に塗布して硬化させることにより形成された第1の接着剤層と、第1の接着剤層の上に前記接着剤を塗布することによって形成された第2の接着剤層とを備え、第2の接着剤層の接着剤によってつば部が締結対象物の表面に接着されている。
【0014】
これにより、第2の接着剤層の接着剤とキャップとの間に第1の接着剤層の接着剤が介在することから、第2の接着剤層の接着剤がキャップに直接接触することがなく、例えばキャップの樹脂と接着剤との化学変化による変色を生ずる場合があっても、樹脂と直接接触することのない第2の接着剤層の接着剤には変色が生じないことから、接着部分の全体としての変色が大幅に抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、キャップの樹脂と接着剤との化学変化による変色を生ずる場合があっても、接着部分の変色を防止または大幅に抑制することができるので、接着部分の透明性を維持することができ、外部からの目視による点検をキャップの内部全体に亘って確実に行うことができる。また、有色の接着剤を用いた場合のように接着部分がリング状の異色部分として目立つことがないので、締結対象物の外観が損なわれることがないという利点もある。更に、キャップの接着部分の変色による外観上の経時変化が視認されることがないので、締結対象物の製造者や使用者にキャップの劣化を印象づけるおそれがないという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態を示すキャップ及び締結部材の斜視図
【
図2】キャップを締結部材に被着した状態を示す斜視図
【
図4】締結部材へのキャップの被着工程を示す側面断面図
【
図5】締結部材へのキャップの被着状態を示す側面断面図
【
図6】締結部材へのキャップの被着工程を示す平面図
【
図7】締結部材へのキャップの被着工程を示す要部側面断面図
【
図8】締結部材へのキャップの被着工程を示す要部側面断面図
【
図9】締結部材へのキャップの被着工程を示す要部側面断面図
【
図10】締結部材へのキャップの被着状態を示す要部側面断面図
【
図11】本発明の他の実施形態における締結部材へのキャップの被着工程を示す要部側面断面図
【
図12】締結部材へのキャップの被着工程を示す要部側面断面図
【
図13】締結部材へのキャップの被着工程を示す要部側面断面図
【
図14】締結部材へのキャップの被着状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至
図10は本発明の一実施形態を示すもので、例えば橋梁等の構造物の鋼製部分において、部材締結部分に用いられるボルトやナットの腐食を防止するための締結部材用キャップの接着方法及びその接着構造を示すものである。
【0018】
同図に示す締結対象物としての鋼材1は、締結部材としてのボルト2、ナット3及びワッシャ4によって締結され、ナット3と鋼材1との間にワッシャ4が介装されている。鋼材1の表面にはボルト2の先端部、ナット3及びワッシャ4が突出しており、この突出部分をキャップ10によって覆うことにより雨水等から保護するようにしている。その際、キャップ10は接着剤20によって鋼材1に接着される。
【0019】
キャップ10は透明な合成樹脂からなり、例えば、ポリ塩化ビニル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、 ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とする混合物、PVCコンパウンド、プラスチゾル、老化防止剤(紫外線吸収剤)等を配合してなる周知の液状プラスチック成形材料が用いられる。キャップ10は、ボルト2、ナット3及びワッシャ4に被着されるキャップ本体11と、接着剤20によって鋼材1に接着されるつば部12とからなる。キャップ本体11は、ナット3から軸方向に突出するボルト2の先端部の外形に沿うように形成された第1の本体部11aと、ナット3の外形に沿うように形成された第2の本体部11bと、ナット3から径方向に突出するワッシャ4の周縁部の外形に沿うように形成された第3の本体部11cとからなる。つば部12はキャップ本体11の第3の本体部11cから径方向外側に延出するように形成され、径方向外側に向かって徐々に厚さが小さくなるように形成されている。
【0020】
接着剤20には、例えば一成分形変成シリコーン系の高耐候シーリング材等、周知の透明接着剤が用いられる。
【0021】
前記キャップ10は、ボルト2、ナット3及びワッシャ4に被着され、接着剤20によって鋼材1の表面に接着される。その際、接着剤20をキャップ10に直接塗布すると、接着剤20とキャップ10の樹脂との化学変化により接着部分が変色(例えば、透明から黄色みがかった透明に変色)する場合がある。これは、例えばキャップ10の樹脂に含まれる紫外線吸収剤が接着剤20に含まれる他の物質に反応して接着部分を黄変させることがあるためと考えられる。
【0022】
そこで、本実施形態では、以下のようにキャップ10を接着することにより、接着部分の変色を防止するようにしている。
【0023】
まず、
図8に示すようにつば部12の裏面(接着面12a)に透明な液状のコーティング材30を塗布する。その際、つば部12の接着面12aから第3の本体部11cの内側面に亘ってコーティング材30を塗布しておくことが好ましい。尚、コーティング材30としては、塗布後に硬化して透明性を維持するものであれば、周知の各種コーティング材を用いることができる。
【0024】
次に、キャップ10に塗布したコーティング材30が硬化した後、
図9に示すようにコーティング材30の上に接着剤20を塗布する。
【0025】
続いて、
図10に示すように、ボルト2、ナット3及びワッシャ4からなる突出部分にキャップ10を被着するとともに、接着剤20によってつば部12を鋼材1の表面に接着する。その際、キャップ10を被着する際の押圧により、つば部12の外側及び第3の本体部11cの内側面側に接着剤20が若干はみ出すように接着される状態が密閉性を高める上で好ましい。
【0026】
この後、接着剤20が硬化することによりキャップ10が鋼材1の表面に接着されるが、接着剤20とキャップ10との間にはコーティング材30が介在しているため、接着剤20がキャップ10に直接接触することがなく、例えばキャップ10の樹脂と接着剤20との化学変化による接着部分の変色を生じさせることがない。
【0027】
このように、本実施形態によれば、つば部12の接着面12aを透明なコーティング材30で被覆した後、接着剤20をコーティング材30の上に塗布し、コーティング材30の上に塗布された接着剤20によってつば部12を締結対象物の表面に接着するようにしたので、接着剤20がキャップ10の樹脂に直接接触することによる接着部分の変色を防止することができ、接着部分の透明性を維持することができる。
【0028】
これにより、接着剤20がワッシャ4の周縁まで達していても外部からの視認性が損なわれることがなく、目視による点検をキャップ10の内部全体に亘って確実に行うことができる。また、接着部分の透明性を維持することができるので、有色の接着剤を用いた場合のように接着部分がリング状の異色部分として目立つことがなく、鋼材1を含む構造物の外観が損なわれることがないという利点もある。更に、キャップ10の接着部分の変色による外観上の経時変化が視認されることがないので、鋼材1を含む構造物の製造者や使用者にキャップ10の劣化を印象づけるおそれがないという利点もある。
【0029】
また、キャップ10のつば部12のみを接着剤20によって鋼材1の表面に接着するようにしたので、接着剤20及びコーティング材30の使用量及びこれらの塗布作業を最小限にすることができ、ボルト2及びナット3による締結箇所が多数存在する構造物の鋼製部分においても、キャップ10の接着を効率よく行うことができる。
【0030】
図11乃至
図14は本発明の他の実施形態を示すもので、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0031】
前記実施形態では、つば部12の接着面12aにコーティング材30を塗布するようにしたものを示したが、本実施形態では、以下のように接着剤20のみを用いてキャップ10を接着するようにしている。
【0032】
まず、
図11に示すようにつば部12の接着面12aに接着剤20を薄膜状に塗布することにより第1の接着剤層21を形成する。その際、つば部12の接着面12aから第3の本体部11cの内側面に亘って第1の接着剤層21を塗布しておくことが好ましい。第1の接着剤層21はキャップ10の樹脂に直接接触しているので、
次に、キャップ10に塗布した第1の接着剤層21が硬化した後、
図12に示すように、つば部12の裏面に第1の接着剤層21の上から同じ接着剤20を塗布することにより第2の接着剤層22を形成する。
【0033】
続いて、
図13に示すように、ボルト2、ナット3及びワッシャ4からなる突出部分にキャップ10を被着するとともに、第2の接着剤層22の接着剤20によってつば部12を鋼材1の表面に接着する。その際、キャップ10を被着する際の押圧により、つば部12の外側及び第3の本体部11cの内側面側に接着剤20が若干はみ出すように接着される状態が密閉性を高める上で好ましい。
【0034】
この後、第2の接着剤層22の接着剤20が硬化することによりキャップ10が鋼材1の表面に接着されるが、第2の接着剤層22の接着剤20とキャップ10との間には第1の接着剤層21の接着剤20が介在しているため、第2の接着剤層22の接着剤20がキャップ10に直接接触することがなく、例えばキャップ10の樹脂と接着剤20との化学変化による接着部分の変色を生じさせることがない。
【0035】
このように、本実施形態によれば、つば部12の接着面12aに接着剤20を薄膜状に塗布することにより第1の接着剤層21を形成した後、接着剤20を第1の接着剤層21の上に塗布することにより第2の接着剤層22を形成し、第2の接着剤層の接着剤22によってキャップ10を鋼材1の表面に接着するようにしたので、例えばキャップ10の樹脂と接着剤20との化学変化による変色を生ずる場合があっても、キャップ10の樹脂と直接接触することのない第2の接着剤層22の接着剤には変色を生じさせないようにすることができる。即ち、接着部分に変色が生じた場合でも、接着剤20は薄膜状の第1の接着剤層21のみが変色することから、
図14に示すようにやや透明性は低下するものの、接着部分全体の変色は大幅に抑制することができる。
【0036】
これにより、前記実施形態と同様、接着剤20がワッシャ4の周縁まで達していても、接着剤20によって外部からの視認性が損なわれることがなく、目視による点検をキャップ10の内部全体に亘って確実に行うことができる。また、接着部分全体の変色を大幅に抑制することができるので、前記実施形態と同様、有色の接着剤を用いた場合のように接着部分がリング状の異色部分として目立つことがないことから、鋼材1を含む構造物の外観が損なわれることがなく、経時変化によるキャップ10の劣化を印象づけるおそれもないという利点がある。
【0037】
更に、本実施形態では、第1及び第2の接着剤層21,22からなる接着剤20のみにより、接着剤20の変色を大幅に抑制することができるので、前記実施形態のコーティング材30のような他の材料を別途必要とせず、低コスト化に有利であるという利点もある。
【0038】
この場合、キャップ10のつば部12のみを接着剤20によって鋼材1の表面に接着するようにしたので、接着剤20の使用量及びその塗布作業を最小限にすることができ、ボルト2及びナット3による締結箇所が多数ある構造物の鋼製部分においてもキャップ10の接着を効率よく行うことができる。
【0039】
尚、前記各実施形態では、鋼材1の表面から突出する部分がボルト2の先端側、ナット3及びワッシャ4からなるものを示したが、鋼材1の表面から突出する部分がボルトの頭部側及びワッシャからなるものにも本発明を適用することができる。
【0040】
また、前記実施形態は本発明の実施例であり、本発明は前記各実施形態に記載されたものに限定されない。特に、前記各実施形態におけるキャップ10及び接着剤20の材料は一例であり、他の材料を用いることも可能である。
【0041】
更に、前記各実施形態では、接着部分を変色させる原因として、キャップ10の樹脂に含まれる紫外線吸収剤が接着剤20に含まれる物質に反応して接着部分を黄変させる場合があることを例示したが、変色の原因は紫外線吸収剤によるものとは限らず、キャップ10の樹脂または接着剤20の材料や成分が前記各実施形態と異なる場合も含め、他の物質の化学変化による変色を生ずることもあると考えられる。
【0042】
また、前記各実施形態では、キャップ10のつば部12のみにコーティング材30または第1の接着剤層21の接着剤20を塗布するようにしたものを示したが、これらをキャップ10の内面全体に塗布するようにしてもよい。キャップ10のつば部12以外は接着剤20に直接接触することはないが、キャップ10の内面全体をコーティング材30または第1の接着剤層21で被覆しておくことにより、例えばつば部12に塗布した接着剤20に含まれる物質が揮発してキャップ10の内面に変色を生じさせることを防止することができる。
【0043】
更に、つば部12を含むキャップ10の内部に接着剤20を充填し、つば部12と鋼材1との接着のみならず、ボルト2、ナット3及びワッシャ4からなる突出部分全体とキャップ10とを接着するようにすれば、キャップ10の接着強度をより高めることができる。この場合、接着剤20は透明であるため、キャップ10の内部に充填しても視認性及び外観が損なわれることはない。
【符号の説明】
【0044】
1…鋼材、2…ボルト、3…ナット、4…ワッシャ、10…キャップ、11…キャップ本体、12…つば部、12a…接着面、20…接着剤、21…第1の接着剤層、22…第2の接着剤層、30…コーティング材。