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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181230
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】圧電性単結晶基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 33/00 20060101AFI20221201BHJP
   C30B 29/30 20060101ALI20221201BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
C30B33/00
C30B29/30 B
H01L21/304 611B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088046
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】柿本 実行
【テーマコード(参考)】
4G077
5F057
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BC32
4G077BC37
4G077CF10
4G077FG11
4G077FG13
4G077FJ08
4G077HA11
4G077HA12
5F057AA02
5F057BA02
5F057BB05
5F057BC09
5F057CA02
5F057CA05
5F057DA11
5F057DA15
(57)【要約】
【課題】ノッチを有する両面が鏡面研磨された圧電性単結晶基板の表裏の判別を確実に実施できる圧電性単結晶基板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】圧電性単結晶基板は、外周部が面取り形状であり、外周部にノッチを有する圧電性単結晶基板であって、外周部において、圧電性単結晶基板の中心を基準として、結晶方位方向に形成した第1のノッチと、第1のノッチと非対称となる位置に第2のノッチを有し、第2のノッチは、第1のノッチに対し表面粗さが相違し且つ目視判別が可能なノッチである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部が面取り形状であり、前記外周部にノッチを有する圧電性単結晶基板であって、
前記外周部において、前記圧電性単結晶基板の中心を基準として、結晶方位方向に形成した第1のノッチと、前記第1のノッチと非対称となる位置に第2のノッチを有し、
前記第2のノッチは、前記第1のノッチに対し表面粗さが相違し且つ目視判別が可能なノッチである、圧電性単結晶基板。
【請求項2】
前記第2のノッチは、前記圧電性単結晶基板の中心を基準として前記第1のノッチとなす角度が45°以下である、請求項1記載の圧電性単結晶基板。
【請求項3】
前記第2のノッチは、半透明である、請求項1又は請求項2に記載の圧電性単結晶基板。
【請求項4】
前記圧電性単結晶基板は、両面が鏡面である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧電性単結晶基板。
【請求項5】
圧電性単結晶基板の製造方法であって、
外周部にベベル加工が施された圧電性単結晶の薄板に対し、前記外周部において、前記薄板の中心を基準として結晶方位方向に第1のノッチを形成し、
前記第1のノッチと非対称となる位置に、前記第1のノッチに対し表面粗さが相違し且つ目視判別が可能な第2のノッチを形成することを含む、圧電性単結晶基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電性単結晶基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶から得られる基板は、様々な材料として用いられている。例えば、タンタル酸リチウム(LT)単結晶から得られるタンタル酸リチウム単結晶基板(LT単結晶基板)やニオブ酸リチウム(LN)単結晶から得られるニオブ酸リチウム単結晶基板(LN単結晶基板)等の圧電性単結晶基板(単結晶基板)は、移動体通信機器に用いられる電気信号ノイズ除去用の表面弾性波素子(SAWフィルター)の材料として用いられている。
【0003】
LT単結晶やLN単結晶は、主にチョクラルスキー法で製造されており、通常、高融点の貴金属ルツボを用い、電気炉中で育成され所定の冷却速度で冷却された後、電気炉から取り出される。育成された単結晶には、熱応力による残留歪みを取り除くため、融点に近い均熱下での熱処理、更に単一分極とするためのポーリング処理、すなわち、単結晶を室温からキュリー温度以上の所定温度まで昇温させ、単結晶に電圧を印加し、電圧を印加したままキュリー温度以下の所定温度まで降温させた後、電圧印加を停止して室温まで冷却する一連の処理が施される。育成された単結晶は、ポーリング処理後、外形を整えるために外表面が研削され、円柱状に加工された単結晶インゴットからウエハ状の単結晶基板へと加工される。
【0004】
円柱状の単結晶インゴットを加工する手順としては、通常、円筒研削工程、スライス工程、ベベル工程、ラッピング工程、ポリッシュ工程等の機械加工が順に行われる。また、ラッピング工程とポリッシュ工程との間に、エッチングが行われる場合もある。上記のような機械加工等を経て、単結晶インゴットからウエハ状の単結晶基板が製造される。
【0005】
従来、直径150mmφ以下の単結晶基板では図9に示すように結晶方位識別のため外周上の所定の位置にオリエンテーションフラット(OF)と呼ばれる直線部分が設けられていた。また、加工工程での表裏判定のためや両面鏡面基板の表裏判定のためにインデックスフラット(IF)と呼ばれるOFよりも短い直線部分が設けられていた。
【0006】
しかしながら、直径150mmφを超える単結晶基板ではOF、IFを設けると基板からデバイスを切り出す際の有効面積が減少すること、大口径化した単結晶基板では必然的に重量が増加し、しかもOFやIFを設けてなる単結晶基板をデバイス作製工程でスピンコータ等により高速回転させることにより加工した時には、OFやIFが欠けていることに伴うトラブルが発生することがわかってきた。すなわち、OFやIFを設けて成る単結晶基板は、当然ながらその外周が完全な円形でなく、OFやIFが切り欠けられている。このような外周が切り欠けられている単結晶基板をスピンコータ等により高速回転した時には偏荷重が発生し、それに伴いそのスピンコータのロータへ真空吸着させていた単結晶基板が高速回転で離脱したり、飛散したりするというトラブルが発生する。
【0007】
そこで、OFやIFを設けて成る図9に示す単結晶基板に代えて、V字形状のノッチを設けて成る図10に示す単結晶基板が開発された。この単結晶基板は、OFに代わる結晶方位識別法として単結晶基板の外周の一端に切り込み加工をしたノッチを設けたものである。
【0008】
ノッチを有する単結晶基板は、例えば、特許文献1に記載されるような以下の手順で加工される。円筒研削工程で単結晶の表面を円筒研削し、円柱状の単結晶インゴット(インゴット)に加工するとともに、インゴットの側面の特定の方向にV字形状の溝を形成する(この溝がインゴットをスライスした時の仮ノッチとなる)。スライス工程でインゴットをワイヤーソーで遊離砥粒を用いて円盤状の基板になるようにスライスする。ベベル工程において、スライス工程で得られた仮ノッチが形成された基板を、回転可能な基板研削用ステージ上に保持させ、基板を回転させたままステージを回転砥石に接近させて基板の外周部の端面の面取りを行う。面取り作業終了後、ステージの回転を停止するとともにステージを回転砥石から離し、回転砥石の代わりにノッチ研削用砥石を回転させるとともに、ステージをノッチ形成位置に接近させてノッチを形成する。ノッチの形成が終了した後、ラッピング工程で表裏両面を遊離砥粒を用いてラッピング加工し、エッチング工程で加工歪を除去し、その後、ポリッシュ工程で表面を片面鏡面研磨する。
【0009】
上記のような、表面側を鏡面研磨し、裏面側を鏡面研磨しない圧電性単結晶基板の場合、その表裏の判別を、研磨度合いを目視することにより行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許4151155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一方、近年においては、SAWフィルタはますます高性能化されてきている。このような高性能化したSAWフィルタは圧電性単結晶基板上に描画される回路の線幅が精密化してきており、このため回路パターン露光時の線幅の精度を向上させるために圧電性単結晶基板にはその平坦度を一段と向上させる要求がなされている。圧電性単結晶基板の平坦度を一段と向上させるために、近年の圧電性単結晶基板では、その両面を同時に鏡面研磨することが多くなってきた。しかし、このように両面を鏡面研磨した圧電性単結晶基板ではその表裏の判別が表面の研削度合いでは判別できないという問題が起こった。
【0012】
従来、OFやIFを設けた単結晶基板は、OFを基準にIFの位置により表裏を判別することができる。このため、両面を鏡面研磨した圧電性単結晶基板であっても、常にOFとIFが存在するため、容易に基板の表裏(表の面と裏面)の判別が可能である。
【0013】
一方、ノッチを設けた単結晶基板は、両面を鏡面研磨した場合、表面・裏面の外観は全く同一であるため、その表裏の判別ができないという問題が起こる。
【0014】
そこで、本発明は、ノッチを有する圧電性単結晶基板の表裏の判別を容易に確実に実施でき、特に、ノッチを有する両面が鏡面研磨された圧電性単結晶基板の表裏の判別を確実に実施できる圧電性単結晶基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の態様によれば、外周部が面取り形状であり、外周部にノッチを有する圧電性単結晶基板であって、外周部において、圧電性単結晶基板の中心を基準として、結晶方位方向に形成した第1のノッチと、第1のノッチと非対称となる位置に第2のノッチを有し、第2のノッチは、第1のノッチに対し表面粗さが相違し且つ目視判別可能なノッチである、圧電性単結晶基板が提供される。
【0016】
また、本発明の態様の圧電性単結晶基板において、第2のノッチは、圧電性単結晶基板の中心を基準として第1のノッチとなす角度が45°以下である構成でもよい。また、第2のノッチは、半透明である構成でもよい。また、圧電性単結晶基板は、両面が鏡面である構成でもよい。
【0017】
また、本発明の態様によれば、圧電性単結晶基板の製造方法であって、外周部にベベル加工が施された圧電性単結晶の薄板に対し、外周部において、薄板の中心を基準として結晶方位方向に第1のノッチを形成し、第1のノッチと非対称となる位置に、第1のノッチに対し表面粗さが相違し且つ目視判別が可能な第2のノッチを形成することを含む、圧電性単結晶基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ノッチを有する圧電性単結晶基板の表裏の判別を容易に確実に実施でき、特に、ノッチを有する両面が鏡面研磨された圧電性単結晶基板の表裏の判別を確実に実施できる圧電性単結晶基板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)及び(B)は、実施形態に係る圧電性単結晶基板の一例を示す図である。(A)は平面図である。(B)は、(A)に示すA方向に視た側面図である。
図2】実施形態に係る圧電性単結晶基板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3】円筒研削工程の一例を示す図である。
図4】溝形成工程の一例を示す図である。
図5】マーキング工程の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
図6】スライス工程の一例を示す図である。
図7】ベベル工程の一例を示す図であり、(A)は、薄板の外周部の上端をベベル加工する状態を示す図であり(B)及び(C)はベベル加工後の薄板の外周部の例を示す図であり、(B)は側面図、(C)は平面図である。
図8】ラッピング工程及びポリッシュ工程の一例を示す図である。
図9】従来のOF付き単結晶基板の一例を示す図である。
図10】従来のノッチ付き単結晶基板の一例を示す図である。
図11】LT単結晶基板の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することができる。なお、各図面においては、適宜、一部又は全部が模式的に記載され、縮尺が変更されて記載される。また、以下の説明において、「A~B」との記載は、「A以上B以下」を意味する。
【0021】
圧電性単結晶基板は、上記のように、表面弾性波素子(SAWフィルタ)の材料として用いられている。SAWフィルタは、例えば、基板主面方位42°RY前後で加工されたLT単結晶基板や主面方位128°RY前後で加工されたLN単結晶基板が用いられている。ここで、例えば、42°RYとは、図11に示すように、X軸を回転軸として、Y-Z平面においてY軸からZ軸方向に42°回転させた方向である。このような方位に対して垂直に加工された基板を、主面方位42°RYの基板と呼ぶ。このような単結晶基板は、結晶軸に傾きがあり所定の結晶方位の面のみを使用するため、基板の表裏を識別する必要がある。OFやIFを設けた単結晶基板は、OFを基準にIFの位置により表裏を判別することができる。このため、両面を鏡面研磨した圧電性単結晶基板であっても、常にOFとIFが存在するため、容易に単結晶基板の表裏(表の面と裏面)の判別が可能である。
【0022】
しかしながら、上述したように、基板の大口径化に伴い、OFやIFの代わりのノッチ付きの基板が増えてきているが、ノッチ付きの基板では、表裏の判別が難しい場合があった。特に、両面が鏡面研磨されたノッチ付きの基板では、表裏を判定することは不可能であった。
【0023】
本実施形態に係る圧電性単結晶基板は、上記のように表裏判定が不可能であるといった問題があった両面が鏡面研磨されたノッチ付きの基板においても、簡単に表裏を判定できるものである。以下、本実施形態に係る圧電性単結晶基板について説明する。図1(A)及び(B)は、実施形態に係る圧電性単結晶基板の一例を示す図である。(A)は平面図である。(B)は、(A)に示すA方向に視た側面図である。
【0024】
本実施形態に係る圧電性単結晶基板CPX(以下「単結晶基板」と略す場合もある。)は、外周部10が面取り形状であり、外周部10にノッチ11を有する圧電性単結晶基板であって、外周部10において、圧電性単結晶基板CPXの中心を基準として、結晶方位方向に形成した第1のノッチ11と、第1のノッチ11と非対称となる位置に第2のノッチ12を有し、第2のノッチ12は第1のノッチ11に対し表面粗さが相違し目視判別が可能なノッチであることを特徴としている。
【0025】
本実施形態の単結晶基板CPXに用いられる圧電性単結晶は、タンタル酸リチウム(LT)単結晶(LT単結晶)、ニオブ酸リチウム(LN)単結晶(LN単結晶)等の圧電性を有する単結晶である。
【0026】
本実施形態の単結晶基板CPXの外周部10は、基板の割れやチッピング防止のため、ベベル加工が施されたベベル加工面となっている。外周部10は、ベベル加工により、面取り形状となっている。面取り形状は、角部が面取りされる形状であれば、特に限定されず、例えば、ベベル形状、R形状、曲面状、テーパ状等である。ベベル加工は、上記の面取り形状にする加工である。ベベル加工は、砥石等による研削加工によって行われる。
【0027】
本実施形態の単結晶基板CPXでは、この単結晶基板CPXの外周部10の一部に、2ヵ所ノッチを設けている。本実施形態の単結晶基板CPXは、第1のノッチ11と第2のノッチを有する。第1のノッチ11は、基板の外周部10において、所定の結晶方位の方向に形成される。第1のノッチ11の形状は、特に限定はなく、目視で認識可能な形状であればよい。第1のノッチ11の形状は、例えば、断面形状がV字状でもよいし、U字状でもよい。第1のノッチ11の深さは、特に限定はないが、0.7mm~1.5mmであるのが好ましい。
【0028】
第2のノッチ12は、第1のノッチ11同様に基板の外周部10において、第1のノッチ11と非対称となる位置に形成される。第1のノッチ11の位置から基板の中心Cを基準として180°の方向P1(図1(A)参照)以外の位置に形成されればよい。言い換えれば、第2のノッチ12の位置は、単結晶基板CPXの中心Cを基準として、第1のノッチ11と非対称となる位置であれば、特に限定はない。
【0029】
なお、第2のノッチ12の位置は、単結晶基板CPXの中心Cを基準として第1のノッチ11となす角度θ1が45°以下の位置に形成することが好ましい。更に、第2のノッチ12の位置は、第1のノッチ11から1cmから3cm離れた距離L1の円周上(外周部10上)の位置であることがより好ましい。第1のノッチ11および第2のノッチ12は、近接して形成することで同一視野内になり、単結晶基板の表裏を容易に識別することができる。
【0030】
第2のノッチ12の形状は、特に限定はない。第2のノッチ12の形状は、第1のノッチ11と同様に、例えば、断面形状がV字状でもよいし、U字状でもよい。第2のノッチ12の深さは、特に限定はないが、0.7mm~1.5mmであるのが好ましい。第1のノッチ11と第2のノッチ12の形状は、形状を変えても良いし、同一の形状でもよい。なお、第1のノッチ11と第2のノッチ12で形状を変えることは、単結晶基板の表裏を、より容易に識別することができるため、より好ましい。
【0031】
第1のノッチ11と第2のノッチ12は、それぞれの表面粗さが相違し、目視判別できるノッチである。単結晶基板CPXの外周部10は、ベベル加工により、面取り形状となっている(図1(B)参照)。
【0032】
ベベル加工は、砥石等による研削加工によって行われる。この時の研削面は、一般的にくすんだ不透明な面である。ノッチを形成する加工面は、ベベル加工に用いる砥石を用いて加工するため、ベベル加工した研削面と同様の面となる。
【0033】
そこで、本実施形態では、第1のノッチ11と第2のノッチ12のどちらか一方のノッチを加工する時に用いる砥石の番手を替え、第1のノッチ11と第2のノッチ12の加工面の表面状態を変えることを特徴としている。
【0034】
単結晶基板CPXの外周部10は、ベベル加工により、砥石の番手が#800程度で行われており、表面状態はノッチ部を含めてくすんだ不透明な面である。このため、目視で判別がしやすいように、第1のノッチ11と第2のノッチ12の加工面のうちの一方の加工面は、砥石の番手を高番手の砥石を使用することで、表面状態を半透明にすることが好ましい。言い換えれば、第1のノッチ11の表面粗さ及び第2のノッチ12の表面粗さは、一方が不透明で、他方が半透明であるのが好ましい。なお、ノッチの表面状態(表面粗さ)は、視認して判別ができる程度の差があれば特に限定はない。例えば、第1のノッチ11と第2のノッチ12の加工に用いる砥石は、一方の砥石の番手#800に対して、他方の砥石の番手を高番手にする場合#1200以上が好ましく、#1500以上#2000以下がより好ましく、この時の表面粗さはRaで0.05μm~0.1μmとなる。
【0035】
前述したように、単結晶基板CPXの表裏の判別は、ノッチの大きさ等を変更することでも可能であるが、ノッチの大きさは0.7mm~1.5mmであり、この範囲内での大きさ変更(相違)では、目視による判別では一見では難しい。しかし、本実施形態のように、ノッチ部(第1のノッチ11と第2のノッチ12の総称したものを「ノッチ部」と称す)の表面状態による判別、特に不透明と半透明の場合は視認による判別がより容易である。また、単結晶基板CPXにおいて、第1のノッチ11及び第2のノッチ12は、上記のような表面状態の変更(相違)とともに、ノッチの大きさの変更(相違)を組み合わせることは、ノッチの判別(識別)がさらに容易になるため、より好ましい。
【0036】
上記のように、本実施形態に係る単結晶基板CPXは、外周部10において、圧電性単結晶基板CPXの中心Cを基準として、結晶方位方向に形成した第1のノッチ11と、第1のノッチ11と非対称となる位置に第2のノッチ12を有し、第2のノッチ12は第1のノッチ11に対し表面粗さが相違し且つ目視判別が可能なノッチである。なお、本実施形態の単結晶基板CPXにおいて、上記以外の構成は、任意の構成である。本実施形態に係る単結晶基板CPXは、第1のノッチ11及び第2のノッチ12の相対位置と表面状態により、単結晶基板CPXの表裏の判別を確実に実施することができる。特に、本実施形態に係る単結晶基板CPXは、従来では目視により表裏の判別が不可能であった両面が鏡面研磨された基板においても、基板の表裏を確実に判別することができる。本実施形態に係る単結晶基板は、基板の表裏判別を確実に実施できるため、表面と裏面を間違えたことにより表面弾性波素子等の材料として使用できないという問題を防止することができる。
【0037】
なお、単結晶基板CPXの表面又は裏面の状態は、特に限定されない。例えば、単結晶基板CPXにおいて、表面又は裏面は、鏡面であってもよいし、鏡面でなくてもよい。単結晶基板CPXの表面及び裏面が鏡面である場合、上記のように従来では目視により表裏を判定することが不可能であった基板の表裏を確実に判定することができるので、本実施形態に係る単結晶基板CPXの効果がより顕著となる。また、単結晶基板CPXの表面又は裏面が鏡面でない場合でも、基板の表裏を確実に判定することができるので、例えば製造工程中における表面と裏面の間違えを防止することができる。
【0038】
以下、本実施形態の単結晶基板の製造方法の一例を説明する。図2は、単結晶基板の製造方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する単結晶基板の製造方法は、一例であって、本実施形態の単結晶基板の製造方法を限定するものではない。また、本実施形態の単結晶基板の製造方法では、上述の本実施形態の単結晶基板で説明した事項は適用可能であり、適宜、その説明を省略又は簡略化する。また、本実施形態の単結晶基板の製造方法で説明した事項は、上述の本実施形態の単結晶基板においても適用可能であるとする。
【0039】
本実施形態の単結晶基板の製造方法は、図2に示すように、円筒研削工程S1と、溝形成工程S2と、マーキング工程S3と、スライス工程S4と、ベベル工程S5と、ラッピング工程S6と、ポリッシュ工程S7と、を備える。
【0040】
(円筒研削工程S1)
図3は、円筒研削工程S1の一例を示す図である。円筒研削工程S1は、育成された圧電性単結晶のインゴット(以下、インゴットと略す)の側面(円柱側面、外周面)に円筒研削を施し、外径が整えられた単結晶インゴットC1を得る工程である。円筒研削は、公知の方法により実施することができる。なお、本実施形態の単結晶基板の製造方法は、円筒研削工程S1を備えなくてもよい。例えば、本実施形態の単結晶基板の製造方法は、予め製造された円筒研削が施された圧電性単結晶インゴットを用いて実施することができる。
【0041】
(溝形成工程S2)
図4は、溝形成工程S2の一例を示す斜視図である。溝形成工程S2は、円筒研削が施されたインゴットC1の側面に対して、所定の溝14を形成する工程である。溝14は、インゴットC1の側面を研削加工することによって溝を形成する等の公知の方法により実施することができる。
【0042】
溝14は、インゴットC1の中心軸AX1方向に延びるように形成される。溝14は、第1のノッチ11となる第1の溝14aと、第2のノッチ12となる第2の溝14bの2ヵ所形成する。第1の溝14aは、所定の結晶方位を示す位置に形成され、所定の結晶方位の識別に用いられる。第2の溝14bは、第1の溝14aと非対称となる位置に形成される。第2の溝14bは、第1の溝14aの位置から180°方向以外の位置であれば、言い換えれば、第2の溝14bの位置は、単結晶C2の中心AX1を基準として、第1の溝14aと非対称となる位置であれば、特に限定はない。なお、第2の溝14bの位置は、単結晶の中心AX1を基準として第1の溝14aとなす角度θ1が45°以下の位置になるように形成することが好ましい。更に、第2の溝14bの位置は、第1の溝14aから1cmから3cm離れた円周上(外周部10上)の位置であることがより好ましい。
【0043】
第1の溝14a及び第2の溝14bは、ベベル工程S5により除去されずに残り、最終的に所定の結晶方位の識別等に用いられる第1のノッチ11、第2のノッチ12(図1(A)参照)となる部分である。第1のノッチ11、第2のノッチ12は、それぞれ、第1の溝14aと第2の溝14bの形状を元に、ベベル工程S5により最終形状に加工される。第1の溝14a及び第2の溝14bの深さ及びベベル工程S5における取り代は、第1の溝14a及び第2の溝14bがベベル工程S5により除去されず、ベベル工程S5の後に第1のノッチ11及び第2のノッチ12となるように調整されている。LT単結晶の場合、第1の溝14aは、図11に示す+X方向の結晶方位を示すように形成される。
【0044】
第1の溝14aと第2の溝14bの断面形状は、それぞれ、図4に示すように、V字状であるのが好ましい。なお、第1の溝14aと第2の溝14bの断面形状は、V字状に限定されず、例えばU字状等でもよい。第1の溝14aと第2の溝14bの深さは、特に限定はないが、例えば0.7mm~1.5mmであるのが、認識容易性及び加工ロスの等の観点から好ましい。また、第1の溝14aと第2の溝14bで、形状を変更してもよい。
【0045】
(マーキング工程S3)
図5(A)及び(B)は、マーキング工程の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。マーキング工程S3は、インゴットC1の側面(外周面)に、インゴットC1の軸AX1に対して溝14(第1の溝14a及び第2の溝14b)と非対称である部分にマークM1を形成する工程である。
【0046】
マークM1は、第1の溝14aや第2の溝14bの底部よりも外周側に形成されている。マークM1は、基板の表裏の判別が可能な位置に形成される。例えば、マークM1は、図5(B)に示す第1の溝14aの位置から中心軸AX1周り回転させた角度をθ2としたときに、θ2が180°となる位置でなく且つ第2の溝14bと干渉しない位置に配置される。これにより、第1の溝14aと第2の溝14bとマークM1との位置関係(相対位置)から基板の表裏を判定することが可能となる。第1の溝14a及び第2の溝14bとマークM1が、中心軸AX1を基準に対称な位置である場合、後に説明するスライス工程S4後において、基板の表裏の判別が困難になる。マークM1の位置は、特に限定されないが、第1の溝14aまたは第2の溝14bからマークM1までの距離L2(図5(B)参照)が1~5cmであると、表裏の判別がし易いため好ましい。例えば、図5(B)に示す例の場合、後述するスライス工程S4後の薄板CP1における第1の溝14a及び第2の溝14bに対するマークM1の位置が、時計周り方向の場合は表面、反時計周り方向の場合は裏面となり、基板の表裏の判別が容易となる。なお、マークM1の位置は、基板の表裏を判別可能な位置であれば、限定されない。
【0047】
マークM1の形成(マーキング)の方法は、特に限定はない。例えば、マークM1は、レーザーマーカー加工、ブラスト加工、ペンによる塗料の塗布等の方法を用いることができる。例えば、レーザーマーカー加工の場合、CO2レーザー(λ=10.6μm)、YAGレーザー(λ=1.06μm)、YVO4 SHGレーザー(λ=532nm)、YAG 第四高調波レーザー(λ=265nm)を用いることができる。また、ブラスト加工であれば#4000程度のFO砥粒を用いたサンドブラスト加工等を用いることができる。本実施形態での上記マーキングは、後工程のスライス工程S4後に、表裏の識別が可能で、かつ、後工程のベベル工程S5で除去できればよいため、ペンによる塗料(インク)の塗布によりマーキングを行うことが、加工工数も少なく好ましい。上記マーキングにおいて、ペン及び塗料(インク)の種類は、特に限定されないが、例えばマジック等のペンを用いることができる。ペンによるマーキングの場合、マークM1の位置及び大きさの限定はないが、例えば、インゴットC1の側面に第2の溝14bから時計周り方向に2cm離れた位置に、太さ5mmで、マジックなどのペンにてマーキングを行いマークM1を形成してもよい。
【0048】
(スライス工程S4)
図6は、スライス工程S4の一例を示す図である。スライス工程S4は、第1の溝14a及び第2の溝14bとマークM1とが形成されたインゴットC2をスライスし、薄板CP1に加工する工程である。スライス工程S4は、公知の方法で実施することができる。スライス工程S4は、例えば、マルチワイヤソー装置等の公知のワイヤソー装置により実施することができる。スライス工程S4により形成される薄板CP1には、第1の溝14aと第2の溝14bとマークM1とが形成されている。これにより、スライス工程S4により形成される薄板CP1は、基板の表裏の識別が可能となる。例えば、第2の溝14bから時計周り方向に2cm離れた位置にペン(塗料、インク)等を用いてマーキングを行った場合、第2の溝14bに対してマークM1の位置が時計周りの方向にある場合は表面、反時計周りの方向の場合は裏面であり、基板の表裏の判別は容易である。
【0049】
(ベベル工程S5)
図7(A)から(C)は、ベベル工程S5の一例を示す図であり、(A)は、薄板の外周部の上端をベベル加工する状態を示す図であり、(B)及び(C)はベベル加工後の薄板の外周部の例を示す図であり、(B)は断面図、(C)は平面図である。ベベル工程S5は、薄板CP1の外周部10を面取りし、第1のノッチ11及び第2のノッチ12を形成し、マークM1を除去する工程である。ベベル工程S5では、薄板CP1の外周部10を研削し、第1の溝14aと第2の溝14bの位置に、第1のノッチ11と第2のノッチ12を形成する加工が行われる。ベベル工程S5により、図7(C)に示す第1のノッチ11と第2のノッチ12が形成され、且つ、マークM1が除去された薄板CP3を得ることができる。なお、この薄板CP3は、上述した本実施形態の単結晶基板CPXに含まれる。
【0050】
ベベル工程S5は、従来のべべル加工に用いる装置と同様の装置を用いて実施することができる。ベベル工程S5は、例えば、図7(A)に示すように、コアディスクの周面の溝にリング状の面取り用砥石32が固着された装置が用いられる。ベベル工程S5では、図7(A)に示すように、基板保持台31に保持された薄板CP1の外周部10を、回転する面取り用砥石32の上側の傾斜面に押し当て薄板CP1の上縁の角部を研削したのち、基板保持台31を所定量だけ下降させて、薄板CP1の下縁の角部を面取り用砥石32の下側の傾斜面に押し当て研削する。これにより、薄板CP1の外周部の面取り加工が施され、マークM1が除去された薄板CP2が得られる。
【0051】
ノッチ部(第1のノッチ11及び第2のノッチ12)の加工は、外周部の面取り加工が施された薄板CP2の回転を止めて、第1の溝14a及び第2の溝14b位置に所定の形状の砥石を用いて加工することにより形成する。この第1のノッチ11(第1の溝14a)及び第2のノッチ12(第2の溝14b)を加工する時、どちらか一方を砥石の番手が違う砥石を用いて加工する。一方の砥石の番手は、高番手の砥石を使用することが好ましい。高番手の砥石を用いることにより、上記したように、第1のノッチ11と第2のノッチ12との表面状態(表面粗さ)を相違させるように形成することができ、表面粗さの相違を視認することにより、基板の表裏(第1のノッチ11と第2のノッチ12)を目視による判別が可能となる。中でも、第1のノッチ11及び第2のノッチ12のいずれかの表面状態を半透明にする(表面粗さが小さくなるように加工する)ことで、視認により第1のノッチ11と第2のノッチ12を容易に判別ができ、その結果、基板の表裏を容易に判別することができる。例えば、第1の溝14aを番手#800の砥石を用いて加工し第1のノッチ11を形成し、第2の溝14bを番手#1200以上の砥石、好ましくは#1500以上#2000以下の砥石を用いて加工して第2のノッチ12を形成してもよい。第1のノッチ11及び第2のノッチ12の形成に用いる砥石の番手に差を付けることで、加工後の第1のノッチ11及び第2のノッチ12の表面状態が変わり、表面粗さが相違するように形成することができ、その結果、視認により容易に第1のノッチ11と第2のノッチ12との判別(基板の表裏の判別)ができる。上記の加工により、第2のノッチ12が、第1のノッチ11に対し表面粗さが相違し且つ目視判別が可能なノッチが形成された薄板CP3が得られる。この薄板CP3は、上記下本実施形態の圧電性単結晶基板CPXに含まれる。
【0052】
ベベル工程S5では、上記したように、マークM1を除去するように、取り代が調整される。ベベル工程S5における取り代は、特に制限はないが、加工によるロスを低減させる観点から、取り代が少ないほど好ましい。マークM1が、上記のペン(塗料、インク)により形成される場合、ベベル加工による取り代を少なくすることができ、容易であるため、好ましい。
【0053】
(ラッピング工程S6)
図8は、ラッピング工程S6、及び、ポリッシュ工程S7の一例を示す平面図である。ラッピング工程S6は、ベベル工程S5で得られた薄板CP3を研磨し、表面形状及び厚さを調整する工程である。
【0054】
本実施形態では、ベベル工程S5以降の工程では、ベベル工程で形成された第1のノッチ11と第2のノッチ12とにより、基板の表裏を判別することができる。すなわち、本実施形態では、ベベル工程S5以降の工程は、目視により基板の表裏を容易に判別した後に実施することができる。
【0055】
ラッピング工程S6は、基板の表裏を判別した後に実施することができる。ラッピング工程S6は、公知のラッピング加工の方法により実施することができる。例えば、ラッピング工程S6は、両面ラッピング装置を用いることができる。ラッピング工程S6の条件は、特に制限されない。
【0056】
ラッピング工程S6の後、基板の表面形状及び厚さが調整された薄板CP4が得られる。薄板CP4は、第1のノッチ11及び第2のノッチ12を備える。薄板CP4は、上記した本実施形態の単結晶基板CPXに相当する。
【0057】
ラッピング工程S6の後、必要に応じてエッチング工程(エッチング処理)を行ってもよい。エッチング工程では、加工歪を除去する工程である。エッチング工程は、例えば、酸を用いたケミカルエッチングである。エッチング工程のエッチング量には、第1のノッチ11及び第2のノッチ12の表面粗さが相違し目視により識別可能であれば、特に制限はない。
【0058】
(ポリッシュ工程S7)
ポリッシュ工程S7は、ラッピング加工が施された薄板CP4に対し、薄板の主面F又は両面F、R(図1(B)参照)を鏡面に研磨するポリッシュ加工を行う工程である。本例のポリッシュ工程S7は、ラッピング工程S6により表面形状及び厚さが調整された薄板CP4の主面F側又は両面(主面F、裏面R)を鏡面研磨する工程である。ポリッシュ工程S7により得られた薄板CP5は、上記第1のノッチ11及び第2のノッチ12を有し、両面に鏡面研磨面を有する基板である。この薄板CP5は、上記した本実施形態の単結晶基板CPXに相当する。
【0059】
なお、ポリッシュ工程S7は、公知の片面ポリッシュ装置又は両面ポリッシュ装置を用いて実施することができる。片面ポリッシュ装置は、例えば、薄板の裏面をブロックに貼付け、ブロックを片面ポリッシュ装置のヘッドに固定して薄板下側(薄板表面側)を研磨布を貼り付けた下定盤に押し当て、薄板の表面と研磨布との間に研磨液を供給し、薄板と研磨布を回転させて薄板の片面を鏡面加工する装置である。
【0060】
以上のように、本実施形態の圧電性単結晶基板の製造方法は、外周部にベベル加工が施された圧電性単結晶の薄板に対し、外周部において、薄板の中心を基準として結晶方位方向に第1のノッチ11を形成し、第1のノッチ11と非対称となる位置に、第1のノッチ11に対しと表面粗さが相違し且つ目視判別が可能な第2のノッチ12を形成することを含む。なお、本実施形態の圧電性単結晶基板の製造方法において、上記以外の構成は、任意の構成である。本実施形態の圧電性単結晶基板の製造方法によれば、ノッチを有する圧電性単結晶基板の表裏の判別を容易に確実に実施でき、特に、ノッチを有する両面が鏡面研磨された圧電性単結晶基板の表裏の判別を確実に実施できる圧電性単結晶基板及びその製造方法を提供することができる。
【実施例0061】
以下に、本発明の実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
[実施例1]
圧電性単結晶として直径210mmのタンタル酸リチウム単結晶36°RY育成インゴットを用意した。このインゴットを42°RY面で面出しを行い、直径201mmφに円筒研削した。円筒研削したインゴットに対して、図11の+X方向に深さ1mmのV字状の第1の溝14a(V溝)を設け、第1の溝14aの位置から中心軸AX1周り回転させた角度をθ1としたときに、θ1が20°となる位置に深さ1mmのV字状の第2の溝14b(V溝)を設けるとともに表面から見て第2の溝14bから時計方向に2cm離れた位置に太さ5mmでマジックにてマーキングを行った。スライス工程でワイヤーソー切断装置を用いてスライスし580μm厚の薄板80枚を得た。ベベル工程で直径200.05mmφに研削し、第1の溝14a及び第2の溝14bの位置にノッチ加工を行った。この際、第1の溝14aを番手#800の砥石を用い、第2の溝14bを番手#1500の砥石を用いてそれぞれ加工し、第1のノッチ11と第2のノッチ12を形成した。第1のノッチ11の表面粗さはRa0.3μmであり、第2のノッチ12の表面粗さはRa0.05μmであった。表面状態は、第1のノッチ11は不透明であり、第2のノッチ12は半透明で視認が容易であった。ラッピング工程でGC#1000を用いて表裏面をそれぞれ25μm研磨した。エッチング工程で0.5μmエッチングを行い、ポリッシュ工程で表面および裏面を各15μm鏡面研磨を行った。上記により、第1のノッチ11と、第1のノッチ11と非対称となる位置に第2のノッチ12を有し、第2のノッチ12が第1のノッチ11に対し表面粗さが相違し且つ目視判別が可能な圧電性単結晶基板CPXを得た。
【0063】
得られた圧電性単結晶基板CPXデバイス形成装置に投入したところ、80枚全てが表面(主面)にデバイスが形成されており、表裏間違いは1枚も見られなかった。
【0064】
[比較例1]
圧電性単結晶として直径210mmのタンタル酸リチウム単結晶36°RY育成インゴットを用意した。このインゴットを42°RY面で面出しを行い、直径201mmφに円筒研削した。円筒研削したインゴットに対して、図11の+X方向に深さ1mmのV字状の溝(V溝)を設けたとともに表面から見てV溝から時計方向に2cm離れた位置に太さ5mmでマジックにてマーキングを行った。スライス工程でワイヤーソー切断装置を用いてスライスし580μm厚の薄板80枚を得た。スライス後の表面のV溝付近にマジックでマーキングを行った。ベベル工程で直径200.05mmφに研削し、V溝の位置にノッチ加工を行った。ラッピング工程でGC#1000を用いて表裏面をそれぞれ25μm研磨した。エッチング工程で0.5μmエッチングを行い、ポリッシュ工程で表面および裏面を各15μm鏡面研磨を行った。上記により圧電性単結晶基板を得た。
【0065】
得られた圧電性単結晶基板をデバイス形成装置に投入したところ、80枚中5枚で裏面にデバイスが形成されており、表裏間違いは5枚であった。
【0066】
上述の実施例及び比較例の結果から、本実施形態に係る圧電性単結晶基板は、第1のノッチと第2のノッチの相対位置及び表面状態により、ノッチを有する圧電性単結晶基板の表裏の判別を確実に実施することができることが確認され、従来では目視により表裏の判別が不可能であったノッチを有する両面が鏡面研磨された基板においても、基板の表裏を確実に実施することができることが確認される。
【0067】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態等で説明した態様に限定されない。上述の実施形態等で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態等で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態等で引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、ノッチ付き両面研磨圧電性単結晶基板のデバイス工程で表裏間違いによる不良を防止できる。
【符号の説明】
【0069】
C1、C2:圧電性単結晶インゴット
CP1~CP2:薄板(圧電性単結晶薄板)
CPX、CP3~CP5:圧電性単結晶基板
10:外周部
11:第1のノッチ
12:第2のノッチ
14:溝
14a:第1の溝
14b:第2の溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11