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特開2022-181292立体映像生成装置及びそのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181292
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】立体映像生成装置及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/128 20180101AFI20221201BHJP
   H04N 13/307 20180101ALI20221201BHJP
   H04N 13/366 20180101ALI20221201BHJP
   G02B 30/10 20200101ALI20221201BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20221201BHJP
【FI】
H04N13/128
H04N13/307
H04N13/366
G02B30/10
G06T19/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088166
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 山斗
【テーマコード(参考)】
2H199
5B050
5C061
【Fターム(参考)】
2H199BA19
2H199BB66
5B050BA09
5B050EA07
5B050EA12
5B050EA27
5B050FA02
5B050FA06
5C061AA06
5C061AB14
5C061AB18
(57)【要約】
【課題】3次元モデルのサイズに起因する違和感を軽減できる立体映像生成装置を提供する。
【解決手段】立体映像生成装置4は、3次元モデルを奥行き圧縮する奥行き圧縮部40と、初期観察位置で奥行き圧縮した3次元モデルの頂点座標と、移動後観察位置で奥行き圧縮した3次元モデルの頂点座標とを算出する頂点座標算出部41と、頂点座標算出部41が算出した初期観察位置における頂点座標と移動後観察位置における頂点座標との間に、奥行き圧縮後の3次元モデルの頂点座標を変換する頂点座標変換部42と、頂点座標変換部42が変換した頂点座標で3次元モデルの立体映像を生成する要素画像レンダリング部43と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の3次元モデルを奥行き圧縮し、立体映像を生成する立体映像生成装置であって、
所定の初期観察位置において、前記3次元モデルを奥行き圧縮する奥行き圧縮部と、
前記初期観察位置から移動した移動後観察位置が入力され、前記初期観察位置で奥行き圧縮した3次元モデルの頂点座標と、前記移動後観察位置で奥行き圧縮した3次元モデルの頂点座標とを算出する頂点座標算出部と、
前記頂点座標算出部が算出した前記初期観察位置における頂点座標と前記移動後観察位置における頂点座標との間に、奥行き圧縮後の前記3次元モデルの頂点座標を変換する頂点座標変換部と、
前記頂点座標変換部が変換した頂点座標で前記3次元モデルの立体映像を生成する立体映像生成部と、
を備えることを特徴とする立体映像生成装置。
【請求項2】
前記頂点座標変換部は、
頂点座標移動量の水平方向成分及び垂直方向成分を重み付ける第1パラメータ、及び、前記頂点座標移動量の奥行き方向成分を重み付ける第2パラメータが予め設定され、
前記初期観察位置から前記移動後観察位置までの前記3次元モデルの頂点座標の移動量を、前記第1パラメータ及び前記第2パラメータが含まれるパラメータで重み付けることにより、奥行き圧縮後の前記3次元モデルの頂点座標を求めることを特徴とする請求項1に記載の立体映像生成装置。
【請求項3】
前記第1パラメータ及び前記第2パラメータは、主観評価実験の実験結果に基づいて、予め設定されたことを特徴とする請求項2に記載の立体映像生成装置。
【請求項4】
前記立体映像生成部は、前記立体映像として、インテグラル方式の要素画像を生成することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の立体映像生成装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の立体映像生成装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体映像生成装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インテグラル方式などの空間像再生型ディスプレイは、特別なメガネなしで、あたかもそこに被写体があるかのような立体表示が可能なディスプレイである。このような空間像再生型ディスプレイでは、水平垂直の両眼視差及び運動視差を提示することができる。また、空間像再生型ディスプレイでは、光線の密度を高めることによって眼球のピント調節が働くことから、輻輳や調節の不一致を回避することができる。
【0003】
一方、このような空間像再生型ディスプレイでは、奥行きの広いシーンを表示しようとするとぼやけが発生することが知られている(非特許文献1)。例えば、インテグラル方式のディスプレイは、平面状のレンズアレイと要素画像を表示する表示素子とを重ねて配置しており、レンズアレイ面から離れるほど空間周波数が低下し、ぼやけが発生する。このぼやけをハードウェア的に解決するためには、要素画像を表示するフラットパネルディスプレイの画素ピッチを数ミクロンのオーダーまで細かくする必要があり、システム開発の負担となる。
【0004】
そこで、図7に示すように、3Dシーンの奥行き範囲を、より狭い奥行き範囲に圧縮することで、ぼやけを回避する奥行き圧縮手法が提案されている(非特許文献2)。この奥行き圧縮手法は、以下の式(1)に示すように、被写体の3次元モデルPを構成する全ての頂点座標p=(x,y,z)を、奥行き圧縮後の3次元モデルP´の頂点座標p´=(x´,y´,z´)に変換する。
【0005】
【数1】
【0006】
なお、図7では、左手座標系を想定しており、観察位置(左右眼の中心)vを原点とし、水平方向をX軸、垂直方向をY軸、奥行き方向をZ軸とする。また、X軸及びY軸で構成されるX-Y平面がディスプレイ面と平行であり、Z軸がディスプレイ面に鉛直であるものとする。
【0007】
なお、オリジナルプレーンとは、奥行き圧縮前における3次元モデルPの奥行き位置dのことである。また、zが観察位置vからオリジナルプレーンまでの奥行きを表す。
また、ターゲットプレーンとは、奥行き圧縮後における3次元モデルP´の奥行き位置d´のことである。また、z´が観察位置vからターゲットプレーンまでの奥行きを表す。
また、ディスプレイ面とは、空間像再生型ディスプレイの表示面を表す。また、Lが観察位置vからディスプレイ面までの距離(視距離)を表す。
【0008】
図8に示すように、式(1)のf(z)は、奥側から手前側に3次元モデルPの頂点を移動させるための奥行き圧縮関数であり、奥行き値をzからz´に減少させる。また、式(1)のx´,y´の変換は、原点から3次元モデルPを観察した際、奥行き圧縮の前後で網膜像のサイズを一定にするための処理である。従って、原点から3次元モデルPを単眼視した際には、奥行き圧縮の前後で見た目に違いは生じない。なお、図8では、z=1.0にディスプレイ面が位置する。
【0009】
その一方、原点から離れた観察位置vで奥行き圧縮された3次元モデルPを観察すると、形状の歪みが顕著になる。そこで、この形状の歪みを抑制するために原点が観察位置vと常に一致するように更新する動的な奥行き圧縮手法が提案されている(非特許文献3)。この動的な奥行き圧縮手法では、観察位置vを移動させても、更新された原点から単眼視する限りは、網膜像が奥行き圧縮の前後で一定となる。
【0010】
なお厳密には、原点が観察位置vと一致していても、実際には両眼で同時に観察するため、奥行き圧縮の前後で網膜像にわずかな差が生じ、両眼視差量が変化する。具体的には、原点から左右に約3cmずれた両目位置で観察されるので、立体像が圧縮前よりもわずかに接近しているように感じられる場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Hoshino H, Okano F, Isono H, Yuyama I. Analysis of resolution limitation of integral photography. Opt Soc Am. 1998;15(8):2059-2065.
【非特許文献2】Sawahata Y, Morita T. Estimating Depth Range Required for 3-D Displays to Show Depth-Compressed Scenes Without Inducing Sense of Unnaturalness. IEEE Trans Broadcast. 2018;64(2):488-497.
【非特許文献3】Miyashita Y, Sawahata Y, Katayama M, Komine K. Depth boost: Extended depth reconstruction capability on volumetric display. In: ACM SIGGRAPH 2019 Talks, SIGGRAPH 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図9(a)に示すように、従来の動的な奥行き圧縮手法では、観察位置vから観察位置vまで移動した場合、ターゲットプレーン上で3次元モデルP´のサイズがwからwまで小さくなる。
【0013】
図9(b)には、観察位置vの移動前後及び奥行き圧縮の前後において、ディスプレイ面上に描画された被写体の3次元モデルP(P,P,P´,P´)を図示した。図9(b)に示すように、奥行き圧縮の前後では、ディスプレイ面上で3次元モデルPのサイズが一定である(図9(b)の左右で比較)。つまり、図9(b)の上段に図示した3次元モデルP,P´のサイズが同一であり、図9(b)の下段に図示した3次元モデルP,P´のサイズも同一である。
【0014】
一方、観察位置v,vの移動前後では、ディスプレイ面上で3次元モデルPのサイズが変化する(図9(b)の上下で比較)。つまり、図9(b)の左側に図示した3次元モデルP,Pのサイズが異なり、図9(b)の右側に図示した3次元モデルP´,P´のサイズも異なる。そして、ターゲットプレーン上においても、同様に3次元モデルPのサイズが変化する。
【0015】
一般的に、実空間中で被写体のサイズが変化することは稀であるため、3次元モデルPのサイズが変化する現象は、観察者に違和感を与えると考えられる。また、サイズが固定のディスプレイ枠Bを介して3次元モデルPを観察する際、ディスプレイ枠と3次元モデルPとのサイズが比較されることから、3次元モデルPのサイズ変化に気が付きやすくなると考えられる。
【0016】
ここで、網膜像サイズは、強力な奥行き手掛かりであり、奥行き圧縮された3Dシーンに対して深い奥行きを感じさせるために重要となる。被写体が遠くなるほど被写体が小さくなるという事前知識に基づいて、観察者は、被写体の奥行きを知覚している。このことから、観察位置vをディスプレイ面に近づけた際、違和感が生じないように、ターゲットプレーン上で3次元モデルPのサイズを小さくすることができれば、圧縮前の奥行き感が損なわれにくくなると考えられる。同様に、観察位置vをディスプレイ面から遠ざける際、違和感が生じないように、ターゲットプレーン上で3次元モデルPのサイズを大きくし、奥行き圧縮前後で網膜像サイズの差を小さくすることが好ましい。
【0017】
以上をまとめると、従来の動的な奥行き圧縮手法では、観察位置vを前後に移動した際に生じる3次元モデルPのサイズ変化が、観察者に違和感をもたらす。また、観察位置vを前後に移動させた際に3次元モデルPのサイズが一定の状態であると、奥行き圧縮前における網膜像サイズに対する差が生じるため、被写体の奥行き感が損なわれ、観察者に違和感をもたらす。
【0018】
そこで、本発明は、3次元モデルのサイズに起因する違和感を軽減できる立体映像生成装置及びそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するため、本発明に係る立体映像生成装置は、被写体の3次元モデルを奥行き圧縮し、3次元モデルの立体映像を生成する立体映像生成装置であって、奥行き圧縮部と、頂点座標算出部と、頂点座標変換部と、立体映像生成部と、を備える構成とした。
【0020】
かかる構成によれば、奥行き圧縮部は、所定の初期観察位置において、3次元モデルを奥行き圧縮する。
頂点座標算出部は、初期観察位置から移動した移動後観察位置が入力され、初期観察位置で奥行き圧縮した3次元モデルの頂点座標と、移動後観察位置で奥行き圧縮した3次元モデルの頂点座標とを算出する。
【0021】
頂点座標変換部は、頂点座標算出部が算出した初期観察位置における頂点座標と移動後観察位置における頂点座標との間で、奥行き圧縮後の3次元モデルの頂点座標を変換する。
立体映像生成部は、頂点座標変換部が変換した頂点座標で3次元モデルの立体映像を生成する。
【0022】
このように、立体映像生成装置は、観察者に違和感を与えない範囲で3次元モデルのサイズを変化させてから立体映像を生成するので、3次元モデルのサイズに起因する違和感を軽減できる。
【0023】
なお、本発明は、コンピュータを、前記した立体映像生成装置として機能させるためのプログラムで実現することもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、3次元モデルのサイズに起因する違和感を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る立体映像表示システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施形態において、奥行き圧縮関数の一例を示すグラフである。
図3】実施形態において、3次元モデルの頂点座標の変更を説明する説明図である。
図4】実施形態において、第2パラメータと3次元モデルの幅との関係を示すグラフである。
図5】(a)は第1パラメータを説明する説明図であり、(b)は第2パラメータを説明する説明図である。
図6】実施形態に係る立体映像生成装置の動作を示すフローチャートである。
図7】従来の奥行き圧縮手法を説明する説明図である。
図8】従来技術において、奥行き圧縮関数の一例を示すグラフである。
図9】(a)及び(b)は従来技術の問題点を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に説明する各実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0027】
[立体映像表示システムの概要]
図1を参照し、実施形態に係る立体映像表示システム1の概要について説明する。
立体映像表示システム1は、インテグラル方式の立体映像(要素画像)を表示するものである。図1に示すように、立体映像表示システム1は、観察位置検出装置2と、パラメータ設定装置3と、立体映像生成装置4と、立体映像表示装置5とを備える。
【0028】
観察位置検出装置2は、観察者が立体映像を観察している位置(観察位置v)を一般的な手法で検出するものである。例えば、観察位置検出装置2は、カメラ映像から観察位置vを検出する手法、又は、モーションキャプチャーで観察位置vを計測する手法を利用できる。そして、観察位置検出装置2は、検出した観察位置vを立体映像生成装置4に出力する。
【0029】
以後、観察位置vの初期値である初期観察位置を「観察位置v」と表記する。観察位置vが、3次元モデルPを配置する仮想空間の原点となる。また、初期観察位置から移動した移動後観察位置を「観察位置v」と表記する。現在、観察者が立体映像を観察している位置が観察位置vとなる。
【0030】
パラメータ設定装置3は、後記する第1パラメータs及び第2パラメータtを設定するものである。例えば、立体映像表示システム1の観察者が第1パラメータs及び第2パラメータtを手動で設定する。そして、パラメータ設定装置3は、設定された第1パラメータs及び第2パラメータtを立体映像生成装置4に出力する。
【0031】
立体映像生成装置4は、被写体の3次元モデルPを奥行き圧縮し、3次元モデルPの立体映像を生成するものである。そして、立体映像生成装置4は、生成した立体映像を立体映像表示装置5に出力する。なお、立体映像生成装置4の詳細は、後記する。
【0032】
立体映像表示装置5は、立体映像生成装置4から入力された立体映像を表示するものである。例えば、立体映像表示装置5は、インテグラル方式の要素画像を表示する一般的な3Dディスプレイである。
【0033】
[立体映像生成装置の構成]
以下、立体映像生成装置4の構成について説明する。
図1に示すように、立体映像生成装置4は、奥行き圧縮部40と、頂点座標算出部41と、頂点座標変換部42と、要素画像レンダリング部(立体映像生成部)43とを備える。
【0034】
本実施形態では、立体映像生成装置4は、観察位置検出装置2から観察位置vが入力される。また、立体映像生成装置4は、パラメータ設定装置3から第1パラメータs及び第2パラメータtが入力される。さらに、立体映像生成装置4は、奥行き圧縮前の3次元モデル(頂点座標pの集合)が入力される。
【0035】
奥行き圧縮部40は、所定の観察位置vにおいて、3次元モデルPを奥行き圧縮するものである。ここで、奥行き圧縮部40は、前記した式(1)のような一般的な手法を用いて、3次元モデルPを奥行き圧縮する。そして、奥行き圧縮部40は、奥行き圧縮前後の3次元モデルP,P´を頂点座標算出部41に出力する。
【0036】
頂点座標算出部41は、観察位置vから移動した観察位置vが入力され、観察位置vで奥行き圧縮した3次元モデルP´の頂点座標p´と、観察位置vで奥行き圧縮した3次元モデルP´の頂点座標p´とを算出するものである。
【0037】
具体的には、頂点座標算出部41は、前記した式(1)の奥行き圧縮式を用いて、観察位置vにおける頂点座標p´=(x´,y´,z´)を算出する。また、頂点座標算出部41は、以下の式(1´)の奥行き圧縮式を用いて、観察位置vにおける頂点座標p´=(x´,y´,z´)を算出する。図2に示すように、式(1´)の奥行き圧縮関数f´(z)は、式(1)奥行き圧縮関数f(z)と比べ、奥行き範囲を手前側に移動させたものである(図8参照)。
【0038】
【数2】
【0039】
その後、頂点座標算出部41は、奥行き圧縮部40から入力された3次元モデルP´と、算出した3次元モデルの頂点座標p´,p´とを頂点座標変換部42に出力する。
【0040】
頂点座標変換部42は、頂点座標算出部41が算出した観察位置vにおける頂点座標p´と観察位置vにおける頂点座標p´との間に、奥行き圧縮後の3次元モデルP´の頂点座標p´1modを変換するものである。本実施形態では、頂点座標変換部42は、観察位置vから観察位置vまでの3次元モデルP´,P´の頂点座標の移動量(p´-p´)を、第1パラメータs及び第2パラメータtが含まれるパラメータaで重み付けることにより、奥行き圧縮後の3次元モデルP´の頂点座標p´1modを求める。
【0041】
具体的には、頂点座標変換部42は、以下の式(2)及び式(3)の頂点座標変換式を用いて、奥行き圧縮後の3次元モデルP´の頂点座標p´をp´1modに変換する。図3に示すように、頂点座標変換部42は、行き圧縮後の3次元モデルの頂点座標p´をp´1modに変換することで、観察者に違和感を与えない範囲で3次元モデルP´の幅w1modを制御する。さらに、頂点座標変換部42は、3次元モデルP´の幅w1modと同様に、3次元モデルP´の高さも変更する。なお、wが頂点座標p´における3次元モデルP´の幅であり、wが頂点座標p´における3次元モデルP´の幅である。
【0042】
【数3】
【0043】
ここで、式(2)は、観察位置vの前後移動だけでなく、水平移動及び垂直移動にも影響を受ける。このため、式(2)のパラメータaは、奥行き方向成分と、水平方向成分及び垂直方向成分とに分けられる。以下の式(3)に示すように、パラメータaは、頂点座標移動量の水平方向成分及び垂直方向成分を重み付ける第1パラメータs、及び、頂点座標移動量の奥行き方向成分を重み付ける第2パラメータtからなる。
【0044】
【数4】
【0045】
ここで、(v,v,v)は、観察位置vから観察位置vまでの移動ベクトルの水平方向成分、垂直方向成分及び奥行き方向成分をそれぞれ表す。また、第1パラメータsは、ディスプレイ面に平行なX-Y平面(水平方向及び垂直方向)の移動量に乗じる係数である。また、第2パラメータtは、ディスプレイ面に垂直なZ方向(奥行き方向)の移動量に乗じる係数である。
【0046】
その後、頂点座標変換部42は、頂点座標p´1modに変換した3次元モデルP´を要素画像レンダリング部43に出力する。
【0047】
要素画像レンダリング部43は、頂点座標変換部42が変換した頂点座標p´1modで3次元モデルP´の立体映像を生成するものである。本実施形態では、要素画像レンダリング部43は、立体映像として、インテグラル方式の要素画像を一般的な手法で生成する。具体的には、要素画像レンダリング部43は、仮想空間内の各視点位置に仮想カメラを配置し、頂点座標p´1modの3次元モデルP´を仮想空間に配置する。そして、要素画像レンダリング部43は、3次元モデルP´が配置された仮想空間(3Dシーン)を各仮想カメラで撮影することで、要素画像を生成する。その後、要素画像レンダリング部43は、生成した要素画像を立体映像表示装置5に出力する。
【0048】
<第1パラメータs及び第2パラメータt>
以下、第1パラメータs及び第2パラメータtについて詳細に説明する。
観察位置vが奥行き方向(Z軸)で移動せず、水平方向及び垂直方向(X-Y平面上)のみで移動する場合、式(3)で第2パラメータtの項が消えるので、パラメータaが第1パラメータsと等しくなる。一方、観察位置vが水平方向及び垂直方向(X-Y平面上)で移動せず、奥行き方向(Z軸)のみで移動する場合、式(3)で第1パラメータsの項が消えるので、パラメータaが第2パラメータtと等しくなる。
【0049】
図4には、ターゲットプレーン上において、第2パラメータtと3次元モデルP´の幅w1modとの関係を図示した。図4では、横軸が観察位置vから立体映像表示装置5のディスプレイ面までの距離(視距離L)を表し、縦軸がターゲットプレーン上での3次元モデルP´の幅w1modを表す。ここでは、奥行き圧縮前の3次元モデルPの奥行き位置をディスプレイ面から10mとし、奥行き圧縮後の3次元モデルP´の奥行き位置をディスプレイ面から10cmとした。また、観察位置vを立体映像表示装置5の中心から手前40cmとした。図4に示すように、第2パラメータt=1の場合、従来の動的な奥行き圧縮手法に相当し、観察位置vが観察位置vからディスプレイ面に近づくにつれて、3次元モデルP´の幅w1modが大幅に減少する。第2パラメータtの値をゼロに近づけるにつれて、直線の傾斜が緩やかになり、3次元モデルP´の幅w1modの減少も緩やかになる。そして、第2パラメータt=0の場合、観察位置vに関わらず、3次元モデルP´の幅w1modが一定となる。
【0050】
第1パラメータs及び第2パラメータtは、主観評価実験の実験結果に基づいて、予め設定する必要がある。本実施形態では、第1パラメータsを所定段階(例えば、5段階)に分割し、一対比較で観察者が自然に感じる方の立体像を選択させる。このとき、第2パラメータt=0に固定した条件とする。具体的には、第1パラメータs={0.00,0.25,0.50,0.75,1.00}の5段階とし、第1パラメータsの値が異なる状態で生成した2枚の要素画像から、立体像が自然に感じられる一方を観察者に選択させる。第1パラメータsが5段階であるため2枚の要素画像の組み合わせが10通りとなり、第1パラメータsについて10回の一対比較を行う。そして、Bradley-Terryなどの解析手法を用いて、図5(a)に示すように、第1パラメータsの値毎に自然さに関するスコアを算出する。図5(a)では、横軸が第1パラメータsの値を表し、縦軸が自然さに関するスコアを表す。その後、自然さに関するスコアが最大となる第1パラメータsの値をパラメータ設定装置3に設定する(例えば、第1パラメータs=0.25)。
【0051】
第2パラメータtについても、第1パラメータsと同様に設定すればよい。第2パラメータt={0.00,0.25,0.50,0.75,1.00}の5段階とし、第1パラメータs=0に固定した条件とする。第2パラメータtの値が異なる状態で生成した2枚の要素画像から、立体像が自然に感じられる一方を観察者に選択させる。そして、Bradley-Terryなどの解析手法を用いて、図5(b)に示すように、第2パラメータtの値毎に自然さに関するスコアを算出する。その後、自然さに関するスコアが最大となる第2パラメータtの値をパラメータ設定装置3に設定する(例えば、第2パラメータt=0.50)。
【0052】
なお、図5(a)に示すように、第1パラメータsの値が小さくなる程、3次元モデルP´の形状の歪みが大きくなり、第1パラメータsの値が大きくなる程、空間中で3次元モデルP´が縦横に大きくずれる。
また、図5(b)に示すように、第2パラメータtの値が小さくなる程、被写体が網膜に投影される像のサイズが大きくなり、第2パラメータtの値が大きくなる程、3次元モデルP´のサイズ変化が大きくなる。
【0053】
[立体映像生成装置の動作]
図6を参照し、立体映像生成装置4の動作について説明する。
図6に示すように、ステップS1において、立体映像生成装置4は、第1パラメータs及び第2パラメータtが入力される。
ステップS2において、立体映像生成装置4は、観察位置検出装置2から観察位置vが入力される。
ステップS3において、立体映像生成装置4は、3次元モデルPが入力される。
【0054】
ステップS4において、奥行き圧縮部40は、所定の観察位置vにおいて、3次元モデルPを奥行き圧縮する。
ステップS5において、観察位置vで奥行き圧縮した3次元モデルP´の頂点座標p´と、観察位置vで奥行き圧縮した3次元モデルP´の頂点座標p´とを算出する。
【0055】
ステップS6において、頂点座標変換部42は、観察位置vにおける頂点座標p´と観察位置vにおける頂点座標p´との間に、奥行き圧縮後の3次元モデルP´の頂点座標p´を変換する。
ステップS7において、要素画像レンダリング部43は、頂点座標p´1modに変換された3次元モデルP´の要素画像をレンダリングする。
【0056】
[作用・効果]
立体映像生成装置4は、観察者に違和感を与えない範囲で3次元モデルのサイズを変化させてから要素画像を生成するので、3次元モデルのサイズに起因する違和感を軽減できる。このように、立体映像生成装置4は、より違和感の少ない立体映像表示を実現できる。従来のインテグラル方式のディスプレイのように奥行き再現能力が限られている場合でも、テレビ放送のような奥行きの深いシーンを表示することが可能となり、その際の観察位置移動による違和感を軽減できる。
【0057】
以上、実施例を詳述してきたが、本発明は前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0058】
前記した実施形態では、説明を簡易にするため、被写体を立方体として図示したが、被写体は特に制限されない。
前記した実施形態では、立体映像として、インテグラル方式の要素画像を生成する例で説明したが、これに限定されない。例えば、立体映像生成装置は、レンチキュラ方式、2眼立体方式などの立体映像を生成してもよい。
【0059】
前記した実施形態では、立体映像生成装置を独立したハードウェアとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明は、コンピュータが備えるCPU、メモリ、ハードディスク等のハードウェア資源を、前記した立体映像生成装置として動作させるプログラムで実現することもできる。これらプログラムは、通信回線を介して配布してもよく、CD-ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 立体映像表示システム
2 観察位置検出装置
3 パラメータ設定装置
4 立体映像生成装置
5 立体映像表示装置
40 奥行き圧縮部
41 頂点座標算出部
42 頂点座標変換部
43 要素画像レンダリング部(立体映像生成部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9