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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181451
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20221201BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20221201BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20221201BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20221201BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08L83/06
C08K3/22
C08K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088397
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崇則
(72)【発明者】
【氏名】宮野 萌
(72)【発明者】
【氏名】塚田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石原 靖久
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】廣中 裕也
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP034
4J002CP043
4J002CP051
4J002CP122
4J002CP132
4J002CP142
4J002DA119
4J002DD009
4J002DE147
4J002DE148
4J002DE149
4J002DF016
4J002EC039
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD018
4J002FD019
4J002FD143
4J002FD159
4J002FD209
4J002GQ00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱伝導性充填材を高充填した際の粘度上昇が抑制された熱伝導性シリコーン組成物、及び熱伝導性が良好であり取扱い性に優れる熱伝導性シリコーン硬化物を提供する。
【解決手段】下記(A)~(F)成分を含有する、熱伝導性シリコーン組成物。
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のアルケニル基の個数に対するケイ素原子に結合した水素原子の個数の比が0.1~2となる量、
(C)熱伝導性充填材:4,000~7,000質量部、
(D)白金族金属触媒:触媒量
(E)付加反応制御剤:0.01~1質量部、及び
(F)分子鎖片末端にトリアルコキシシリル基を有するジメチルポリシロキサン:100~300質量部
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(F)成分を含有する、熱伝導性シリコーン組成物であり、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のアルケニル基の個数に対するケイ素原子に結合した水素原子の個数の比が0.1~2となる量、
(C)熱伝導性充填材:4,000~7,000質量部、
(D)白金族金属触媒:触媒量、
(E)付加反応制御剤:0.01~1質量部、及び
(F)下記式(1)で表される、分子鎖片末端にトリアルコキシシリル基を有するジメチルポリシロキサン:100~300質量部、
【化1】
(式中、Rは互いに独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは5~100の整数である)
前記(C)熱伝導性充填材が、該(C)成分の総質量に対して、(C1)50μm以上120μm未満の範囲に体積メジアン径を有する窒化アルミニウムを20~50質量%、(C2)1μm以上5μm未満の範囲に体積メジアン径を有するアルミナを20~40質量%、及び、(C3)0.1μm以上1μm未満の範囲に体積メジアン径を有するアルミナを2~10質量%で含むことを特徴とする、前記熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項2】
(G)下記一般式(2):
-(SiR O)SiR (2)
(Rは互いに独立に、炭素原子数1~8の、脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基であり、dは5~2,000の整数である)
で表される、25℃における動粘度10~100,000mm/sを有するオルガノポリシロキサン1~30質量部をさらに含有する、請求項1記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項3】
前記(C)熱伝導性充填材が、(C4)5μm以上100μm以下の範囲に体積メジアン径を有するアルミナを(C)成分の総質量に対して58質量%以下となる量でさらに含む、請求項1または2記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項4】
前記(C1)成分が破砕状窒化アルミニウムである、請求項1~3のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項5】
前記(C2)成分が球状アルミナ及び破砕状アルミナから選ばれる1以上である、請求項1~4のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項6】
前記(C3)成分が球状アルミナである、請求項1~5のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項7】
粘度3,000Pa・s以下を有する、請求項1~6のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項9】
熱伝導率8.5W/m・K以上を有する、請求項8記載の硬化物。
【請求項10】
PETフィルムと、請求項8又は9記載の硬化物とを有する、熱伝導性シリコーン放熱シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱伝導性シリコーン組成物に関し、より詳細には、熱伝導による電子部品の冷却のために、発熱性電子部品の熱境界面とヒートシンク又は回路基板などの発熱散部材との界面に、好適に使用される熱伝達材料、例えば電子機器内の発熱部品と放熱部品の間に設置され放熱に用いられる熱伝導性樹脂コンパウンドおよび熱伝導性樹脂成型体として利用され得る、熱伝導性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューター、携帯電話等の電子機器に使用されるCPU、ドライバICやメモリー等のLSIチップは、高性能化・高速化・小型化・高集積化に伴い、それ自身が大量の熱を発生するようになり、その熱によるチップの温度上昇はチップの動作不良、破壊を引き起こす。そのため、動作中のチップの温度上昇を抑制するための多くの熱放散方法及びそれに使用する熱放散部材が提案されている。
【0003】
従来、電子機器等においては、動作中のチップの温度上昇を抑えるために、アルミニウムや銅等熱伝導率の高い金属板を用いたヒートシンクが使用されている。このヒートシンクは、そのチップが発生する熱を伝導し、その熱を外気との温度差によって表面から放出する。
【0004】
チップから発生する熱をヒートシンクに効率良く伝えるために、ヒートシンクをチップに密着させる必要があるが、各チップの高さの違いや組み付け加工による公差があるため、柔軟性を有するシートや、グリースをチップとヒートシンクとの間に介装させ、このシートまたはグリースを介してチップからヒートシンクへの熱伝導を実現している。
【0005】
グリース状の放熱材料は薄膜化による低熱抵抗が実現されるが、管理が難しいという点がある。また、塗布工程には、手作業でスクリーンプリントまたはシリンジからの押し出しを行う場合と、ディスペンス装置を用いて自動で行う場合とがあるが、多くの時間を要し、取扱いも容易でない点から、製品の組み立て工程の律速となるケースがある。
【0006】
シートはグリースに比べ、取り扱い性に優れており、熱伝導性シリコーンゴム等で形成された熱伝導シート(熱伝導性シリコーンゴムシート)は様々な分野に用いられている。特に低硬度の熱伝導性シートは、その形状柔軟性からCPUなどの素子間の凹凸にうまく追従することが可能であり、携帯用のノート型のパーソナルコンピューター等の機器の小型化を阻害せず、効率的な放熱を可能とする利点をもつ。
【0007】
また近年、5G通信の基地局、サーバー、SSD、光トランシーバー用途を中心に、発熱素子の高集積化が益々加速しており、その発熱量も増大する傾向にあることから、放熱対策として低硬度かつ高熱伝導の放熱シートが求められている。
【0008】
一般に高熱伝導化のためには、熱伝導性充填材をシリコーン樹脂に多く充填する必要があるが、反対に圧縮性や信頼性が低下してしまう。そのため、より低充填量で高熱伝導率化するために、絶縁用途としては窒化ホウ素や窒化アルミニウム等の高熱伝導性フィラーを用いる例が報告されている。しかし、窒化ホウ素によってはその形状が鱗片状であるため、シリコーン樹脂に充填した際には粒子が寝た状態で充填されてしまい、a軸方向の高熱伝導性をうまく発現することは難しい。そのため、窒化ホウ素粒子を立てた状態で充填させる特別な処理が必要となる。
【0009】
そこで、高熱伝導性フィラーとして窒化アルミニウムを選択した放熱材料が種々報告されている(特許文献1~4)。窒化アルミニウムは、特に球状粒子径の場合、高充填化しやすく、粒子同士の接触面積を増加させて熱伝導性を確保できることが知られている。しかし、球状粒子の場合、そのコストが破砕状粒子に比べて高い点が欠点であり、また樹脂組成物中に多量の窒化アルミニウムを充填した場合、粘度上昇により、材料の成形加工性が低下してしまう点も課題である。
【0010】
特開2010-235842号公報(特許文献5)では、コスト面で球状粒子よりも優位性のある異方性形状の窒化アルミニウムと等方性(球状)のアルミナを組み合わせることで、樹脂組成物の粘度上昇を抑えて、高熱伝導の成形体を得た事例が報告されている。しかし、適切な表面処理剤を用いていないこともあり、高充填化が難しく、達成された熱伝導率は4W/m・K以下に留まっていることから、熱伝導率の面で改良の余地があった。
【0011】
一方、特開2017-088696号公報(特許文献6)では、平均粒子径が0.5~10μmの窒化アルミニウムとその他、モース硬度5以上7以下を示すマグネシア、酸化亜鉛を組み合わせ、その配合比を規定することで、成形加工性に優れた熱伝導性材料が報告されている。しかし、組成物の粘度を低下させる観点から小粒径の窒化アルミニウムを用いており、10W/m・Kを超えるような熱伝導性シリコーン組成物は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平3-14873号公報
【特許文献2】特開平3-295863号公報
【特許文献3】特開平6-164174号公報
【特許文献4】特開平11-49958号公報
【特許文献5】特開2010-235842号公報
【特許文献6】特開2017-088696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、熱伝導性充填材を高充填した際の粘度上昇が抑制された熱伝導性シリコーン組成物及び熱伝導性が良好であり、取扱い性に優れる熱伝導性シリコーン硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定の体積メジアン径を有する窒化アルミニウム及びアルミナを特定の配合比で組み合わせて、付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物に高充填することによって、熱伝導性が良好であり、取扱い性に優れる熱伝導性シリコーン硬化物を得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0015】
すなわち本発明は、下記(A)~(F)成分を含有する、熱伝導性シリコーン組成物であり、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のアルケニル基の個数に対するケイ素原子に結合した水素原子の個数の比が0.1~2となる量、
(C)熱伝導性充填材:4,000~7,000質量部、
(D)白金族金属触媒:触媒量
(E)付加反応制御剤:0.01~1質量部、及び
(F)下記式(1)で表される、分子鎖片末端にトリアルコキシシリル基を有するジメチルポリシロキサン:100~300質量部、
【化1】
(式中、Rは互いに独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは5~100の整数である)
前記(C)熱伝導性充填材が、該(C)成分の総質量に対して、(C1)50μm以上120μm未満の範囲に体積メジアン径を有する窒化アルミニウムを20~50質量%、(C2)1μm以上5μm未満の範囲に体積メジアン径を有するアルミナを20~40質量%、及び、(C3)0.1μm以上1μm未満の範囲に体積メジアン径を有するアルミナを2~10質量%で含むことを特徴とする、前記熱伝導性シリコーン組成物を提供する。
さらに本発明は上記熱伝導性シリコーン組成物を硬化してなる硬化物、及び該硬化物を有する熱伝導性シリコーン放熱シートを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、熱伝導性充填材を高充填することが可能であり、成形加工性に優れるため、特殊な設備を必要とすることなく熱伝導性に優れる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
[アルケニル基含有オルガノポリシロキサン]
(A)成分であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンであり、本発明の組成物の主剤となるものである。該アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、主鎖部分が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状オルガノポリシロキサンであればよいが、分子構造の一部に分枝状の構造を含んだものであってもよく、また環状体であってもよい。硬化物の機械的強度等、物性の点から直鎖状ジオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0018】
ケイ素原子に結合するアルケニル基以外の官能基としては、非置換又は置換の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数が1~10、特に好ましくは炭素原子数1~6の、非置換又は置換の、1価炭化水素基である。たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、ならびにこれらの基に炭素原子が結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2-ブロモエチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1~3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。また、ケイ素原子に結合したアルケニル基以外の官能基は全てが同一であることを限定するものではない。
【0019】
また、アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、及びシクロヘキセニル基等の炭素原子数2~8のものが挙げられる。中でもビニル基、アリル基等の低級アルケニル基が好ましく、特に好ましくはビニル基である。(A)成分は、ケイ素原子に結合するアルケニル基を1分子中に2個以上有すればよい。
【0020】
該オルガノポリシロキサンは、25℃における動粘度が、通常、10~100,000mm/s、特に好ましくは500~50,000mm/sの範囲を有するのがよい。前記粘度が低すぎると、得られる組成物の保存安定性が悪くなり、また高すぎると得られる組成物の伸展性が悪くなる場合がある。該(A)成分のオルガノポリシロキサンは1種単独でも、粘度が異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においてオルガノポリシロキサンの動粘度は、25℃にてオストワルド粘度計により測定されたものであればよい。
【0021】
該オルガノポリシロキサンは、より好ましくは下記式で表される。
【化2】
上記式において、Xは炭素数2~8のアルケニル基であり、Rは、互いに独立に、アルケニル基以外の、非置換又は置換の、炭素原子数1~10の1価炭化水素基であり、m1は1以上の整数、m2は0以上の整数であり、及び、m1及びm2は上記オルガノポリシロキサンの25℃における動粘度が10~100,000mm/s、特に好ましくは500~50,000mm/sの範囲となる整数であり、aは1又は2であり、bは夫々0又は1であり、但し、上記式はXを2以上有する。好ましくはm2が0であり、bが共に1である。
【0022】
[オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(B)成分は、ケイ素原子に直接結合する水素原子(SiH)を一分子中に平均で2個以上、好ましくは2~100個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(A)成分の架橋剤として作用する。即ち、(B)成分中のSiHと(A)成分中のアルケニル基とが、後述する(D)白金族系触媒の存在下でヒドロシリル化反応して、架橋構造を有する3次元網目構造を与える。またSi-H基の数が平均して1個未満であると、硬化しないおそれがある。
【0023】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、例えば下記の平均構造式で表される。
【化3】
式(3)中、Rは、互いに独立に、水素原子、あるいは、脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、但し、Rのうち少なくとも2個は水素原子であり、nは1以上の整数、好ましくは2~100の整数、より好ましくは5~50の整数である。該式(3)は、ケイ素原子に直接結合する水素原子を、側鎖または末端のいずれに有していてもよい。好ましくは側鎖にあるRの少なくとも2個が水素原子である。
【0024】
式(3)中、Rで示される、脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、好ましくは、炭素原子数1~10、特に好ましくは炭素原子数1~6の1価炭化水素基である。たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、及びドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、及びビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、及びメチルベンジル基等のアラルキル基、ならびにこれらの基に炭素原子が結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2-ブロモエチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の、炭素原子数1~3の非置換又は置換のアルキル基、及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基であるのがよい。また、Rは全てが同一であることを限定するものではない。
【0025】
(B)成分の量は、上記(A)成分中のアルケニル基の個数に対して(B)成分中のSiH基の個数の比が0.1~2となる量、好ましくは0.3~1.5、さらに好ましくは0.5~1となる量である。(B)成分量が上記下限値未満であると、シリコーン樹脂組成物が硬化しないおそれがあり、得られる硬化物の強度が不十分で成形体としての形状を保持出来ず取り扱えない場合がある。(B)成分量が上記上限値を超えると、硬化物の柔軟性がなくなり、熱抵抗が著しく上昇してしまうため好ましくない。
【0026】
[熱伝導性充填材]
(C)成分は熱伝導性充填材である。本発明は、該(C)熱伝導性充填材として、特定の粒径を有する窒化アルミニウムおよびアルミナを特定の配合比率で有することを特徴とする。
【0027】
窒化アルミニウムおよびアルミナの配合比率は、即ち、(C)成分の総質量に対して、(C1)50μm以上120μm未満の範囲に体積メジアン径(D50)を有する窒化アルミニウムの比率が20~50質量%であり、(C2)1μm以上5μm未満の範囲に体積メジアン径(D50)を有するアルミナの比率が20~40質量%であり、且つ、(C3)0.1μm以上1μm未満の範囲に体積メジアン径(D50)を有するアルミナの比率が2~10質量%である。
【0028】
(C1)窒化アルミニウムの配合率は、好ましくは、(C)成分の総質量に対して25~45質量%である。窒化アルミニウムの配合量が上記下限値未満である場合、得られる硬化物の熱伝導性が低くなり、上記上限値超では、熱伝導性シリコーン組成物の粘度が上昇し、硬化物の成形性が悪くなる。
【0029】
(C1)窒化アルミニウムは、50μm以上120μm未満の範囲に体積メジアン径を有することを特徴とする。好ましくは、55~110μmの範囲、さらに好ましくは60~100μmの範囲に体積メジアン径を有するのがよい。窒化アルミニウムの粒径が上記上限値より大きいと、得られる組成物は伸展性に乏しく成型が困難であり、他の熱伝導性充填材と共に均一に分散することが難しく、熱伝導性を上げる効果に乏しい。窒化アルミニウムの粒径が上記下限値未満である場合、所望の高熱伝導の組成物を得ることが困難である。(C1)成分は、上記の範囲に体積メジアン径を有する窒化アルミニウムの1種単独、又は2種以上の混合であってもよい。本発明において体積メジアン径とは、レーザー回折錯乱法による体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)を指す。なお、本明細書中で記載される体積メジアン径は、すべてこの内容で定義される。
尚、本発明のシリコーン組成物は、50μm未満又は120μm以上の範囲に体積メジアン径を有する窒化アルミニウムを、本発明の効果を損ねない範囲において少量、例えば(C)成分の総質量に対して50%以下で含むことはできるが、含まない態様が特に好ましい。
【0030】
本発明に用いる窒化アルミニウムの形状については特に限定されないが、熱伝導性およびコストの観点から、破砕状が好ましい。
【0031】
(C2)1μm以上5μm未満の範囲に体積メジアン径を有するアルミナの配合率は、好ましくは(C)成分の総質量に対して25~35質量%である。配合率が上記下限値未満である場合、熱伝導性シリコーン組成物の粘度が上昇し、硬化物の成形性が悪くなる。配合率が上記上限値超では、前記窒化アルミニウムとの馴染みが悪く、共添加による高充填が困難である。(C2)成分は、1μm以上5μm未満の範囲に体積メジアン径を有するアルミナの1種単独、又は2種以上の混合であってもよい。
【0032】
(C3)0.1μm以上1μm未満の範囲に体積メジアン径を有するアルミナの配合率は、好ましくは(C)成分の総質量に対して4~8質量%である。当該範囲で配合することにより、前記(C1)窒化アルミニウムと(C2)体積メジアン径1μm以上5μm未満のアルミナとの間に入りこんで最密充填化する効果が得られる。配合率が範囲外である場合、(C)成分を最密充填化する効果に乏しく、組成物の粘度は上昇し、熱伝導率も低下する。(C3)成分は、0.1μm以上1μm未満の範囲に体積メジアン径を有するアルミナの1種単独、又は2種以上の混合であってもよい。
【0033】
本発明に用いるアルミナの形状については特に限定されず、球状及び破砕状のいずれでもよい。充填性の観点から、アルミナの総質量に対して球状アルミナを40質量%以上含むことが好ましい。また(C4)5μm以上の範囲、好ましくは5~100μm、より好ましくは7~90μmの範囲に体積メジアン径を有するアルミナを、(C)成分の総質量に対して58質量%以下となる量、好ましくは1~50質量%、より好ましくは10~35質量%で含むことができる。
【0034】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して4,000~7,000質量部であり、好ましくは4,500~6,500質量部である。熱伝導性充填材の量が上記下限値未満であると、得られるシリコーン樹脂組成物の熱伝導率が乏しくなり、また保存安定性に劣る組成物となることがある。また、上記上限値を超えると、組成物の伸展性が乏しく、得られる硬化物の強度が低下するおそれがあり、硬化物として取り扱い性が困難となるため好ましくない。
【0035】
[白金族金属系触媒]
(D)成分は(A)成分のアルケニル基と、(B)成分のSiH基の付加反応を促進する付加反応触媒である。該触媒としては、ヒドロシリル化反応に用いられる周知の白金族金属系触媒を用いればよい。例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体、HPtCl・nHO、HPtCl・nHO、NaHPtCl・nHO、KaHPtCl・nHO、NaPtCl・nHO、KPtCl・nHO、PtCl・nHO、PtCl、NaHPtCl・nHO(但し、式中、nは0~6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩、アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照)、塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照)、白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの、ロジウム-オレフィンコンプレックス、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒)、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックスなどが挙げられる。(D)成分の量は、所謂触媒量(すなわち、上記付加反応を進行させる有効量)で良い。通常、(A)成分に対する白金族金属元素の体積換算で0.1~1,000ppmである。
【0036】
[付加反応制御剤]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、(E)付加反応制御剤を含む。該(E)成分は、付加反応硬化型シリコーン組成物に用いられる公知の付加反応制御剤であればよく、特に制限されない。例えば、1-エチニル-1-ヘキサノール、3-ブチン-1-オールなどのアセチレン化合物や各種窒素化合物、有機リン化合物、オキシム化合物、及び有機クロロ化合物等が挙げられる。(E)成分の量は上記付加反応を制御できる有効量であればよい。通常、(A)成分100質量部に対して0.01~1質量部であり、好ましくは0.05~0.5質量部である。
【0037】
[表面処理剤]
本発明のシリコーン樹脂組成物は、更に、(F)下記式(1)で表される、分子鎖片末端にトリアルコキシシリル基を有するジメチルポリシロキサンを含む。該(F)成分は組成物調製の際に、(C)熱伝導性充填材を(A)オルガノシロキサンから成るマトリックス中に均一に分散させるための表面処理剤として機能する。
【化4】
式(1)中、Rは、互いに独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは5~100の整数である。炭素原子数1~6のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基などである。Rは、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0038】
(F)成分の量は、(A)成分100質量部に対して100~300質量部、好ましくは150~250質量部である。当該範囲で配合することにより、熱伝導性充填材をオルガノシロキサンから成るマトリックス中に均一に分散させることができる。(A)成分に対する(F)成分の割合が多くなると、オイル分離を誘発する可能性があるため好ましくない。また、(F)成分の割合が少ない場合、ポリオルガノシロキサンと熱伝導性充填材の濡れ性が低下し、組成物を形成できないおそれがある。
【0039】
[可塑剤]
本発明の組成物は更に、(G)可塑剤として下記一般式(2)
-(SiR O)SiR (2)
(Rは、互いに独立に、炭素原子数1~10の、脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基であり、dは5~2000の整数である)
で表される、25℃における動粘度10~100,000mm/sを有するオルガノポリシロキサンを含むことができる。該成分は、熱伝導性組成物の粘度調整剤等の特性を付与するために適宜用いられればよく、特に限定されるものではない。1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。尚、上記式(2)で表される化合物は一定濃度にてPh基を有すると可塑剤の作用の他に内添離型剤としても作用することができる。
【0040】
上記Rは互いに独立に、炭素原子数1~10の、脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、及びキシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、及びメチルベンジル基等のアラルキル基、ならびにこれらの基に炭素原子が結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2-ブロモエチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。代表的なものは炭素原子数1~10、特に代表的なものは炭素原子数1~6の一価炭化水素基であり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1~3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基が挙げられる。Rは、特に好ましくはメチル基、及びフェニル基である。
【0041】
上記オルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は、好ましくは10~100,000mm/sであり、特に好ましくは100~10,000mm/sであればよい。該動粘度が10mm/sより低いと、得られる組成物の硬化物がオイルブリードを発生しやすくなる。該動粘度が100,000mm/sよりも大きいと、得られる熱伝導性組成物は柔軟性が乏しくなるおそれがある。
【0042】
上記式(2)においてdは、オルガノポリシロキサンの動粘度が上述する範囲となる値であればよい。好ましくは5~2,000の整数であり、より好ましくは10~1,000の整数である。
【0043】
本発明の組成物における(G)成分の量は特に制限されず、可塑剤として所望の効果が得られる量であればよい。通常、(A)成分100質量部に対して、好ましくは1~30質量部であり、より好ましくは5~20質量部である。(G)成分量が上記範囲にあると、硬化前の熱伝導性組成物が良好な流動性、作業性を維持しやすく、また(C)成分の熱伝導性充填材を該組成物に充填するのが容易になる。
【0044】
[添加剤]
本発明の熱伝導シリコーン組成物は、さらに添加剤として、公知の内添離型剤、着色剤、酸化セリウム、酸化チタンなどの耐熱向上剤等を用いることができる。
【0045】
[組成物の粘度]
本発明の熱伝導シリコーン組成物は、好ましくは3,500Pa・s以下、より好ましくは3,000Pa・s以下である。このような範囲であれば、熱伝導性シリコーン組成物をポンプで吐出することができるため、歩留まり良く硬化物の成形を行うことができる。特に粘度が3000Pa・s以下である場合、成形性がより良好となるため好ましい。粘度の下限は特に限定されないが、通常、100Pa・s程度である。
なお、粘度は、細管式レオメーターにより測定できる。
【0046】
[熱伝導性シリコーン硬化物の製造方法]
上記本発明の熱伝導性シリコーン組成物を樹脂フィルムなどの基材上に塗工し、硬化することで、熱伝導性シリコーン硬化物を得ることができる。樹脂フィルムとしては、貼り合わせ後の熱処理に耐えうる、熱変形温度が100℃以上のもの、例えば、PET、PBTポリカーボネート製のフィルムから適時選択して用いることができる。樹脂フィルムにオルガノハイドロジェンポリシロキサンオイルを均一な厚さに塗布するコーティング装置としては、後計量方式のブレードコータ、グラビアコータ、キスロールコータ、スプレイコータ等が使用される。
【0047】
硬化条件としては、公知の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物と同様でよく、室温でも硬化してもよいが必要に応じて加熱してもよく、好ましくは100℃~150℃で1分間~1時間であり、より好ましくは120℃、10分間程度で硬化させるのがよい。
【0048】
[硬化物の熱伝導率]
本発明の熱伝導性シリコーン硬化物の熱伝導率は、ホットディスク法により測定した25℃における測定値が8.5W/m・K以上であることが望ましく、好ましくは9.0W/m・K以上、より好ましくは10.0W/m・K以上である。熱伝導率が8.5W/m・K未満であると、発熱量の大きく、高い放熱性を必要とする発熱体に適用することが困難であり、成形体の適用範囲が狭まる。上限は制限されないが、通常、25W/m・K以下である。
【0049】
[硬化物の硬度]
本発明の熱伝導性シリコーン硬化物の硬度は、AskerC硬度計で測定した値で60以下であることが望ましく、好ましくは50以下、より好ましくは40以下である。成形物の硬度が60以上である場合、発熱部位の表面の凹凸にうまく追従することができず、放熱効果が低下してしまう。一方、AskerC硬度が5以下である場合、取り扱い性に難が生じる可能性がある。
【実施例0050】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。以下において体積メジアン径は、レーザー回折錯乱法による体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)である。
【0051】
下記実施例及び比較例にて用いた(A)~(G)成分は以下の通りである。
(A)成分:
(A-1)下記式(4)で表され、動粘度400mm/sを有するオルガノポリシロキサン。
(A-2)下記式(4)で表され、動粘度5,000mm/sを有するオルガノポリシロキサン。
【化5】
(式中、Xはビニル基であり、nは粘度が上記値となる数である)
(B)成分:下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化6】
平均重合度:o=28、p=2
尚、上記括弧内のシロキサン単位の結合順序は上記に制限されない。
(C)成分:
(C1-1)体積メジアン径60μmを有する破砕状窒化アルミニウム
(C1-2)体積メジアン径80μmを有する破砕状窒化アルミニウム
(C1-3)体積メジアン径100μmを有する破砕状窒化アルミニウム
(C3-4)体積メジアン径0.3μmを有する球状アルミナ
(C2-5)体積メジアン径1μmを有する破砕状アルミナ
(C2-6)体積メジアン径1μmを有する球状アルミナ
(C4-7)体積メジアン径7μmを有する球状アルミナ
(C4-8)体積メジアン径45μmを有する球状アルミナ
(C4-9)体積メジアン径90μmを有する球状アルミナ
(D)成分:5%塩化白金酸2-エチルヘキサノール溶液(付加反応触媒)
(E)成分:エチニルメチリデンカルビノール(付加反応制御剤)
(F)成分:下記式で表され、片末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン
【化7】
(G)成分:下記式で表される、ジメチルポリシロキサン(可塑剤)
【化8】
【0052】
[実施例1~6、比較例1~8]
各シリコーン組成物における上記(A)~(G)成分の配合量は、下記表1又は2に示す通りである。
上記(A)、(C)、(F)及び(G)成分をプラネタリーミキサーで60分間混練した。そこに(D)成分及び(E)成分を加え、さらにセパレータとの離型を促す内添離型剤(下記式(α))を有効量(5部)加え、さらに60分間混練した。そこにさらに(B)成分を加え、30分間混練し、熱伝導性シリコーン組成物を得た。尚、(A)成分中のアルケニル基の個数に対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の個数の比(SiH/SiVi)は1.1である。
内添離型剤を下記に示す。
【化9】
各熱伝導性シリコーン組成物の粘度を定試験力押出形細管式レオメータフローテスタ(CFT-EX、株式会社島津製作所製)で測定した。25℃、3s~7s間における組成物の移動速度から、粘度を算出した。
【0053】
上記で得た各熱伝導性シリコーン組成物をPETフィルム2枚ではさんだ後、プレスで120℃、10分間硬化させることで、1mm厚および6mm厚の熱伝導性シリコーン硬化物のシートを得た。得られた硬化物について下記の方法に従い、熱伝導率および比重の測定を行った。
【0054】
[評価方法]
(1)硬化物の熱伝導率:上記で得た6mm厚のシートを2枚用いて、熱伝導率計(TPA-501、京都電子工業株式会社製)により熱伝導率を測定した。
(2)硬化物の硬度:上記で得た6mm厚のシートを2枚重ね、AskerC硬度計により測定した。
(3)硬化物の取扱い性:上記で得た1mm厚のシートに対して、2cm角に切り剥がす作業を行い、シートが千切れることなく、PETフィルムから切り剥がせた場合を「良好」、強度が弱いため、破れや過度な変形をともなった場合を「不良」とした。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
上記表1及び3に示す通り、本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、熱伝導性充填剤による粘度の上昇が抑えられたことにより成型性に優れ、また、得られた硬化物は熱伝導率が8.5W/m・K以上と熱伝導性が良好であり、且つ取り扱い性に優れていた。
【0060】
一方、上記表2及び4に示す通り、比較例1,2の組成物は、(C)成分の総質量に対する(C3)体積メジアン径0.1μm以上1μm未満のアルミナの割合が2~10wt%の範囲外であったため、窒化アルミニウムおよび他粒径のアルミナとの最密充填性が低下し、実施例1のものと比較して熱伝導性シリコーン組成物の粘度が上昇し、即ち成形性に劣り、得られた硬化物の熱伝導率も低下した。
比較例3,4の組成物は、(C)成分の総質量に対する(C2)体積メジアン径1μm以上5μm未満のアルミナの割合が20~40wt%の範囲外であったため、比較例1,2のものと同様に、実施例1のものと比較して熱伝導性シリコーン組成物の粘度が上昇し、得られた硬化物の熱伝導率も低下した。
比較例5の組成物は、(C)成分の総質量に対する(C1)窒化アルミニウムの割合が50wt%を超えていたため、熱伝導率に問題はないが、実施例1のものと比較して組成物の粘度が上昇しており、成形性に劣っていた。一方、比較例6は、(C)成分の総質量に対する(C1)窒化アルミニウムの割合が20wt%未満であるため、得られた硬化物の熱伝導性に劣っていた。
比較例7の組成物は、(A)成分100質量部に対する(C)成分の量が7,000質量部を超えていたため、組成物の粘度が著しく上昇し、成形性に劣っていた。また、得られた硬化物が脆く、取り扱い性に劣っていた。
比較例8の組成物は、(A)成分100質量部に対する(F)成分の量が300質量部を超えていたため、硬化物とした場合の強度及び取り扱い性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、熱伝導性充填材を高充填することが可能であり、成形加工性に優れるため、特殊な設備を必要とすることなく熱伝導性に優れる成形体を提供することができる。該組成物は、熱伝導による電子部品の冷却のために使用される熱伝達材料、例えば電子機器内の発熱部品と放熱部品の間に設置され放熱に用いられる熱伝導性樹脂コンパウンドおよび熱伝導性樹脂成型体等として好適である。