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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181492
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】酸化脱水素用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/89 20060101AFI20221201BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20221201BHJP
   C07C 5/42 20060101ALI20221201BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
B01J23/89 Z
C07C11/06
C07C5/42
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088480
(22)【出願日】2021-05-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔1〕 発行日(公開日) 令和2年9月9日 刊行物 第126回触媒討論会 予稿集 一般社団法人触媒学会 発行 参加者専用予稿集ダウンロードアドレスから公開 〔2〕開催日(公開日) 令和2年9月16日(会期:令和2年9月16日~18日) 集会名、開催場所 第126回触媒討論会 ビデオ会議システム(Zoom)を用いたオンライン開催 一般社団法人触媒学会 主催 <資料> 第126回触媒討論会 開催概要 <資料> 第126回触媒討論会 予稿集 研究要旨 <資料> 第126回触媒討論会 プログラム <資料> 第126回触媒討論会 発表資料
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、令和元年度戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)事業「インターメタリック反応場でのプロトニクスを利用した高効率触媒の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】古川 森也
(72)【発明者】
【氏名】▲刑▼ 飛龍
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC18A
4G169BC18B
4G169BC29A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CB07
4G169CB63
4G169DA05
4H006AA02
4H006AC12
4H006BA09
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA26
4H006BA55
4H006BE41
4H039CA29
4H039CC10
(57)【要約】
【課題】従来の触媒に比べて高活性で、かつ長寿命な、プロパンの酸化脱水素反応によってプロピレンを製造するための酸化脱水素用触媒の提供。
【解決手段】プロパンの酸化脱水素反応によってプロピレンを製造するための酸化脱水素用触媒であって、前記酸化脱水素反応は、プロパンに二酸化炭素を反応させることにより行い、前記酸化脱水素用触媒は、活性成分がセリア担体に担持されており、前記活性成分として、白金元素と、インジウム元素と、3d遷移金属元素と、を含む、酸化脱水素用触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロパンの酸化脱水素反応によってプロピレンを製造するための酸化脱水素用触媒であって、前記酸化脱水素反応は、プロパンに二酸化炭素を反応させることにより行い、前記酸化脱水素用触媒は、活性成分がセリア担体に担持されており、前記活性成分として、白金元素と、インジウム元素と、3d遷移金属元素と、を含む、酸化脱水素用触媒。
【請求項2】
前記3d遷移金属元素は、コバルト元素及びニッケル元素からなる群から選択される1種以上の元素である、請求項1に記載の酸化脱水素用触媒。
【請求項3】
前記3d遷移金属元素は、コバルト元素である、請求項1又は2に記載の酸化脱水素用触媒。
【請求項4】
前記白金元素と、前記インジウム元素と、前記3d遷移金属元素と、が合金を形成している、請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化脱水素用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化脱水素用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンは、樹脂、界面活性剤、染料、医薬品など、様々な化学物質を製造するための基幹化学品である。近年、スチームクラッカーの原料が原油由来のナフサからシェールガス由来のエタンにシフトしているため、プロピレンの供給が減少している。
【0003】
このような背景もあり、プロパンの単純脱水素反応によるプロピレンの製造が注目されている。プロパンの単純脱水素反応は下式1で表される反応式により進行する。プロパンの単純脱水素反応は吸熱反応であるため、反応の進行には600℃以上の高温が必要である。
→C+H 式1
【0004】
プロパンの脱水素反応の平衡転化率を向上させる試みとして、二酸化炭素を酸化剤として用いるプロパンの酸化脱水素反応が検討されている。プロパンの酸化脱水素反応は下式2で表される反応式により進行する。
+CO→C+HO+CO 式2
【0005】
プロパンの酸化脱水素反応では、プロパンの脱水素反応で生成した水素を二酸化炭素で酸化して水とすることで平衡を生成物側にずらすことができ、図1に示すように、プロパンの単純脱水素反応よりも平衡転化率が向上する。
【0006】
プロパンの酸化脱水素用触媒としては、従来広範な研究が行われており、酸化クロム系触媒、酸化バナジウム系触媒、酸化ガリウム系触媒、酸化インジウム系触媒、パラジウム金属系触媒、鉄-ニッケル合金系触媒が知られている。
【0007】
非特許文献1及び2には、メソポーラスシリカ担体に酸化クロムが担持された酸化クロム系のプロパンの酸化脱水素用触媒が開示されている。また、酸化クロム系のプロパンの酸化脱水素用触媒を用いることで、良好なプロピレン選択率(約80%)を示したことが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Baek, J., Yun, H. J., Yun, D., Choi, Y. & Yi, J. ACS Catal. 2, 1893-1903 (2012).
【非特許文献2】Wang, H. M., Chen, Y., Yan, X., Lang, W. Z. & Guo, Y. J. Microporous Mesoporous Mater. 284, 69-77 (2019).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1及び2に記載のプロパンの酸化脱水素用触媒の活性は充分ではない。また、非特許文献1及び2に記載のプロパンの酸化脱水素用触媒は、二酸化炭素の転化率が低い。さらに、数時間以内で急速に活性が低下するという問題がある。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、従来の触媒に比べて高活性で、かつ長寿命な、プロパンの酸化脱水素反応によってプロピレンを製造するための酸化脱水素用触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を有する。
[1] プロパンの酸化脱水素反応によってプロピレンを製造するための酸化脱水素用触媒であって、前記酸化脱水素反応は、プロパンに二酸化炭素を反応させることにより行い、前記酸化脱水素用触媒は、活性成分がセリア担体に担持されており、前記活性成分として、白金元素と、インジウム元素と、3d遷移金属元素と、を含む、酸化脱水素用触媒。
[2] 前記3d遷移金属元素は、コバルト元素及びニッケル元素からなる群から選択される1種以上の元素である、[1]に記載の酸化脱水素用触媒。
[3] 前記3d遷移金属元素は、コバルト元素である、[1]又は[2]に記載の酸化脱水素用触媒。
[4] 前記白金元素と、前記インジウム元素と、前記3d遷移金属元素と、が合金を形成している、[1]~[3]のいずれか一項に記載の酸化脱水素用触媒。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来の触媒に比べて高活性で、かつ長寿命な、プロパンの酸化脱水素反応によってプロピレンを製造するための酸化脱水素用触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】プロパンの単純脱水素反応とプロパンの酸化脱水素反応の常圧における平衡転化率を示す図である。
図2】白金-インジウム-コバルト合金の結晶構造(単位格子)を示す図である。
図3】実施例1及び比較例1~4の酸化脱水素用触媒を用いたプロパンの酸化脱水素反応におけるプロパンの転化率及びプロピレンの選択率の経時変化を示す図である。
図4】実施例1及び比較例1~4の酸化脱水素用触媒を用いたプロパンの酸化脱水素反応における二酸化炭素の転化率の経時変化を示す図である。
図5】実施例2の酸化脱水素用触媒を用いたプロパンの酸化脱水素反応におけるプロパン及び二酸化炭素の転化率の経時変化を示す図、及びプロピレンと副生成物の選択率の経時変化を示す図である。
図6】実施例3の酸化脱水素用触媒を用いたプロパンの酸化脱水素反応におけるプロパン及び二酸化炭素の転化率の経時変化を示す図、及びプロピレンと副生成物の選択率の経時変化を示す図である。
図7】実施例1及び比較例5~7の酸化脱水素用触媒を用いたプロパンの酸化脱水素反応におけるプロパンの転化率及び二酸化炭素の転化率の経時変化を示す図である。
図8】実施例1の酸化脱水素用触媒を用いたプロパンの酸化脱水素反応の寿命試験(再生処理含む)におけるプロパンの転化率の経時変化を示す図及び二酸化炭素の転化率の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されず、その要旨の範囲内で変形して実施することができる。
【0014】
≪酸化脱水素用触媒≫
本実施形態の酸化脱水素用触媒は、プロパンの酸化脱水素反応によってプロピレンを製造するための酸化脱水素用触媒である。酸化脱水素反応は、プロパンに二酸化炭素を反応させることにより行うことができる。酸化脱水素用触媒は、活性成分がセリア担体に担持されている。酸化脱水素用触媒は、前記活性成分として、白金元素と、インジウム元素と、3d遷移金属元素と、を含む。
【0015】
<活性成分>
酸化脱水素用触媒は、活性成分として、白金元素と、インジウム元素と、3d遷移金属元素と、を含む。
【0016】
活性成分として、白金元素が含まれると、プロパンを活性化することができ、プロパンの転化率が向上する。活性成分として、3d遷移金属元素が含まれると、二酸化炭素を活性化することができ、二酸化炭素の転化率が向上する。活性成分として、インジウム元素が含まれると、コーク生成等の副反応を抑制することができ、プロピレンの収率が向上する。また、コーク生成が抑制されることにより、経時の触媒活性の低下が抑制される。
【0017】
3d遷移金属元素としては、スカンジウム元素、チタン元素、バナジウム元素、クロム元素、マンガン元素、鉄元素、コバルト元素、ニッケル元素、銅元素が挙げられる。この中でも、二酸化炭素の活性化能が高い観点から、コバルト元素、ニッケル元素が好ましく、コバルト元素がより好ましい。
【0018】
3d遷移金属元素が二酸化炭素を活性化するメカニズムとしては、3d遷移金属が二酸化炭素を強く吸着することによると考えられる。
【0019】
酸化脱水素用触媒における、インジウム元素に対する白金元素のモル比(Pt/In)は、0.3~0.7であることが好ましく、0.4~0.6であることがより好ましく、0.5であることがさらに好ましい。Pt/Inが前記範囲の下限値以上であると、プロピレン選択率及び触媒寿命が向上する。Pt/Inが前記範囲の上限値以下であると、プロパン転化率が低下しにくい。
【0020】
酸化脱水素用触媒における、3d遷移金属元素に対する白金元素のモル比(Pt/3d金属)は、0.8~1.2であることが好ましく、0.9~1.1であることがより好ましく、1.0であることがさらに好ましい。Pt/3d金属が前記範囲の下限値以上であると、プロパン転化率が増加する。Pt/3d金属が前記範囲の上限値以下であると、二酸化炭素の転化率が低下しない。
【0021】
酸化脱水素用触媒における、3d遷移金属元素に対するインジウム元素のモル比(In/3d金属)は、1.8~2.2であることが好ましく、1.9~2.1であることがより好ましく、2.0であることがさらに好ましい。In/3d金属が前記範囲の下限値以上であると、プロピレン選択率及び触媒寿命が向上する。In/3d金属が前記範囲の上限値以下であると、プロパン転化率が低下しにくい。
【0022】
酸化脱水素用触媒における、インジウム元素と3d遷移金属元素の合計に対する白金元素のモル比(Pt/(In+3d金属))は、0.3~0.4であることが好ましく、0.31~0.35であることがより好ましく、0.33であることがさらに好ましい。(Pt/(In+3d金属))が前記範囲の下限値以上であると、プロパン転化率が増加する。(Pt/(In+3d金属))が前記範囲の上限値以下であると、プロパン転化率が低下しにくい。
【0023】
酸化脱水素用触媒における、白金元素と3d遷移金属元素の合計に対するインジウム元素のモル比(In/(Pt+3d金属))は、0.8~1.2であることが好ましく、0.9~1.1であることがより好ましく、1.0であることがさらに好ましい。(In/(Pt+3d金属))が前記範囲の下限値以上であると、プロピレン選択率及び触媒寿命が向上する。(In/(Pt+3d金属))が前記範囲の上限値以下であると、プロパン転化率が低下しにくい。
【0024】
酸化脱水素用触媒における、白金元素とインジウム元素の合計に対する3d遷移金属元素のモル比(3d遷移金属元素/(Pt+In))は、0.3~0.4であることが好ましく、0.31~0.35であることがより好ましく、0.33であることがさらに好ましい。(3d遷移金属元素/(Pt+In))が前記範囲の下限値以上であると、二酸化炭素の転化率が増加する。(3d遷移金属元素/(Pt+In))が前記範囲の上限値以下であると、プロピレン選択率及び触媒寿命が低下しにくい。
【0025】
酸化脱水素用触媒の活性成分において、白金元素、インジウム元素、3d遷移金属元素の形態は、特に限定されず、金属、酸化物、合金が例として挙げられる。なかでも、白金元素及びインジウム元素、及び3d遷移金属元素の2種以上が合金を形成していることが好ましく、白金元素と、インジウム元素と、3d遷移金属元素とが合金を形成していることがより好ましい。すなわち、前記活性成分は、白金-インジウム-3d金属合金(以下、「3元素合金」ともいう。)を含むことが好ましい。活性成分の総質量に対する3元素合金の含有割合は、50~100質量%であることが好ましく、75~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態の3元素合金は、PtIn合金の白金の一部が3d金属で置換された構造であることが好ましい。図2に3d金属がコバルトである場合の白金-インジウム-コバルト合金の結晶構造(単位格子)を示す。
【0027】
図2に示される結晶構造を有する場合、X線回折パターンにおいて、2θ=39.5~40.5°の位置に、PtIn合金の白金の一部が3d金属で置換された構造由来のピークが確認される。
酸化脱水素用触媒のXRDパターンは、CuKαを線源とする、粉末X線回折測定により得ることができる。例えば、粉末状の酸化脱水素用触媒について、X線回折装置(例えば、株式会社リガク製、MiniFlex II/AP)を用いて、XRDパターンを得ることができる。
【0028】
3元素合金の平均粒子径は、15nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることがさらに好ましい。3元素合金の平均粒子径が前記範囲の上限値以下であると、プロパン及び二酸化炭素の転化率が増加する。平均粒子径の下限は特に限定されないが、1nm以上でもよく、1.5nm以上でもよく、2nm以上でもよい。平均粒子径は、1~15nmであることが好ましく、1~5nmであることがより好ましく、1~3nmであることがさらに好ましい。3元素合金の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。具体的な3元素合金の平均粒子径の測定方法は、後述の実施例において説明する。
【0029】
<セリア担体>
プロパンの酸化脱水素反応においては、副反応によりコークが生成する。酸化脱水素用触媒上に生成したコークが堆積すると、触媒活性が低下する。本実施形態の酸化脱水素用触媒では、セリア担体の格子炭素がコークを燃焼することにより、触媒活性の低下が抑制される。
【0030】
本明細書において「セリア担体」とは、担体の総質量に対するセリアの含有割合が50質量%以上である担体を意味する。セリア担体中のセリアの含有割合は、50~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
セリア担体は、セリア以外の酸化物を含んでいてもよい。セリア以外の酸化物としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア等が例として挙げられる。セリア担体の総質量に対する。セリア以外の酸化物の含有割合は、0~50質量%であることが好ましく、0~20質量%であることが好ましく、含まれないことがさらに好ましい。
【0032】
セリア担体の窒素吸着によるBET比表面積は、20m/g以上であることが好ましく、50m/g以上であることがより好ましく、100m/g以上であることがさらに好ましい。セリア担体の比表面積が前記下限値以上であると、後述の酸化脱水素用触媒の物性値となりやすい。BET比表面積の上限は特に限定されないが、200m/g以下でもよい。BET比表面積は、20~200m/gであることが好ましく、50~200m/gであることがより好ましく、100~200m/gであることがさらに好ましい。
本明細書において、「BET比表面積」は、窒素吸着測定により測定することができる。
【0033】
(活性成分の担持量)
酸化脱水素用触媒の総質量に対する、前記活性成分の含有割合は、1.2~23質量%であることが好ましく、2.3~12質量%であることがより好ましく、3.3~6質量%であることがさらに好ましい。活性成分の含有割合が前記範囲の下限値以上であると、プロパン転化率及び二酸化炭素の転化率が増加する。活性成分の含有割合が前記範囲の上限値以下であると、プロパン転化率及び二酸化炭素の転化率が低下しにくい。
【0034】
酸化脱水素用触媒の総質量に対する、白金元素の含有割合は、0.5~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましく、2~3質量%であることがさらに好ましい。白金元素の含有割合が前記範囲の下限値以上であると、プロパン転化率及び二酸化炭素の転化率が増加する。白金元素の含有割合が前記範囲の上限値以下であると、プロパン転化率及び二酸化炭素の転化率が低下しにくい。
【0035】
酸化脱水素用触媒の総質量に対する、インジウム元素の含有割合は、0.5~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましく、1~2質量%であることがさらに好ましい。インジウム元素の含有割合が前記範囲の下限値以上であると、プロピレン選択率が増加する。インジウム元素の含有割合が前記範囲の上限値以下であると、プロパン転化率及び二酸化炭素の転化率が低下しない。
【0036】
酸化脱水素用触媒の総質量に対する、3d遷移金属元素の含有割合は、0.2~3質量%であることが好ましく、0.3~2質量%であることがより好ましく、0.3~1質量%であることがさらに好ましい。3d遷移金属元素の含有割合が前記範囲の下限値以上であると、二酸化炭素の転化率及び触媒寿命が向上する。3d遷移金属元素の含有割合が前記範囲の上限値以下であると、プロピレン選択率が低下しにくい。
【0037】
本明細書において、「白金元素、インジウム元素、3d遷移金属元素」の含有割合は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP)により測定することができる。例えば、酸化脱水素用触媒を王水に溶解させた後に、誘導結合プラズマ発光分析装置を用いて各金属量の測定を行うことができる。
【0038】
酸化脱水素用触媒のCO吸着により測定される白金元素及び3d遷移金属元素の分散度は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。分散度が前記範囲の下限値以上であると、プロパン転化率及び二酸化炭素の転化率が増加する。分散度の上限は特に限定されないが、50%以下でもよく、40%以下でもよく、30%以下でもよい。分散度は、5~50%であることが好ましく、10~40%であることがより好ましく、20~30%であることがさらに好ましい。白金元素及び3d遷移金属元素の分散度とは、酸化脱水素用触媒に含まれる白金とコバルトの総量(100%)に対する、表面に露出している白金とコバルトの割合である。
分散度は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により算出することができる。
【0039】
(酸化脱水素用触媒の物性)
酸化脱水素用触媒の窒素吸着によるBET比表面積は、20m/g以上であることが好ましく、50m/g以上であることがより好ましく、100m/g以上であることがさらに好ましい。酸化脱水素用触媒の比表面積が前記範囲の下限値以上であると、プロパン転化率及び二酸化炭素の転化率が増加する。BET比表面積の上限は特に限定されないが、200m/g以下でもよい。BET比表面積は、20~200m/gであることが好ましく、50~200m/gであることがより好ましく、100~200m/gであることがさらに好ましい。
【0040】
≪酸化脱水素用触媒の製造方法≫
本実施形態の酸化脱水素用触媒の製造方法は、セリア担体に、前記活性成分の原料化合物を含む含浸液を含浸して含浸体を得る含浸工程と、前記含浸体を還元ガス雰囲気で還元焼成する還元焼成工程と、を含む。
【0041】
<含浸工程>
含浸工程において使用される白金元素を含む原料化合物、インジウム元素を含む原料化合物、3d遷移金属元素を含む原料化合物(以下、全ての原料化合物を総称して「活性成分の原料化合物」ともいう。)としては、特に制限はないが、例えば、塩化物、硫化物、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩;シュウ酸塩、アセチルアセトナート塩、ジメチルグリオキシム塩、エチレンジアミン酢酸塩等の有機塩;キレート化合物;カルボニル化合物;シクロペンタジエニル化合物;アンミン錯体;アルコキシド化合物;アルキル化合物等が挙げられる。
【0042】
含浸方法としては、セリア担体を、前記セリア担体の全細孔容積に対して過剰の含浸液に浸した後に後述の乾燥工程において溶媒を全て乾燥させることにより、活性成分の原料化合物を担持する蒸発乾固法、セリア担体を、セリア担体の全細孔容積に対して過剰の含浸液に浸した後に濾過等の固液分離し、その後溶媒を乾燥させることにより活性成分の原料化合物が担持された触媒を得る平衡吸着法、セリア担体に、セリア担体の全細孔容積とほぼ等量の含浸液を含浸し、後述の乾燥工程において、溶媒を全て乾燥させることにより、活性成分の原料化合物を担持する細孔充填法が例として挙げられる。なお、セリア担体に、2種類以上の活性成分の原料化合物を含浸させる方法としては、これら各成分を同時に含浸させる一括含浸法でもよく、個別に含浸させる逐次含浸法でもよい。
【0043】
含浸液は、活性成分の原料化合物を溶媒に溶解することにより調製することができる。溶媒としては、活性成分の原料化合物を溶解可能であり、かつ、後述の乾燥工程により揮発除去される溶媒であれば特に限定されないが、例えば、水、エタノール、アセトン等が挙げられる。
【0044】
含浸液中の溶媒の乾燥は、本分野で公知の方法により行うことができ、乾燥温度、乾燥時間、乾燥雰囲気は、除去する溶媒により適宜調整することができる。
【0045】
還元焼成工程における還元ガスとしては水素、一酸化炭素等が挙げられ、不活性ガスで希釈したガスを用いてもよい。還元焼成の温度は、400~700℃であることが好ましく、500~700℃であることがより好ましく、600℃であることが好ましい。
還元焼成の時間は、1~2時間でもよく、1~3時間でもよく、1~5時間でもよい。
【0046】
含浸工程と還元焼成工程の間に、含浸体を酸化ガス雰囲気で酸化焼成する酸化焼成工程を有していてもよい。
酸化焼成工程における酸化ガスとしては酸素等が挙げられ、不活性ガスで希釈したガスを用いてもよい。また、空気を酸化ガスとして使用してもよい。
酸化焼成の温度は、400~600℃であることが好ましく、450~550℃であることがより好ましく、500℃であることが好ましい。
酸化焼成の時間は、1~3時間でもよく、1~2時間でもよい。
【0047】
≪プロピレンの製造方法≫
本実施形態のプロピレンの製造方法は、本発明の酸化脱水素用触媒と、プロパン及び二酸化炭素を含む原料ガスと、を接触処理させ、プロパンの酸化脱水素反応によりプロピレンを製造する方法である。
【0048】
プロピレン製造方法は、例えば、上述の酸化脱水素用触媒を反応器に充填し、プロパン及び二酸化炭素を含む原料ガスを流通させることにより実施することができる。反応方式は、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、例えば、固定床式、流動床式、移動床式が挙げられ、固定床式が好ましい。
【0049】
プロピレンの製造方法は、上述の酸化脱水素用触媒を、単独の反応装置に充填して行う一段のプロピレンの製造方法でもよく、複数の反応装置に充填して行う多段連続方式のプロピレンの製造方法でもよい。多段連続方式の場合、一部の反応装置においてプロピレンの製造を行い、残りの反応措置において後述の酸化脱水素用触媒の再生を行ってもよい。
【0050】
原料ガス100体積%に対するプロパンの含有割合は、5~50体積%であることが好ましく、20~30体積%であることがより好ましい。
【0051】
原料ガス100体積%に対する二酸化炭素の含有割合は、5~50体積%であることが好ましく、20~30体積%であることがより好ましい。
【0052】
原料ガスは、プロパン及び二酸化炭素以外のガスを含んでもよく、プロパン及び二酸化炭素以外のガスとしては、例えば、ヘリウム、窒素等の不活性ガスが挙げられる。
【0053】
原料ガス中のプロパンに対する二酸化炭素のモル比(CO/C)は、0.5~2であることが好ましく、0.75~1.25であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。上述の従来の酸化脱水素用触媒を用いた場合、二酸化炭素の転化率が低いため、CO/Cを高く設定しないとプロピレンを効率的に製造することができなかった。一方、本実施形態の酸化脱水素用触媒は二酸化炭素の活性化能が高く、二酸化炭素の転化率が高いため、上述のような低いCO/CHにおいても効率的にプロピレンを製造することが可能である。
【0054】
反応温度は、500~600℃であることが好ましく、550~600℃であることがより好ましい。反応温度が前記範囲の下限値以上であると、平衡転化率が上がる。反応温度が前記範囲の上限値以下であると、活性成分のシンタリングが抑制され、活性の低下が抑制される。
【0055】
反応圧力は、0.05~0.1MPaであることが好ましく、0.08~0.1MPaであることがより好ましく、0.09~0.1MPaであることがさらに好ましい。反応圧力が前記範囲の下限値以上であると、二酸化炭素の転化率が増加する。反応圧力が前記範囲の上限値以下であると、プロパン転化率が低下しない。
【0056】
酸化脱水素用触媒に対する、原料ガス中のプロパンの重量空間速度(Weight Hourly Space Velocity)は、3000~5000hr-1であることがより好ましく、3500~4000hr-1であることがさらに好ましい。
【0057】
本実施形態のプロピレンの製造方法に供される原料ガス中のプロパンとしては、シェールガス由来のプロパン、ナフサ由来のプロパン、バイオマス由来のプロパン等が例として挙げられる。
【0058】
本実施形態のプロピレンの製造方法では、酸化脱水素用触媒上にコークが堆積して、触媒活性が低下することがある。活性が低下した触媒は酸化性ガスを含む再生ガスを接触処理することにより再生することができる。
【0059】
酸化性ガスとしては、酸素、二酸化炭素等が挙げられる。酸化性ガスが酸素の場合、再生ガスとして空気を用いることができる。
再生ガス100体積%に対する酸化性ガスの含有割合は、20~100体積%であることが好ましく、50~100体積%であることがより好ましい。
【0060】
酸化脱水素用触媒に対する、再生ガス中の酸化性ガスのガス空間速度(Gas Hourly Space Velocoty:GHSV)は、6000~10000hr-1であることがより好ましく、7000~8000hr-1であることがさらに好ましい。
【0061】
再生温度は、400~600℃であることが好ましく、450~550℃であることがより好ましい。再生温度が前記範囲の下限値以上であると、コークの燃焼が促進される。反応温度が前記範囲の上限値以下であると、活性成分のシンタリングが抑制され、活性の低下が抑制される。
【0062】
再生時間は、酸化性ガスの種類及びGHSV、再生温度、再生圧力に応じて、適宜調整することができる。再生時間は、1~2時間でもよく、1~3時間でもよく、1~5時間でもよい。
【0063】
本実施形態の酸化脱水素用触媒は、セリア担体を含むことにより、コークの燃焼能力が高い。したがって、酸化性ガスとして二酸化炭素を使用しても充分に触媒活性が回復する。すなわち、プロピレンの製造方法における原料ガスから、プロパンの供給を停止することにより、触媒の再生を行うことが可能であり、効率的にプロピレンを製造することができる。
【0064】
本実施形態においては、再生処理後の触媒に、還元性ガスを含む還元処理ガスを接触する還元処理を行うことが好ましい。還元処理を行うことによって、再生処理により活性成分が部分的に酸化された場合、再度合金又は金属に変換することができる。
【0065】
還元性ガスとしては、水素、一酸化炭素等が挙げられる。
還元処理ガス100体積%に対する還元性ガスの含有割合は、20~100体積%であることが好ましく、30~50体積%であることがより好ましい。
【0066】
酸化脱水素用触媒に対する、還元処理ガス中の還元性ガスのガス空間速度(Gas Hourly Space Velocoty:GHSV)は、6000~10000hr-1であることがより好ましく、7000~8000hr-1であることがさらに好ましい。
【0067】
還元処理温度は、400~600℃であることが好ましく、450~550℃であることがより好ましい。
【0068】
還元処理時間は、還元性ガスの種類及びGHSV、再生温度、再生圧力に応じて、適宜調整することができる。還元処理時間は、0.5~1時間でもよく、0.5~1.5時間でもよく、0.5~2時間でもよい。
【0069】
本発明の酸化脱水素用触媒を用いることにより、効率的に、かつより長期にわたりプロピレンを製造することが可能となる。また、二酸化炭素を有効活用することができる。
【実施例0070】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
<酸化脱水素用触媒のキャラクタリゼーション>
酸化脱水素用触媒のキャラクタリゼーションとして、透過電子顕微鏡観察、CO吸着を行った。
【0072】
(透過電子顕微鏡観察)
各例の酸化脱水素用触媒の粒子径の測定はエネルギー分散型X線(EDX)分析装置を備えた透過型電子顕微鏡(JOEL JEM-ARM200M)により、200kVの加速電圧で実施した。各例の酸化脱水素用触媒をエタノールで超音波処理した後、炭素膜で支持されたMoグリッド上に分散して観察を行った。粒度分布は、10枚の画像で無作為に選択した126個の粒子の最長径を観察し、これらの平均を平均粒子径とした。
【0073】
(CO吸着)
各例の酸化脱水素用触媒のCO吸着測定により、酸化脱水素用触媒の白金及びコバルトの分散度を測定した。分散度とは、酸化脱水素用触媒に含まれる白金とコバルトの総量に対する、表面に露出している白金とコバルトの割合である。酸化脱水素用触媒40mgに水素が5体積%、空気が95体積%の混合ガスを30NmL/minで流通させ、550℃で30分間前処理を行い、その後、ヘリウムをパージしながら、液体窒素で冷却した。次に一酸化炭素が10体積%、ヘリウムが90体積%の混合ガスをパルス法で導入し、触媒に吸着しなかった一酸化炭素をTCD検出器により定量し、一酸化炭素が触媒に吸着しなくなるまで混合ガスの導入を行った。酸化脱水素用触媒に吸着した一酸化炭素量から、白金1原子に対して一酸化炭素1分子が吸着、コバルト1原子に対して一酸化炭素1分子が吸着するという前提で白金及びコバルトの分散度を計算した。
【0074】
<プロパンの酸化脱水素反応>
各例の酸化脱水素用触媒0.10gを海砂(宮崎化学薬品株式会社製)0.90gで希釈して、直径6mm、長さ20cmの石英製の円筒型の固定床反応管に充填して触媒層を形成した。次いで、触媒層の温度を550℃に加熱し、水素を10NmL/minで流通させ、30分間前処理を行った。その後、水素に代えてプロパン及び二酸化炭素を含む原料ガスを20NmL/minで触媒層に流通させてプロパンの酸化脱水素反応を行った。原料ガス100体積%に対するプロパン、二酸化炭素、ヘリウムの含有割合はそれぞれ、25体積%、25体積%、50体積%である。
【0075】
反応器出口から流出したガスをオンライン熱伝導度検出ガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所、製品名「GC-8A」)で分析した。反応器出口ガスには、プロピレン、プロパン、エチレン、エタン、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、水、及び水素が検出された。
【0076】
プロパンの転化率(XC3H8)は下式3により計算した。
【0077】
【数1】
前記式3中、Fin C3H8は、反応器に流入したプロパンの流量(mol/min)を示し、Fout C3H8は反応器から排出されたプロパンの流量(mol/min)を示す。
【0078】
二酸化炭素の転化率(XCO2)は下式4により計算した。
【0079】
【数2】
前記式4中、Fin CO2は、反応器に流入した二酸化炭素の流量(mol/min)を示し、Fout CO2は反応器から排出された二酸化炭素の流量(mol/min)を示す。
【0080】
プロピレンの選択率は下式5により計算した。
【0081】
【数3】
前記式5中、Fout C3H6は、反応器から排出されたプロピレンの流量(mol/min)を示し、Fout C2H6は、反応器から排出されたエタンの流量(mol/min)を示し、Fout C2H4は、反応器から排出されたエチレンの流量(mol/min)を示し、Fout CH4は、反応器から排出されたメタンの流量(mol/min)を示す。
【0082】
プロピレンの収率は、プロパンの転化率×プロピレンの選択率/100により計算した。
【0083】
<反応後の酸化脱水素用触媒の炭素量の測定>
各例の酸化脱水素用触媒の反応後の炭素量はMicrotracBEL社製のBELCAT IIにより測定した。10時間反応後の酸化脱水素用触媒(海砂を含む)にヘリウムを30NmL/minで流通させ、150℃で30分間前処理を行い、その後室温に降温した。次に酸素が50体積%、ヘリウムが50体積%の混合ガスを40NmL/minで流通させながら、40~900℃まで昇温速度5℃/minで加熱した。出口ガスの二酸化炭素の量をオンライン質量計により定量した。
【0084】
[実施例1]
セリア(第一稀元素化学工業株式会社製、参照触媒「JRC-CEO」、比表面積123.1m/g)に、Pt源としてHPtCl、In源としてIn(NO・3HO、3d金属源としてCo(NO・6HOを表1に記載の触媒Aの組成になるようにイオン交換水に溶解させた含浸液を蒸発乾固法で含浸し、その後、50℃で減圧乾燥を行い、含浸体を得た。含浸体を空気流通下、500℃で1時間焼成し、その後、水素流通下、600℃で1時間還元焼成を行い、セリアにPt-In-Co合金が担持された触媒Aを得た。触媒Aの組成、平均粒子径、白金及びコバルトの分散度、及び反応後の炭素量の結果を表1に示す。
【0085】
[比較例1]
In(NO・3HOとCo(NO・6HOを添加せず、表1に記載の触媒Bの組成になるように含浸液の組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリアにPt金属が担持された触媒Bを得た。触媒Bの組成、平均粒子径、白金の分散度、及び反応後の炭素量の結果を表1に示す。
【0086】
[比較例2]
In(NO・3HOを添加せず、表1に記載の触媒Cの組成になるように含浸液の組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリアにPt-Co合金が担持された触媒Cを得た。触媒Cの組成、平均粒子径、白金及びコバルトの分散度、及び反応後の炭素量の結果を表1に示す。
【0087】
[比較例3]
Co(NO・6HOを添加せず、表1に記載の触媒Dの組成になるように含浸液の組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリアにPt-In合金が担持された触媒Dを得た。触媒Dの組成、平均粒子径、白金の分散度、及び反応後の炭素量の結果を表1に示す。
【0088】
In(NO・3HOとCo(NO・6HOを添加せず、Sn源としてSnClを添加し、表1に記載の触媒Eの組成になるように含浸液の組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリアにPt-Sn合金が担持された触媒Eを得た。触媒Eの組成を表1に示す。
【0089】
実施例1、比較例1~4の触媒を用いて、プロパンの酸化脱水素反応を行った。結果を図3、4に示す。
【0090】
[実施例2]
3d金属源としてCo(NO・6HOに代えてNi(NO・6HOを添加し、表1に記載の触媒Fの組成になるように含浸液の組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリアにPt-In-Ni合金が担持された触媒Fを得た。触媒Fの組成を表1に示す。
実施例2の触媒を用いて、プロパンの酸化脱水素反応を行った。結果を図5に示す。
【0091】
[実施例3]
3d金属源としてCo(NO・6HO及びNi(NO・6HOを添加し、表1に記載の触媒Gの組成になるように含浸液の組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリアにPt-In-Co-Ni合金が担持された触媒Gを得た。触媒Gの組成を表1に示す。
実施例3の触媒を用いて、プロパンの酸化脱水素反応を行った。結果を図6に示す。
【0092】
[比較例5]
担体として、セリアに代えてアルミナを使用した以外は、実施例1と同様にして、アルミナにPt-In-Co合金が担持された触媒Hを得た。触媒Hの組成を表1に示す。
【0093】
[比較例6]
担体としてセリアに代えてジルコニアを使用した以外は、実施例1と同様にして、ジルコニアにPt-In-Co合金が担持された触媒Iを得た。触媒Iの組成を表1に示す。
【0094】
[比較例7]
担体としてセリアに代えてチタニアを使用した以外は、実施例1と同様にしてチタニアにPt-In-Co合金が担持された触媒Jを得た。触媒Jの組成を表1に示す。
【0095】
比較例5~7の触媒を用いて、プロパンの酸化脱水素反応を行った。結果を図7に示す。なお比較のため、実施例1の触媒の反応結果も示す。
【0096】
【表1】
【0097】
[実施例1-1]
実施例1の触媒Aを用いて触媒の寿命試験を行った。上述の<プロパンの酸化脱水素反応>に記載の方法で約30時間反応を行った。その後、触媒層の温度を550℃に保ったまま、原料ガスに代えて、二酸化炭素を含む再生ガスを25NmL/min(二酸化炭素:5NmL/min、ヘリウム:20NmL/minの混合ガス)で流通させ5時間再生処理を行った。再生処理後、触媒層の温度を550℃に保ったまま、再生ガスに代えて、水素を含む還元処理ガスを30NmL/min(水素:10NmL/min、ヘリウム:20Nml/minの混合ガス)で流通させ30分間還元処理を行った。還元処理後、触媒層の温度を550℃に保ったまま、還元処理ガスに代えて、原料ガスを再度流通させ、反応を再スタートした(図8の2nd cycle)。その後、約30時間反応を行った後に、上述の再生処理、還元処理を再度行い、その後、反応を再スタートした(図8の3rd cycle)。
【0098】
図3に示されるように、実施例1の触媒Aは、プロパン転化率及びプロピレン選択率が高く、これらの経時の低下がほとんど確認されなかった。また、図4に示されるように実施例1の触媒Aは、比較例1~4の触媒B~Eと比較して二酸化炭素の転化率の経時の低下が抑制されていた。また、図5及び図6に示されるように、3d遷移金属元素としてニッケルを用いた場合も同様の効果が奏されることがわかった。
【0099】
また、図7に示されるように、セリア以外の担体を用いた比較例5~7の触媒H~Jでは、初期のプロパン転化率及び二酸化炭素転化率が低く、かつ、これらの経時の低下が顕著に確認された。
【0100】
さらに図8に示されるように、実施例1の触媒Aを使用した寿命試験では、酸化性ガスとして二酸化炭素の使用が可能であり、2回再生処理を行うことにより、約100時間、高いプロパン転化率及び二酸化炭素転化率を維持したまま、反応を継続することが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る酸化脱水素用触媒は、長期にわたりピロピレンを効率よく製造することができるため有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8