(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181843
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】スラリー脱水装置、及び、スラリー脱水装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
B01D 24/46 20060101AFI20221201BHJP
B01D 33/04 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B01D33/36
B01D33/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089026
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】横川 仁
(72)【発明者】
【氏名】村山 幸司
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA01
4D116BB11
4D116BC63
4D116BC67
4D116BC70
4D116BC75
4D116DD01
4D116FF13B
4D116FF14B
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4D116GG12
4D116KK04
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4D116QC29D
4D116RR01
4D116RR03
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4D116RR06
4D116RR14
4D116RR21
4D116RR26
4D116VV07
4D116VV11
(57)【要約】
【課題】濾布の幅方向における洗浄力が均一化されていることにより洗浄効率が高く、尚且つ、飛散した洗浄水の噴霧管駆動部への付着に起因する故障リスクも低く抑えられた濾布洗浄機構を有するスラリー脱水装置を提供すること。
【解決手段】濾布1と、濾布1上にスラリーを供給するスラリー供給口6と、濾布1を両面から挟持する脱水ロール2と、濾布洗浄機構3と、を備え、濾布1上に供給されるスラリーを脱水ロール2にて圧搾脱水するスラリー脱水装置10を、濾布洗浄機構3は、濾布1の表面に対して一定の空間を空けて対向していて該濾布の幅方向に沿って配置されている複数のスプレーノズル331を有する、洗浄水噴霧管33と、洗浄水噴霧管33を、幅方向に沿って往復運動させる噴霧管駆動部34と、を有し、噴霧管駆動部34が、往復運動するシリンダー341を有する水平駆動機構である、スラリー脱水装置10とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルト状の濾布と、
前記濾布上にスラリーを供給するスラリー供給口と、
前記濾布を両面から挟持する脱水ロールと、
濾布洗浄機構と、を備え、
前記濾布を循環走行させつつ、該濾布上に供給されるスラリーを前記脱水ロールにて圧搾脱水するスラリー脱水装置であって、
前記濾布洗浄機構は、
前記濾布の表面に対して一定の空間を空けて対向していて該濾布の幅方向に沿って配置されている複数のスプレーノズルを有する、洗浄水噴霧管と、
前記洗浄水噴霧管を、前記幅方向に沿って往復運動させる噴霧管駆動部と、を有し、
前記噴霧管駆動部が、往復運動するシリンダーを有する水平駆動機構である、
スラリー脱水装置。
【請求項2】
前記シリンダーが、エアーシリンダーである、
請求項1に記載のスラリー脱水装置。
【請求項3】
前記洗浄水噴霧管が定められた往復運動を実行するように前記噴霧管駆動部の動作を制御する、制御部を備える、
請求項1又は2に記載のスラリー脱水装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のスラリー脱水装置の運転方法であって、
前記スプレーノズルから噴霧された洗浄水を、循環使用する、
スラリー脱水装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー脱水装置、及び、スラリー脱水装置の運転方法に関する。詳しくは、本発明は、無端ベルト状の濾布を循環走行させる脱水装置であって、スラリーを圧搾脱水した後の濾布を洗浄する手段を備えるスラリー脱水装置、及び、スラリー脱水装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スラリー中の固体粒子を含水率の低いケーキとして回収するためのスラリー脱水装置として、循環走行する無端ベルト状の濾布と、濾布を挟み込む1対の脱水ロールとを有するスラリー脱水装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
このスラリー脱水装置においては、無端ベルト状の濾布を循環走行させながら濾布上に供給されるスラリーが、脱水ロールにて圧搾脱水される。そして脱水ロールを通過した濾布は、例えば、特許文献1に開示されているように、濾布の両面に洗浄水を噴出することによって洗浄されて、スラリーの圧搾脱水を繰り返し行うための循環走行を継続する。
【0004】
スラリー脱水装置において、上記のように、濾布を洗浄するための濾布洗浄機構としては、複数のスプレーノズルが一定の間隔で配列されている洗浄水噴霧管を、走行する濾布の幅方向に沿って配置する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような濾布洗浄機構を有するスラリー脱水装置においては、洗浄水噴霧管を水平方向に往復運動させる機構を備えさせることにより、幅方向における洗浄力を均一化して洗浄効率を高めることが考えられる。
【0007】
ここで、スラリー脱水装置を含む工業用の機械装置分野において、金属管等の構成部材を連続的に水平往復運動させる機構としては、電動モーターにより円板を回転駆動させ、クランク機構により回転運動を往復運動に変換して水平往復運動とする機構が一般的である。しかしながら、スラリー脱水装置において、上述の濾布洗浄機構を、このような回転運動を水平往復運動に変換するクランク機構によって洗浄水噴霧管を水平方向に駆動する構成とした場合には、動力源となるモーターやクランク機構、即ち、駆動部の占める設置範囲が大きくなり、又、モーターやクランクの配置スペースに限界があれば、これらの駆動部の大部分を洗浄水噴霧管の近傍の下方域に配置する必要が生じる。よって、この場合に、これらの駆動部への飛散した洗浄水の付着を回避することが困難であり、これに起因するクランク機構の腐食、減耗、電気ケーブル等の付帯設備も含めたモーターの故障のリスクが懸念されるところであった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、濾布の幅方向における洗浄力が均一化されていることにより洗浄効率が高く、尚且つ、飛散した洗浄水の噴霧管駆動部への付着に起因する故障リスクも低く抑えられた濾布洗浄機構を有するスラリー脱水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スラリー脱水装置の備える濾布洗浄機構を、水平駆動機構からなる噴霧管駆動部によって洗浄水噴霧管を往復運動させる構成とすることによって、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0010】
(1) 無端ベルト状の濾布と、前記濾布上にスラリーを供給するスラリー供給口と、前記濾布を両面から挟持する脱水ロールと、濾布洗浄機構と、を備え、前記濾布を循環走行させつつ、該濾布上に供給されるスラリーを前記脱水ロールにて圧搾脱水するスラリー脱水装置であって、前記濾布洗浄機構は、前記濾布の表面に対して一定の空間を空けて対向していて該濾布の幅方向に沿って配置されている複数のスプレーノズルを有する、洗浄水噴霧管と、前記洗浄水噴霧管を、前記幅方向に沿って往復運動させる噴霧管駆動部と、を有し、前記噴霧管駆動部が、往復運動するシリンダーを有する水平駆動機構である、スラリー脱水装置。
【0011】
(1)のスラリー脱水装置によれば、洗浄水噴霧管を、走行する濾布の幅方向に沿って往復運動させることによって、濾布の幅方向における洗浄力を均一化して濾布の洗浄効率を向上させることができる。
【0012】
そして、(1)のスラリー脱水装置によれば、更に、洗浄水噴霧管を水平往復運動させる噴霧管駆動部を、水平駆動機構とすることによって、噴霧管駆動部の設置に必要なスペースを縮小しながら、噴霧管駆動部を洗浄水噴霧管の下方を避けて側方に配置することができる。これにより、飛散した洗浄水の噴霧管駆動部への付着に起因する故障リスクも低く抑えることができる。
【0013】
(2) 前記シリンダーが、エアーシリンダーである、(1)に記載のスラリー脱水装置。
【0014】
(2)のスラリー脱水装置によれば、シリンダーをエアーシリンダーに限定することによって、特には、後述する「ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プラント」等の装置産業プラント内でこれを採用する場合であって、例えば、油圧式シリンダーや、水圧シリンダーを採用した場合における種々の問題を回避することができる。油圧式シリンダーや、水圧シリンダーを採用した場合、油圧ポンプ等の昇圧装置が必要となり、装置が大掛かりになる。よって、設置コスト、維持管理コストが高くなり、保守管理の手間を要する。又、噴霧管駆動部の設置に必要なスペースが大きくなるため、これらの駆動部の大部分を洗浄水噴霧管の近傍の下方域に配置する必要が生じるときもある。一方で、エアーシリンダーとすれば、プラント内に配管で供給されている駆動用のエアー源をそのまま利用することができるため、設備点数も少なくなり、噴霧管駆動部がコンパクトになる。そのため、設置コスト、維持管理コストが低くなる。又、必須の構成である水平駆動機構を、汎用のエアーシリンダーを用いて構成することができるので、故障時の交換も容易に行うことができる。
【0015】
(3) 前記洗浄水噴霧管が定められた往復運動を実行するように前記噴霧管駆動部の動作を制御する、制御部を備える、(1)又は(2)に記載のスラリー脱水装置。
【0016】
(3)のスラリー脱水装置によれば、例えば、スピードコントローラーとタイマーを組合せたシーケンス制御とすることにより、洗浄水噴霧管の水平往復運動の速度や時間間隔等を任意の値に調節することができる。又、外付け或いは内蔵のセンサーを備えさせることによって、往復運動の運動幅も簡単に調整することができる。
【0017】
(4) (1)から(3)の何れかに記載のスラリー脱水装置の運転方法であって、
前記スプレーノズルから噴霧された洗浄水を、循環使用する、スラリー脱水装置の運転方法。
【0018】
(4)のスラリー脱水装置の運転方法によれば、使用水量が限定される製造現場において、新規使用水量を調節しながら、(1)から(3)の何れかに記載のスラリー脱水装置の奏する各効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、濾布の幅方向における洗浄力が均一化されていることにより洗浄効率が高く、尚且つ、飛散した洗浄水の噴霧管駆動部への付着に起因する故障リスクも低く抑えられた濾布洗浄機構を有するスラリー脱水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のスラリー脱水装置の全体構成を示す側面図である。
【
図2】本発明のスラリー脱水装置の洗浄水噴霧管の配置態様の一例を模式的に示す側面図である。
【
図3】洗浄水噴霧管と、噴霧管駆動部とを備える、濾布洗浄機構の構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のスラリー脱水装置の好ましい実施形態について説明する。一般に、スラリー脱水装置は、金属製錬工業、排水汚泥処理、食品工業、紙パルプ業等、スラリーを扱う業種全般において広く使用されている。本発明のスラリー脱水装置は、中でも、ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プラントに好ましく適用することができる。但し、本発明は、これらの何れかの実施形態に限定されるものではなく、スラリー中の固体粒子を含水率の低いケーキとして回収する工程を行う各種の製造プラントにおいて、広く適用することができる。
【0022】
<スラリー脱水装置>
[基本構成と基本動作]
図1に示すスラリー脱水装置10は、本発明の好ましい実施形態の一例である。スラリー脱水装置10は、同図に示すように、少なくとも、無端ベルト状の濾布1と、濾布1上にスラリーを供給するスラリー供給口6と、スラリーを圧搾脱水する1対の脱水ロール2(21、22)と、脱水ロール2を通過した濾布を洗浄する濾布洗浄機構3と、を有する。
【0023】
又、スラリー脱水装置10には、
図1に示すように、脱水ロールの他にも、濾布を洗浄する洗浄プールの内部に配置されている水中ロール31、濾布1に含まれる水分を除去する1対のスクイズロール4(41、42)、スクイズロール4(41、42)と脱水ロール2(21、22)との間に配置されていて、循環走行する濾布1の片寄りを修正して走行位置を調整する機能を有するガイダーロール5等、必要に応じてのその他の種々のロールが配置されている。スラリー脱水装置10には、更に、走行中における濾布1の側端部11の位置を検出する濾布片寄り検知装置7が設置されていることが好ましい。
【0024】
濾布1は、繊維で編み込まれた布や不織布で構成されるものであればよい。例えば、スラリーの水分吸収のよい合成繊維製のフェルトを、濾布1の材料として好ましく用いることができる。濾布の材質については、スラリーのpH等の液性条件や、強度や耐摩耗性といった物理条件に応じて適宜選択すればよいが、ポリエチレン、ポリプロピレン等が用いられる。
【0025】
脱水ロール2(21、22)は、濾布1を両面から挟持する態様で設置されている。そして、この脱水ロール2は濾布1を挟み込んで圧搾することによってスラリーを圧搾脱水することを主たる機能とする。但し、脱水ロール2(21、22)は、当該主たる機能に加えて、濾布1を駆動する駆動ロールとしても機能させることができる。
【0026】
濾布洗浄機構3は、洗浄水を噴出する2本の洗浄水噴霧管33(33A、33B)と、洗浄水噴霧管33(33A、33B)を、水平方向に往復運動させる機能を有する噴霧管駆動部34とを必須の構成とする。本発明特有の濾布洗浄機構3の構成と機能の詳細については別途後述する。
【0027】
スラリー供給口6は、濾布1が、脱水ロール2(21、22)に入る地点より上流側で、スクイズロール4(41、42)を通過した後の下流側の中間経路上に配置される。
【0028】
濾布片寄り検知装置7は、所謂、接触式の位置センサーであって、濾布1の側端部11と接触して、その位置を検出する可動型の検知板を有する構成とすることができる。
【0029】
以上の各構成を備えるスラリー脱水装置10において、濾布1は、対向する1対の脱水ロール2(21、22)の間や濾布洗浄機構3の内部等を、順次通過しながら循環走行するように装置内に張設されている。そして、濾布1は、対向する1対の脱水ロール2(21、22)に挟み込まれており、脱水ロール2(21、22)の回転と共に所定の速度で移動する。
【0030】
脱水ロール2(21、22)は、濾布1とその上のスラリーを上下から圧搾して水分を絞りとることによって脱水する。スラリーに含有された水分の多くは、脱水ロール2(21、22)に押されて、濾布1の下側に押し出される。脱水後のスラリー中の固体(脱水ケーキ)は、上側の脱水ロール21に転着され、脱水ロール21に近接或いは接触して設置されているスクレーパーによって削ぎ落とされる。
【0031】
そして、脱水ロール2(21、22)を通過した濾布1は、濾布洗浄機構3において、洗浄水によって洗浄される。洗浄された濾布1は、スクイズロール4(41、42)を通過し、スラリー供給口6の直下へと走行する。
【0032】
[濾布洗浄機構]
スラリー脱水装置10は、
図2及び
図3に模式的に示す、濾布洗浄機構3を有する。濾布洗浄機構3は、洗浄水を噴出する2本の洗浄水噴霧管33(33A、33B)と、これらの洗浄水噴霧管33(33A、33B)を水平往復運動させる噴霧管駆動部34とを必須の構成とする。又、濾布洗浄機構3は、これらの最小限の構成に加えて、更に、洗浄水を貯留する洗浄プール32と、洗浄プール32内に配置される水中ロール31を含んで構成されるものであることが好ましい。以下、洗浄水噴霧管33、噴霧管駆動部34、水中ロール31及び洗浄プール32を含んで構成される濾布洗浄機構3の構成と機能の詳細について説明する。
【0033】
(洗浄水噴霧管)
洗浄水噴霧管33(33A、33B)は、
図3に示すように、濾布1の表面に対して一定の空間を空けて対向していて、尚且つ、濾布1の幅方向、即ち、濾布の走行方向に直交する方向に沿って配置されている複数のスプレーノズル331を有する、管状の部材である。ここで、本明細書において濾布1の「表面」とは、濾布1の両方の表面のことを言う。そして、スプレーノズル331は、濾布1の少なくとも何れか一方の「表面」、好ましくは、
図3に示すように、濾布1の両方の表面(両面)に対して一定の空間を空けて、管状の洗浄水噴霧管33(33A、33B)の側面に、上述の配置態様で配置されていればよい。
【0034】
この洗浄水噴霧管33(33A、33B)は、使用する洗浄水を所望の水圧・流速で流すことができる管であればよい。又、洗浄水噴霧管33(33A、33B)は、その供給配管との接続側とは反対側の端部を閉止構造とすることが好ましい。これにより、スプレーノズル331から噴霧される洗浄水の圧力を所定の高さに保持して、単位時間当たりの洗浄水の噴霧量、即ち洗浄水の流量を所望の一定量にバラツキ無く管理することができる。ただし、洗浄水噴霧管33(33A、33B)の「供給配管との接続側とは反対側の端部」を閉止せずに、スプレーノズル331から噴霧されなかった残余の洗浄水をこの端部から排出する構造としてもよい。尚、洗浄水は、連続供給を原則とするが、自動弁による間欠供給としてもよい。
【0035】
スプレーノズル331の噴霧角度(即ち、スプレーノズル331から噴霧される洗浄水の広がりの角度)、及び、スプレーノズル331の1個当たりの流量は、適宜、最適な条件を選定すればよい。又、噴霧方向やスプレーノズル331の設置間隔についても、噴霧角度に応じて最適な条件を適宜選定すればよい。但し、濾布1の幅方向における洗浄力を均一化するために、スプレーノズル331の設置間隔については任意の等間隔とすることが好ましい。
【0036】
又、洗浄水噴霧管33(33A、33B)を一定の距離で往復運動させるため、洗浄水を外部から供給する配管と、洗浄水噴霧管との接続は、ゴムホース等の可撓性配管によって行うことが好ましい。
【0037】
尚、水平往復運動を繰り返す洗浄水噴霧管33(33A、33B)を、摺動可能に支持する支持部(図示省略)としては、樹脂製の軸受けを用いることが好ましい。この支持部については、濾布洗浄機構3の全体構成の中で、相対的に洗浄水の付着リスクが高くなる部分でもあるが、万一、飛散した洗浄水の一部が付着した場合であっても、この部分を樹脂製の軸受けとしておくことによって、洗浄水による腐食のリスクを回避することができる。
【0038】
(噴霧管駆動部)
噴霧管駆動部34は、洗浄水噴霧管33(33A、33B)を、水平方向に往復運動させる水平駆動機構である。そして、本発明のスラリー脱水装置においては、この水平駆動機構が、往復運動するシリンダー341を有する機構とされている。
【0039】
噴霧管駆動部34は、上記構成からなり、洗浄水噴霧管33(33A、33B)を、所望の速度、移動幅で、水平方向に沿って、往復運動させることができる機能を有する装置であれば特定の駆動装置に限定されない。水平往復運動の移動幅については、洗浄水噴霧管33のスプレーノズル331の噴霧角度や設置間隔等に応じて、適宜、最適な条件を選定すればよい。但し、この噴霧管駆動部34を構成する水平駆動機構は、圧縮された気体のエネルギーを直動運動に変換するエアーシリンダーであることが好ましい。
【0040】
噴霧管駆動部34によれば、例えば、
図3に示すように、エアーシリンダーのロッドの先端を、連結ボルト等の固定具や治具等によって連結プレート332に固定し、連結プレート332に固定された2本の洗浄水噴霧管33(33A、33B)を、往復運動させる構成とすることによって、上記態様で、2本の洗浄水噴霧管33(33A、33B)に水平往復運動をさせることができる。
【0041】
尚、噴霧管駆動部34には、2本の洗浄水噴霧管33(33A、33B)に定められた往復運動を実行するように噴霧管駆動部の動作を自動的に、或いは、手動による遠隔操作によって任意の態様で制御することができるように、そのような機能を有するシーケンサーやコンピューター等によって構成される制御部(図示省略)を備えることが好ましい。
【0042】
(濾布の洗浄方法)
上記各構成を備える濾布洗浄機構3において、濾布1は、水中ロール31にガイドされて洗浄プール32内の洗浄水によって浸漬洗浄されるとほぼ同時に、濾布の表面に洗浄水噴霧管33(33A、33B)によって洗浄水が噴霧されて、濾布1が洗浄水噴霧管33(33A、33B)から濾布の表面(好ましくは両面)に噴霧される洗浄水によってスプレー洗浄される。
【0043】
スプレーノズル331から噴霧された洗浄水については、洗浄プール32に流下される構造とする。洗浄プールに流下された洗浄水は、スプレーノズル331から噴霧された洗浄水と同等の量が洗浄プールから排出されるようにする。当該洗浄プールにオーバーフローの堰を設けて、洗浄水を排出する構造とするのが一般的である。
【0044】
尚、スラリー脱水装置10の運転方法について、上記の洗浄プールから排出された洗浄水は、1パスで排出する運転方法としてもよいが、中継槽と高圧ポンプを経由させて、濾布洗浄機構3で循環使用する運転方法とすることもできる。そのように、スプレーノズル331から噴霧された洗浄水を、循環使用する態様でスラリー脱水装置10の運転を行う場合には、一定量の汚れた洗浄水を抜出しながら、新規の水を足すような制御を行えばよい。そのような制御は、タイマー、自動弁、レベル計の組合せ等により実施することができる。
【0045】
<ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プロセス>
本発明の脱水装置が、一実施形態として好適に適用される、ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プロセスについて、以下に簡単に説明する。ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プロセスは、鉄鋼ダスト等の一次原料を還元焙焼して、粗酸化亜鉛ダストを得る還元焙焼工程、還元焙焼工程で得た粗酸化亜鉛ダスト及び二次原料からフッ素や塩素等のハロゲン元素等の不純物を処理液中に分離除去して、粗酸化亜鉛ケーキを得る湿式工程、湿式工程で得た粗酸化亜鉛ケーキを乾燥加熱して、酸化亜鉛鉱を得る乾燥加熱工程により構成される。本発明の脱水装置は、この全体プロセス中の湿式工程において、不純物を除去したスラリー状の粗酸化亜鉛ダスト及び二次原料を脱水してケーキ状の粗酸化亜鉛ケーキとするための装置として好ましく用いることができる。
【実施例0046】
[比較例]
図1に示す構成からなるスラリー脱水装置であって、但し、洗浄水噴霧管を水平往復運動させる噴霧管駆動部については、駆動モーターにより円板を回転させ、ローラー式のクランクピンとクランク連結アームにより、回転運動を往復運動に変換する機構によって構成した旧来のスラリー脱水装置を、比較例の脱水装置とした。そして、この装置を、ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プラントにおいて、湿式工程で不純物を除去したスラリー状の粗酸化亜鉛ダスト及び二次原料を脱水してケーキ状の粗酸化亜鉛ケーキとするための装置として、6カ月間の試験操業を行った。
【0047】
比較例のスラリー脱水装置においては、スラリー脱水装置の駆動モーターとクランク機構部が洗浄水噴霧管の下方に位置することとなるため、飛散した洗浄水が付着しやすいことが明らかであった。又、摺動部の数が多いため、当該部分で摺動による損耗が激しく、往復移動幅が2か月の間に70mmから60mmに減少し、クランク機構の交換が必要な状態となった。又、洗浄水の付着に起因する駆動モーターの腐食も激しく、6ヶ月後には交換が必要となる程度の腐食が進行していた。
【0048】
[実施例]
図1に示す構成からなるスラリー脱水装置であって、比較例の装置とは異なり、洗浄水噴霧管を、水平往復運動させる噴霧管駆動部を、エアーシリンダーを有する水平駆動機構で構成した本発明のスラリー脱水装置を実施例の脱水装置とした。洗浄水噴霧管の長さは3m、スプレーノズルの設置間隔は100mmとした。スプレーノズルは「株式会社いけうち」製の「1/8MVNP6580B」を使用した。噴霧角度は65度、スプレーノズル1個当たりの噴霧水量は8L/分である。又、スプレーノズル先端から濾布表面までの距離は、濾布の両表面のうち、スラリー供給面(
図1において、スラリー供給口6からスラリーが直接供給される側の面)との間の距離が100mm、スラリー供給面とは反対側の面との間の距離が150mmとなるようにした。洗浄水噴霧管の水平往復運動の速度等については、スピードコントローラーとタイマーの組合せにより、運動幅を75mmとし、行き5秒、帰り5秒、に調整した。洗浄配管の軸受けは、STPG鋼管の内側に超高分子量ポリエチレン樹脂(商品名:ハイモラー)がライニングされたものを用いた。そして、この装置を、ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プラントにおいて、湿式工程で不純物を除去したスラリー状の粗酸化亜鉛ダスト及び二次原料を脱水してケーキ状の粗酸化亜鉛ケーキとするための装置として、6カ月間の試験操業を行った。
【0049】
実施例のスラリー脱水装置を用いた試験操業においては、6か月経過後においても、装置の損耗や腐食は何れの部分においても発生しなかった。