(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181861
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】金属箔積層樹脂シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20221201BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20221201BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B32B15/08 Z
B32B27/18 Z
H05K1/03 630H
H05K1/03 630D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089053
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】今澄 誠司
(72)【発明者】
【氏名】正田 勲
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA13
4F100AA13C
4F100AB01A
4F100AB17
4F100AB17A
4F100AB33
4F100AB33A
4F100AH03
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK53
4F100AK53B
4F100AK53C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA23
4F100CA23C
4F100EH46
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100GB41
4F100JB13
4F100JB13B
4F100JB13C
4F100JG04
4F100JJ01
4F100JJ01C
4F100JK06
4F100JK15A
4F100JL11
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】金属箔と樹脂複合材料との積層において、高い熱伝導性と高いピール強度を発現することが可能な金属箔積層樹脂シートを提供すること。
【解決手段】金属箔層と、樹脂層と、樹脂マトリックスと熱伝導性フィラーとを含む樹脂複合材料層とを、この順で含み、前記樹脂層の厚みが0.01μm以上1.0μm以下である、金属箔積層樹脂シートにより、前記課題を解決できる。前記金属箔積層樹脂シートは金属箔の表面に、樹脂と熱伝導性フィラーとを含有する樹脂複合材料層を、厚みが0.01μm~1.0μmとなるように調整された樹脂層を介して積層することで製造することが出来る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔層と、樹脂層と、樹脂マトリックスと熱伝導性フィラーとを含む樹脂複合材料層とを、この順で含み、前記樹脂層の厚みが0.01μm以上1.0μm以下である、金属箔積層樹脂シート。
【請求項2】
前記樹脂層が熱硬化性樹脂を含み、且つ前記樹脂マトリックスが熱硬化性樹脂を含む、請求項1記載の金属箔積層樹脂シート。
【請求項3】
前記金属箔層において、樹脂層と接する表面の表面粗さRzが3.0μm以下であり、厚さが5~500μmである、請求項1または2記載の金属箔積層樹脂シート。
【請求項4】
金属箔の表面に、樹脂マトリックスと熱伝導性フィラーとを含む樹脂複合材料層を、厚みが0.01μm~1.0μmとなるように調整された樹脂層を介して積層することを特徴とする、金属箔積層樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
金属箔の表面に、硬化後の樹脂層の厚みが0.01μm~1.0μmとなるように樹脂前駆体の層を形成させる樹脂層形成工程と、前記金属材料の樹脂前駆体の層を形成した面に、樹脂マトリックスと熱伝導性フィラーとを含有する樹脂複合材料前駆体を積層する積層工程と、前記樹脂前駆体と樹脂複合材料前駆体を硬化させる硬化工程とを含む、金属箔積層樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂前駆体がエポキシ基含有硬化性樹脂であり、且つ樹脂マトリックスがエポキシ基含有硬化性樹脂を含む、請求項5記載の金属箔積層樹脂シートの製造方法。
【請求項7】
前記金属箔層において、樹脂層と接する表面の表面粗さRzが3.0μm以下であり、厚さが5~500μmである、請求項5または6記載の金属箔積層樹脂シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な金属箔積層樹脂シートに関するものである。詳しくは、高い熱伝導率と高いピール強度を有する金属箔積層樹脂シートを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器用の基板材料として、銅張積層板のような、銅箔などの金属箔と樹脂複合材料とを積層した金属箔積層樹脂シートが使用されている。特に近年では、デバイスの高集積化、小型化が進められて発熱量が増加しており、デバイスからの放熱対策として、熱伝導性フィラーと樹脂マトリックスとを含む樹脂複合材料を使用した、熱伝導性が高い金属箔積層樹脂シートが求められる場合も多い。
【0003】
このような金属箔積層樹脂シートにおいては、金属箔と樹脂複合材料との間に高い接着力を有することが重要であり、高いピール強度を得るための種々の検討が行われている。例えば、特許文献1では、銅箔表面にプライマー樹脂層を形成させることで、銅箔と樹脂複合材料との引き剥がし強さが向上することが開示されており、具体的には、銅箔表面に厚さ1.5μmのプライマー樹脂層(樹脂前駆体層)を形成させ、そこにFR-4プリプレグ(ガラス繊維を布状に編んだガラス織布に硬化性エポキシ樹脂を滲みこませたシート)を積層して熱間プレスすることで製造した銅張積層板が開示されている。なお、特許文献1の技術では高い熱伝導性を有する銅張積層板を得ることは意図されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高熱伝導の樹脂複合材料を得るためには、樹脂複合材料中に熱伝導性フィラーを充填した樹脂複合材料を使用する必要がある。しかしながら、本発明者らが検討したところ、前記樹脂複合材料を直接金属箔に積層すると、高いピール強度が得られないことが判明した。そこで、特許文献1のように金属箔表面に樹脂層を形成させることによるピール強度の向上を試みたが、これにより熱伝導率が低下してしまうとの問題が発生し、高いピール強度と高い熱伝導率の両立が出来なかった。従って、本発明は、金属箔と樹脂複合材料との積層において、高い熱伝導性と高いピール強度を発現することが可能な金属箔積層樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を行った結果、金属箔層と熱伝導性フィラーを充填した樹脂複合材料層とを、特定の厚みを有する樹脂層を形成させて積層することにより、前記目的を達成した金属箔積層樹脂シートが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、金属箔層と、樹脂層と、樹脂マトリックスと熱伝導性フィラーとを含む樹脂複合材料層とを、この順で含み、前記樹脂層の厚みが0.01μm以上1.0μm以下である、金属箔積層樹脂シートである。
【0008】
前記樹脂層が熱硬化性樹脂を含み、且つ前記樹脂マトリックスが熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。また、前記金属箔層において、樹脂層と接する表面の表面粗さRzが3.0μm以下であり、厚さが5~500μmであることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明は、金属箔の表面に、硬化後の樹脂層の厚みが0.01μm~1.0μmとなるように樹脂前駆体の層を形成させる樹脂層形成工程と、前記金属材料の樹脂前駆体の層を形成した面に、樹脂マトリックスと熱伝導性フィラーとを含有する樹脂複合材料前駆体を積層する積層工程とを含む、金属箔積層樹脂シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の金属箔積層樹脂シートにより、高い熱伝導率と高いピール強度を有する銅張積層板やメタルベース基板等を提供することが可能となる。これにより、放熱性に優れ、且つ信頼性が高い電子デバイスを製造することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の金属箔積層樹脂シートの断面模式図の一例である。
【
図2】実施例1で作製した金属箔積層樹脂シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の金属箔積層樹脂シートは、断面構造が
図1の模式図に示される積層構造を有しており、金属箔層2と、樹脂層3と、樹脂複合材料層4とを、この順で含むものである。この断面構造は、金属箔積層樹脂シート1を切断し、走査型電子顕微鏡などで観察することで確認可能である。
【0013】
本発明における金属箔層は、金属の種類は特に限定されず、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などを使用することが可能であり、銅箔であることが好ましい。銅箔は、電解銅箔または圧延銅箔であることが好ましい。
【0014】
前記金属箔層の厚さは特に限定されないが、従来の樹脂層を有さない金属箔積層樹脂シートにおいては、金属箔層が薄い場合に、金属箔層の変形により金属箔層と樹脂複合材料層の界面に大きな応力が発生して接着性が低下しやすい傾向にあり、とりわけ接着性が大きな課題となっていた。そのため、金属箔層が薄い場合において、本発明による接着性向上効果が顕著であることから、金属箔層は500μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。金属箔層の厚さの下限は特に限定されないが、製造コストや耐久性などの観点から、一般的には5μm以上の金属箔が使用される。
【0015】
前記金属箔の表面構造は特に限定されないが、樹脂層と接する表面の表面粗さRzは3.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。金属箔表面の表面粗さが小さいことにより、薄く均一な樹脂層を形成させやすく、高い熱伝導率と高いピール強度を両立させることが容易となる。また、従来の樹脂層を有さない金属箔積層樹脂シートにおいては、金属箔表面が平滑な場合には、アンカー効果が得られにくいため、金属箔層と樹脂複合材料層との間の接着性が低くなりやすい傾向にあり、金属箔層の表面粗さが小さい場合おいて、本発明による接着性の向上効果が顕著であり、好ましいと言える。なお、本発明における表面粗さRzは、JIS B0610:1994の方法で測定したものである。
【0016】
本発明における樹脂層は、金属箔表面に形成される層であって、厚みは0.01μm~1.0μmである。このような樹脂層が存在することにより、接着性を向上させ、高いピール強度を得ることが可能となる。樹脂層により高いピール強度が得られる理由は明確ではないが、本発明者らは以下の通り考えている。すなわち、金属箔層に直接樹脂複合材料層を積層した場合、通常は樹脂複合材料層中の熱伝導性フィラーと金属箔は相互作用をしないので、金属箔層と樹脂複合材料層の接着は、主に樹脂複合材料の樹脂マトリックスと金属箔層との相互作用によるものである。そのため、樹脂複合材料層が高い熱伝導率を得るために熱伝導性フィラーを高充填すると、金属箔と樹脂複合材料界面において接着に寄与する樹脂成分の量が減少するため、接着性が低下してしまう。一方で、金属箔層と樹脂重合材料層の間に樹脂層を形成させると、金属箔層と樹脂層との間の相互作用により、金属箔層と樹脂層の間には高い接着性が得られ、樹脂層の樹脂と樹脂複合材料層の樹脂マトリックスとの相互作用により樹脂層と樹脂複合材料層との間にも高い接着性が得られ、その結果、金属箔層に直接樹脂複合材料層を積層した場合よりも剥離が発生しにくくなり、高いピール強度が得られると推察される。
【0017】
ここで、樹脂層は金属箔層や樹脂複合材料層よりも熱伝導性が低いため、金属箔積層樹脂シートの熱伝導率低下の原因となりうるものであるが、樹脂層の厚さを1.0μm以下に制御することで、かかる樹脂層における熱抵抗を著しく小さくすることができ、高い熱伝導性を得ることが可能となる。樹脂層が薄い方が高い熱伝導率が得られやすいことから、樹脂層の厚さは0.9μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましい。ただし、樹脂層が過度に薄いと製造時の均一な膜形成が難しく、更には接着性向上の効果が低下する傾向があるため、樹脂層の厚さは0.01μm以上であり、0.1μm以上であることが好ましい。
【0018】
樹脂層を形成する樹脂は特に限定されず、公知の樹脂を使用することが可能であり、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂などが使用できる。これらの中でも、銅箔上に薄く製膜する成形性の観点から熱硬化性樹脂であることが好ましく、特にエポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型の水素添加エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ポリテトラメチレングリコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂、およびビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物型のエポキシ樹脂等が挙げられる。これらエポキシ樹脂の1種を単独で、あるいは、2種以上を混合して使用してもよい。また、硬化剤としてアミン系樹脂、酸無水物系樹脂、フェノール系樹脂、イミダゾール類等を用いてもよい。これら硬化剤も1種を単独で、あるいは、2種以上を混合して使用してもよい。本明細書において、これらの硬化剤も樹脂に包含される。
【0019】
樹脂層には、樹脂以外にも、本発明の効果を著しく阻害しない範囲でその他の成分が含まれていても良い。その他の成分としては、例えば、フィラー、分散剤、カップリング剤、レベリング剤などを挙げることが出来る。
【0020】
樹脂複合材料層は、少なくとも樹脂マトリックスと熱伝導性フィラーとを含む樹脂複合材料により形成される。樹脂マトリックスは、樹脂と、必要に応じて少量の添加材を含むものである。樹脂マトリックスの樹脂としては特に制限されず公知の樹脂を使用することが可能であり、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、などを使用することが出来る。これらの中でも、熱伝導性フィラーを高充填させてシート化する成形性の観点から熱硬化性樹脂であることが好ましく、特にエポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂としては前記したものを挙げることができる。また、樹脂マトリックスは、樹脂層に含まれるものと同種の樹脂を含有することが、樹脂層と樹脂複合材料層の接着性を向上させる観点から好ましい。
【0021】
樹脂マトリックスに含まれる添加材成分は、本発明の効果を著しく阻害しない限り特に限定されず、例えば、分散剤、カップリング剤、レベリング剤、親和剤などを使用することが出来る。
【0022】
前記熱伝導性フィラーは特に限定されず、例えば、絶縁性が高いシリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭化ケイ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、ダイヤモンド等や、導電性が高いグラファイト、炭素繊維、銀やアルミニウム等の金属粒子等を用いることが出来、特に金属箔積層樹脂シートに高い絶縁性が要求される場合には、絶縁性と熱伝導率の高い、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ダイヤモンドであることが好ましい。熱伝導性フィラーは複数の種類を組み合わせて使用しても良い。
【0023】
また、前記熱伝導性フィラーの粒径は特に限定されないが、熱伝導性と充填性の観点から平均粒径が0.01~250μmであることが好ましく、0.1~150μmであることがより好ましい。また、平均粒径は、樹脂複合材料層の厚さの0.7倍以下であることが好ましく、0.5倍以下であることがより好ましい。なお、平均粒径はレーザー回折散乱法によって測定したD50値である。
【0024】
更に、前記熱伝導性フィラーの形状は特に限定されず、球状、丸み状、破砕状、板状、繊維状、凝集状などを使用することが可能であり、異なる形状の粒子が混合されていても良い。
【0025】
前記熱伝導性フィラーの配合量は特に限定されないが、樹脂複合材料層に高い熱伝導性を付与するために、樹脂マトリックス100容量部に対して、100容量部~1000容量部であることが好ましく、200容量部~900容量部であることがより好ましい。
また、本発明において樹脂複合材料層は、樹脂マトリックスと熱伝導性フィラーのほかに、ガラスクロス等の基材を含んでいてもよい。
【0026】
樹脂複合材料層は高熱伝導性を有することが好ましく、熱伝導率が5.0W/m・K以上であることが好ましく、6.0W/m・K以上であることがより好ましく、10.0W/m・K以上であることがさらに好ましい。樹脂複合材料層の熱伝導率は温度波熱分析法によって測定できる。
【0027】
また、樹脂複合材料層は絶縁耐力が高いことが好ましく、絶縁耐力は20kV/mm以上であることが好ましく、40kV/mm以上であることがより好ましく、55kV/mm以上であることがさらに好ましい。樹脂複合材料層の絶縁耐力が高いことは、本発明の金属箔積層樹脂シートを、金属張積層板やメタルベール基板などの電子機器用の基板材料として使用する際に有利である。
【0028】
樹脂複合材料層の厚みは特に限定されず、金属箔積層樹脂シートの用途によって適宜決定すれば良く、例えば金属張積層板用途の場合は10μm~2000μm、メタルベース基板の樹脂複合材料層の場合は30μm~300μmとすることが一般的である。
【0029】
前記のように、金属箔積層樹脂シートの断面構造は、金属箔積層樹脂シートを切断し、走査型電子顕微鏡などで観察することで確認可能である。具体的には、金属箔積層樹脂シートを、金属箔表面に対して垂直に切断し、得られた断面を走査型電子顕微鏡で観察すれば良い。切断方法はイオンミリング法や、機械的な切断を挙げることが出来る。切断断面は必要に応じて研磨しても良く、また、透明樹脂などで包埋して観察試料を製造しても良い。特に観察に適した平滑な切断面の得られるイオンミリング法が、観察試料の作製法として好ましい。走査型電子顕微鏡観察においては、金属箔層と樹脂層はコントラストが異なるため区別可能であり、樹脂複合材料層は熱伝導性フィラーを含むため、樹脂層と区別可能である。樹脂層がフィラーを含む場合も、樹脂複合材料層と樹脂層との、フィラーの粒径や配合割合の違いにより区別可能である。なお、走査型電子顕微鏡による観察において、倍率などの観察条件は、樹脂層の厚さなどに応じて適宜調整して行う。
【0030】
樹脂層の厚みは、上記走査型電子顕微鏡による観察で得られた画像を使用して測定する。具体的には、走査型電子顕微鏡画像において、金属箔層と樹脂層との界面から、樹脂層と樹脂複合材料層の界面までの距離を測定して樹脂層の厚さとする。
【0031】
前記のように、本発明の金属箔積層樹脂シートは高いピール強度と高い熱伝導率を両立することが出来る。本発明の金属箔積層樹脂シートのピール強度は、4.50N/cm以上であることが好ましく、5.50N/cm以上であることがより好ましく、6.00N/cm以上であることがさらに好ましい。本発明の金属箔積層樹脂シートの熱伝導率は、6.0W/m・K以上が好ましく、10.0W/m・K以上がより好ましい。なお、本願において、金属箔積層樹脂シートの熱伝導率は、金属箔積層樹脂シートから金属箔を剥がして得られた、樹脂層と樹脂組成物層の積層物の熱伝導率を測定した値である。
【0032】
さらに、本発明の金属箔積層樹脂シートの絶縁耐力は、20kV/mm以上であることが好ましく、40kV/mm以上であることがより好ましく、55kV/mm以上であることがさらに好ましい。絶縁耐力が高いことにより、金属張積層板やメタルベース基板などの電子機器用の基板材料として特に好適に使用できる。樹脂層は絶縁耐力には特に悪影響を及ぼさないため、本発明により、高いピール強度と、高い熱伝導率に加え、高い絶縁耐力も有する金属箔積層樹脂シートを容易に得ることが出来る。なお、本願において、金属箔積層樹脂シートの絶縁耐力は、金属箔積層樹脂シートから金属箔を剥がして得られた、樹脂層と樹脂組成物層の積層物の絶縁耐力を測定した値である。
【0033】
本発明の金属箔積層樹脂シートの用途は特に限定されないが、例えば金属張積層板、特には、金属箔として銅箔を使用した銅張積層板として使用することが出来る。金属張積層板は、樹脂複合材料層の片面にのみ金属箔が積層された片面金属張積層板であっても良く、また、樹脂複合材料層の両面に金属箔が積層された、両面金属張積層板であっても良い。両面金属張積層板として使用する場合、樹脂複合材料層の片面にのみ樹脂層を有している形態、すなわち、金属箔層、樹脂層、樹脂複合材料層、金属箔層の順で積層された形態であっても良く、樹脂複合材料層の両面に樹脂層を有している形態、すなわち、金属箔層、樹脂層、樹脂複合材料層、樹脂層、金属箔層の順で積層された形態であっても良い。金属張積層板において、特に金属箔が銅箔である場合、銅張積層板としてプリント基板等に特に好適に利用することが出来る。
【0034】
また、本発明の金属箔積層樹脂シートは、樹脂複合材料層の金属箔とは反対側の面に、厚さ0.5mm~3.0mm程度の金属板(銅板、アルミニウム板、ステンレス板など)を配置した、メタルベース基板として、パワーモジュール用基板やLED基板などに特に好適に利用することもできる。
【0035】
本発明の金属箔積層樹脂シートの製造方法は特に限定されず、金属箔の表面に、樹脂と熱伝導性フィラーとを含有する樹脂複合材料層を、厚みが0.01μm~1.0μmとなるように調整された樹脂層を介して積層することで製造することが出来る。
【0036】
本発明の金属箔積層樹脂シートの好適な製造方法としては、金属箔の表面に、硬化後の樹脂層の厚みが0.01μm~1.0μmとなるように樹脂前駆体の層を形成させる樹脂層形成工程と、前記金属材料の樹脂前駆体の層を形成した面に、樹脂マトリックスと熱伝導性フィラーとを含有する樹脂複合材料前駆体を積層する積層工程と、前記樹脂前駆体と樹脂複合材料前駆体を硬化させる硬化工程とを含む、製造方法が挙げられる。
【0037】
前記樹脂層形成工程において、樹脂前駆体層とはその後の操作によって樹脂層を形成するものである。樹脂前駆体層としては、例えば、樹脂層の樹脂が熱硬化性樹脂である場合は、硬化剤との硬化反応により硬化する硬化性樹脂を含む組成物が挙げられ、具体的には、樹脂層の樹脂をエポキシ樹脂とする場合は、エポキシ基含有硬化性樹脂(硬化性エポキシ樹脂)と硬化剤とを含む組成物を例示することが出来る。また、樹脂前駆体組成物は熱硬化性樹脂を半硬化させたものであっても良い。樹脂層形成工程の具体的な一例としては、樹脂前駆体を含むワニス(例えば、エポキシ基含有硬化性樹脂と、硬化剤と、溶剤を含む組成物)を金属箔の表面に塗工した後、乾燥等によって溶剤を除去する方法が挙げられる。
【0038】
なお、前記樹脂層形成工程に先立ち、樹脂前駆体の層を形成させる金属箔の表面の表面粗さを研磨処理やブラスト処理などにより調節しても良い。また、金属による防錆処理、カップリング剤などによる化成処理などを行っても良い。
【0039】
前記積層工程では、金属箔の樹脂前駆体の層を形成した面に、樹脂マトリックスと熱伝導性フィラーとを含有する樹脂複合材料前駆体を積層する。樹脂複合材料前駆体は、硬化や乾燥などの操作により樹脂複合材料層を形成させるものである。
【0040】
前記樹脂マトリックスが熱硬化性樹脂を含む場合、前記樹脂複合材料前駆体の一例としては、硬化剤との硬化反応により硬化する硬化性樹脂と、熱伝導性フィラーとを含む組成物が挙げられ、具体的には、樹脂マトリックスの樹脂をエポキシ樹脂とする場合は、エポキシ基含有硬化性樹脂と硬化剤と熱伝導性フィラーとを含む組成物を例示することが出来る。このような組成物を前記金属箔上に積層した後、硬化性樹脂を硬化させることで、本発明の金属箔積層樹脂シートを得ることが出来る。前記樹脂複合材料前駆体は、溶剤を含むスラリーであっても良い。溶剤を含むことにより塗工により容易に樹脂組成物前駆体層を形成できる場合がある。樹脂組成物前駆体が溶剤を含むスラリーの場合は、積層後加熱乾燥や減圧乾燥などにより溶剤を除去し、その後、硬化性樹脂を硬化させることで、本発明の金属箔積層樹脂シートを得ることが出来る。
【0041】
また、前記樹脂複合材料前駆体は、半硬化状態の樹脂複合材料のシート(所謂「Bステージシート」)であっても良い。Bステージシートと金属箔とを積層した後、重合硬化させることで、本発明の金属箔積層樹脂シートを得ることが出来る。この場合、積層と重合硬化を熱プレスによって行っても良い。前記樹脂複合材料前駆体がBステージシートであることは、作業性に優れつつ、樹脂層と樹脂複合材料層の接着強度を高めて高いピール強度を得ることが容易であるため、本発明において好ましい形態であると言える。Bステージシートは、例えば、PETフィルムなどのフィルム上に、硬化性樹脂と硬化剤と熱伝導性フィラーと溶剤を含むスラリーを塗工した後、加熱乾燥して溶剤を除去してAステージシートとし、次いで、前記Aステージシートを半硬化させることによって製造することが出来る。
【0042】
金属箔積層樹脂シートが両面金属張積層板の場合は、Bステージシートを、表面に樹脂前駆体層を形成した2枚の金属箔で挟み、熱プレスにより樹脂前駆体層とBステージシートを硬化させることで製造することが出来る。金属箔積層樹脂シートがメタルベース基板の場合は、Bステージシートを、表面に樹脂前駆体層を形成した金属箔と金属板で挟み、熱プレスにより樹脂前駆体層とBステージシートを硬化させることで製造することが出来る。
【0043】
さらに、本発明の金属箔積層樹脂シートの製造方法の別の形態として、Bステージシートの表面に樹脂前駆体の層を形成した後、金属箔と貼り合わせ、次いでBステージシートと樹脂前駆体層を硬化する方法を挙げることが出来る。
【0044】
また、樹脂複合材料層がガラスクロスを含む場合は、例えば、ガラスクロスを、硬化性樹脂と熱伝導性フィラーと溶剤を含むスラリーに浸して、ガラスクロスにスラリーを付着させた後、乾燥して溶剤を取り除き、所謂プリプレグを得て金属箔積層樹脂シートを製造することが出来る。具体的には、プリプレグと、樹脂前駆体層を形成した金属箔とを積層した後、または、プリプレグを、樹脂前駆体層を形成した2枚の金属箔で挟んだ後、熱プレスを行うことで金属箔積層樹脂シートを製造することが出来る。
【実施例0045】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例を記載するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。また、実施例および比較例における各値の測定は以下の方法によって測定したものである。
(1)ピール強度の測定
ピール強度(N/cm)は、万能試験機(島津製作所製:オートグラフAG-Xplus)と剥離試験治具(粘着テープ引き剥がしキット)を使用し、JIS C6481の方法で測定した。金属箔積層樹脂シートの片面の銅箔に、10mm幅で切り込みを入れ、片端を剥がして、チャックに掴み、引き上げ(引き剥がし)速度を50mm/分とした。
【0046】
(2)熱伝導率の測定
金属箔積層樹脂シートの両面の銅箔を剥がし、樹脂層と樹脂複合材料層の積層物の熱伝導率を測定した。熱伝導率(W/m・K)は、熱拡散率(m2/秒)×密度(kg/m3)×比熱(J/kg・K)で求めた。なお、熱拡散率は温度波熱分析法(アイフェイズ社製:ai-Phase Mobile u、ISO22007-3)、密度はアルキメデス法(メトラー・トレド社製:XS204V)、比熱は示差走査熱量計(DSC)法(リガク社製:Thermo Plus Evo DSC8230)を使用して測定した。
【0047】
(3)絶縁耐力の測定
金属箔積層樹脂シートの両面の銅箔を剥がし、樹脂層と樹脂複合材料層の積層物の絶縁耐力を測定した。絶縁耐力(kV/mm)は、京南電機社製:耐電圧試験器YPAD-0225を使用し、JIS K6911の熱硬化性プラスチック一般試験方法に準じて測定した。
【0048】
(4)金属箔積層樹脂シートの断面の観察及び樹脂層の厚さの測定
金属箔積層樹脂シートの断面の観察は、日立ハイテクノロジー社製:イオンミリング装置ArBlade5000を用いて断面試料を加工し、日立ハイテクノロジー社製:走査型電子顕微鏡(SEM)SU3500を用いて観察した。樹脂層の厚さは、観察したSEM像から計測した。
【0049】
(実施例1)
液状硬化性エポキシ樹脂(三菱化学製:jER828、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量184~194g/eq)とエポキシ樹脂硬化剤(三菱化学製:jER cure WA、変性芳香族アミン、アミン価623~639)を質量比4:1で混合し、溶剤としてシクロヘキサノン(和光純薬製、特級)を加え希釈して得た組成物を、自動塗工装置(テスター産業社製:PI-1210)を用いて、銅箔(福田金属箔紛工業製:無粗化処理の超低粗度電解銅箔T9DA-SV、厚さ35μm、表面粗さRz:0.4μm)の無粗化処理された面に塗工した。塗工後の銅箔を、ドラフト内で15分間風乾した後、真空乾燥機で190℃3時間静置してシクロヘキサノンの除去と重合硬化を行い、樹脂層を積層した銅箔を得た。
【0050】
熱伝導性フィラーとして、フィラーA(窒化アルミニウムフィラー、平均粒径D50:1.0μm)、フィラーB(窒化アルミニウムフィラー、平均粒径D50:4.5μm)、フィラーC(球状窒化アルミニウムフィラー、平均粒径D50:37μm)と、液状硬化性エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量184~194g/eq)、エポキシ樹脂硬化剤(三菱化学製、jER cure WA、変性芳香族アミン、アミン価623~639)、親和剤(東邦化学工業:リン酸エステル型分散剤RS-710)と、溶剤としてシクロヘキサノン(和光純薬製、特級)とを、表1に示す配合比で測り取り、自公転ミキサ(クラボウ製:マゼルスターKK-250S)を用いて撹拌混合し、スラリーを得た。なお、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合量は質量比4:1、親和剤の配合量は、フィラー100質量部に対して0.3質量部とした。また、溶剤は、液状硬化性エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の合計量に対して、質量で1.71倍量使用した。配合量は、窒化アルミニウムとエポキシ樹脂の密度をそれぞれ、3.26g/cm3、1.17g/cm3として計算した。
【0051】
上記スラリーを、離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ニッパ製PET50X1-FSC6、厚さ50μm)の離型処理面側に、前記自動塗工装置を用いて、塗工厚設定150μm、50mm/秒で塗工した。塗工後、ドラフト内で15分間風乾した後、真空乾燥機を用いて130℃で50分、真空乾燥して樹脂組成物前駆体層のAステージシートとして、Aステージシート付きPETフィルムを得た。次いで、上記Aステージシート付きPETフィルム2枚を、Aステージシート同士が接するように離型PETフィルムを外側にして重ねて、真空加熱プレス装置(井元製作所社製:手動油圧真空加熱プレス)を用いて100℃、減圧下で、プレス圧4MPa、3分間熱プレスして圧着させ、樹脂組成物前駆体層のBステージシートとした。
【0052】
上記で得た樹脂組成物前駆体層のBステージシートの片面の離型PETフィルムを剥がして、樹脂組成物前駆体層に、樹脂層を形成した銅箔の樹脂層側が接するように重ねて、真空加熱プレス装置を用いて、減圧下で、プレス圧4MPa、3分間熱プレスして銅箔を圧着させた。同様にして、反対面にも樹脂層を形成した銅箔を圧着させた。続いて170℃に昇温して、減圧下で、プレス圧20MPa、60分間熱プレスして、Bステージシートを硬化させた。次いで、ボックス型オーブンを用いて165℃で2時間、さらに190℃で2時間の熱処理を行なうことで樹脂を完全に硬化させることで、金属箔積層樹脂シートを作製した。
【0053】
得られた金属箔積層樹脂シートについて、樹脂層厚さ、ピール強度、熱伝導率、絶縁耐力を測定した。結果を表1に示す。SEMで観察した樹脂層の厚さは0.2μmであった。樹脂複合材料層の厚さは122μmであった。金属箔積層樹脂シートのピール強度は7.46N/cm、熱伝導率は15.4W/m・Kで、いずれも高い値であった。
【0054】
(実施例2、3、4)
銅箔に形成させた樹脂層の厚さを表1のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして金属箔積層樹脂シートを作製した。評価結果を表1に示す。
【0055】
(比較例1、2)
銅箔に形成させた樹脂層の厚さを表1のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして金属箔積層樹脂シートを作製した。なお、樹脂層の厚さは、樹脂と溶剤の希釈割合および塗工厚により調整した。評価結果を表1に示す。ピール強度は高いが、樹脂層が厚いため、実施例1~4と比較して熱伝導率に大幅な低下が見られた。
【0056】
(比較例3)
銅箔に樹脂層を形成させなかったこと以外は、実施例1と同様にして金属箔積層樹脂シートを作製した。評価結果を表1に示す。樹脂層が無いため、実施例1~4と比較して、熱伝導率は高いが、ピール強度は大幅に低かった。
【0057】
(実施例5、6)
熱伝導性フィラーの配合割合を表1のとおりにした以外は、実施例1と同様にして金属箔積層樹脂シートを作製した。評価結果を表1に示す。
【0058】
(比較例4)
樹脂層の厚さを表1のとおりにした以外は、実施例6と同様にして金属箔積層樹脂シートを作製した。評価結果を表1に示す。樹脂層が厚いため、実施例6と比較して、ピール強度は高いが、熱伝導率に大幅な低下が見られた。
【0059】
(比較例5)
銅箔に樹脂層を形成させなかったこと以外は、実施例6と同様にして金属箔積層樹脂シートを作製した。評価結果を表1に示す。樹脂層が無いため、実施例6と比較して、熱伝導率は高いが、ピール強度は大幅に低かった。
【0060】
(実施例7)
実施例1と同様に、樹脂層を形成した銅箔と、硬化性エポキシ樹脂とエポキシ硬化剤と熱伝導性フィラーと溶剤とを含むスラリーを得た後、離形PETフィルムを使用せずに、銅箔の樹脂層面に直接スラリーを塗工して、金属箔積層樹脂シートを作製した。
【0061】
すなわち、前記自動塗工装置を用いて、樹脂層を形成した銅箔の樹脂層面に、スラリーを塗工厚設定150μm、50mm/秒で塗工した。塗工後、ドラフト内で15分間風乾した後、真空乾燥機を用いて130℃で50分、真空乾燥して、銅箔の片面に樹脂組成物前駆体層を積層したAステージシートとした。次いで、上記Aステージシートを2枚、樹脂組成物前駆体層同士が接するように銅箔を外側にして重ねて、前記真空加熱プレス装置を用いて100℃、減圧下で、プレス圧4MPa、3分間熱プレスして圧着させ、両面銅箔の樹脂組成物前駆体層のBステージシートとし、真空加熱プレス装置から取り出した。
【0062】
その後、真空加熱プレス装置を170℃に昇温した後、上記Bステージシートを挿入し、減圧下でプレス圧20MPa、60分間熱プレスして硬化させた。次いで、ボックス型オーブンを用いて165℃で2時間、さらに190℃で2時間の熱処理を行なうことで樹脂を完全に硬化させ、金属箔積層樹脂シートを作製した。
【0063】
得られた金属箔積層樹脂シートについて、樹脂層厚さ、ピール強度、熱伝導率、絶縁耐力を測定した。結果を表1に示す。実施例1の結果と同様に、ピール強度と熱伝導率の高い金属箔積層樹脂シートが得られた。
【0064】
(比較例6)
銅箔に樹脂層を形成させずに、銅箔に直接スラリーを塗工したこと以外は、実施例7と同様にして金属箔積層樹脂シートを作製した。評価結果を表1に示す。実施例7と比較して、熱伝導率は高いが、ピール強度は大幅に低かった。
【0065】
(実施例8)
熱伝導性フィラーとして、フィラーD(アルミナフィラー、粒径D50:0.7μm)、フィラーE(アルミナフィラー、粒径D50:3.0μm)、フィラーF(球状アルミナフィラー、粒径D50:38μm)を使用したこと以外は、実施例7と同様にして金属箔積層樹脂シートを作製した。尚、熱伝導性フィラーおよび樹脂の容量部は、アルミナとエポキシ樹脂の密度をそれぞれ、3.98g/cm3、1.17g/cm3として計算により求めた。評価結果を表2に示す。
【0066】
実施例7と比較して、熱伝導性フィラーを窒化アルミニウムからアルミナに変えたことで熱伝導率はやや低下したものの、高い熱伝導率と高いピール強度の金属箔積層樹脂シートが得られた。
【0067】
(比較例7)
樹脂層の厚さを表2のとおりにした以外は、実施例8と同様にして金属箔積層樹脂シートを作製した。評価結果を表1に示す。樹脂層が厚いため、実施例8と比較して、ピール強度は高いが、熱伝導率に大幅な低下が見られた。
【0068】
(比較例8)
銅箔に樹脂層を形成させなかったこと以外は、実施例8と同様にして金属箔積層樹脂シートを作製した。評価結果を表1に示す。樹脂層が無いため、実施例8と比較して、熱伝導率は高いが、ピール強度は大幅に低かった。
【0069】
(実施例9)
銅箔に、市販の電解銅箔(福田金属箔紛工業製:T8G-UN、厚さ35μm、表面粗さRz:7.4μm)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして金属箔積層樹脂シートを作製した。評価結果を表1に示す。樹脂層を形成しなかった比較例3に比べると高いピール強度であった。一方、実施例1と比べると、ピール強度がやや低くなった。これは、実施例1よりも銅箔の表面粗さが大きいために、樹脂層が部分的に不均一となったためと考えられる。
【0070】
(実施例10)
銅箔に、超低粗度の圧延銅箔(福田金属箔紛工業製:RCT-T4X、厚さ35μm、表面粗さRz:0.3μm)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして金属箔積層樹脂シートを作製した。評価結果を表1に示す。
【0071】
【0072】