(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182030
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】基板保持部材、基板保持ユニット、およびEUVリソグラフィ用機能膜付基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20221201BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20221201BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C23C14/50 D
G03F1/24
C23C16/458
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089321
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】仲村 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】溝口 誠祥
(72)【発明者】
【氏名】見矢木 崇平
(72)【発明者】
【氏名】森田 隆介
(72)【発明者】
【氏名】富澤 剛
【テーマコード(参考)】
2H195
4K029
4K030
【Fターム(参考)】
2H195BC27
2H195BC28
2H195CA16
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA58
4K029CA06
4K029JA01
4K029JA05
4K029KA01
4K029KA09
4K030CA06
4K030CA17
4K030GA02
4K030GA12
4K030KA45
(57)【要約】
【課題】基板載置時の基板の位置決め精度が高い基板保持部材および基板保持ユニット、ならびに膜の成膜領域のばらつきが抑制されたEUVL用機能膜付基板の製造方法の提供。
【解決手段】基板を位置決めして保持する基板保持部材であって、位置決めされた上記基板の主面の外縁部が載置される載置面と、上記載置面の法線方向に立ち上がり上記載置面の外端に立設された立設面と、上記立設面の頂部から上方に向かうにつれて上記載置面から遠ざかる向きに傾斜した傾斜面と、を有し、上記傾斜面に沿って上記基板の主面の外縁部を上記載置面側へ案内し、上記立設面に沿って上記基板の主面の外縁部を上記載置面まで落下させて上記基板を位置決めする、基板保持部材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を位置決めして保持する基板保持部材であって、
位置決めされた前記基板の外縁部が載置される載置面と、
前記載置面の法線方向に立ち上がり前記載置面の外端に立設された立設面と、
前記立設面の頂部から上方に向かうにつれて前記載置面から遠ざかる向きに傾斜した傾斜面と、を有し、
前記傾斜面に沿って前記基板の外縁部を前記載置面側へ案内し、前記立設面に沿って前記基板の外縁部を前記載置面まで落下させて前記基板を位置決めする、基板保持部材。
【請求項2】
前記載置面が水平面であり、前記立設面が鉛直面である、請求項1に記載の基板保持部材。
【請求項3】
前記基板保持部材を構成する材料が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリカーボネード、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンゾイミダゾール樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の基板保持部材。
【請求項4】
前記法線方向に対する前記傾斜面の傾斜角度が60°以上90°未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板保持部材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の基板保持部材を複数有し、
複数の前記基板保持部材には、前記基板を挟んで互いに反対側の位置に配置された2つの基板保持部材が含まれ、
前記基板が位置決めされた状態では、前記基板の外縁部において互いに対向する位置にある2つの端辺部分のうち、一方の端辺部分が、前記2つの基板保持部材の一方の前記載置面に載置され、他方の端辺部分が、前記2つの基板保持部材の他方の前記載置面に載置される、基板保持ユニット。
【請求項6】
外縁が矩形である前記基板を保持し、
前記基板が位置決めされた状態では、前記矩形をなす4辺のそれぞれに位置する前記基板の外縁部が、各々の前記基板保持部材の前記載置面に載置される、請求項5に記載の基板保持ユニット。
【請求項7】
外縁が矩形である前記基板を保持し、
前記基板が位置決めされた状態では、前記矩形が有する4つの角部のうち、少なくとも2つの角部のそれぞれに位置する前記基板の外縁部が、各々の前記基板保持部材の前記載置面に載置される、請求項5に記載の基板保持ユニット。
【請求項8】
各々の前記基板保持部材がスリットを有し、
各々の前記基板保持部材において、前記立設面および前記傾斜面の各々が、前記スリットによって2つの領域に分離されており、
前記立設面における2つの領域は、前記スリットを挟んで互いに交差する方向に延びており、
前記傾斜面における2つの領域は、前記スリットを挟んで互いに交差する方向に延びている、請求項7に記載の基板保持ユニット。
【請求項9】
外縁が矩形であり、かつ2つの主面を有する基板の一方の主面に膜を形成するEUVリソグラフィ用機能膜付基板の製造方法であって、
請求項5~8のいずれか1項に記載の基板保持ユニットにより前記基板の外縁を保持した後、前記外縁が前記基板保持ユニットにより保持される側の主面に対し裏面側の主面に膜を形成する、EUVリソグラフィ用機能膜付基板の製造方法。
【請求項10】
外縁が矩形であり、かつ2つの主面を有する基板の一方の主面に膜を形成するEUVリソグラフィ用機能膜付基板の製造方法であって、
請求項5~8のいずれか1項に記載の基板保持ユニットを載置台に位置決めすることと、
前記基板保持ユニットの前記基板保持部材の少なくとも1つを基準にして膜の形成領域を限定する遮蔽部材を位置決めすることと、
前記基板保持ユニットにより前記基板の外縁を保持した後、前記外縁が前記基板保持ユニットにより保持される側の主面に対し裏面側の主面に膜を形成することと、
を含む、EUVリソグラフィ用機能膜付基板の製造方法。
【請求項11】
前記膜は導電膜である、請求項9または10に記載のEUVリソグラフィ用機能膜付基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持部材、基板保持ユニット、および基板保持ユニットを用いたEUVリソグラフィ用機能膜付基板の製造方法に関する。
本発明におけるEUVリソグラフィ(以下、EUVLと記載する。)用機能膜付基板としては、基板上に導電膜が形成された導電膜付基板が挙げられるが、これに限定されず、基板上に、EUVL用の各種機能膜が形成された機能膜付基板を指す。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスを構成する集積回路の微細化に伴い、可視光や紫外光(波長193~365nm)またはArFエキシマレーザ光(波長193nm)等を用いた従来の露光技術に代わる露光方法として、極端紫外光(Etreme Ultra Violet:以下、「EUV」と呼ぶ。)リソグラフィが検討されている。
【0003】
EUVリソグラフィでは、露光に用いる光源として、ArFエキシマレーザ光よりも短波長のEUV光が用いられる。なお、EUV光とは、軟X線領域または真空紫外線領域の波長の光をいい、具体的には、波長が0.2~100nm程度の光である。EUV光としては、例えば、波長が13.5nm程度のEUV光が使用される。
【0004】
EUV光は、あらゆる物質に対して吸収され易いため、従来の露光技術で用いられていた屈折光学系を使用できない。そのため、EUVリソグラフィでは、反射型マスクやミラー等の反射光学系が用いられる。EUVリソグラフィにおいては、反射型マスクが転写用マスクとして用いられる。
【0005】
マスクブランクは、フォトマスク製造に用いられるパターニング前の積層体である。反射型マスクブランクの場合、ガラス製等の基板上にEUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収層とがこの順で形成された構造を有している。反射層としては、EUV光に対して低屈折率となる低屈折率層と、EUV光に対して高屈折率となる高屈折率層とを交互に積層することで、EUV光を層表面に照射した際の光線反射率が高められた反射多層膜が通常用いられる。反射多層膜の低屈折率層としては、モリブデン(Mo)層が、高屈折率層としては、ケイ素(Si)層が通常用いられる。
吸収層には、EUV光に対する吸収係数の高い材料、具体的にはたとえば、クロム(Cr)やタンタル(Ta)を主成分とする材料が用いられる。
【0006】
反射多層膜および吸収層は、イオンビームスパッタリング法やマグネトロンスパッタリング法を用いて基板の主面上に成膜される。反射多層膜および吸収層を成膜する際、基板は保持手段によって保持される。基板の保持手段として、機械的チャックおよび静電チャックがあるが、発塵性の問題から、多層反射膜および吸収層を成膜する際の基板の保持手段、特に多層反射膜を成膜する際の基板の保持手段としては、静電チャックによる吸着保持が好ましく用いられる。
また、マスクパターニングプロセス時、あるいは露光時のマスクハンドリングの際にも、基板の保持手段として静電チャックによる吸着保持が用いられる。
【0007】
静電チャックは、半導体装置の製造プロセスにおいて、シリコンウェハの吸着保持に従来用いられている技術である。このため、ガラス製の基板のように、誘電率および導電率の低い基板の場合、シリコンウェハの場合と同程度のチャック力を得るには、高電圧を印加する必要があるため、絶縁破壊を生じる危険性がある。
このような問題を解消するため、基板の裏面(反射多層膜や吸収層が形成される基板の成膜面に対する裏面。静電チャックで吸着保持される側の面)に高誘電率の導電膜を形成することが行われている。
【0008】
導電膜の形成方法としては、公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法といったスパッタリング法、CVD法、真空蒸着法といった乾式成膜法が用いられる。導電膜を成膜する際には、基板の成膜面側を載置台に設けられた支持ピンによって保持していた。具体的には、ロボットアームなどの基板搬送機構により基板を搬送し、載置台に設けられた複数の支持ピンの上部面の一部を、基板の成膜面の外周に設けられた面取部に当接させて基板を保持していた。
【0009】
導電膜の形成時、載置台上の所定の位置に載置されるように基板を位置決めすることが重要である。基板を載置する際に基板の位置がずれると導電膜の成膜領域にばらつきが生じる。
【0010】
基板を支持ピンによって保持する方法は、基板を載置する際、基板の位置決めにばらつきが生じる場合がある。
【0011】
特許文献1の
図10に記載の基板搬送機構の周縁部保持部材は、基板の位置決め機構として複数の角度を有した落とし込み部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載のガラス基板の位置決め機構を使用した場合も、基板を載置する際、基板の位置決めにばらつきが生じる場合がある。特許文献1に記載の位置決め機構の場合、対向側の基板辺付近の基板底面が、複数の角度を有する落とし込み部の緩傾斜部に接触した際に、摩擦抵抗により、水平方向の位置補正が中断する場合がある。そのため、最終的な載置位置で基板が水平にならない場合がある。
【0014】
本発明は、基板載置時の基板の位置決め精度が高い基板保持部材および基板保持ユニット、ならびに膜の成膜領域のばらつきが抑制されたEUVL用機能膜付基板の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
[1] 基板を位置決めして保持する基板保持部材であって、
位置決めされた上記基板の外縁部が載置される載置面と、
上記載置面の法線方向に立ち上がり上記載置面の外端に立設された立設面と、
上記立設面の頂部から上方に向かうにつれて上記載置面から遠ざかる向きに傾斜した傾斜面と、を有し、
上記傾斜面に沿って上記基板の外縁部を上記載置面側へ案内し、上記立設面に沿って上記基板の外縁部を上記載置面まで落下させて上記基板を位置決めする、基板保持部材。
[2] 上記載置面が水平面であり、上記立設面が鉛直面である、[1]に記載の基板保持部材。
[3] 上記基板保持部材を構成する材料が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリカーボネード、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンゾイミダゾール樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む、[1]または[2]に記載の基板保持部材。
[4] 上記法線方向に対する上記傾斜面の傾斜角度が60°以上90°未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の基板保持部材。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の基板保持部材を複数有し、
複数の上記基板保持部材には、上記基板を挟んで互いに反対側の位置に配置された2つの基板保持部材が含まれ、
上記基板が位置決めされた状態では、上記基板の外縁部において互いに対向する位置にある2つの端辺部分のうち、一方の端辺部分が、上記2つの基板保持部材の一方の上記載置面に載置され、他方の端辺部分が、上記2つの基板保持部材の他方の上記載置面に載置される、基板保持ユニット。
[6] 外縁が矩形である上記基板を保持し、
上記基板が位置決めされた状態では、上記矩形をなす4辺のそれぞれに位置する上記基板の外縁部が、各々の上記基板保持部材の上記載置面に載置される、[5]に記載の基板保持ユニット。
[7] 外縁が矩形である上記基板を保持し、
上記基板が位置決めされた状態では、上記矩形が有する4つの角部のうち、少なくとも2つの角部のそれぞれに位置する上記基板の外縁部が、各々の上記基板保持部材の上記載置面に載置される、[5]に記載の基板保持ユニット。
[8] 各々の上記基板保持部材がスリットを有し、
各々の上記基板保持部材において、上記立設面および上記傾斜面の各々が、上記スリットによって2つの領域に分離されており、
上記立設面における2つの領域は、上記スリットを挟んで互いに交差する方向に延びており、
上記傾斜面における2つの領域は、上記スリットを挟んで互いに交差する方向に延びている、[7]に記載の基板保持ユニット。
[9] 外縁が矩形であり、かつ2つの主面を有する基板の一方の主面に膜を形成するEUVリソグラフィ用機能膜付基板の製造方法であって、
[5]~[8]のいずれかに記載の基板保持ユニットにより上記基板の外縁を保持した後、上記外縁が上記基板保持ユニットにより保持される側の主面に対し裏面側の主面に膜を形成する、EUVリソグラフィ用機能膜付基板の製造方法。
[10] 外縁が矩形であり、かつ2つの主面を有する基板の一方の主面に膜を形成するEUVリソグラフィ用機能膜付基板の製造方法であって、
[5]~[8]のいずれかに記載の基板保持ユニットを載置台に位置決めすることと、
上記基板保持ユニットの上記基板保持部材の少なくとも1つを基準にして膜の形成領域を限定する遮蔽部材を位置決めすることと、
上記基板保持ユニットにより上記基板の外縁を保持した後、上記外縁が上記基板保持ユニットにより保持される側の主面に対し裏面側の主面に膜を形成することと、
を含む、EUVリソグラフィ用機能膜付基板の製造方法。
[11] 上記膜は導電膜である、[9]または[10]に記載のEUVリソグラフィ用機能膜付基板の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、基板載置時の位置決め精度が高い基板保持部材および基板保持ユニット、ならびに膜の成膜領域のばらつきが抑制されたEUVL用機能膜付基板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板保持部材の側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る基板保持部材の平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る基板保持ユニットについて、基板に対する基板保持部材の配置位置を示す平面図である。
【
図4】
図4(a)~(e)は、本発明の第1実施形態に係る基板保持ユニットによる基板載置時の位置決めを説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る基板保持部材の平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係る基板保持ユニットについて、基板に対する基板保持部材の配置位置を示す平面図である。
【
図7】
図7(a)は、載置台に対する本発明の基板保持部材の位置決めを説明するための図である。
図7(b)は、基板保持部材に対する遮蔽部材の位置決めを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の具体的な実施形態である第1実施形態および第2実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例にすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施形態から変更または改良され得る。
【0019】
また、本発明を実施するために用いられる各部材の材質および形状等は、本発明の用途および本発明の実施時点での技術水準等に応じて任意に設定できる。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0020】
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「直交」、「垂直」、「鉛直」、「平行」および「水平」は、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。
また、本明細書において、「矩形」とは、それぞれの角が直角である四辺形を意味し、具体的には長方形または正方形であることとする。
【0021】
[第1実施形態について]
第1実施形態に係る基板保持部材および基板保持ユニットについて、
図1~4を参照しながら説明する。なお、以下において、各部材および各機器の配置位置、向き、状態および姿勢等を説明する際には、特に断る場合を除き、通常使用時(すなわち、基板の位置決め時)を想定して説明することとする。
【0022】
第1実施形態の基板保持部材(以下、基板保持部材10)は、ロボットアームなどの基板搬送機構によって搬送される基板を載置台に載置するときに、基板を位置決めして保持する。基板保持部材10は、
図1および
図2に示す外観を有し、基板の位置決め時には複数用いられる。すなわち、基板の位置決め時には、
図3に示すように、複数の基板保持部材10によって構成される基板保持ユニット10Uが用いられる。
【0023】
基板保持ユニット10Uが有する複数の基板保持部材10の各々は、載置台の所定の位置に配置される。基板搬送機構によって搬送される基板(以下、基板100)は、複数の基板保持部材10の各々に支持されることで所定位置に位置決めされ、その位置にて保持される。
【0024】
第1実施形態において、基板100は、例えば
図3に示すような外縁が矩形である基板であり、2つの主面と、2つの主面を連結する4つの側面とを有する。厳密には、主面の外縁部分には、主面の中央部分から傾斜した面取り面110が形成されている。以降では、説明の都合上、基板100の2つの主面のうち、上側の主面を上面と呼び、下側の主面を底面と呼ぶこととする。なお、面取り面110は、いわゆるC面取面またはR面取面であってもよい。
【0025】
基板保持部材10の形状について詳しく説明する。ここで、基板保持ユニット10Uが有する複数の基板保持部材10は、いずれも同じ形状であるため、以下では、複数の基板保持部材10の一つの形状を説明することとする。
【0026】
基板保持部材10は、
図1に示すように平面視では矩形状であり、略角柱型の柱状部11と、柱状部11の一つの側面から張り出した張出部12を有する。柱状部11の下面と張出部12の下面とは、連続して同一平面上に存在する。このため、基板保持部材10は、
図1に示すように側方視で略L字型の形状をなしている。なお、柱状部11が立ち上がる方向、すなわち柱状部11の高さ方向は、基板保持部材10の上下方向に該当する。
【0027】
張出部12は、水平に張り出した平面視で矩形状の部分である。第1実施形態の張出部12は、
図1に示すように、張出方向の途中位置に段差を有するステップ形状をなしている。張出部12の上面のうち、段差よりも張出部12の基端側(柱状部11に近い側)にある面は、水平面であり載置面13をなす。載置面13は、基板100の位置決め時に基板100の底面、詳しくは底面の外縁部が載置される面である。
【0028】
張出部12の上面のうち、段差よりも張出部12の自由端側(柱状部11から離れている側)には、段差分だけ載置面13よりも沈下した沈下面14が設けられている。沈下面14は、水平面である。なお、張出部12の上面は、段差が設けられていない平坦面であってもよい。
【0029】
柱状部11は、四角柱の形状をなす部分であり、鉛直方向に立ち上がった4つの側面を有する。また、
図1に示すように、柱状部11の上端辺の両端に位置する角部のうち、一方の角部が面取りされている。
【0030】
張出部12は、柱状部11が有する4つの側面のうち、上端部が面取りされた側面から張り出している。つまり、柱状部11の上端が面取りされた側面は、張出部12の上面、詳しくは載置面13と隣接する面を有する。この面は、鉛直方向に立ち上がった鉛直面であり、載置面13の外端に立設された立設面15に該当する。ここで、鉛直方向は、載置面13の法線方向に該当する。また、載置面13の外端は、載置面13において張出部12の基端と同じ側、すなわち柱状部11に近い側に位置する端である。
【0031】
柱状部11の上端が面取りされた側面において、立設面15の頂部(つまり、上端部)は、面取りによって傾斜した傾斜面16と連続している。傾斜面16は、
図1に示すように鉛直方向に対して傾斜しており、詳しくは、立設面15の頂部から上方に向かうにつれて載置面13から遠ざかる向きに傾斜している。
【0032】
ここで、鉛直方向に対する傾斜面16の傾斜角度は、後述の手順によって基板100を位置決めする上では60°以上90°未満が好ましく、70°以上80°以下がより好ましい。
【0033】
また、立設面15と傾斜面16との境界部分は、
図1に示すように鈍角をなすように屈曲してもよく、丸みを有するようにR状に湾曲していてもよい。この構成では、基板の位置決め時に、基板100の外縁部が立設面15と傾斜面16との境界部分を滑らかに降り載置面13に向けてスムーズに基板100を案内することができる。
また、柱状部11の上端の面と傾斜面16との境界部分も、
図1に示すように鈍角をなすように屈曲してもよく、丸みを有するようにR状に湾曲していてもよい。
【0034】
基板保持部材10の各部分の寸法については、特に限定されないが、基板100のサイズを考慮した上で基板100を位置決めする上で好適な値に設定されるとよい。具体的には、立設面15の高さは、基板100の厚みをtとしたとき、0.2t~1.5tが好ましく、0.5t~1.0tがより好ましい。立設面15の高さが0.2t以上であれば、基板100が載置面13に載置された後に、面取り面110が立設面15と傾斜面16との境界部に接触して傷が発生するおそれがない。また、立設面15の高さが1.5t以下であれば、基板100の側面と立設面15との擦れによる傷の発生を抑制することができる。なお、立設面15の高さは、立設面15の下端から上端までの長さであり、
図1中の記号hにて示す長さである。
【0035】
以上の形状を有する基板保持部材10は、種々の材料によって構成することが可能であるが、成型性の観点で考えると、基板保持部材10の材料としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール、ポリカーボネード、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンゾイミダゾール樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。これらの中でも、PEEKまたはポリイミドがより好ましい。
【0036】
次に、第1実施形態における基板100の位置決め方法について、
図3および
図4を参照しながら説明する。前述したように、基板100の位置決めには、複数の基板保持部材10、すなわち基板保持ユニット10Uが用いられ、第1実施形態では、4つの基板保持部材10からなる基板保持ユニット10Uが用いられる。
【0037】
第1実施形態では、
図3に示すように、基板保持ユニット10Uを構成する4つの基板保持部材10には、対をなす2つの基板保持部材10が2組含まれる。対をなす2つの基板保持部材10は、それぞれの立設面15同士が互いに対向し合うように配置されている。このような配置により、対をなす2つの基板保持部材10は、基板100が位置決めされた状態では、互いに基板100を挟んで反対側に位置する。
【0038】
第1実施形態では、基板100外縁がなす矩形の4辺のそれぞれに対して、基板保持部材10が1つずつ配置されている。そして、基板100が位置決めされた状態では、上記4辺のそれぞれに位置する基板100の外縁部(以下、端辺部分)が、それぞれの基板保持部材10によって保持される。このとき、基板100の外縁部において互いに対向する位置にある2つの端辺部分のうち、一方の端辺部分は、対をなす2つの基板保持部材10の一方の載置面13に載置され、他方の端辺部分は、対をなす2つの基板保持部材10の他方の載置面13に載置される(
図4の(e)参照)。
【0039】
なお、基板100の外縁部とは、基板100の外縁(すなわち、矩形状の外縁)およびその周辺部分のことである。また、端辺部分とは、外縁部のうち、矩形をなす4辺のうちの1辺に相当する部分およびその周辺部分のことである。
【0040】
図3に示す構成では、位置決めした基板100を安定して保持する理由から、基板100における各端辺部分の中央部分が基板保持部材10によって保持される。ただし、各端辺部分における少なくとも一部分が基板保持部材10によって保持されればよく、端辺部分のうちのどの部分が保持されるかについては、特に限定されない。
【0041】
第1実施形態の基板保持ユニット10Uによって基板100を位置決めする手順を、
図4を参照しながら説明する。なお、
図4の(a)~(e)の各図は、基板100を位置決めする様子を、
図3の矢視方向Iから見たときの図である。
【0042】
基板100を位置決めする際には、基板100を複数の基板保持部材10の各々の上方から下降させ、基板100を各基板保持部材10に近付ける。この段階では基板100が水平方向において正規の位置(位置決め後の位置)から若干ずれた位置にある。基板100を基板保持部材10に近付けていくと、
図4の(a)に示すように、基板100の外縁部において互いに対向する位置にある2つの端辺部分のうちの一方(以下、一方の端辺部分)が、その下端にて、対をなす2つの基板保持部材10の一方の傾斜面16と当接する。
【0043】
基板100の一方の端辺部分は、一方の基板保持部材10の傾斜面16上を滑り落ち、これにより、傾斜面16に沿って載置面13側に案内される。これにより、基板100の位置が、水平方向において
図4の(b)の矢印が示す向きに補正される。その過程において、基板100は、傾いた姿勢となる。
【0044】
基板100が傾いた状態では、
図4の(c)に示すように、基板100の外縁部において互いに対向する位置にある2つの端辺部分のうち、一方の端辺部分は、一方の基板保持部材10の傾斜面16に当接するが、他方の端辺部分は、他方の基板保持部材10の傾斜面16と当接しない。これは、対をなす2つの基板保持部材10の傾斜面16同士の間隔が、基板100の外縁部において互いに対向する位置にある2つの端辺部分の間隔よりも長いためである。このように、基板100における一方の端辺部分のみが基板保持部材10の傾斜面16に当接して傾斜面16上を滑り落ちるため、基板100の位置が1方向(
図4の(c)の矢印が示す向き)に補正される。
【0045】
基板100における一方の端辺部分は、傾斜面16上を滑り落ちていくと、やがて傾斜面16の下端に到達し、その後は、
図4の(d)に示すように、一方の基板保持部材10の立設面15に沿って載置面13まで落下する。これは、対をなす2つの基板保持部材10の立設面15同士の間隔が、基板100の厚み方向の断面における対角線Lよりも長いためである。対をなす2つの基板保持部材10の立設面15同士の間隔が対角線Lよりも長いと、基板100における他方の端辺部分の左上の角が基板保持部材10の立設面15と接触しない。そのため、基板100の一方の端辺部分が載置面13まで落下しやすい。
基板100の一方の端辺部分が載置面13まで落下することにより、立設面15の範囲内で位置決めされる。このとき、他方の端辺部分は、
図4の(d)に示すように、他方の基板保持部材10の載置面13に載っている。
【0046】
以上までの手順により、
図4の(e)に示すように、基板100の外縁部において互いに対向する位置にある2つの端辺部分が、対をなす2つの基板保持部材10の載置面13に載置される。これにより、基板100の主面の外縁がなす矩形の4辺のそれぞれの位置にて、基板100の外縁部(詳しくは、各端辺部分)が、4つの基板保持部材10の各々の載置面13に載置されるようになる。この結果、4つの基板保持部材10の各々の立設面15によって囲まれる範囲内で基板100が精度よく位置決めされる。そして、基板100は、4つの基板保持部材10によって位置決め後の位置に保持される。
【0047】
[第2実施形態について]
第2実施形態に係る基板保持部材および基板保持ユニットについて、
図5および
図6を参照しながら説明する。なお、以下では、第2実施形態のうち、第1実施形態と相違する点を主として説明することとし、第1実施形態と共通する点については説明を省略することとする。また、
図5および
図6に示す第2実施形態の基板保持部材のうち、第1実施形態と共通する部分には、第1実施形態と同じ符号を付している。
【0048】
第2実施形態に係る基板保持部材(以下、基板保持部材20)は、
図5に示すように平面視ではL字状をなしている。より詳しく説明すると、基板保持部材20は、スリット21と、スリット21を挟んで直交する方向に延びる2つの保持部材断片22,23とを有する。2つの保持部材断片22、23の各々は、側面視で第1実施形態に係る基板保持部材10と同じ形状(すなわち、
図1に示す形状)をなしており、柱状部11と張出部12を有する。
【0049】
各保持部材断片22,23の張出部12の上面には、
図5に示すように、載置面13および沈下面14が備わっている。載置面13および沈下面14は、いずれも水平面である。
【0050】
各保持部材断片22,23の柱状部11は、
図5に示すように、張出部12が張り出した側面に、鉛直面である立設面15と、立設面15と隣接する傾斜面16とを有する。立設面15は、載置面13の外端から立ち上がっている。傾斜面16は、立設面15の頂部から上方に向かうにつれて載置面13から遠ざかる向きに傾斜している。
【0051】
以上のように、基板保持部材20では、載置面13、沈下面14、立設面15および傾斜面16の各々が保持部材断片22,23毎に分かれており、つまり、スリット21によって2つの領域に分離されている。載置面13における2つの領域、および沈下面14における2つの領域は、スリット21を挟んで互いに交差する方向に延びており、詳しくは直交する方向に延びている。同様に、立設面15における2つの領域、および傾斜面16における2つの領域は、スリット21を挟んで互いに交差する方向に延びており、詳しくは直交する方向に延びている。
【0052】
第2実施形態では、スリット21が設けられていることにより、基板保持部材20内に進入したゴミおよび埃等の異物をスリット21から基板保持部材20の外側に排出することができる。なお、基板保持部材20において載置面13、沈下面14、立設面15および傾斜面16の各々がスリット21によって2つの領域に分断される構成には限定されず、載置面13および沈下面14は分断されず、立設面15および傾斜面16がスリット21によって2つの領域に分離している構成でもよい。また、スリット21自体が設けられていない構成、つまり、直交する2つの保持部材断片22,23が連結した基板保持部材であってもよい。
【0053】
第2実施形態において基板100を位置決めする際には、第1実施形態と同様、基板保持部材20が複数用いられる。すなわち、
図6に示すように、基板100の位置決め時には、複数(具体的には4つ)の基板保持部材20を有する基板保持ユニット20Uが用いられる。
【0054】
基板保持ユニット20Uには、対をなす2つの基板保持部材20が含まれる。対をなす2つの基板保持部材20は、矩形領域の対角線上に配置されている。このような配置により、対をなす2つの基板保持部材20は、基板100が位置決めされた状態では、
図6に示すように基板100の主面の対角線上にあり、基板100を挟んで互いに反対側に位置する。
【0055】
つまり、第2実施形態では、基板100の外縁がなす矩形における4つの角部のそれぞれに対して、基板保持部材20が配置されている。そして、基板100が位置決めされた状態では、4つの角部のそれぞれに位置する基板100の外縁部が、それぞれの基板保持部材20によって保持され、厳密には、それぞれの基板保持部材20の保持部材断片22,23の載置面13に載置される。また、基板100が位置決めされた状態では、基板保持部材20が有する一方の保持部材断片22の立設面15が、基板100の角部にて互いに直交する2つの側面の一方と対向し、他方の保持部材断片23の立設面15が、2つの側面の他方と対向する。このように、第2実施形態では、基板100の各角部が基板保持部材20により保持されることで、位置決めされた状態の基板100を安定して支持することができる。
【0056】
なお、
図6に示す構成では、4つの角部のそれぞれに対して基板保持部材20が配置されているが、これに限定されず、対角をなす2つの角部のそれぞれに対して基板保持部材20が配置されていてもよい。つまり、第2実施形態では、基板100が位置決めされた状態で、4つの角部のうち、少なくとも2つの角部のそれぞれに位置する基板100の外縁部が、各々の基板保持部材20の載置面13に載置されればよい。
【0057】
以上のように第2実施形態では、上記した基板保持部材の形状および配置位置の点において第1実施形態と相違するが、それ以外の点では第1実施形態と共通し、例えば、基板100の位置決め手順については第1実施形態と略同様の手順である。そして、第2実施形態では基板保持部材20を用いて基板100を位置決めすることにより、第1実施形態と同様の効果、すなわち精度よく基板100を位置決めすることができる。
これは、第2実施形態においても、対をなす2つの基板保持部材の立設面同士の間隔は、基板の厚み方向の断面における対角線よりも長いためである。
【0058】
次に、本発明のEUVL用機能膜付基板の製造方法について記載する。
本発明のEUVL用機能膜付基板の製造方法は、外縁が矩形であり、かつ2つの主面を有する基板の一方の主面に膜を形成するEUVL用機能膜付基板の製造方法である。
本発明のEUVL用機能膜付基板の製造方法では、基板保持ユニット10U,20Uにより、基板100の外縁部を保持して位置決めされた状態の基板100の上面に膜を形成する。膜の形成には、公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法およびイオンビームスパッタリング法といったスパッタリング法、CVD法、並びに真空蒸着法といった乾式成膜法が用いられる。そのため、基板保持ユニット10U,20Uを構成する基板保持部材10,20としては、成膜容器内の真空雰囲気下においてガス成分を放出しないものを利用するのが好ましい。
【0059】
また、成膜装置では基板などが熱を持つ場合があるため、基板保持ユニット10U,20Uを構成する基板保持部材10,20は、少なくとも約150℃程度まで化学的・物理的に耐熱性を有することが好ましい。
【0060】
なお、導電膜としてCrN膜を形成する場合には、ターゲットをCrターゲットとし、スパッタガスをArとN2の混合ガスとして、マグネトロンスパッタリング法を用いて導電膜を形成すればよい。
【0061】
本発明のEUVL用機能膜付基板の製造方法では、先ず、基板保持ユニット10U,20Uを用いて上記した要領で基板100の外縁を保持して該基板100を位置決めする。その後、基板保持部材10,20により基板100を位置決め後の位置に保持したまま、基板100の上面に膜を形成する。
【0062】
ところで、本発明のEUVL用機能膜付基板の製造方法では、基板の位置決めに先行して、載置台上の所定の位置に基板保持部材を配置することが求められる。
また、基板の主面に膜を形成する際、該主面における膜の形成領域を限定するために、基板上の膜の形成領域外には遮蔽部材が配置される。そのため、EUVL用機能膜付基板の製造時、膜の形成領域の位置ずれを防止するため、遮蔽部材の位置精度も必要である。
従来、基板保持部材と遮蔽部材は、それぞれが基準位置(例えば載置台の特定の基準点)に対して位置決めされていた。それに対して、本発明で開示した基板保持部材を用いる場合は基板の位置バラツキを従来の保持部材よりも低減できるため、少なくとも1つの基板保持部材を基準にして遮蔽部材を位置決めすることが好ましい。特に、少なくとも1つの基板保持部材の立設面を基準にして遮蔽部材の位置決めを行うことが好ましい。
【0063】
以上の事情を踏まると、以下に示す手順で載置台に対する基板保持部材の位置決め、および、基板保持部材に対する遮蔽部材の位置決めを行うことが好ましい。
【0064】
基板保持部材および遮蔽部材の位置決めを行う手順について、
図7の(a)および(b)を参照しながら説明する。
図7の(a)は、載置台に対する基板保持部材の位置決めを示す図である。
図7の(b)は、基板保持部材に対する遮蔽部材の位置決めを示す図である。
【0065】
図7の(a)に示す構成では、載置台200の4隅に設けられたバカ穴(図示せず)からリフトガイド300が突出している。各リフトガイド300は、鉛直方向に上下動できるとともに、水平方向である2つの方向(例えば、前後および左右方向)に移動できる。また、各リフトガイド300の上面には基板保持部材10,20がセットされている。
【0066】
そして、
図7の(a)に示すように、基板保持部材10,20によって位置決めされる基板100と同一形状、且つ同一寸法のリフトガイド中心出し治具400を、リフトガイド300上にセットされた基板保持部材10,20に保持させる。これにより、基板保持部材10,20が載置台200に対して位置決めされる。
【0067】
その後、
図7の(b)に示すように、リフトガイド中心出し治具400上に設けられた凹部に、後乗せ治具600を嵌め込む。後乗せ治具600は、基板保持部材10,20に対して遮蔽部材700を位置決めするために用いられる。具体的に説明すると、載置台200の4隅において、リフトガイド300よりも外側に設けられたバカ穴(図示せず)からは、サポートガイド500が突出している。各サポートガイド500は、鉛直方向に上下動できるとともに、水平方向である2つの方向(例えば、前後および左右方向)に移動できる。また、各サポートガイド500の上面には遮蔽部材700がセットされている。遮蔽部材700は、基板保持部材10,20に向かって尖った楔型の先端を有する。
【0068】
そして、
図7の(b)に示すように、遮蔽部材700の先端を後乗せ治具600に当接させることで、後乗せ治具600に対して遮蔽部材700を位置決めする。これにより、遮蔽部材700を基板保持部材10,20に対して間接的に位置決めすることができる。 その後、固定治具800を用いて遮蔽部材700を固定する。以上までの手順により、基板保持部材10,20および遮蔽部材700の各々の位置決めが完了する。
【実施例0069】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。例1および例2のうち、例1が実施例であり、例2が比較例である。
【0070】
例1
例1では、以下の手順で導電膜付基板を作製した。
成膜用の基板として、SiO
2-TiO
2系のガラス基板(外形6インチ(152mm)角、厚さが6.3mm、面取り面の幅が0.4mm)を使用した。
基板の位置決めには
図5に示す基板保持部材20を有する基板保持ユニット20Uを使用した。
基板保持部材20は、傾斜面16の傾斜角度が70°であり、立設面15の高さhが6.3mmであり、載置面13の幅wは、9.5mm以上である。
基板保持ユニット20Uの基板保持部材20は、
図6に示すように、基板100の外縁部の4つの角部を保持する位置に配置されている。基板100の外縁部の4つの角部の各々の位置では、2つの保持部材断片22,23からなる基板保持部材20が1つずつ配置されている。したがって、基板100の外縁部の4つの角部には、合計4つの基板保持部材20が配置されている。
ロボットアームにより基板を搬送し基板保持ユニット20Uにより基板を位置決めした。
次に、基板の一方の主面に、マグネトロンスパッタリング法を用いて、導電膜として、CrN膜を形成して導電膜付基板を作製した。CrN膜の形成時、Crターゲットを使用し、スパッタガスとして、ArとN
2の混合ガスを使用した。
作製した導電膜付基板において、導電膜が形成されていない領域の幅(基板の端部から導電膜の端部までの距離)を基板の角部から辺方向に15mmの位置計8点において測定した。上記の手順で導電膜付基板を6枚作製し、6枚の導電膜付基板の各点での導電膜形成領域のバラツキ(導電膜が形成されていない領域の幅の標準偏差)を評価し、さらに、導電膜形成領域の8点の標準偏差の平均値を求めた。その結果、導電膜形成領域の8点の標準偏差の平均値は0.040mmであった。
【0071】
例2
例2では、
図5に示す基板保持部材20を有する基板保持ユニット20Uを使用せず、ロボットアームにより基板を搬送した基板の面取り部を、載置台の4隅に設けられた支持ピンで保持した以外は、例1と同様の手順で導電膜付基板を6枚作製し、6枚の導電膜付基板の各点での導電膜形成領域のバラツキ(導電膜が形成されていない領域の幅の標準偏差)を評価し、さらに、導電膜形成領域の8点の標準偏差の平均値を求めた。その結果、導電膜形成領域の8点の標準偏差の平均値は0.144mmであった。
【0072】
本発明の基板保持部材で基板を位置決めすることにより、導電膜形成領域のバラツキが低減された。