(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182113
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】プリウェットモジュール、およびプリウェット方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20221201BHJP
H01L 21/288 20060101ALI20221201BHJP
C25D 7/12 20060101ALI20221201BHJP
C25D 5/56 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H01L21/02 D
H01L21/288 E
C25D7/12
C25D5/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089455
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】関 正也
【テーマコード(参考)】
4K024
4M104
【Fターム(参考)】
4K024BA11
4K024BB12
4K024DA06
4K024DA10
4K024GA01
4M104DD22
4M104DD23
4M104DD52
4M104DD53
(57)【要約】
【課題】基板の被処理面の狭領域の空気をより確実に脱気液に置換する。
【解決手段】プリウェットモジュール200は、被処理面WF-aを有する基板WFを保持するように構成されたホルダ220と、ホルダ220を収容するチャンバ210と、チャンバ210内に脱気液を供給するように構成された脱気液供給部材204と、基板WFの被処理面WF-aが脱気液に浸漬された状態でチャンバ210内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成された圧力調整部材230と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理面を有する基板を保持するように構成されたホルダと、
前記ホルダを収容するチャンバと、
前記チャンバ内に脱気液を供給するように構成された脱気液供給部材と、
前記基板の被処理面が脱気液に浸漬された状態で前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成された圧力調整部材と、
を備える、
プリウェットモジュール。
【請求項2】
前記ホルダは、前記チャンバ内の下部領域において前記基板の被処理面を上向きにして前記基板を保持するように構成される、
請求項1に記載のプリウェットモジュール。
【請求項3】
前記圧力調整部材は、前記チャンバ内の上部領域に対して気体の注入と抽出を繰り返すことによって前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成される気体供給部材を含む、
請求項2に記載のプリウェットモジュール。
【請求項4】
前記チャンバは、前記チャンバ内に、前記ホルダを収容するための収容空間と、前記収容空間の外縁よりも小さい外縁を有し前記収容空間の上部に連通する加圧空間と、が形成されるように構成され、
前記気体供給部材は、前記チャンバ内の前記加圧空間に対して気体の注入と抽出を繰り返すように構成される、
請求項3に記載のプリウェットモジュール。
【請求項5】
前記圧力調整部材は、前記チャンバ内の上部領域の容積の調整を繰り返すことによって前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成される容積調整部材を含む、
請求項2または3に記載のプリウェットモジュール。
【請求項6】
前記チャンバは、前記チャンバ内に、前記ホルダを収容するための収容空間と、前記収容空間の外縁よりも小さい外縁を有し前記収容空間の上部に連通する加圧空間と、が形成されるように構成され、
前記容積調整部材は、前記チャンバ内の前記加圧空間に対してピストンの進退を繰り返すことによって前記加圧空間の容積の調整を繰り返すように構成される、
請求項5に記載のプリウェットモジュール。
【請求項7】
前記基板の被処理面に対向するように前記チャンバ内に配置されたノズルと、前記ノズルを介して前記基板の被処理面に洗浄液を供給するように構成された洗浄液供給部材と、
をさらに含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載のプリウェットモジュール。
【請求項8】
チャンバ内に収容されたホルダに基板を設置する設置ステップと、
前記チャンバ内に脱気液を供給する供給ステップと、
前記供給ステップによって前記基板の被処理面が脱気液に浸漬された状態で前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行する脱気ステップと、
を備えるプリウェット方法。
【請求項9】
前記保持ステップは、チャンバ内の下部領域において前記基板の被処理面を上向きにし
て前記基板を保持するように構成される、
請求項8に記載のプリウェット方法。
【請求項10】
前記脱気ステップは、前記チャンバ内の上部領域に対して気体の注入と抽出を繰り返すことによって前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成される、
請求項9に記載のプリウェット方法。
【請求項11】
前記チャンバは、前記チャンバ内に、前記ホルダを収容するための収容空間と、前記収容空間の外縁よりも小さい外縁を有し前記収容空間の上部に連通する加圧空間と、が形成されるように構成され、
前記脱気ステップは、前記チャンバ内の前記加圧空間に対して気体の注入と抽出を繰り返すように構成される、
請求項10に記載のプリウェット方法。
【請求項12】
前記脱気ステップは、前記チャンバ内の上部領域の容積の調整を繰り返すことによって前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成される、
請求項9に記載のプリウェット方法。
【請求項13】
前記チャンバは、前記チャンバ内に、前記ホルダを収容するための収容空間と、前記収容空間の外縁よりも小さい外縁を有し前記収容空間の上部に連通する加圧空間と、が形成されるように構成され、
前記脱気ステップは、前記チャンバ内の前記加圧空間に対してピストンの進退を繰り返すことによって前記加圧空間の容積の調整を繰り返すように構成される、
請求項12に記載のプリウェット方法。
【請求項14】
前記基板の被処理面に対向するように前記チャンバ内に配置されたノズルを介して前記基板の被処理面に洗浄液を供給する洗浄ステップをさらに含む、
請求項8から13のいずれか一項に記載のプリウェット方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、プリウェットモジュール、およびプリウェット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板(例えば半導体ウェハ)にめっき処理を行うためのめっき装置は、脱気処理などの各種の前処理を基板に対して行うプリウェットモジュールと、前処理が行われた基板にめっき処理を行うめっきモジュールと、を備えている。
【0003】
例えば特許文献1には、プリウェットチャンバ内のプリウェット液に基板を浸漬させ、加圧部材によってプリウェットチャンバ内を加圧することによって、基板のビアホールの内部にプリウェット溶液を供給しやすくするプリウェットモジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開2008/0149487A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には、基板の被処理面に形成された狭領域の空気をより確実に脱気液に置換することについて改善の余地がある。
【0006】
すなわち、基板の被処理面には狭ピッチで形成されたパターンまたはビアホールなどの狭領域が存在する場合があり、狭領域の空気を脱気液に置換し難いという問題がある。従来技術は、プリウェットチャンバ内を加圧することによって脱気液を基板のビアホールに押し込み、ビアホール内の空気を脱気液に溶け込みやすくするものである。しかしながら、従来技術は単にプリウェットチャンバ内を加圧するだけであるから、脱気処理の後にプリウェットチャンバ内を例えば大気圧に減圧したときに、脱気液に溶け込んだ空気が再び狭領域に戻るおそれがある。その結果、従来技術では、狭領域の空気が十分に脱気液に置換されないおそれがある。
【0007】
そこで、本願は、基板の被処理面の狭領域の空気をより確実に脱気液に置換することを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、被処理面を有する基板を保持するように構成されたホルダと、前記ホルダを収容するチャンバと、前記チャンバ内に脱気液を供給するように構成された脱気液供給部材と、前記基板の被処理面が脱気液に浸漬された状態で前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成された圧力調整部材と、を備える、プリウェットモジュールが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のプリウェットモジュールの構成を概略的に示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のプリウェットモジュールを用いて洗浄処理を行っている状態を概略的に示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、チャンバ内の加圧および減圧を繰り返したときの脱気液の状態を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、一実施形態のプリウェットモジュールを用いて実行されるプリウェット方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、他の実施形態のプリウェットモジュールの構成を概略的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0011】
<めっき装置の全体構成>
図1は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
図2は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。
図1、2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、および、制御モジュール800を備える。
【0012】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収納された基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数および配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、および搬送装置700の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110および搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、図示していない仮置き台を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0013】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数および配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数および配置は任意である。
【0014】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸などの処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数および配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数および配置は任意である。
【0015】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下
方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数および配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤが上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤの数および配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0016】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収納された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板を搬送装置700へ受け渡す。
【0017】
搬送装置700は、搬送ロボット110から受け取った基板をプリウェットモジュール200へ搬送する。プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0018】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送装置700は、乾燥処理が施された基板を搬送ロボット110へ受け渡す。搬送ロボット110は、搬送装置700から受け取った基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収納したカセットが搬出される。
【0019】
<プリウェットモジュールの構成>
次に、プリウェットモジュール200の構成を説明する。本実施形態における2台のプリウェットモジュール200は同一の構成であるので、1台のプリウェットモジュール200のみを説明する。
【0020】
図3は、一実施形態のプリウェットモジュールの構成を概略的に示す縦断面図である。
図4は、一実施形態のプリウェットモジュールを用いて洗浄処理を行っている状態を概略的に示す縦断面図である。
図3に示すように、プリウェットモジュール200は、被処理面WF-aを有する円板形状の基板WFを保持するように構成されたホルダ220を備える。ホルダ220は円筒状に形成されており、被処理面WF-aが上向きになるように基板WFの裏面の外縁部を保持するように構成される。
【0021】
プリウェットモジュール200は、ホルダ220を収容するチャンバ210を備える。チャンバ210は、底壁210aと、底壁210aの外縁部に取り付けられた筒状の側壁210bと、側壁210bの上部に取り付けられた上壁210cと、を含む。チャンバ210は、底壁210a、側壁210b、および上壁210cに囲まれた密閉空間212を形成する。ホルダ220は底壁210a上に配置される。ホルダ220は、チャンバ210内の下部領域において被処理面WF-aを上向きにして基板WFを保持するように構成される。
【0022】
プリウェットモジュール200は、チャンバ210内に脱気液(例えば脱気水)を供給するように構成された脱気液供給部材204を備える。プリウェットモジュール200は、側壁210bを介して脱気液供給部材204とチャンバ210内部(密閉空間212)とを連通する脱気液配管206と、脱気液配管206を開閉するように構成された脱気液弁208と、を備える。脱気液供給部材204は、脱気液配管206を介してチャンバ210内部に脱気液を供給する。脱気液弁208は、脱気処理が行われていないときには閉じられ、脱気処理が行われるときに開かれるように構成される。
【0023】
プリウェットモジュール200は、基板WFの被処理面WF-aを洗浄するための洗浄部材260を備える。洗浄部材260は、基板WFの被処理面WF-aに対向する対向面262aを有する円板部材262と、円板部材262の対向面262aの外縁部に取り付けられた筒状部材264と、を有する。洗浄部材260は、円板部材262の対向面262aに配置された複数のノズル268を備える。円板部材262、筒状部材264、およびノズル268は、チャンバ210内に収容されている。洗浄部材260は、円板部材262の上面の中央から上壁210cを貫通してチャンバ210外部まで鉛直方向に伸びるシャフト266を含む。洗浄部材260は、上壁210cに配置された軸受267によってシャフト266が回転可能に支持されていることによって、シャフト266の軸周りに回転可能になっている。円板部材262およびシャフト266には洗浄液(例えば純水)を通流させるための流路269が形成されており、流路269は複数のノズル268に連通している。
【0024】
プリウェットモジュール200は、プーリ242を介して洗浄部材260をシャフト266の軸周りに回転させるように構成された回転機構240を備える。回転機構240は、基板WFの洗浄処理を行うときに洗浄部材260を回転させるように構成される。
【0025】
プリウェットモジュール200は、流路269に接続された洗浄液配管270と、洗浄液配管270を開閉するように構成された洗浄液弁272と、を備える。プリウェットモジュール200は、洗浄液配管270、流路269、およびノズル268を介して基板WFの被処理面WF-aに洗浄液を供給するように構成された洗浄液供給部材202を備える。洗浄液弁272は、洗浄処理が行われていないときには閉じられ、洗浄処理が行われるときに開かれるように構成される。
【0026】
図4に示すように、洗浄部材260は、チャンバ210内に脱気液が満たされていない(基板WFの被処理面WF-aが脱気液に浸漬されていない)状態で洗浄処理を行う。洗浄部材260は、回転機構240によって洗浄部材260を回転させながらノズル268から洗浄液を噴射する。本実施形態のプリウェットモジュール200によれば、被処理面WF-aと対向して配置されたノズル268から洗浄液を噴射して被処理面WF-aを洗浄するので、被処理面WF-aのパターン間の塵などを効率よく洗い出すことができる。
【0027】
図3に示すように、プリウェットモジュール200は、密閉空間212に貯められた脱気液を、底壁210aを介して排出するための排出配管280と、排出配管280を開閉するように構成された排出弁282と、を備える。排出弁282は、脱気処理が行われている間には閉じられ、脱気処理が終了したら開かれるように構成される。脱気処理が終了した後、脱気液は排出配管280を介して排出される。
【0028】
また、
図3に示すように、プリウェットモジュール200は、チャンバ210内部の圧力を調整するための圧力調整部材230を備える。圧力調整部材230は、
図3に示すように基板WFの被処理面WF-aが脱気液に浸漬された状態でチャンバ210内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成されている。言い換えると、圧力調整部材230
は、基板WFに対する脱気処理の際にチャンバ210内の加圧と減圧を交互にそれぞれ2回以上実行するように構成されている。圧力調整部材230は、本実施形態では、以下に説明する異なる2つの態様で実現される。
【0029】
圧力調整部材230は、チャンバ210内の上部領域に対して気体(例えばN2)を注入および抽出するように構成された気体供給部材290を含む。気体供給部材290は、チャンバ210の上壁210cを介してチャンバ210内に連通する気体配管292を介してチャンバ210内の上部領域に気体の注入と抽出を繰り返すことによってチャンバ210内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成される。気体配管292には、気体配管292を開閉するように構成された気体弁294が設けられている。気体弁294は、チャンバ210内の加圧処理および減圧処理が行われていないときには閉じられ、加圧処理および減圧処理が行われるときに開かれるように構成される。
【0030】
また、圧力調整部材230は、チャンバ210内の上部領域の容積を調整するように構成された容積調整部材250を含む。容積調整部材250は、具体的には、軸受256によって上壁210cに支持されており鉛直方向に移動可能なピストン254と、ピストン254をチャンバ210内の上部領域に対して進退させるためのシリンダ252と、を含む。容積調整部材250は、ピストン254をチャンバ210内に押し込むことによってチャンバ210内の容積を減らしてチャンバ210内の圧力を増加させる。一方、容積調整部材250は、ピストン254をチャンバ210外へ引き出すことによってチャンバ210内の容積を増やしてチャンバ210内の圧力を減少させる。容積調整部材250は、チャンバ210内の上部領域に対するピストン254の進退を繰り返すことによって、チャンバ210内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成される。なお、本実施形態では圧力調整部材230が気体供給部材290と容積調整部材250を含む例を示したが、これに限らず、いずれか一方を含んでいてもよい。
【0031】
本実施形態のプリウェットモジュール200によれば、基板WFの被処理面WF-aが脱気液に浸漬された状態でチャンバ210内の加圧および減圧を繰り返し実行することによって、基板WFの被処理面WF-aの狭領域(例えばパターン間の領域)の空気をより確実に脱気液に置換することができる。この点について、以下説明する。なお、以下の説明では、基板WFの被処理面WF-aに形成された狭領域の一例として、パターン間の狭領域を挙げて説明するが、これに限らず、ビアホールなどの狭領域についても本実施形態を適用することができる。
【0032】
図5は、チャンバ内の加圧および減圧を繰り返したときの脱気液の状態を概略的に示す図である。
図5(1)に示すように、基板WFの被処理面WF-aには、シード層SEが形成されており、シード層SE上にはレジストによるパターンPAが形成されている。例えば大気圧下において、
図5(2)に示すようにチャンバ210内に脱気液DEGを供給するだけでは、パターンPA間の間隔が狭いために脱気液DEGはパターンPA間に入り込めず空気Airと置換されない。
【0033】
この状態から圧力調整部材230によってチャンバ210内を加圧すると、
図5(3)に示すように、脱気液DEGがパターンPA間に押し込まれる。このとき、パターンPA間に押し込まれた脱気液DEGに空気Airが溶け込むので、脱気液DEGの最下層には酸素(空気)濃度が高い第1の層DEGaが形成され、第1の層DEGa上には酸素(空気)濃度が第1の層DEGaよりも低い第2の層DEGbが形成される。続いて圧力調整部材230によってチャンバ210内を例えば大気圧まで減圧すると、
図5(4)に示すように、パターンPA間に押し込まれていた脱気液DEGがパターンPA外に押し出されるので、パターンPA間には脱気液DEGと置換されない空気Airが残る。ただし、このときパターンPA間の脱気液DEGには上昇流が形成されるので、脱気液DEGに溶け
込んだ空気の一部は脱気液DEGの上部に流される。
【0034】
続いて圧力調整部材230によってチャンバ210内を再び加圧すると、
図5(5)に示すように、脱気液DEGが
図5(3)に示す状態よりもさらにパターンPA間に押し込まれ、脱気液DEGにはパターンPA間の空気が溶け込む。続いて圧力調整部材230によってチャンバ210内を再び減圧すると、
図5(6)に示すように、パターンPA間の脱気液DEGには上昇流が形成されるので、脱気液DEGに溶け込んだ空気の一部が脱気液DEGの上部に流される。これにより、第2の層DEGb上には酸素(空気)濃度が第2の層DEGbよりも低い第3の層DEGcが形成される。
図5(6)に示した状態では、パターンPA間に押し込まれていた脱気液DEGがパターンPA外に押し出されるが、脱気液DEGに溶け込んだ空気が脱気液DEGの上部に流されることによって、
図5(4)に示した状態よりもパターンPA間には脱気液DEGが留まった状態となる。圧力調整部材230によってチャンバ210内の加圧と減圧を繰り返すと、最終的には
図5(7)に示すように、パターンPA間の空気は脱気液DEGによって完全に置換され得る。
【0035】
本実施形態のプリウェットモジュール200によれば、基板WFの被処理面WF-aが脱気液に浸漬された状態でチャンバ210内の加圧および減圧を繰り返し実行することによって、基板WFの被処理面WF-aの狭領域の空気をより確実に脱気液に置換することができる。すなわち、チャンバ210内を加圧することによって狭領域に脱気液を押し込みつつ狭領域の空気を脱気液に溶け込ませることができる。また、チャンバ210内を減圧することによって、脱気液に上昇流を形成することができるので、脱気液に溶け込んだ空気を脱気液の上部に流すことができる。本実施形態のプリウェットモジュール200によれば、このような加圧と減圧を繰り返すことによって、狭領域の空気を脱気液に置換することができる。
【0036】
次に、本実施形態のプリウェット方法を説明する。
図6は、一実施形態のプリウェットモジュールを用いて実行されるプリウェット方法を示すフローチャートである。
図6に示すように、プリウェット方法は被処理面WF-aを上向きにして基板WFをホルダ220に設置する(設置ステップ101)。
【0037】
続いて、プリウェット方法は、回転機構240によって洗浄部材260を回転させる(回転ステップ102)。続いて、プリウェット方法は、洗浄液弁272を開いて、ノズル268を介して基板WFの被処理面WF-aに洗浄液を供給する(洗浄ステップ103)。続いて、プリウェット方法は、基板WFの洗浄処理が終了したか否かを判定する(ステップ104)。プリウェット方法は、基板WFの洗浄処理が終了するまで洗浄ステップ103を繰り返す。
【0038】
一方、プリウェット方法は、基板WFの洗浄処理が終了したと判定されたら(ステップ104、Yes)、洗浄液弁272を閉じるとともに、脱気液弁242を開いて、密閉空間212に脱気液を供給する(供給ステップ105)。続いて、プリウェット方法は、供給ステップ105によって基板WFの被処理面WF-aが脱気液で浸漬されて密閉空間212の所定の位置まで脱気液が満たされたら、脱気液弁242を閉じるとともに、チャンバ210内の加圧および減圧を繰り返し実行する(脱気ステップ106)。脱気ステップ106は、チャンバ210内の上部領域に対して気体の注入と抽出を繰り返すことによってチャンバ210内の加圧および減圧を繰り返し実行することができる。また、脱気ステップ106は、チャンバ210内の上部領域に対してピストン254の進退を繰り返すことによって上部領域の容積の調整を繰り返すことができる。
【0039】
続いて、プリウェット方法は、チャンバ210内の加圧および減圧が所定回数行われたかを判定する(ステップ107)。チャンバ210内の加圧および減圧の回数は、脱気液
の種類またはパターン間の間隔などによって異なるので、あらかじめ実験またはシミュレーションなどによって決定することができる。プリウェット方法は、所定回数の加圧および減圧が行われるまで脱気ステップ106を繰り返す。一方、プリウェット方法は、所定回数の加圧および減圧が行われたと判定されたら(ステップ107、Yes)、排出弁282を開く(ステップ108)。これにより、密閉空間212から脱気液を抜くことができる。続いて、プリウェット方法は、基板WFをプリウェットモジュール200から搬出して(ステップ109)、前処理を終了する。
【0040】
なお、上記の実施形態では、チャンバ210内に洗浄部材260が設けられる例を示したが、洗浄部材260は設けられていなくてもよい。
図7は、他の実施形態のプリウェットモジュールの構成を概略的に示す縦断面図である。
図3に示した実施形態と同様の構成については図示および説明を省略する。
【0041】
図7に示すように、チャンバ210は、チャンバ210内の上部領域において内側壁が縮径するように構成される。具体的には、チャンバ210は、チャンバ210内に、ホルダ220を収容するための収容空間214と、収容空間214の外縁よりも小さい外縁を有し収容空間214の上部に連通する加圧空間216と、が形成されるように構成される。本実施形態では、気体供給部材290は、チャンバ210内の加圧空間216に対して気体の注入と抽出を繰り返すことによってチャンバ210内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成される。また、容積調整部材250は、チャンバ210内の加圧空間216に対してピストン254の進退を繰り返して加圧空間216の容積を調整することによってチャンバ210内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成される。
【0042】
本実施形態によれば、
図3に示した実施形態と同様に基板WFの被処理面WF-aの狭領域の空気をより確実に脱気液に置換することができる。これに加えて、本実施形態によれば、チャンバ210内において脱気液と空気または窒素とが接する面積を小さくすることができるので、脱気液中に空気または窒素が溶け込む量を抑制することができる。
【0043】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0044】
本願は、一実施形態として、被処理面を有する基板を保持するように構成されたホルダと、前記ホルダを収容するチャンバと、前記チャンバ内に脱気液を供給するように構成された脱気液供給部材と、前記基板の被処理面が脱気液に浸漬された状態で前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成された圧力調整部材と、を備える、プリウェットモジュールを開示する。
【0045】
さらに、本願は、一実施形態として、前記ホルダは、前記チャンバ内の下部領域において前記基板の被処理面を上向きにして前記基板を保持するように構成される、プリウェットモジュールを開示する。
【0046】
さらに、本願は、一実施形態として、前記圧力調整部材は、前記チャンバ内の上部領域に対して気体の注入と抽出を繰り返すことによって前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成される気体供給部材を含む、プリウェットモジュールを開示する。
【0047】
さらに、本願は、一実施形態として、前記チャンバは、前記チャンバ内に、前記ホルダ
を収容するための収容空間と、前記収容空間の外縁よりも小さい外縁を有し前記収容空間の上部に連通する加圧空間と、が形成されるように構成され、前記気体供給部材は、前記チャンバ内の前記加圧空間に対して気体の注入と抽出を繰り返すように構成される、プリウェットモジュールを開示する。
【0048】
さらに、本願は、一実施形態として、前記圧力調整部材は、前記チャンバ内の上部領域の容積の調整を繰り返すことによって前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成される容積調整部材を含む、プリウェットモジュールを開示する。
【0049】
さらに、本願は、一実施形態として、前記チャンバは、前記チャンバ内に、前記ホルダを収容するための収容空間と、前記収容空間の外縁よりも小さい外縁を有し前記収容空間の上部に連通する加圧空間と、が形成されるように構成され、前記容積調整部材は、前記チャンバ内の前記加圧空間に対してピストンの進退を繰り返すことによって前記加圧空間の容積の調整を繰り返すように構成される、プリウェットモジュールを開示する。
【0050】
さらに、本願は、一実施形態として、前記基板の被処理面に対向するように前記チャンバ内に配置されたノズルと、前記ノズルを介して前記基板の被処理面に洗浄液を供給するように構成された洗浄液供給部材と、をさらに含む、プリウェットモジュールを開示する。
【0051】
さらに、本願は、一実施形態として、チャンバ内に収容されたホルダに基板を設置する設置ステップと、前記チャンバ内に脱気液を供給する供給ステップと、前記供給ステップによって前記基板の被処理面が脱気液に浸漬された状態で前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行する脱気ステップと、を備えるプリウェット方法を開示する。
【0052】
さらに、本願は、一実施形態として、前記保持ステップは、チャンバ内の下部領域において前記基板の被処理面を上向きにして前記基板を保持するように構成される、プリウェット方法を開示する。
【0053】
さらに、本願は、一実施形態として、前記脱気ステップは、前記チャンバ内の上部領域に対して気体の注入と抽出を繰り返すことによって前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成される、プリウェット方法を開示する。
【0054】
さらに、本願は、一実施形態として、前記チャンバは、前記チャンバ内に、前記ホルダを収容するための収容空間と、前記収容空間の外縁よりも小さい外縁を有し前記収容空間の上部に連通する加圧空間と、が形成されるように構成され、前記脱気ステップは、前記チャンバ内の前記加圧空間に対して気体の注入と抽出を繰り返すように構成される、プリウェット方法を開示する。
【0055】
さらに、本願は、一実施形態として、前記脱気ステップは、前記チャンバ内の上部領域の容積の調整を繰り返すことによって前記チャンバ内の加圧および減圧を繰り返し実行するように構成される、プリウェット方法を開示する。
【0056】
さらに、本願は、一実施形態として、前記チャンバは、前記チャンバ内に、前記ホルダを収容するための収容空間と、前記収容空間の外縁よりも小さい外縁を有し前記収容空間の上部に連通する加圧空間と、が形成されるように構成され、前記脱気ステップは、前記チャンバ内の前記加圧空間に対してピストンの進退を繰り返すことによって前記加圧空間の容積の調整を繰り返すように構成される、プリウェット方法を開示する。
【0057】
さらに、本願は、一実施形態として、前記基板の被処理面に対向するように前記チャン
バ内に配置されたノズルを介して前記基板の被処理面に洗浄液を供給する洗浄ステップをさらに含む、プリウェット方法を開示する。
【符号の説明】
【0058】
200 プリウェットモジュール
202 洗浄液供給部材
204 脱気液供給部材
210 チャンバ
210a 底壁
210b 側壁
210c 上壁
212 密閉空間
214 収容空間
216 加圧空間
220 ホルダ
230 圧力調整部材
250 容積調整部材
252 シリンダ
254 ピストン
260 洗浄部材
262 円板部材
268 ノズル
290 気体供給部材
292 気体配管
294 気体弁
1000 めっき装置
Air 空気
DEG 脱気液
PA パターン
SE シード層
WF 基板
WF-a 被処理面