(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182189
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】測定システム、製造条件評価方法、及び硫酸製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/00 20060101AFI20221201BHJP
C01B 17/76 20060101ALI20221201BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20221201BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01N31/00 P
C01B17/76 A ZAB
B01D53/86 212
F27D17/00 104G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089592
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】小田川 俊也
(72)【発明者】
【氏名】松浦 芳幸
【テーマコード(参考)】
2G042
4D148
4K056
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BB12
2G042CA01
2G042CB01
2G042EA02
2G042HA10
4D148AA02
4D148AB01
4D148CA01
4D148CD02
4D148DA02
4D148DA08
4K056AA01
4K056CA04
4K056DB02
4K056FA11
(57)【要約】
【課題】三酸化硫黄(SO
3)を含む測定対象ガスの二酸化硫黄(SO
2)濃度の測定を精度よく行う。
【解決手段】SO
3を含む測定対象のガスのSO
2濃度を測定する測定システム200は、測定対象のガスからSO
3を除去するSO
3除去装置210と、その後段に設けられ、SO
2濃度を測定するSO
2濃度測定装置250と、を備えている。これにより、測定対象のガスにSO
3が含まれていても、SO
2濃度測定装置250によるSO
2濃度測定の前段階で、測定対象のガスからSO
3を除去することができるので、SO
2濃度の測定精度に対するSO
3の影響を低減することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三酸化硫黄を含む測定対象ガスの二酸化硫黄濃度を測定する測定システムであって、
前記測定対象ガスから前記三酸化硫黄を除去する除去装置と、
前記除去装置を経たガスの二酸化硫黄濃度を測定する測定装置と、
を備える測定システム。
【請求項2】
前記測定対象ガスは、銅製錬工程で発生する排ガスに含まれる二酸化硫黄を三酸化硫黄に転化させるための転化触媒層を有する転化器から排出されるガスである、ことを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記除去装置に設置されるチューブは、前記測定対象ガスと反応しない材質のチューブである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記チューブは、テフロン(登録商標)製のチューブであることを特徴とする請求項3に記載の測定システム。
【請求項5】
前記除去装置は、前記測定対象ガスから前記三酸化硫黄と水分を吸収する濃硫酸トラップを有し、
前記濃硫酸トラップは、前記濃硫酸トラップに含まれる濃硫酸の容積を一定に維持する容積維持手段を有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項6】
前記測定装置が有する前記除去装置を経たガスと接触する部品は、当該ガスと反応しない材質の部品である、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項7】
前記除去装置を経たガスと接触する部品は、電磁弁、ニードル弁、ミストフィルタの少なくとも1つであることを特徴とする請求項6に記載の測定システム。
【請求項8】
前記除去装置を経たガスと接触する部品の材質は、SUS、PTFE、PFAのいずれかである、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の測定システム。
【請求項9】
前記測定装置に前記除去装置を経たガスを送る流路にニードル弁が設けられ、前記流路の前記ニードル弁の後方にバイパスラインが設けられている、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項10】
前記測定装置のガス出口に、ガス出口の流量を所定範囲に維持するためのポンプが設けられている、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項11】
銅製錬工程で発生する排ガスから硫酸を製造する際の製造条件を評価する製造条件評価方法であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載の測定システムを用いて、前記排ガスに含まれる二酸化硫黄を三酸化硫黄に転化させるための転化触媒層を有する転化器から排出されるガスの二酸化硫黄濃度を測定し、
前記測定した二酸化硫黄濃度から二酸化硫黄の転化率を算出し、
前記算出した転化率に基づいて前記製造条件を評価する、ことを特徴とする製造条件評価方法。
【請求項12】
前記製造条件として、前記算出した転化率に基づいて前記添加触媒層における触媒反応の最適温度を評価する、ことを特徴する請求項11に記載の製造条件評価方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の製造条件評価方法により評価した製造条件で、銅製錬工程で発生する排ガスから硫酸を製造する硫酸製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システム、製造条件評価方法、及び硫酸製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅製錬において硫酸を製造するにあたり、接触式硫酸プラントを用いることがある。接触式硫酸プラントにおいては、銅の熔錬炉で発生した排ガスに含まれる二酸化硫黄(SO2)を転化触媒層を有する転化器にて三酸化硫黄(SO3)に転化させ、この三酸化硫黄を濃硫酸に接触・吸収させることで、規定の硫酸を製造している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
転化器が第1層から第4層の触媒層を有している場合において、例えば、第2層を出た高温のガスは熱交換器やSO3クーラに送られた後、吸収塔へ導入され、吸収塔を出た低温のガスは再度熱交換器を通り、第3層に入るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、転化器の各層のガスのSO2濃度を測定することについては検討されていなかった。本発明者らは、転化器の各層の入口及び出口中のガスのSO2濃度を測定することにより、転化器の各層におけるSO2転化率の計算を行うことを考えた。SO2転化率を計算することで、例えば、触媒反応の最適温度評価等を行うことができる。しかしながら、転化器の各層を出たガスはSO3を含むガスであるため、SO2濃度測定精度に対するSO3による影響が懸念される。なお、転化器から出たガス以外のSO3を含むガスのSO2濃度を測定する場合であっても、同様の点が懸念される。
【0006】
本明細書に記載の測定システムは、三酸化硫黄を含む測定対象ガスの二酸化硫黄濃度の測定を精度よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載の測定システムは、三酸化硫黄を含む測定対象ガスの二酸化硫黄濃度を測定する測定システムであって、前記測定対象ガスから前記三酸化硫黄を除去する除去装置と、前記除去装置を経たガスの二酸化硫黄濃度を測定する測定装置と、を備える。
【0008】
また、本明細書に記載の製造条件評価方法は、銅製錬工程で発生する排ガスから硫酸を製造する際の製造条件を評価する製造条件評価方法であって、前記測定システムを用いて、前記排ガスに含まれる二酸化硫黄を三酸化硫黄に転化させるための転化触媒層を有する転化器から排出されるガスの二酸化硫黄濃度を測定し、前記測定した二酸化硫黄濃度から二酸化硫黄の転化率を算出し、前記算出した転化率に基づいて前記製造条件を評価する。
【0009】
また、本明細書に記載の硫酸製造方法は、前記製造条件評価方法により評価した製造条件で、銅製錬工程で発生する排ガスから硫酸を製造する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書に記載の測定システムは、三酸化硫黄を含む測定対象ガスの二酸化硫黄濃度の測定を精度よく行うことができるという効果を奏する。また、本明細書に記載の製造条件評価方法は、硫酸を製造する際の製造条件を評価することができる。また、本明細書に記載の硫酸製造方法は、好適な製造条件で硫酸を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る測定システムが利用される硫酸の製造工程を示す図である。
【
図3】濃硫酸トラップのガス洗浄瓶について説明するための図である。
【
図5】プレコンバータのSO
2負荷と転化率の相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について詳細に説明する。
図1には、一実施形態に係る銅製錬工場で実施される、銅製錬工程で発生するSO
2を含む排ガスを利用して硫酸を製造する工程が示されている。
【0013】
銅製錬工程で発生するSO
2を含む排ガスは除塵・洗浄・冷却された後、硫酸製造工程に導入される。硫酸製造工程では、
図1に示すように、乾燥塔101で排ガス中の残存水分が循環濃硫酸により除去され、第1熱交換器(1HE)103a、第2熱交換器(2HE)103b、第3熱交換器(3HE)103cを介して昇温された後、転化器110に導入される。転化器110内には触媒が充填されており、SO
2はSO
3へと転化されるが、この際に多量の熱が発生する。この熱は熱交換器103a~103cを介して低温側の排ガスの昇温に用いられる。そして、温度の低下したSO
3とSO
2の混合ガスは、第1吸収塔121に導入される。第1吸収塔121では循環濃硫酸との直接接触によりガス中のSO
3が濃硫酸に吸収され、ガス顕熱も濃硫酸側へ移行する。そして、未反応のSO
2は昇温された後、再び転化器110に導入され、転化されたSO
3は第2吸収塔122で循環濃硫酸に吸収され、製品となる(貯蔵タンクに貯蔵される)。一方、循環濃硫酸で吸収されなかったガスは、煙突130から排出される。なお、乾燥塔101、第1吸収塔121及び第2吸収塔122で回収された熱は酸クーラ105、125、126にて循環濃硫酸と工業用水との熱交換により、系外にカットされている。
【0014】
硫酸製造工程では、SO3の生成熱、SO3の吸収熱が多量に発生し、循環酸と工業用水との熱交換により系外カットしているが、発生した余剰熱は以下の方法によって回収を行っている。すなわち、転化器110の第2層を出た高温のガスは、第4熱交換器(4HE)103dを通り、第1吸収塔121へ導入される。第1吸収塔121を出た低温のガスは再び第4熱交換器103dを通り、第2層からの出口ガスと熱交換して第3層に入る。また、第4熱交換器103dと並列に熱交換器(SO3クーラ)103eが設置されており、余剰熱にて大気中の空気を昇温し、鉱石乾燥用の空気に使用することで製錬工程の重油使用量削減を図っている。
【0015】
銅製錬の原料となる銅精鉱に含まれる銅の品位は年々低下する傾向にある一方で、硫黄の品位は上昇する傾向にある。硫黄の品位が上昇すると既存設備における硫酸生産能力を超えて排出される排ガスに含まれるSO2の量が増加することから触媒を充填したプレコンバータ111を新たに設置して、負荷増分を転化させるとともに、その反応余剰熱を硫酸プレコンボイラ(廃熱ボイラ)140で回収する。硫酸プレコンボイラ140で発生した高圧蒸気は飽和蒸気タービンによる発電用に用いられるため、買電電力の削減を図ることができる。
【0016】
本実施形態においては、転化器110の触媒劣化傾向を監視するため、
図2に示すように、転化器110の第2層を出たガスのSO
2濃度を測定するための測定システム200が用いられる。なお、以下では、転化器110の第2層を出たガスのSO
2濃度を測定する例を説明するが、転化器110の他の層のガスのSO
2濃度についても、本測定システム200を用いて測定することができる。
【0017】
図2の測定システム200は、転化器110と第4熱交換器(4HE)103d及び熱交換器(SO
3クーラ)103eとを繋ぐ管路202から分岐した分岐管路204に接続されている。この測定システム200は、除去装置としてのSO
3除去装置210と、測定装置としてのSO
2濃度測定装置250と、を備える。なお、SO
3除去装置210は、SO
2濃度測定装置250の前段に設けられており、SO
3除去装置210の前段には、手動ボール弁206が設けられている。
【0018】
SO
3除去装置210は、濃硫酸トラップ214、ドレンポット(空瓶)216、ミストキャッチャ218、を有し、測定対象のガス(転化器110の第2層を出たガス)に含まれるSO
3を除去する。
図2に示すように、手動ボール弁206、濃硫酸トラップ214、ドレンポット216、ミストキャッチャ218、SO
2濃度測定装置250の間は、配管(チューブ)により接続されている。これらの配管(チューブ)の材料としては、測定対象のガスと反応しない材料(例えばテフロン(登録商標、以下同じ))を用いることとしている。例えば、配管の材料として塩化ビニルを用いると、測定対象のガスと反応し、炭化水素系のガスが発生し、SO
2濃度の測定結果に影響が出るおそれがあるが、本実施形態のように材料選択を行うことで、炭化水素系のガスによるSO
2濃度測定精度への影響を低減することができる。
【0019】
濃硫酸トラップ214は、濃硫酸を収容するガス洗浄瓶を有し、測定対象のガスに含まれるSO
3や水分を吸収する機能を有する。ここで、濃硫酸トラップ214のガス洗浄瓶内の濃硫酸は、測定対象のガスからSO
3や水分を吸収することにより容積が次第に増加する。本実施形態では、
図3に示すように、ガス洗浄瓶には、循環ライン222の一端側の第1管路220と他端側の第2管路224が設けられている。第1管路220の一端部(開口)は、ガス洗浄瓶の所定高さに位置決めされており、所定高さを超える濃硫酸は、第1管路220を介して循環ライン222に導かれる。なお、循環ライン222は、実際には、第2吸収塔ポンプタンク(P/T)であるものとする。循環ライン222を経由した濃硫酸は、第2管路224を介してガス洗浄瓶に戻される。これにより、ガス洗浄瓶内の濃硫酸の容積が一定に維持されるので、濃硫酸がガス洗浄瓶からオーバーフローするのを防止することができる。このように、本実施形態では、第1管路220、循環ライン222、及び第2管路224を含んで、濃硫酸トラップ214のガス洗浄瓶に含まれる濃硫酸の容積を一定に維持する容積維持手段が構成されている。
【0020】
図4には、SO
3除去装置210の後段に配置されたSO
2濃度測定装置250の具体的な構成が示されている。
図4に示すように、SO
2濃度測定装置250では、ガス入口から導入されたSO
3除去装置210を経たガスが、ニードル弁252、セパレータ254、ミストフィルタ256、ポンプ258、ニードル弁260、電磁弁262、フィルタ(ミストフィルタ)264を経て、分析計266に導入される。分析計266では、ガスに含まれるSO
2の濃度が測定される。
【0021】
ここで、分析計266に導入されるガスの流量が管理範囲(例えば0.5~1.5L/min)を外れないようにするため、本実施形態では、
図4に示すように、ニードル弁252と、セパレータ254との間に、バイパスライン270を設けている。このようにバイパスライン270を設けることにより、分析計266入口の圧力を一定に維持することができ、分析計266に入るガスの流量を安定させることができる。
【0022】
また、本実施形態では、分析計266の出口側にポット280を設け、その後段にポンプ282を設けている。このように分析計266の出口側にポンプ282を設けることで、分析計266の出口側の圧力が変動しても、分析計266から出てくるガスの流量を安定化させることができる。
【0023】
更に、本実施形態では、SO2濃度測定装置250の電磁弁262、ニードル弁252、フィルタ264に含まれる塩化ビニル製の部品を、SUS、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PFA(Perfluoroalkoxy alkane)などの部品に変更している。これにより、SO3除去装置210においてSO3と水を完全に除去できない場合であっても、各部品の腐食を抑制し、SO2濃度測定装置250の故障の発生を低減することができる。
【0024】
上記のSO2濃度測定装置250を用いることで、転化器110の各層の出口中のガスのSO2濃度を測定することができる。また、転化器110の各層の入口中のガスのSO2濃度についても、上記のSO2濃度測定装置250を用いて測定することができる。
【0025】
転化器110の各層の入口及び出口中のガスのSO2濃度から、転化器110の各層におけるSO2転化率を計算することができる。この転化器110の各層におけるSO2転化率に着目することで、硫酸製造工程における製造条件の評価を行うことが可能となる。
上記のSO2濃度測定装置250を用いなければ、転化器110の出口及び入り口のSO3を含有するガス中のSO2濃度測定が困難であるため、従来では、触媒層出入口温度差および過去の経験から管理温度を設定していた。これに対して、上記のSO2濃度測定装置250を用いて測定を行うことで、転化器110の各層におけるSO2転化率を算出することができ、算出したSO2転化率から管理温度の評価を行うことができる。
【0026】
図5は、プレコンバータ111のSO
2負荷と転化率の相関を示すグラフである。ここでは、操業温度407℃に加えて、操業温度を410℃、412℃と変更している。各条件において、上記のSO
2濃度測定装置250を用いて転化器110の各層の入口及び出口中のガスのSO
2濃度を測定し、SO
2転化率を算出した。
【0027】
SO2転化率に着目することにより、プレコンバータ操業における操業温度を評価できる。この例では、410℃において最も良好な転化率が得られていることから、410℃が好ましい操業温度となる。
【0028】
以上の評価方法により、好適な操業条件(製造条件)を特定することができる。この特定した操業条件(製造条件)で硫酸を製造することで、製造効率の良い硫酸製造が可能となる。
【0029】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、SO3を含む測定対象のガスのSO2濃度を測定する測定システム200が、SO2除去装置210と、SO2濃度測定装置250と、を備えている。これにより、本実施形態では、測定対象のガスにSO3が含まれていても、SO2濃度測定装置250によるSO2濃度測定の前段階で、測定対象のガスからSO3を除去することができるので、SO2濃度の測定精度に対するSO3の影響を低減することができ、高精度でSO2濃度測定を行うことができる。
【0030】
また、本実施形態では、銅製錬工程で発生する排ガスに含まれるSO2をSO3に転化させるための触媒層を有する転化器110から排出されるガスが、測定対象のガスとなっている。このようなSO3を含むガスを測定対象としても、本実施形態のような測定システム200を用いることで、精度よくSO2濃度を測定することが可能である。
【0031】
また、本実施形態では、SO3除去装置210に設置される配管(チューブ)の材料として、測定対象のガスと反応しない材料(例えば、テフロン)を採用している。これにより、配管が測定対象のガスと反応し、炭化水素系のガスが発生するのを防止することができるので、炭化水素系のガスによりSO2濃度の測定精度が低下するのを抑制することができる。測定対象のガスと反応しない材料としては、テフロン以外の材料を用いることとしてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、
図3の第1管路220、循環ライン222、及び第2管路224(容積維持手段)により、SO
3除去装置210が有する濃硫酸トラップ214のガス洗浄瓶内の濃硫酸の容積を一定に維持している。これにより、濃硫酸がSO
3や水分を吸収して容積が増加しても、ガス洗浄瓶から濃硫酸がオーバーフローするのを防止することができる。
【0033】
また、本実施形態では、SO2濃度測定装置250の部品(例えば、電磁弁、ニードル弁、ミストフィルタ)の材料として、測定対象のガスと反応しない材料(例えば、SUS、PTFE、PFA)を採用している。これにより、部品の腐食が抑制されるので、SO2濃度測定装置250の故障発生を低減することができる。なお、測定対象のガスと反応しない材料を用いる部品は、上記部品に限られるものではない。
【0034】
また、本実施形態では、SO2濃度測定装置250に導入されたガスを分析計266に送る流路の、ニードル弁252とセパレータ254の間に、バイパスライン270が設けられている。これにより、分析計266入口の圧力を一定に維持することができ、分析計266に入るガスの流量を安定させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、SO2濃度測定装置250の出口側にポンプ282を設けている。これにより、分析計266の出口側の圧力が変動しても、分析計266から出てくるガスの流量を安定化させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、測定システム200を用いて、銅製錬工程で発生する排ガスに含まれるSO2をSO3に転化させるための転化触媒層を有する転化器110から排出されるガスのSO2濃度を測定し、測定したSO2濃度からSO2転化率を算出し、算出したSO2転化率に基づいて製造条件を評価する。これにより、硫酸を製造する際の製造条件を適切に評価することができる。
【0037】
また、本実施形態では、算出したSO2転化率に基づいて操業温度を評価するので、硫酸製造時の操業温度を適切に評価することができる。
【0038】
また、本実施形態では、上記のように適切に評価した結果に基づいて、製造条件を設定することで、好適な製造条件で硫酸を製造することができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、硫酸製造工程で用いられる転化器の各層から出たガスを測定対象のガスとする場合について説明したが、これに限らず、転化器から出るガス以外のガス(SO3を含むガス)を測定対象のガスとしてもよい。
【0040】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0041】
110 転化器
200 測定システム
210 SO3除去装置(除去装置)
214 濃硫酸トラップ
220 第1管路(容積維持手段の一部)
222 循環ライン(容積維持手段の一部)
224 第2管路(容積維持手段の一部)
250 SO2濃度測定装置(測定装置)
252 ニードル弁
262 電磁弁
264 フィルタ(ミストフィルタ)
270 バイパスライン
282 ポンプ