(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182320
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
G02F1/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089824
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】本谷 将之
(72)【発明者】
【氏名】岡橋 宏佑
(72)【発明者】
【氏名】片岡 優
(72)【発明者】
【氏名】高野 真悟
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA22
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA11
2K102DA05
2K102DB04
2K102DB05
2K102DC08
2K102DD05
2K102EA02
2K102EA12
2K102EA14
2K102EA22
2K102EB10
2K102EB16
2K102EB30
(57)【要約】
【課題】光導波路素子において、作用電極に起因する光吸収損失を抑制しつつ、基板中を伝搬する不要光を効果的に除去すること。
【解決手段】基板と、基板に形成された光導波路と、光導波路を伝搬する光波を制御する作用電極と、を含む光導波路素子であって、作用電極は、第1材料からなる第1下地層と、第1下地層の上の第1導電層と、で構成され、基板上の領域のうち、光導波路の入力端から出力端までの経路以外の領域に、第1材料とは異なる第2材料からなる第2下地層と、第2下地層の上の第2導電層と、で構成される導体パターンが形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板に形成された光導波路と、前記光導波路を伝搬する光波を制御する作用電極と、を含む光導波路素子であって、
前記作用電極は、
第1材料からなる第1下地層と、
前記第1下地層の上の第1導電層と、
で構成され、
前記基板上の領域のうち、前記光導波路の入力端から出力端までの経路以外の領域に、前記第1材料とは異なる第2材料からなる第2下地層と、前記第2下地層の上の第2導電層と、で構成される導体パターンが形成されている、
光導波路素子。
【請求項2】
前記第2下地層と前記第2導電層とで構成される前記導体パターンは、前記基板上の領域のうち不要光が伝搬する領域に形成されている、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記第2材料は、前記光導波路を伝搬する光の波長における光吸収係数が、前記第1材料よりも大きい、
請求項1または2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記導体パターンは、前記作用電極に接続された配線電極から連続するパターンである、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記光導波路は、マッハツェンダ型光導波路を含み、
前記マッハツェンダ型光導波路の合波部には、合波されることなく前記マッハツェンダ型光導波路から漏れ出た放射光を伝搬させる放射光用導波路が形成されており、
前記導体パターンは、前記放射光用導波路の少なくとも一部を覆うように配されている、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記第1導電層および前記第2導電層は、金(Au)で構成されており、前記第1材料および前記第2材料は、ヨウ素と反応しない材料で構成されている、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項7】
前記第1材料はニオブ(Nb)であり、前記第2材料はチタン(Ti)である、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項8】
前記第1下地層の厚さは30nm以下であり、
前記第2下地層の厚さは100nm以上である、
請求項7に記載の光導波路素子。
【請求項9】
前記光導波路は、前記基板上に延在する凸部により構成される凸状光導波路である、
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項10】
前記光導波路を前記基板の面内において挟む2つの前記作用電極を有し、
2つの前記作用電極の間隔は、1.0μm以上、5.0μm以下である、
請求項9に記載の光導波路素子。
【請求項11】
前記作用電極は、前記第1導電層の上に、前記第1材料と異なる第3材料からなる第3下地層と、前記第3下地層の上の第3導電層とを有し、
前記光導波路の延伸方向に垂直な断面において、前記第3下地層の端部は、前記第3導電層に覆われている、
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項12】
前記第3材料はチタン(Ti)で構成され、
前記第3導電層は、金(Au)で構成されている、
請求項11に記載の光導波路素子。
【請求項13】
光の変調を行う光変調素子である請求項1ないし12のいずれか一項に記載の光導波路素子と、
前記光導波路素子を収容する筐体と、
前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、
前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、
を備える光変調器。
【請求項14】
光の変調を行う光変調素子である請求項1ないし12のいずれか一項に記載の光導波路素子と、
前記光導波路素子を収容する筐体と、
前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、
前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、
前記光導波路素子を駆動する駆動回路と、
を備える光変調モジュール。
【請求項15】
請求項13に記載の光変調器または請求項14に記載の光変調モジュールと、
前記光導波路素子に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、
を備える光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商用の光ファイバ通信システムでは、基板上に形成された光導波路と、光導波路に電界を作用させて光波を制御する作用電極と、で構成される光導波路素子としての光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO3(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調素子は、光の損失が少なく且つ高速な光変調特性を実現し得ることから、高速・大容量の基幹光伝送ネットワークやメトロネットワークの光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
そのような光変調素子の小型化、高速化、省電力化の一つの策として、基板中における信号電界と導波光との相互作用をより強めるべく(すなわち、電界効率を高めるべく)LN基板を薄膜化した光変調器や、LN基板の表面に帯状の凸部を形成することで構成されるリブ型光導波路またはリッジ型光導波路(以下、総称して凸状光導波路という)を用いた光変調器も実用化されつつある(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
また、最近では、光導波路に電界を与える作用電極の下地層を、動作光波長における光吸収係数がより小さい金属材料を用いて構成することも提案されている(特許文献3)。これにより、光導波路に近接して設けられた作用電極の下地層の金属により当該光導波路を伝搬する光が吸収されて光吸収損失が生じてしまうのを防止することができる。すなわち、この構成によれば、光導波路における光吸収損失を低減して、低損失の光導波路素子を実現することができる。
【0005】
一方で、光導波路素子の基板には、作用電極により制御されて光導波路から基板外へ出力される出力光に寄与しない、いわゆる不要光も伝搬し得る。例えば、光導波路における光入射部、分岐部、及び又は合流部から基板中に漏れ出た漏れ光は、不要光となって基板中を伝搬し得る。このような不要光は、基板上における光導波路のルートによっては、光導波路を伝搬する導波光と再び結合して上記出力光に雑音を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-264548号公報
【特許文献2】国際公開第2018/1031916号明細書
【特許文献3】特願2020-164627号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記背景より、光導波路素子において、作用電極に起因する光吸収損失を抑制しつつ、基板中を伝搬する不要光を効果的に除去し得る構造の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様によると、基板と、前記基板に形成された光導波路と、前記光導波路を伝搬する光波を制御する作用電極と、を含む光導波路素子であって、前記作用電極は、第1材料からなる第1下地層と、前記第1下地層の上の第1導電層と、で構成され、前記基板上の領域のうち、前記光導波路の入力端から出力端までの経路以外の領域に、前記第1材料とは異なる第2材料からなる第2下地層と、前記第2下地層の上の第2導電層と、で構成される導体パターンが形成されている。
本発明の他の態様によると、前記第2下地層と前記第2導電層とで構成される前記導体パターンは、前記基板上の領域のうち不要光が伝搬する領域に形成されている。
本発明の他の態様によると、前記第2材料は、前記光導波路を伝搬する光の波長における光吸収係数が、前記第1材料よりも大きい。
本発明の他の態様によると、前記導体パターンは、前記作用電極に接続された配線電極から連続するパターンである。
本発明の他の態様によると、前記光導波路は、マッハツェンダ型光導波路を含み、前記マッハツェンダ型光導波路の合波部には、合波されることなく前記マッハツェンダ型光導波路から漏れ出た放射光を伝搬させる放射光用導波路が形成されており、前記導体パターンは、前記放射光用導波路の少なくとも一部を覆うように配されている。
本発明の他の態様によると、前記第1導電層および前記第2導電層は、金(Au)で構成されており、前記第1材料および前記第2材料は、ヨウ素と反応しない材料で構成されている。
本発明の他の態様によると、前記第1材料はニオブ(Nb)であり、前記第2材料はチタン(Ti)である。
本発明の他の態様によると、前記第1下地層の厚さは30nm以下であり、前記第2下地層の厚さは100nm以上である。
本発明の他の態様によると、前記光導波路は、前記基板上に延在する凸部により構成される凸状光導波路である。
本発明の他の態様によると、前記光導波路を前記基板の面内において挟む2つの前記作用電極を有し、2つの前記作用電極の間隔は、1.0μm以上、5.0μm以下である。
本発明の他の態様によると、前記作用電極は、前記第1導電層の上に、前記第1材料と異なる第3材料からなる第3下地層と、前記第3下地層の上の第3導電層とを有し、前記光導波路の延伸方向に垂直な断面において、前記第3下地層の端部は、前記第3導電層に覆われている。
本発明の他の態様によると、前記第3材料はチタン(Ti)で構成され、前記第3導電層は、金(Au)で構成されている。
本発明の他の態様は、光の変調を行う光変調素子である上記いずれかの光導波路素子と、前記光導波路素子を収容する筐体と、前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、を備える光変調器である。
本発明の他の態様は、光の変調を行う光変調素子である上記いずれかの光導波路素子と、前記光導波路素子を収容する筐体と、前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、前記光導波路素子を駆動する駆動回路と、を備える光変調モジュールである。
本発明の更に他の態様は、前記光変調器または前記光変調モジュールと、前記光導波路素子に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、を備える光送信装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光導波路素子において、作用電極に起因する光吸収損失を抑制しつつ、基板中を伝搬する不要光を効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す光変調素子のII-II断面図である。
【
図3】
図1に示す光変調素子のIII-III断面図である。
【
図4】
図1に示す光変調素子のIV-IV断面図である。
【
図5】種々の金属を第1下地層とした場合の、第1下地層の厚さに対する光吸収損失増加量のシミュレーション結果である。
【
図6】第1の実施形態に係る光変調素子の変形例に係る、作用電極に隣接して設けられた導体パターンの一例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る光変調素子の変形例に係る、作用電極に隣接して設けられた導体パターンの他の一例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る光変調素子の変形例に係る、作用電極に隣接して設けられた導体パターンの他の一例を示す図である。
【
図9】第1の実施形態に係る光変調素子の変形例に係る、配線電極の構成の一例を示す図である。
【
図10】第1の実施形態に係る光変調素子の変形例に係る、配線電極の構成の他の一例を示す図である。
【
図11】第1の実施形態に係る光変調素子の変形例に係る、配線電極の構成の他の一例を示す図である。
【
図12】
図2に示す作用電極の変形例を示す図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態に係る光変調モジュールの構成を示す図である。
【
図15】本発明の第4の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光導波路素子である光変調素子100の構成を示す図である。光変調素子100は、基板102に形成された光導波路104で構成される。基板102は、例えば、20μm以下(例えば2μm)の厚さに加工され薄板化された、電気光学効果を有するXカットのLN基板である。光導波路104は、薄板化された基板102の表面に形成された帯状に延在する凸部で構成される凸状光導波路(例えば、リブ型光導波路又はリッジ型光導波路)である。
【0012】
基板102は、例えば矩形であり、図示上下方向に延在して対向する図示左右の2つの辺140a、140b、および図示左右方向に延在して対向する図示上下の辺140c、140dを有する。
【0013】
光変調素子100は、2つのネスト型マッハツェンダ型光導波路108a、108bによりDP-QPSK光変調器を構成する。ネスト型マッハツェンダ型光導波路108aは、2つのマッハツェンダ型光導波路110aおよび110bを含む。ネスト型マッハツェンダ型光導波路108bは、2つのマッハツェンダ型光導波路110cおよび110dを含む。
【0014】
マッハツェンダ型光導波路110aおよび110bは、それぞれ、2本の並行導波路112a、112bおよび112c、112dを有する。また、マッハツェンダ型光導波路110cおよび110dは、それぞれ、2本の並行導波路112e、112fおよび112g、112hを有する。
【0015】
基板102の図示左側の辺140aの図示下側において光導波路104の入力導波路106に入射した入力光(図示右方を向く矢印)は、光の伝搬方向が180度折り返された後、2つの光に分岐され、2つのネスト型マッハツェンダ型光導波路108a、108bにより、それぞれQPSK変調される。QPSK変調された2つの光は、それぞれ出力導波路126a、126bを介して基板102の図示左側の辺140aの図示上側から出力される(図示左方を向く2つの矢印)。入力導波路106の、光が入射される端部は信号光の入力端であり、出力導波路126a、126bの、光が出射する端部は信号光の出力端である。
【0016】
これら2つの出力光は、基板102から出射したのち、例えば、偏波合成器により偏波合成されて一つの光ビームにまとめられ、DP-QPSK変調された光信号として伝送用光ファイバへ送出される。
【0017】
ネスト型マッハツェンダ型光導波路108aにおけるQPSK変調のため、マッハツェンダ型光導波路110aの2本の並行導波路112aと112bとの間、およびマッハツェンダ型光導波路110bの2本の並行導波路112cと112dとの間には、それぞれ、変調のための高周波電気信号が入力される信号電極114-1aおよび114-1bが配されている。
【0018】
また、ネスト型マッハツェンダ型光導波路108bにおけるQPSK変調のため、マッハツェンダ型光導波路110cの2本の並行導波路112eと112fとの間、およびマッハツェンダ型光導波路110dの2本の並行導波路112gと112hとの間には、それぞれ、変調のための高周波電気信号が入力される信号電極114-1cおよび114-1dが配されている。
【0019】
信号電極114-1aは、並行導波路112aおよび112bのそれぞれを挟んで対向するグラウンド電極114-2a、114-2bと共にコプレーナ型伝送線路を構成し、信号電極114-1bは、並行導波路112cおよび112dのそれぞれを挟んで対向するグラウンド電極114-2b、114-2cと共にコプレーナ型伝送線路を構成する。
【0020】
信号電極114-1cは、並行導波路112eおよび112fのそれぞれを挟んで対向するグラウンド電極114-2c、114-2dと共にコプレーナ型伝送線路を構成し、信号電極114-1dは、並行導波路112eおよび112fのそれぞれを挟んで対向するグラウンド電極114-2d、114-2eと共にコプレーナ型伝送線路を構成する。
【0021】
以下、ネスト型マッハツェンダ型光導波路108a、108bを総称してネスト型マッハツェンダ型光導波路108ともいうものとする。また、マッハツェンダ型光導波路110a、110b、110c、110d、110e、110f、110g、110hを総称してマッハツェンダ型光導波路110ともいうものとする。また、並行導波路112a、112b、112c、112d、112e、112f、112g、112hを総称して並行導波路112ともいうものとする。また、信号電極114-1a、114-1b、114-1c、114-1dを総称して信号電極114-1ともいうものとする。また、グラウンド電極114-2a、114-2b、114-2c、114-2d、114-2eを総称してグラウンド電極114-2ともいうものとする。
【0022】
また、信号電極114-1およびグラウンド電極114-2を総称して作用電極114というものとする。作用電極114である信号電極114-1およびグラウンド電極114-2は、光導波路104を伝搬する光波を制御する。また、信号電極114-1とグラウンド電極114-2とは、光導波路104の並行導波路112を基板102の面内において挟む2つの作用電極114である。
【0023】
信号電極114-1a、114-1b、114-1c、114-1dの図示右端部は、信号配線電極118-1a、118-1b、118-1c、118-1dにそれぞれ接続されている。また、信号電極114-1a、114-1b、114-1c、114-1dの図示左端部は、信号配線電極118-1e、118-1f、118-1g、118-1hにそれぞれ接続されている。
【0024】
グラウンド電極114-2a、114-2b、114-2c、114-2d、114-2eの図示右端は、それぞれグラウンド配線電極118-2a、118-2b、118-2c、118-2d、118-2eに接続されている。これにより、信号配線電極118-1a、118-1b、118-1c、118-1dは、これらの信号配線電極に隣接するグラウンド配線電極118-2a、118-2b、118-2c、118-2d、118-2eと共に、コプレーナ型伝送線路を構成する。
【0025】
同様に、グラウンド電極114-2a、114-2b、114-2c、114-2d、114-2eの図示左端は、それぞれグラウンド配線電極118-2f、118-2g、118-2h、118-2i、118-2jに接続されている。これにより、信号配線電極118-1e、118-1f、118-1g、118-1hは、これらの信号配線電極に隣接するグラウンド配線電極118-2f、118-2g、118-2h、118-2i、118-2jと共に、コプレーナ型伝送線路を構成する。
【0026】
基板102の図示下側の辺140dまで延在する信号配線電極118-1e、118-1f、118-1g、118-1hは、基板102の外部において所定のインピーダンスを持つ終端抵抗により終端される。
【0027】
これにより、基板102の図示上側の辺140cまで延在する信号配線電極118-1a、118-1b、118-1c、118-1dから入力される高周波電気信号は、進行波となって信号電極114-1a、114-1b、114-1c、114-1dを伝搬し、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路110a、110b、110c、110dを伝搬する光波を変調する。
【0028】
以下、信号配線電極118-1a、118-1b、118-1c、118-1d、118-1e、118-1f、118-1g、118-1hを総称して信号配線電極118-1ともいうものとする。また、グラウンド配線電極118-2a、118-2b、118-2c、118-2d、118-2e、118-2f、118-2g、118-2h、118-2i、118-2jを総称してグラウンド配線電極118-2ともいうものとする。また、信号配線電極118-1およびグラウンド配線電極118-2を総称して、配線電極118ともいうものとする。すなわち、信号配線電極118-1およびグラウンド配線電極118-2は、作用電極114に接続された配線電極118である。
【0029】
基板102には、また、マッハツェンダ型光導波路110a、110bのバイアス点を調整するためのバイアス電極132aと、マッハツェンダ型光導波路110c、110dのバイアス点を調整するためのバイアス電極132bと、ネスト型マッハツェンダ型光導波路108a、108bのバイアス点を調整するためのバイアス電極132cが設けられている。
【0030】
また、ネスト型マッハツェンダ型光導波路108a、108bの合波部128a、128bには、合波されることなくネスト型マッハツェンダ型光導波路108a、108bから漏れ出る放射光を伝搬させるための、それぞれ2つの放射光用導波路130a、130bおよび130c、130dが設けられている。同様に、マッハツェンダ型光導波路110a、110bの合波部128c、128dには、それぞれ2つの放射光用導波路130e、130fおよび130g、130hが、設けられている。また、マッハツェンダ型光導波路110c、110dの合波部128e、128fには、それぞれ2つの放射光用導波路130i、130jおよび130k、130mが設けられている。なお、このような放射光用導波路の構成及び機能については、例えば特許第4745432号公報において開示されている。以下、合波部128a、128b、128c、128d、128e、128fを総称して合波部128ともいうものとする。また、放射光用導波路130a、130b、130c、130d、130e、130f、130g、130h、130i、130j、130k、130mを総称して、放射光用導波路130ともいうものとする。
【0031】
図2は、
図1に示す光変調素子100のII-II断面矢視図であり、マッハツェンダ型光導波路110aの作用部(作用電極により光波が制御される部分)における基板102の断面を示す図である。
【0032】
基板102は、その裏面(図示下側の面)が支持板142により支持され補強されている。支持板142は、例えばガラスである。基板102の図示上面には、並行導波路112aおよび112bが、それぞれ、基板102上に形成された凸部144aおよび144bにより、凸状光導波路として構成されている。なお、図示2つの点線楕円は、それぞれ、凸状光導波路である並行導波路112aおよび112bを伝搬する光を模式的に示している。以下、凸部144a、144bを含め、光導波路104を構成する基板102上の凸部を総称して凸部144ともいうものとする。
【0033】
基板102の面内において並行導波路112aおよび112bを挟む信号電極114-1aおよびグラウンド電極114-2a、114-2bは、それぞれ、第1材料からなる第1下地層160a、160b、160cと、これらの第1下地層160a、160b、160cの上に形成された第1導電層162a、162b、162cとで構成されている。本実施形態では、第1導電層162a、162b、162cは金(Au)で構成される。また、第1下地層160a、160b、160cを構成する第1材料は、本実施形態では、例えばニオブ(Nb)である。ニオブは、電極の下地層材料として従来より一般に用いられているチタンに比べて、光変調素子100の動作光波長(例えば、光通信用波長である1.3μm帯及び又は1.55μm帯)における光吸収係数が小さい。
【0034】
このため、信号電極114-1aおよびグラウンド電極114-2a、114-2bを、並行導波路112a、112bに対し、従来に比べてより近接して形成することができる。その結果、光変調素子100では、並行導波路112a、112bに効率的に電界を発生させることができ(すなわち、電界効率を高めることができ)、従来に比べて駆動電圧が小さく、且つ高速な、光変調動作を実現し得る。例えば、本実施形態では、並行導波路112aを挟む2つの作用電極である信号電極114-1aとグラウンド電極114-2aとの間隔Wは、1.0μm以上、5.0μm以下である。
【0035】
信号電極114-1a以外の他の信号電極114-1b、114-1c、114-1d、およびグラウンド電極114-2a、114-2b以外のグラウンド電極114-2c、114-2d、114-2eも、上記の信号電極114-1aおよびグラウンド電極114-2a、114-2bと同様に構成される。以下、信号電極114-1およびグラウンド電極114-2の第1下地層および第1導電層のそれぞれを総称して、第1下地層160および第1導電層162ともいうものとする。
【0036】
本実施形態に係る光変調素子100では、特に、基板102上の領域のうち、不要光が伝搬する領域に、上記第1材料とは異なる第2材料からなる第2下地層と、当該第2下地層の上の第2導電層と、で構成される導体パターンが形成されている。ここで、不要光とは、信号電極114-1により制御されて光導波路104から基板102の外部へ出力される出力光(例えば、出力信号光)に寄与しない光をいう。
【0037】
不要光が伝搬する上記領域の一つの例は、不要な放射光が伝搬する放射光用導波路130が形成された領域である。
図1に示す光変調素子100では、放射光用導波路130a、130d、130e、130mが形成された基板102上の領域に、これらの放射光用導波路のそれぞれの少なくとも一部を覆うように、導体パターン150a、150b、150c、150dが形成されている。
【0038】
図3は、
図1におけるIII-III断面矢視図であり、放射光用導波路130dが形成された部分の断面図である。基板102上には、放射光用導波路130dを覆うように、導体パターン150bが形成されている。この導体パターン150bは、上述した第1材料とは異なる第2材料からなる第2下地層164aと、第2下地層164aの上の第2導電層166aと、で構成される。
【0039】
本実施形態では、第2導電層166aは、金(Au)で構成される。第2下地層164aを構成する第2材料は、光変調素子100の動作光波長における光吸収係数が第1材料よりも大きいことが望ましい。本実施形態では、第2材料は、チタンである。
【0040】
図1において放射光用導波路130a、130e、および130mをそれぞれ覆うように形成されている導体パターン150a、150c、および150dも、上述した
図4に示す導体パターン150bと同様に構成される。
【0041】
基板102上において不要光が伝搬する領域の他の例は、
図1において基板102の外部から光導波路104に光が入射する光入射部170(すなわち、図示左側の辺140aのうち入力導波路106の端部が形成された部分)に隣接する、図示点線矩形で囲まれた矩形領域172である。
図1に示す光変調素子100では、入力導波路106を避けて矩形領域172と重なるように、導体パターン150eおよび150fが形成されている。
【0042】
図4は、
図1に示す光変調素子100のIV-IV断面矢視図である。
図3に示す導体パターン150bと同様に、導体パターン150eは、基板102上に形成された第2材料からなる第2下地層164b、第2下地層164b上の第2導電層166bと、で構成されている。また上述した導体パターン150bと同様に、第2導電層166bを構成する材料は金であり、第2下地層164bを構成する第2材料はチタンである。
【0043】
なお、
図1に示す矩形領域172の、光の入射方向に対し直交する方向の幅Wrは、例えば、入射する光が、レンズにより集光された光であるとき、または光ファイバから直接入射する光であるきは、それぞれ、当該レンズまたは光ファイバのNA(開口数)に応じた幅とすることができる。また、矩形領域172の、光の入射方向に沿った長さLrは、例えば、光入射部170から基板102内に入射し得る不要光の強度に応じた長さとすることができる。
【0044】
以下、導体パターン150a、150b、150c、150d、150e、および150fを総称して導体パターン150ともいうものとする。また、導体パターン150のそれぞれの第2下地層および第2導電層のそれぞれを総称して、第2下地層164および第2導電層166ともいうものとする。
【0045】
上記の構成を有する光変調素子100は、並行導波路112を伝搬する光波を制御する作用電極114と、基板102のうち不要光が伝搬する領域に設けられた導体パターン150と、を有する。そして、導体パターン150を構成する第2下地層164は、並行導波路112に近接して配置する必要のある作用電極114の第1下地層160を構成する第1材料よりも、動作光波長における光吸収係数の大きい第2材料で構成されている。
【0046】
これにより、光変調素子100では、並行導波路112において作用電極114に起因して生じ得る光吸収損失を抑制しつつ、基板102中を伝搬する不要光を効果的に除去することができる。その結果、光変調素子100では、従来に比べてより低電圧駆動が可能であって且つ消光比等の光特性の良好な変調動作を実現することができる。なお、第2下地層164の厚さは、不要光を効果的に吸収する観点から、100nm以上であることが望ましい。
【0047】
なお、第1下地層160を構成する材料は、ニオブに限らず、従来用いられているチタンに比べて動作光波長における光吸収係数の小さい材料であれば、作用電極114を並行導波路112に近接させて光変調素子100の電界効率を従来の光変調素子に比べて向上することが可能となる。
図5は、種々の金属により第1下地層160を構成した場合の、第1下地層160の厚さに対する並行導波路112における光吸収損失増加量のシミュレーション結果である。
図5には、第1下地層160を用いない場合(Au単膜(第1導電層162のみ)の場合)に加えて、第1下地層160の材料としてTi、Al(アルミニウム)、及びNbを用いた場合の計算結果が示されている。
【0048】
図5において、横軸は、第1下地層160の厚さt、縦軸は、その第1下地層160に隣接する並行導波路112の単位長さ(1cm)当たりの光吸収損失量である。シミュレーションでは、第1導電層162としてAuを仮定し、動作光波長として1.55μmを仮定した。また、光吸収損失の算出に際し、Ti、Al、及びNbの光吸収スペクトルから得られる各金属の動作波長1.55μmでの光吸収量を用いた。
【0049】
ライン200で示すAu単膜の(下地層が存在しない)場合の光吸収損失α0は、上記構成におけるバックグラウンドとしての光吸収損失であり、この基準ラインからの光吸収損失の増加分として、第1下地層160における光吸収損失を評価し得る。
【0050】
ライン202、204、及び206は、それぞれ、第1下地層160を構成する金属をTi、Al、及びNbで構成した場合の光吸収損失を示している。これらの金属においては、ライン202で示すTiが最も光吸収損失が大きく、その膜厚と共に光吸収損失が大きく増加していく。
【0051】
一方、動作波光長を光吸収域に含まないAl及びNbを第1下地層160とした場合を示すライン204、206は、Tiの場合(ライン202)に比べて光吸収損失が大幅に軽減されることが判る。
図5に示す評価結果の範囲では、第1下地層160がAlの場合(ライン204)において最も光吸収損失が小さく、且つ下地層の厚さに対して光吸収損失はほぼ一定である。しかしながら、Alは、一般的には基板への固着強度は低いことが知られている。
【0052】
図5のライン206及び200より、Nbで構成される第1下地層160の厚さは、30nm以下であることが望ましい。Nbの下地層の厚さがこの範囲であれば、光吸収損失を、Au単膜での値α
0に対し2倍の2α
0以下、または従来のTiを用いた第1下地層160の場合の値、約6α
0に対し、1/3以下の値に抑制することができる。
【0053】
なお、第1導電層162および第2導電層166を金で構成する場合、光変調素子100の製造過程において、これらの導電層をパターンニングするためのエッチング液としてヨウ素又はヨウ化物を含むエッチング液を用いる場合があり得る。したがって、このような場合には、第1下地層160を構成する第1材料および第2下地層164を構成する第2材料には、ヨウ素に対し耐性の低いAl等の材料を用いず、ヨウ素と反応しない材料(例えばNb)を用いることが好ましい。
【0054】
なお、不要光用除去のための放射光用導波路130はモニタ用光導波路として用いることがあるが、この場合は、もちろん、モニタ用導波路の端部も信号光の出力端である。
【0055】
<変形例>
上述した光変調素子100では、不要光除去のための放射光用導波路の一部を覆うように、第2下地層164および第2導電層166を有する導体パターン150が形成されるものとした。ただし、導体パターン150の形成箇所は、上記には限られない。例えば、基板102上の領域のうち、光導波路104の信号光の入力端から出力端までの経路以外の領域に、第1材料とは異なる第2材料からなる第2下地層164と、第2下地層164の上の第2導電層166と、で構成される導体パターン150が形成されていてもよい。
【0056】
上記の構成において、導体パターン150は、基板102のうち光導波路104に隣接する領域において、以下のように構成されているものとすることができる。
【0057】
例えば、導体パターン150は、作用電極114に隣接して設けられていてもよい。一例として、光変調素子100は、
図1におけるII-II断面において、
図6に示すような構成を有するものとすることができる。
図6は、上述した
図2に相当するII-II断面図である。
【0058】
図6において、作用電極を構成する信号電極114-1aは、並行導波路112aおよび112bにそれぞれ隣接する2つの部分に分割して形成され、2つの信号電極114-1aに挟まれた導体パターン150gと、で構成され得る。言い換えると、作用電極114は、並行導波路112に隣接して設けられ、作用電極114のうち、並行導波路112に隣接する側面と対向する側面に接するように導体パターン150gが形成されている。
【0059】
同様に、作用電極114を構成するグラウンド電極114-2aおよび114-2bは、それぞれ、並行導波路112aおよび112bに隣接して形成され、グラウンド電極114-2aおよび114-2bの側面のうち並行導波路112aおよび112bに隣接する側面と対向する側面に接するように導体パターン150h-1および150h-2が形成されている。
【0060】
ここで、導体パターン150gは、第2下地層164cと、第2導電層166cとで構成されている。また、導体パターン150h-1は、第2下地層164d-1および第2導電層166d-1で構成され、導体パターン150h-2は、第2下地層164d-2および第2導電層166d-2で構成されている。
【0061】
導体パターン150が光導波路104の入力端から出力端までの経路以外の領域に設けられる他の例として、光変調素子100は、
図1におけるII-II断面において、
図7に示すような構成を有するものとすることができる。
図7は、上述した
図2に相当するII-II断面図であり、上述した
図6の構成において第2下地層164が隣接する作用電極114の内部にまで延在して設けられる例である。
【0062】
具体的には、第2下地層164cは、隣接する2つの信号電極114-1aの第1下地層160a-1と第1導電層162a-1との間まで延在している。また、第2下地層164d-1は、隣接するグラウンド電極114-2aの第1下地層160bと第1導電層162bとの間まで延在している。同様に、第2下地層164d-2は、隣接するグラウンド電極114-2bの第1下地層160b-2と第1導電層162b-2との間まで延在している。
【0063】
導体パターン150が光導波路104の入力端から出力端までの経路以外の領域に設けられる更に他の例として、光変調素子100は、
図1におけるII-II断面において、
図8に示すような構成を有するものとすることができる。
図8は、上述した
図2に相当するII-II断面図であり、上述した
図6の構成において第1下地層160が隣接する導体パターン150の内部にまで延在して設けられる例である。
なお、
図6、
図7、および
図8においては第1導電層162と第2導電層166をそれぞれ分けて記載したが、それぞれの材料はお互いに異なる材料としてもよいし同じ材料としてもよい。特に同じ材料とする場合は第1導電層162と第2導電層166を同一のプロセスで形成することでプロセスの効率化を図ることができる。
【0064】
具体的には、第1下地層160a-1は、隣接する2つの導体パターン150gの第2下地層164cと第2導電層166cとの間まで延在している。また、第1下地層160bは、隣接する導体パターン150h-1の第2下地層164d-1と第2導電層166d-1との間まで延在している。同様に、第1下地層160cは、隣接する導体パターン150h-2の第2下地層164d-2と第2導電層166d-2との間まで延在している。
【0065】
上記のような変形例の構成においては、配線電極118は、光導波路104と交差する部分以外の部分において、第1下地層160に代えて第2下地層164を有するものとすることができる。例えば、配線電極118は、少なくとも光導波路104と交差する部分においては、光導波路104に接するように第1下地層160が形成され、他の部分においては第2下地層164を含むものとすることができる。
【0066】
一例として、光変調素子100は、
図1におけるグラウンド配線電極118-2fと入力導波路106との交差部において、
図9のように構成されるものとすることができる。
図9は、グラウンド配線電極118-2fと入力導波路106との交差部の、入力導波路106の延在方向と直交する面に沿った断面図である。
図9の構成では、グラウンド配線電極118-2fは、例えば、入力導波路106との交差部においては、第1下地層160dと第1導電層162dとで構成され、上記交差部以外の部分においては、第2下地層164eと第1導電層162dとで構成される。上記の構成において、入力導波路106の中心から第2下地層164eの端部までの距離Dは、第2下地層164eによる光吸収損失を抑制すべく、入力導波路106における光のモードフィールド径よりも大きいことが望ましい。
【0067】
他の一例として、グラウンド配線電極118-2fは、
図10のように構成されるものとすることができる。
図10は、
図9に示す構成において、第2下地層164eを、グラウンド配線電極118-2fと入力導波路106との交差部に設けられた第1下地層160dの上部まで延在させた例である。
【0068】
さらに他の一例として、グラウンド配線電極118-2fは、
図11のように構成されるものとすることができる。
図11は、
図9に示す構成において、第1下地層160dを、入力導波路106との交差部以外の部分の第2下地層164eの上部まで延在させた例である。
【0069】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、上述した光変調素子100を用いた光変調器である。
図13は、第2の実施形態に係る光変調器400の構成を示す図である。光変調器400は、筐体402と、当該筐体402内に収容された光変調素子100と、中継基板406と、を有する。筐体402は、最終的にはその開口部に板体であるカバー(不図示)が固定されて、その内部が気密封止される。
【0070】
光変調器400は、また、光変調素子100の変調に用いる高周波電気信号を入力するための信号ピン408と、光変調素子100の動作点の調整に用いる電気信号を入力するための信号ピン410と、を有する。
【0071】
さらに、光変調器400は、筐体402内に光を入力するための入力光ファイバ414と、光変調素子100により変調された光を筐体402の外部へ導く出力光ファイバ420と、を筐体402の同一面(本実施形態では、図示左側の面)に有する。
【0072】
ここで、入力光ファイバ414及び出力光ファイバ420は、固定部材であるサポート422及び424を介して筐体402にそれぞれ固定されている。入力光ファイバ414から入力された光は、サポート422内に配されたレンズ430によりコリメートされた後、レンズ434を介して光変調素子100へ入力される。ただし、これは一例であって、光変調素子100への光の入力は、従来技術に従い、例えば、入力光ファイバ414を、サポート422を介して筐体402内に導入し、当該導入した入力光ファイバ414の端面を光変調素子100の基板102の端面に接続することで行うものとすることもできる。
【0073】
光変調素子100から出力される光は、光学ユニット416と、サポート424に配されたレンズ418と、を介して出力光ファイバ420に結合される。光学ユニット416は、光変調素子100から出力される2つの変調光を一つのビームに結合する偏波合成器を含み得る。
【0074】
中継基板406は、当該中継基板406に形成された導体パターン(不図示)により、信号ピン408から入力される高周波電気信号および信号ピン410から入力される動作点(バイアス点)調整用等の電気信号を、光変調素子100へ中継する。中継基板406上の上記導体パターンは、例えばワイヤボンディング等により、光変調素子100の配線電極118の一端にそれぞれ接続される。また、光変調器400は、所定のインピーダンスを有する終端器412を筐体402内に備える。
【0075】
上記の構成を有する光変調器400は、上述した第1の実施形態に係る光変調素子100を用いて構成されるので、従来に比べてより低電圧駆動が可能であって且つ消光比等の光特性の良好な変調動作を実現することができる。
【0076】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、上述した第1の実施形態に係る光変調素子100を用いた光変調モジュール500である。
図14は、本実施形態に係る光変調モジュール500の構成を示す図である。
図14において、
図13に示す第2の実施形態に係る光変調器400と同一の構成要素については、
図13に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図13についての説明を援用する。
【0077】
光変調モジュール500は、
図13に示す光変調器400と同様の構成を有するが、中継基板406に代えて、回路基板506を備える点が、光変調器400と異なる。回路基板506は、駆動回路508を備える。駆動回路508は、信号ピン408を介して外部から供給される例えば変調信号に基づいて、光変調素子100を駆動する高周波電気信号を生成し、当該生成した高周波電気信号を光変調素子100へ出力する。
【0078】
上記の構成を有する光変調モジュール500は、上述した第1の実施形態に係る光変調素子100を用いて構成されるので、従来に比べてより低電圧駆動が可能であって且つ消光比等の光特性の良好な変調動作を実現することができる。
【0079】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態は、第2の実施形態に係る光変調器400を搭載した光送信装置600である。
図15は、本実施形態に係る光送信装置600の構成を示す図である。この光送信装置600は、光変調器400と、光変調器400に光を入射する光源604と、変調器駆動部606と、変調信号生成部608と、を有する。なお、光変調器400及び変調器駆動部606に代えて、上述した光変調モジュール500を用いることもできる。
【0080】
変調信号生成部608は、光変調器400に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路であり、外部から与えられる送信データに基づき、光変調器400に当該変調データに従った光変調動作を行わせるための高周波信号である変調信号を生成して、変調器駆動部606へ出力する。
【0081】
変調器駆動部606は、変調信号生成部608から入力される変調信号を増幅して、光変調器400が備える光変調素子100の信号電極を駆動するための高周波電気信号を出力する。尚、上述したように、光変調器400および変調器駆動部606に代えて、例えば変調器駆動部606に相当する回路を含む駆動回路508を筐体402の内部に備えた、光変調モジュール500を用いることもできる。
【0082】
上記高周波電気信号は、光変調器400の信号ピン408に入力されて、光変調素子100を駆動する。これにより、光源604から出力された光は、光変調器400により変調され、変調光となって光送信装置600から出力される。
【0083】
上記の構成を有する光送信装置600は、光変調素子100を用いているので、上述した第2の実施形態に係る光変調器400および第3の実施形態に係る光変調モジュール500と同様に、従来に比べてより低電圧駆動が可能であって且つ消光比等の光特性の良好な変調動作を実現して、良好な光伝送を実現し得る。
【0084】
なお、本発明は上記実施形態の構成およびその代替構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0085】
例えば、第1の実施形態に係る光変調素子100では、導体パターン150は、基板102上において孤立して形成されるものとしたが、導体パターン150は、必ずしも孤立して形成されていなくてもよい。例えば、導体パターン150は、不要光が伝搬する基板102上の複数の領域をカバーするように形成してもよい。
【0086】
また、例えば、作用電極114とは異なり並行導波路112に近接して形成する必要のない配線電極118を、導体パターン150と同様の下地層および導電層により構成して、これらの配線電極118と導体パターン150とを、同一の電極形成工程において基板102上に同時に形成してもよい。また、この場合には、これらの配線電極118の少なくとも一部と導体パターン150とが連続するパターンとして形成されるものとすることができる。
【0087】
また、
図1に示す光変調素子100において、配線電極118、およびバイアス電極132a、132b、132cの配線(以下、バイアス電極配線)の経路は、
図1に記載の経路には限られない。基板102上における配線電極118およびバイアス電極配線の経路は、従来技術に従い、光導波路104に作用しない限り任意である。例えば、配線電極118は、光導波路104に作用しないように、信号電極114-1から直線状に延在していてもよい。また、バイアス電極配線は、例えば、入力導波路106および出力導波路126a、126bが形成されている辺140aに対向する辺140bに達するように、任意の経路で形成されていてもよい。
【0088】
また、第1の実施形態に係る光変調素子100では、作用電極114は、
図2に示すように、第1下地層160と第1導電層162とで構成されるものとしたが、これには限定されない。作用電極114は、第1導電層162の上部に、更に、第1材料と異なる第3材料からなる第3下地層と、第3下地層の上の第3導電層とを有する多段の構成としてもよい。これにより作用電極114を伝搬する電気信号の速度と光導波路104を伝搬する光波の速度とを整合させつつ、作用電極114のインピーダンスを所定の範囲に設定することができる。
【0089】
例えば、
図2に示す信号電極114-1aおよびグラウンド電極114-2a、114-2bを、それぞれ、
図12に示す信号電極114-1eおよびグラウンド電極114-2f、114-2gのように構成することができる。
図12において、信号電極114-1eは、第1下地層160aおよび第1導電層162aと、第1導電層162aの上の第3下地層180aおよび第3導電層182aと、で構成されている。また、グラウンド電極114-2fは、第1下地層160bおよび第1導電層162bと、第1導電層162bの上の第3下地層180bおよび第3導電層182bと、で構成されている。同様に、グラウンド電極114-2gは、第1下地層160cおよび第1導電層162cと、第1導電層162cの上の第3下地層180cおよび第3導電層182cと、で構成されている。以下、第3下地層180a、180b、180cを総称して第3下地層180ともいい、第3導電層182a、182b、182cを総称して第3導電層182ともいうものとする。
【0090】
図12に示す構成においては、第3下地層180の端部が、並行導波路112の延伸方向に垂直な断面において、第3導電層182に覆われているものとすることで、電極形成時のエッチングプロセスにおいて第3下地層180がオーバーエッチングされることを抑制することができる。なお、このように作用電極114を多段にする構成は、
図12に示すような第1下地層160と第1導電層162の構成に限定されず、
図6、
図7、または
図8に示すように作用電極114の下地層が第1下地層160と第2下地層164の両方で形成される構成においても適用することができる。
【0091】
また、第1の実施形態では、本発明に係る光導波路素子の一例として、LN(LiNbO3)である基板102により構成される光変調素子100を示したが、本発明に係る光導波路素子は、これには限られない。光導波路素子は、任意の材料(LNのほか、InP、Siなど)の基板で構成される、任意の機能(光変調のほか、光スイッチ、光方向性結合器など)を有する素子であるものとすることができる。そのような素子は、例えば、いわゆるシリコン・フォトニクス導波路デバイスであり得る。
【0092】
また、上述した実施形態では、基板102は、一例としてXカット(基板法線方向が結晶軸のX軸)のLN基板(いわゆるX板)であるものしたが、ZカットのLN基板を基板102として用いることもできる。
【0093】
以上説明したように、上述した第1の実施形態に係る光導波路素子である光変調素子100は、基板102と、基板102に形成された光導波路104と、光導波路104の並行導波路112を伝搬する光波を制御する作用電極114と、を含む。作用電極114は、第1材料からなる第1下地層160と、第1下地層160の上の第1導電層162と、で構成される。そして、基板102上の領域のうち、光導波路104の入力端から出力端までの経路以外の領域に、第1材料とは異なる第2材料からなる第2下地層164と、第2下地層164の上の第2導電層166と、で構成される導体パターン150が形成され得る。
【0094】
具体的には、光変調素子100では、作用電極114により制御されて基板102から出力される出力光に寄与しない不要光が伝搬する領域に、第1材料とは異なる第2材料からなる第2下地層164と、第2下地層164の上の第2導電層166と、で構成される導体パターン150が形成されている。
【0095】
これらの構成によれば、作用電極114に起因して生じ得る光吸収損失を抑制しつつ、基板102中を伝搬する不要光を効果的に除去することができる。その結果、従来に比べてより低電圧駆動が可能であって且つ光特性の良好な光変調素子100を実現することができる。
【0096】
また、第2下地層164を構成する第2材料は、光導波路104を伝搬する光の波長における光吸収係数が、第1下地層160を構成する第1材料よりも大きい。この構成によれば、基板102中を伝搬する不要光をより効果的に除去することができる。
【0097】
また、導体パターン150は、作用電極114に接続された配線電極118から連続するパターンであり得る。この構成によれば、配線電極118の形成と同時に導体パターン150を形成することができるので、光変調素子100の製造工程が簡単化される。
【0098】
また、光導波路104は、ネスト型マッハツェンダ型光導波路108およびマッハツェンダ型光導波路110を含み、これらのマッハツェンダ型光導波路の合波部128には、放射光用導波路130が形成されている。そして、導体パターン150は、放射光用導波路130の少なくとも一部を覆うように配されている。この構成によれば、放射光用導波路が伝搬する不要光である放射光を導体パターン150により効果的に除去することができる。
【0099】
また、第1導電層162および第2導電層166は、金(Au)で構成されており、第1下地層160を構成する第1材料および第2下地層を構成する第2材料は、ヨウ素と反応しない材料で構成されている。この構成によれば、光変調素子100の製造過程において第1導電層162および第2導電層166のパターンニングにヨウ素系エッチング液を用いることができるので、上記製造過程におけるエッチング液の選択肢が広がり、光変調素子100の製造が容易となる。
【0100】
また、第1下地層160を構成する第1材料は、例えばニオブ(Nb)であり、第2下地層164を構成する第2材料は、例えばチタン(Ti)である。この構成によれば、特殊な材料を用いることなく、従来に比べてより低電圧駆動が可能であって且つ光特性の良好な光変調素子100を実現することができる。
【0101】
また、第1下地層160の厚さは30nm以下であり、第2下地層164の厚さは100nm以上である。この構成によれば、従来に比べてより低電圧駆動が可能であって且つ光特性の良好な光変調素子100を、より容易に実現することができる。
【0102】
また、光導波路104は、基板102上に延在する凸部144により構成される凸状光導波路である。この構成によれば、従来に比べて更に低電圧駆動が可能であって且つ光特性の良好な光変調素子100を実現することができる。
【0103】
また、光変調素子100は、光導波路104の並行導波路112を基板102の面内において挟む2つの作用電極114(具体的には、信号電極114-1およびグラウンド電極114-2)を有し、これら2つの作用電極114の間隔は、1.0μm以上、5.0μm以下である。この構成によれば、従来に比べて低電圧駆動が可能であって且つ光特性の良好な光変調素子100を容易に実現することができる。
【0104】
また、作用電極114は、第1導電層162の上に、第1材料と異なる第3材料からなる第3下地層と、第3下地層の上の第3導電層とを有する。そして、光導波路104の延伸方向に垂直な断面において、第3下地層の端部は、第3導電層に覆われている。
【0105】
また、上記第3材料はチタン(Ti)で構成され、上記第3導電層は、金(Au)で構成されている。
【0106】
これらの構成によれば、電極形成時のエッチングプロセスにおいて第3下地層がオーバーエッチングされることを抑制することができる。
【0107】
また、第2の実施形態に係る光変調器400は、光の変調を行う光変調素子100と、光変調素子100を収容する筐体402と、光変調素子100に光を入力する入力光ファイバ414と、光変調素子100が出力する光を筐体402の外部へ導く出力光ファイバ420と、を備える。
【0108】
また、第3の実施形態に係る光変調モジュール500は、光変調素子100と、光変調素子100を収容する筐体402と、光変調素子100に光を入力する入力光ファイバ414と、光変調素子100が出力する光を筐体402の外部へ導く出力光ファイバ420と、光変調素子を駆動する駆動回路508と、を備える。
【0109】
また、第4の実施形態に係る光送信装置600は、第2の実施形態に係る光変調器400または第3の実施形態に係る光変調モジュール500と、光変調素子100に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路である変調信号生成部608と、を備える。
【0110】
これらの構成によれば、従来に比べて低電圧駆動が可能であって且つ光特性の良好な光変調器400、光変調モジュール500、又は光送信装置600を実現することができる。
【符号の説明】
【0111】
100…光変調素子、102…基板、104…光導波路、106…入力導波路、108a、108b…ネスト型マッハツェンダ型光導波路、110、110a、110b、110c、110d…マッハツェンダ型光導波路、112、112a、112b、112c、112d、112e、112f、112g、112h…並行導波路、114…作用電極、114-1、114-1a、114-1b、114-1c、114-1d、114-1e…信号電極、114-2、114-2a、114-2b、114-2c、114-2d、114-2e、114-2f、114-2g…グラウンド電極、118…配線電極、118-1、118-1a、118-1b、118-1c、118-1d、118-1e、118-1f、118-1g、118-1h…信号配線電極、118-2、118-2a、118-2b、118-2c、118-2d、118-2e、118-2f、118-2g、118-2h、118-2i、118-2j…グラウンド配線電極、126a、126b…出力導波路、128、128a、128b、128c、128d、128e、128f…合波部、130、130a、130b、130c、130d、130e、130f、130g、130h、130i、130j、130k、130m…放射光用導波路、132a、132b、132c…バイアス電極、140a、140b、140c、140d…辺、142…支持板、144,144a、144b…凸部、150、150a、150b、150c、150d、150e、150f、150g、150h-1、150h-2…導体パターン、160、160a、160a-1、160a-2、160b、160c、160d…第1下地層、162、162a、162a-1、162a-2、162b、162c、162d…第1導電層、164、164a、164b、164c、164d-1、164d-2、164e…第2下地層、166、166a、166b、166c、166d-1、166d-2…第2導電層、170…光入射部、172…矩形領域、180、180a、180b、180c…第3下地層、182、182a、182b、182c…第3導電層、200、202、204、206…ライン、402…筐体、406…中継基板、408、410…信号ピン、412…終端器、414…入力光ファイバ、416…光学ユニット、418、430、434…レンズ、420…出力光ファイバ、422、424…サポート、506…回路基板、508…駆動回路、600…光送信装置、604…光源、606…変調器駆動部、608…変調信号生成部。