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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018233
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】窓ガラス取り付け構造
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20220120BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20220120BHJP
   H01Q 5/307 20150101ALI20220120BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q13/08
H01Q5/307
B60J1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121190
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】船津 聡史
(72)【発明者】
【氏名】田村 次郎
(72)【発明者】
【氏名】江川 慶彦
【テーマコード(参考)】
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J045AA02
5J045AA03
5J045AA05
5J045DA08
5J045EA07
5J045HA02
5J045LA01
5J045NA08
5J046AA03
5J046AB13
5J046LA01
5J046LA04
5J046LA13
5J046LA18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】VHF帯からUHF帯までの帯域におけるアンテナ利得を確保可能な窓ガラス取り付け構造を提供する。
【解決手段】車体に形成される窓枠66に取り付けられる窓ガラスは、ガラス板10と、ガラス板に対向する側の第1面と、第1面とは反対側の第2面とを有する誘電体と、ガラス板と第1面との間に配置される平面状導体50及び内部導体70と、第2面の側に設けられる給電電極35と、を備える。窓枠は、誘電体に対して第2面の側で誘電体の外縁に沿って配置される金属部63を有する。金属部又は第2面の側に設けられ金属部に電気的に接続される接地電極38は、誘電体を介して平面状導体に電気的に接続される。内部導体は、窓ガラスの平面視で誘電体を介して金属部に対向する第1内部導体71と、第1内部導体71に電気的に接続され、且つ、平面状導体に近接する第2内部導体72と、を含む。給電電極は、誘電体を介して平面状導体に対向する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に形成される窓枠と、前記窓枠に取り付けられる窓ガラスと、を備え、
前記窓ガラスは、
ガラス板と、
前記ガラス板に対向する側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する誘電体と、
前記ガラス板と前記第1面との間に配置される平面状導体と、
前記ガラス板と前記第1面との間に配置される内部導体と、
前記第2面の側に設けられる給電電極と、を備え、
前記窓枠は、前記誘電体に対して前記第2面の側で前記誘電体の外縁に沿って配置される金属部を有し、
前記金属部は、前記誘電体を介して前記平面状導体に電気的に接続され、又は、前記金属部に電気的に接続される接地電極が前記第2面の側に設けられ、前記接地電極は、前記誘電体を介して前記平面状導体に電気的に接続され、
前記内部導体は、前記窓ガラスの平面視で前記誘電体を介して前記金属部に対向する第1内部導体と、前記第1内部導体に電気的に接続され且つ前記平面状導体に近接する第2内部導体と、を含み、
前記給電電極は、前記誘電体を介して前記平面状導体に対向し、VHF帯からUHF帯までの帯域に含まれる電波の受信信号を出力する、窓ガラス取り付け構造。
【請求項2】
前記給電電極は、前記窓ガラスの平面視で前記第2内部導体に前記誘電体を介して対向する、請求項1に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項3】
前記給電電極は、前記窓ガラスの平面視で前記第2内部導体に前記誘電体を介して対向しない、請求項1に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項4】
前記第2内部導体は、前記窓ガラスの平面視の方向で前記平面状導体に対向する、請求項1から3のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項5】
前記第2内部導体は、前記窓ガラスの平面視の方向に直角な方向で前記平面状導体に対向する、請求項1から3のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項6】
前記第2内部導体は、前記窓ガラスの平面視で、前記第1内部導体から離れる方向に延伸する第1導体部分と、前記第1導体部分が延伸する方向とは異なる方向に延伸する第2導体部分と、を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項7】
前記第2内部導体は、前記第1導体部分と前記第2導体部分とを含むL字状部分を有する、請求項6に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項8】
前記第2導体部分の長さは、60mm以上120mm以下である、請求項7に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項9】
前記給電電極の給電点から、前記第1導体部分と前記第2導体部分との接点までの距離は、70mm以上140mm以下である、請求項7又は8に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項10】
前記第2内部導体は、前記第1導体部分と前記第2導体部分とを含むT字状部分を有する、請求項6に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項11】
前記第2内部導体の幅は、5mm以上である、請求項6から10のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項12】
前記第1内部導体は、前記第1導体部分との接続点から第1端部まで延伸する第3導体部分と、前記接続点から第2端部まで延伸する第4導体部分とを有し、
前記第3導体部分と前記第4導体部分は、いずれも、60mm以上である、請求項6から11のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項13】
前記金属部は、前記誘電体の外縁の全周に沿っている、請求項1から12のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項14】
前記第1内部導体は、前記外縁の全周に沿っている、請求項13に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項15】
前記金属部と前記第1内部導体との結合容量は、9[pF]以上である、請求項1から14のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項16】
前記第2内部導体と前記平面状導体との結合容量は、13[pF]以上である、請求項1から15のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項17】
前記ガラス板と前記誘電体との間に、誘電性の中間膜を有し、
前記内部導体は、前記ガラス板と前記中間膜の間に配置され、
前記平面状導体は、前記中間膜と前記誘電体との間に配置される、請求項1から16のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項18】
前記ガラス板と前記誘電体との間に、誘電性の中間膜を有し、
前記平面状導体は、前記ガラス板と前記中間膜の間に配置され、
前記内部導体は、前記中間膜と前記誘電体との間に配置される、請求項1から16のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項19】
前記平面状導体の外周縁は、第1長辺と第2長辺を有する略四角形であり、
前記平面状導体は、前記第1長辺又は前記第2長辺に略平行に延伸する少なくとも一本の分割スリットにより第1平面状導体と第2平面状導体に分離されている、請求項1から18のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項20】
前記給電電極は、前記窓ガラスの平面視で前記分割スリットと交差する、請求項19に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項21】
前記平面状導体に接続される正極と、
前記平面状導体に接続される負極と、を備え、
前記平面状導体は、前記正極と前記負極との間の電圧印加により発熱する、請求項1から20のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項22】
前記給電電極は、前記帯域に含まれる複数の放送波の受信信号を出力する、請求項1から21のいずれか一項に記載の窓ガラス取り付け構造。
【請求項23】
前記給電電極は、VHF帯に含まれるFM放送波とDAB Band IIIの放送波との少なくとも一方の放送波の受信信号と、UHF帯に含まれる地上デジタルテレビ放送波の受信信号とを出力する、請求項22に記載の窓ガラス取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窓ガラス取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用窓ガラスにおいて、熱線反射効果を得るための透明導電性被覆を用いる場合がある。この透明導電性被覆の周縁にあるアンテナスロットに結合するアンテナ給電素子を、透明導電性被覆の両側に配置することによって、ダイバーシティアンテナを実現する技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。また、平面状導体にガラス板を介して対向する給電電極により、VHF(Very High Frequency)帯とUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013-540406号公報
【特許文献2】特表2013-544045号公報
【特許文献3】特開2020-022151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透明導電性被覆のような平面状導体を利用してアンテナを実現する場合、VHF帯からUHF帯までの帯域におけるアンテナ利得の確保が容易ではなかった。
【0005】
本開示は、VHF帯からUHF帯までの帯域におけるアンテナ利得を確保可能な窓ガラス取り付け構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
車体に形成される窓枠と、前記窓枠に取り付けられる窓ガラスと、を備え、
前記窓ガラスは、
ガラス板と、
前記ガラス板に対向する側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する誘電体と、
前記ガラス板と前記第1面との間に配置される平面状導体と、
前記ガラス板と前記第1面との間に配置される内部導体と、
前記第2面の側に設けられる給電電極と、を備え、
前記窓枠は、前記誘電体に対して前記第2面の側で前記誘電体の外縁に沿って配置される金属部を有し、
前記金属部は、前記誘電体を介して前記平面状導体に電気的に接続され、又は、前記金属部に電気的に接続される接地電極が前記第2面の側に設けられ、前記接地電極は、前記誘電体を介して前記平面状導体に電気的に接続され、
前記内部導体は、前記窓ガラスの平面視で前記誘電体を介して前記金属部に対向する第1内部導体と、前記第1内部導体に電気的に接続され且つ前記平面状導体に近接する第2内部導体と、を含み、
前記給電電極は、前記誘電体を介して前記平面状導体に対向し、VHF帯からUHF帯までの帯域に含まれる電波の受信信号を出力する、窓ガラス取り付け構造を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、VHF帯からUHF帯までの帯域におけるアンテナ利得を確保可能な窓ガラス取り付け構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における窓ガラス取り付け構造の一構成例を窓ガラスの平面視で示す図である。
図2】第1実施形態における窓ガラス取り付け構造の一構成例の断面A-A(図1参照)を示す図である。
図3】第2実施形態における窓ガラス取り付け構造の一構成例の断面図である。
図4】第3実施形態における窓ガラス取り付け構造の一構成例の断面図である。
図5】第4実施形態における窓ガラス取り付け構造の一構成例の平面図である。
図6】各実施形態における窓ガラス取り付け構造を平面視で示す概略図である。
図7】長さLに対するアンテナ利得を実測した結果の一例を示す図である。
図8】距離dに対するアンテナ利得を実測した結果の一例を示す図である。
図9】幅wに対するアンテナ利得を実測した結果の一例を示す図である。
図10】LP1とLP2を等長で変化させたときのアンテナ利得を実測した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態について説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。"対向する"とは、全部が対向する形態に限られず、一部が対向する形態を含んでよい。
【0010】
本実施形態では、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、ガラス板の左右方向(横方向)、ガラス板の上下方向(縦方向)、ガラス板の表面に直角な方向(法線方向とも称する)を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。
【0011】
本実施形態における窓ガラス取り付け構造の窓ガラスの例として、車両の後部に取り付けられるリアガラス、車両の前部に取り付けられるフロントガラス、車両の側部に取り付けられるサイドガラス、車両の天井部に取り付けられるルーフガラスなどがある。窓ガラスは、これらの例に限られない。
【0012】
図1は、第1実施形態における窓ガラス取り付け構造の一構成例を窓ガラスの平面視で示す図である。図1に示す窓ガラス取り付け構造201は、車体に形成される窓枠66と、窓枠66に取り付けられる窓ガラス101とを備える。図1は、窓枠66に取り付けた窓ガラス101を車内側からの視点で示す平面図であるが、図面の視認性の向上のため、窓枠66を二点鎖線で簡略的に示している。
【0013】
図2は、第1実施形態における窓ガラス取り付け構造の一構成例の断面A-A(図1参照)を示す図である。図2において、車体62に形成される窓枠66に窓ガラス101が取り付けられた状態において、Z軸方向の正側は、車外側を表し、Z軸方向の負側は、車内側を表す。窓ガラス101は、車外側に配置されるガラス板10と、車内側に配置されるガラス板20とが、中間膜40を介して貼り合わされる合わせガラスの構造を有する。
【0014】
窓ガラス101は、例えば、ガラス板20の主面22の周縁部とフランジ状の窓枠66とがウレタン樹脂等の接着剤65で接着することより、窓枠66に取り付けられる。窓枠66は、Z軸方向からの窓ガラス101の平面視で主面22の周縁部の少なくとも一部に対向する金属部63を有する。後述の内部導体70は、ガラス板20を介しての容量結合によって金属部63に接地される。金属部63の内縁64は、Z軸方向からの窓ガラス101の平面視で、窓ガラス101によって覆われる開口を形成する。
【0015】
窓ガラス101は、車外側に配置されるガラス板10と、車内側に配置されるガラス板20と、合わせガラスの内部に配置される平面状導体50とを備える。
【0016】
ガラス板10及びガラス板20は、透明な板状の誘電体である。ガラス板10及びガラス板20のいずれか一方又は両方は、半透明でもよい。ガラス板10は、第1ガラス板の一例であり、ガラス板20は、第2ガラス板の一例である。なお、ガラス板20の位置に配置される板状体は、ガラス板に限らず、透明樹脂基板などの誘電体でもよい。
【0017】
ガラス板10は、主面11と、Z軸方向において主面11とは反対側の主面12とを有する。主面11は、車内側の表面を表し、主面12は、車外側の表面を表す。特に、主面12は、合わせガラスの車外側の外面に相当する。
【0018】
ガラス板20は、ガラス板10の主面11に対向する側の主面21と、Z軸方向において主面21とは反対側の主面22とを有する。主面21は、車外側の表面を表し、主面22は、車内側の表面を表す。特に、主面22は、合わせガラスの車内側の外面に相当する。主面21は、第1面の一例であり、主面22は、第2面の一例である。
【0019】
中間膜40は、誘電性を有し、ガラス板10とガラス板20との間に介在する透明又は半透明な誘電体である。ガラス板10とガラス板20とは、中間膜40によって接合される。中間膜40は、例えば、熱可塑性のポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。なお、中間膜40の比誘電率は、2.4以上3.5以下が好ましい。中間膜40は、ガラス板10と平面状導体50との間に配置されてもよいし、平面状導体50とガラス板20との間に配置されてもよいし、ガラス板10と平面状導体50との間と、平面状導体50とガラス板20との間との両方に配置されてもよい。
【0020】
図1,2の窓ガラス取り付け構造201は、平面状導体50が、ガラス板10とガラス板20との間に配置される形態を示す。図1,2に示す実施形態では、平面状導体50は、ガラス板10の主面11とガラス板20の主面21との間に設けられており、分離されていない一つの導体面により形成されている。
【0021】
図2に示す窓ガラス取り付け構造201の例では、平面状導体50は、ガラス板10に対して主面11の側にある導電層である。平面状導体50は、主面11に接する導体でもよいし、主面11との間に透明又は半透明の不図示の誘電体を挟んで配置されてもよい。平面状導体50は、透明でも半透明でもよい。平面状導体50の具体例として、Ag(銀)膜などの金属膜、ITO(酸化インジウム・スズ)膜などの金属酸化膜、または導電性微粒子を含む樹脂膜、複数種類の膜を積層した積層体などが挙げられる。平面状導体50は、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルムに蒸着処理等でコーティングされたものでもよい。
【0022】
平面状導体50は、ガラス板10の主面11にコートされる導電膜でもよい。導電膜の具体例として、低放射性能を発揮するLow-E(Low Emissivity)膜などの低放射膜が挙げられる。
【0023】
低放射とは、放射による伝熱を低減することをいう。Low-E膜などの低放射膜は、放射による伝熱を抑制することで、断熱性を確保する。低放射膜は、一般的なものであってよく、例えば、透明誘電体膜、赤外線反射膜、および透明誘電体膜をこの順で含む積層膜であってよい。透明誘電体膜としては、金属酸化物や金属窒化物が代表的である。金属酸化物としては、酸化亜鉛や酸化スズが代表的である。赤外線反射膜としては、金属膜が代表的である。金属膜としては、銀(Ag)が代表的である。ここで、赤外線反射膜は、透明誘電体膜同士の間に、1層以上形成されてよい。
【0024】
平面状導体50は、Low-E膜などの低放射膜に限られず、導電性の層であれば、他の機能を有してもよい。例えば、平面状導体50は、電圧印加による発熱によって、窓ガラス101の防氷や防曇などの機能を有するものでもよい。
【0025】
図1の窓ガラス取り付け構造201は、平面状導体50が、電圧印加による発熱によって、窓ガラス101の防氷や防曇などの機能を有する形態を例示する。窓ガラス101は、平面状導体50の一方の端部にフラットワイヤ54を介して接続される負極58と、平面状導体50の他方の端部にフラットワイヤ53を介して接続される正極57とを有する。例えば、負極58は、主面22の一方の側縁部(この例では、右縁部)に設けられ、正極57は、主面22の他方の側縁部(この例では、左縁部)に設けられる。しかし、正極57及び負極58は、主面22の上縁部又は下縁部などの他の位置に配置されてもよい。Z軸方向からの窓ガラス101の平面視で、例えば、正極57は、Y軸方向を長手方向とする矩形状のエレメントであり、負極58は、Y軸方向を長手方向とする矩形状のエレメントである。しかし、正極57及び負極58は、円形や他の多角形などの他の形状でもよい。
【0026】
フラットワイヤ54は、ガラス板20の一方の側の外縁23(この例では、右側の外縁)を迂回して、平面状導体50の一方の端部と負極58とを直接結合で電気的に接続する導電性媒体である。フラットワイヤ53は、ガラス板20の他方の側の外縁23(この例では、左側の外縁)を迂回して、平面状導体50の他方の端部と正極57とを直接結合で電気的に接続する導電性媒体である。
【0027】
直接結合(DC結合、又は導電性結合とも称される)とは、導電性媒体を介した物理的な接触による結合をいう。フラットワイヤは、導電性媒体の一例である。
【0028】
正極57と負極58との間に電圧を印加することによって、平面状導体50における一方の端部と他方の端部との間に電圧が印加されるので、平面状導体50は発熱し、窓ガラス101の防氷や防曇などを実現できる。正極57と負極58は主面22側に露出しているので、平面状導体50が一対のガラス板10,20の間に挟まれて露出していなくても、平面状導体50の両端部にフラットワイヤ53,54を介して電圧を印加できる。
【0029】
平面状導体50は、外周縁56を有する。この例では、外周縁56の形状は、Y軸方向で互いに対向する第1長辺56aと第2長辺56b、及び、X軸方向で互いに対向する第1短辺56cと第2短辺56dを含む略長方形である。外周縁56の形状は、略長方形等の略四角形に限られず、台形を含む他の形状でもよい。例えば、外周縁56の一部は、平面状導体50の内側に凹んでいてもよいし、平面状導体50の外側に突き出ていてもよい。外周縁56の一部は、直線状でも湾曲状でもよい。窓ガラス取り付け構造201において、外周縁56の一部が、平面状導体50の内側に凹む構成としては、窓ガラス101のXY平面において凹部となる領域に、ハイマウントストップランプ等の点灯装置などが配置される構成が挙げられる。
【0030】
窓ガラス取り付け構造201における窓枠66は、窓ガラス101が窓枠66に取り付けられた状態で、ガラス板20に対して主面22の側でガラス板20の外縁23に沿って配置される金属部63を有する。金属部63は、図1に示すようにガラス板20の外縁23の全周に沿って配置されてもよいが、外縁23の全周のうちの少なくとも一箇所以上の部分に沿って配置されてもよい。
【0031】
図1,2の窓ガラス取り付け構造201において、窓ガラス101は、ガラス板10と主面21との間に配置される内部導体70を備える。内部導体70は、窓ガラス101の平面視でガラス板20を介して金属部63に対向する第1内部導体71と、第1内部導体71に電気的に接続され且つ平面状導体50に近接する第2内部導体72と、を有する。第2内部導体72は、第1内部導体71と導電的に接触することで第1内部導体71に電気的に接続されてもよいし、第1内部導体71に容量結合で電気的に接続されてもよい。
【0032】
第1内部導体71は、ガラス板20を介して金属部63に対向することにより金属部63に容量結合で電気的に接続されるので、内部導体70は、金属部63に容量結合で接地される接地導体として機能する。一方、第2内部導体72は、誘電体(この例では、中間膜40)を介して平面状導体50に近接することにより平面状導体50に容量結合で電気的に接続されるので、平面状導体50は、内部導体70に容量結合で接地される。したがって、平面状導体50は、中間膜40、内部導体70及びガラス板20が介在する容量結合で金属部63に接地される。
【0033】
窓ガラス取り付け構造201において、窓ガラス101は、ガラス板20の主面22の側に設けられる給電電極35を備える。給電電極35は、例えば、主面22に形成される導体パターンである。図1に示す例では、給電電極35は、主面22の一方の側縁部(この例では、右縁部)に設けられ、窓ガラス101の平面視で平面状導体50の外周縁56の第2短辺56dに沿って延伸する矩形状のエレメントである。しかし、給電電極35は、主面22の上縁部又は下限部などの他の位置に配置されてもよく、Z軸方向からの窓ガラス101の平面視で円形や他の多角形などの他の形状でもよい。
【0034】
給電電極35は、ガラス板20を介して平面状導体50に対向するので、平面状導体50は、ガラス板20が介在する容量結合で給電電極35に電気的に接続される。一方、平面状導体50は、内部導体70及びガラス板20が少なくとも介在する容量結合で金属部63に接地される。このように、平面状導体50が給電電極35と金属部63のそれぞれに容量結合で電気的に接続されることで、平面状導体50の少なくとも一部が放射導体として機能する容量給電型の逆Fアンテナが形成される。したがって、平面状導体50の少なくとも一部がUHF帯の電波を受信する放射導体として機能する容量給電型の逆Fアンテナが形成されるように、給電電極35及び内部導体70を配置することで、UHF帯におけるアンテナ利得を確保できる。
【0035】
このように、平面状導体50の少なくとも一部は、UHF帯の電波を受信する放射導体として機能するように形成されている。例えば、給電電極35は、UHF帯の周波数で共振可能なエレメント長を有してもよく、当該エレメント長を有することで、UHF帯におけるアンテナ利得をより確保できる。
【0036】
したがって、第1実施形態の窓ガラス取り付け構造201によれば、平面状導体50の少なくとも一部がUHF帯に含まれる電波を受信することにより得られる受信信号が給電電極35から出力されるので、UHF帯におけるアンテナ利得を確保できる。
【0037】
なお、UHF帯は、300MHz以上3GHz以下の周波数帯を表す。UHF帯に含まれる周波数帯の具体例として、地上デジタルテレビ放送波の帯域(例えば、473MHz~713MHz)などがある。
【0038】
給電電極35は、UHF帯に含まれる一つ又は複数の放送波の受信信号を出力する。給電電極35から出力される受信信号に係る電波は、例えば、地上デジタルテレビ放送波が挙げられる。
【0039】
図1に示す窓ガラス取り付け構造201の例では、給電電極35の少なくとも一部は、ガラス板20を挟んで、平面状導体50の一部(この例では、外周縁56の第2短辺56dに沿った部分)と対向している。給電電極35は、給電線32の一端が接続される給電点36を有し、給電線32を介して、アンプ61の入力部に接続される。アンプ61は、給電電極35に実装されてもよい。平面状導体50で電波を受信して得られる信号は、平面状導体50と給電電極35との間の容量結合を介してアンプ61の入力部に入力され、給電電極35で電波を受信して得られる信号も、アンプ61の入力部に入力される。アンプ61の入力部に入力された信号は、バンドパスフィルタによるフィルタリング及び増幅回路による増幅がされて、アンプ61から出力される。
【0040】
図1,2に示す窓ガラス取り付け構造201の例では、給電電極35は、Z軸方向からの窓ガラス101の平面視で第2内部導体72にガラス板20を介して対向するので、第2内部導体72と容量結合する。これにより、給電電極35と第2内部導体72との間の容量結合部は、UHF帯よりもVHF帯の受信信号を減衰させる度合いが高いハイパスフィルタとして機能する。これにより、UHF帯におけるアンテナ利得を増大できる。
【0041】
給電電極35は、例えば、窓ガラス101の平面視で平面状導体50の外周縁56の第2短辺56dが延伸する方向が長手方向となるように形成される。図1に示す例では、給電電極35は、第2短辺56dに沿って延伸する矩形エレメント35aと、矩形エレメント35aに接続される直線エレメント35bと、を有する。
【0042】
例えば、矩形エレメント35aは、一対の長辺と一対の短辺とを有する長方形に形成された長方形状のエレメントである。直線エレメント35bは、矩形エレメント35aの一辺である下辺から延伸し、その下辺の幅よりも細い幅を有する線条エレメントである。矩形エレメント35aの下辺は、一対の短辺のうちの一方の辺である。直線エレメント35bの長さを調整することで、UHF帯におけるアンテナ利得の改善を図ることができる。
【0043】
なお、給電電極35は、直線エレメント35bがない形態でもよい。
【0044】
図1に示す窓ガラス取り付け構造201の例では、第1内部導体71は、窓ガラス101の平面視で金属部63の内縁64に沿って延伸している。図1は、第1内部導体71が窓ガラス101の平面視で金属部63の内縁64及びガラス板20の外縁23に沿って内縁64と外縁23との間を直線的に延伸する形態を例示する。第1内部導体71は、窓ガラス101の平面視で金属部63の内縁64と重ならないように延伸することで、金属部63と第1内部導体71との結合容量が増加する。当該結合容量の増加により、UHF帯におけるアンテナ利得が増大する。なお、第1内部導体71は、窓ガラス101の平面視で内縁64と交差してもよい。
【0045】
金属部63と第1内部導体71との結合容量は、9[pF]以上であると、UHF帯におけるアンテナ利得を増大できる。当該結合容量は、UHF帯におけるアンテナ利得が増大する点で、12[pF]以上が好ましく、15[pF]以上がより好ましい。
【0046】
図1に示す窓ガラス取り付け構造201の例では、第2内部導体72は、Z軸方向からの窓ガラス101の平面視で、第1内部導体71から離れる方向に延伸する第1導体部分73と、第1導体部分73が延伸する方向とは異なる方向に延伸する第2導体部分74とを含む構成を有する。第2内部導体72がこのような構成を有することで、UHF帯におけるアンテナ利得をより確保できる。
【0047】
図1の窓ガラス取り付け構造201は、Z軸方向からの窓ガラス101の平面視で第2内部導体72が第1導体部分73と第2導体部分74とを含むL字状部分を有する形態を例示する。第1導体部分73は、窓ガラス101の平面視で金属部63の内縁64及び平面状導体50の第2短辺56dと交差するように正のX軸方向に延伸する。第2導体部分74は、窓ガラス101の平面視で金属部63の内縁64及び平面状導体50の第2短辺56dに沿って正のY軸方向に延伸する。
【0048】
なお、第2内部導体72は、UHF帯におけるアンテナ利得をより確保する点で、Z軸方向からの窓ガラス101の平面視で第1導体部分73と第2導体部分74とを含むT字状部分を有してもよい。
【0049】
図1,2に示す窓ガラス取り付け構造201の例では、第2内部導体72は、窓ガラス101の平面視の方向で平面状導体50に対向するので、第2内部導体72と平面状導体50との結合容量が増加する。この例では、第2内部導体72は、中間膜40を介して平面状導体50の外周縁56の第2短辺56dに沿った領域に対向する。当該結合容量の増加により、UHF帯におけるアンテナ利得が増大する。
【0050】
第2内部導体72と平面状導体50との結合容量は、13[pF]以上であると、UHF帯におけるアンテナ利得を増大できる。当該結合容量は、当該帯域におけるアンテナ利得が増大する点で、16[pF]以上が好ましく、19[pF]以上がより好ましい。
【0051】
図1に示すように、窓ガラス101は、ガラス板20の主面22の側に設けられ、内部導体70とは異なる箇所で金属部63に直接結合又は容量結合で電気的に接続される接地電極38を更に備えてもよい。接地電極38は、窓ガラス101の平面視で、内部導体70とは異なる箇所で平面状導体50にガラス板20を介して対向する部分を有する。接地電極38が追加されることで、平面状導体50と金属部63との結合容量が増加する。これにより、平面状導体50が給電電極35と接地電極38のそれぞれに容量結合することで形成される逆FアンテナのVHF帯におけるアンテナ利得が増大する。
【0052】
窓ガラス取り付け構造201は、このような接地電極38を更に備える構成により、VHF帯からUHF帯までの領域におけるアンテナ利得を増大できる。なお、VHF帯は、30MHz以上300MHz以下の周波数帯を表す。VHF帯に含まれる周波数帯の具体例として、FM放送波の帯域(例えば、76MHz~108MHz)、DAB Band IIIの帯域(例えば、170MHz~240MHz)などがある。
【0053】
接地電極38は、例えば、主面22に形成される導体パターンである。図1に示す例では、接地電極38は、主面22の一方の側縁部(この例では、右縁部)に設けられ、窓ガラス101の平面視で平面状導体50の外周縁56の第2短辺56dに沿って延伸する矩形状のエレメントである。しかし、接地電極38は、主面22の上縁部又は下限部などの他の位置に配置されてもよく、円形や他の多角形などの他の形状でもよい。
【0054】
また、図1に示す窓ガラス取り付け構造201では、窓ガラス101の平面視において、金属部63は、平面状導体50にガラス板20を介して対向する金属部分を有していないが、平面状導体50にガラス板20を介して対向する金属部分を有してもよい。金属部63が窓ガラス101の平面視で内部導体70とは異なる箇所で平面状導体50にガラス板20を介して対向する金属部分を有する場合、平面状導体50は、ガラス板20が介在する容量結合により電気的に接続されて当該金属部分に接地されるので、接地電極38は無くてもよい。そのような金属部分を有する場合、接地電極38の有無にかかわらず、平面状導体50が給電電極35と当該金属部分のそれぞれに容量結合で電気的に接続されることで形成される逆FアンテナのVHF帯におけるアンテナ利得が増大する。
【0055】
なお、窓ガラス101の平面視で金属部63が内部導体70とは異なる箇所で平面状導体50にガラス板20を介して対向する金属部分を有さない場合でも、これらの距離を近づけて配置すると、平面状導体50は、容量結合により電気的に接続されて当該金属部分に接地されるので、接地電極38は無くてもよい。なお、平面状導体50と金属部63の当該金属部分との距離は、30mm以下であれば容量結合でき、25mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。したがって、窓ガラス取り付け構造201において、そのような金属部分を有する場合、接地電極38の有無にかかわらず、VHF帯からUHF帯までの領域におけるアンテナ利得を増大できる。
【0056】
図1に示すように、窓ガラス101は、ガラス板20の主面22の側に設けられる給電電極33を更に備えてもよい。給電電極33は、例えば、主面22に形成される導体パターンである。図1に示す例では、給電電極33は、主面22の他方の側縁部(この例では、左縁部)に設けられ、窓ガラス101の平面視で平面状導体50の外周縁56の第1短辺56cに沿って延伸する矩形状のエレメントである。しかし、給電電極33は、主面22の上縁部又は下限部などの他の位置に配置されてもよく、Z軸方向からの窓ガラス101の平面視で円形や他の多角形などの他の形状でもよい。
【0057】
給電電極33を含む左側構造は、給電電極35及び内部導体70を含む右側構造と同様の構成を有するので、当該左側構造についての説明は、当該右側構造についての上述の説明を援用することで簡略する。給電電極33を含む左側構造を、給電電極35及び内部導体70を含む右側構造と同様の構成にすることで、ダイバーシティアンテナを構成できる。図1に示す窓ガラス取り付け構造201の例では、給電電極33は、給電線31の一端が接続される給電点34を有し、給電線31を介して、アンプ60の入力部に接続される。給電電極33は、第1短辺56cに沿って延伸する矩形エレメント33aと、矩形エレメント33aに接続される直線エレメント33bと、を有する。
【0058】
また、窓ガラス101は、ガラス板20の主面22の側に設けられ、内部導体70とは異なる箇所で金属部63に直接結合又は容量結合で電気的に接続される接地電極37を更に備えてもよい。接地電極37は、内部導体70とは異なる箇所で窓ガラス101の平面視で平面状導体50にガラス板20を介して対向する部分を有する。接地電極37を含む左側接地構造は、接地電極38を含む右側接地構造と同様の構成を有するので、当該左側接地構造についての説明は、当該右側接地構造についての上述の説明を援用することで簡略する。
【0059】
ガラス板10とガラス板20とのうちの一方又は両方は、可視光を透過する透過領域14(図1参照)を有し、可視光を遮光する遮光膜13(図1参照)を透過領域14の外側に備えてもよい。遮光膜13は、ガラス板10とガラス板20とのうちの一方又は両方の外周縁部に設けられる。遮光膜13は、平面視において、例えば、平面状導体50の両端部、正極57、負極58、内部導体70、給電電極35、給電電極33、接地電極38及び接地電極37のうちの一部又は全部と、ガラス板10の厚さ方向で重複する。重複には、全体的に重複する形態に限られず、部分的に重複する形態が含まれてもよい。遮光膜13の具体例として、黒色セラミックス膜等のセラミックスが挙げられる。遮光膜13と重複する部分が存在する場合、窓ガラス101を車外側から見ると、その重複する部分が視認しにくくなる。よって、窓ガラス101や車両のデザイン性などの見栄えが向上するとともに、視界を確保できる。
【0060】
遮光膜13の内縁13aは、例えば、平面状導体50の外周縁56の少なくとも一部よりも内側にある。これにより、外周縁56の少なくとも一部は、平面視で遮光膜13と重複するので、平面状導体50がある部分とない部分の境目が車外側から見ると遮光膜13により隠れ、見栄えが向上する。
【0061】
図1に示す例では、窓ガラス取り付け構造201は、正極57に接続される第1コイル81と、負極58に接続される第2コイル83とを備える。コイル81,83は、少なくともVHF帯の信号を遮断する。これにより、VHF帯の高周波信号が直流電源80及びグランド側に漏洩することを抑制できる。例えば、コイル81,83は、FM放送波の帯域とDAB Band IIIの帯域とのうちの一方又は両方の信号を遮断する。
【0062】
第1コイル81の正極57とは反対側は、キャパシタ82を介してグランドに接続されてもよいし、第2コイル83の負極58とは反対側は、キャパシタ84を介してグランドに接続されてもよい。キャパシタ82,84は、配線のインピーダンスの調整とノイズフィルタとして機能する。
【0063】
図1に示す例では、窓ガラス取り付け構造201は、正極57と負極58に接続されるチョークコイル86を更に備える。チョークコイル86は、少なくともMF(Medium Frequency)帯の信号を遮断する。チョークコイル86は、1次側コイルと2次側コイルを有するトランス構造を有する。正極57は、1次側コイルを介して、直流電源80の正極側に接続され、負極58は、2次側コイルを介して、直流電源80の負極側に接続される。チョークコイル86の挿入により、AM放送波等のMF帯の電波を平面状導体50で受信して得られる受信信号が直流電源80及びグランド側に漏洩することを抑制でき、電源側から混入してくるノイズを抑制できる。
【0064】
図2に示す窓ガラス取り付け構造201の例では、平面状導体50は、ガラス板10と中間膜40の間に配置され、内部導体70は、中間膜40とガラス板20との間に配置される。しかしながら、内部導体70は、ガラス板10と中間膜40の間に配置され、平面状導体50は、中間膜40とガラス板20との間に配置されてもよい。後述の実施形態でも同様である。
【0065】
図3は、第2実施形態における窓ガラス取り付け構造の一構成例の断面図である。上述の実施形態と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。図3に示す窓ガラス取り付け構造202は、車体に形成される窓枠66と、窓枠66に取り付けられる窓ガラス102とを備える。窓ガラス102は、給電電極35が第2内部導体72にガラス板20を介して平面視で対向していない点で、第1実施形態における窓ガラス101と異なる。第2実施形態でも、UHF帯に含まれる電波の受信信号が給電電極35から出力されるので、UHF帯におけるアンテナ利得を確保できる。
【0066】
さらに、上述と同様に、接地電極38が追加されることで、平面状導体50と金属部63との結合容量が増加し、平面状導体50が給電電極35と接地電極38のそれぞれに容量結合することで形成される逆FアンテナのVHF帯におけるアンテナ利得が増大する。
【0067】
したがって、第2実施形態における窓ガラス取り付け構造202は、このような構成により、VHF帯からUHF帯までの領域におけるアンテナ利得を増大できる。なお、第1実施形態と同様に、金属部63は、窓ガラス102の平面視で内部導体70とは異なる箇所で平面状導体50にガラス板20を介して容量結合して電気的に接続する金属部分を有してもよい。窓ガラス取り付け構造202において、そのような金属部分を有する場合、接地電極38の有無にかかわらず、VHF帯からUHF帯までの領域におけるアンテナ利得を増大できる。
【0068】
図4は、第3実施形態における窓ガラス取り付け構造の一構成例の断面図である。上述の実施形態と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。図4に示す窓ガラス取り付け構造203は、車体に形成される窓枠66と、窓枠66に取り付けられる窓ガラス103とを備える。窓ガラス103は、第2内部導体72が平面状導体50に窓ガラス103の平面視の方向で対向していない点で、第1実施形態における窓ガラス101と異なる。第3実施形態では、第2内部導体72は、窓ガラス103の平面視の方向に直角な方向(この例では、主面11又は主面21に平行なX軸方向)で平面状導体50に対向する。例えば、第2内部導体72は、平面状導体50の外周縁56の第2短辺56dに沿って延伸する第2導体部分74を有し、第2導体部分74は、外周縁56の第2短辺56dにX軸方向で対向する。
【0069】
図4に示す例では、平面状導体50及び内部導体70は、主面11に同一層で配置されているが、主面21に同一層で配置されてもよいし、二枚の中間膜40の間に配置されてもよい。
【0070】
図5は、第4実施形態における窓ガラス取り付け構造の一構成例を平面視で示す図である。上述の実施形態と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。図5に示す窓ガラス取り付け構造204は、車体に形成される窓枠66と、窓枠66に取り付けられる窓ガラス104とを備える。窓ガラス104では、平面状導体50は、第1長辺56a又は第2長辺56bに略平行に延伸する少なくとも一本の分割スリット59により第1平面状導体155と第2平面状導体156とに分離されている。
【0071】
例えば、第1平面状導体155は、電圧が印加されるのに対し、第2平面状導体156は、電圧が印加されない。第1平面状導体155には電圧が印加されるので、第1平面状導体155はヒータとして窓ガラス104の防氷や防曇などの機能を有するのに対し、第2平面状導体156には電圧が印加されないので、第2平面状導体156はヒータとしては機能しない。この場合、第2平面状導体156は、AM放送波の帯域を含むMF帯の電波を受信するアンテナとして機能させることができる。
【0072】
ここで、VHF帯の中心周波数における空気中の電波の波長をλ1Cとするとき、分割スリット59の幅WSSは、0.35×10-3×λ1C以下であると、VHF帯の電波の受信感度が向上する。VHFの電波の受信感度が向上する点で、幅WSSは、0.30×10-3×λ1C以下が好ましく、0.25×10-3×λ1C以下がより好ましい。なお、分割スリット59の幅WSSは、第1平面状導体155と第2平面状導体156とが直流的に絶縁されていればよく、例えば、2.0×10-2mm以上としてもよい。
【0073】
なお、分割スリット59は、平面視で、その切れ込み幅がその切れ込み長さよりも短い切れ込みである。
【0074】
第1平面状導体155の面積Sは、第2平面状導体156の面積Sの2.0倍以上9.0倍以下であると、VHF帯の電波の受信感度が向上する。VHF帯の電波の受信感度が向上する点で、面積Sは、面積Sの2.5倍以上が好ましく、面積Sの3.0倍以上がより好ましい。MF帯の電波の受信感度が向上する点で、面積Sは、面積Sの8.5倍以下が好ましく、面積Sの8.0倍以下がより好ましい。
【0075】
給電電極33と給電電極35とのうちの一方又は両方は、窓ガラス104の平面視で分割スリット59と交差してもよく、この例では、分割スリット59に平面視で交差する直線エレメント33b,35bを有する。これにより、VHF帯とUHF帯におけるアンテナ利得が向上する。
【0076】
図6は、各実施形態における窓ガラス取り付け構造を平面視で示す概略図であり、車外側からの視点で示す平面図である。図6は、金属部63がガラス板20の外縁23の全周に沿っている形態を例示する。図6に示す例では、第1内部導体71は、外縁23の全周のうちの一部に沿っているが、外縁23の全周に沿っていてもよい。
【0077】
第2導体部分74の長さLは、60mm以上120mm以下であると、UHF帯におけるアンテナ利得が向上する。UHF帯のアンテナ利得の向上の点で、長さLは、70mm以上が好ましく、80mm以上がより好ましい。UHF帯の利得の向上の点で、長さLは、115mm以下が好ましく、110mm以下がより好ましい。
【0078】
給電電極35の給電点36から、第1導体部分73と第2導体部分74との接点までの距離dは、70mm以上140mm以下であると、UHF帯におけるアンテナ利得が向上する。UHF帯におけるアンテナ利得の向上の点で、距離dは、75mm以上が好ましく、80mm以上がより好ましい。また、UHF帯におけるアンテナ利得の向上の点で、距離dは、135mm以下が好ましく、130mm以下がより好ましい。
【0079】
第2内部導体72の幅wは、5mm以上であると、UHF帯におけるアンテナ利得が向上する。UHF帯におけるアンテナ利得が向上する点で、幅wは、6mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましい。幅wの上限値は、特に限定されず、視界の遮りが過度にならない程度(例えば、20mm)であればよい。
【0080】
第1内部導体71は、第1導体部分73との接続点77から第1端部75aまで延伸する第3導体部分75と、接続点77から第2端部76aまで延伸する第4導体部分76とを有する。第3導体部分75の長さLP1と第4導体部分76の長さLP2は、いずれも、60mm以上であると、UHF帯におけるアンテナ利得が向上する。UHF帯におけるアンテナ利得が向上する点で、長さLP1と長さLP2は、いずれも、65mm以上が好ましく、70mm以上がより好ましい。長さLP1と長さLP2の各々の上限値は、特に限定されない。例えば、長さLP1と長さLP2との和は、金属部63の内縁64の全周長以下でよい。
【0081】
図7は、窓ガラス取り付け構造201(図1)を有する実車を用いて、3つの周波数帯における、第2導体部分74の長さLに対するアンテナ利得の変化を実測した結果の一例を示す図である。図7の測定時において、図1及び図6に示す各部の寸法等の条件は、
第1導体部分73の長さL:40mm
第2導体部分74の長さL:変化
w:10mm
d:100mm
第1内部導体71:ループ状の金属部63に沿ったループ形状
とした。
【0082】
図7において、"FM2"は、FM放送波の帯域(76MHz~108MHz)内の各周波数におけるアンテナ利得の平均値を表す。"DAB2"、DAB Band IIIの帯域(170MHz~240MHz)内の各周波数におけるアンテナ利得の平均値を表す。"DTV2"は、地上デジタルテレビ放送波の帯域(例えば、473MHz~713MHz)内の各周波数におけるアンテナ利得の平均値を表す。"FM2"、"DAB2"、"DTV2"は、いずれも、水平偏波のときに給電電極35から出力される受信信号から測定された値である。後述の実測結果についても同様である。
【0083】
図7によれば、FM放送波及びDAB Band IIIの帯域におけるアンテナ利得を確保した上で、地上デジタルテレビ放送波の帯域におけるアンテナ利得を増大できる長さLの範囲は、60mm以上120mm以下となった。
【0084】
図8は、窓ガラス取り付け構造201(図1)を有する実車を用いて、3つの周波数帯における、距離dに対するアンテナ利得の変化を実測した結果の一例を示す図である。図8の測定時において、図1及び図6に示す各部の寸法等の条件は、
:100mm
d:変化
とし、それら以外の条件は、図7の測定時と同じとした。
【0085】
図8によれば、FM放送波及びDAB Band IIIの帯域におけるアンテナ利得を確保した上で、地上デジタルテレビ放送波の帯域におけるアンテナ利得を増大できる距離dの範囲は、70mm以上140mm以下となった。
【0086】
図9は、窓ガラス取り付け構造201(図1)を有する実車を用いて、3つの周波数帯における、幅wに対するアンテナ利得の変化を実測した結果の一例を示す図である。図9の測定時において、図1及び図6に示す各部の寸法等の条件は、
:100mm
d:180mm
w:変化
とし、それら以外の条件は、図7の測定時と同じとした。
【0087】
図9によれば、FM放送波及びDAB Band IIIの帯域におけるアンテナ利得を確保した上で、地上デジタルテレビ放送波の帯域におけるアンテナ利得を増大できる幅wの範囲は、5mm以上となった。
【0088】
図10は、窓ガラス取り付け構造201(図1)を有する実車を用いて、3つの周波数帯における、LP1とLP2を等長で変化させたときのアンテナ利得の変化を実測した結果の一例を示す図である。図10の測定時において、図1及び図6に示す各部の寸法等の条件は、
:100mm
第1内部導体71:ループ状の金属部63の一辺に沿った直線形状
とし、それら以外の条件は、図7の測定時と同じとした。
【0089】
図10によれば、FM放送波及びDAB Band IIIの帯域におけるアンテナ利得を確保した上で、地上デジタルテレビ放送波の帯域におけるアンテナ利得を増大できる長さLP1と長さLP2の範囲は、いずれも、60mm以上となった。
【0090】
以上、実施形態を説明したが、本開示の技術は上記の実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 ガラス板
11,12 主面
13 遮光膜
14 透過領域
20 ガラス板
21,22 主面
23 外縁
31,32 給電線
33,35 給電電極
34,36 給電点
37,38 接地電極
40 中間膜
50 平面状導体
53,54 フラットワイヤ
56 外周縁
56a 第1長辺
56b 第2長辺
56c 第1短辺
56d 第2短辺
59 分割スリット
60,61 アンプ
62 車体
63 金属部
64 内縁
65 接着剤
66 窓枠
70 内部導体
71 第1内部導体
72 第2内部導体
73 第1導体部分
74 第2導体部分
75 第3導体部分
76 第4導体部分
77 接続点
101,102,103,104 窓ガラス
155 第1平面状導体
156 第2平面状導体
201,202,203,204 窓ガラス取り付け構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10