(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182450
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ガス容器搬送用台車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/10 20060101AFI20221201BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B62B3/10 A
B62B3/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090015
(22)【出願日】2021-05-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 明之
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA33
3D050BB01
3D050BB22
3D050BB29
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG00
3D050HH04
3D050HH06
3D050JJ01
3D050JJ08
3D050KK08
3D050KK11
3D050KK13
(57)【要約】
【課題】シリンダキャビネットやボンベの構造に依存せず、様々なシリンダキャビネットに対するボンベの搬出入に適用でき、重量物であるボンベの搬送、搬出、搬入を、人手をかけることなく容易に行うことが可能なガス容器搬送用台車を提供する。
【解決手段】ボンベBを載置した状態で走行するための車輪25を備えるフレーム2と、フレーム2に備えられ、ボンベBを縦置き姿勢で載置した状態で、昇降機構によって移動することにより、ボンベBを鉛直方向で移動させる載置台3と、ボンベBを載置台3に沿って水平方向にスライド移動させるためのローラ4と、を備え、載置台3はボンベBが載置される底板3aに開口した孔部31を有し、ローラ4は載置台3に沿って水平方向に移動するためのスライド機構を有し、ローラ4が載置台3の下方に位置するときに載置台3が下降することで、孔部31から底板3a上にローラ4が突出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス容器を載置した状態で走行するための車輪を備えるフレームと、
前記フレームに備えられ、前記ガス容器を縦置き姿勢で載置した状態で、昇降機構によって鉛直方向で移動することにより、前記ガス容器を昇降移動させる載置台と、
前記ガス容器を前記載置台に沿って水平方向にスライド移動させるためのローラと、を備えるガス容器搬送用台車であって、
前記載置台は、前記ガス容器が載置される底板に開口した孔部を有し、
前記ローラは、前記載置台に沿って水平方向に移動するためのスライド機構を有し、
前記ローラが前記載置台の下方に位置するときに、前記載置台が下降することで、前記孔部から前記底板上に前記ローラが突出することを特徴とするガス容器搬送用台車。
【請求項2】
前記載置台は、前記孔部が複数で配置されており、
前記ローラは、前記孔部に対応するように複数で配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガス容器搬送用台車。
【請求項3】
前記載置台は、前記ローラが、前記載置台の下方の位置から外れる位置にスライド移動したときに、前記載置台が接地するように下降することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス容器搬送用台車。
【請求項4】
前記載置台が前記昇降機構によって下降する際に生じる衝撃を吸収するダンパーを備えることを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載のガス容器搬送用台車。
【請求項5】
前記ガス容器搬送用台車の走行を規制するストッパーを備えることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか一項に記載のガス容器搬送用台車。
【請求項6】
前記ストッパーが足踏み式であることを特徴とする請求項5に記載のガス容器搬送用台車。
【請求項7】
前記ガス容器を保持する転倒防止治具を備えることを特徴とする請求項1~請求項6の何れか一項に記載のガス容器搬送用台車。
【請求項8】
前記転倒防止治具は、前記ガス容器の側部を取り囲むように保持する固定レバーと、該固定レバーに設けられたねじ孔に螺入され、先端が前記ガス容器の側部に当接するように設けられるスクリューねじとを有することを特徴とする請求項7に記載のガス容器搬送用台車。
【請求項9】
前記転倒防止治具の少なくとも一部を取り外して係止させるためのフックを備えることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のガス容器搬送用台車。
【請求項10】
前記ガス容器搬送用台車を手動で走行させるためのハンドルを備えることを特徴とする請求項1~請求項9の何れか一項に記載のガス容器搬送用台車。
【請求項11】
前記フレームに、該フレームの少なくとも一部を昇降させるアジャスターが備えられていることを特徴とする請求項1~請求項10の何れか一項に記載のガス容器搬送用台車。
【請求項12】
前記車輪を回転駆動する回転駆動機構を備え、自力走行可能とされていることを特徴とする請求項1~請求項11の何れか一項に記載のガス容器搬送用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス容器搬送用台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種ガスを供給するための設備として、シリンダキャビネットが広く用いられている。シリンダキャビネットは、各種ガスが充填されたボンベ(ガス容器)を、ボンベ出し入れ用の扉を有するボンベストッカ(格納スペース)内に縦置き姿勢で格納する。
【0003】
ここで、残量を重量で管理する必要なボンベを用いる場合には、ロードセル等の重量測定手段が必要となり、また、ボンベ内の液相を気相に相転移させる場合には、ボンベの加熱手段が必要となる。このため、シリンダキャビネットの底部には、上記のロードセルや加熱手段等が設置される台座が、ボンベの下方に対応する位置で配置されている。従って、シリンダキャビネットのボンベストッカ内にボンベを格納する際には、シリンダキャビネット底部の台座の高さ以上までボンベを持ち上げ、台座に載置する必要がある。
【0004】
また、シリンダキャビネットにおいては、ボンベストッカ内にボンベを格納する際の作業性を向上させることを目的として、例えば、底部にローラコンベアを設けることで、重量物であるボンベのシリンダキャビネット内における搬送力を軽減できる構成が採用されている。
【0005】
一方、上記の格納作業は、重量物であるボンベを地面(床面)から一定の高さまで抱え上げて行うことになるため、作業者にとって重労働であるとともに、危険な作業となっていた。また、ボンベのシリンダキャビネットへの格納作業にあたっては、まず、シリンダキャビネットの狭いボンベストッカから使用済みのボンベを搬出した後、新たなボンベを搬入する必要があり、作業性も決して良好とは言えなかった。
【0006】
シリンダキャビネット内にボンベを格納する際の作業性を向上させるため、例えば、シリンダキャビネットの底部と地面(床面)との間で傾斜するスロープ治具や、ブロック状の板金部材が組み合わされてなる階段状の昇降治具等を用いる方法も提案されている。しかしながら、これらのスロープ治具や昇降治具を用いた方法では、人手によってボンベを傾斜させたりしながら、大きな労力をかけて、シリンダキャビネットの底部にボンベを載置することになる。このような労働環境の場合、ケガや事故が生じる労災リスクが大きく、また、高齢者や女性の作業者にとっては厳しい、負荷が非常に大きな作業となることから、早急な改善が必要とされていた。
【0007】
上記のような、シリンダキャビネット内にボンベを格納する際の作業性を改善することを目的として、ボンベをリフトアップさせるためのリフトアームをボンベストッカ内に設けることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、ボンベに搬送用アダプタを装着し、この搬送用アダプタを介してボンベ搬送用台車とシリンダキャビネットとの間でガスボンベの搬出及び搬入を行うことも提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭63-074600号公報
【特許文献2】特開2001-106086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、ボンベストッカにリフトアームが装着された構成に関するものなので、ボンベストッカの構造の変更が必要になることから、この技術を適用できるケースが限られてしまうという問題があった。
【0010】
また、特許文献2に開示された技術は、ボンベに搬送用アダプタが装着された構成に関するものであるため、全てのガスボンベに搬送用アダプタを装着する必要があることから、装置コストが著しく増大するとともに、ボンベの周囲構造の変更を伴うため、上記同様、適用できるケースが限られてしまうという問題があった。また、従来と同様、ボンベ搬送用台車とシリンダキャビネットとの間で行われるボンベの搬出及び搬入作業には、多くの人手が必要になるという問題があった。
【0011】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、シリンダキャビネットやボンベの構造に依存することなく、様々なシリンダキャビネットに対するボンベの搬出入に適用できるとともに、重量物であるボンベの搬送、搬出、搬入を、人手をかけることなく容易に行うことが可能なガス容器搬送用台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、ガス容器を載置した状態で走行するための車輪を備えるフレームと、前記フレームに備えられ、前記ガス容器を載置した状態で、昇降機構によって鉛直方向で移動することにより、前記ガス容器を昇降移動させる載置台と、前記ガス容器を前記載置台に沿って水平方向にスライド移動させるためのローラと、を備えるガス容器搬送用台車であって、前記載置台は、前記ガス容器が載置される底板に開口した孔部を有し、前記ローラは、前記載置台に沿って水平方向に移動するためのスライド機構を有し、前記ローラが前記載置台の下方に位置するときに、前記載置台が下降することで、前記孔部から前記底板上に前記ローラが突出することを特徴とするガス容器搬送用台車である。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、前記載置台は、前記孔部が複数で配置されており、前記ローラは、前記孔部に対応するように複数で配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガス容器搬送用台車である。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、前記載置台は、前記ローラが、前記載置台の下方の位置から外れる位置にスライド移動したときに、前記載置台が接地するように下降することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス容器搬送用台車である。
【0015】
また、請求項4に係る発明は、前記載置台が前記昇降機構によって下降する際に生じる衝撃を吸収するダンパーを備えることを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載のガス容器搬送用台車である。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、前記ガス容器搬送用台車の走行を規制するストッパーを備えることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか一項に記載のガス容器搬送用台車である。
【0017】
また、請求項6に係る発明は、前記ストッパーが足踏み式であることを特徴とする請求項5に記載のガス容器搬送用台車である。
【0018】
また、請求項7に係る発明は、前記ガス容器を保持する転倒防止治具を備えることを特徴とする請求項1~請求項6の何れか一項に記載のガス容器搬送用台車である。
【0019】
また、請求項8に係る発明は、前記転倒防止治具は、前記ガス容器の側部を取り囲むように保持する固定レバーと、該固定レバーに設けられたねじ孔に螺入され、先端が前記ガス容器の側部に当接するように設けられるスクリューねじとを有することを特徴とする請求項7に記載のガス容器搬送用台車である。
【0020】
また、請求項9に係る発明は、前記転倒防止治具の少なくとも一部を取り外して係止させるためのフックを備えることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のガス容器搬送用台車である。
【0021】
また、請求項10に係る発明は、前記ガス容器搬送用台車を手動で走行させるためのハンドルを備えることを特徴とする請求項1~請求項9の何れか一項に記載のガス容器搬送用台車である。
【0022】
また、請求項11に係る発明は、前記フレームに、該フレームの少なくとも一部を昇降させるアジャスターが備えられていることを特徴とする請求項1~請求項10の何れか一項に記載のガス容器搬送用台車である。
【0023】
また、請求項12に係る発明は、前記車輪を回転駆動する回転駆動機構を備え、自力走行可能とされていることを特徴とする請求項1~請求項11の何れか一項に記載のガス容器搬送用台車である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るガス容器搬送用台車によれば、ガス容器の載置台が、ガス容器が載置される底板に開口した孔部を有し、ローラが、載置台に沿って水平方向に移動するためのスライド機構を有しており、ローラが、載置台の下方に位置するときに、載置台が下降することで、孔部から底板にローラが突出する構成を採用している。
上記構成により、ガス容器搬送用台車の載置台上にボンベを載せるときは、ローラを載置台の後端部側に後退させて載置台を接地させることで、載置台と地面(床面)との間の段差を最小限に抑制できるので、ボンベを載置台上に容易に載せることが可能となる。一方、ボンベをシリンダキャビネット内から搬出するときは、ローラを載置台の先端側に前進させ、載置台を下降させてローラを孔部から突出させることにより、ローラ上にボンベを載せることができるので、ボンベを容易に搬出することが可能となる。
従って、シリンダキャビネットやボンベの構造変更が不要であり、且つ、シリンダキャビネットやボンベの構造に依存することなく、様々なシリンダキャビネットに対するボンベの搬出入に適用できるとともに、重量物であるボンベの搬送、搬出、搬入を、人手をかけることなく容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明を適用した実施形態であるガス容器搬送用台車を模式的に説明する図であり、ガス容器搬送用台車の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明を適用した実施形態であるガス容器搬送用台車を模式的に説明する図であり、
図1に示したガス容器搬送用台車において、載置台を接地させた状態を示す正面図である。
【
図3A】本発明を適用した実施形態であるガス容器搬送用台車を模式的に説明する図であり、
図1に示したガス容器搬送用台車の側面図である。
【
図3B】本発明を適用した実施形態であるガス容器搬送用台車を模式的に説明する図であり、
図3Aに示したガス容器搬送用台車の先端側を上昇させることで全体的に傾斜させた状態を示す側面図である。
【
図4】本発明を適用した実施形態であるガス容器搬送用台車を模式的に説明する図であり、
図1に示したガス容器搬送用台車の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を適用した一実施形態であるガス容器搬送用台車について、図面を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0027】
<ガス容器搬送用台車の構成>
本実施形態のガス容器搬送用台車の構成について、
図1~
図4を参照しながら詳述する。
図1は、本実施形態のガス容器搬送用台車1の全体構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示したガス容器搬送用台車1において、載置台3を接地させた状態を示す正面図である。
図3Aは、
図1に示したガス容器搬送用台車の側面図であり、
図3Bは、
図3Aに示したガス容器搬送用台車1の先端1A側を上昇させることで全体的に傾斜させた状態を示す側面図である。また、
図4は、
図1に示したガス容器搬送用台車1の背面図である。
【0028】
本実施形態のガス容器搬送用台車1は、例えば、図示略のシリンダキャビネットに備えられるボンベストッカ(格納スペース)内への、ボンベ(ガス容器)Bの搬出入に用いられるものである。即ち、ガス容器搬送用台車1は、シリンダキャビネットにおける底部が底上げされた台座の上に、ボンベBを持ち上げて載置することで、ボンベストッカ内にボンベBを縦置き姿勢で格納するものである。上記のシリンダキャビネットは、ボンベB内に充填されたガスを、例えば、半導体製造装置等に供給するものである。
【0029】
具体的には、本実施形態のガス容器搬送用台車1は、
図1~
図4に示すように、フレーム2と、フレーム2に備えられる載置台3と、ローラ4とを備える。
また、ガス容器搬送用台車1は、載置台3が、ボンベBが載置される底板3aに開口する孔部31を有し、ローラ4が、載置台3に沿って水平方向に移動するためのスライド機構41を有している。
そして、本実施形態のガス容器搬送用台車1は、ローラ4が、載置台3の下方に位置するときに、載置台3が下降することで、孔部31から底板3a上にローラ4が突出するように構成されている。
【0030】
さらに、
図1~
図4に示す例のガス容器搬送用台車1は、衝撃吸収用のダンパー5と、ガス容器搬送用台車1の走行を規制するストッパー6と、ボンベBの転倒を防止する転倒防止治具7と、ガス容器搬送用台車1を走行させるためのハンドル8と、フレーム2の一部を昇降させるアジャスター9とを備えている。
【0031】
本実施形態のガス容器搬送用台車1は、
図1等に示す先端1A側において、ボンベBの搬出入が行われ、後端1B側は、主として作業者がガス容器搬送用台車1を走行させる等の操作を行う位置となる。このため、本明細書においては、便宜上、先端1Aをガス容器搬送用台車1の前側、後端1Bをガス容器搬送用台車1の後ろ側とし、これら先端1Aと後端1Bとの間を「前後方向」等と表現する場合がある。
【0032】
フレーム2は、ガス容器搬送用台車1を構成する各要素を支持するものであり、ボンベBを載置した状態で走行するための車輪25を備えて構成される。
図示例においては、フレーム2の下部に、平面視で概略矩形状に形成された下枠部21が配置され、この下枠部21、及び、後述の側枠部22から後方に延出するように設けられる支持部24を平面視(上面視)したとき、これらの計4箇所の角部に、車輪25がそれぞれ回転及び旋回自在に配置されている。また、上記の下枠部21は、フレーム2の基台として機能するものであり、詳細を後述する載置台3やローラ4等が取り付けられている。
また、フレーム2は、上記の下枠部21を基台として、この下枠部21から上方に向けて延設され、
図2の正面図に示すように、平面視で概略矩形状に形成された側枠部22を有している。また、側枠部22は、下枠部21における、上記の後端1B側に設けられており、上述したように、支持部24が後方に延出するように設けられている。
【0033】
フレーム2は、ボンベBに比べて全体的に幅広とされ、且つ、幅方向よりも前後方向に若干長い構成とされており、さらに、ボンベBに対して2/3程度の高さとされている。即ち、フレーム2は、下枠部21及び側枠部22がボンベBに比べて幅広であり、また、下枠部21が、幅方向に比べて前後方向が若干長く構成されている。さらに、フレーム2は、側枠部22の高さが、ボンベBに対して概略で2/3程度の高さとされている。
【0034】
載置台3は、フレーム2の下枠部21上に備えられ、図示略のシリンダキャビネットに対して搬出入するボンベBが載置される。載置台3は、ボンベBを縦置き姿勢で載置した状態で、昇降機構35によって鉛直方向で移動することにより、ボンベBを昇降移動させる。
【0035】
昇降機構35は、例えば、油圧ジャッキからなるものを採用でき、昇降ハンドル35aを操作することで、油圧によって載置台3を上下動させるものである。
なお、載置台3を昇降させる昇降機構35としては、特に限定されないが、上述した油圧ジャッキの他、例えば、電動モータ、空圧シリンダ等を、ユーティリティを考慮しながら適宜採用することが可能である。
【0036】
載置台3は、フレーム2における上記の先端1A側、即ち、下枠部21上において側枠部22が設置された後端1Bとは反対側に配置されている。
図1等に示す載置台3は、平面視で概略U字状とされ、図示例では、ボンベBが載置される底板3aに開口する複数の孔部31を有している。また、載置台3は、底板3aの周縁部から立ち上がるように側壁部3dが形成されており、後端部3c及びその両側に側壁部3dが配置されている一方、先端部3bには側壁部3dが形成されておらず、この位置のみが開口した構成とされている。
【0037】
また、
図1等に示す例においては、底板3aにおいて、隣接した計3箇所の孔部31が2列で平行に並べられるように配置されている。また、図示例の孔部31は、後述のローラ4が挿通されて底板3aから突出できるように、概略スリット状に形成されている。
【0038】
ローラ4は、ボンベBを、載置台3の底板3aに沿って水平方向にスライド移動させるものであり、図示例では、隣接した計3本のローラ4が2列で平行に配列されることで、計6本のローラ4によって所謂ローラコンベアが構成されている。
図1等に示す例では、回動自在なフリーローラからなるローラ4を計6本備えている。また、図示例のローラ4は、載置台3の孔部31に対応する本数及び位置で設けられている。また、複数のローラ4は、各々、図示略の回転軸によって回動自在に設けられている。
本実施形態のガス容器搬送用台車1で用いられるローラ4の径や本数は、特に限定されず、載置対象となるボンベBの規格等に応じて、必要な強度や面積となるように適宜選択することが可能である。
【0039】
ローラ4は、載置台3の底板3aに沿って、フレーム2の前後方向で水平移動するためのスライド機構41を有している。
図1及び
図4に示す例においては、スライド機構41の動作により、ローラ4が、載置台3の下方において、孔部31に対応する位置に配置された状態を示しているが、この位置で載置台3が下降することで、孔部31から底板3a上にローラ4が突出した状態となる。
本実施形態のガス容器搬送用台車1は、上記構成により、ローラ4上にボンベBが縦置き姿勢とされた状態で、このボンベBを水平方向にスライド移動させることが可能な構成とされている。
【0040】
また、本実施形態で説明する例においては、複数のローラ4が、載置台3の下方の位置から外れる位置、即ち、載置台3の後端部3c側にスライド移動で後退したときに、
図2に示すように、載置台3の底板3aが地面(床面)Jに接地するように下降する。
より具体的に説明すると、
図3A中に示すような、載置台3を昇降機構35によって上昇させた状態で、複数のローラ4を、載置台3の後端部3c側に移動させることで、載置台3の底板3aの下方に配置された状態とする。この状態で、
図2中に示すように、載置台3を昇降機構35によって下降させることで、底板3aを地面(床面)Jに接地させる。
本実施形態で説明する例のガス容器搬送用台車1は、上記構成により、例えば、地面(床面)Jに置かれたボンベBを、地面(床面)Jに接地した載置台3の底板3aに、容易に載せることが可能な構成とされている。
【0041】
スライド機構41は、複数のローラ4を、スライド軸42に沿って前後方向にスライド駆動するものである。スライド機構41に用いられる駆動源としては、特に限定されないが、例えば、手動マニピュレーター、電動モータ、空圧シリンダ、又は油圧シリンダ等を、ユーティリティを考慮しながら適宜採用することが可能である。
また、図示例のスライド機構41は、ガス容器搬送用台車1の前後方向で複数のローラ4の位置を切り替えるための手動レバー41a、図示略の複数のリンク、及び、図示略の複数のジョイントを備えたリンク機構から構成される。これらのうち、複数のジョイントは、複数のリンクが回転自在となるように、リンク同士を連結する。また、手動レバー41aの端部は、複数のリンクが回転自在となるように、リンクの一端側に接続されている。そして、スライド機構41は、手動レバー41aを水平方向にスライドさせることで、複数のリンク同士が連動しながら回転することにより、リンク機構全体がガス容器搬送用台車1の前後方向に伸縮し、複数のローラ4をスライド駆動する。
【0042】
また、本実施形態のガス容器搬送用台車1では、載置台3において、孔部31が複数で配置され、ローラ4が、複数の孔部31に対応するように複数で配置されていることがより好ましい。これにより、各々の孔部31を小さく構成でき、載置台3の底板3aの実質面積を十分に確保できるので、ボンベBを安定した状態で載置することが可能となる。
【0043】
本実施形態のガス容器搬送用台車1においては、
図1及び
図4中に示す例のように、載置台3が昇降機構35によって下降する際に生じる衝撃を吸収するためのダンパー5を備えることがより好ましい。図示例のダンパー5は、上端51側が詳細を後述する転倒防止治具7の支柱71に固定されているとともに、下端52側が下枠部21に固定されている。このようなダンパー5としては、例えば、ガスダンパー等からなるものを採用できる。
【0044】
載置台3に載置されるボンベBは、サイズ等にも依るが、重量が150kg近くに達することもあるため、ボンベBが載置された状態で載置台3を接地させるときは、ダンパー5の緩衝作用により、緩やかに接地させることが好ましい。
【0045】
また、本実施形態においては、
図1等に示す例のように、ガス容器搬送用台車1の走行を規制するストッパー6を備えることがより好ましい。このようなストッパー6としては、例えば、図示例のような、足踏み式レバー61を踏み込むことで車輪25の回動を規制できる足踏み式ストッパー(ブレーキ)を採用することができる。
上記のストッパー6を備えることで、例えば、ボンベBを水平移動させた際に反力が生じたときに、ガス容器搬送用台車1全体が後方側(ストッパー6側)に傾くのを防止することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態においては、ボンベBを載置台3上に安定して保持するための転倒防止治具7を備えることがより好ましい。このような転倒防止治具としては、例えば、チェーンやバンドから構成され、ボンベBをフレーム2に固定して一体化できるものを採用することができる。また、転倒防止治具としては、上述したチェーンやバンドのような帯状部材には限定されず、例えば、ボンベBを吸着して保持できるような部材であっても構わない。
【0047】
また、転倒防止治具7としては、
図1等に例示するような、ボンベBの側部を取り囲むように保持する固定レバー72と、固定レバー72に設けられたねじ孔73に螺入され、図示略の端部(先端)がボンベBの側部に当接するように設けられるスクリューねじ74とを有する構成のものを採用することがより好ましい。図示例の転倒防止治具7は、固定レバー72が、ボンベBの上部及び下部にそれぞれ対応する位置で2箇所に設けられ、これらの固定レバー72が支柱71に固定されている。また、支柱71は、フレーム2の下枠部21に固定されている。また、図示例の固定レバー72は、支柱71に固定される背面レバー72aと、上記のねじ孔73が設けられた脱着レバー72bとから構成され、これら背面レバー72aと、脱着レバー72bとが、抜き差し金具72cによって脱着自在に組み付けられている。
上記の転倒防止治具7を備えることにより、載置台3上に載置したボンベBの姿勢にブレが生じるのを抑制できるので、ボンベBを安定姿勢で搬送することが可能になる。
【0048】
さらに、本実施形態においては、上記の転倒防止治具7の少なくとも一部を取り外して係止させることが可能なフック23を備えることが、ボンベBを搭載していない状態でガス容器搬送用台車1を回送走行させる際等の安全性確保の観点等からより好ましい。この場合、フック23には、例えば、背面レバー72aから取り外された脱着レバー72bを、ねじ孔73にスクリューねじ74が螺入された状態で係止させることができる。
【0049】
また、本実施形態においては、ガス容器搬送用台車1を作業車が手動で走行させるためのハンドル8を備えることがより好ましい。
図1~
図4に示す例では、ハンドル8が、フレーム2を構成する側枠部22における、ボンベBが配置される側と反対側となる後端1B側の2箇所に設けられている。本実施形態のガス容器搬送用台車1は、図示例のような2箇所のハンドル8が設けられていることにより、作業者がハンドル8を操作することで、手動でガス容器搬送用台車1を走行させてボンベBを容易に搬送することが可能になる。
【0050】
なお、本実施形態においては、作業者がハンドル8を操作することで、ガス容器搬送用台車1を車輪25の回転によって走行させる手動式のものを例に挙げて説明しているが、本発明では、このような手動式のものには限定されない。例えば、さらに、車輪25を回転駆動する図示略のモータ等の回転駆動機構を備え、ガス容器搬送用台車全体を自力走行させることで、ボンベBの搬送を自走で行うことが可能な構成を採用してもよい。
【0051】
また、本実施形態においては、
図3A及び
図3Bに示すように、フレーム2の下枠部21に、フレーム2の少なくとも一部を昇降させるアジャスター9が備えられていてもよい。図示例のアジャスター9は、フレーム2の下枠部21において、載置台3を側方から挟み込むように2箇所で設けられている。アジャスター9は、
図3Bに示すように、レバー91を操作することにより、下枠部21の下部から下端部92が突出することで、フレーム2の下枠部21における載置台3が配置された先端1A側を上昇させるとともに、これに伴って載置台3を上昇させることができる。
【0052】
上記のアジャスター9が備えられていることにより、例えば、ガス容器搬送用台車1と図示略のシリンダキャビネットとの間で高さが異なる場合、即ち、シリンダキャビネット側の底部が若干高めである場合に、載置台3を若干上昇させることができる。これにより、ボンベBが載置台3及びローラ4上をスライド移動してガス容器搬送用台車1からシリンダキャビネットに向けて移動する際に、シリンダキャビネットの底部に引っ掛かったりするのを防止できるので、安全な受け渡しが可能になる。
【0053】
本実施形態のガス容器搬送用台車1によれば、上記構成を備えることにより、従来のガス容器搬送用台車にように、ボンベやシリンダキャビネットの構造を変更する必要が無い(上述した先行技術文献・特許文献1,2も参照)。これにより、シリンダキャビネットやボンベの構造に依存することなく、様々なシリンダキャビネットに対するボンベの搬出入に適用できる。
【0054】
本実施形態のガス容器搬送用台車1を用いて、図示略のシリンダキャビネットの内部に新たなボンベBを搬入する手順、並びに、シリンダキャビネットから使用後のボンベBを搬出する手順並びに効果について、以下に説明する。
【0055】
まず、ストッパー6を踏み込むことで、車輪25が回動するのを規制した状態とする。
次に、複数のローラ4をスライド機構41で後退させ、載置台3の底板3aを地面(床面)Jに接地させる。この際、まず、昇降機構35に備えられる昇降ハンドル35aを操作することで、一旦、載置台3を上昇させる。次いで、スライド機構41に備えられる図示略の手動レバーを操作することで、複数のローラ4を後端1B側にスライド移動させる。その後、載置台3の底板3aを、地面(床面)Jに接地する位置まで降下させる。
【0056】
次に、上下の2箇所に配置された固定レバー72の脱着レバー72bを、スクリューねじ74を緩めることで背面レバー72aから取り外す。
次に、上記の状態で、地面(床面)Jに置かれたボンベBを載置台3の底板3aに載せる。この際、まず、ボンベBを底板3aに載せた後、背面レバー72aにボンベBの側面を寄せて位置出しする。本実施形態のガス容器搬送用台車1においては、載置台3と地面(床面)Jとの段差が極めて小さな状態となるので、重量物であるボンベBを抱え上げることなく、容易に載置台3上に載せることができる。
次に、脱着レバー72bを、ボンベBの側面を取り囲むように、背面レバー72aに取り付け、スクリューねじ74をねじ孔73に螺入して端部をボンベBの側部に当接させることで、ボンベBを保持する。
【0057】
次に、昇降機構35に備えられる昇降ハンドル35aを操作することで、ボンベBを載せた載置台3を、その昇降範囲における上限側に移動させる。この状態で、スライド機構41に備えられる手動レバー41aを操作することで、複数のローラ4をスライド機構41によって先端1A側に前進させる。
次いで、昇降機構35の昇降ハンドル35aを操作し、載置台3を下降させることで、複数の孔部31の各々に複数のローラ4を挿通させ、各々のローラ4を底板3a上に突出させる。その後、再び昇降ハンドル35aを操作することで、載置台3の高さ方向の位置を、この位置で固定する。これにより、底板3a上のボンベBは、複数の孔部31から突出した複数のローラ4によって支持された状態となる。
【0058】
次に、足踏み式レバー61を踏み込むことでストッパー6を解除し、ハンドル8の操作によって手動でガス容器搬送用台車1を走行させ、ボンベBを、例えばシリンダキャビネット等の設置予定場所まで搬送する。
次に、スクリューねじ74を緩めた後、脱着レバー72bを背面レバー72aから取り外す。
そして、複数のローラ4上でボンベBを水平方向でスライド移動させることにより、ボンベBを、シリンダキャビネットの底部等の設置予定位置まで移動させる。この際、複数のローラ4の回転によってボンベBがスライド移動するので、ボンベBを抱え上げることなくシリンダキャビネットの底部に容易に載置することができる。
【0059】
なお、シリンダキャビネット内から使用済のボンベBを搬出する際は、上記と逆の順番でガス容器搬送用台車1を操作すればよい。
即ち、まず、ストッパー6で車輪25の回動を規制し、昇降機構35によって載置台3を上昇させた状態で、スライド機構41に備えられる手動レバー41aを操作することで、複数のローラ4をスライド機構41によって前進させることにより、載置台3の孔部31から各々のローラ4を底板3a上に突出させる。
【0060】
次に、シリンダキャビネット内から使用済のボンベBをスライド移動させ、複数のローラ4上に乗り上げるように引き出す。次いで、上記同様、ボンベBの側面を背面レバー72aに寄せて位置出した後、脱着レバー72bを、ボンベBの側面を取り囲むように、背面レバー72aに取り付け、スクリューねじ74をねじ孔73に螺入して端部をボンベBの側部に当接させることで、ボンベBを保持する。
【0061】
次に、使用済のボンベBを運び込む位置までガス容器搬送用台車1を手動走行させた後、ストッパー6で車輪25の回動を規制し、昇降機構35の昇降ハンドル35aを操作することで、一旦、ボンベBが載せられた載置台3を上昇させる。この状態で、スライド機構41に備えられる手動レバー41aを操作することで、複数のローラ4をスライド機構41によって後端1B側に後退させる。その後、載置台3の底板3aを、地面(床面)Jに接地する位置まで降下させる。
【0062】
次に、上下の2箇所に配置された脱着レバー72bを、スクリューねじ74を緩めることで背面レバー72aから取り外す。
そして、載置台3の底板3a上に載せられた使用済のボンベBを、地面(床面)Jまで引き出す。
これにより、一定の高さを有するシリンダキャビネットの底部から使用済のボンベBを容易に搬出できるとともに、このボンベBをガス容器搬送用台車1の載置台3上、即ち、載置台3の孔部31から突出した複数のローラ4上に容易に載せることができる。
【0063】
なお、本実施形態のガス容器搬送用台車1は、上述したボンベBを搬送する用途にのみ限定されるものではなく、人手で搬出及び搬入を行うことが困難な重量物を搬送する用途で幅広く適用することが可能である。
【0064】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態のガス容器搬送用台車1によれば、ボンベBの載置台3が、ボンベBが載置される底板3aに開口する孔部31を有し、ローラ4が、載置台3に沿って水平方向に移動するためのスライド機構41を有しており、ローラ4が、載置台3の下方に位置するときに、載置台3が下降することで、孔部31からローラ4が突出する構成を採用している。
上記構成により、ガス容器搬送用台車1の載置台3上にボンベBを載せるときは、ローラ4を載置台3の後端部3c側に後退させて載置台3を接地させることで、載置台3と地面(床面)Jとの間の段差を最小限に抑制できるので、ボンベBを載置台3上に容易に載せることが可能となる。一方、ボンベBをシリンダキャビネット内から搬出するときは、複数のローラ4を載置台3の先端部3b側に前進させ、載置台3を下降させてローラ4を孔部31から突出させることにより、複数のローラ4上にボンベBを載せることができるので、ボンベBを容易に搬出することが可能となる。
従って、シリンダキャビネットやボンベB自体の構造変更が不要であり、且つ、シリンダキャビネットやボンベBの構造に依存することなく、様々なシリンダキャビネットに対するボンベBの搬出入に適用できるとともに、重量物であるボンベBの搬送、搬出、搬入を、人手をかけることなく容易に行うことが可能になる。
【0065】
<本発明の変形例>
本発明の実施の形態について、図面を参照して上記のように説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を施すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のガス容器搬送用台車は、シリンダキャビネットやボンベの構造に依存することなく、様々なシリンダキャビネットに対するボンベの搬出入に適用できるとともに、重量物であるボンベの搬送、搬出、搬入を、人手をかけることなく容易に行うことが可能なものである。従って、本発明のガス容器搬送用台車は、例えば、半導体製造装置等に原料ガスを供給するためのシリンダキャビネットに対し、ボンベを搬出入する用途において非常に好適である。
【符号の説明】
【0067】
1…ガス容器搬送用台車
1A…先端
2A…後端
2…フレーム
21…下枠部
22…側枠部
23…フック
24…支持部
25…車輪
3…載置台
3a…底板
3b…先端部
3c…後端部
3d…側壁部
31…孔部
35…昇降機構
35a…昇降ハンドル
4…ローラ
41…スライド機構
41a…手動レバー
5…ダンパー
51…上端
52…下端
6…ストッパー
61…足踏み式レバー
7…転倒防止治具
71…支柱
72…固定レバー
72a…背面レバー
72b…脱着レバー
72c…抜き差し金具
8…ハンドル
9…アジャスター
91…レバー
92…下端部
J…地面(床面)