(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182453
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】銅張積層板および銅張積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20221201BHJP
C23C 14/14 20060101ALI20221201BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H05K1/03 630H
C23C14/14 G
C23C14/34
H05K1/03 630E
H05K1/03 670
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090022
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 茂樹
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA11
4K029AA25
4K029BA02
4K029BA07
4K029BA08
4K029BA11
4K029BA12
4K029BA17
4K029BB02
4K029BD02
4K029CA05
4K029DC03
4K029JA10
4K029KA01
4K029KA03
(57)【要約】
【課題】導体層の剥離を抑制でき、また、伝送損失を低減できる銅張積層板を提供する。
【解決手段】銅張積層板は両側の縁領域A1と中間領域A2とを有する。銅張積層板は、ベースフィルム10と、ベースフィルム10の表面のうち縁領域A1のみに成膜された下地金属層21と、ベースフィルム10の表面のうち中間領域A2および下地金属層21の表面に成膜された銅薄膜層22と、銅薄膜層22の表面に成膜された銅めっき被膜23とを有する。銅張積層板の縁領域A1は下地金属層21によりベースフィルム10と導体層20との密着性が維持されているので、導体層20の剥離を抑制できる。銅張積層板の中間領域A2には下地金属層21がないので、形成された配線の伝送損失を低減できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った両側の縁領域と中間領域とを有する帯状の銅張積層板であって、
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの表面のうち前記縁領域のみに成膜された下地金属層と、
前記ベースフィルムの表面のうち前記中間領域および前記下地金属層の表面に成膜された銅薄膜層と、
前記銅薄膜層の表面に成膜された銅めっき被膜と、を備える
ことを特徴とする銅張積層板。
【請求項2】
前記下地金属層は、ニッケル、クロム、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される金属、または、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、チタンおよび銅からなる群から選択される少なくとも2種の元素を含む合金からなる
ことを特徴とする請求項1記載の銅張積層板。
【請求項3】
前記下地金属層の厚さは10~50nmである
ことを特徴とする請求項1または2記載の銅張積層板。
【請求項4】
前記縁領域の幅は5mm以下である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の銅張積層板。
【請求項5】
長手方向に沿った両側の縁領域と中間領域とを有する帯状の銅張積層板の製造方法であって、
乾式めっき法によりベースフィルムの表面のうち前記縁領域のみに下地金属層を成膜する下地金属層成膜工程と、
乾式めっき法により前記ベースフィルムの表面のうち前記中間領域および前記下地金属層の表面に銅薄膜層を成膜する銅薄膜層成膜工程と、
湿式めっき法により前記銅薄膜層の表面に銅めっき被膜を成膜する銅めっき被膜成膜工程と、を備える
ことを特徴とする銅張積層板の製造方法。
【請求項6】
前記下地金属層は、ニッケル、クロムおよびモリブデンからなる群から選択される金属、または、ニッケル、クロム、バナジウム、チタン、モリブデンおよび銅からなる群から選択される少なくとも2種の元素を含む合金からなる
ことを特徴とする請求項5記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項7】
前記下地金属層の厚さは10~50nmである
ことを特徴とする請求項5または6記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項8】
前記縁領域の幅は5mm以下である
ことを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の銅張積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅張積層板および銅張積層板の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、フレキシブルプリント配線板(FPC)などの製造に用いられる銅張積層板、およびその銅張積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話などの電子機器には、樹脂フィルムの表面に配線パターンが形成されたフレキシブルプリント配線板が用いられる。フレキシブルプリント配線板は樹脂フィルムに銅泊を積層した銅張積層板から製造される。
【0003】
銅張積層板の製造方法としてメタライジング法が知られている(例えば、特許文献1)。メタライジング法による銅張積層板の製造は、例えば、つぎの手順で行なわれる。まず、乾式めっき法により、樹脂フィルムの表面にニッケルクロム合金からなる下地金属層と銅薄膜層とを順に成膜する。つぎに、湿式めっき法により、銅薄膜層の上に銅めっき被膜を成膜する。メタライジング法により、樹脂フィルム上に直接導体層が成膜された、いわゆる2層基板と称されるタイプの銅張積層板が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子機器が処理する情報量は年々増加している。そのため、フレキシブルプリント配線板には高周波信号の処理が要求されているものがある。配線に流れるパルスが高周波領域になると、表皮効果により配線の表面に多くの電流が流れる。下地金属層は銅層に比べて電気伝導率が低いため、下地金属層があると伝送損失が大きくなる。そこで、伝送損失を低減するために、下地金属層を有さず、樹脂フィルムの表面に直接銅層が成膜された銅張積層板が求められている。
【0006】
しかし、下地金属層は樹脂フィルムと導体層との密着性を向上するためにある。樹脂フィルムの表面に直接銅薄膜層を成膜すると、樹脂フィルムと銅薄膜層との密着性が低くなる。そのため、湿式めっき法により銅めっき被膜を成膜する際に、めっき液に侵食され、樹脂フィルムから導体層が剥離することがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、導体層の剥離を抑制でき、また、伝送損失を低減できる銅張積層板、およびその銅張積層板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の銅張積層板は、長手方向に沿った両側の縁領域と中間領域とを有する帯状の銅張積層板であって、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面のうち前記縁領域のみに成膜された下地金属層と、前記ベースフィルムの表面のうち前記中間領域および前記下地金属層の表面に成膜された銅薄膜層と、前記銅薄膜層の表面に成膜された銅めっき被膜と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、銅張積層板の縁領域は下地金属層によりベースフィルムと導体層との密着性が維持されているので、導体層の剥離を抑制できる。また、銅張積層板の中間領域には下地金属層がないので、形成された配線の伝送損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】図(A)は一実施形態に係る銅張積層板の平面図である。図(B)は同銅張積層板の断面図である。
【
図3】同銅張積層板の製造手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔銅張積層板〕
図1(A)に示すように、本発明の一実施形態に係る銅張積層板1は長尺帯状である。銅張積層板1は両側の縁領域A1、A1とそれらの間の中間領域A2とを有する。縁領域A1は銅張積層板1の長手方向に沿った縁の近傍の帯状領域である。銅張積層板1は左右両方の縁に沿った2つの縁領域A1、A1を有する。中間領域A2は両側の縁領域A1、A1の間の帯状領域である。
【0012】
特に限定されないが、銅張積層板1の幅寸法は150~600mmが一般的である。フレキシブルプリント配線板の製造時には銅張積層板1の両縁から4~5mm程度の領域には配線を形成しない。この配線を形成しない領域よりも狭い領域を縁領域A1とすることが好ましい。したがって、一方の縁領域A1の幅は5mm以下が好ましい。フレキシブルプリント配線板の製造時には銅張積層板1の中間領域A2に配線が形成される。
【0013】
図1(B)に示すように、銅張積層板1は、ベースフィルム10と、ベースフィルム10の表面に形成された導体層20とを有する。導体層20はベースフィルム10の片面のみに形成されてもよいし、ベースフィルム10の両面に形成されてもよい。
【0014】
ベースフィルム10としてポリイミドフィルム、液晶ポリマー(LCP)フィルムなどの樹脂フィルムを用いることができる。特に限定されないが、ベースフィルム10の厚さは10~100μmが一般的である。
【0015】
図2に銅張積層板1の一方の縁領域A1周辺の拡大断面図を示す。なお、他方の縁領域A1周辺の断面構造は
図2に示すものと左右対称の構造である。導体層20は下地金属層21、銅薄膜層22および銅めっき被膜23とからなる。下地金属層21はベースフィルム10の表面のうち縁領域A1のみに成膜されている。ベースフィルム10の表面のうち中間領域A2には下地金属層21が成膜されていない。銅薄膜層22はベースフィルム10の表面のうち中間領域A2および下地金属層21の表面に成膜されている。すなわち、銅薄膜層22は銅張積層板1の全幅にわたって成膜されている。銅薄膜層22は、縁領域A1は下地金属層21の上に積層され、中間領域A2はベースフィルム10の上に積層されている。銅めっき被膜23は銅薄膜層22の表面に成膜されている。
【0016】
すなわち、縁領域A1は、ベースフィルム10の表面に下地金属層21、銅薄膜層22および銅めっき被膜23がこの順に積層されている。一方、中間領域A2は、下地金属層21を介さず、ベースフィルム10の表面に銅薄膜層22および銅めっき被膜23がこの順に積層されている。
【0017】
下地金属層21および銅薄膜層22は乾式めっき法により成膜される。下地金属層21は、ニッケル、クロム、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される金属から形成される。また、下地金属層21は、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、チタンおよび銅からなる群から選択される少なくとも2種の元素を含む合金から形成してもよい。なかでも、ニッケル、クロムまたはニッケルクロム合金が好適である。特に限定されないが、下地金属層21の厚さは10~50nmが好ましい。また、銅薄膜層22の厚さは50~500nmが一般的である。
【0018】
銅めっき被膜23は湿式めっき法により成膜される。特に限定されないが、銅めっき被膜23の厚さは、サブトラクティブ法により加工される銅張積層板1の場合8~12μmが一般的であり、セミアディティブ法により加工される銅張積層板1の場合0.1~5μmが一般的である。
【0019】
〔銅張積層板の製造方法〕
つぎに、
図3に基づき、銅張積層板1の製造方法を説明する。
(1)下地金属層成膜工程
まず、乾式めっき法により、ベースフィルム10の表面のうち縁領域A1のみに下地金属層21を成膜する。乾式めっき法としてスパッタリング法、真空蒸着法およびイオンプレーティング法などが挙げられる。これらのなかでもスパッタリング法が好ましい。
【0020】
(2)銅薄膜層成膜工程
つぎに、乾式めっき法によりベースフィルム10の表面のうち中間領域A2および下地金属層21の表面に銅薄膜層22を成膜する。
【0021】
(3)銅めっき被膜成膜工程
最後に、湿式めっき法により銅薄膜層22の表面に銅めっき被膜23を成膜する。湿式めっき法として電解めっき法および無電解めっき法が挙げられる。これらのなかでも電解めっき法が好ましい。
【0022】
ロールツーロール方式のスパッタリング装置を用いれば、長尺帯状のベースフィルム10の表面に下地金属層21および銅薄膜層22を連続的に成膜できる。
図4に示すように、スパッタリング装置3は、ロールツーロールにより長尺帯状の被成膜品D1を搬送しつつ、スパッタリングにより被成膜品D1の片面に成膜して成膜品D2を連続的に製造する装置である。ここで、被成膜品D1はベースフィルム10であり、成膜品D2は
図3の(2)に示す中間品である。
【0023】
スパッタリング装置3は真空チャンバー30を有する。真空チャンバー30の内部には、巻出部31と、巻取部33とが配置されている。巻出部31は被成膜品D1をロール状に巻回した被成膜品ロールから被成膜品D1を巻き出す。巻取部33は成膜品D2を巻き取って成膜品ロールを形成する。
【0024】
被成膜品D1は巻出部31から巻取部33に向かって搬送される。真空チャンバー30の内部には、被成膜品D1の搬送経路を画定する各種のロールが設けられている。この種のロールとして、フリーロール、張力センサロール、フィードロールなどが挙げられる。被成膜品D1はこれらのロールに巻きつけられ搬送される。また、被成膜品D1の搬送経路にはキャンロール32が配置されている。
【0025】
キャンロール32の外周面に対向する位置には、被成膜品D1の搬送経路に沿って複数(
図4に示す例では4つ)のスパッタリングカソード41~44が設けられている。各スパッタリングカソード41~44には、キャンロール32の外周面に対向する面にターゲットが取り付けられている。ターゲットから叩き出されたスパッタ粒子が被成膜品D1の表面上に堆積することで成膜が行なわれる。
【0026】
搬送経路の最も上流に配置されたスパッタリングカソード41には下地金属層21と同一組成の金属または合金のターゲットが取り付けられている。ニッケルクロム合金の下地金属層21を成膜する場合には、ニッケルクロム合金のターゲットを用いる。
【0027】
また、スパッタリングカソード41とキャンロール32との間には遮蔽板45が設けられている。遮蔽板45は中間領域A2へのスパッタ粒子の飛散を遮蔽するものである。遮蔽板45としてスパッタ時の熱に耐えられる金属の板材を用いることができる。遮蔽板45としてステンレス鋼などの板材を用いれば、遮蔽板45に析出した金属を薬液処理で溶かして再利用することができる。遮蔽板45は中間領域A2と同程度の幅寸法を有し、中間領域A2に対向する位置に配置される。遮蔽板45が設けられていることから、縁領域A1のみに下地金属層21を成膜できる。
【0028】
最も上流のスパッタリングカソード41のよりも下流に配置されたスパッタリングカソード42~44には銅のターゲットが取り付けられている。これらのターゲットにより銅薄膜層22を成膜できる。
【0029】
被成膜品D1の搬送速度、および各スパッタリングカソード41~44に供給する電流により、下地金属層21および銅薄膜層22の平均膜厚を調整できる。
【0030】
図4に示すような片面成膜方式のスパッタリング装置3を用いてベースフィルム10の両面に下地金属層21および銅薄膜層22を成膜するには二段階の操作を行なえばよい。すなわち、まず、ベースフィルム10を被成膜品D1としてスパッタリング装置3にセットし、ベースフィルム10の片面に下地金属層21および銅薄膜層22を成膜する。これにより得られた中間品を被成膜品D1として再びスパッタリング装置3にセットし、ベースフィルム10のもう一方の面に下地金属層21および銅薄膜層22を成膜する。両面成膜方式のスパッタリング装置を用いれば、一段階の操作でベースフィルム10の両面に下地金属層21および銅薄膜層22を成膜できる。
【0031】
ロールツーロール方式のめっき装置を用いれば、長尺帯状の基材(ベースフィルム10の表面に下地金属層21および銅薄膜層22を成膜したもの)表面に銅めっき被膜23を成膜できる。これにより、長尺帯状の銅張積層板1が得られる。
【0032】
めっき装置は、ロールツーロールにより長尺帯状の基材を搬送しつつ、基材に対して電解めっきを行なう装置である。めっき装置はロール状に巻回された基材を繰り出す供給装置と、めっき後の基材(銅張積層板1)をロール状に巻き取る巻取装置とを有する。供給装置と巻取装置との間の搬送経路には、前処理槽、めっき槽、および後処理槽が配置されている。基材はめっき槽内を搬送されつつ、電解めっきよりその表面に銅めっき被膜23が成膜される。
【0033】
めっき槽には銅めっき液が貯留されている。銅めっき液は水溶性銅塩を含む。銅めっき液に一般的に用いられる水溶性銅塩であれば特に限定されず用いられる。銅めっき液は硫酸を含んでもよい。硫酸の添加量を調整することで、銅めっき液のpHおよび硫酸イオン濃度を調整できる。銅めっき液は一般的にめっき液に添加される添加剤を含んでもよい。添加剤として、ブライトナー成分、レベラー成分、ポリマー成分、塩素成分などから選択された1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
銅めっき液の各成分の含有量は任意に選択できる。ただし、銅めっき液は銅を15~70g/L、硫酸を20~250g/L含有することが好ましい。そうすれば、銅めっき被膜23を十分な速度で成膜できる。銅めっき液はブライトナー成分を1~50mg/L含有することが好ましい。そうすれば、析出結晶を微細化し銅めっき被膜23の表面を平滑にできる。銅めっき液はレベラー成分を1~300mg/L含有することが好ましい。そうすれば、突起を抑制し平坦な銅めっき被膜23を成膜できる。銅めっき液はポリマー成分を10~1,500mg/L含有することが好ましい。そうすれば、基材端部への電流集中を緩和し均一な銅めっき被膜23を成膜できる。銅めっき液は塩素成分を20~80mg/L含有することが好ましい。そうすれば、異常析出を抑制できる。
【0035】
銅めっき液の温度は20~35℃が好ましい。また、めっき槽内の銅めっき液を撹拌することが好ましい。例えば、ノズルから噴出させた銅めっき液を基材に吹き付けることで、銅めっき液を撹拌できる。
【0036】
めっき槽内を搬送される基材は銅めっき液に浸漬されている。また、めっき槽の内部には基材の主面に対向するようにアノードが配置されている。基材をカソードとし、アノードとの間に電流を流すことで、基材の表面に銅めっき被膜23を成膜できる。なお、基材の表裏両側にアノードを配置すれば、基材の両面に銅めっき被膜23を成膜できる。
【0037】
銅めっき被膜成膜工程では基材が銅めっき液に浸漬される。基材が下地金属層21を有さない場合、ベースフィルム10と銅薄膜層22との密着性が低く、めっき液に侵食されてベースフィルム10から銅薄膜層22が剥離することがある。
【0038】
ここで、銅薄膜層22の剥離は基材の縁から進行する。すなわち、銅薄膜層22は縁から剥離していく。本実施形態の銅張積層板1は縁領域A1に下地金属層21が成膜されている。銅張積層板1の縁領域A1は下地金属層21によりベースフィルム10と導体層20との密着性が維持されている。そのため、導体層20の剥離を抑制できる。
【0039】
銅張積層板1からフレキシブルプリント配線板を製造する際には中間領域A2に配線が形成される。銅張積層板1の中間領域A2には下地金属層21がないので、形成された配線は電気伝導率の高い下地金属層21を有さない。そのため、配線に高周波パルスを流した際に生じる伝送損失を低減できる。
【0040】
フレキシブルプリント配線板の製造方法として、サブトラクティブ法、セミアディティブ法などが知られている。サブトラクティブ法では銅張積層板1の導体層20のうち配線部以外の不要部分をエッチングにより除去する。また、セミアディティブ法では電解めっきにより導体層20上に配線部を形成し、導体層20のうち配線部以外の不要部分をエッチングにより除去する。このように、フレキシブルプリント配線板の製造過程において銅張積層板1はエッチング液やめっき液に浸漬される。これが原因となって導体層20が剥離することもある。
【0041】
本実施形態の銅張積層板1を用いれば、縁領域A1の密着性が維持されているので、フレキシブルプリント配線板の製造過程においても導体層20の剥離を抑制できる。
【実施例0042】
(実施例1)
ベースフィルムとして、厚さ35μmのポリイミドフィルム(宇部興産社製 Upilex-35SGAV1)を用意した。ベースフィルムをマグネトロンスパッタリング装置にセットした。マグネトロンスパッタリング装置内にはニッケルクロム合金ターゲットと銅ターゲットとが設置されている。ニッケルクロム合金ターゲットの組成はCrが20質量%、Niが80質量%である。真空雰囲気下で、ベースフィルムの片面に、両縁から1mmの領域のみに、厚さ20nmのニッケルクロム合金からなる下地金属層を成膜した。続けて、ベースフィルムの片面全体に、厚さ100nmの銅薄膜層を成膜した。
【0043】
つぎに、電解めっきにより基材の片面に厚さ2μmの銅めっき被膜を成膜し銅張積層板を得た。銅めっき液は硫酸銅を120g/L、硫酸を70g/L、ブライトナー成分を16mg/L、レベラー成分を20mg/L、ポリマー成分を1,100mg/L、塩素成分を50mg/L含有する。電流密度は1A/dm2とした。
【0044】
(実施例2)
下地金属層を成膜する領域をベースフィルムの両縁から2mmの領域とした。その他の条件を実施例1と同様とし、銅張積層板を製造した。
【0045】
(比較例1)
ベースフィルムの表面に下地金属層を成膜せず、直接銅薄膜層を成膜した。その他の条件を実施例1と同様とし、銅張積層板を製造した。
【0046】
製造した銅張積層板の各試料の両縁を目視で確認したところ、実施例1、2は導体層の剥離が確認されなかった。一方、比較例1は導体層の部分的な剥離が確認された。これより、銅張積層板の縁領域に下地金属層を成膜することで、導体層の剥離を抑制できることが確認された。