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特開2022-182606位置検出システム、位置検出方法及び三次元形状測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182606
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】位置検出システム、位置検出方法及び三次元形状測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20221201BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20221201BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01B11/00 A
G01B11/24 Z
G01B11/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090263
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】喜入 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】日高 和彦
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA12
2F065AA31
2F065AA51
2F065FF05
2F065MM02
2F065QQ08
2F065QQ23
2F065QQ25
(57)【要約】
【課題】位置を特定する対象の物体の手前に障害物がある場合にも物体の位置を特定できるようにする。
【解決手段】位置検出システム1は、所定の三次元空間内の物体で反射された光を検出することにより、物体における複数の位置までの距離を示す距離データを作成する複数の距離検出装置11と、複数の距離検出装置11が作成した複数の距離データのうち一以上の距離データに含まれている物体を特定する物体特定部124と、物体特定部124が物体を特定した距離データを作成した距離検出装置11の三次元空間における位置と、距離データにおける物体の位置と、に基づいて、三次元空間における物体の位置を特定する位置特定部125と、を有する。
【選択図】図3



【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の位置を検出する位置検出システムであって、
所定の三次元空間内の物体で反射された光を検出することにより、前記物体における複数の位置までの距離を示す距離データを作成する複数の距離検出装置と、
前記複数の距離検出装置が作成した複数の前記距離データのうち一以上の前記距離データに含まれている前記物体を特定する物体特定部と、
前記物体特定部が前記物体を特定した前記距離データを作成した前記距離検出装置の前記三次元空間における位置と、前記距離データにおける前記物体の位置と、に基づいて、前記三次元空間における前記物体の位置を特定する位置特定部と、
を有する位置検出システム。
【請求項2】
前記複数の距離検出装置のそれぞれは、前記物体が移動している間に、複数の時刻に関連付けられた前記距離データである複数の時刻別距離データを作成し、
前記物体特定部は、同一の時刻に前記複数の距離検出装置が作成した前記複数の時刻別距離データのうち一以上の前記時刻別距離データにおいて前記物体を特定し、
前記位置特定部は、前記物体特定部が前記物体を特定した前記時刻別距離データを作成した前記距離検出装置の前記三次元空間における位置と、前記時刻別距離データにおける前記物体の位置と、に基づいて、前記三次元空間における前記複数の時刻それぞれに対応する前記物体の位置を特定する、
請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記位置特定部は、同一の時刻に対応する前記複数の時刻別距離データそれぞれに対応する前記三次元空間における前記物体の位置が一致したことを条件として、前記物体の位置を特定する、
請求項2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記物体の三次元形状を示す形状データを記憶する記憶部をさらに有し、
前記物体特定部は、前記距離データにおいて前記形状データに対応する領域を検出することにより前記物体を特定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記位置特定部は、前記複数の距離検出装置が作成した複数の前記距離データを用いて前記物体特定部が前記物体を特定するために用いた複数の前記形状データに対応する前記物体の複数の向きの関係と、前記複数の距離検出装置の複数の向きの関係とが一致していることを条件として、前記物体の位置を特定する、
請求項4に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記物体は、移動しながら被測定物の複数の位置に接触するスタイラスが結合されたプローブであり、
前記形状データは、前記スタイラスが結合された前記プローブの形状を示すデータであり、
前記物体特定部は、前記距離データにおいて前記形状データに対応する前記プローブを特定し、
前記位置特定部は、前記距離データにおける前記プローブの位置と、前記形状データが示す前記プローブの位置と前記スタイラスの位置との関係と、に基づいて、前記距離データにおける前記スタイラスの先端の位置を特定することにより、前記三次元空間における前記スタイラスの先端の位置を特定する、
請求項4又は5に記載の位置検出システム。
【請求項7】
物体の位置を検出する位置検出システムであって、
所定の三次元空間内の物体で反射された光を検出することにより、前記物体の位置までの距離を示す距離データを作成する複数の距離検出装置が作成した複数の前記距離データを取得する距離データ取得部と、
前記複数の距離データのうち一以上の前記距離データに含まれている前記物体を特定する物体特定部と、
前記物体特定部が前記物体を特定した前記距離データを作成した前記距離検出装置の前記三次元空間における位置と、前記距離データにおける前記物体の位置と、に基づいて、前記三次元空間における前記物体の位置を特定する位置特定部と、
を有する位置検出システム。
【請求項8】
前記距離データ取得部は、移動する前記複数の距離検出装置から、前記複数の距離検出装置の位置を示す位置情報を前記距離データに関連付けて取得し、
前記位置特定部は、前記位置情報が示す前記距離検出装置の前記三次元空間における位置と、前記距離データにおける前記物体の位置と、に基づいて、前記三次元空間における前記物体の位置を特定する、
請求項7に記載の位置検出システム。
【請求項9】
前記位置情報が示す前記複数の距離検出装置の位置の関係に対応する相対位置に前記複数の距離データを配置して統合することにより、前記複数の距離データそれぞれに対応する三次元空間よりも大きな前記三次元空間に対応する統合距離データを作成する統合データ作成部をさらに有し、
前記位置特定部は、前記統合距離データに含まれる前記物体の位置を特定する、
請求項8に記載の位置検出システム。
【請求項10】
前記物体特定部は、前記複数の距離検出装置が作成した前記複数の距離データにおいて共通に含まれる共通物体を特定し、
前記共通物体の位置が重なるように前記複数の距離データを配置して統合することにより、前記複数の距離データそれぞれに対応する空間よりも大きな空間に対応する統合距離データを作成する統合データ作成部をさらに有し、
前記位置特定部は、前記統合距離データにおける前記物体の位置を特定することにより、前記三次元空間における前記物体の位置を特定する、
請求項9に記載の位置検出システム。
【請求項11】
被測定物の三次元形状を測定するためのプローブを有する三次元形状測定システムであって、
前記プローブが移動可能な三次元空間内の前記プローブで反射された光を検出することにより、前記プローブの位置までの距離を示す距離データを作成する複数の距離検出装置と、
前記複数の距離検出装置が作成した複数の前記距離データのうち一以上の前記距離データに含まれている前記プローブを特定する物体特定部と、
前記物体特定部が前記被測定物を特定した前記距離データを作成した前記距離検出装置の前記三次元空間における位置と、前記距離データにおける前記プローブの位置と、に基づいて、前記三次元空間における前記プローブの位置を特定する位置特定部と、
前記位置特定部が特定した前記プローブの複数の位置から、前記プローブの位置と前記被測定物の位置との差分だけ離れた前記被測定物の複数の位置を示す三次元形状データを出力する形状特定部と、
を有する三次元形状測定システム。
【請求項12】
前記プローブには、前記被測定物の複数の位置に接触するスタイラスが結合されており、
前記形状特定部は、前記プローブの位置と前記スタイラスの位置の先端の位置との関係を前記プローブの位置と前記被測定物の位置との関係に基づいて特定された、前記スタイラスが前記被測定物に接触した複数の位置を示す三次元形状データを出力する、
請求項11に記載の三次元形状測定システム。
【請求項13】
前記スタイラスが前記被測定物に接触した状態であることを示す接触データを取得するデータ取得部をさらに有し、
前記形状特定部は、前記スタイラスが前記被測定物に接触していることを前記接触データが示している間に前記位置特定部が特定した前記プローブの複数の位置に対応する前記被測定物の複数の位置を示す三次元形状データを出力する、
請求項12に記載の三次元形状測定システム。
【請求項14】
前記形状特定部は、前記位置特定部が特定した前記プローブの位置が所定の時間以上変化していない状態で前記位置特定部が特定した前記プローブの複数の位置に対応する前記被測定物の複数の位置を示す三次元形状データを出力する、
請求項12に記載の三次元形状測定システム。
【請求項15】
前記プローブは、前記プローブの位置と所定の関係にある位置の前記被測定物を検出し、
前記形状特定部は、前記プローブの位置を前記所定の関係に基づいて補正することにより、前記被測定物の複数の位置を示す三次元形状データを出力する、
請求項11に記載の三次元形状測定システム。
【請求項16】
それぞれ形状が異なる複数の前記プローブを有し、
前記物体特定部は、前記距離データに含まれている前記複数のプローブを特定し、
前記位置特定部は、前記複数のプローブそれぞれの位置を特定し、
前記形状特定部は、前記複数のプローブそれぞれの位置に対応する前記被測定物の複数の位置を示す三次元形状データを出力する、
請求項11から15のいずれか一項に記載の三次元形状測定システム。
【請求項17】
コンピュータが実行する、物体の位置を検出する位置検出方法であって、
所定の三次元空間内の物体で反射された光を検出することにより、前記物体における複数の位置までの距離を示す距離データを作成する複数の距離検出装置が作成した複数の前記距離データを取得するステップと、
前記複数の距離データのうち一以上の前記距離データに含まれている前記物体を特定するステップと、
前記物体を特定した前記距離データを作成した前記距離検出装置の前記三次元空間における位置と、前記距離データにおける前記物体の位置と、に基づいて、前記三次元空間における前記物体の位置を特定するステップと、
を有する位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の位置を検出する位置検出システム、位置検出方法、及び物体の形状を測定する三次元形状測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
LiDAR装置又はステレオカメラを用いて、空間内の物体の位置を測定する技術が知られている。特許文献1には、LiDAR装置又はステレオカメラを用いて物体までの距離を測定した結果に基づいて物体の位置を示す三次元座標を算出することにより物体の位置を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-205060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LiDAR装置又はステレオカメラと位置を検出する対象の物体である被測定物体との間に他の物体が存在する場合、被測定物体において反射した光がLiDAR装置又はステレオカメラに入射しない。その結果、LiDAR装置又はステレオカメラは被測定物体までの距離を測定することができず、被測定物体の位置を特定することができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、位置を特定する対象の物体の手前に障害物がある場合にも物体の位置を特定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の位置検出システムは、物体の位置を検出する位置検出システムであって、所定の三次元空間内の物体で反射された光を検出することにより、前記物体における複数の位置までの距離を示す距離データを作成する複数の距離検出装置と、前記複数の距離検出装置が作成した複数の前記距離データのうち一以上の前記距離データに含まれている前記物体を特定する物体特定部と、前記物体特定部が前記物体を特定した前記距離データを作成した前記距離検出装置の前記三次元空間における位置と、前記距離データにおける前記物体の位置と、に基づいて、前記三次元空間における前記物体の位置を特定する位置特定部と、を有する。
【0007】
前記複数の距離検出装置のそれぞれは、前記物体が移動している間に、複数の時刻に関連付けられた前記距離データである複数の時刻別距離データを作成し、前記物体特定部は、同一の時刻に前記複数の距離検出装置が作成した前記複数の時刻別距離データのうち一以上の前記時刻別距離データにおいて前記物体を特定し、前記位置特定部は、前記物体特定部が前記物体を特定した前記時刻別距離データを作成した前記距離検出装置の前記三次元空間における位置と、前記時刻別距離データにおける前記物体の位置と、に基づいて、前記三次元空間における前記複数の時刻それぞれに対応する前記物体の位置を特定してもよい。
【0008】
前記位置特定部は、同一の時刻に対応する前記複数の時刻別距離データそれぞれに対応する前記三次元空間における前記物体の位置が一致したことを条件として、前記物体の位置を特定してもよい。
【0009】
前記物体の三次元形状を示す形状データを記憶する記憶部をさらに有し、前記物体特定部は、前記距離データにおいて前記形状データに対応する領域を検出することにより前記物体を特定してもよい。
【0010】
前記位置特定部は、前記複数の距離検出装置が作成した複数の前記距離データを用いて前記物体特定部が前記物体を特定するために用いた複数の前記形状データに対応する前記物体の複数の向きの関係と、前記複数の距離検出装置の複数の向きの関係とが一致していることを条件として、前記物体の位置を特定してもよい。
【0011】
前記物体は、移動しながら被測定物の複数の位置に接触するスタイラスが結合されたプローブであり、前記形状データは、前記スタイラスが結合された前記プローブの形状を示すデータであり、前記物体特定部は、前記距離データにおいて前記形状データに対応する前記プローブを特定し、前記位置特定部は、前記距離データにおける前記プローブの位置と、前記形状データが示す前記プローブの位置と前記スタイラスの位置との関係と、に基づいて、前記距離データにおける前記スタイラスの先端の位置を特定することにより、前記三次元空間における前記スタイラスの先端の位置を特定してもよい。
【0012】
本発明の第2の態様の位置検出システムは、物体の位置を検出する位置検出システムであって、所定の三次元空間内の物体で反射された光を検出することにより、前記物体の位置までの距離を示す距離データを作成する複数の距離検出装置が作成した複数の前記距離データを取得する距離データ取得部と、前記複数の距離データのうち一以上の前記距離データに含まれている前記物体を特定する物体特定部と、前記物体特定部が前記物体を特定した前記距離データを作成した前記距離検出装置の前記三次元空間における位置と、前記距離データにおける前記物体の位置と、に基づいて、前記三次元空間における前記物体の位置を特定する位置特定部と、を有する。
【0013】
前記距離データ取得部は、移動する前記複数の距離検出装置から、前記複数の距離検出装置の位置を示す位置情報を前記距離データに関連付けて取得し、前記位置特定部は、前記位置情報が示す前記距離検出装置の前記三次元空間における位置と、前記距離データにおける前記物体の位置と、に基づいて、前記三次元空間における前記物体の位置を特定してもよい。
【0014】
前記位置検出システムは、前記位置情報が示す前記複数の距離検出装置の位置の関係に対応する相対位置に前記複数の距離データを配置して統合することにより、前記複数の距離データそれぞれに対応する三次元空間よりも大きな前記三次元空間に対応する統合距離データを作成する統合データ作成部をさらに有し、前記位置特定部は、前記統合距離データに含まれる前記物体の位置を特定してもよい。
【0015】
前記物体特定部は、前記複数の距離検出装置が作成した前記複数の距離データにおいて共通に含まれる共通物体を特定し、前記共通物体の位置が重なるように前記複数の距離データを配置して統合することにより、前記複数の距離データそれぞれに対応する空間よりも大きな空間に対応する統合距離データを作成する統合データ作成部をさらに有し、前記位置特定部は、前記統合距離データにおける前記物体の位置を特定することにより、前記三次元空間における前記物体の位置を特定してもよい。
【0016】
本発明の第3の態様の三次元形状測定システムは、被測定物の三次元形状を測定するためのプローブを有する三次元形状測定システムであって、前記プローブが移動可能な三次元空間内の前記プローブで反射された光を検出することにより、前記プローブの位置までの距離を示す距離データを作成する複数の距離検出装置と、前記複数の距離検出装置が作成した複数の前記距離データのうち一以上の前記距離データに含まれている前記プローブを特定する物体特定部と、前記物体特定部が前記被測定物を特定した前記距離データを作成した前記距離検出装置の前記三次元空間における位置と、前記距離データにおける前記プローブの位置と、に基づいて、前記三次元空間における前記プローブの位置を特定する位置特定部と、前記位置特定部が特定した前記プローブの複数の位置から、前記プローブの位置と前記被測定物の位置との差分だけ離れた前記被測定物の複数の位置を示す三次元形状データを出力する形状特定部と、を有する。
【0017】
前記プローブには、前記被測定物の複数の位置に接触するスタイラスが結合されており、前記形状特定部は、前記プローブの位置と前記スタイラスの位置の先端の位置との関係を前記プローブの位置と前記被測定物の位置との関係に基づいて特定された、前記スタイラスが前記被測定物に接触した複数の位置を示す三次元形状データを出力してもよい。
【0018】
前記三次元形状測定システムは、前記スタイラスが前記被測定物に接触した状態であることを示す接触データを取得するデータ取得部をさらに有し、前記形状特定部は、前記スタイラスが前記被測定物に接触していることを前記接触データが示している間に前記位置特定部が特定した前記プローブの複数の位置に対応する前記被測定物の複数の位置を示す三次元形状データを出力してもよい。
【0019】
前記形状特定部は、前記位置特定部が特定した前記プローブの位置が所定の時間以上変化していない状態で前記位置特定部が特定した前記プローブの複数の位置に対応する前記被測定物の複数の位置を示す三次元形状データを出力してもよい。
【0020】
前記プローブは、前記プローブの位置と所定の関係にある位置の前記被測定物を検出し、前記形状特定部は、前記プローブの位置を前記所定の関係に基づいて補正することにより、前記被測定物の複数の位置を示す三次元形状データを出力してもよい。
【0021】
前記三次元形状測定システムは、それぞれ形状が異なる複数の前記プローブを有し、前記物体特定部は、前記距離データに含まれている前記複数のプローブを特定し、前記位置特定部は、前記複数のプローブそれぞれの位置を特定し、前記形状特定部は、前記複数のプローブそれぞれの位置に対応する前記被測定物の複数の位置を示す三次元形状データを出力してもよい。
【0022】
本発明の第4の態様の位置特定方法は、コンピュータが実行する、物体の位置を検出する位置検出方法であって、所定の三次元空間内の物体で反射された光を検出することにより、前記物体における複数の位置までの距離を示す距離データを作成する複数の距離検出装置が作成した複数の前記距離データを取得するステップと、前記複数の距離データのうち一以上の前記距離データに含まれている前記物体を特定するステップと、前記物体を特定した前記距離データを作成した前記距離検出装置の前記三次元空間における位置と、前記距離データにおける前記物体の位置と、に基づいて、前記三次元空間における前記物体の位置を特定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、位置を特定する対象の物体の手前に障害物がある場合にも物体の位置を特定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】位置検出システム1の概要を説明するための図である。
図2】統合距離データを作成する方法を説明するための図である。
図3】位置検出システム1の構成を示す図である。
図4】本実施形態に係る位置特定方法を用いる三次元形状測定システム100の構成を示す図である。
図5】三次元形状測定システム100の機能構成図である。
図6】複数の距離検出装置11が同一の時刻において作成した複数の時刻別距離データを模式的に示す図である。
図7】三次元形状測定システム100における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】本実施形態に係る位置特定方法を用いる運転支援システム200の概要を示す図である。
図9】運転支援システム200におけるデータ処理装置12Bの構成を示す図である。
図10】運転支援システム200における処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[位置検出システム1の概要]
図1は、位置検出システム1の概要を説明するための図である。位置検出システム1は、複数の距離検出装置11(距離検出装置11-1、11-2、11-3)と、データ処理装置12と、を備える。
【0026】
距離検出装置11は、LiDAR装置又はステレオカメラであり、所定の空間内の物体Bで反射された光を検出することにより、物体(例えば図1における物体B)位置までの距離を示す距離データを作成する。所定の空間は、位置を特定する対象となる物体が存在する空間である。所定の空間における位置は、所定の空間における基準位置を原点とする三次元座標により表される。三次元座標は直交座標であっても極座標であってもよいが、本明細書における三次元座標は直交座標(x,y,z)であるとする。
【0027】
距離検出装置11がLiDAR装置である場合、距離検出装置11は、例えばデータ処理装置12の制御に基づいて所定の空間内の少なくとも一部の領域に、順次向きを変えながらレーザ光を発射し、所定の空間内の物体により反射した光を検出する。距離検出装置11は、レーザ光を発射してから反射光を検出するまでの時間に基づいて、レーザ光を発射した向きにおける物体までの距離を示す距離データを作成する。複数の距離検出装置11は、それぞれの距離検出装置11の基準位置(以下、「ローカル基準位置」という)を原点としてレーザ光が反射した位置の三次元座標を示す距離データを作成する。距離検出装置11は、作成した距離データをデータ処理装置12に通知する。
【0028】
複数の距離検出装置11が物体までの距離を検出することができる範囲(以下、「距離検出範囲」という)はそれぞれ異なっている。図1に示す例の場合、距離検出装置11-1の距離検出範囲は実線で示す領域R1であり、距離検出装置11-2の距離検出範囲は破線で示す領域R2であり、距離検出装置11-3の距離検出範囲は一点鎖線で示す領域R3である。
【0029】
複数の距離検出装置11は、それぞれの距離検出範囲に存在する物体においてレーザ光が反射した位置の三次元座標を示す距離データを作成する。距離検出装置11-1は、所定の時間間隔で、距離検出装置11-1におけるレーザ光の発射位置を原点とする複数の三次元座標(x1,y1,z1)に対応する点群により構成される距離データを作成する。距離検出装置11-2は、距離検出装置11-2におけるレーザ光の発射位置を原点とする複数の三次元座標(x2,y2,z2)に対応する点群により構成される距離データを作成する。距離検出装置11-3は、距離検出装置11-3におけるレーザ光の発射位置を原点とする複数の三次元座標(x3,y3,z3)に対応する点群により構成される距離データを作成する。
【0030】
データ処理装置12は、複数の距離検出装置11から通知された距離データに対応する三次元空間に存在する物体の位置を特定する。データ処理装置12は、例えばプログラムを実行することにより物体の位置を特定するコンピュータである。
【0031】
データ処理装置12は、例えば、距離データに含まれる点群を結ぶことにより形成される形状データと、予め記憶している物体の三次元形状データとをマッチングすることにより、統合距離データに対応する三次元空間に探索する対象となる物体Bが存在するか否かを特定する。形状データは、例えば、物体の特徴点の相対位置を示すデータである。物体Bの特徴点の位置は、例えば物体Bの辺の位置、頂点の位置又は曲率が変化する位置である。データ処理装置12は、物体Bが存在することを特定した場合、三次元空間座標系における物体Bの特徴点の位置に対応する三次元座標を特定する。
【0032】
データ処理装置12は、複数の距離データにおいて物体Bを探索する。異なる位置に設置された複数の距離検出装置11が複数の距離データを作成しているので、一部の距離データに物体Bが含まれていなくても、少なくとも他の一部の距離データに物体Bが含まれているならば、データ処理装置12は、三次元空間における物体Bの位置を特定することができる。したがって、データ処理装置12は、位置を特定する対象となる物体Bの手前に障害物がある場合にも物体Bの位置を特定することができる。
【0033】
ところで、複数の距離検出装置11から通知される複数の距離データは、それぞれ異なるローカル基準位置を基準とする三次元座標により構成されている。データ処理装置12は、複数の距離検出装置11の位置の関係に基づいて、複数の距離検出装置11それぞれから通知された距離データが示す物体Bの位置に対応する三次元座標を補正する。データ処理装置12は、複数の距離検出装置11それぞれから通知された物体Bの位置を示す三次元座標を補正し、複数の距離検出装置11が存在する三次元空間における基準位置(以下、「グローバル基準位置」という)を原点とする物体Bの位置を示す三次元座標を算出することにより、三次元空間における物体の位置を特定する。三次元空間におけるグローバル基準位置は任意であるが、グローバル基準位置に対する複数の距離検出装置11の向き、及びグローバル基準位置と複数の距離検出装置11との距離(すなわち、基準位置と複数の距離検出装置11それぞれとの位置関係)は既知であり、データ処理装置12が記憶していることが求められる。
【0034】
データ処理装置12は、グローバル基準位置と複数の距離検出装置11それぞれとの位置関係を用いて複数の距離データを統合することにより、複数の距離検出装置11に対応する複数の距離検出範囲を含む一つの三次元空間における一つの統合距離データを作成してもよい。この場合、データ処理装置12は、作成した統合距離データを解析することにより、三次元空間に含まれている物体Bの位置を特定する。
【0035】
データ処理装置12は、複数の距離検出装置11から通知された複数の距離データに共通に含まれる物体の位置を用いて統合距離データを作成してもよい。図2は、データ処理装置12が複数の距離データに共通に含まれる物体の位置を用いて統合距離データを作成する方法を説明するための図である。図2に示す領域R1及び領域R2には、物体M1及び物体M2が共通に含まれている。したがって、距離検出装置11-1及び距離検出装置11-2が作成する複数の距離データには物体M1及び物体M2が含まれている。
【0036】
データ処理装置12は、距離検出装置11-1が作成した距離データにおける物体M1の位置及び物体M2の位置が、距離検出装置11-2が作成した距離データにおける物体M1の位置及び物体M2の位置と一致するように、距離検出装置11-1が作成した距離データと距離検出装置11-2が作成した距離データとを重ね合わせることにより、統合距離データを作成する。データ処理装置12がこのように動作することで、複数の距離検出装置11の位置関係が既知でない場合、又は複数の距離検出装置11が移動している場合であっても、データ処理装置12が統合距離データを作成することができる。
【0037】
[位置検出システム1の構成]
図3は、位置検出システム1の構成を示す図である。図3に示す例において、データ処理装置12は、通信部121と、記憶部122と、制御部123と、を有する。制御部123は、物体特定部124及び位置特定部125を有する。
【0038】
通信部121は、複数の距離検出装置11との間でデータを送受信するための通信インターフェースを有する。通信部121は、例えば無線通信コントローラ又は有線通信コントローラを有する。通信部121は、複数の距離検出装置11を制御するための制御データを送信し、複数の距離検出装置11が送信した距離データを受信する。通信部121は、受信した距離データを記憶部122に記憶させる。通信部121は、受信した距離データを制御部123及び物体特定部124に入力してもよい。
【0039】
記憶部122は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部122は、制御部123が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部122は、複数の距離検出装置11それぞれを識別するための識別情報に関連付けて、複数の距離検出装置11それぞれが送信した距離データを記憶する。記憶部122は、三次元空間における複数の距離検出装置11の位置を示す三次元座標データを記憶してもよい。さらに、記憶部122は、制御部123が特定する対象となる物体の三次元形状を示す形状データを記憶してもよい。
【0040】
制御部123は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部123は、記憶部122に記憶されたプログラムを実行することにより、物体特定部124及び位置特定部125として機能する。
【0041】
物体特定部124は、複数の距離検出装置11が作成した複数の距離データのうち一以上の距離データに含まれている物体を特定する。物体特定部124は、例えば、距離データにおいて、記憶部122に記憶された形状データに対応する領域を検出することにより、形状データが示す形状の物体を特定する。形状データに対応する領域は、例えば、形状データに含まれる複数の特徴点の位置関係と同一の位置関係の点群が含まれる領域である。物体特定部124は、形状データの一部の特徴点の位置関係が、距離データに含まれる一部の点群の位置関係と一致している場合に、形状データが示す形状の物体が距離データに含まれていると判定してもよい。
【0042】
物体特定部124は、距離データにおいて物体を特定した位置を示す三次元座標を位置特定部125に通知する。物体特定部124は、例えば形状データにおいて規定されている物体の特徴点の距離データにおける位置を示す三次元座標を位置特定部125に通知する。
【0043】
位置特定部125は、物体特定部124が物体を特定した距離データを作成した距離検出装置11の三次元空間における位置と、距離データにおける物体の位置とに基づいて、物体が存在する三次元空間における物体の位置を特定する。位置特定部125は、例えば距離検出装置11-1が作成した距離データにおいて物体が特定された場合、三次元空間のグローバル基準位置と距離検出装置11-1の位置との差分値(Δx,Δy,Δz)を用いて、物体特定部124が特定した物体の位置を補正することにより、三次元空間における物体の三次元座標を算出する。
【0044】
具体的には、位置特定部125は、物体特定部124から通知された、距離検出装置11-1が作成した距離データにおける物体の複数の特徴点の位置を示す複数の三次元座標(x1,y1,z1)それぞれに、位置検出システム1が物体の位置を特定する対象となる三次元空間のグローバル基準位置と距離検出装置11-1の位置との差分値(Δx,Δy,Δz)を加算することにより、三次元空間における物体の複数の特徴点の位置を示す複数の三次元座標を算出する。位置特定部125は、算出した三次元座標を記憶部122に記憶させる。位置特定部125は、通信部121を介して、算出した三次元座標を外部装置に送信したり、ディスプレイに三次元座標を表示させたりしてもよい。
【0045】
以上説明した位置特定方法は、三次元空間における物体の位置を特定することが求められるさまざまな用途に適用することが可能である。以下、物体の三次元形状を測定するための三次元形状測定システムに位置特定方法を適用した実施の形態、及び複数の車両を自動運転させるための運転支援システムに位置特定方法を適用した実施の形態を説明する。
【0046】
[三次元形状測定システム100の構成]
図4は、本実施形態に係る位置特定方法を用いる三次元形状測定システム100の構成を示す図である。三次元形状測定システム100は、図1に示した複数の距離検出装置11と、データ処理装置12Aと、物体探査装置13と、を有する。データ処理装置12Aは、図3に示したデータ処理装置12と同等の機能を有するが、被測定物W(以下、「ワークW」という)の三次元形状を測定するための機能をさらに有する点でデータ処理装置12と異なる。
【0047】
物体探査装置13は、アーム131と、プローブ132と、スタイラス133と、を有する。アーム131は、アーム131A、アーム131B及びアーム131Cを有しており、アーム131Aが台Dに固定されている。
【0048】
アーム131は、複数の関節を有しており、アーム131Cの先端にプローブ132が結合されている。プローブ132には、形状を測定する対象であるワークWの複数の位置に接触するスタイラス133が結合されている。物体探査装置13は、データ処理装置12から入力される制御データに基づいてアーム131の位置を移動させる。物体探査装置13は、三次元形状測定システム100がワークWの形状を測定可能な三次元空間内の任意の位置にスタイラス133を移動させ、スタイラス133をワークWに接触させることができる。
【0049】
三次元形状測定システム100においては、プローブ132又はスタイラス133の少なくともいずれかが、データ処理装置12が位置を検出する対象となる物体である。複数の距離検出装置11は、プローブ132を移動させながらスタイラス133をワークWの複数の位置に接触させる動作を物体探査装置13が繰り返している間、プローブ132が移動可能な領域にレーザ光を発射することにより距離データを作成する。複数の距離検出装置11のそれぞれは、位置を検出する対象の物体であるプローブ132が移動している間に、複数の時刻に関連付けられた距離データである複数の時刻別距離データを作成する。複数の距離検出装置11は、作成した時刻別距離データを時刻に関連付けてデータ処理装置12に通知する。
【0050】
図5は、三次元形状測定システム100の機能構成図である。データ処理装置12は、図3に示した例と同様に、通信部121と、記憶部122と、制御部123と、を有する。図5に示す三次元形状測定システム100における制御部123は、図3に示した物体特定部124及び位置特定部125に加えて、データ取得部126及び形状特定部127をさらに有する。
【0051】
三次元形状測定システム100における記憶部122は、スタイラス133と結合されたプローブ132の形状を示す形状データを記憶している。記憶部122は、プローブ132の形状データと、プローブ132の位置とスタイラス133の位置との関係を示すオフセットデータを記憶していてもよい。プローブ132の位置は、プローブ132の特徴点の位置であり、例えばプローブ132におけるスタイラス133が結合された位置、プローブ132の頂点の位置、又はプローブ132に設けられたマーカーの位置である。
【0052】
プローブ132の位置とスタイラス133の位置との関係を示すオフセットデータは、プローブ132の一以上の特徴点の位置に対するスタイラス133の先端のオフセット位置を示すデータである。オフセット位置は、例えばプローブ132の所定の方向(例えば長手方向)に対する、プローブ132の特徴点とスタイラス133の先端とを結ぶ線の方向、及び特徴点からスタイラス133の先端までの距離により表される。記憶部122は、スタイラス133の形状データ、又は結合された状態のプローブ132及びスタイラス133の形状データを記憶していてもよい。
【0053】
物体特定部124は、距離データにおいてプローブ132の形状データと一致する形状の領域を探索することにより、距離データにおいてプローブ132を特定する。物体特定部124は、同一の時刻に複数の距離検出装置11が作成した複数の時刻別距離データのうち一以上の時刻別距離データにおいてプローブ132を特定する。物体特定部124は、例えば、時刻別距離データに含まれる複数の点群と、記憶部122に記憶されたプローブ132の三次元形状を示す形状データとをマッチングすることによりプローブ132を特定する。
【0054】
物体特定部124は、距離データにおけるプローブ132の位置を示す三次元座標を特定する。物体特定部124は、複数の距離検出装置11が作成した複数の時刻別距離データに基づいてプローブ132の位置を特定する。物体特定部124は、例えば、距離検出装置11とプローブ132との間にワークWが存在しない距離検出装置11が作成した時刻別距離データにおいて、プローブ132を特定する。
【0055】
なお、物体特定部124は、スタイラス133がワークWに接触した時点で作成された距離データに基づいてプローブ132を特定し、他の距離データに基づいてプローブ132を特定しないでもよい。物体特定部124は、例えば、後述するデータ取得部126が取得した接触データに基づいて、スタイラス133がワークWに接触したか否かを判定した結果に基づいて、プローブ132を特定するか否かを判定する。
【0056】
物体特定部124は、特定した三次元座標を位置特定部125に通知する。当該三次元座標は、距離検出装置11のローカル基準位置を基準とする三次元座標であり、複数の距離検出装置11それぞれが作成した時刻別距離データごとに異なる座標になる。
【0057】
位置特定部125は、物体特定部124がプローブ132を特定した時刻別距離データを作成した距離検出装置11の空間における位置と、時刻別距離データにおけるプローブ132の位置と、に基づいて、三次元形状測定システム100がワークWの形状を測定可能な三次元空間における複数の時刻それぞれに対応するプローブ132の位置を特定する。三次元形状測定システム100がワークWの形状を測定可能な三次元空間は、アーム131の移動に伴ってスタイラス133の先端が移動できる範囲を含む空間である。
【0058】
位置特定部125は、距離データにおけるプローブ132の位置と、形状データが示すプローブ132の位置とスタイラス133の位置との関係と、に基づいて、距離データにおけるスタイラス133の先端の位置を特定することにより、空間におけるスタイラス133の先端の位置を特定する。位置特定部125が、プローブ132の位置と、プローブ132とスタイラス133との相対位置関係とに基づいてスタイラス133の先端の位置を特定することで、例えば、スタイラス133がワークWの凹部内に入っており、距離データにスタイラス133の先端が含まれていない場合であっても、位置特定部125は、スタイラス133の先端の位置を特定することができる。
【0059】
さらに、位置特定部125は、時刻別距離データにおけるスタイラス133の先端の位置を示す三次元座標に、三次元空間のグローバル基準位置に対する距離検出装置11の相対位置を示す差分値(Δx,Δy,Δz)を加算又は減算することにより、三次元空間におけるスタイラス133の先端の位置を示す三次元座標を算出する。三次元空間のグローバル基準位置は任意であるが、例えばアーム131Aの回転軸が台Dと交わる位置である。位置特定部125は、このようにして算出したスタイラス133の先端の位置の三次元座標を形状特定部127に通知する。位置特定部125は、例えば、時刻別距離データが作成された時刻に関連付けて三次元座標を形状特定部127に通知する。
【0060】
位置特定部125は、複数の距離検出装置11が作成した複数の時刻別距離データに基づいてプローブ132の位置を特定する。位置特定部125は、例えば、距離検出装置11とプローブ132との間にワークWが存在しない距離検出装置11が作成した時刻別距離データにおいて物体特定部124が特定したプローブ132の位置に基づいて、スタイラス133の先端の位置の三次元座標を特定する。
【0061】
位置特定部125が、複数の距離検出装置11が作成した複数の時刻別距離データを用いることで、複数の距離検出装置11のうち一部の距離検出装置11が作成した時刻別距離データにプローブ132が含まれていない場合であっても、位置特定部125は、他の距離検出装置11が作成した時刻別距離データを用いて、三次元空間におけるプローブ132の位置を特定することができる。したがって、位置特定部125は、スタイラス133の手前に障害物となるワークWがある場合にもプローブ132の位置を特定できるので、三次元形状測定システム100は、ワークWの三次元形状の全ての位置の形状を特定することができる。
【0062】
図6は、複数の距離検出装置11が同一の時刻において作成した複数の時刻別距離データを模式的に示す図である。図6(a)は、距離検出装置11-1が作成した時刻別距離データである。図6(b)は、距離検出装置11-2が作成した時刻別距離データである。図6(c)は、距離検出装置11-3が作成した時刻別距離データである。
【0063】
図6(a)に示す時刻別距離データにおいては、距離検出装置11-1とプローブ132との間にワークWがあるため、位置特定部125は、距離検出装置11-1が作成した時刻別距離データを用いてスタイラス133の位置を特定することができない。しかしながら、図6(b)に示す時刻別距離データにおいては、距離検出装置11-2とワークWとの間にプローブ132が位置しているため、位置特定部125は、距離検出装置11-2が作成した時刻別距離データにおけるプローブ132の位置を示す三次元座標(x2,y2,z2)を用いて、スタイラス133の先端の位置の三次元座標(x2’,y2’,z2’)を算出することができる。
【0064】
また、図6(c)に示す例においても、距離検出装置11-3とプローブ132とを結ぶ直線の間にワークWがないため、位置特定部125は、距離検出装置11-3が作成した時刻別距離データにおけるプローブ132の位置を示す三次元座標(x3,y3,x3)を用いて、スタイラス133の先端の位置の三次元座標(x3’,y3’,z3’)を算出することができる。このように、三次元形状測定システム100が複数の距離検出装置11を有することで、プローブ132の位置によらず、複数の距離検出装置11のいずれかが作成した時刻距離データに基づいて位置特定部125がプローブ132の位置を特定することができる。
【0065】
ところで、外乱がない場合、複数の時刻別距離データそれぞれに基づいて位置特定部125が特定したスタイラス133の位置を示す三次元座標は、それぞれ一致するはずである。一方、複数の時刻別距離データに対応するスタイラス133の位置が一致していない場合、外乱の影響でプローブ132の位置が誤検出されたと考えられる。そこで、位置特定部125は、同一の時刻に対応する、複数の距離検出装置11が作成した複数の時刻別距離データそれぞれに対応する空間におけるスタイラス133の位置が一致したことを条件として、プローブ132の位置を特定してもよい。
【0066】
複数の時刻別距離データそれぞれに基づいて位置特定部125が特定したプローブ132の複数の三次元座標が一致しない場合、外乱の影響が生じていると考えられるため、位置特定部125は、このような三次元座標を形状特定部127に通知しない。位置特定部125がこのような三次元座標を形状特定部127に通知しないことにより、ワークWの形状の特定に用いることが適切でないデータに基づいてワークWの形状が特定されないので、三次元形状測定の精度が向上する。
【0067】
また、位置特定部125は、複数の距離検出装置11が作成した複数の距離データを用いて物体特定部124がプローブ132を特定するために用いた複数の形状データに対応するプローブ132の複数の向きの関係と、複数の距離検出装置11の複数の向きの関係とが一致していることを条件として、プローブ132の位置を特定してもよい。位置特定部125が位置を特定するプローブ132のような物体が球でない場合、物体を見る位置によって異なる形状に物体が見える。すなわち、異なる位置の複数の距離検出装置11が作成した複数の距離データに含まれる複数の物体の形状はそれぞれ異なっており、複数の距離データにおいて物体特定部124が特定した物体の複数の向きの関係は、複数の距離検出装置11の複数の向きの関係と一致するはずである。
【0068】
ところが、複数の距離データにおいて物体特定部124が特定した物体の複数の向きの関係と、複数の距離検出装置11の複数の向きの関係とが一致していない場合、物体特定部124が物体を誤検出したと考えられる。そこで、位置特定部125が、このような場合に物体特定部124が特定したプローブ132の位置を用いないようにすることで、位置特定部125がスタイラス133の先端の位置を誤って特定することを防げるので、測定精度が向上する。
【0069】
なお、位置特定部125は、スタイラス133がワークWに接触した時点で作成された距離データに基づいてスタイラス133の先端の位置を特定し、他の距離データに基づいてスタイラス133の先端の位置を特定しないでもよい。位置特定部125は、例えば、後述するデータ取得部126が取得した接触データに基づいて、スタイラス133がワークWに接触したか否かを判定した結果に基づいて、スタイラス133の先端の位置を特定するか否かを判定する。位置特定部125は、物体特定部124が特定したプローブ132の位置が所定の時間以上変化していない状態(例えば静止した状態)であることを条件として、スタイラス133の先端の位置を特定してもよい。
【0070】
以上の説明においては、物体特定部124が距離データに基づいてプローブ132を特定し、位置特定部125が、プローブ132の位置とスタイラス133の先端の位置との関係に基づいて、スタイラス133の位置を特定するという場合を例示した。物体特定部124及び位置特定部125がこのように動作することで、物体特定部124が細くて小さい形状のスタイラス133を距離データに基づいて特定することが難しい場合であっても、位置特定部125は、物体特定部124がプローブ132を特定した結果に基づいてスタイラス133の先端の位置を特定することができる。しかしながら、物体特定部124が距離データにおいてスタイラス133を特定した場合、位置特定部125はプローブ132の位置を特定することなく、スタイラス133の先端の位置を特定してもよい。
【0071】
データ取得部126は、スタイラス133がワークWに接触した状態であることを示す接触データを取得する。データ取得部126は、取得した接触データを形状特定部127に通知する。データ取得部126は、距離検出装置11から直接接触データを取得してもよく、距離データに接触データが含まれており、データ取得部126は、距離データに含まれる接触データを取得してもよい。
【0072】
形状特定部127は、位置特定部125が特定したプローブ132の複数の位置から、プローブ132の位置とワークWの位置との差分だけ離れたワークWの複数の位置を示す三次元形状データを出力する。プローブ132にスタイラス133が結合されている場合、形状特定部127は、プローブ132の位置とスタイラス133の位置の先端の位置との関係をプローブ132の位置とワークWの位置との関係に基づいて特定された、スタイラス133がワークWに接触した複数の位置を示す三次元形状データを出力する。形状特定部127は、位置特定部125から通知されたスタイラス133の先端の位置に基づいて特定される、スタイラス133がワークに接触した位置を示す三次元形状データを出力する。
【0073】
プローブ132が、スタイラス133がワークWに接触したことを示す接触データを出力することができ、データ取得部126が、当該接触データを取得した場合、形状特定部127は、スタイラス133がワークWに接触していることを接触データが示している間に位置特定部125が特定したプローブ132の複数の位置に対応するワークWの複数の位置を示す三次元形状データを出力する。形状特定部127がこのように動作することで、形状特定部127は、スタイラス133がワークWに接触していない時点におけるプローブ132の位置に基づいて特定したスタイラス133の位置を使用しないので、ワークWの形状を適切に特定することができる。
【0074】
形状特定部127は、位置特定部125が特定したプローブ132の位置が所定の時間以上変化していない状態で位置特定部125が特定したプローブ132の複数の位置に対応するワークWの複数の位置を示す三次元形状データを出力してもよい。形状特定部127がこのように動作することで、プローブ132が、スタイラス133がワークWに接触したことを示す接触データを出力することができない場合であっても、形状特定部127は、スタイラス133がワークWに接触した時点におけるプローブ132の位置に基づいて、ワークWの形状を適切に特定することができる。
【0075】
ところで、プローブ132が、白色干渉計プローブのように、プローブ132の位置と所定の関係にある位置のワークWを検出する非接触式のプローブである場合、プローブ132にスタイラス133が結合されていなくてもよい。このような場合、位置特定部125は、スタイラス133の先端の位置を特定しない。この場合、形状特定部127は、プローブ132の位置を所定の関係に基づいて補正することにより、ワークWの複数の位置を示す三次元形状データを出力してもよい。所定の関係は、プローブ132の先端から所定の方向におけるワークWの表面までの距離により表される。
【0076】
プローブ132が、例えばプローブ132の先端とワークWの表面との距離が10mmであることを示すデータを出力する場合、形状特定部127は、データ取得部126が当該データを取得した時点におけるプローブ132の位置から所定の方向(例えばプローブ132の長手方向)に10mmだけシフトした位置をワークWの位置として特定する。形状特定部127がこのように動作することで、形状特定部127は、プローブ132の位置に基づいてワークWの形状を特定することができる。
【0077】
以上の説明においては、三次元形状測定システム100が1台の物体探査装置13を有する場合を例示したが、三次元形状測定システム100が複数台の物体探査装置13を有してもよい。複数台の物体探査装置13は、それぞれ形状が異なるプローブ132を有しており、物体特定部124は、距離データに含まれている複数のプローブ132を特定する。位置特定部125は、複数のプローブ132それぞれの位置を特定し、形状特定部127は、複数のプローブ132の位置に対応するワークWの複数の位置を示す三次元形状データを出力する。
【0078】
三次元形状測定システム100がこのように構成されていることで、複数の物体探査装置13がプローブ132を同時に動かして、ワークWにおける複数の異なる位置にスタイラス133を接触させることができる。物体特定部124は、複数のプローブ132の位置又は複数のスタイラス133の位置を同時に特定することができるので、三次元形状測定システム100は、ワークWの形状を測定する時間を短縮することができる。
【0079】
また、以上の説明においては、位置特定部125が、複数の距離データを統合することなく、それぞれの距離データに含まれているプローブ132の位置を特定したが、位置特定部125は、複数の距離データを統合して、三次元空間座標系の三次元座標で表される統合距離データを作成し、統合距離データにおけるプローブ132の位置を特定してもよい。この場合、位置特定部125は、複数の距離検出装置11の位置関係、又は複数の距離検出装置11が作成する距離データに共通に含まれる共通要素の位置を用いて、複数の距離データを統合する。
【0080】
[三次元形状測定システム100における処理の流れ]
図7は、三次元形状測定システム100における処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、ワークWの形状の測定を開始するための操作が行われた時点から開始している。
【0081】
複数の距離検出装置11は、レーザ光を発射することにより距離データを作成する(S11)。物体特定部124は、複数の距離検出装置11が作成した複数の距離データそれぞれにおいてプローブ132を探索し、プローブ132が含まれている距離データにおいてプローブ132を特定する(S12)。位置特定部125は、形状特定部127を介してプローブ132から取得した接触データに基づいて、又はプローブ132の移動速度に基づいて、プローブ132に結合されたスタイラス133がワークWに接触したか否かを判定する(S13)。
【0082】
位置特定部125は、スタイラス133がワークWに接触したと判定した場合、距離データにおいて物体特定部124が特定したプローブ132の位置と、グローバル基準位置に対する距離検出装置11の相対位置とに基づいて、ワークWが載置された三次元空間の三次元座標系におけるプローブ132の位置を特定する。位置特定部125は、特定したプローブ132の位置と、プローブ132の位置とスタイラス133の先端の位置との関係と、に基づいて、スタイラス133の先端の位置を特定する(S14)。
【0083】
位置特定部125は、特定したスタイラス133の位置が正常であるか否かを判定する(S15)。位置特定部125は、例えば、複数の距離検出装置11が作成した距離データに含まれているプローブ132の位置に基づいて特定されたスタイラス133の位置が一致しているか否かを判定する。位置特定部125は、複数の距離データに対応するスタイラス133の複数の位置が一致する場合、特定した複数の位置が正常であると判定し(S15においてYES)、特定したスタイラス133の位置をワークWに接触した位置として記憶部122に記憶させる(S16)。位置特定部125は、複数の距離データに対応するスタイラス133の複数の位置が一致しない場合、特定した複数の位置が異常であると判定し(S15においてNO)、エラー情報を記憶部122に記憶させる(S17)。
【0084】
位置特定部125は、測定するべき全ての位置にプローブ132が移動し、全ての測定位置での測定が終了したか否かを判定する(S18)。位置特定部125は、例えば予め設定された領域内の全ての位置でプローブ132が検出された場合に、測定が終了したと判定し(S18においてYES)、測定が終了したことを形状特定部127に通知する。全ての測定位置での測定が終了していないと位置特定部125が判定した場合(S18においてNO)、三次元形状測定システム100はS11からS18までの処理を繰り返す。
【0085】
全ての測定位置での測定が終了した場合、形状特定部127は、記憶部122に記憶されたスタイラス133の位置に基づく三次元形状データを作成し、作成した三次元形状データを出力する(S19)。
【0086】
[三次元形状測定システム100のキャリブレーション]
以上の説明においては、三次元空間のグローバル基準位置に対する複数の距離検出装置11それぞれの相対位置(すなわち、複数の距離検出装置11の間の位置関係)が既知であることが想定されていた。しかしながら、距離検出装置11の位置に変化が生じてしまうと、三次元空間のグローバル基準位置に対する複数の距離検出装置11それぞれの相対位置が変化してしまい、測定誤差が生じ得る。
【0087】
そこで、三次元形状測定システム100は、ワークWの形状の測定を開始する前に、複数の距離検出装置11それぞれの相対位置を測定するキャリブレーションを実行してもよい。具体的には、キャリブレーションを実行する操作が行われると、複数の距離検出装置11が発射したレーザ光が届く範囲に特徴点を有する基準物体を台Dに固定した状態で、複数の距離検出装置11が基準物体に向けてレーザ光を発射する。物体特定部124は、複数の距離検出装置11が生成した距離データに基づいて、複数の距離検出装置11それぞれのローカル基準位置を基準とする基準物体の三次元座標を特定する。
【0088】
位置特定部125は、複数の距離検出装置11それぞれに対応する三次元座標の差分値を相対位置として算出し、算出した結果を記憶部122に記憶させる。位置特定部125は、例えば、基準物体の位置をグローバル基準位置(すなわち三次元空間の原点)とする複数の距離検出装置11の三次元座標を記憶する。キャリブレーション後は、位置特定部125は、記憶部122に記憶された相対位置を用いて物体特定部124が特定したワークWの三次元座標を補正することにより、三次元空間におけるワークWの位置を特定する。
【0089】
三次元形状測定システム100は、アーム131Aの回転軸が台Dと交わる位置のように、常に存在する物体を基準物体として用いてもよい。この場合、三次元形状測定システム100は、測定者が基準物体を台Dに載置することなくワークWの形状を測定するたびにキャリブレーションを実行できるので、効率良く測定精度を向上させることができる。
【0090】
[プローブ132とスタイラス133との位置関係の特定方法]
以上の説明においては、プローブ132に対するスタイラス133の位置が一定であることを前提としていたが、プローブ132に対するスタイラス133の位置にはばらつきがあると考えられる。そこで、三次元形状測定システム100は、ワークWの形状測定の前に、プローブ132に対するスタイラス133の位置をキャリブレーションしてもよい。
【0091】
一例として、三次元形状測定システム100は、複数の距離検出装置11が発射するレーザ光が届く範囲にプローブ132及びスタイラス133がある状態で、複数の距離検出装置11にレーザ光を発射させる。位置特定部125は、物体特定部124が距離データに基づいて算出した三次元座標を補正することにより、プローブ132の複数の特徴点の三次元座標と、スタイラス133の先端の三次元座標とを算出する。位置特定部125は、プローブ132の複数の特徴点の位置に対するスタイラス133の先端の位置を示すデータを記憶部122に記憶させる。
【0092】
ところで、プローブ132に対するスタイラス133の位置のばらつきは無視できるという場合、位置特定部125は、予め記憶部122に記憶されたプローブ132とスタイラス133の位置関係を示すオフセットデータを使用できる。しかしながら、複数のプローブ132及び複数のスタイラス133があり、測定に使用されるプローブ132とスタイラス133の組み合わせが変化するという場合も想定される。
【0093】
そこで、三次元形状測定システム100は、ワークWの形状の測定を開始する前に、プローブ132とスタイラス133の位置関係を特定する処理を実行してもよい。複数のプローブ132及び複数のスタイラス133には、プローブ132又はスタイラス133のタイプを識別するための目印が設けられており、物体特定部124は、距離データ又は撮像画像データに基づいてプローブ132とスタイラス133との組み合わせを特定してもよい。この場合、プローブ132とスタイラス133との組み合わせごとに、プローブ132とスタイラス133との位置関係を示すオフセットデータが記憶部122に記憶されており、位置特定部125は、物体特定部124が特定したプローブ132とスタイラス133との組み合わせに対応するオフセットデータを用いて、プローブ132の位置に基づいてスタイラス133の先端の位置を特定する。
【0094】
なお、プローブ132とスタイラス133との組み合わせを特定する方法は、上記の方法に限らない。プローブ132又はスタイラス133の少なくともいずれかが無線通信機能を有しており、プローブ132とスタイラス133との組み合わせを示す情報をデータ処理装置12Aに送信してもよい。位置特定部125は、通信部121を介して当該情報を取得し、取得した情報に基づいてプローブ132とスタイラス133との組み合わせを特定してもよい。プローブ132又はスタイラス133の少なくともいずれかは、プローブ132とスタイラス133との組み合わせを示す情報を距離検出装置11に送信してもよい。この場合、位置特定部125は、通信部121を介して、プローブ132とスタイラス133との組み合わせを示す情報を距離検出装置11から取得する。
【0095】
以上のとおり、位置特定部125がプローブ132とスタイラス133との位置関係を特定することで、プローブ132とスタイラス133との位置関係が既知でないという場合であっても、プローブ132の位置に基づいてスタイラス133の先端の位置を特定することができる。
【0096】
[プローブ132及びスタイラス133からのデータ取得]
データ処理装置12Aは、通信部121を介して、物体探査装置13からプローブ132又はスタイラス133の少なくともいずれかの使用状況に関するデータを取得してもよい。使用状況に関するデータは、プローブ132が接触式のプローブである場合、ワークWへの接触回数又は接触タイミングを示すデータであり、プローブ132が非接触式のプローブ(例えばレーザセンサー)である場合、光を照射した回数又は光を照射したトータルの時間である。データ処理装置12Aは、このようにして取得したデータを、物体探査装置13を識別するための識別情報に関連付けて記憶部122に記憶させたり、物体探査装置13の管理者がアクセス可能な外部装置に送信したりしてもよい。データ処理装置12Aがこのように構成されていることで、物体探査装置13の管理者が物体探査装置13の状態を把握しやすくなる。
【0097】
また、データ処理装置12Aの形状特定部127は、このようにして取得したデータが示すプローブ132又はスタイラス133の状態に基づいて推定されるワークWの形状と、距離検出装置11から取得した距離データに基づいて特定したワークWの形状との差が閾値以上である場合に、異常が発生したと判定し、警告情報を出力してもよい。データ処理装置12Aがこのように構成されていることで、管理者が、測定結果に誤りがあることを検出したり、物体探査装置13又は距離検出装置11の異常を検出したりすることができる。
【0098】
[三次元形状測定システム100による効果]
以上説明したように、三次元形状測定システム100は、複数の距離検出装置11がプローブ132に向けてレーザ光を発射し、プローブ132からの反射光に基づいて、位置特定部125が三次元空間におけるプローブ132の位置を特定する。さらに、位置特定部125は、複数の距離データのいずれかにおいて特定したプローブ132の位置に基づいてワークWの表面の位置を特定する。位置特定部125は、例えばプローブ132の位置に基づいてスタイラス133の先端の位置を特定することで、ワークWの表面の位置を特定する。
【0099】
位置特定部125は、複数の距離データを用いてプローブ132の位置を特定することで、プローブ132がワークWに対して1台の距離検出装置11の反対側に位置しており、当該距離検出装置11が作成する距離データにプローブ132が含まれないという場合であっても、他の距離検出装置11が作成した距離データに基づいてプローブ132の位置を特定することができる。その結果、位置特定部125は、ワークWの表面の位置を漏れなく特定することができるので、三次元形状測定システム100は、ワークWの全ての側の形状を測定することができる。
【0100】
[運転支援システム200の構成]
図8は、本実施形態に係る位置特定方法を用いる運転支援システム200の概要を示す図である。運転支援システム200は、複数の車両に搭載された複数の距離検出装置11が作成した距離データに基づいて車両の周辺の物体の位置を特定し、特定した物体の位置に基づいて車両の運転を支援したり、車両を自動運転させたりするためのシステムである。
【0101】
複数の車両(車両a及び車両b)に搭載された複数の距離検出装置11は、作成した距離データを順次データ処理装置12Bに送信する。運転支援システム200は、道路に設置された距離検出装置11が作成した距離データをさらに使用して物体の位置を特定してもよい。なお、図8においては2台の車両のみが示されているが、運転支援システム200は、より多くの車両に搭載された距離検出装置11が含まれていてもよい。
【0102】
データ処理装置12Bは、図1から図3を参照しながら説明した位置特定方法を用いて物体の位置を特定し、特定した位置を示すデータを各車両に提供する。データ処理装置12Bは、図3に示したデータ処理装置12と同等の機能を有するが、車両の自動運転を支援するための機能をさらに有するという点でデータ処理装置12と異なる。
【0103】
運転支援システム200においては、データ処理装置12Bが物体の位置を特定する代わりに、各車両が有するデータ処理装置がデータ処理装置12Bの機能を有していてもよい。各車両が有するデータ処理装置は、自車両から所定の範囲内の他の車両に搭載された複数の距離検出装置11から距離データを取得し、取得した距離データに基づいて、自車両の周辺にある物体を特定する。データ処理装置12Bがこのように動作することで、各車両は、自車両から直接視認することができない位置に存在する物体の位置を特定することができるので、直接視認することができない物体の存在を運転者に通知したり、直接視認することができない物体を考慮して自動運転したりすることができる。
【0104】
図9は、運転支援システム200におけるデータ処理装置12Bの構成を示す図である。データ処理装置12Bは、図3に示したデータ処理装置12と同様に、通信部121と、記憶部122と、制御部123とを有する。
【0105】
制御部123は、物体特定部124と、位置特定部125と、距離データ取得部128と、統合データ作成部129と、を有する。物体特定部124及び位置特定部125は、図3に示したデータ処理装置12が有する物体特定部124及び位置特定部125と同等の機能を有する。ただし、位置特定部125は、特定した物体の位置を示す物体位置データを、通信部121を介して複数の車両に提供する。
【0106】
距離データ取得部128は、通信部121を介して、所定の三次元空間内の物体で反射された光を検出することにより、物体における複数の位置までの距離を示す距離データを作成する複数の距離検出装置11が作成した複数の距離データを取得する。距離データ取得部128は、車両を識別するための車両識別情報(例えば車両番号)に関連付けて距離データを取得してもよい。また、距離データ取得部128は、移動する複数の距離検出装置11から、複数の距離検出装置11の位置を示す位置情報を距離データに関連付けて取得する。距離データ取得部128は、取得した距離データを物体特定部124に入力し、位置情報を位置特定部125に入力する。
【0107】
距離検出装置11は、例えば車両に搭載されたGPS(Global Positioning System)受信機がGPS衛星から受信した電波に基づいて、距離検出装置11の緯度・経度を示す位置情報を生成する。距離検出装置11は、自身の位置を特定した後に、車両に搭載された速度センサーにより測定された車両の速度、及びジャイロセンサーにより測定された車両の進行方向に基づいて、距離検出装置11の緯度・経度を示す位置情報を生成してもよい。距離データ取得部128は、複数の距離検出装置11から位置情報を定期的に取得することにより、複数の距離検出装置11の位置関係を特定することができる。
【0108】
物体特定部124は、距離データ取得部128から入力された複数の距離データのうち一以上の距離データに含まれている物体を特定する。物体特定部124が特定する物体は、車両が走行するエリアに存在すると想定される物体として予め記憶部122に形状データが記憶された物体であり、例えば、車両、人、自転車、バイク、標識及びガードレールのように、車両が自動運転するために認識する必要がある物体である。物体特定部124は、複数の距離検出装置11が作成した複数の距離データにおいて共通に含まれる共通物体を特定し、特定した共通物体の距離データにおける位置を統合データ作成部129に通知する。
【0109】
統合データ作成部129は、距離データ取得部128から入力された位置情報が示す複数の距離検出装置11の位置関係に対応する相対位置に距離データ取得部128が取得した複数の距離データを配置して統合することにより、複数の距離データそれぞれに対応する三次元空間よりも大きな三次元空間に対応する統合距離データを作成する。複数の距離データそれぞれに対応する三次元空間は、複数の距離検出装置11それぞれが測距可能な範囲の三次元空間である。統合データ作成部129は、図2を参照しながら説明した方法により統合距離データを作成する。
【0110】
統合データ作成部129は、例えば、複数の車両の近傍にある共通物体の位置が重なるように複数の距離データを配置して統合することにより、複数の距離データそれぞれに対応する三次元空間よりも大きな三次元空間に対応する統合距離データを作成する。統合データ作成部129は、作成した統合距離データを位置特定部125に入力する。
【0111】
位置特定部125は、物体特定部124が物体を特定した距離データを作成した距離検出装置11の三次元空間における位置と、距離データにおける物体の位置とに基づいて、三次元空間における物体の位置を特定する。位置特定部125は、統合データ作成部129から入力された統合距離データにおける物体の位置を特定することにより、複数の車両を含む三次元空間における物体の位置を特定する。
【0112】
位置特定部125は、距離データ取得部128が取得した位置情報が示す距離検出装置11の空間における位置と、距離データにおける物体の位置とに基づいて、三次元空間における物体の位置を特定する。位置特定部125は、例えば位置情報が示す距離検出装置11の位置の座標に、距離データにおける物体の位置を示す座標を加算することにより、物体の位置を特定してもよい。位置特定部125は、特定した物体の位置を示す物体位置データを各車両に提供する。
【0113】
[運転支援システム200における処理の流れ]
図10は、運転支援システム200における処理の流れを示すシーケンス図である。図10に示すシーケンス図に示す処理は、繰り返し実行される。
【0114】
車両aに搭載された距離検出装置11-1は、所定の時間間隔で距離データを作成してデータ処理装置12Bに送信する(S21)。また、車両bに搭載された距離検出装置11-2も、所定の時間間隔で距離データを作成してデータ処理装置12Bに送信する(S22)。
【0115】
物体特定部124は、距離検出装置11-1から受信した距離データと距離検出装置11-2から受信した距離データとに共通に含まれる物体を特定する(S23)。統合データ作成部129は、複数の距離データに共通に含まれる物体の位置が合うように複数の距離データを重ね合わせることにより、統合距離データを作成する(S24)。位置特定部125は、統合距離データに含まれている物体の位置を特定することにより、三次元空間における物体の位置を特定する(S25)。
【0116】
位置特定部125は、特定した物体の位置を示す物体位置データを車両a及び車両bに送信する。車両a及び車両bは、受信した物体位置データが示す物体の位置を、ディスプレイ上の地図画面に表示したり(S26、S27)、物体の位置に基づいて走行速度又は走行位置を制御したりする。
【0117】
[運転支援システム200による効果]
以上説明したように、運転支援システム200においては、位置特定部125が、複数の車両に搭載された複数の距離検出装置11が作成した複数の距離データに基づいて車両の周辺の物体の位置を特定する。位置特定部125は、複数の距離データのいずれかに含まれている物体の位置を特定することができるので、各車両と物体との間に障害物が存在する場合であっても、車両は、周辺の物体の位置を認識することができる。車両は、そのようにして認識した物体の位置を用いることで、運転者の運転を支援したり自動運転をしたりすることができる。
【0118】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0119】
1 位置検出システム
11 距離検出装置
12 データ処理装置
13 物体探査装置
100 三次元形状測定システム
121 通信部
122 記憶部
123 制御部
124 物体特定部
125 位置特定部
126 データ取得部
127 形状特定部
128 距離データ取得部
129 統合データ作成部
131 アーム
132 プローブ
133 スタイラス
200 運転支援システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10