(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182619
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】光学素子、積層体、表示装置、光学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221201BHJP
G02B 1/118 20150101ALI20221201BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221201BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20221201BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221201BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221201BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/118
H05B33/10
H05B33/02
H05B33/14 A
H01L27/32
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090278
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】福島 悠太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直也
【テーマコード(参考)】
2H149
2K009
3K107
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149AB05
2H149BA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149DB03
2H149DB15
2H149EA02
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA02Y
2H149FA03W
2H149FA03Z
2H149FA07Y
2H149FA08Y
2H149FA14Y
2H149FA24Y
2H149FA33Y
2H149FA36Y
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2H149FA52Z
2H149FA56Y
2H149FA58Y
2H149FA58Z
2H149FA59Z
2H149FA63
2H149FD03
2H149FD30
2H149FD46
2H149FD48
2K009AA02
2K009CC24
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107FF06
3K107FF14
3K107FF15
3K107GG28
5G435AA01
5G435BB05
5G435DD12
5G435FF05
5G435HH20
5G435KK07
5G435KK10
5G435LL07
(57)【要約】
【課題】 偏光子と組み合わせて得られる偏光板を表示素子に適用した際に、黒表示における正面方向からの視認時の黒しまりが良好である光学素子、積層体、表示装置、および、光学素子の製造方法の提供。
【解決手段】 光学異方性層と、光学等方性部材と、を含み、光学異方性層と光学等方性部材とが接しており、光学異方性層の平均屈折率と、光学等方性部材の屈折率との差の絶対値が、0.08以内であり、光学等方性部材は、光学異方性層側とは反対側に突出する凸部を有する、光学素子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学異方性層と、
光学等方性部材と、を含み、
前記光学異方性層と前記光学等方性部材とが接しており、
前記光学異方性層の平均屈折率と、前記光学等方性部材の屈折率との差の絶対値が、0.08以内であり、
前記光学等方性部材は、前記光学異方性層側とは反対側に突出する凸部を有する、光学素子。
【請求項2】
前記光学異方性層および前記光学等方性部材が、いずれも液晶化合物を用いて形成された、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記光学異方性層および前記光学等方性部材が、いずれも同一の液晶化合物を用いて形成された、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記光学異方性層が、λ/4板である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項5】
複数の前記凸部が周期的に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記複数の凸部の間隔が、0.2~20μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記凸部が、ドット状、または、ストライプ状に配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記凸部の幅が、前記凸部の前記光学異方性層側とは反対側から前記光学異方性層側に向かって、漸増している、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光学素子と、前記光学素子の前記光学等方性部材側に配置された粘着層と、を有する積層体。
【請求項10】
偏光子と、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学素子と、表示素子とを、この順で有し、
前記光学素子中の前記光学異方性層が前記偏光子側に配置されている、表示装置。
【請求項11】
重合性基を有する液晶化合物を含む組成物層を基板上に形成する工程1と、
前記組成物層に加熱処理を施して、前記組成物層中の前記液晶化合物を配向させる工程2と、
前記工程2の後、酸素濃度1体積%以上の条件下にて、前記組成物層に対して光照射を行う工程3と、
表面に凹凸構造を有する金型を、前記組成物層の前記基板側とは反対側の表面に押し当てて前記金型の凹凸構造を前記組成物層に転写する工程4と、
前記組成物層に対して硬化処理を施し、前記基板側から、光学異方性層と、前記光学異方性層側とは反対側に突出する凸部を有する光学等方性部材とを有する光学素子を形成する工程5と、を有し、
以下の要件1~4のいずれかを満たす、光学素子の製造方法。
要件1:前記工程4を、前記組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上の加熱条件下にて実施する。
要件2:前記工程5を、前記組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上の加熱条件下にて実施する。
要件3:前記工程3と前記工程4との間に、前記組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上に前記組成物層を加熱する工程6をさらに有する。
要件4:前記工程4と前記工程5との間に、前記組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上に前記組成物層を加熱する工程7をさらに有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、積層体、表示装置、および、光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を表示する表示装置として、例えば、発光層を発光させることによって画像を表示する有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置が知られている。
有機EL表示装置などの表示装置には各種光学素子が含まれる場合があり、例えば、特許文献1では、偏光部材と位相差部材とを有する円偏光板、および、第1方向に配列され且つ各々が第1方向と交差する第2方向に延びる複数の第1部分と、第1部分と第1方向に沿って交互に配置される第2部分とを有する光学シート、などが表示装置中に含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、本発明者らは特許文献1に記載の表示装置の特性について検討したところ、黒表示にし、正面方向から視認した際に、反射光が確認され、黒しまりが必ずしも十分でなく、さらなる改良が必要であることを知見した。
【0005】
本発明は、偏光子と組み合わせて得られる偏光板を表示素子に適用した際に、黒表示における正面方向からの視認時の黒しまりが良好である、光学素子を提供することを課題とする。
また、本発明は、積層体、表示装置、および、光学素子の製造方法も提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来技術の問題点について鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
(1) 光学異方性層と、
光学等方性部材と、を含み、
光学異方性層と光学等方性部材とが接しており、
光学異方性層の平均屈折率と、光学等方性部材の屈折率との差の絶対値が、0.08以内であり、
光学等方性部材は、光学異方性層側とは反対側に突出する凸部を有する、光学素子。
(2) 光学異方性層および光学等方性部材が、いずれも液晶化合物を用いて形成された、(1)に記載の光学素子。
(3) 光学異方性層および光学等方性部材が、いずれも同一の液晶化合物を用いて形成された、(1)または(2)に記載の光学素子。
(4) 光学異方性層が、λ/4板である、(1)~(3)のいずれかに記載の光学素子。
(5) 複数の凸部が周期的に配置されている、(1)~(4)のいずれかに記載の光学素子。
(6) 複数の凸部の間隔が、0.2~20μmである、(1)~(5)のいずれかに記載の光学素子。
(7) 凸部が、ドット状、または、ストライプ状に配置されている、(1)~(6)のいずれかに記載の光学素子。
(8) 凸部の幅が、凸部の光学異方性層側とは反対側から光学異方性層側に向かって、漸増している、(1)~(7)のいずれかに記載の光学素子。
(9) (1)~(8)のいずれかに記載の光学素子と、光学素子の光学等方性部材側に配置された粘着層と、を有する積層体。
(10) 偏光子と、(1)~(8)のいずれかに記載の光学素子と、表示素子とを、この順で有し、
光学素子中の光学異方性層が偏光子側に配置されている、表示装置。
(11) 重合性基を有する液晶化合物を含む組成物層を基板上に形成する工程1と、
組成物層に加熱処理を施して、組成物層中の液晶化合物を配向させる工程2と、
工程2の後、酸素濃度1体積%以上の条件下にて、組成物層に対して光照射を行う工程3と、
表面に凹凸構造を有する金型を、組成物層の基板側とは反対側の表面に押し当てて金型の凹凸構造を組成物層に転写する工程4と、
組成物層に対して硬化処理を施し、基板側から、光学異方性層と、光学異方性層側とは反対側に突出する凸部を有する光学等方性部材とを有する光学素子を形成する工程5と、を有し、
後述する要件1~4のいずれかを満たす、光学素子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、偏光子と組み合わせて得られる偏光板を表示素子に適用した際に、黒表示における正面方向からの視認時の黒しまりが良好である、光学素子を提供できる。
また、本発明によれば、積層体、表示装置、および、光学素子の製造方法も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の光学素子の一実施態様の概略断面図を示す。
【
図3】本発明の光学素子の他の実施態様の平面図を示す。
【
図4】本発明の光学素子の他の実施態様の概略断面図を示す。
【
図6】工程2を説明するための組成物層の断面図である。
【
図7】工程3を説明するための組成物層の断面図である。
【
図8】工程4を説明するための組成物層の断面図である。
【
図9】工程4を説明するための組成物層の断面図である。
【
図11】工程2を説明するための組成物層の断面図である。
【
図12】工程3を説明するための組成物層の断面図である。
【
図13】加熱処理を説明するための組成物層の断面図である。
【
図14】キラル剤Aおよびキラル剤Bの各々について、螺旋誘起力(HTP:Helical Twisting Power)(μm
-1)×濃度(質量%)と光照射量(mJ/cm
2)との関係をプロットしたグラフの模式図である。
【
図15】キラル剤Aおよびキラル剤Bを併用した系において、加重平均螺旋誘起力(μm
-1)と光照射量(mJ/cm
2)との関係をプロットしたグラフの模式図である。
【
図16】工程3を説明するための組成物層の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0011】
遅相軸は、特別な断りがなければ、波長550nmにおける定義である。
【0012】
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレタデーションおよび厚み方向のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)はAxoScan(Axometrics社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScanで算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0013】
本明細書において、屈折率nx、ny、および、nzは、アッベ屈折計(NAR-4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルターとの組み合わせで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、および、各種光学フィルムのカタログの値を使用できる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、および、ポリスチレン(1.59)。
【0014】
本明細書中における「光」とは、活性光線または放射線を意味し、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光:Extreme Ultraviolet)、X線、紫外線、および電子線(EB:Electron Beam)などを意味する。なかでも、紫外線が好ましい。
【0015】
本明細書では、「可視光」とは、380~780nmの光のことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
【0016】
本発明の光学素子においては、光学異方性層と光学等方性部材とが接して配置されており、両者の間の屈折率差が小さいことから、両者の間での界面反射が抑制され、結果として、本発明の効果が得られている。
なお、本発明の光学素子と偏光子と組み合わせて得られる偏光板を表示素子に適用した際に、黒表示における正面方向からの視認時の黒しまりがより優れることを、以下、単に「本発明の効果がより優れる」ともいう。
後述するように、凸部が所定の構造および配置である場合(例えば、凸部が所定の大きさである場合、または、凸部の間隔が所定の範囲である場合)、本発明の発光素子と偏光子とを組み合わせて得られる偏光板を表示素子に適用した際に、白表示における斜め方向からの視認時の青味の発生が抑制される。以下、上記のように白表示における斜め方向からの視認時の青味の発生がより抑制されることを、単に「青味の発生がより抑制される」ともいう。
【0017】
<光学素子>
以下に、本発明の光学素子の一実施態様について図面を参照して説明する。
図1に、本発明の光学素子の一実施態様の概略断面図を示す。
図2に、
図1に示す光学素子の一部の平面図を示す。なお、平面図とは、
図1において光学素子の一部を上方から見た図である。また、
図1は、
図2中のA-A線での断面図である。なお、説明のため、
図2において、図面上の左右方向をX軸方向、上下方向をY軸方向とする。
光学素子10Aは、光学異方性層12と、光学等方性部材14Aとを有する。光学異方性層12と光学等方性部材14Aとは直接接している。また、光学等方性部材14Aの光学異方性層12側とは反対側の表面には、凹凸構造が形成されており、光学異方性層12側とは反対側に突出している複数のドット状の凸部16Aが形成されている。より具体的には、光学等方性部材14Aは、ベース部18Aと、ベース部18A上に配置されたドット状の凸部16Aとを有する。凸部16Aは円錐台状であり、凸部16Aは平面視において円形状である。凸部16Aは複数あり、複数の凸部16Aは六方最密状に配置されている。つまり、複数の凸部16Aは、周期的に配置されている。ベース部18Aは、面方向に沿って連続的に連なっており、光学異方性層12と接している。
【0018】
図2においては、凸部16Aは8つしか記載されていないが、
図2は光学素子の一部を取り出した平面図であり、光学素子には8つ以上の凸部16Aが形成されている。
図1において、凸部16Aは、円錐台状であるが、本発明はこの態様に限定されず、例えば、半球状、円錐状、逆円錐台状、および、角錐台状のいずれでもよい。なお、逆円錐台状とは、
図1の態様とは異なり、上底の幅が下底の幅よりも大きい態様が該当する。
また、
図1において、凸部16Aは、平面視において円形状であるが、本発明はこの態様に限定されず、例えば、多角形状、楕円状、および、不定形状のいずれでもよい。
図1において、凸部16Aは、断面視で上底が下底よりも小さい台形状である。つまり、凸部16Aの幅が、凸部16Aの光学異方性層12側とは反対側から光学異方性層12側に向かって(図中の白抜き矢印の方向に向かって)、漸増している。より具体的には、
図2に示すように、凸部16Aの上底の幅WA1(上底の直径)が凸部16Aの下底の幅WA2(下底の直径)よりも小さく、凸部16Aの幅が上底から下底に向かって、漸増している。
なお、凸部16Aの断面形状は、台形形状の脚の部分が直線でなく、曲線であってもよい。
凸部16Aが、上記のような構造である場合、青味の発生がより抑制される。
【0019】
図2に示す、円錐台状の凸部16Aの上底の幅WA1は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点で、0.1~20.0μmが好ましく、青味の発生がより抑制される点で、0.2~20.0μmがより好ましく、0.2~5.0μmがさらに好ましい。
円錐台状の凸部16Aの下底の幅WA2は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点で、0.1~20.0μmが好ましく、青味の発生がより抑制される点で、0.2~20.0μmがより好ましく、0.2~5.0μmがさらに好ましい。
なお、上述したように、凸部16Aの上底の幅WA1は、下底の幅WA2よりも小さいほうが好ましく、凸部16Aの幅が上底から下底に向かって、漸増していることが好ましい。
【0020】
凸部16Aの高さHA1は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点で、0.1~20.0μmが好ましく、青味の発生がより抑制される点で、0.2~20.0μmがより好ましく、0.2~5.0μmがさらに好ましい。
ベース部18Aの厚みHA2(光学等方性部材14Aの全体の厚みから凸部16Aの高さを除いた厚み)は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点で、0.1~20.0μmが好ましく、青味の発生がより抑制される点で、0.2~20.0μmがより好ましく、0.2~5.0μmがさらに好ましい。
凸部16Aの周期PA(隣接する凸部間の間隔)は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点で、0.1~20.0μmが好ましく、青味の発生がより抑制される点で、0.2~5.0μmがより好ましく、0.2~5.0μmがさらに好ましい。
凸部16Aの周期PAに対する、凸部16Aの高さHA1の比は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点から、0.005~200が好ましく、0.01~100がより好ましく、0.1~10がさらに好ましい。
【0021】
図1においては、円錐台状の凸部16Aは六方最密状に配置されているが、本発明はこの態様に限定されず、例えば、
図3に示すように、円錐台状の凸部16Aが正方格子状に配置されていてもよいし、ランダム状に配置されていてもよい。
【0022】
また、
図1においては、円錐台状の凸部16Aの態様について述べたが、本発明はこの態様に限定されず、凸部がストライプ状に配置されていてもよい。以下、この態様について詳述する。
図4に、本発明の光学素子の他の例の概略断面図を示す。
図5に、
図4に示す光学素子の一部の平面図を示す。なお、平面図とは、
図4において光学素子の一部を上方から見た図である。また、
図4は、
図5中のB-B線での断面図である。なお、説明のため、
図5において、図面上の左右方向をX軸方向、上下方向をY軸方向とする。
【0023】
光学素子10Bは、光学異方性層12と、光学等方性部材14Bとを有する。光学異方性層12と光学等方性部材14Bとは直接接している。また、光学等方性部材14Bの光学異方性層12側とは反対側の表面には、凹凸構造が形成されており、凸部16Bがストライプ状に配置されている。より具体的には、光学等方性部材14Bは、ベース部18Bと、ベース部18B上に配置されたストライプ状に配置された凸部16Bとを有する。凸部16Bは、Y方向に延在し、延在する方向と直交する方向(X方向)に周期的に配置されている。ベース部18Bは、面方向に沿って連続的に連なっており、光学異方性層12と接している。
【0024】
図5においては、凸部16Bは3つしか記載されていないが、
図5は光学素子の一部を取り出した平面図であり、光学素子には3つ以上の凸部16Bが形成されている。
図4に示すように、凸部16Bは、延在する方向と直交する断面における形状は台形状であるが、本発明はこの態様に限定されず、半円状であってもよい。
図4において、凸部16Bは、断面視で上底が下底よりも小さい台形状である。つまり、凸部16Bの幅が、凸部16Bの光学異方性層12側とは反対側から光学異方性層12側に向かって(図中の白抜き矢印の方向に向かって)、漸増している。より具体的には、
図5に示すように、凸部16Bの上底の幅WB1(上底の直径)が凸部16Bの下底の幅WB2(下底の直径)よりも小さく、凸部16Bの幅が上底から下底に向かって、漸増している。
なお、凸部16Bの断面形状は、台形形状の脚の部分が直線でなく、曲線であってもよい。
凸部16Bが、上記のような構造である場合、青味の発生がより抑制される。
【0025】
図5に示す、断面形状が台形状の凸部16Bの上底の幅WB1は特に制限されず、上述した幅WA1と同様の範囲が好ましい。
円錐台状の凸部16Bの下底の幅WB2は特に制限されず、上述した幅WB2と同様の範囲が好ましい。
なお、上述したように、凸部16Bの上底の幅WB1は、下底の幅WB2よりも小さいほうが好ましく、凸部16Bの幅が上底から下底に向かって、漸増していることが好ましい。
凸部16Bの高さHB1は特に制限されず、上述した高さHA1と同様の範囲が好ましい。
ベース部18Bの厚みHB2(光学等方性部材14Bの全体の厚みから凸部16Bの高さを除いた厚み)は特に制限されず、上述した高さHA2と同様の範囲が好ましい。
凸部16Bの周期PBは特に制限されず、上述した周期PBと同様の範囲が好ましい。
凸部16Aの周期PBに対する、凸部16Aの高さHB1の比は特に制限されず、上述した周期PAに対する高さHA1の比と同様の範囲が好ましい。
【0026】
図1および
図4においては、ベース部18Aおよびベース部18Bがある態様について述べたが、本発明はこの形態に限定されず、光学等方性部材が複数の凸部のみで構成されていてもよい。
【0027】
本発明の光学素子において、光学異方性層と光学等方性部材とは接している。特に、光学素子の厚み方向に沿って、光学異方性層と光学等方性部材とが接していることが好ましく、より具体的には、
図1および4に示すように、光学等方性部材の2つの主面のうちの一方と、光学等方性部材の2つの主面のうち凹凸構造が配置されていない主面とが接していることが好ましい。
【0028】
本発明の光学素子において、光学異方性層の平均屈折率と、光学等方性部材の屈折率との差の絶対値は、0.08以内であり、本発明の効果がより優れる点で、0.06以内が好ましく、0.04以内がより好ましい。下限は特に制限されないが、0が挙げられる。
光学異方性層の平均屈折率とは、光学異方性層の面内方向の屈折率が最大となる方向における屈折率と、上記面内方向の屈折率が最大となる方向と直交する方向における屈折率とを相加平均した値である。
上記光学異方性層の平均屈折率の測定方法としては、例えば、光学素子の光学等方性部材をエッチングにより除去して、光学異方性層を露出させた状態で、偏光子を使用したアッベ屈折計を用いて、光学異方性層の面内方向の屈折率が最大となる方向における屈折率と、上記面内方向の屈折率が最大となる方向と直交する方向における屈折率とを測定し、得られた値を相加平均して、光学異方性層の平均屈折率とする。
また、光学等方性部材の屈折率の測定方法としては、光学等方性部材の一部を削り落として粉末にし、得られた粉末とは異なる屈折率の溶媒に粉末を浸漬させた際のベッケ線を観察して(いわゆる、ベッケ線法)、屈折率を決定する。
上記平均屈折率および屈折率は、測定温度23℃、波長589nmにおける屈折率である。
なお、後述するように、光学異方性層が、液晶化合物の配向状態が異なる領域を厚み方向に沿って複数有する場合、光学等方性部材と接している領域の平均屈折率を測定し、光学異方性層の平均屈折率とする。
【0029】
光学異方性層の平均屈折率と、光学等方性部材の屈折率との差の絶対値の範囲を調整する方法は特に制限されず、例えば、光学異方性層を構成する材料の種類と光学等方性部材を構成する材料の種類とを調整する方法が挙げられ、同一の材料を用いて、光学異方性層および光学等方性部材を形成する方法が挙げられる。
後述するように、光学異方性層および光学等方性部材は、いずれも液晶化合物を用いて形成されてもよい。そのため、上述した光学異方性層の平均屈折率と、光学等方性部材の屈折率との差の絶対値の範囲にするために、光学異方性層および光学等方性部材が、いずれも同一の液晶化合物を用いて形成された層であることが好ましい。
【0030】
以下、光学異方性層および光学等方性部材についてより詳述する。
【0031】
<光学異方性層>
光学異方性層とは、光学的に異方性を示す層である。光学異方性層としては、例えば、nx、ny、および、nzのうち少なくとも2つが異なる層が挙げられる。なお、nxは、光学異方性層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、光学異方性層の面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは、光学異方性層の厚み方向の屈折率を表す。
光学異方性層としては、例えば、λ/4板、λ/2板、コレステリック液晶相を固定してなる層、および、ハイブリッド配向相を固定してなる層などが挙げられ、本発明の効果がより優れる点で、λ/4板が好ましい。
【0032】
λ/4板とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。より具体的には、所定の波長λnmにおける面内レタデーションReがλ/4(または、この奇数倍)を示す板である。
λ/4板の波長550nmでの面内レタデーション(Re(550))は、理想値(137.5nm)を中心として、25nm程度の誤差があってもよく、例えば、110~160nmであることが好ましく、120~150nmであることがより好ましい。
また、λ/2板とは、特定の波長λnmにおける面内レタデーションRe(λ)がRe(λ)≒λ/2を満たす光学異方性膜のことをいう。この式は、可視光線領域のいずれかの波長(例えば、550nm)において達成されていればよい。なかでも、波長550nmにおける面内レタデーションRe(550)が、以下の関係を満たすことが好ましい。
210nm≦Re(550)≦300nm
【0033】
光学異方性層を構成する材料は特に制限されず、液晶化合物、および、ポリマーが挙げられ、本発明の効果がより優れる点で、液晶化合物が好ましい。特に、光学異方性層は、液晶化合物を用いて形成された層であることが好ましく、重合性基を有する液晶化合物を用いて形成された層であることがより好ましい。
【0034】
液晶化合物の種類は、特に制限されない。一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(ディスコティック液晶化合物)とに分類できる。さらに、液晶化合物は、低分子タイプと高分子タイプとの分類できる。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井正男著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできるが、棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いるのが好ましく、棒状液晶化合物を用いるのがより好ましい。2種以上の棒状液晶化合物、2種以上のディスコティック液晶化合物、または、棒状液晶化合物とディスコティック液晶化合物との混合物を用いてもよい。
なお、棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1、および、特開2005-289980号公報の段落0026~0098に記載の液晶化合物が挙げられる。
ディスコティック液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落0020~0067、および、特開2010-244038号公報の段落0013~0108に記載の液晶化合物が挙げられる。
【0035】
液晶化合物は、重合性基を有することが好ましい。つまり、液晶化合物は、重合性液晶化合物であることが好ましい。液晶化合物が重合性基を有する場合、後述する硬化処理によって、液晶化合物の配向状態を容易に固定化できる。
液晶化合物が有する重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基または環重合性基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、または、アリル基がさらに好ましい。
液晶化合物が有する重合性基の数は特に制限されないが、2以上が好ましい。上限は特に制限されないが、10以下の場合が多い。
【0036】
液晶化合物は、順波長分散性および逆波長分散性のいずれを示す液晶化合物であってもよく、逆波長分散性を示す液晶化合物が好ましく、重合性基を2つ以上有し、逆波長分散性を示す液晶化合物がより好ましい。
本明細書において「逆波長分散性を示す液晶化合物」とは、この化合物を用いて作製された光学異方性膜の特定波長(可視光範囲)における面内のレタデーション(Re)値を測定した際に、以下の式(A)および式(B)の関係を満たすものをいう。
式(A) Re(450)/Re(550)<1.00
式(B) Re(650)/Re(550)≧1.00
Re(450)は波長450nmにおける光学異方性膜の面内レタデーションを表し、Re(550)は波長550nmにおける光学異方性膜の面内レタデーションを表し、Re(650)は波長650nmにおける光学異方性膜の面内レタデーションを表す。
本明細書において「順波長分散性を示す液晶化合物」とは、この化合物を用いて作製された光学異方性膜の特定波長(可視光範囲)における面内のレタデーション(Re)値を測定した際に、以下の式(C)および式(D)の関係を満たすものをいう。
式(C) Re(450)/Re(550)≧1.00
式(D) Re(650)/Re(550)<1.00
【0037】
上述したように、光学異方性層は、重合性基を有する液晶化合物を用いて形成された層であることが好ましく、重合性基を有する液晶化合物の配向状態を固定してなる層であることがより好ましい。
重合性基を有する液晶化合物が取り得る配向状態は特に制限されず、例えば、ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向、捩れ配向、コレステリック配向、ハイブリッド配向(一方の表面から他方の表面に向かって液晶化合物のチルト角が連続的に変化する配向)、および、傾斜配向(一方の表面から他方の表面に向かって液晶化合物のチルト角が一定である配向)が挙げられる。なお、捩れ配向とは、液晶化合物が厚み方向を回転軸として捩れている配向状態を表し、液晶化合物が捩れ配向するとともに、所定のチルト角(チルト角が0°超)を有する場合にはツイストハイブリッド配向に該当する。なお、本明細書において、捩れ配向とは、液晶化合物の捩れ角が360°未満である態様に該当し、コレステリック配向とは、液晶化合物の捩れ角が360°以上である態様に該当する。
なお、「固定した」状態は、液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ、好ましい態様である。それだけには制限されず、具体的には、通常0~50℃、より過酷な条件下では-30~70℃の温度範囲において、層に流動性がなく、また、外場もしくは外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定された配向形態を安定に保ち続けることができる状態であることがより好ましい。
【0038】
光学異方性層は、液晶化合物の配向状態が異なる領域を厚み方向に沿って複数有していてもよい。特に、光学異方性層は、液晶化合物の配向状態が異なる領域を厚み方向に沿って複数有し、いずれの領域の液晶化合物も固定されていることが好ましい。
例えば、光学異方性層は、厚み方向に沿って、液晶化合物がホモジニアス配向した状態を固定してなる領域と、液晶化合物が捩れ配向した状態を固定してなる領域とを有していてもよい。
【0039】
光学異方性層の厚みは特に制限されないが、0.1~10.0μmが好ましく、0.5~5.0μmがより好ましい。
【0040】
光学異方性層の製造方法について、後段で詳述する。
【0041】
<光学等方性部材>
光学等方性部材とは、光学的に等方性を示す層である。
光学等方性部材の特定方法は以下の通りである。
まず、測定対象物である光学等方性部材の面内の一方向(以下、「方向D1」ともいう。)に沿って光学等方性部材を切断して、薄膜状(厚み2μm程度)の切片サンプル1を切り出す。上記方向D1をx方向、上記方向D1に直交する面内の方向をy方向、測定対象物の厚み方向をz方向とすると、切片サンプル1の主面は、上記測定対象物のxz面に該当する。また、上記方向D1と直交する面内の方向に沿って測定対象物を切断して、薄膜状(厚み2μm程度)の切片サンプル2を切り出す。切片サンプル2の主面は、上記測定対象物のyz面に該当する。さらに、上記方向D1に対して45度をなす面内の方向(以下、「方向D2」ともいう。)に沿って測定対象物を切断して、薄膜状(厚み2μm程度)の切片サンプル3を切り出す。さらに、上記方向D2と直交する面内の方向に沿って測定対象物を切断して、薄膜状(厚み2μm程度)の切片サンプル4を切り出す。
次に、得られた各切片サンプル(切片サンプル1~4)を2つの主面のうち一方の主面をカバーガラスに対向させて接着剤で固定して、偏光顕微鏡を用いてクロスニコル条件下にて各切片サンプルを観察し、波長546nmの光を用いたセナルモン法にて厚み1μmあたりのレタデーションを測定し、いずれの切片サンプルにおいても上記厚み1μmあたりのレタデーションが10nm以下である場合に、測定対象物が光学的に等方性である、言い換えれば、測定対象物が光学等方性部材であるとする。
なお、上記セナルモン法の具体的な測定方法としては、まず、偏光顕微鏡の偏光子と検光子を0°(クロスニコル)の状態でGIFフィルター(波長546nm)をセットし、切片サンプルの観察したい部分が最も明るくなるように、切片サンプルを固定したカバーガラスを回転させる。その後、セナルモンコンペンセーターをセットし、検光子を回転させ、切片サンプルの観察したい部分が一番暗くなる検光子の回転角度θを読み取る。レタデーション(Re)はRe=(546nm×θ)/180の計算式によって算出する。
【0042】
光学等方性部材を構成する材料は特に制限されず、液晶化合物、および、ポリマーが挙げられ、本発明の効果がより優れる点で、液晶化合物が好ましい。特に、光学等方性部材は、液晶化合物を用いて形成された層であることが好ましく、重合性基を有する液晶化合物を用いて形成された層であることがより好ましい。
光学等方性部材の形成に用いられる液晶化合物の種類は、光学異方性層の形成に用いられる液晶化合物の種類と同じである。
なお、液晶化合物を用いて光学等方性部材を形成する方法としては、後述するように、等方相状態の液晶化合物を固定する方法が挙げられる。
【0043】
上述したように、光学等方性部材は、重合性基を有する液晶化合物を用いて形成された部材であることが好ましく、等方相状態の重合性基を有する液晶化合物を固定してなる部材であることがより好ましい。
【0044】
光学等方性部材の厚み(光学等方性部材の凸部がない表面から、凸部の先端までの距離)は特に制限されないが、0.1~40μmが好ましく、0.4~10μmがより好ましい。
【0045】
光学等方性部材の製造方法について、後段で詳述する。
【0046】
<光学素子の製造方法>
本発明の光学素子の製造方法は特に制限されず、公知の方法を組み合わせて作製できる。
なかでも、本発明の光学素子を効率よく製造できる点で、以下の工程1~5を有し、要件1~4のいずれかを満たす、製造方法が好ましい。
工程1:重合性基を有する液晶化合物を含む組成物層を基板上に形成する工程
工程2:組成物層に加熱処理を施して、組成物層中の液晶化合物を配向させる工程
工程3:工程2の後、酸素濃度1体積%以上の条件下にて、組成物層に対して光照射を行う工程
工程4:表面に凹凸構造を有する金型を、組成物層の基板側とは反対側の表面に押し当てて金型の凹凸構造を組成物層に転写する工程
工程5:組成物層に対して加熱処理を施して液晶化合物を硬化させ、基板側から、光学異方性層と、光学異方性層側とは反対側に突出する凸部を有する光学等方性部材とを有する光学素子を形成する工程
要件1:工程4を、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上の加熱条件下にて実施する。
要件2:工程5を、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上の加熱条件下にて実施する。
要件3:工程3と工程4との間に、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上に組成物層を加熱する工程6をさらに有する。
要件4:工程4と工程5との間に、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上に組成物層を加熱する工程7をさらに有する。
以下、工程1~5について詳述する。なお、以下の説明においては、まず、要件1を満たす態様について説明する。
【0047】
(工程1)
工程1は、重合性基を有する液晶化合物を含む組成物層を基板上に形成する工程である。本工程を実施することにより、後述する光照射処理が施される組成物層が形成される。
以下では、まず、本工程で使用される材料について詳述し、その後、工程の手順について詳述する。
【0048】
[重合性基を有する液晶化合物]
組成物層は、重合性基を有する液晶化合物を含む。
重合性基を有する液晶化合物の説明は、上述した通りである。
【0049】
組成物層中における液晶化合物の含有量は特に制限されないが、液晶化合物の配向状態を制御しやすい点で、組成物層の全質量に対して、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。
【0050】
[その他の成分]
組成物層は、重合性基を有する液晶化合物以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0051】
組成物層は、例えば、光照射により螺旋誘起力が変化する感光性キラル剤を含んでいてもよい。組成物層が感光性キラル剤を含むことにより、後述するように、捩れ配向またはコレステリック配向した液晶化合物を固定してなる領域を形成できる。
なお、キラル剤の螺旋誘起力(HTP)は、下記式(A)で表される螺旋配向能力を示すファクターである。
式(A) HTP=1/(螺旋ピッチの長さ(単位:μm)×液晶化合物に対するキラル剤の濃度(質量%))[μm-1]
螺旋ピッチの長さとは、コレステリック液晶相の螺旋構造のピッチP(=螺旋の周期)の長さをいい、液晶便覧(丸善株式会社出版)の196ページに記載の方法で測定できる。
【0052】
光照射により螺旋誘起力が変化する感光性キラル剤(以下、単に「キラル剤A」ともいう。)は、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。キラル剤Aは、一般に不斉炭素原子を含む場合が多い。なお、キラル剤Aは、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物または面性不斉化合物であってもよい。
【0053】
キラル剤Aは、光照射によって螺旋誘起力が増加するキラル剤であってもよいし、減少するキラル剤であってもよい。なかでも、光照射により螺旋誘起力が減少するキラル剤であることが好ましい。
なお、本明細書において「螺旋誘起力の増加および減少」とは、キラル剤Aの初期(光照射前)の螺旋方向を「正」としたときの増減を表す。従って、光照射により螺旋誘起力が減少し続け、0を超えて螺旋方向が「負」となった場合(つまり、初期(光照射前)の螺旋方向とは逆の螺旋方向の螺旋を誘起する場合)にも、「螺旋誘起力が減少するキラル剤」に該当する。
【0054】
キラル剤Aとしては、いわゆる光反応型キラル剤が挙げられる。光反応型キラル剤とは、キラル部位と光照射によって構造変化する光反応部位を有し、例えば、照射量に応じて液晶化合物の捩れ力を大きく変化させる化合物である。
光照射によって構造変化する光反応部位の例としては、フォトクロミック化合物(内田欣吾、入江正浩、化学工業、vol.64、640p,1999、内田欣吾、入江正浩、ファインケミカル、vol.28(9)、15p,1999)などが挙げられる。また、上記構造変化とは、光反応部位への光照射により生ずる、分解、付加反応、異性化、ラセミ化、[2+2]光環化および2量化反応などを意味し、上記構造変化は不可逆的であってもよい。また、キラル部位としては、例えば、野平博之、化学総説、No.22液晶の化学、73p:1994に記載の不斉炭素などが相当する。
【0055】
キラル剤Aとしては、例えば、特開2001-159709号公報の段落0044~0047に記載の光反応型キラル剤、特開2002-179669号公報の段落0019~0043に記載の光学活性化合物、特開2002-179633号公報の段落0020~0044に記載の光学活性化合物、特開2002-179670号公報の段落0016~0040に記載の光学活性化合物、特開2002-179668号公報の段落0017~0050に記載の光学活性化合物、特開2002-180051号公報の段落0018~0044に記載の光学活性化合物、特開2002-338575号公報の段落0016~0055に記載の光学活性イソソルビド誘導体、特開2002-080478号公報の段落0023~0032に記載の光反応型光学活性化合物、特開2002-080851号公報の段落0019~0029に記載の光反応型カイラル剤、特開2002-179681号公報の段落0022~0049に記載の光学活性化合物、特開2002-302487号公報の段落0015~0044に記載の光学活性化合物、特開2002-338668号公報の段落0015~0050に記載の光学活性ポリエステル、特開2003-055315号公報の段落0019~0041に記載のビナフトール誘導体、特開2003-073381号公報の段落0008~0043に記載の光学活性フルギド化合物、特開2003-306490号公報の段落0015~0057に記載の光学活性イソソルビド誘導体、特開2003-306491号公報の段落0015~0041に記載の光学活性イソソルビド誘導体、特開2003-313187号公報の段落0015~0049に記載の光学活性イソソルビド誘導体、特開2003-313188号公報の段落0015~0057に記載の光学活性イソマンニド誘導体、特開2003-313189号公報の段落0015~0049に記載の光学活性イソソルビド誘導体、特開2003-313292号公報の段落0015~0052に記載の光学活性ポリエステル/アミド、WO2018/194157号公報の段落0012~0053に記載の光学活性化合物、および、特開2002-179682号公報の段落0020~0049に記載の光学活性化合物などが挙げられる。
【0056】
キラル剤Aとしては、なかでも、光異性化部位を少なくとも有する化合物が好ましく、光異性化部位は光異性化可能な二重結合を有する化合物がより好ましい。上記光異性化可能な二重結合を有する光異性化部位としては、光異性化が起こりやすく、かつ、光照射前後の螺旋誘起力差が大きいという点で、シンナモイル部位、カルコン部位、アゾベンゼン部位またはスチルベン部位が好ましく、さらに可視光の吸収が小さいという点で、シンナモイル部位、カルコン部位またはスチルベン部位がより好ましい。なお、光異性化部位は、上述した光照射によって構造変化する光反応部位に該当する。
【0057】
キラル剤Aは、ビナフチル部分構造、イソソルビド部分構造(イソソルビドに由来する部分構造)、および、イソマンニド部分構造(イソマンニドに由来する部分構造)から選ばれるいずれかの部分構造を有していることが好ましい。なお、ビナフチル部分構造、イソソルビド部分構造、および、イソマンニド部分構造とは、各々以下の構造を意図する。
ビナフチル部分構造中の実線と破線が平行している部分は、一重結合または二重結合を表す。なお、以下に示す構造において、*は、結合位置を表す。
【0058】
【0059】
キラル剤Aは、重合性基を有していてもよい。重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基または環重合性基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、または、アリル基がさらに好ましい。
【0060】
キラル剤Aとしては、式(C)で表される化合物が好ましい。
式(C) R-L-R
Rは、それぞれ独立に、シンナモイル部位、カルコン部位、アゾベンゼン部位、および、スチルベン部位からなる群から選択される少なくとも1つの部位を有する基を表す。
Lは、式(D)で表される構造から2個の水素原子を除いた形成される2価の連結基(上記ビナフチル部分構造から2個の水素原子を除いて形成される2価の連結基)、式(E)で表される2価の連結基(上記イソソルビド部分構造からなる2価の連結基)、または、式(F)で表される2価の連結基(上記イソマンニド部分構造からなる2価の連結基)を表す。
式(E)および式(F)中、*は結合位置を表す。
【0061】
【0062】
工程1は、キラル剤Aを2種以上用いる態様であってもよいし、少なくとも1種のキラル剤Aと少なくとも1種の光照射により螺旋誘起力が変化しないキラル剤(以下、単に「キラル剤B」ともいう。)とを用いる態様であってもよい。
キラル剤Bは、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。キラル剤Bは、一般に不斉炭素原子を含む場合が多い。なお、キラル剤Bは、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物または面性不斉化合物であってもよい。
キラル剤Bは重合性基を有していてもよい。重合性基の種類としては、キラル剤Aが有していてもよい重合性基が挙げられる。
キラル剤Bとしては、公知のキラル剤を使用できる。
キラル剤Bは、上述したキラル剤Aと逆向きの螺旋を誘起するキラル剤であることが好ましい。つまり、例えば、キラル剤Aにより誘起する螺旋が右方向の場合には、キラル剤Bにより誘起する螺旋は左方向となる。
【0063】
キラル剤Aおよびキラル剤Bのモル吸光係数は特に制限されないが、後述する工程3で照射される光の波長(例えば、365nm)におけるモル吸光係数は100~100,000L/(mol・cm)が好ましく、500~50,000L/(mol・cm)がより好ましい。
【0064】
組成物層中のキラル剤Aおよびキラル剤Bの各含有量は、形成しようとする光学異方性層の特性(例えば、レタデーションや波長分散)に応じて適宜設定され得る。なお、光学異方性層中の液晶化合物の捩れ角はキラル剤Aおよびキラル剤Bの種類およびその添加濃度に大きく依存するため、これらを調節することによって液晶化合物の配向状態を制御することができる。
【0065】
組成物層中におけるキラル剤の合計含有量(全てのキラル剤の総含有量)は特に制限されないが、液晶化合物の配向状態を制御しやすい点で、液晶化合物の全質量に対して、5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。
【0066】
キラル剤中におけるキラル剤Aの含有量は特に制限されないが、液晶化合物の配向状態を制御しやすい点で、キラル剤の全質量に対して、5~95質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましい。
【0067】
また、組成物層は、重合開始剤を含んでいてもよい。組成物層が重合開始剤を含む場合、より効率的に重合性基を有する液晶化合物の重合が進行する。
重合開始剤としては公知の重合開始剤が挙げられ、光重合開始剤、および、熱重合開始剤が挙げられ、光重合開始剤が好ましい。特に、後述する工程5において照射される光に感光する重合開始剤が好ましい。
【0068】
重合開始剤は、工程3において照射される光の波長のうち最大となるモル吸光係数が、工程5において照射される光の波長のうち最大となるモル吸光係数に対して、0.1倍以下であることが好ましい。
また、重合開始剤の工程3における光照射の波長におけるモル吸光係数は、5000L/(mol・cm)以下が好ましく、4000L/(mol・cm)以下がより好ましく、3000L/(mol・cm)以下がさらに好ましい。下限は特に制限されず、0L/(mol・cm)が好ましいが、30L/(mol・cm)以上の場合が多い。
組成物層中における重合開始剤の含有量は特に制限されないが、組成物層の全質量に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0069】
組成物層は、光増感剤を含んでいてもよい。
光増感剤の種類は特に制限されず、公知の光増感剤が挙げられる。
なお、光増感剤の工程3における光照射の波長におけるモル吸光係数は、5000L/(mol・cm)以下が好ましく、4800L/(mol・cm)以下がより好ましく、4500L/(mol・cm)以下がさらに好ましい。下限は特に制限されず、0L/(mol・cm)が好ましいが、30L/(mol・cm)以上の場合が多い。
組成物層中における光増感剤の含有量は特に制限されないが、組成物層の全質量に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0070】
組成物層は、重合性基を有する液晶化合物とは異なる重合性モノマーを含んでいてもよい。重合性モノマーとしては、ラジカル重合性化合物、および、カチオン重合性化合物が挙げられ、多官能性ラジカル重合性モノマーが好ましい。重合性モノマーとしては、例えば、特開2002-296423号公報中の段落0018~0020に記載の重合性モノマーが挙げられる。
組成物層中の重合性モノマーの含有量は特に制限されないが、液晶化合物全質量に対して、1~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。
【0071】
組成物層は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、フッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば、特開2001-330725号公報中の段落0028~0056に記載の化合物、および、特願2003-295212号公報中の段落0069~0126に記載の化合物が挙げられる。
【0072】
組成物層は、ポリマーを含んでいてもよい。ポリマーとしては、セルロースエステルが挙げられる。セルロースエステルとしては、特開2000-155216号公報中の段落0178に記載のものが挙げられる。
組成物層中のポリマーの含有量は特に制限されないが、液晶化合物全質量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましい。
【0073】
組成物層は、上記以外にも、液晶化合物を水平配向状態または垂直配向状態とするために、水平配向または垂直配向を促進する添加剤(配向制御剤)を含んでいてもよい。
【0074】
[基板]
後述するように、組成物層を形成する際には、基板上に組成物層を形成することが好ましい。
基板は、組成物層を支持する板である。
基板としては、透明基板が好ましい。なお、透明基板とは、可視光の透過率が60%以上である基板を意図し、その透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0075】
基板の波長550nmにおける厚み方向のレタデーション値(Rth(550))は特に制限されないが、-110~110nmが好ましく、-80~80nmがより好ましい。
基板の波長550nmにおける面内のレタデーション値(Re(550))は特に制限されないが、0~50nmが好ましく、0~30nmがより好ましく、0~10nmがさらに好ましい。
【0076】
基板を形成する材料としては、光学性能透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、および、等方性などに優れるポリマーが好ましい。
基板として用いることのできるポリマーフィルムとしては、例えば、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム、並びに、脂環式構造を有するポリマーのフィルム(ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)))が挙げられる。
なかでも、ポリマーフィルムの材料としては、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、または、脂環式構造を有するポリマーが好ましく、トリアセチルセルロースがより好ましい。
【0077】
基板には、種々の添加剤(例えば、光学的異方性調整剤、波長分散調整剤、微粒子、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、など)が含まれていてもよい。
【0078】
基板の厚みは特に制限されないが、10~200μmが好ましく、10~100μmがより好ましく、20~90μmがさらに好ましい。また、基板は複数枚の積層からなっていてもよい。基板はその上に設けられる層との接着を改善するため、基板の表面に表面処理(例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。
また、基板の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。
また、基板には、搬送工程でのすべり性を付与したり、巻き取った後の裏面と表面の貼り付きを防止したりするために、平均粒径が10~100nm程度の無機粒子を固形分質量比で5~40質量%混合したポリマー層を基板の片側に配置してもよい。
【0079】
基板は、いわゆる仮支持体であってもよい。つまり、本発明の製造方法を実施した後、基板を光学異方性層から剥離してもよい。
【0080】
また、基板の表面に直接ラビング処理を施してもよい。つまり、ラビング処理が施された基板を用いてもよい。ラビング処理の方向は特に制限されず、液晶化合物を配向させたい方向に応じて、適宜、最適な方向が選択される。
ラビング処理は、LCD(liquid crystal display)の液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用できる。即ち、基板の表面を、紙、ガーゼ、フェルト、ゴム、ナイロン繊維、または、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。
【0081】
基板上には、配向膜が配置されていてもよい。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、または、ラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で形成できる。
さらに、電場の付与、磁場の付与、または、光照射(好ましくは偏光)により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。
【0082】
配向膜に含まれるポリマーとしては、例えば、特開平8-338913号公報中の段落0022に記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N-メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、並びに、ポリカーボネートが挙げられる。また、シランカップリング剤をポリマーとして用いることもできる。
なかでも、水溶性ポリマー(例、ポリ(N-メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、および、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールがより好ましく、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールがさらに好ましい。
【0083】
上述したように、配向膜は、配向膜形成材料である上記ポリマーおよび任意の添加剤(例えば、架橋剤)を含む溶液を基板上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成できる。
【0084】
[工程1の手順]
工程1では、上述した成分を含む組成物層を形成するが、その手順は特に制限されない。例えば、上述した重合性基を有する液晶化合物を含む組成物を基板上に塗布して、必要に応じて乾燥処理を施す方法(以下、単に「塗布方法」ともいう。)、および、別途組成物層を形成して基板上に転写する方法が挙げられる。なかでも、生産性の点からは、塗布方法が好ましい。
以下、塗布方法について詳述する。
【0085】
塗布方法で使用される組成物には、上述した重合性基を有する液晶化合物、および、その他必要に応じて用いられる他の成分(例えば、キラル剤、重合開始剤、重合性モノマー、界面活性剤、および、ポリマーなど)が含まれる。
組成物中の各成分の含有量は、上述した組成物層中の各成分の含有量となるように調整されることが好ましい。
【0086】
塗布方法は特に制限されず、例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、および、ダイコーティング法が挙げられる。
なお、必要に応じて、組成物の塗布後に、基板上に塗布された組成物層を乾燥する処理を実施してもよい。乾燥処理を実施することにより、組成物層から溶媒を除去できる。
【0087】
組成物層の膜厚は特に制限されないが、0.1~20μmが好ましく、0.2~15μmがより好ましく、0.5~10μmがさらに好ましい。
【0088】
(工程2)
工程2は、組成物層に加熱処理を施して、組成物層中の液晶化合物を配向させる工程である。本工程を実施することにより、組成物層中の液晶化合物が所定の配向状態となる。例えば、
図6に示すように、基板20上に、液晶化合物LCがホモジニアス配向した組成物層22が形成される。
【0089】
加熱処理の条件としては、使用される液晶化合物に応じて最適な条件が選択され、液晶化合物の固体から液晶相への相転移温度以上が好ましい。
なかでも、加熱温度としては、25~250℃の場合が多く、40~150℃の場合がより多く、50~130℃の場合がさらに多い。
加熱時間としては、0.1~60分間の場合が多く、0.2~5分間の場合がより多い。
【0090】
(工程3)
工程3は、工程2の後、酸素濃度1体積%以上の条件下にて、組成物層に対して光照射を行う工程である。
図7に示すように、上述した工程3では酸素濃度1体積%以上の条件下にて、基板20の組成物層22側とは反対側の方向(
図7中の白抜き矢印の方向)から光照射を行う。なお、
図7では光照射は基板20側から実施されているが、組成物層22側から実施されてもよい。
その際、組成物層22の基板20側の下側領域22Aと、基板20側とは反対側の上側領域22Bとを比較すると、上側領域22Bの表面のほうが空気側にあるため、上側領域22B中の酸素濃度が高く、下側領域22A中の酸素濃度は低い。そのため、組成物層22に対して光照射がなされると、下側領域22Aにおいては液晶化合物の重合が進行しやすく、液晶化合物の配向状態が固定される。
また、上側領域22Bにおいては酸素濃度が高いため、光照射がなされても、液晶化合物の重合が酸素により阻害され、重合が進行しにくい。
つまり、工程3を実施することにより、組成物層の基板側の領域(下側領域)においては液晶化合物の配向状態の固定化が進行しやすい。また、組成物層の基板側と反対側の領域(上側領域)においては、液晶化合物の配向状態の固定化は進行しづらく、後述する要件1~4のいずれかを実施することにより液晶化合物が等方相を形成できる。
【0091】
工程3は、酸素濃度1体積%以上の条件下にて実施される。なかでも、本発明の光学素子を製造しやすい点で、酸素濃度は2体積%以上が好ましく、5体積%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、100体積%が挙げられる。
【0092】
工程3における光照射の照射量は特に制限されないが、所定の光学異方性層が形成されやすい点で、300mJ/cm2以下が好ましく、200mJ/cm2以下がより好ましく、100J/cm2未満がさらに好ましい。下限としては、所定の光学異方性層が形成されやすい点で、10mJ/cm2以上が好ましく、30mJ/cm2以上がより好ましい。
なお、工程3での光照射は、15~70℃(好ましくは、15~50℃)にて実施されることが好ましい。
【0093】
光照射に使用される光は、組成物層の基板側の領域(下側領域)において液晶化合物の配向状態の固定化が進行する光であれば特に制限されない。例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、紫外線、および、電子線が挙げられる。なかでも、紫外線が好ましい。
【0094】
(工程4)
工程4は、表面に凹凸構造を有する金型を、組成物層の基板側とは反対側の表面に押し当てて金型の凹凸構造を組成物層に転写する工程である。本工程では、
図8に示すように、支持体26上に複数の凸部28が配置された、表面に凹凸構造を有する金型24を用意して、
図9に示すように金型24を組成物層22に押し当てて金型の凹凸構造を組成物層22に転写する。
なお、本態様では、上述したように要件1を満たすことから、この工程4を、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上の加熱条件下にて実施する。上記加熱処理を実施することにより、組成物層22の上側領域22Bでは図示しない液晶化合物の配向状態が固定されていないため、その配向状態が乱され、等方相へと変化する。それに対して、組成物層22の下側領域22Aにおいては、上述したように、上記工程3によって液晶化合物LCの配向状態が固定されため、上記加熱処理を実施しても、液晶化合物LCの配向状態は変化しない。
【0095】
本工程で使用される金型は、形成したい光学等方性部材の凸部の形状に合わせて、適宜最適な形状の金型が採用される。
【0096】
上述した要件1(工程4を、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上の加熱条件下にて実施する)を実施する際の加熱条件としては、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上であればよく、上記相転移温度よりも5℃以上高いことが好ましい。上限は特に制限されないが、上記相転移温度よりも100℃高い温度以下であることが好ましい。
【0097】
なお、金型の凹凸構造を組成物層に転写した後は、適宜、金型は剥離してもよい。また、後述する工程5を実施した後、金型を剥離してもよい。
【0098】
(工程5)
工程5は、組成物層に対して硬化処理を施し、基板側から、光学異方性層と、光学異方性層側とは反対側に突出する凸部を有する光学等方性部材とを有する光学素子を形成する工程である。本工程を実施することにより、
図10に示すような、光学異方性層12と、凸部16Cを有する光学等方性部材14Cとを有する光学素子10Cが形成される。なお、
図10の態様においては、光学異方性層12は、ホモジニアス配向した液晶化合物を固定してなる層である。
【0099】
硬化処理の方法は特に制限されず、光硬化処理および熱硬化処理が挙げられる。
熱硬化処理の温度条件は特に制限されず、重合性基を有する液晶化合物の重合反応を実施できればよく、20~200℃が好ましく、50~180℃がより好ましい。
熱硬化処理の加熱時間は特に制限されないが、30~600秒間が好ましく、60~300秒間がより好ましい。
光硬化処理としては、紫外線照射処理が好ましい。
紫外線照射には、紫外線ランプなどの光源が利用される。
光(例えば、紫外線)の照射量は特に制限されないが、一般的には、100~1000mJ/cm2程度が好ましく、300mJ/cm2超1000mJ/cm2以下がより好ましい。
光硬化処理を実施する場合には、酸素濃度1体積%未満(好ましくは、酸素濃度0.1体積%以下)の条件下にて実施することが好ましい。酸素濃度の下限は特に制限されないが、0体積%が挙げられる。
【0100】
なお、上記では、要件1の態様について説明したが、本発明は要件1の代わりに要件2~4のいずれかを満たしていてもよい。
例えば、要件2では、工程5を、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上の加熱条件下にて実施する。より具体的には、工程5の硬化処理として、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上の加熱条件で実施される熱硬化処理を採用することにより、要件2を満たすことができる。要件2を満たす場合、上述した要件1を満たす場合と同様に、組成物層の上側領域の液晶化合物の配向状態が乱され、等方相へと変化し、結果として、所望の光学素子を形成できる。
要件2を満たす場合、工程5での熱硬化処理の温度は、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度より5℃以上高いことが好ましい。上限は特に制限されないが、上記相転移温度よりも100℃高い温度以下であることが好ましい。
【0101】
また、要件3では、工程3と工程4との間に、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上に組成物層を加熱する工程6をさらに有する。
さらに、要件4では、工程4と工程5との間に、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度以上に組成物層を加熱する工程7をさらに有する。
上記工程6または7を実施することにより、要件1および2と同様に、組成物層の上側領域の液晶化合物の配向状態が乱され、等方相へと変化し、結果として、所望の光学素子を形成できる。
工程6および7の熱硬化処理の温度は、組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度より5℃以上高いことが好ましい。上限は特に制限されないが、上記相転移温度よりも100℃高い温度以下であることが好ましい。
【0102】
上記では、光学異方性層が1つの液晶化合物の配向状態を固定してなる層である態様について説明したが、上記製造方法では、厚み方向に沿って、液晶化合物の配向状態が異なる領域を複数有する光学異方性層を形成することもできる。
例えば、以下では、厚み方向に沿って延びる螺旋軸に沿って捩れ配向した液晶化合物の配向状態を固定してなる第1領域と、ホモジニアス配向した液晶化合物の配向状態を固定してなる第2領域とを、厚み方向に沿って有する光学異方性層を形成する態様について説明する。
【0103】
上記のような光学異方性層を形成する際には、キラル剤Aおよびキラル剤Bをさらに含む組成物層を用いる方法がある。
この方法において、工程1で得られる組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は、0.0~1.9μm-1であることが好ましく、0.0~1.5μm-1であることがより好ましく、0.0~1.0μm-1であることがさらに好ましく、0.0~0.5μm-1であることが特に好ましく、0.0~0.02μm-1であることがより特に好ましく、0が最も好ましい。
【0104】
なお、キラル剤の加重平均螺旋誘起力とは、組成物中に2種以上のキラル剤が含まれる場合に、組成物層中に含まれる各キラル剤の螺旋誘起力と各キラル剤の組成物層中における濃度(質量%)との積を組成物層中におけるキラル剤の合計濃度(質量%)で除した値の合計値を表す。例えば、2種類のキラル剤(キラル剤Xおよびキラル剤Y)を併用した場合、下記式(Y)により表される。
式(Y) 加重平均螺旋誘起力(μm-1)=(キラル剤Xの螺旋誘起力(μm-1)×組成物層中におけるキラル剤Xの濃度(質量%)+キラル剤Yの螺旋誘起力(μm-1)×組成物層中におけるキラル剤Yの濃度(質量%))/(組成物層中におけるキラル剤Xの濃度(質量%)+組成物層中におけるキラル剤Yの濃度(質量%))
ただし、上記式(Y)において、キラル剤の螺旋方向が右巻きの場合、その螺旋誘起力は正の値とする。また、キラル剤の螺旋方向が左巻きの場合、その螺旋誘起力は負の値とする。つまり、例えば、螺旋誘起力が10μm-1のキラル剤の場合、上記キラル剤により誘起される螺旋の螺旋方向が右巻きであるときは、螺旋誘起力を10μm-1として表す。一方、上記キラル剤により誘起される螺旋の螺旋方向が左巻きであるときは、螺旋誘起力を-10μm-1として表す。
【0105】
工程1により形成される組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値が0である場合には、工程2を実施することにより、
図11に示すように、基板30上に、液晶化合物LCがホモジニアス配向した組成物層32が形成される。なお、
図11に示す組成物層32にはキラル剤Aとキラル剤Bとが同濃度で存在しており、キラル剤Aにより誘起される螺旋方向が左巻きであり、キラル剤Bにより誘起される螺旋方向が右巻きであるとする。また、キラル剤Aの螺旋誘起力の絶対値と、キラル剤Bの螺旋誘起力の絶対値は同じとする。
【0106】
次に、上述した工程3を実施すると、上述した態様と同様に、
図12に示すように、組成物層32の基板30側の下側領域32Aと、基板30側とは反対側の上側領域32Bとを比較すると、上側領域32Bの表面のほうが空気側にあるため、上側領域32B中の酸素濃度が高く、下側領域32A中の酸素濃度は低い。そのため、組成物層32に対して光照射がなされると、下側領域32Aにおいては液晶化合物の重合が進行しやすく、液晶化合物の配向状態が固定される。なお、下側領域32Aにおいてもキラル剤Aが存在しており、キラル剤Aも感光し、螺旋誘起力が変化する。しかしながら、下側領域32Aでは液晶化合物の配向状態が固定されているため、要件1~4のいずれかを実施しても、液晶化合物の配向状態の変化は生じない。
また、上側領域32Bにおいては酸素濃度が高いため、光照射がなされても、液晶化合物の重合が酸素により阻害され、重合が進行しにくい。そして、上側領域32Bにおいてもキラル剤Aが存在しているため、キラル剤Aが感光し、螺旋誘起力が変化する。そのため、後述する工程8を実施すると、変化した螺旋誘起力に沿って液晶化合物の配向状態が変化する。
つまり、工程3を実施することにより、組成物層の基板側の領域(下側領域)においては液晶化合物の配向状態の固定化が進行しやすい。また、組成物層の基板側と反対側の領域(上側領域)においては、液晶化合物の配向状態の固定化は進行しづらく、感光したキラル剤Aに応じて螺旋誘起力が変化する状態となる。
【0107】
次に、得られた組成物層を加熱する工程8を実施する。工程8を実施することにより、組成物層32の上側領域32Bにおいて、キラル剤Aの螺旋誘起力の変化に応じて、液晶化合物LCが捩れ配向した配向状態が形成される。
なお、工程8の加熱温度は特に制限されず、液晶化合物の種類により適宜最適な温度が選択されるが、組成物層を構成する組成物が液晶相から等方相へと相転移温度する温度よりも低い温度が好ましい。工程8の加熱温度の下限は特に制限されず、固体状態から液晶相への相転移温度以上が好ましい。
以下では、上記のような配向状態の変化が生じる理由について詳述する。
【0108】
上述したように、
図11に示した組成物層32に対して工程3を実施すると、下側領域32Aにおいては液晶化合物の配向状態が固定されるのに対して、上側領域32Bでは液晶化合物の重合は進行しづらく、液晶化合物の配向状態が固定されていない。また、上側領域32Bにおいてはキラル剤Aの螺旋誘起力が変化している。このようなキラル剤Aの螺旋誘起力の変化が生じると、光照射前の状態と比較すると、上側領域32Bにおいて液晶化合物を捩じる力が変化している。この点をより詳細に説明する。
上述したように、
図11に示す組成物層32にはキラル剤Aとキラル剤Bとが同濃度で存在しており、キラル剤Aにより誘起される螺旋方向が左巻きであり、キラル剤Bにより誘起される螺旋方向が右巻きである。また、キラル剤Aの螺旋誘起力の絶対値と、キラル剤Bの螺旋誘起力の絶対値は同じである。よって、光照射を行う前の組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力は0である。
上記の態様を
図14に示す。
図14においては、縦軸が「キラル剤の螺旋誘起力(μm
-1)×キラル剤の濃度(質量%)」を表し、その値がゼロから離れるほど、螺旋誘起力が大きくなる。まず、光照射を行う前の組成物層中のキラル剤Aとキラル剤Bとの関係は、光照射量が0の時点に該当し、「キラル剤Aの螺旋誘起力(μm
-1)×キラル剤Aの濃度(質量%)」の絶対値と、「キラル剤Bの螺旋誘起力(μm
-1)×キラル剤Bの濃度(質量%)」の絶対値とが等しい状態に該当する。つまり、左巻きを誘起するキラル剤Aと右巻きを誘起するキラル剤Bとの両者の螺旋誘起力は相殺されている。
このような状態の上側領域32Bにおいて光照射が行われ、
図14に示すように、光照射量によってキラル剤Aの螺旋誘起力が減少する場合、
図15に示すように、上側領域12Bにおけるキラル剤の加重平均螺旋誘起力は大きくなり、右巻きの螺旋誘起力が強くなる。つまり、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、照射量が大きいほど、キラル剤Bが誘起する螺旋の方向(+)に螺旋誘起力が大きくなる。
そのため、このような加重平均螺旋誘起力の変化が生じている工程3後の組成物層32に対して、加熱処理を施して液晶化合物の再配向を促すと、
図13に示すように、上側領域32Bにおいては、組成物層32の厚み方向に沿って延びる螺旋軸に沿って液晶化合物LCが捩れ配向する。
一方で、上述したように、組成物層32の下側領域32Aにおいては工程3の際に液晶化合物の重合が進行して液晶化合物の配向状態が固定されているため、液晶化合物の再配向は進行しない。
【0109】
なお、上記
図14および15においては、キラル剤Aとして光照射により螺旋誘起力が減少するキラル剤を用いた態様について説明したが、この態様には限定されない。例えば、キラル剤Aとして光照射により螺旋誘起力が増加するキラル剤を用いてもよい。その場合、光照射によりキラル剤Aの誘起する螺旋誘起力が大きくなり、キラル剤Aの誘起する旋回方向に液晶化合物が捩れ配向することになる。
また、上記
図14および15においては、キラル剤Aとキラル剤Bとを併用する態様について説明したが、この態様には限定されない。例えば、2種のキラル剤Aを用いる態様であってもよい。具体的には、左巻きを誘起するキラル剤A1と、右巻きを誘起するキラル剤A2とを併用する態様であってもよい。キラル剤A1およびA2は、それぞれ独立に、螺旋誘起力が増加するキラル剤であってもよいし、螺旋誘起力が減少するキラル剤であってもよい。例えば、左巻きを誘起するキラル剤であって、光照射により螺旋誘起力が増加するキラル剤と、右巻きを誘起するキラル剤であって、光照射により螺旋誘起力が減少するキラル剤とを併用してもよい。
【0110】
次に、上記で得られた組成物層に対して、再度、工程3を実施すると、
図16に示すように、組成物層32に対して光照射がなされると、上側領域中の基板30側の領域である領域32Cにおいては液晶化合物の重合が進行しやすく、液晶化合物の配向状態が固定される。それに対して、上側領域中の基板30側とは反対側の領域である領域32Dにおいては、液晶化合物の配向状態の固定化は進行しづらい。
そのため、得られた組成物層32に対して、上述した工程4および5を実施し、さらに要件1~4のいずれかを満たす処理を実施した場合には、
図17に示すように、厚み方向に沿って延びる螺旋軸に沿って捩れ配向した液晶化合物の配向状態を固定してなる第1領域と、ホモジニアス配向した液晶化合物の配向状態を固定してなる第2領域とを、厚み方向に沿って有する光学異方性層12Aと、光学等方性部材14Dとを有する光学素子10Dが形成される。なお、
図17に示すように、光学等方性部材14Dは、凸部16Dと、ベース部18Dとからなる。
【0111】
<積層体>
本発明の光学素子は、他の部材と組み合わせてもよい。
例えば、本発明の光学素子は、粘着層と組み合わせて、積層体としてもよい。特に、本発明の積層体は、上述した光学素子と、光学素子の光学等方性部材側に配置された粘着層とを有することが好ましい。
粘着層としては、公知の粘着層が用いられる。
【0112】
また、本発明の光学素子は、偏光子と組み合わせてもよい。つまり、本発明は、本発明の光学素子と、偏光子とを有する積層体(偏光板)にも関する。
偏光子は、自然光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材であればよく、例えば、吸収型偏光子が挙げられる。
偏光子の種類は特に制限はなく、通常用いられている偏光子を利用でき、例えば、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、および、ポリエン系偏光子が挙げられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸することで作製される。
なお、偏光子の片面または両面には、保護膜が配置されていてもよい。
本発明の光学素子と偏光子との間には、粘着層または接着層が配置されていてもよい。
本発明の光学素子中の光学異方性層がλ/4板である場合には、本発明の光学素子と偏光子とを含む積層体は、円偏光板として好適に用いることができる。
【0113】
<用途>
本発明の光学素子は、種々の用途に適用できる。例えば、本発明の光学素子は、表示装置の反射防止用途に用いることができる。より具体的には、本発明は、偏光子と、本発明の光学素子と、表示素子とをこの順で有する表示装置にも関する。
表示素子としては、有機EL表示素子、および、液晶表示素子など公知の表示素子が挙げられる。
なかでも、本発明の光学素子は、有機EL表示素子に適用されることが好ましい。特に、マイクロキャビティ構造を有する有機EL表示素子に本発明の光学素子を適用することにより、青味の発生がより抑制される。
【実施例0114】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により制限的に解釈されるべきものではない。
【0115】
<実施例1>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、さらに90℃で10分間加熱した。その後、得られた組成物を、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過して、ドープを調製した。ドープの固形分濃度は23.5質量%であり、可塑剤の添加量はセルロースアシレートに対する割合であり、ドープの溶媒は塩化メチレン/メタノール/ブタノール=81/18/1(質量比)である。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートドープ
――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート(アセチル置換度2.86、粘度平均重合度310)
100質量部
糖エステル化合物1(化学式(S4)に示す) 6.0質量部
糖エステル化合物2(化学式(S5)に示す) 2.0質量部
シリカ粒子分散液(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0.1質量部
溶媒(塩化メチレン/メタノール/ブタノール)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0116】
【0117】
【0118】
上記で作製したドープを、ドラム製膜機を用いて流延した。0℃に冷却された金属支持体上に接するようにドープをダイから流延し、その後、得られたウェブ(フィルム)を剥ぎ取った。なお、ドラムはSUS製であった。
流延されて得られたウェブ(フィルム)を、ドラムから剥離後、フィルム搬送時に30~40℃で、クリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いてテンター装置内で20分間乾燥した。引き続き、ウェブをロール搬送しながらゾーン加熱により後乾燥した。得られたウェブにナーリングを施した後、巻き取った。
得られたセルロースアシレートフィルムの膜厚は40μmであり、波長550nmにおける面内レタデーションRe(550)は1nm、波長550nmにおける厚み方向のレタデーションRth(550)は26nmであった。
【0119】
作製したセルロースアシレートフィルムに連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向(搬送方向)とラビングローラーの回転軸とのなす角度は80°とした。フィルム長手方向(搬送方向)を90°とし、フィルム側から観察してフィルム幅手方向を基準(0°)に時計回り方向を正の値で表すと、ラビングローラーの回転軸は10°にある。言い換えれば、ラビングローラーの回転軸の位置は、フィルム長手方向を基準に、反時計回りに80°回転させた位置である。
上記ラビング処理したセルロースアシレートフィルムを基板として、ギーサー塗布機を用いて、下記の組成の棒状液晶化合物を含む組成物(1)を塗布して、組成物層を形成した。
次に、得られた組成物層を80℃で60秒間加熱した。この加熱により組成物層の棒状液晶化合物が所定の方向に配向した。
その後、酸素を含む空気(酸素濃度:約20体積%)下、30℃にて、365nmのLEDランプ(アクロエッジ(株)製)を使用して紫外線を組成物層に照射した(照射量:15mJ/cm2)。
続いて、得られた組成物層を80℃で10秒間加熱した。
その後、さらに酸素を含む空気(酸素濃度:約20体積%)下、30℃にて、365nmのLEDランプ(アクロエッジ(株)製)を使用して紫外線を組成物層に照射した(照射量:20mJ/cm2)。
その後、得られたフィルムを130℃(組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度(117℃)よりも高い温度に該当)に加熱し、未硬化の組成物層表面に賦形処理を施したフィルムを押し付けた状態で、窒素パージを行って酸素濃度100体積ppmとし、メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)で紫外線を組成物層に照射することで液晶化合物の配向状態を固定した(照射量:500mJ/cm2)。
その後、賦形処理を施したフィルムを組成物層から剥離することで、最表面に凸部を有する光学等方性部材を形成した。
【0120】
得られた光学部材(F-1)は、
図17で説明したように、厚み方向に沿って延びる螺旋軸に沿って捩れ配向した液晶化合物の配向状態を固定してなる第1領域と、ホモジニアス配向した液晶化合物の配向状態を固定してなる第2領域とを、厚み方向に沿って有する光学異方性層と、光学異方性層に接して配置される光学等方性部材とを有する光学素子であった。光学等方性部材の凸部は、
図1および
図2に示すように、円錐台状の形状であり、六方最密状に配置されていた。複数の凸部の周期PA(隣接する凸部間の間隔)は2.0μmであり、凸部の高さHA1は1.6μmであり、凸部の上底の幅WA1(上底の直径)は1.0μmであり、凸部の下底の幅WA2(下底の直径)は1.6μmであった。光学等方性部材のベース部の厚み(
図17のベース部18Dの厚み)は0.4μmであった。光学異方性層の第1領域の厚みは1.4μmであり、第2領域の厚みは1.3μmであった。
なお、Axometrics社のAxoScan、および、同社の解析ソフトウェア(Multi-Layer Analysis)を用いて、光学素子(F-1)の光学特性を求めた。第2領域の波長550nmにおけるΔn2と厚みd2との積(Δn2d2)は173nm、液晶化合物の捩れ角は0°であり、長尺長手方向に対する液晶化合物の配向軸角度は、基板に接する側が-10°、第1領域に接する側が-10°であった。また、第1領域の波長550nmにおけるΔn1と厚みd1との積(Δn1d1)は184nm、液晶化合物の捩れ角度は75°であり、長尺長手方向に対する液晶化合物の配向軸角度は、第2領域に接する側が-10°、空気側が-85°であった。
【0121】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
組成物(1)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の棒状液晶化合物(A) 80質量部
下記の棒状液晶化合物(B) 10質量部
下記の重合性化合物(C) 10質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4質量部
光重合開始剤(Irgacure819、BASF社製) 3質量部
下記の左捩れキラル剤(L1) 0.43質量部
下記の右捩れキラル剤(R1) 0.38質量部
下記のポリマー(A) 0.08質量部
下記のポリマー(E) 0.50質量部
メチルイソブチルケトン 116質量部
プロピオン酸エチル 40質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0122】
棒状液晶化合物(A)(以下、化合物の混合物)
【0123】
【0124】
棒状液晶化合物(B)(以下、構造式参照)
【0125】
【0126】
重合性化合物(C)(以下、構造式参照)
【0127】
【0128】
左捩れキラル剤(L1)(以下、構造式参照)
【0129】
【0130】
右捩れキラル剤(R1)(以下、構造式参照)
【0131】
【0132】
ポリマー(A)(以下、構造式参照。式中、各繰り返し単位に記載の数値は、全繰り返し単位に対する各繰り返しの含有量(質量%)を表す。)
【0133】
【0134】
ポリマー(E)(以下、構造式参照。式中、各繰り返し単位に記載の数値は、全繰り返し単位に対する各繰り返しの含有量(質量%)を表す。)
【0135】
【0136】
<実施例2>
実施例1で作製したセルロースアシレートフィルムを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムのバンド面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルカリ溶液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤:C14H29O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0137】
セルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化処理を行った面に、下記組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒間、さらに100℃の温風で120秒間乾燥した。
【0138】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜塗布液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記に示す変性ポリビニルアルコール 28質量部
クエン酸エステル(AS3、三共化学(株)製) 1.2質量部
光重合開始剤(Irgacure2959、BASF社製) 0.84質量部
グルタルアルデヒド 2.8質量部
水 699質量部
メタノール 226質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0139】
変性ポリビニルアルコール(以下、構造式参照)
【0140】
【0141】
上記で作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルムの長手方向(搬送方向)とラビングローラーの回転軸とのなす角度は45°とした。フィルムの長手方向(搬送方向)を90°とし、フィルム側から観察してフィルム幅手方向を基準(0°)に時計回り方向を正の値で表すと、ラビングローラーの回転軸は135°にある。言い換えれば、ラビングローラーの回転軸の位置は、フィルムの長手方向を基準に、反時計回りに45°回転させた位置である。
【0142】
上記ラビング処理した配向膜付きセルロースアシレートフィルムを基板として、ギーサー塗布機を用いて、下記の組成の棒状液晶化合物を含む組成物(2)を塗布して、組成物層を形成した。
次に、得られた組成物層を120℃で80秒間加熱した。この加熱により組成物層の棒状液晶化合物が所定の方向に配向した。
その後、酸素を含む空気(酸素濃度:約20体積%)下、40℃にて、365nmLEDランプ(アクロエッジ(株)製)を使用して紫外線を組成物層に5秒間照射した(照射量:50mJ/cm
2)。
続いて、得られたフィルムを195℃(組成物層を構成する組成物の液晶相から等方相への相転移温度(190℃)よりも高い温度に該当)の条件下で未硬化の組成物層表面に賦形処理を施したフィルムを押し付けた状態で、窒素パージを行って、酸素濃度100体積ppmとして、メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を使用して紫外線を組成物層に照射することで液晶化合物の配向状態を固定した(照射量:500mJ/cm
2)。その後、賦形処理を施したフィルムを組成物層から剥離することで、最表面に凸部を有する光学等方性部材を形成した。
得られた光学部材(F-2)は、
図1および2で説明したように、ホモジニアス配向した液晶化合物の配向状態を固定してなる層である光学異方性層と、光学異方性層に接して配置される光学等方性部材とを有する光学素子であった。光学等方性部材の凸部の形状および配置は、実施例1と同様であった。光学等方性部材のベース部の厚み(
図1のベース部18Aの厚み)は0.4μmであった。光学異方性層の厚みは3.0μmであった。
なお、Axometrics社のAxoScan、および、同社の解析ソフトウェア(Multi-Layer Analysis)を用いて、光学素子(F-2)の光学特性を求めた。光学異方性層の波長550nmにおける面内レタデーションは140nmであり、フィルムの長手方向に対する面内遅相軸の角度は-45°であった。
【0143】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
組成物(2)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記の棒状液晶化合物(A) 20質量部
下記の棒状液晶化合物(D) 40質量部
下記の棒状液晶化合物(E) 40質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4質量部
光重合開始剤(Irgacure819、BASF社製) 3質量部
上記のポリマー(A) 0.08質量部
メチルエチルケトン 156質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0144】
棒状液晶化合物(D)(下記、構造式参照)
【0145】
【0146】
棒状液晶化合物(E)(下記、構造式参照)
【0147】
【0148】
<実施例3>
図4および5に示すように、ストライプ状に配置された凸部が得られるように、賦形処理を施したフィルムを変更した以外は、実施例2と同様の手順に従って、光学素子(F-3)を得た。
得られた光学部材(F-3)は、
図4および5で説明したように、ホモジニアス配向した液晶化合物の配向状態を固定してなる層である光学異方性層と、光学異方性層に接して配置される光学等方性部材とを有する光学素子であった。光学等方性部材の凸部は、
図4および
図5に示すように、断面形状が台形状の形状であり、ストライプ状に配置されていた。複数の凸部の周期PB(隣接する凸部間の間隔)は2.0μmであり、凸部の高さHB1は1.6μmであり、凸部の上底の幅WB1は1.0μmであり、凸部の下底の幅WA2は1.6μmであった。光学等方性部材のベース部の厚みは0.4μmであった。光学異方性層の厚みは3.0μmであった。
なお、Axometrics社のAxoScan、および、同社の解析ソフトウェア(Multi-Layer Analysis)を用いて、光学素子(F-3)の光学特性を求めた。光学異方性層の波長550nmにおける面内レタデーションは140nmであり、フィルムの長手方向に対する面内遅相軸の角度は-45°であった。
【0149】
<実施例4>
凸部をランダム状に配置されたモスアイ構造が得られるように、賦形処理を施したフィルムを変更した以外は、実施例2と同様の手順に従って、光学素子(F-4)を得た。
得られた光学部材(F-4)は、ホモジニアス配向した液晶化合物の配向状態を固定してなる層である光学異方性層と、光学異方性層に接して配置される光学等方性部材とを有する光学素子であった。光学等方性部材は、光学異方性層側とは反対側に突出する凸部を有し、凸部はランダム状に配置されていた。光学等方性部材の凸部は、光学異方性層側から凸部の光学異方性層側とは反対側に向かって、漸増している円錐台状であった。凸部の高さHA1は0.4μmであり、凸部の上底の幅WA1(上底の直径)は0.18μmであり、凸部の下底の幅WA2(下底の直径)は0.05μmであった。光学等方性部材のベース部の厚みは1.6μmであった。凸部の平均間隔は0.18μmであり、光学異方性層の厚みは3.0μmであった。
なお、Axometrics社のAxoScan、および、同社の解析ソフトウェア(Multi-Layer Analysis)を用いて、光学素子(F-3)の光学特性を求めた。光学異方性層の波長550nmにおける面内レタデーションは140nmであり、フィルムの長手方向に対する面内遅相軸の角度は-45°であった。
【0150】
<実施例5>
実施例2で作製したラビング処理した配向膜付きセルロースアシレートフィルムを基板として、ギーサー塗布機を用いて、棒状液晶化合物を含む組成物(2)を塗布して、組成物層を形成した。
次に、得られた組成物層を120℃で80秒間加熱した。この加熱により組成物層の棒状液晶化合物が所定の方向に配向した。
その後、窒素パージを行って、酸素濃度100体積ppmとして、メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を使用して紫外線を組成物層に照射(照射量:50mJ/cm2)することで液晶化合物の配向状態を固定し、光学異方性層を得た。
その後、ジルコニアナノ粒子を含む凹凸構造形成用組成物(1)を光学異方性層上に塗布して、組成物層を形成した。次に、未硬化の組成物層表面に賦形処理を施したフィルムを押し付けた状態で、窒素パージを行って、酸素濃度100体積ppmとして、メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を使用して紫外線を組成物層に照射することでジルコニアナノ粒子を含む組成物を硬化し、光学部材(F-5)を得た。
【0151】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
凹凸構造形成用組成物(1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製) 90.0質量部
ジルコニアナノ粒子分散物 10.0質量部
光重合開始剤(Irgacure907、BASF社製) 1.3質量部
光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.4質量部
RS-90(レベリング剤、DIC(株)製) 0.1質量部
メチルイソブチルケトン 120質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0152】
得られた光学部材(F-5)は、ホモジニアス配向した液晶化合物の配向状態を固定してなる層である光学異方性層と、光学異方性層に接して配置される光学等方性部材とを有する光学素子であった。光学等方性部材の凸部の形状および配置は、実施例1と同様であった。光学等方性部材のベース部の厚み(
図1のベース部18Aの厚み)は0.4μmであった。光学異方性層の厚みは3.0μmであった。
なお、Axometrics社のAxoScan、および、同社の解析ソフトウェア(Multi-Layer Analysis)を用いて、光学素子(F-5)の光学特性を求めた。光学異方性層の波長550nmにおける面内レタデーションは140nmであり、フィルムの長手方向に対する面内遅相軸の角度は-45°であった。
【0153】
<比較例1>
凹凸構造形成用組成物(1)を凹凸構造形成用組成物(2)に変更した以外は、実施例5と同様の手順に従って、光学部材(F-6)を作製した。
【0154】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
凹凸構造形成用組成物(2)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
芳香族ウレタンアクリレート
(EBECRYL 220、ダイセル・オルネクス(株)製) 100質量部
光重合開始剤(Irgacure819、BASF社製) 2質量部
上記のポリマー(A) 0.08質量部
メチルイソブチルケトン 120質量部
【0155】
得られた光学部材(F-6)は、ホモジニアス配向した液晶化合物の配向状態を固定してなる層である光学異方性層と、光学異方性層に接して配置される光学等方性部材とを有する光学素子であった。光学等方性部材の凸部の形状および配置は、実施例1と同様であった。光学等方性部材のベース部の厚み(
図1のベース部18Aの厚み)は0.4μmであった。光学異方性層の厚みは3.0μmであった。
なお、Axometrics社のAxoScan、および、同社の解析ソフトウェア(Multi-Layer Analysis)を用いて、光学素子(F-6)の光学特性を求めた。光学異方性層の波長550nmにおける面内レタデーションは140nmであり、フィルムの長手方向に対する面内遅相軸の角度は-45°であった。
【0156】
<比較例2>
実施例2と同様の手順に従って、上記ラビング処理した配向膜付きセルロースアシレートフィルムを基板として、ギーサー塗布機を用いて、上記組成物(2)を塗布して、組成物層を形成した。
次に、得られた組成物層を120℃で80秒間加熱した。この加熱により組成物層の棒状液晶化合物が所定の方向に配向した。
その後、窒素パージを行って、酸素濃度100体積ppmとして、メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を使用して紫外線を組成物層に照射することで液晶化合物の配向状態を固定し(照射量:500mJ/cm2)、λ/4板を含む光学フィルムを作製した。
なお、Axometrics社のAxoScan、および、同社の解析ソフトウェア(Multi-Layer Analysis)を用いて、λ/4板を含む光学フィルムの光学特性を求めた。光学異方性層の波長550nmにおける面内レタデーションは140nmであり、フィルムの長手方向に対する面内遅相軸の角度は-45°であった。
【0157】
次に、実施例1で作製したセルロースアシレートフィルム(基板)上にギーサー塗布機を用いて、実施例5で用いた凹凸構造形成用組成物(1)を塗布して、組成物層を形成した。次に、未硬化の組成物層表面に賦形処理を施したフィルムを押し付けた状態で、窒素パージを行って、酸素濃度100体積ppmとして、メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を使用して紫外線を組成物層に照射することで芳香族ウレタンアクリレートを硬化した(照射量:500mJ/cm2)。その後、賦形処理を施したフィルムを組成物層から剥離することで、最表面に凸部を有する凹凸構造フィルム(S)を2枚作製した。なお、凹凸の形状は実施例3と同じストライプ状であった。
【0158】
<偏光子の作製>
厚み80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒間浸漬して染色した。次に、得られたフィルムをホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒間浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚み20μmの偏光子を得た。
【0159】
<偏光子保護フィルムの作製>
市販のセルロースアシレート系フィルムのフジタックTG40UL(富士フイルム(株)製)を準備し、1.5モル/リットルで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/リットルで35℃の希硫酸水溶液に得られたフィルムを1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に、得られたフィルムを120℃で十分に乾燥させて、表面を鹸化処理した偏光子保護フィルムを作製した。
【0160】
<円偏光板の作製>
前述の偏光子保護フィルムの作製と同様に、上記で作製した光学素子(F-1)~(F-6)を鹸化処理し、光学素子に含まれる基板面に、前述の偏光子および前述の偏光子保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続的に貼り合せ、長尺状の円偏光板(P-1)~(P-6)を作製した。つまり、円偏光板(P-1)~(P-6)は、偏光子保護フィルム、偏光子、基板、光学異方性層、および、光学等方性部材をこの順で有していた。
比較例2で作製した光学フィルムの基板面に、前述の偏光子および前述の偏光子保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続的に貼り合せた。さらに、得られた積層体のλ/4板側と、比較例2で作製した凹凸構造フィルム(S)の凹凸構造側を光学的透明な粘着剤(3M社製OCAテープ#8146)を用いて貼り合わせた。さらに、得られた積層体の凹凸構造フィルム(S)の基板側と、もう1枚の凹凸構造フィルム(S)の凹凸構造側を光学的透明な粘着剤(3M社製OCAテープ#8146)を用いて貼り合わせることで、円偏光板(P-7)を作製した。なお、2枚の凹凸構造フィルムは凸部が延在する方向が直交するように貼り合わせた。この円偏光板(P-7)では、光学異方性層と、凸部を有する光学等方性部材とが粘着剤を介して積層していた。この円偏光板(P-7)は、特許文献1の態様に該当する。
【0161】
<有機EL表示装置の作製および表示性能の評価>
(表示装置への実装)
有機ELパネル搭載のSAMSUNG社製GALAXY S4を分解し、円偏光板を剥離して、そこに上記の実施例で作製した円偏光板(P-1)~(P-7)を、偏光子保護フィルムが外側に配置されるように、表示装置に粘着剤で貼り合せた。
(表示性能の評価)
(正面/黒表示)
作製した有機EL表示装置に黒表示をして、明るさの異なる環境下で正面方向より観察し、黒しまりの評価として反射光を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
1:1000luxの環境下でも反射光が視認されない。
2:1000luxの環境下では反射光が視認されるが、100luxの環境下では反射光が視認されない。
3:100luxの環境下では反射光が視認されるが、10luxの環境下では反射光が視認されない。
4:10luxの環境下でも反射光が視認される。
【0162】
(斜め/白表示)
作製した有機EL表示装置に白表示にして、極角45°において全方位表から表示装置の色味を観察し、色味変化の方位角依存性を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
1:画像が全方位で白く視認される。
2:画像が特定の方位のみ青みがかって観察される。
3:画像が全方位で青みがかって観察される。
【0163】
なお、実施例1~5にて作製された光学等方性部材に関しては、上述したセナルモン法にて切片サンプルのレタデーションを測定する方法において、光学的に等方性であることを確認した。
また、光学異方性層の平均屈折率および光学等方性部材の屈折率は、上述した方法にて測定した。
【0164】
表1中、「液晶種類」欄は、光学異方性層および光学等方性部材を作製するのに用いた液晶化合物の種類を表し、「順波長分散」は順波長分散性を示す液晶化合物を意味し、「逆波長分散」は逆波長分散性を示す液晶化合物を意味する。
表1中、「光学異方性層」欄は、光学異方性層中で固定された液晶化合物の配向状態を表し、「ホモジニアス配向/捩れ配向」は光学異方性層がホモジニアス配向した液晶化合物を固定してなる領域と捩れ配向した液晶化合物を固定してなる領域とを含むことを意味し、「ホモジニアス配向」は光学異方性層がホモジニアス配向した液晶化合物を固定してなる層であることを意味する。
表1中、「凸部」欄は、光学等方性部材が有する凸部の形状を表す。
表1中、「屈折率差」欄は、光学異方性層の平均屈折率と光学等方性部材の屈折率との差の絶対値を表す。
表1中、「接触」欄は、各実施例および比較例において光学異方性層と光学等方性部材とが接している場合は「A」、接していない場合は「B」とする。
【0165】
【0166】
上記表1に示すように、本発明の光学素子は、所望の効果を示すことが確認された。
実施例1および2の表示装置は、斜め/白表示において、全方位で画像が白く視認され、表示性能が良好であった。実施例3の表示性能は、斜め/白表示において、凸部が延在する方向と直交する方向から観察した場合には画像が白く視認されたが、凸部が延在する方向に対して平行な方向から観察した場合には画像が青みがかって観察された。なお、実施例3の表示装置を全方位で画像白く視認されるためには、別途、ストライプ状の凸部を有する光学等方性部材を有する光学素子を別途用意し、この光学素子中の光学等方性部材の凸部が延在する方向と、実施例3の表示装置中に含まれる光学素子中の光学等方性部材の凸部が延在する方向と直交するような配置となるように、別途用意した光学素子を実施例3の表示装置にさらに積層させる方法がある。実施例4の表示装置は、凸部(構造部位)によって光学異方性層と粘着剤との界面の反射が抑制されるため正面/黒表示における反射光が視認されず、表示性能が良好であった。