(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182695
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】吸収体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/53 20060101AFI20221201BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A61F13/53 300
A61F13/15 320
A61F13/15 355A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090394
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】田邉 友花
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA16
3B200BB03
3B200BB17
3B200BB20
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB12
3B200DB15
3B200DB16
3B200DB17
3B200EA05
3B200EA23
(57)【要約】
【課題】吸水性樹脂粒子の脱落を十分に抑制しつつ、吸収体がより高い柔軟性を有することが望ましい場合がある。
【解決手段】シート状の保形部材20a,20bと、保形部材20a,20bによって囲まれた、複数の吸水性樹脂粒子1を含む吸水層10とを備える吸収体50が開示される。複数の吸水性樹脂粒子1のうち一部又は全部が互いに融着している。複数の吸水性樹脂粒子1が、0%を超えるケーキング指数を示してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の保形部材と、
前記保形部材によって囲まれた、複数の吸水性樹脂粒子を含む吸水層と、
を備え、
前記複数の吸水性樹脂粒子のうち一部又は全部が互いに融着している、吸収体。
【請求項2】
前記複数の吸水性樹脂粒子が0%を超えるケーキング指数を示し、
前記ケーキング指数が、
当該吸収体から取り出された前記複数の吸水性樹脂粒子から、目開き850μmの篩を通過する粉体試料を選別することと、
2.0gの前記粉体試料を、内径52mmの円形ステンレス製シャーレの底に敷かれた直径50mmの円形の剥離紙上に散布することと、
散布された前記粉体試料の上に、直径50mmの円形の剥離紙、外径50mmで質量20gの円形ステンレス製シャーレ、及び直径45mmの円柱状の質量780gの重りをこの順に重ねることにより熱処理用加圧体を形成することと、
前記熱処理用加圧体を、80℃の熱風により1時間加熱した後、室温まで放冷することと、
放冷後の前記熱処理用加圧体から前記粉体試料の熱処理物を回収することと、
前記熱処理物を静置された目開き850μmの篩上に載せ、次いで前記篩上に残存した前記熱処理物の質量W1、及び前記篩を通過した前記熱処理物の質量W2を測定することと、
式:ケーキング指数={W1/(W1+W2)}×100によってケーキング指数を算出することと、
を含む方法によって決定される値である、請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記複数の吸水性樹脂粒子が80%以上のケーキング指数を示す、請求項2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記複数の吸水性樹脂粒子が、吸水性樹脂を含有する核粒子と、該核粒子の表面上に設けられた、熱溶融性樹脂を含有する定着部と、を含む複合粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収体。
【請求項5】
前記吸水層の質量を基準とする前記複数の吸水性樹脂粒子の質量の割合が1質量%以上100質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収体。
【請求項6】
前記保形部材が不織布を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収体。
【請求項7】
前記吸水層を2以上の領域に分割するように設けられた中間不織布を更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の吸収体を備える、吸収性物品。
【請求項9】
シート状の保形部材によって複数の吸水性樹脂粒子を囲むことと、
前記保形部材によって囲まれた前記複数の吸水性樹脂粒子を加熱し、それにより、前記複数の吸水性樹脂粒子を含み、前記複数の吸水性樹脂粒子のうち一部又は全部が互いに融着されている吸水層を形成させることと、
を含む、吸収体を製造する方法。
【請求項10】
前記複数の吸水性樹脂粒子が0%を超えるケーキング指数を示し、
前記ケーキング指数が、
当該吸収体から取り出された前記複数の吸水性樹脂粒子から、目開き850μmの篩を通過する粉体試料を選別することと、
2.0gの前記粉体試料を、内径52mmの円形ステンレス製シャーレの底に敷かれた直径50mmの円形の剥離紙上に散布することと、
散布された前記粉体試料の上に、直径50mmの円形の剥離紙、外径50mmで質量20gの円形ステンレス製シャーレ、及び直径45mmの円柱状の質量780gの重りをこの順に重ねることにより熱処理用加圧体を形成することと、
前記熱処理用加圧体を、80℃の熱風により1時間加熱した後、室温まで放冷することと、
放冷後の前記熱処理用加圧体から前記粉体試料の熱処理物を回収することと、
前記熱処理物を静置された目開き850μmの篩上に載せ、次いで前記篩上に残存した前記熱処理物の質量W1、及び前記篩を通過した前記熱処理物の質量W2を測定することと、
式:ケーキング指数={W1/(W1+W2)}×100によってケーキング指数を算出することと、
を含む方法によって決定される値である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の吸水性樹脂粒子が80%以上のケーキング指数を示す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記保形部材によって囲まれた前記複数の吸水性樹脂粒子が熱プレスによって加熱され、それによって前記吸水層が形成される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の吸水性樹脂粒子が、吸水性樹脂を含有する核粒子と、該核粒子の表面上に設けられた、熱溶融性樹脂を含有する定着部と、を含む複合粒子を含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記吸水層の質量を基準とする前記複数の吸水性樹脂粒子の質量の割合が1質量%以上100質量%以下である、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸水性樹脂粒子を含む吸収体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂粒子は、紙おむつ、生理用品等の衛生材料、保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤、結露防止剤等の工業資材などの分野で広く用いられている。吸水性樹脂粒子は、吸水性樹脂粒子の粉体を不織布等の保形部材で囲むことによって形状を保持した吸収体の状態で用いられることが多い。吸収体において、吸水性樹脂粒子は接着剤を介して保形部材に対して固定されることがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸水性樹脂粒子を、ある程度の量の接着剤によって保形部材に対して固定することにより、吸収体の製造工程及び運搬時における、吸収体からの吸水性樹脂粒子の脱落がある程度抑制される。ところが、接着剤は吸収体の柔軟性を低下させる傾向がある。そのため、吸水性樹脂粒子の脱落を十分に抑制しつつ、吸収体がより高い柔軟性を有することが望ましい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、シート状の保形部材と、前記保形部材によって囲まれた、複数の吸水性樹脂粒子を含む吸水層とを備える吸収体に関する。この吸収体において、前記複数の吸水性樹脂粒子のうち一部又は全部が互いに融着している。
【0006】
本開示の別の一側面は、シート状の保形部材によって複数の吸水性樹脂粒子を囲むことと、前記保形部材によって囲まれた前記複数の吸水性樹脂粒子を加熱し、それにより、前記複数の吸水性樹脂粒子を含み、前記複数の吸水性樹脂粒子のうち一部又は全部が互いに融着されている吸水層を形成させることとを含む、吸収体を製造する方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面に係る吸収体は、吸水性樹脂粒子の脱落を十分に抑制しながら、より高い柔軟性を有し得る。
【0008】
吸水性樹脂粒子の脱落が抑制されると、吸収体内での吸水性樹脂粒子の移動も抑制され得る。吸水性樹脂粒子の移動の抑制は、吸収体を含む吸収性物品の薄型化及び良好な装着感の両立に寄与する場合がある。吸収体内で吸水性樹脂粒子が大きく移動すると、吸収性物品の着用者に対して、肌の擦れのような違和感を与える可能性があり、特に吸収体が薄いと、違和感が強調され易い傾向がある。また、移動し易い状態の吸水性樹脂粒子が吸水によって膨潤すると、着用者の動きによって吸収体の型崩れ又は破壊が引き起こされ易く、その結果、吸収体の吸収性能が低下する可能性がある。吸水性樹脂粒子の移動が抑制されると、これらの問題を回避しながら吸収体が容易に薄型化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ケーキング指数を測定するための吸水性樹脂粒子の熱処理方法を示す模式図である。
【
図5】吸収体の剛性指数を測定する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は以下に説明される例に限定されるものではない。本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。「室温」とは、25±2℃をいう。「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「生理食塩水」とは、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を意味する。
【0011】
図1は、吸収体の例を示す断面図である。
図1に示される吸収体50は、シート状の保形部材20a,20bと、保形部材20a,20bによって囲まれた、複数の吸水性樹脂粒子1を含む吸水層10とから主として構成される。
【0012】
吸水層10を構成する複数の吸水性樹脂粒子1のうち一部又は全部が、互いに融着している。互いに融着している吸水性樹脂粒子が吸水層10に含まれると、吸水性樹脂粒子1の脱落を十分に抑制しながら、主に接着剤によって吸水性樹脂粒子が保形部材に対して固定された場合と比較して、吸収体50がより高い柔軟性を有することができる。吸水性樹脂粒子1は、それ自体が保形部材20a,20bに対して熱融着によって固定されることができるが、吸水性樹脂粒子1を保形部材20a,20bに固定するために補助的に接着剤を用いてもよい。吸水性樹脂粒子1の固定のために補助的に用いられる接着剤は、例えばホットメルト接着剤又は水溶性接着剤であってもよい。水溶性接着剤は、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン等の水溶性高分子を含んでいてもよい。
【0013】
吸水性樹脂粒子1の脱落の抑制、及び吸収体の柔軟性向上の観点から、吸収体50から取り出された複数の吸水性樹脂粒子1が、0%を超えるケーキング指数を示してもよい。ケーキング指数は、吸水性樹脂粒子が熱処理及び加圧によって互いに融着する性質を反映する指数である。吸水性樹脂粒子のケーキング指数が0%である場合、その吸水性樹脂粒子が熱による融着性を有しないとみなすことができる。
【0014】
図2は、ケーキング指数を測定するための吸水性樹脂粒子の熱処理方法を示す模式図である。吸水性樹脂粒子のケーキング指数は、複数の吸水性樹脂粒子1から、目開き850μmの篩を通過する粉体試料1Aを選別することと、2.0gの粉体試料1Aを、内径52mmの円形ステンレス製シャーレ61の底に敷かれた直径50mmの円形の下側剥離紙62a上に散布することと、散布された粉体試料1Aの上に、直径50mmの円形の上側剥離紙62b、外径50mmで質量20gの円形ステンレス製シャーレ63、及び直径45mmの円柱状の質量780gの重り65をこの順に重ねることにより、円形ステンレス製シャーレ61、下側剥離紙62a、粉体試料1A、上側剥離紙62b、円形ステンレス製シャーレ63及び重り65から構成される熱処理用加圧体60を形成することと、熱処理用加圧体60を、80℃の熱風により1時間加熱した後、室温まで放冷することと、放冷後の熱処理用加圧体60から粉体試料1Aの熱処理物を回収することと、熱処理物を、静置された目開き850μmの篩上に載せ、その時に篩上に残存した熱処理物の質量W1、及び篩を通過した熱処理物の質量W2を測定することと、式:
ケーキング指数={W1/(W1+W2)}×100
によってケーキング指数を算出することと、を含む方法によって決定される値である。
【0015】
下側剥離紙62a及び上側剥離紙62bの片面又は両面は剥離面であり、これら剥離紙は、その剥離面が粉体試料1Aと接する向きで配置される。剥離面は、例えばシリコーンコーティングされた表面であることができる。
【0016】
下側剥離紙62a、上側剥離紙62b及び円形ステンレス製シャーレ63は、それぞれの円形の外周の位置が互いに揃うように配置される。これにより、粉体試料1Aの全体に対して均一な圧力を負荷することができる。
【0017】
吸水性樹脂粒子1のケーキング指数は、吸水性樹脂粒子の脱落の更なる抑制の観点から20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上又は95%以上であってもよい。吸水性樹脂粒子1のケーキング指数は、100%以下、99%以下、98%以下又は97%以下であってもよい。
【0018】
吸水層10を構成する複数の吸水性樹脂粒子1のうち一部又は全部が、吸水性樹脂を含有する核粒子と、該核粒子の表面上に設けられた、熱溶融性樹脂を含有する定着部と、を含む複合粒子であってもよい。この複合粒子が存在すると、複数の吸水性樹脂粒子1を含む粉体が高いケーキング指数を示し易い。
【0019】
吸水性樹脂粒子1が複合粒子である場合、その核粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を単量体単位として含む架橋重合体を吸水性樹脂として含む、重合体粒子であることができる。重合体粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させる工程を含む方法により、製造することができる。重合方法の例としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、及び沈殿重合法等が挙げられる。
【0020】
エチレン性不飽和単量体は、水溶性エチレン性不飽和単量体であってもよい。水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を有する場合、当該アミノ基は4級化されていてもよい。エチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0021】
エチレン性不飽和単量体が酸基を有する場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和してから重合反応に用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度は、例えば、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10~100モル%、50~90モル%、又は60~80モル%であってもよい。
【0022】
工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよく、(メタ)アクリル酸及びその塩であってもよい。
【0023】
吸水性樹脂粒子が、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体に由来する単量体単位を更に含んでもよい。エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位の割合が、重合体粒子を構成する単量体単位全量に対して70~100モル%であってもよい。(メタ)アクリル酸及びその塩に由来する単量体単位の割合が、重合体粒子中の架橋重合体を構成する単量体単位全量に対して70~100モル%であってもよい。
【0024】
重合体粒子を構成する架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋されていてもよい。内部架橋剤は、通常、重合反応の際に反応液に添加される。重合体粒子が、表面架橋剤によって架橋されていてもよい。表面架橋剤によって、主に重合体粒子の表面近傍の重合体が架橋される。
【0025】
重合体粒子は、実質的に架橋重合体のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤、及び流動性向上剤(滑剤)等から選ばれる各種の追加の成分を更に含んでいてもよい。
【0026】
複合粒子を構成する定着部は、熱溶融性樹脂を含む。定着部全量のうち、熱溶融性樹脂の割合は、80質量%、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上又は100質量%であってもよい。
【0027】
熱溶融性樹脂は、例えば、ガラス転移温度及び/又は融点を有する樹脂であることができる。定着部を形成する熱溶融性樹脂のガラス転移温度は、例えば、-125℃以上、-100℃以上、-50℃以上、0℃以上、10℃以上、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上、40℃以上、又は50℃以上、60℃以上、70℃以上であってよく、90℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、60℃以下、又は50℃以下であってもよい。ここでのガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって求められる値であることができる。定着部を形成する熱溶融性樹脂の融点が、例えば70~250℃であってもよい。
【0028】
熱溶融性樹脂は熱可塑性樹脂であってもよく、その具体例としては、置換又は無置換のアルケンを単量体単位として含むホモポリマー、コポリマー、又はそれらの混合物、及び、アルキレンオキシドを単量体単位として含むホモポリマー、コポリマー、又はそれらの混合物が挙げられる。無置換アルケンを構成単位として含むコポリマーは、2種以上の無置換アルケンのみを単量体単位として含むコポリマー、又は、1種若しくは2種以上の無置換アルケンと無置換アルケン以外の単量体とを単量体単位として含むコポリマーであってもよく、1種の無置換アルケンと無置換アルケン以外の単量体とを単量体単位として含むコポリマーであってもよい。
【0029】
コポリマーを構成する無置換アルケンの例としては、エチレン、プロピレン、及びブテンが挙げられる。無置換アルケンがエチレン及び/又はプロピレンであってもよく、エチレンであってもよい。
【0030】
コポリマーを構成する無置換アルケン以外の単量体は、水溶性エチレン性不飽和単量体であってもよい。この水溶性エチレン性不飽和単量体は、核粒子としての重合体粒子を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体として列挙された化合物と同様のものであることができ、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩であってもよい。
【0031】
無置換アルケンを単量体単位として含むコポリマーは、エチレンと水溶性エチレン性不飽和単量体とを単量体単位として含むコポリマーであってもよく、エチレンと(メタ)アクリル酸及び/又はその塩とを単量体単位として含むコポリマーであってもよく、エチレンとアクリル酸塩とを単量体単位として含むコポリマーであってもよく、エチレンとアクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム又はアクリル酸アンモニウムとを単量体単位として含むコポリマー(エチレン-アクリル酸ナトリウム共重合体、エチレン-アクリル酸カリウム共重合体、又はエチレン-アクリル酸アンモニウム)であってもよく、エチレン―アクリル酸ナトリウム共重合体であってもよい。
【0032】
アルキレンオキシドを単量体単位として含むポリマーは、1種のアルキレンオキシドのみを単量体単位として含むポリアルキレンオキシド(ホモポリマー)であってもよく、2種以上のアルキレンオキシドを単量体単位として含むポリアルキレンオキシド(コポリマー)であってもよく、1種又は2種以上のアルキレンオキシドとアルキレンオキシド以外の単量体とを単量体単位として含むコポリマーであってもよい。アルキレンオキシドを単量体単位として含むポリマーが、1種のアルキレンオキシドのみを単量体単位として含むポリアルキレンオキシドであってもよい。
【0033】
アルキレンオキシドの例としては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが挙げられる。アルキレンオキシドが特にエチレンオキシドであってもよい。
【0034】
アルキレンオキシドを単量体単位として含むポリマーは、エチレンオキシドを単量体単位として含むホモポリマー(ポリエチレングリコール)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとを単量体単位として含む共重合体、又はこれらの組み合わせであってもよく、ポリエチレングリコールであってもよい。
【0035】
定着部は、核粒子の表面の少なくとも一部を覆うように設けられる。核粒子の表面面積に対する定着部による占有割合(すなわち被覆率)は、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上であってもよく、100%以下、99%以下、98%以下、95%以下、90%以下、又は80%以下であってもよい。被覆率は、例えばRAMAN touch(ナノフォトン社製)によって求められる。
【0036】
定着部の厚みは、例えば0.001~100μm、0.01~50μm、又は0.1~30μmであってもよい。
【0037】
定着部の量は、核粒子(例えば重合体粒子)100質量部に対して、0.01質量部以上、0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、1.5質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、又は5質量部以上であってもよく、10質量部以下、8質量部以下、又は6質量部以下であってもよい。
【0038】
吸水層10は、吸水性樹脂粒子1として、上述の複合粒子と、定着部を有しない粒子とを含んでいてもよい。吸水層10を構成する複数の吸水性樹脂粒子1の全体質量を基準として、定着部を有する複合粒子の割合は、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上又は70質量%以上であってもよく、100質量%以下であってもよい。定着部を有しない粒子は、核粒子として例示された重合体粒子と同様の粒子であることができる。
【0039】
複数の吸水性樹脂粒子1のうち、定着部を有する複合粒子の生理食塩水に対する保水量は、例えば、25g/g以上、30g/g以上、35g/g以上、38g/g以上、又は40g/g以上であってもよく、50g/g以下、48g/g以下、45g/g以下、又は43g/g以下であってもよい。
【0040】
複合粒子を構成する核粒子(又は、複数の吸水性樹脂粒子1のうち定着部を有しない粒子)の生理食塩水に対する保水量は、例えば、33g/g以上、35g/g以上、38g/g以上、40g/g以上、又は42g/g以上であってよく、55g/g以下、52g/g以下、50g/g以下、又は48g/g以下であってもよい。
【0041】
吸水性樹脂粒子1(定着部を有する複合粒子又は定着部を有しない粒子)は、重合体粒子(又は核粒子)の表面上に配置された無機粒子を含んでいてもよく、消臭剤、顔料、染料、抗菌剤、香料、及び粘着剤等の添加剤を含んでいてもよい。無機粒子の例としては、非晶質シリカ等のシリカ粒子、ゼオライト、カオリン、及びクレイが挙げられる
【0042】
吸水性樹脂粒子1の形状は、例えば略球状、破砕状又は多孔質状であってもよく、これらの形状を有する一次粒子が凝集した形状であってもよい。吸収体作製時における吸水性樹脂粒子の分散の容易性の観点から、吸水性樹脂粒子は略球状であってもよく、略球状の一次粒子が凝集した形状であってもよい。
【0043】
複数の吸水性樹脂粒子1の中位粒子径は、例えば、20μm以上、60μm以上、80μm以上、100μm以上、150μm以上、200μm以上、又は250μm以上であってよく、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、450μm以下、400μm以下、又は380μm以下であってもよい。
【0044】
吸水層10は、吸水性樹脂粒子1と混合された親水性繊維3を更に含んでもよい。親水性繊維3は短繊維であってもよい。親水性繊維3は、例えば、パルプ、コットン、コットンリンター、レーヨン及びポリアミドから選ばれる1種以上の親水性材料を含む繊維であることができる。吸水層10が、吸水性樹脂粒子1と親水性繊維3とを均一な組成となるように混合することによって形成された分散体を含んでいてもよい。
【0045】
吸水層10における複数の吸水性樹脂粒子1の質量の割合が、複数の吸水性樹脂粒子1及び親水性繊維3の合計質量を基準として、1質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上であってもよく、100%質量以下であってもよい。吸水性樹脂粒子1の割合が大きいと、吸水性樹脂粒子1が脱落し易い傾向、及び、吸収体50の柔軟性が低下する傾向があるが、その場合であっても、吸水性樹脂粒子1が互いに融着していることにより、吸水性樹脂粒子1の脱落を効果的に抑制しながら、吸収体50の柔軟性を高めることができる。
【0046】
吸水層10が無機粉末を含んでいてもよい。吸水性樹脂粒子1が無機粒子を含む場合、無機粉末は吸水性樹脂粒子1中の無機粒子とは別に導入されたものであることができる。吸水層10中の無機粉末の例としては、二酸化ケイ素、ゼオライト、カオリン、又はクレイを含む粒子を含む粉末が挙げられる。
【0047】
保形部材20a,20bは、吸水性樹脂粒子1及び必要により加えられる親水性繊維3を囲むように設けられたシートである。保形部材20aは、吸水層10に接した状態で吸水層10の一方面側に配置されている。保形部材20bは、吸水層10に接した状態で吸水層10の他方面側に配置されている。すなわち、吸水層10は、保形部材20aと保形部材20bとの間に配置されている。吸水層10は、保形部材20a,20bによって完全に囲まれている必要はなく、例えば吸水層10の端部が外部に露出していてもよい。保形部材20a,20bは、別々の2枚のシートであってもよく、折り畳まれた1枚のシートであってもよい。保形部材20a,20bはエアレイド不織布等の不織布であってもよく、ティッシュペーパーであってもよい。
【0048】
図3は、吸収体の別の例を示す断面図である。
図3に示される吸収体51は、2枚の保形部材20a,20bの間に設けられた中間不織布25を有する点で、
図1の吸収体50と異なる。中間不織布25は、吸水層を2つの領域に分割するように設けられている。2つの吸水層10A,10Bは、それぞれ、複数の吸水性樹脂粒子1を含んでおり、親水性繊維3を更に含んでもよい。2つの吸水層10A,10Bを構成する吸水性樹脂粒子1及び親水性繊維3は、互いに同一でも異なってもよい。中間不織布25は、例えばエアスルー不織布であってもよい。
【0049】
図1及び
図3は例示であり、吸収体の構成はこれらに限定されない。例えば、吸収体が、不織布上又は複数の不織布間に固定された吸水性樹脂粒子を有するシート状構造体、親水性繊維を含む複数の層とそれらの間に挟まれた吸水性樹脂粒子とを有するサンドイッチ構造体、又は、吸水性樹脂粒子と親水性繊維とをティッシュペーパーで包んだ構造体であってもよい。吸収体の平面形状は、用途に応じて、又は吸収性物品の形状に応じて適宜定められ、例えば、略長方形、楕円形、砂時計形、又は羽子板形であってもよい。フィット性向上のための吸収体に切れ込み等があってもよい。吸収体は、縦方向に延びる複数の縦溝及び縦方向に直交する横方向に延びる複数の横溝で区画されたブロック構造が縦方向に複数配されたブロック領域を有していてもよい。複数の吸収体が平面上で若しくは垂直方向に分割されていてもよい。吸収体内部において、吸水性樹脂粒子及びその他の成分の量的分布の勾配が形成されていてもよい。液体の流路を設けるために、吸収体の内部及び/又は外部にエンボス加工が施されていてもよく、吸収体にスリット構造が含まれていてもよい。スリット構造とは、吸収体の一部にスリット形状の孔が設けられた構造である。吸収体が厚み方向に、切り取り、圧搾、又は貫通されることにより、凹部、溝、又はスリットが形成されていてもよい。スリットを液体の流路になるよう配置することで、流路に沿った液拡散を促すことができ、液体が透過しやすくなる。例えば、直線状のスリット構造が、吸収体の中央部において、吸収体の長手方向の中間点から両端にかけて設けられてもよい。
【0050】
吸収体50(又は吸収体51)における吸水性樹脂粒子の目付量は、50g/m2以上450g/m2以下であってもよい。吸水性樹脂粒子の目付量は、100g/m2以上、200g/m2以上、又は300g/m2以上であってもよく、400g/m2以下であってもよい。
【0051】
吸収体50(又は吸収体51)は、例えば、シート状の保形部材20a,20bによって複数の吸水性樹脂粒子1を囲むことと、保形部材20a,20bによって囲まれた複数の吸水性樹脂粒子1を加熱し、それにより、複数の吸水性樹脂粒子1を含み、複数の吸水性樹脂粒子1のうち一部又は全部が互いに融着されている吸水層10を形成させることとを含む方法によって製造することができる。
【0052】
吸水性樹脂粒子1は、複数の吸水性樹脂粒子1が互いに融着するように加熱される。保形部材20a、複数の吸水性樹脂粒子1(又は吸水性樹脂粒子1と親水性繊維3との混合物)、及び保形部材20bを重ね、全体を加圧することによって積層体を形成し、その積層体を、吸水性樹脂粒子1同士が融着されるように加熱してもよい。あるいは、保形部材20a、複数の吸水性樹脂粒子1(又は吸水性樹脂粒子1と親水性繊維3との混合物)、及び保形部材20bを重ね、全体を熱プレスすることによって、吸水性樹脂粒子1同士を融着させてもよい。
【0053】
複数の吸水性樹脂粒子1のうち一部又は全部が上述の複合粒子である場合、その定着部同士が融着するような温度での加熱により、容易に吸水性樹脂粒子1を互いに融着させることができる。そのための加熱温度は、定着部を形成する熱溶融性樹脂のガラス転移温度又は融点以上の温度であることができ、具体的には例えば30~120℃であってもよい。
【0054】
吸水性樹脂粒子1として用いられる複合粒子は、例えば、核粒子の表面上に定着部を形成することを含む方法によって準備される。定着部は、例えば、(1)熱溶融性樹脂を含む固体の定着部材を核粒子の表面に付着させる方法、(2)熱溶融性樹脂と溶媒又は分散媒とを含む液状の定着材を核粒子の表面に接触させ、次いで液状の定着材から溶媒又は分散媒を除去する方法、(3)溶融した熱溶融性樹脂を核粒子の表面に付着させる方法、又は、(4)核粒子の存在下で、熱溶融性樹脂の前駆体から熱溶融性樹脂を形成する方法によって形成することができる。核粒子は、例えば、上述の方法によって準備された重合体粒子であることができる。
【0055】
(1)の方法の場合、例えば、核粒子と固体(例えば粉状)の定着部材の混合物を撹拌翼によって撹拌することによって、核粒子の表面上に定着部を形成することができる。そのために、例えば、市販の粒子複合化装置ノビルタMINI(スギノマシン株式会社製)を使用することができる。
【0056】
(2)の方法の場合、例えば、撹拌翼による撹拌で巻き上げられた吸水性樹脂粒子に対して液状の定着部材を噴霧してもよい。転動造粒機、撹拌造粒機、及び流動層造粒機等の造粒機によって、核粒子と液状の定着材とを混合し、定着部を形成してもよい。あるいは、核粒子、熱溶融性樹脂、炭化水素分散媒及び水を含む分散液を撹拌しながら、炭化水素分散媒と水との共沸蒸留により水を抜き出すことと、その後炭化水素分散媒を除去することとを含む方法によって、核粒子の表面上に定着部を形成してもよい。
【0057】
(4)の方法の場合、熱溶融性樹脂の前駆体は、例えば重合性の単量体であることができる。その場合、核粒子、炭化水素分散媒、及び、熱溶融性樹脂の前駆体としての単量体を含む反応液を形成することと、反応液中での単量体の重合により、核粒子の表面上に熱溶融性樹脂を含む定着部を形成することと、炭化水素分散媒を除去することとを含む方法によって、核粒子の表面上に定着部を形成してもよい。熱溶融性樹脂がポリウレタンである場合、通常、その前駆体はポリオール及びポリイソシアネートを含む。反応液中に架橋剤を導入することによって、架橋された重合体を熱溶融性樹脂として形成してもよい。
【0058】
以上例示された吸収体は、例えば、各種の吸収性物品において用いられる。吸収性物品の例としては、衛生材料、保水剤及び土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤及び結露防止剤等の工業資材が挙げられる。衛生材料の例としては、オムツ(例えば紙オムツ)、トイレトレーニングパンツ、失禁パッド、衛生材料(生理用ナプキン、タンポン等)、汗取りパッド、ペットシート、簡易トイレ用部材、及び動物排泄物処理材が挙げられる。吸収性物品は、使い捨てであってもよい。
【0059】
図4は吸収性物品の例を示す断面図である。
図4に示される吸収性物品100は、吸収体50と、液体透過性シート30と、液体不透過性シート40とを備える。吸収性物品100において、液体不透過性シート40、吸収体50、及び液体透過性シート30がこの順に積層されている。
【0060】
液体透過性シート30は、当該技術分野で通常用いられる樹脂又は繊維から形成されたシートであってもよい。液体透過性シート30は、不織布、多孔質シート、又はこれらの組み合わせであってもよい。不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたシートである。不織布は、短繊維(すなわちステープル)で構成される不織布(短繊維不織布)であってもよく、長繊維(すなわちフィラメント)で構成される不織布(長繊維不織布)であってもよい。ステープルは、これに限定されないが、一般的には数百mm以下の繊維長を有していてもよい。
【0061】
液体透過性シート30は、吸収性物品に用いられる際の液体浸透性、柔軟性及び強度の観点から、例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、並びにレーヨンのような合成樹脂、キュプラ等の再生繊維、アセテート又はこれら合成樹脂を含む合成繊維を含んでいてもよいし、綿、絹、麻、又はパルプ(セルロース)を含む天然繊維であってもよい。液体透過性シート30の強度を高める等の観点から、液体透過性シート30が合成繊維を含んでいてもよい。合成繊維が特に、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維又はこれらの組み合わせであってもよい。これらの素材は、単独で用いられてもよく、2種以上の素材を組み合わせて用いられてもよい。
【0062】
液体透過性シート30は、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ポイントボンド不織布、又はこれらから選ばれる2種以上の不織布の積層体であってもよい。これら不織布は、例えば、上述の合成繊維又は天然繊維によって形成されたものであることができる。2種以上の不織布の積層体は、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布及びスパンボンド不織布を有し、これらがこの順に積層された複合不織布であるスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布であってもよい。液体漏れ抑制の観点から、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、又はスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布を用いてもよい。スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布において、2層のスパンボンド不織布の間に2層以上のメルトブロー不織布が設けられていてもよい。
【0063】
液体透過性シート30として用いられる不織布は、吸収性物品の液体吸収性能の観点から、適度な親水性を有していることが望ましい。その観点から、液体透過性シート30は、紙パルプ技術協会による紙パルプ試験方法No.68(2000)の測定方法に従って測定される親水度が5~200の不織布であってもよい。不織布の前記親水度は、10~150であってもよい。紙パルプ試験方法No.68の詳細については、例えばWO2011/086843号を参照することができる。
【0064】
上述のような親水性を有する不織布は、例えば、レーヨン繊維のように適度な親水度を示す繊維によって形成されたものでもよいし、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維のような疎水性の化学繊維を親水化処理して得た繊維によって形成されたものであってもよい。親水化処理された疎水性の化学繊維を含む不織布を得る方法としては、例えば、疎水性の化学繊維に親水化剤を混合したものを用いてスパンボンド法にて不織布を得る方法、疎水性化学繊維でスパンボンド不織布を作製する際に親水化剤を同伴させる方法、疎水性の化学繊維を用いて得たスパンボンド不織布に親水化剤を含浸させる方法が挙げられる。親水化剤の例としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、及び、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系又はウレタン系の樹脂からなるステイン・リリース剤が挙げられる。
【0065】
液体透過性シート30は、吸収性物品に、良好な液体浸透性、柔軟性、強度及びクッション性を付与できる観点、及び吸収性物品の液体浸透速度を速める観点から、適度に嵩高く、目付量が大きい不織布であってもよい。液体透過性シート30に用いられる不織布の目付量は、5~200g/m2、8~150g/m2、又は10~100g/m2であってもよい。液体透過性シート30に用いられる不織布の厚さは、20~1400μm、50~1200μm、又は80~1000μmであってもよい。
【0066】
液体透過性シート30は、液体の拡散性を向上させるために、2枚以上のシートからなるものでもよく、表面にエンボス加工や穿孔加工が施されていてもよい。前記エンボス加工や穿孔加工を施すにあたっては、公知の方法にて実施することができる。液体透過性シート30には、肌への刺激を低減させるために、スキンローション、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、pH調整剤等が配合されていてもよい。液体透過性シート30の形状は、吸収体および吸収性物品の形状にもよるが、液体の漏れが生じないように、吸収体50(又は吸収体51)を覆う形状であってもよい。
【0067】
液体不透過性シート40は、吸収性物品100において液体透過性シート30とは反対側の最外部に配置されている。液体不透過性シート40は、保形部材20aに接した状態で保形部材a20の下側に配置されている。液体不透過性シート40は、例えば、吸収体50(又は吸収体51)の主面よりも広い主面を有しており、液体不透過性シート40の外縁部は、吸収体50(又は吸収体51)の周囲に延在している。液体不透過性シート40は、吸収体50(又は吸収体51)に吸収された液体が液体不透過性シート40側から外部へ漏れ出すのを防止する。
【0068】
液体不透過性シート40の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂からなるシート、耐水性のメルトブロー不織布を高強度のスパンボンド不織布で挟んだスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)不織布等の不織布からなるシート、これらの合成樹脂と不織布(例えば、スパンボンド不織布、スパンレース不織布)との複合材料からなるシートが挙げられる。液体不透過性シート40は、装着時のムレが低減されて、着用者に与える不快感を軽減することができる等の観点から、通気性を有していてよい。液体不透過性シート40として、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体とする合成樹脂からなるシートを用いることができる。吸収性物品の着用感を損なわないよう、柔軟性を確保する観点から、液体不透過性シート40は、例えば、目付量が10~50g/m2の合成樹脂からなるシートであってもよい。液体不透過性シート40に通気性を付与するため、例えば、樹脂シートにフィラーを配合したり、液体不透過性シート40にエンボス加工を施したりすることもできる。フィラーとしては炭酸カルシウム等が用いられる。
【0069】
吸収性物品100を構成する各部材は、接着されていてもよい。例えば、吸収体50(又は吸収体51)と液体透過性シート30とを接着することで、液体がより円滑に吸収体に導かれ、漏れ防止に優れた吸収性物品が得られやすい。接着方法としては、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の方法が挙げられる。例えば、ホットメルト接着剤を液体透過性シート30に対してその幅方向へ所定間隔で縦方向ストライプ状、スパイラル状等の形状に塗布する方法、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン等の水溶性高分子を含む水溶性接着剤を用いる方法等が挙げられる。保形部材20a,20bが熱融着性合成繊維を含む場合は、その熱融着による方法を採用してもよい。
【0070】
吸収性物品100は、例えば、吸収体50を液体透過性シート30及び液体不透過性シート40の間に配置することを含む方法により、製造することができる。液体不透過性シート40、吸収体50、及び液体透過性シート30の順に積層された積層体が、必要により加圧される。
【0071】
図4は例示であり、吸収性物品の構成はこれに限定されない。吸収性物品の形状は、用途に応じて適宜定められる。例えば、吸収性物品が尿パッド又は生理用ナプキンである場合、吸収性物品が略長方形、楕円形、砂時計形、又は羽子板形であってもよい。
【0072】
吸収性物品は、前述した液体透過性シート、吸収体、液体不透過性シートの他にも、用途や機能に合わせて適宜、その他の部材を有していてもよい。その他の部材の例として、液体獲得拡散シート、アウターカバー不織布、及びレッグギャザーが挙げられる。
【0073】
液体獲得拡散シートは、例えば、液体透過性シートと吸収体との間に配置されていてもよい。これにより、液体透過性シートを透過した液を吸収体側へ速やかに移動させること、あるいは逆戻りをさらに低減することができる。液体獲得拡散シート及び液体透過性シートは、ホットメルト接着剤、ヒートエンボス又は超音波溶着によって接着されていてもよい。液体獲得拡散シートは、例えば、不織布、又は、多数の透過孔を有する樹脂フィルムであってもよい。液体獲得拡散シートは、液体透過性シート30に関して例示された不織布であってもよい。液体獲得拡散シートが、液体透過性シート30よりも親水性が高い不織布、又は、繊維密度が高い不織布であると、吸収体方向への液の移動特性が改善され得る。
【0074】
液体獲得拡散シートは、通常、吸収体よりも短い幅の範囲の中央部に配置されてもよく、全幅にわたって配置されてもよい。液体獲得拡散シートの前後方向長さは、吸収性物品の全長と略同一でもよいし、吸収体の全長と略同一でもよいし、液が投入される部分を想定した範囲の長さであってもよい。
【0075】
アウターカバー不織布が、液体不透過性シートの吸収体側に配置されていてもよい。アウターカバー不織布は、例えば、接着剤を用いて液体不透過性シート40に接着されることができる。アウターカバー不織布は、1層以上で形成されてもよく、軟質材であってもよい。アウターカバー不織布は、消費者の購入意欲に訴求できるように、あるいはその他の理由に応じて、柔軟な触感を付与されていてもよいし、絵柄がプリントされていてもよいし、複数の結合部、エンボス加工、あるいは三次元の形態を形成されていてもよい。
【0076】
吸収性物品は、吸収体における幅方向の両端部よりも外側において、吸収体の長手方向と略平行に配置されたレッグギャザーを有していてもよい。レッグギャザーは、伸縮性を有する弾性部材を備える。レッグギャザーの長さは、装着者の足回り、又はそれを上回る程度に設定される。レッグギャザーの伸長率は、排出される液体の漏れを防止しつつ、長時間装着時の圧迫感が少ないなどの観点から適宜設定される。
【0077】
吸収性物品は、吸収性物品における長手方向の両端部近傍に配置され、幅方向に伸縮する弾性部材を備える前面/背面ギャザーを有していてもよい。
【0078】
吸収性物品は、吸収体の幅方向の側縁部上方に立ち上がることができる前面/背面ギャザーを備えていてもよい。すなわち、吸収性物品における長手方向の両側のそれぞれにおいて、ギャザー弾性部材を有する前面/背面ギャザーのシート用部材が配され、それにより前面/背面ギャザーが構成されていてもよい。
【0079】
前面/背面ギャザー用の部材は、通常、液不透過性または撥水性の素材、又は透湿性の素材によって形成される。前面/背面ギャザー用の部材は、例えば、液不透過性若しくは撥水性の多孔質シート、液不透過性若しくは撥水性の不織布、又はこれらを含む積層体であってもよい。前記不織布の例としては、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンレース不織布、及びスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布が挙げられる。前面/背面ギャザー用の部材の目付量は、5~100g/m2、8~70g/m2、又は10~40g/m2であってもよい。
【0080】
吸収性物品が止水材であってもよい。止水材は、第一の液体透過性シートと、第二の液体透過性シートと、吸水性樹脂粒子を含む吸水層とを備えていてもよい。対向して配置された第一の液体透過性シートと第二の液体透過性シートとの間に、吸水層が配置されてもよい。吸水層は、対向して配置された第一の液体透過性シートと第二の液体透過性シートとの間に挟持されていてもよい。止水材は、液体透過性シートを3枚以上備えていてもよい。この場合、吸水層は、隣り合って配置された少なくとも1組の液体透過性樹脂シートの間に配置されてもよい。吸水層中の吸水性樹脂粒子は、止水材の厚み方向から見たときに、30~500g/m2の割合、又は100~300g/m2の割合で配置されていてもよい。第一の液体透過性シート及び第二の液体透過性シートの厚みは、例えば、0.05~6mmであってもよい。
【0081】
止水材は、例えば、対向して配置された第一の液体透過性シートと第二の液体透過性シートとの間に、複数の吸水性樹脂粒子を配置することにより得られる。例えば、液体透過性シートに吸水性樹脂粒子を固定して、吸水性樹脂粒子を含むシート状の吸水層を形成することができる。吸水性樹脂粒子の固定のために、吸水性樹脂粒子自体を液体透過性シートに熱融着させてもよいし、補助的に接着剤を用いてもよい。止水材は、例えば、電力ケーブル又は光通信ケーブルの中心部を巻いて保護するために用いられる。止水材は、外部素材が劣化し、発生した亀裂から漏れこんだ水分を吸収するとともに、膨潤してケーブル内に圧力を発生させることで、ケーブル中心部に水が到達するのを防止することができる。
【0082】
止水材の液体透過性シートは、
図4の吸収性物品を構成する液体透過性シート30に関して例示されたものと同様のシートであることができる。吸水性樹脂粒子の固定のために補助的に用いられる接着剤は、例えばホットメルト接着剤又は水溶性接着剤であってもよい。水溶性接着剤は、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン等の水溶性高分子を含んでいてもよい。
【実施例0083】
以下の実施例は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
1.吸水性樹脂粒子の作製
製造例1
(1)核粒子(重合体粒子)
【0085】
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び撹拌機を備えた、内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。撹拌機として、翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を有するものを用いた。セパラブルフラスコに、n-ヘプタン293g、及び分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを投入して混合した。フラスコ内の混合物を撹拌機で撹拌しつつ、80℃まで昇温することにより、分散剤をn-ヘプタンに溶解させた。形成されたn-ヘプタン溶液を50℃まで冷却した。
【0086】
内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)を入れ、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gをビーカー内に滴下することにより、75モル%のアクリル酸を中和した。そこに、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース(住友精化株式会社、HEC AW-15F)0.092gと、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)と、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0156g(0.090ミリモル)とを加えてこれらを溶解することにより、第1段目の水溶液を調製した。
【0087】
第1段目の水溶液を、セパラブルフラスコ内のn-ヘプタン溶液に添加し、形成された反応液を10分間撹拌した。別途、n-ヘプタン6.62gに界面活性剤であるショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370、HLB:3)0.736gを溶解させた界面活性剤溶液を用意した。該界面活性剤溶液を反応液に加え、撹拌機の回転数を550rpmとして反応液を撹拌しながら、系内を窒素で十分に置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴に浸漬して反応液を昇温し、60分間重合反応を進行させることにより、第1段目の重合スラリー液を得た。
【0088】
内容積500mLのビーカーに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.44モル)を入れ、外部より冷却しつつ、濃度27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して、75モル%のアクリル酸を中和した。中和後のアクリル酸水溶液が入ったビーカーに、過硫酸カリウム0.103g(0.381ミリモル)と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)とを加えてこれらを溶解することにより、第2段目の水溶液を調製した。
【0089】
セパラブルフラスコ内の第1段目の重合スラリー液を、撹拌機の回転数を1000rpmとして撹拌しながら25℃に冷却し、そこに第2段目の水溶液の全量を加えた。セパラブルフラスコ内を窒素で30分間置換した後、再度、セパラブルフラスコを70℃の水浴に浸漬して反応液を昇温し、60分間の第2段目の重合反応により、含水ゲル状重合体を形成させた。
【0090】
含水ゲル状重合体を含む反応液に、45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.589gを、撹拌下で添加した。続いてセパラブルフラスコを125℃に設定した油浴に浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、256.1gの水を系外へ抜き出した。セパラブルフラスコ内に表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(0.508ミリモル)を含む濃度2質量%の水溶液4.42gを入れ、83℃の温度を2時間保持した。
【0091】
その後、125℃での乾燥によりn-ヘプタンを除去することによって、重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を目開き850μmの篩に通過させて、231.3gの重合体粒子を回収した。回収された重合体粒子の中位粒子径は345μmであった。
【0092】
以上の操作を繰り返し、得られた重合体粒子を目開き250μmの篩で分級し、粒子径250~850μmの重合体粒子500g以上を核粒子として準備した。
【0093】
(2)中位粒子径
上述の重合体粒子(吸水性樹脂粒子)の中位粒子径は下記手順により測定した。すなわち、JIS標準篩を上から、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び、受け皿の順に組み合わせた。組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂粒子50gを入れ、ロータップ式振とう器(株式会社飯田製作所製)を用いてJIS Z 8815(1994)に準じて分級した。分級後、各篩上に残った粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径として得た。
【0094】
(3)生理食塩水の保水量
定着部形成前の重合体粒子(核粒子)の保水量を以下の方法によって測定した。
測定対象の粒子2.0±0.002gが収容された綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を、内容積500mLのビーカー内に入れた。粒子が収容された綿袋に、生理食塩水500gを、ママコができないように一度に注ぎ込んだ。続いて綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置することにより、粒子を膨潤させた。30分経過後、綿袋内に形成された膨潤ゲルから、遠心力が167Gとなるように設定した脱水機(株式会社コクサン製、品番:H-122)を用いて1分間かけて脱水した。脱水後の膨潤ゲル及び綿袋の合計質量Wc[g]を測定した。粒子が収容されない綿袋を用いて同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wd[g]を測定した。Wc及びWdを下記式に代入して、粒子の生理食塩水に対する保水量を算出した。
保水量[g/g]=(Wc-Wd)/2.0
【0095】
(4)定着部の形成
内容積1Lの樹脂製ビーカーに、エチレン-アクリル酸ナトリウム共重合体(住友精化株式会社、ザイクセンN)及び水を含み、エチレン-アクリル酸ナトリウム共重合体の濃度が25質量%である水分散エマルジョン40.0g、及びイオン交換水60.0gを投入してこれらを混合し、定着材液を得た。
【0096】
流動層造粒機のコンテナに、上述の重合体粒子(核粒子)500.0gを投入し、コンテナの下部から50℃の温風で送風した。送風で巻き上げられている重合体粒子に向けて、定着材液50.0gを乾燥させながら噴霧した。定着材液を噴霧した後、定着材液が付着した重合体粒子を50℃で30分間加熱することにより、定着材液を乾燥させた。乾燥後、核粒子としての重合体粒子と、重合体粒子の表面に付着した、エチレン-アクリル酸ナトリウム共重合体を含む定着部とを有する複合粒子である製造例1の吸水性樹脂粒子509.5gを得た。以下、定着部を有する吸水性樹脂粒子のことを「被覆吸水性樹脂粒子」ということがある。得られた被覆吸水性樹脂粒子において、核粒子100重量部に対する定着部の量は1.9質量部であった。
【0097】
製造例2
定着材液を、ポリエチレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社、ポリエチレングリコール6,000)20.0gがイオン交換水380.0gに溶解した溶液に変更したこと以外は、製造例1と同様の操作により、被覆吸水性樹脂粒子519.3gを得た。得られた被覆吸水性樹脂粒子において、核粒子100重量部に対する定着部の量は、3.7質量部であった。
【0098】
製造例3
(1)核粒子(重合体粒子)
第2段目の重合後の共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を264.3gに変更したこと以外は製造例1と同様の操作により、230.8gの重合体粒子を得た。重合体粒子の中位粒子径は366μmであった。
この操作を繰り返し、得られた重合体粒子を目開き250μmの篩で分級し、粒子径250~850μmの重合体粒子500g以上を核粒子として準備した。この時点の重合体粒子(核粒子)の保水量を測定した。
【0099】
(2)定着部の形成
得られた重合体粒子の表面上に、エチレン―アクリル酸ナトリウム共重合体(住友精化株式会社、ザイクセンN)の濃度25質量%の水分散エマルジョン100.0gをイオン交換水150.0gで希釈した液を定着材として用いたこと以外は製造例1と同様の操作により定着部を形成して、被覆吸水性樹脂粒子524.5gを得た。得られた被覆吸水性樹脂粒子において、粒子100重量部に対する定着部の量は、4.7質量部であった。
【0100】
製造例4
大王製紙株式会社の子供用おむつ「Goo.N まっさらさら通気パンツ Lサイズ」(2020年購入)の吸収体から、パルプと混合された状態の吸水性樹脂粒子を採取した。エアー噴射によってパルプをできるだけ取り除き、不定形状の未被覆の吸水性樹脂粒子500g以上を得た。得られた吸水性樹脂粒子の中位粒子径は410μmであった。
得られた吸水性樹脂粒子の保水量を測定した。得られた吸水性樹脂粒子を核粒子として用いたこと以外は製造例3と同様の操作により、被覆吸水性樹脂粒子524.2gを得た。得られた被覆吸水性樹脂粒子において、核粒子100重量部に対する定着部の量は、4.6質量部であった。
【0101】
表1に、各製造例において準備された核粒子の保水量、及び、定着部を形成する熱溶融性樹脂が示される。
【0102】
【0103】
2.吸収体の作製
実施例1
12cm×32cmの長方形の主面を有するエアレイド不織布(目付量40g/m2、KNH Enterprise Co. Ltd.製)を第一の保形部材として準備した。第一の保形部材(エアレイド不織布)の表面のうち、その外周から1cmの範囲の部分を除く領域の全体に、製造例1の被覆吸水性樹脂粒子6.0gを均一に散布した。散布された被覆吸水性樹脂粒子の上に、中間不織布として10cm×30cmの長方形の主面を有するエアスルー不織布(目付量45g/m2、広州市錦漢不織布有限公司製)を載せて、第一の保形部材(エアレイド不織布)、被覆吸水性樹脂粒子及び中間不織布(エアスルー不織布)から構成される積層体を形成した。
【0104】
平面プレス機(二名工機株式会社製)の中間プレス板に、シリコーンコーティングされた正方形の剥離面を有する剥離紙(40cm×40cm、リンテック株式会社製、KA-4GシロBD)を、剥離面が上に位置する向きで載置した。剥離紙の剥離面の中心部に、上記積層体を、第一の保形部材(エアレイド不織布)が上側になる向きで置いた。積層体の各長辺の近傍に、厚さ2.0mmで25cm×25cmの主面を有するステンレス板を1枚ずつ置いた。積層体及びステンレス板を覆う剥離紙を更に置き、全体を熱プレスした。熱プレスにおいて、加熱温度は100℃、プレス時間は1秒間、プレス圧力は2.0kgf/cm2であった。
【0105】
12cm×32cmの長方形の主面を有するエアレイド不織布(目付量40g/m2、KNH Enterprise Co. Ltd.製)を、第二の保形部材として準備した。このエアレイド不織布の表面のうち、その外周から1cmの範囲の部分を除く領域の全体に、製造例1の被覆吸水性樹脂粒子6.0gを均一に散布した。散布された被覆吸水性樹脂粒子の上に、上記積層体を、中間不織布(エアスルー不織布)が下側になる向きで、積層体と第二の保形部材の端部の位置が揃うように重ね合わせた。次いで、全体を上記と同様の条件で熱プレスして、第一の保形部材(エアレイド不織布)、吸水層、中間不織布(エアスルー不織布)、吸水層及び第二の保形部材(エアレイド不織布)を有し、これらがこの順で配置されている、吸収体を得た。吸水層中の被覆吸水性樹脂粒子の一部が、熱プレスによって互いに融着していた。
【0106】
実施例2
製造例1の被覆吸水性樹脂粒子6gに代えて、製造例1の被覆吸水性樹脂粒子4.8gと、製造例1において作製した、定着部形成前の重合体粒子(吸水性樹脂粒子)1.2gとの混合物を用いて各吸水層を形成したこと以外は実施例1と同様の操作により、吸収体を作製した。吸水層中の被覆吸水性樹脂粒子の一部が、熱プレスによって互いに融着していた。
【0107】
実施例3
製造例1の被覆吸水性樹脂粒子6gに代えて、製造例2の被覆吸水性樹脂粒子6gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作により、吸収体を作製した。吸水層中の被覆吸水性樹脂粒子の一部が、熱プレスによって互いに融着していた。
【0108】
実施例4
製造例1の被覆吸水性樹脂粒子6gに代えて、製造例3の被覆吸水性樹脂粒子6gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作により、吸収体を作製した。吸水層中の被覆吸水性樹脂粒子の一部が、熱プレスによって互いに融着していた。
【0109】
実施例5
製造例1の被覆吸水性樹脂粒子6gに代えて、製造例4の被覆吸水性樹脂粒子6gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作により、吸収体を作製した。吸水層中の被覆吸水性樹脂粒子の一部が、熱プレスによって互いに融着していた。
【0110】
比較例1
12cm×32cmの長方形の主面を有するエアレイド不織布(目付量40g/m2、KNH Enterprise Co. Ltd.製)を第一の保形部材として準備した。エアレイド不織布の一方の主面全体にわたって、0.2gのホットメルト接着剤(ヘンケルジャパン株式会社、ME-765E)をエアレイド不織布の長辺方向に沿って、スパイラルストライプのパターンで塗布することにより、10mm間隔で並んだ11本の接着剤部を形成した。ホットメルト接着剤の塗布のために、ホットメルト塗工機(株式会社ハリーズ、ポンプ:Marshal150、テーブル:XA-DT、タンク設定温度:150℃、ホース内設定温度:165℃、ガンヘッド設定温度:170℃)を用いた。その後、第一の保形部材(エアレイド不織布)の表面のうち、その外周から1cmの範囲の部分を除く領域の全体に、製造例1で作製した、定着部形成前の重合体粒子(吸水性樹脂粒子)6.0gを均一に散布した。散布された吸水性樹脂粒子の上に、中間不織布として10cm×30cmの長方形の主面を有するエアスルー不織布(目付量45g/m2、広州市錦漢不織布有限公司製)を載せて、第一の保形部材(エアレイド不織布)、吸水性樹脂粒子及び中間不織布(エアスルー不織布)から構成される積層体を形成した。この積層体を実施例1と同様の条件で熱プレスした。
【0111】
12cm×32cmの長方形の主面を有するエアレイド不織布(目付量40g/m2、KNH Enterprise Co. Ltd.製)を、第二の保形部材として準備した。このエアレイド不織布の表面に、上記と同様の操作により接着剤部を形成した。続いて、エアレイド不織布の表面のうち、その外周から1cmの範囲の部分を除く領域の全体に、製造例1で作製した、定着部形成前の重合体粒子(吸水性樹脂粒子)6.0gを均一に散布した。散布された吸水性樹脂粒子の上に、上記積層体を、中間不織布(エアスルー不織布)が下側になる向きで、積層体と第二の保形部材の端部の位置が揃うように重ね合わせた。次いで、全体を製造例1と同様の条件で熱プレスして、第一の保形部材(エアレイド不織布)、吸水層、中間不織布(エアスルー不織布)、吸水層及び第二の保形部材(エアレイド不織布)を有し、これらがこの順で配置されている、吸収体を得た。
【0112】
比較例2
各エアレイド不織布に塗布されるホットメルト接着剤の量を0.1gに変更したこと以外は比較例1と同様の操作により、吸収体を作製した。
【0113】
3.評価
3-1.ケーキング指数
実施例又は比較例で作製した各吸収体の吸水層から、吸水性樹脂粒子を採取した。採取した吸水性樹脂粒子から、目開き850μmの篩を用いた篩分けにより、粒径850μm以上の粒子を取り除いて、ケーキング指数測定用の粉体試料1Aを得た。
【0114】
シリコーンコーティングされた剥離面を有する剥離紙(リンテック株式会社製、KA-4GシロBD)から、直径50mmの円形の下側剥離紙62aを切り出し、これを、内径52mmの円形ステンレス製シャーレ61の中に、剥離面が上側になる向きで敷いた。剥離面の上に、2.0±0.002gの粉体試料1Aを均一に撒布した。散布された粉体試料1Aの上に、下側剥離紙62aと同様の剥離紙である上側剥離紙62bを、その剥離面が粉体試料1Aに接する向きで置いた。上側剥離紙62bの上に、外径50mmで質量20gの円形ステンレス製シャーレ63を載せ、円形ステンレス製シャーレ63に直径45mmの円柱状の質量780gの重り65を載せることにより、粉体試料1A全体に800gの荷重が印加されている、熱処理用加圧体60を準備した。
【0115】
熱処理用加圧体60を、内温80℃に設定した熱風乾燥機の中に入れ、1時間静置した。熱処理用加圧体60を熱風乾燥機から取り出して室温まで放冷した。その後、粉体試料1Aの熱処理物の全量を、剥離紙から注意深く取り外し、下部に受け皿を付し、静置された目開き850μmの篩(内径200mm)に載せた。この時点で篩上に残った熱処理物の質量Wa[g]、及び、篩を通過した熱処理物の質量Wb[g]をそれぞれ測定した。ケーキング指数を下記式から算出した。結果を表2に示す。
ケーキング指数[%]=[Wa/(Wa+Wb)]×100
【0116】
3-2.吸収体からの脱落率
吸収体を、その短辺の中心同士を結ぶ直線に沿って裁断することにより、2つの断片に分割した。裁断にともなって吸収体から脱落した吸水性樹脂粒子の質量We[g]を測定した。吸収体の一方の断片を、裁断部分が下側になる向きで、3cmの高さから5回落下させた。その間に吸収体から脱落した吸水性樹脂粒子を全て回収し、その質量Wf[g]を測定した。もう一方の断片についても同様の操作を行い、吸収体から脱落した吸水性樹脂粒子の質量Wg[g]を測定した。We、Wf及びWgと、吸収体を作製するために用いられた吸水性樹脂粒子の全質量Wh[g]とを下記式に代入して、吸収体からの脱落率[%]を算出した。
吸収体からの脱落率[%]=[(We+Wf+Wg)/Wh]×100
【0117】
3-3.剛性指数
図5は、吸収体の剛性指数を測定する方法を示す模式図である。平坦な台71上に置かれた吸収体51の片方の短辺側の端部を持ち上げて、中央部が折り目を形成しないように湾曲し、且つ、短辺側の両端が重なるように、吸収体51を折り曲げた。その状態で吸収体51の湾曲した部分に長さ40cm、内径0.7cmの円筒形のステンレス棒72を差し込んだ(
図5の(a))。ステンレス棒72を、吸収体51の湾曲した部分側の方向に向けて、0.5cm/秒の速度で滑らせるように移動させた。折り曲げられた吸収体51が、
図5の(b)に示されるように開ききるまでステンレス棒72を移動し、その時点のステンレス棒72の位置から、吸収体51の持ち上げられた部分側の端までの距離L[cm]を測定した。このLと,吸収体の長辺の半分の長さLm[cm]とを下記式に代入して、吸収体の剛性指数を算出した。剛性指数が小さいことは、吸収体がより柔軟であることを意味する。
剛性指数[%]=(L/Lm)×100
【0118】
【0119】
表2に評価結果が示される。互いに融着した吸水性樹脂粒子を含む吸水層を有する各実施例の吸収体は、十分に小さい脱落率を示すとともに、ホットメルト接着剤によって吸水性樹脂粒子が固定された比較例1、2の吸収体と比較して高い柔軟性を有していた。
1…吸水性樹脂粒子、1A…粉体試料、10,10A,10B…吸水層、20a,20b…保形部材、25…中間不織布、50,51…吸収体、60…熱処理用加圧体、61,63…円形ステンレス製シャーレ、100…吸収性物品。