(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182874
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】クロスビーム受け装置
(51)【国際特許分類】
C25C 7/06 20060101AFI20221201BHJP
C25C 1/12 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C25C7/06 301Z
C25C1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090647
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 和己
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋平
【テーマコード(参考)】
4K058
【Fターム(参考)】
4K058AA25
4K058BA21
4K058BB03
4K058DD30
4K058FB06
(57)【要約】
【課題】電気銅板からクロスビームを抜き取る際にクロスビーム受けが破損するなどのトラブルが発生することを防止できるクロスビーム受け装置を提供する。
【解決手段】クロスビーム受け装置5は、クロスビーム受け6と架台7とを備える。クロスビーム受け6は、電気銅板4に取り付けられているクロスビーム3に対し、該クロスビーム3の長手方向に関して、該クロスビーム3の抜き取り側に配置され、かつ、該電気銅板から抜き取られたクロスビームを載せるためのビーム載せ部8を有する。架台7は、クロスビーム受け6を載せる上面、および、前記電気銅板4に取り付けられているクロスビーム3の長手方向を向くように配置された揺動中心軸10を中心としてクロスビーム受け6を揺動可能に支持する揺動支持部11を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気銅板に取り付けられている吊り下げ用のクロスビームを、該電気銅板から該クロスビームの長手方向に抜き取る際に、抜き取ったクロスビームを預けるために用いられるクロスビーム受け装置であって、
クロスビーム受けと、
架台と、
を備え、
前記クロスビーム受けは、前記電気銅板に取り付けられているクロスビームに対し、該クロスビームの長手方向に関して、該クロスビームの抜き取り側に配置され、かつ、該電気銅板から抜き取られたクロスビームを載せるためのビーム載せ部を有し、
前記架台は、前記クロスビーム受けを載せる上面、および、前記電気銅板に取り付けられているクロスビームの長手方向を向くように配置された揺動中心軸を中心として前記クロスビーム受けを揺動可能に支持する揺動支持部を有する、
クロスビーム受け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅電解製錬によって造られた電気銅板を荷造りする工程において、電気銅板から抜き取ったクロスビームを預けるためのクロスビーム受け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銅の製錬法は、乾式法と湿式法とに大別することができる。前者の乾式法は、一般的に、
図5に示すように、銅精鉱から粗銅を作製する乾式製錬工程と、得られた粗銅から電気銅板を作製する電解精製工程とから構成される。
【0003】
具体的には、まず、乾式製錬工程において、浮遊選鉱で得た銅精鉱に対して自熔炉での熔解と、その後段の転炉での酸化とにより粗銅を生成し、これを精製炉で精製して純度99%程度の精製粗銅を得る。この精製粗銅を鋳造機に流し込んで銅電解精製用の陽極板(以下、「アノード」と称する)を鋳造する。
【0004】
次に、電解精製工程において、上記の鋳造で得た複数のアノードと、別途用意した複数の陰極板(以下、「カソード」と称する)とを、銅電解液を入れた電解槽内に互いに一定間隔をあけて1枚ずつ交互に配置する。そして、これらアノードおよびカソードに通電することで電解を行う。すなわち、アノードから電解液中に銅イオンを溶出させ、これをカソードに電着させることで、銅品位99.99%以上の電気銅板を製造する。
【0005】
電解精製工程においてカソードに使用する種板は、ステンレスなどの母板をカソードにして上記と同様の電解を行い、銅が母板に薄く電着したところで、この電着物を母板から剥ぎ取ったものである。この種板を電解精製工程で使用するカソードとするために、
図6に模式的に示すように、当該種板1に対し、同様の種板を裁断してループ状に形成して得たリボン2を用いて、吊り下げ用の金属製のクロスビーム3を取り付ける。具体的には、種板1の上端縁部の水平方向に離隔した2箇所にリボン2を固定し、かつ、これらのリボン2の内側にクロスビーム3を通すことで、種板1に対しクロスビーム3を取り付ける。クロスビーム3は、吊り下げ用のハンガーとして機能するだけでなく、カソードに通電する際の導体としても機能する。電解精製工程で製造された電気銅板4は、種板1の表面に銅が電着して、その厚みが種板1よりも厚くなった銅板である。
【0006】
電解精製工程で製造された電気銅板4は、クレーンによって電解槽から引き揚げられ、洗浄工程に送られ、洗浄装置によって、表面に残存する電解液の回収および製品の汚染防止のために、酸あるいは水などの洗浄液により洗浄される。
【0007】
洗浄後の電気銅板4は、結束工程に送られ、所定枚数にまとめて結束され、出荷を待つ。
【0008】
洗浄工程および結束工程は、一連の工程として連続して行われる場合が多い。この際、操業効率を向上させ、後工程の結束工程において電気銅板4を結束しやすくするために、前工程の洗浄工程において電気銅板4を板厚方向に整列させて洗浄装置に装入し、洗浄後に傾転させて積載し、荷山にするのが一般的である。なお、電気銅板4の傾転には、特開2001-234381号公報に記載されているような傾転装置、その他の任意の傾転装置が用いられる。
【0009】
いずれにしても、クロスビーム3は、電気銅板4が結束される前に、該電気銅板4から該クロスビーム3の長手方向に抜き取られ、具体的には、リボン2の内側から該クロスビーム3の長手方向に抜き取られる。そして、抜き取られたクロスビーム3は、カソードを製造する工程に送られ、電解精製工程にて再利用される(たとえば、特開昭61-69612号公報参照)。結束された電気銅板4は、リボン2が取り付けられたまま出荷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001-234381号公報
【特許文献2】特開昭61-69612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
洗浄工程および結束工程を、一連の工程として連続して行う場合、たとえば、洗浄後の電気銅板4を1枚あるいは任意の枚数ずつテーブル上で傾転させ、ビーム抜き取り装置を用いて、そのクロスビーム3を電気銅板4から該クロスビーム3の長手方向に抜き取り、テーブルを所定の高さまで下げ、次の電気銅板4をテーブル上で傾転させて、そのビーム抜き取りを行うという操作を、所定の荷山の枚数に達するまで繰り返し行われる。あるいは、特開2001-234381号公報に記載されているように、複数枚の電気銅板4を傾けた状態で、電気銅板4からビーム抜き取り装置によって同時にビームを抜き取ってから、これらの電気銅板4を傾転させることが行われる。
【0012】
いずれの場合でも、電気銅板4から抜き取ったクロスビーム3は、
図7に示すようなクロスビーム受け装置100に預ける。
【0013】
なお、
図7における上下方向は、電気銅板4からクロスビーム3を抜き取る際の上下方向に一致する。また、クロスビーム受け装置100に関する以下の説明中、
図7における左右方向を第1水平方向とし、
図7における表裏方向を第2水平方向とする。電気銅板4からクロスビーム3を抜き取る際に、第2水平方向は、電気銅板4に取り付けられているクロスビーム3の抜き取り方向、すなわち、実質的にテーブル上で傾転させた状態の電気銅板4に取り付けられているクロスビーム3の長手方向に一致する。
【0014】
クロスビーム受け装置100は、クロスビーム受け101と、架台102とを備える。クロスビーム受け101は、テーブル上で傾転させた状態の電気銅板4に取り付けられているクロスビーム3に対し、該クロスビーム3の長手方向である第2水平方向に関して、該クロスビーム3の抜き取り側に配置される。クロスビーム受け101は、該電気銅板4から抜き取られたクロスビーム3を載せるためのビーム載せ部103を有する。架台102は、クロスビーム受け101を載せる上面104を有する。
【0015】
図示の例では、クロスビーム受け101の第1水平方向に関する基半部(
図7における右側半部)105は、第1水平方向に伸長しており、その下面106が、架台102の上面104に載せられ、かつ、溶接により接合されている。クロスビーム受け101の第1水平方向に関する先半部(
図7における左側半部)107は、第1水平方向に関して先端側(
図7における左側)に向かうにしたがって上側に向かう方向に傾斜している。クロスビーム受け101のビーム載せ部103は、先半部107の先端部である上端部に備えられており、上側および第2水平方向の両側に開口する凹形状を有する。架台102は、図示しないチェーンコンベアを構成するチェーンに取り付けられている。
【0016】
電気銅板4をテーブル上で傾転させ、クロスビーム3を電気銅板4から該クロスビーム3の長手方向に抜き取る。そして、抜き取ったクロスビーム3を下方に落下させて、クロスビーム受け101のビーム載せ部103に収容する。その後、前記チェーンコンベアを駆動し、前記チェーンを進行させることによって、クロスビーム受け装置5を下方に移動させる。そして、該下方に用意しておいた台車などの搬送装置の上に、クロスビーム3の中間部または両側の端部を載せることで、クロスビーム3を、クロスビーム受け装置100から搬送装置の上に移し替える。そして、この搬送装置の上に移したクロスビーム3を、該搬送装置により、カソードを製造する場所やクロスビーム3の一時保管場所などに搬送する。
【0017】
ただし、上述のように電気銅板4からクロスビーム3を抜き取る際に、クロスビーム3がビーム載せ部103に載らずに、クロスビーム受け101の下、すなわちクロスビーム受け101と架台102との間に存在するくさび状の隙間108に入り込む可能性がある。このようにクロスビーム3がクロスビーム受け101の下に入り込んだ場合には、クロスビーム3が抜けなくなったり、クロスビーム3がクロスビーム受け101を突き上げることで前記溶接が外れたり、クロスビーム受け101が破損したりするトラブルが発生することが想定される。
【0018】
これらのトラブルが発生した場合には、修理のために設備を止めなければならず、その結果、電気銅板を生産するための通電時間が短くなり、電気銅板の減産を招く要因となる。そのため、クロスビーム3がクロスビーム受け101の下の隙間108に入ったとしても、クロスビーム受け101が破損するなどのトラブルが発生しないようにする必要がある。
【0019】
本発明は、電気銅板からクロスビームを引き抜く際に、クロスビーム受けが破損するなどのトラブルが発生することを防止できるクロスビーム受け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様のクロスビーム受け装置は、電気銅板に取り付けられている吊り下げ用のクロスビームを、該電気銅板から該クロスビームの長手方向に抜き取る際に、抜き取られたクロスビームを預けるために用いられる。該クロスビーム受け装置は、クロスビーム受けと、架台とを備える。なお、前記架台は、たとえば、チェーンコンベアを構成するチェーンに固定される。
【0021】
前記クロスビーム受けは、前記電気銅板に取り付けられているクロスビームに対し、該クロスビームの長手方向に関して、該クロスビームの抜き取り側に配置され、かつ、該電気銅板から抜き取られたクロスビームを載せるためのビーム載せ部を有する。
【0022】
前記架台は、前記クロスビーム受けを載せる上面、および、前記電気銅板に取り付けられているクロスビームの長手方向を向くように配置された揺動中心軸を中心として前記クロスビーム受けを揺動可能に支持する揺動支持部を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様のクロスビーム受け装置によれば、電気銅板からクロスビームを抜き取る際にクロスビーム受けが破損するなどのトラブルが発生することを防止できる。このため、設備を長時間停止させずに効率よく稼働させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の第1例のクロスビーム受け装置を使用する、電気銅板の荷造り工程のラインを示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1例のクロスビーム受け装置を水平方向から見た模式図である。
【
図3】
図3は、第1例のクロスビーム受け装置を、クロスビーム受けが揺動中心軸を中心として上方に揺動した状態で示す、
図2と同様の図である。
【
図4】
図4は、第1例のクロスビーム受け装置をチェーンコンベアに取り付けた状態で水平方向から見た模式図である。
【
図5】
図5は、銅精錬プロセスの1例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、カソード(あるいは電気銅板)を模式的に示す正面図である。
【
図7】
図7は、本発明に関連する参考例のクロスビーム受け装置を水平方向から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、
図1~
図4を用いて説明する。
【0026】
本例は、たとえば前述したような電解精製工程で製造された電気銅板4(
図6参照)を荷造り工程に送り、該工程の途中で電気銅板4から抜き取ったクロスビーム3を預ける、クロスビーム受け装置5の一態様に関する例である。
【0027】
図1は、本例のクロスビーム受け装置5を使用する、電気銅板4の荷造り工程(洗浄工程SW、結束工程SBを含む)のラインを示す模式図である。ただし、本発明を実施する場合、荷造り工程のラインの具体的な構成は、本例の構成に限定されず、各種の構成を採用することができる。
【0028】
本例では、電解精製工程で製造された電気銅板4は、クレーンCRによって電解槽から引き揚げられ、洗浄工程SWに送られ、洗浄装置によって、表面に残存する電解液の回収および製品の汚染防止のために、酸あるいは水などの洗浄液により洗浄される。洗浄後の電気銅板4は、クロスビーム3を抜き取られてから、結束工程SBに送られ、所定枚数にまとめて結束され、製品置場SAに送られる。結束された電気銅板4は、リボン2が取り付けられたまま出荷される。
【0029】
本例では、洗浄工程SWおよび結束工程SBは、一連の工程として連続して行われる。この際、操業効率を向上させ、後工程の結束工程において電気銅板4を結束しやすくするために、前工程の洗浄工程において電気銅板4を板厚方向に整列させて電気銅荷造機PM内の洗浄装置に装入し、洗浄後にテーブルTB上で傾転させて積載し、荷山にする。
【0030】
より具体的には、本例では、電気銅荷造機PMにおいて、洗浄後の電気銅板4をテーブルTB上で傾転装置により傾転させ、たとえば、クロスビーム3を長手方向に押し出すシリンダー、および/または、クロスビーム3との摩擦によりクロスビーム3を長手方向に搬送するローラーにより構成される抜き取り装置を用いて、クロスビーム3を電気銅板4から抜き取る。具体的には、クロスビーム3をリボン2の内側から、該クロスビーム3の長手方向に抜き取る。その後、テーブルTBを所定の高さまで下げ、次の電気銅板4をテーブルTB上で傾転させて、同様にクロスビーム3の抜き取りを行うという操作を、所定の荷山の枚数に達するまで繰り返し行う。
【0031】
電気銅板4から抜き取ったクロスビーム3は、
図2に示すようなクロスビーム受け装置5に預けられる。クロスビーム受け装置5は、使用時において、後述するようにチェーンコンベア16を構成するチェーン17に取り付けられる。クロスビーム受け装置5は、電気銅板4からクロスビーム3を抜き取る際には、電気銅荷造機PMのテーブルTB上で傾転させた電気銅板4に対し、該クロスビーム3の長手方向に関して、該クロスビーム3の抜き取り側(
図1における上側)に配置される。そして、電気銅板4から抜き取ったクロスビーム3は、クロスビーム受け装置5に預けられた後、該クロスビーム受け装置5から台車などの搬送装置に移し替えられ、該搬送装置によって、カソードを製造する場所やクロスビーム3の一時保管場所などに搬送される。
【0032】
なお、
図2における上下方向は、電気銅板4からクロスビーム3を抜き取る際、より具体的には、電気銅板4から抜き取ったクロスビーム3をクロスビーム受け装置5に預ける際の上下方向に一致する。また、クロスビーム受け装置5に関する以下の説明中、
図2における左右方向を第1水平方向とし、
図2における表裏方向を第2水平方向とする。電気銅板4からクロスビーム3を抜き取る際に、第2水平方向は、電気銅板4に取り付けられているクロスビーム3の抜き取り方向、すなわち、実質的にテーブルTB上で傾転させた状態の電気銅板4に取り付けられているクロスビーム3の長手方向に一致する。
図2は、クロスビーム受け装置5を、第2水平方向に関して電気銅荷造機PMの側から見た模式図である。
【0033】
クロスビーム受け装置5は、クロスビーム受け6と、架台7とを備える。
【0034】
クロスビーム受け6は、テーブルTB上で傾転させた状態の電気銅板4に取り付けられているクロスビーム3に対し、該クロスビーム3の長手方向、すなわち第2水平方向に関して、該クロスビーム3の抜き取り側(
図1における上側)に配置されている。クロスビーム受け6は、テーブルTB上で傾転させた状態の電気銅板4から抜き取られたクロスビーム3を載せるためのビーム載せ部8を有する。クロスビーム受け6は、ビーム載せ部8にクロスビーム3を載せる際に加わる下向きの成分を持つ力(衝撃)によって変形しないようにできれば、適宜の材質(金属、合成樹脂など)を採用することができる。また、クロスビーム受け6の形状は、クロスビーム3を支持できる剛性を有している限り、任意の厚さの板状体、その他の任意のアーム形状を採ることができる。
【0035】
架台7は、クロスビーム受け6を載せる上面9、および、電気銅板4に取り付けられているクロスビーム3の抜き取り方向、すなわち、実質的にテーブルTB上で傾転させた状態の電気銅板4に取り付けられているクロスビーム3の長手方向を向くように配置された揺動中心軸10を中心としてクロスビーム受け6を揺動可能に支持する揺動支持部11を有する。架台7は、クロスビーム受け6のビーム載せ部8にクロスビーム3を載せる際に加わる下向きの成分を持つ力(衝撃)を上面9により支えることができれば、適宜の材質(金属、合成樹脂など)を採用することができる。また、架台7の形状も、任意の厚さの板状体、矩形体、筺体、その他の任意の形状を採ることができる。
【0036】
図示の例では、クロスビーム受け6の第1水平方向に関する基半部(
図2における右側半部)12は、第1水平方向に伸長しており、その下面13が、架台7の上面9に支持されている。クロスビーム受け6の第1水平方向に関する先半部(
図2における左側半部)14は、第1水平方向に関して先端側(
図2における左側)に向かうにしたがって上側に向かう方向に傾斜している。クロスビーム受け6のビーム載せ部8は、先半部14の先端部である上端部に備えられており、上側および第2水平方向の両側に開口する凹形状を有する。
【0037】
架台7の揺動支持部11は、クロスビーム受け6の基半部12の基端部(
図2における右端部)を、揺動中心軸10を中心とする揺動が可能となるように支持している。このため、本例では、
図2に示すように、クロスビーム受け6の下面13を架台7の上面9に載せた状態、すなわち、クロスビーム受け6を架台7の上面9により支持した状態から、たとえば
図3に示すように、揺動中心軸10を中心としてクロスビーム受け6を上方に揺動させることで、クロスビーム受け6の下面13を架台7の上面9から離隔させることができる。
【0038】
本例では、クロスビーム受け装置5は、
図1および
図4に示すように、チェーンコンベア16を構成するチェーン17に取り付けられている。このために、具体的には、クロスビーム受け装置5を構成する架台7の図中左側の端部が、チェーン17に固定されている。
【0039】
さらに、本例では、電気銅板4から抜き取ったクロスビーム3を受け取るために、2個のクロスビーム受け装置5を用いる。このために、本例では、チェーンコンベア16を構成する、第2水平方向に離隔した2列のチェーン17のそれぞれの進行方向同一箇所に、クロスビーム受け装置5を1個ずつ取り付けている。2個のクロスビーム受け装置5のそれぞれの第2水平方向の幅寸法は、2列のチェーン17のそれぞれの第2水平方向の幅寸法と同等の大きさである。本例では、電気銅板4から抜き取ったクロスビーム3の両側の端部を、2個のクロスビーム受け装置5のビーム載せ部8に載せるようにしている。
【0040】
ただし、本発明を実施する場合には、電気銅板4から抜き取ったクロスビーム3を、1個のクロスビーム受け装置5を用いて受け取るようにすることもできる。この場合には、たとえば、1個のクロスビーム受け装置5の第2水平方向の幅寸法を大きくして、該クロスビーム受け装置5を、2列のチェーン17のそれぞれの進行方向同一箇所に掛け渡すように取り付ける。そして、電気銅板4から抜き取ったクロスビーム3を、該クロスビーム受け装置5のビーム載せ部8に載せるようにする。
【0041】
いずれにしても、本例では、電気銅荷造機PMにおいて、洗浄後の電気銅板4をテーブルTB上で傾転させ、クロスビーム3を長手方向へ電気銅板4から抜き取る。そして、抜き取ったクロスビーム3を、
図4に示すように、クロスビーム受け6のビーム載せ部8の上方から落下させる。この際に、クロスビーム3は、ビーム載せ部8に向けてダイレクトに落下するか、あるいは、チェーン17にぶつかってチェーン17の横を滑り降りながらビーム載せ部8に向けて落下する。そして、このように落下させたクロスビーム3を、ビーム載せ部8に載せる(収容する)。なお、ビーム載せ部8にクロスビーム3を載せる際に加わる衝撃は、クロスビーム3の落ちる向きに対応し、真上から真下に向かう衝撃か、
図4においてクロスビーム受け6部分に矢印で示すように、左上から右下に向かう衝撃となる。
【0042】
そして、この状態で、チェーンコンベア16を駆動する、すなわち2列のチェーン17のそれぞれを進行させることによって、クロスビーム受け装置5を、
図4に示す位置よりも下方に移動させる。そして、該下方に用意しておいた台車などの搬送装置の上に、クロスビーム3の中間部(=第2水平方向に関して2個のクロスビーム受け装置5の間に位置する部分)または両側の端部(=第2水平方向に関して2個のクロスビーム受け装置5よりも外側に位置する部分)を載せることで、クロスビーム3を、クロスビーム受け装置5から搬送装置の上に移し替える。そして、この搬送装置の上に移したクロスビーム3を、該搬送装置により、カソードを製造する場所やクロスビーム3の一時保管場所などに搬送する。なお、クロスビーム3を前記搬送装置の上に移し替えた後のクロスビーム受け装置5は、チェーン17の進行(循環移動)によって
図4に示す位置に戻され、別の電気銅板4から抜き取られたクロスビーム3を受け取るために用いられる。なお、搬送装置として台車を用いてクロスビーム3を上記の各場所に搬送する作業は、該台車の上に複数のクロスビーム3が移し替えられてから行うこともできる。また、台車などの搬送装置を、クロスビーム受け装置5のビーム載せ部8にクロスビーム3が落下して衝突する位置よりやや下方に配置することにより、該搬送装置に、クロスビーム3の衝突による衝撃の一部を負担させるように構成することも可能である。
【0043】
本例では、上述のように電気銅板4からクロスビーム3を抜き取る際に、クロスビーム3がビーム載せ部8に載らずに、たとえばビーム載せ部8とチェーン17との間を通じて、クロスビーム受け6の下、すなわちクロスビーム受け6と架台7との間に存在するくさび状の隙間15に入り込む可能性がある。ただし、本例では、このようにクロスビーム3がクロスビーム受け6の下に入り込み、クロスビーム3からクロスビーム受け6に上向きの力が加わった場合でも、この上向きの力を逃がすように揺動中心軸10を中心としてクロスビーム受け6を上方に揺動させることができる。このため、クロスビーム3が抜けなくなったり、クロスビーム受け6が破損したりするトラブルの発生を防止することができる。一方、本例では、電気銅板4から抜き取ったクロスビーム3がビーム載せ部8に載った場合、すなわち、クロスビーム3からクロスビーム受け6に下向きの力が加わった場合には、揺動中心軸10を中心としてクロスビーム受け6が下方に揺動しないように、架台7の上面9によってクロスビーム受け6を下方からしっかりと支えることができる。
【0044】
本例では、電気銅板4からクロスビーム3を抜き取る際にクロスビーム受け6が破損するなどのトラブルが発生することを防止できるため、設備を長時間停止させずに効率よく稼働させることができる。
【実施例0045】
図2に示した本発明の実施の形態の第1例のクロスビーム受け装置5(以下、「実施例」とする)と、
図7に示した参考例のクロスビーム受け装置100(以下、「参考例」とする)とのそれぞれについて、操業を6ヶ月行い、設備トラブルの発生回数などについて調査した。
【0046】
参考例については、操業中、月平均2回の頻度でクロスビーム3がクロスビーム受け101の下に入り込むトラブルが発生し、毎回、クロスビーム受け101を架台102に固定するための溶接が外れた。そして、この溶接をし直すのに、毎回、平均1時間程度の時間を要し、その間、設備を停止せざるを得なかった(下記の表1参照)。これに対し、実施例については、参考例と同じく、操業中、月平均2回の頻度でクロスビーム3がクロスビーム受け6の下に入り込むトラブルが発生したものの、うまく力を上方に逃がせたため、クロスビーム受け6の破損などのトラブルは発生しなかった(下記の表1参照)。
【0047】
【0048】
以上のことから、クロスビーム受け装置の構造を、参考例の構造から実施例の構造に変更することで、破損などのトラブルが防止され、該トラブルに起因する設備稼働率低下を防止することができたため、本発明の効果が極めて大きいことがわかる。