(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182881
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】金属封鎖剤を用いた残留金属低減方法
(51)【国際特許分類】
C07B 63/00 20060101AFI20221201BHJP
B01J 41/14 20060101ALI20221201BHJP
B01J 47/011 20170101ALI20221201BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20221201BHJP
B01J 41/04 20170101ALI20221201BHJP
C07B 63/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C07B63/00 F
B01J41/14
B01J47/011
B01D61/14 500
B01J41/04
C07B63/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090654
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 悠太朗
【テーマコード(参考)】
4D006
4H006
【Fターム(参考)】
4D006GA07
4D006KA03
4D006KD03
4D006MA21
4D006MC23
4D006MC30
4D006MC48
4D006MC55
4D006PA01
4D006PB13
4D006PC01
4H006AA02
4H006AD17
4H006AD19
4H006AD33
(57)【要約】
【課題】本発明は、溶媒への溶解性の高い金属封鎖剤を使用し化合物に残留する金属を効率よく除去できる半導体材料化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】有機溶媒と、金属と錯体形成可能な有機化合物とを含む被処理物を、金属封鎖剤とアニオン交換樹脂で処理する第一工程と、該処理した溶液をフィルターでろ過する第二工程とを含むプロセスにより、カチオン交換樹脂で低減できなかった残留金属を低減でき、半導体等の電子材料に求められる残留金属レベルに低減、管理することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒と、金属と錯体形成可能な有機化合物とを含む被処理物を、金属封鎖剤とアニオン交換樹脂とで処理する第一工程を含む、金属不純物が除去された半導体材料化合物の製造方法。
【請求項2】
前記金属封鎖剤が、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、ホスホニル基、ホスホン酸基、スルホニル基、スルホン酸基及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも2つ以上の基を有する化合物である請求項1記載の半導体材料化合物の製造方法。
【請求項3】
前記金属封鎖剤が分子内に下記式(1)および式(2)で表される部分構造を少なくとも1組以上有する化合物である請求項1または請求項2記載の半導体材料化合物の製造方法。
【化1】
(式(1)中、X
1、X
2はそれぞれ独立してヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシ基又はホスホン酸基を表し、X
3は炭素原子又は窒素原子を表し、*は結合手を表す。n,mはそれぞれ独立して0乃至2の整数であり、X
3が窒素原子と表すとき*は1つしか存在しない。
式(2)中、Y
1はカルボキシ基、ホスホン酸基又はスルホン酸基を表し、*は結合手を表す。)
【請求項4】
前記式(1)中のX1およびX2がホスホン酸基を表す、請求項3記載の半導体材料化合物の製造方法。
【請求項5】
前記金属封鎖剤がアルキルホスホン酸である請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の半導体材料化合物の製造方法。
【請求項6】
前記金属と錯体形成可能な有機化合物が、分子内に少なくとも2つ以上のヒドロキシ基又はアルコキシル基を有する炭素数6~40の芳香族化合物である請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の半導体材料化合物の製造方法。
【請求項7】
前記金属と錯体形成可能な有機化合物が下記式(4)で表される化合物、もしくは少なくとも2つの式(4)で表される構造がそのベンゼン環上置換されていない炭素同士がスペーサーを介してまたは単結合により連結されてなる化合物である請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の半導体材料化合物の製造方法。
【化2】
(式(4)中、ベンゼン環は、ハロゲン原子、フェニル基、炭素数1乃至10のアルキル基に置換されてもよい。R
11、R
12は水素原子又は炭素数1乃至10のアルキル基を表す。n3は1~4の整数であり、n4は1~(5-n3)の整数であり、(n3+n4)は2~5の整数を示す。)
【請求項8】
前記第一工程が前記被処理物を金属封鎖剤で処理した後にアニオン交換樹脂で処理する工程である請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の半導体材料化合物の製造方法。
【請求項9】
前記第一工程中、アニオン交換樹脂の処理は、回分式又はカラム流通式で行う、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の半導体材料化合物の製造方法。
【請求項10】
除去される金属が2価または3価の金属である請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の半導体材料化合物の製造方法。
【請求項11】
金属不純物が除去された半導体材料化合物におけるAl、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu及びSnの濃度がそれぞれ10ppb以下である請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の半導体材料化合物の製造方法。
【請求項12】
前記第一工程で得られた処理液をフィルターにてろ過する第二工程をさらに含む、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の半導体材料化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料化合物、特に半導体製造に使用される材料化合物に残留される金属を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体をはじめとする電子材料分野で使用するモノマーやポリマーはppbオーダーの残留金属低減、管理が必要であり、残留金属低減方法が種々検討されている。一般的に残留金属種はカチオン構造(例:Fe2+、Fe3+、Cr3+、Al3+、Sn2+、Ni2+、Cu2+等)であるため、カチオン交換樹脂によるイオン交換処理により低減される。また樹脂にキレート構造を担持させたキレート樹脂による金属低減方法も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、原料(モノマーやポリマー)の残留金属を低減するために、カチオン交換樹脂やキレート交換樹脂がよく使用される。しかし、原料にヘテロ原子を多く持ち、金属が既に原料と配位構造を形成している場合、物理的接触機構のカチオン交換樹脂やキレート樹脂では、配位構造から金属種を簡便に引き剥がせない。そのため、既存の技術での金属低減は困難であった。またカチオン交換樹脂との接触により、対象モノマーやポリマーの構造が変化する場合、カチオン交換樹脂を使用できなかった。
本発明は、溶媒への溶解性の高い金属封鎖剤を使用し化合物に残留する金属を効率よく除去できる半導体材料化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは鋭意検討した結果、アニオン交換樹脂と金属封鎖剤を併用して残留金属を低減し、その後フィルターでの濾過によって更に残留金属を低減する方法を見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は以下を包含する。
1.有機溶媒と、金属と錯体形成可能な有機化合物とを含む被処理物を、金属封鎖剤とアニオン交換樹脂とで処理する第一工程を含む、金属不純物が除去された半導体材料化合物の製造方法に関する。
2.前記金属封鎖剤が、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、ホスホニル基、ホスホン酸基、スルホニル基、スルホン酸基及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも2つ以上の基を有する化合物である上記1に記載の半導体材料化合物の製造方法に関する。
3.前記金属封鎖剤が分子内に下記式(1)および式(2)で表される部分構造を少なくとも1組以上有する化合物である上記1または上記2に記載の半導体材料化合物の製造方法に関する。
【化1】
(式(1)中、X
1、X
2はそれぞれ独立してヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシ基又はホスホン酸基を表し、X
3は炭素原子又は窒素原子を表し、*は結合手を表す。n,mはそれぞれ独立して0乃至2の整数であり、X
3が窒素原子と表すとき*は1つしか存在しない。
式(2)中、Y
1はカルボキシ基、ホスホン酸基又はスルホン酸基を表し、*は結合手を表す。)
4.前記式(1)中のX
1およびX
2がホスホン酸基を表す、上記3に記載の半導体材料化合物の製造方法に関する。
5.前記金属封鎖剤がアルキルホスホン酸である上記1乃至上記4のいずれか1つに記載の半導体材料化合物の製造方法に関する。
6.前記金属と錯体形成可能な有機化合物が、分子内に少なくとも2つ以上のヒドロキシ基又はアルコキシル基を有する炭素数6~40の芳香族化合物である上記1乃至上記5のいずれか1つに記載の半導体材料化合物の製造方法に関する。
7.前記金属と錯体形成可能な有機化合物が下記式(4)で表される化合物、もしくは少なくとも2つ式(4)ので表される構造がそのベンゼン環上置換されていない炭素同士がスペーサーを介してまたは単結合により連結されてなる化合物である上記1乃至上記6のいずれか1つに記載の半導体材料化合物の製造方法に関する。
【化2】
(式(4)中、ベンゼン環は、ハロゲン原子、フェニル基、炭素数1乃至10のアルキル基に置換されてもよい。R
11、R
12は水素原子又は炭素数1乃至10のアルキル基を表す。n3は1~4の整数であり、n4は1~(5-n3)の整数であり、(n3+n4)は2~5の整数を示す。)
8.前記第一工程が前記被処理物を金属封鎖剤で処理した後にアニオン交換樹脂で処理する工程である上記1乃至上記7のいずれか1つに記載の半導体材料化合物の製造方法に関する。
9.前記第一工程中、アニオン交換樹脂の処理は、回分式又はカラム流通式で行う、上記1乃至上記8のいずれか1つに記載の半導体材料化合物の製造方法に関する。
10.除去される金属が2価または3価の金属である上記1乃至上記9のいずれか1つに記載の半導体材料化合物の製造方法に関する。
11.金属不純物が除去された半導体材料化合物におけるAl、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu及びSnの濃度がそれぞれ10ppb以下である上記1乃至上記10のいずれか1つに記載の半導体材料化合物の製造方法に関する。
12.前記第一工程で得られた処理液をフィルターにてろ過する第二工程をさらに含む、上記1乃至上記11のいずれか1つに記載の半導体材料化合物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、半導体材料化合物の製造において、カチオン交換樹脂で低減できなかった残留金属を低減でき、該化合物中の残留金属レベルを半導体等の電子材料に求められる残留金属レベルに低減、管理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、有機溶媒と、金属と錯体形成可能な有機化合物とを含む被処理物を、金属封鎖剤とアニオン交換樹脂とで処理する第一工程を含む、金属不純物が除去された半導体材料化合物の製造方法である。
【0008】
[金属封鎖剤]
本発明に用いられる金属封鎖剤としては金属と錯体を形成する化合物であれば特に限定されいが、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、ホスホニル基、ホスホン酸基、スルホニル基、スルホン酸基及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも2つ以上の基を有する化合物が挙げられる。
【0009】
また、分子内に下記式(1)および式(2)で表される部分構造を少なくとも1組以上有する上記金属封鎖剤が挙げられる。
【化3】
式(1)中、X
1、X
2はそれぞれ独立してヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシ基又はホスホン酸基を表し、X
3は炭素原子又は窒素原子を表し、*は結合手を表す。n,mはそれぞれ独立して0乃至2の整数であり、X
3が窒素原子を表すとき*は1つしか存在しない。
式(2)中、Y
1はカルボキシ基、ホスホン酸基又はスルホン酸基を表し、*は結合手を表す。
【0010】
より具体的には、アルキルホスホン酸やアルキルカルボン酸が挙げられる。
【0011】
アルキルホスホン酸としては、アルキルホスホン酸又はその塩が挙げられる。アルキルホスホン酸のアルキル基は、ヒドロキシ基やアミノ基によって置換された構造を有することができる。また、二量体化したジ(アルキルホスホン酸)又はその塩や、三量体化したトリ(アルキルホスホン酸)又はその塩を用いることができる。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
【0012】
上記アルキルホスホン酸としては、例えば1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、N,N,N’,N’-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、メチレンジホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、及びこれらの塩が挙げられる。
【0013】
また、アルキルカルボン酸としては、例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、NTA(ニトリロトリ酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、HEDTA(N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸)、TTHA(トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-六酢酸)、PDTA(1,3-プロパンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸)、DPTA-OH(1
,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸)、HIDA(N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸)、DHEG(N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、GEDTA(グリコールエーテルジアミン四酢酸)、CMGA(L‐グルタミン酸二酢酸四ナトリウム)、EDDS(エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸)、及びこれらの塩が挙げられる。下記式(5-1)~式(5-12)が上記アルキルカルボン酸化学式になる。
【0014】
【0015】
カルボン酸である場合は、好ましくは、式(1)中のX1およびX2がホスホン酸基であり、金属封鎖剤がアルキルホスホン酸である。
【0016】
モノマーを溶解させた溶液中に金属封鎖剤を1乃至50000ppm、又は10乃至10000ppm、又は100乃至5000ppm程度の濃度で含有した混合液を反応系内に添加することができる。
【0017】
[金属と錯体形成可能な有機化合物](被精製化合物)
本発明における金属と錯体形成可能な有機化合物(被精製化合物ともいう)は分子内に
複数のヘテロ原子を有し金属と錯体を形成することができる有機化合物である。
【0018】
このような化合物は低分子化合物や高分子化合物が挙げられるが、精製工程において溶媒へ溶解させる観点から低分子化合物であることが好ましい。低分子化合物とは分子量が1000以下のものをいう。
【0019】
このような化合物としては、例えばヒダントイン化合物、バルビツール酸化合物、イソシアヌル酸化合物などの含窒素化合物、アルコキシケイ素化合物、分子内にアルコキシル基またはアルコキシメチル基を有する芳香族化合物などが挙げられる。これらの中でも分子内に少なくとも2つ以上のヒドロキシ基、又はアルコキシル基を有する炭素数6~40の芳香族化合物が好ましい。
【0020】
ヒダントイン化合物としては、例えば、ヒダントイン、5,5-ジフェニルヒダントイン、5,5-ジメチルヒダントイン、5-エチルヒダントイン、5-ベンジルヒダントイン、5-エチル-5-フェニルヒダントイン、5-メチルヒダントイン、5,5-テトラメチレンヒダントイン、5,5-ペンタメチレンヒダントイン、5-(4-ヒドロキシベンジル)-ヒダントイン、5-フェニルヒダントイン、5-ヒドロキシメチルヒダントイン、および5-(2-シアノエチル)ヒダントインが挙げられる。
また、1,3-ジグリシジルヒダントイン、1,3-ジグリシジル-5,5-ジフェニルヒダントイン、1,3-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジグリシジル-5-メチルヒダントイン、1,3-ジグリシジル-5-エチル-5-フェニルヒダントイン、1,3-ジグリシジル-5-ベンジルヒダントイン、1,3-ジグリシジル-5-ヒダントイン酢酸、1,3-ジグリシジル-5-エチル-5-メチルヒダントイン、1,3-ジグリシジル-5-エチルヒダントイン、1,3-ジグリシジル-5,5-テトラメチレンヒダントイン、1,3-ジグリシジル-5,5-ペンタメチレンヒダントイン、1,3-ジグリシジル-5-(4-ヒドロキシベンジル)ヒダントイン、1,3-ジグリシジル-5-フェニルヒダントイン、1,3-ジグリシジル-5-ヒドロキシメチル-ヒダントイン、および1,3-ジグリシジル-5-(2-シアノエチル)ヒダントインが挙げられる。
【0021】
バルビツール酸化合物としては、例えば、バルビツール酸、5,5-ジメチルバルビツール酸、5,5-ジエチルバルビツール酸(別称:バルビタール)、5-メチル-5-エチルバルビツール酸、5,5-ジアリルバルビツール酸(別称:アロバルビタール)、5-エチル-5-フェニルバルビツール酸(別称:フェノバルビタール)、5-エチル-5-イソペンチルバルビツール酸(別称:アモバルビタール)、5,5-ジアリルマロニルウレア、5-エチル-5-イソアミルバルビツール酸、5-アリル-5-イソブチルバルビツール酸、5-アリル-5-イソプロピルバルビツール酸、5-β-ブロモアリル-5-sec-ブチルバルビツール酸、5-エチル-5-(1-メチル-1-ブテニル)バルビツール酸、5-イソプロピル-5-β-ブロモアリルバルビツール酸、5-(1-シクロヘキシル)-5-エチルマロニルウレア、5-エチル-5-(1-メチルブチル)マロニルウレア、5,5-ジブロモバルビツール酸、5-フェニル-5-エチルバルビツール酸、および5-エチル-5-ノルマルブチルバルビツール酸が挙げられる。
また、1,3-ジグリシジル-5,5-ジエチルバルビツール酸、1,3-ジグリシジル-5-フェニル-5-エチルバルビツール酸、1,3-ジグリシジル-5-エチル-5-イソアミルバルビツール酸、1,3-ジグリシジル-5-アリル-5-イソブチルバルビツール酸、1,3-ジグリシジル-5-アリル-5-イソプロピルバルビツール酸、1,3-ジグリシジル-5-β-ブロモアリル-5-sec-ブチルバルビツール酸、1,3-ジグリシジル-5-エチル-5-(1-メチル-1-ブテニル)バルビツール酸、1,3-ジグリシジル-5-イソプロピル-5-β-ブロモアリルバルビツール酸、1,3-ジグリシジル-5-(1-シクロヘキシル)-5-エチルマロニルウレア、1,3-ジ
グリシジル-5-エチル-5-(1-メチルブチル)マロニルウレア、1,3-ジグリシジル-5,5-ジアリルマロニルウレアジグリシジル、および1,3-ジグリシジル-5-エチル-5-ノルマルブチルバルビツール酸が挙げられる。
【0022】
イソシアヌル酸化合物としては、例えば、モノアリルイソシアヌル酸、モノメチルイソシアヌル酸、モノエチルイソシアヌル酸、モノプロピルイソシアヌル酸、モノイソプロピルイソシアヌル酸、モノフェニルイソシアヌル酸、モノベンジルイソシアヌル酸、およびモノクロロイソシアヌル酸が挙げられる。
また、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸、モノメチルジグリシジルイソシアヌル酸、モノエチルジグリシジルイソシアヌル酸、モノプロピルジグリシジルイソシアヌル酸、モノメチルチオメチルジグリシジルイソシアヌル酸、モノイソプロピルジグリシジルイソシアヌル酸、モノメトキシメチルジグリシジルイソシアヌル酸、モノブチルジグリシジルイソシアヌル酸、モノメトキシエトキシメチルジグリシジルイソシアヌル酸、モノフェニルジグリシジルイソシアヌル酸、モノブロモジグリシジルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸ジグリシジルエステル、およびモノメチルイソシアヌル酸ジグリシジルエステル等を挙げることができる。
【0023】
アルコキシケイ素化合物としては例えば下記を挙げることができる。
【化5】
【0024】
【0025】
分子内にアルコキシル基またはアルコキシメチル基を有する芳香族化合物としては下記式(4)で表される化合物又は、もしくは少なくとも2つの式(4)で表される構造がそのベンゼン環上置換されていない炭素同士がスペーサーを介してまたは単結合により連結されてなる化合物を挙げることができる。
【0026】
【化10】
上記ベンゼン環は、ハロゲン原子、フェニル基、炭素数1乃至10のアルキル基に置換されてもよい。上記R
11、R
12は水素原子又は炭素数1乃至10のアルキル基を表す。n3は1~4の整数であり、n4は1~(5-n3)の整数であり、(n3+n4)は2~5の整数を示す。
スペーサーの例としては、-(CH
2)
n-(n=1~20)、-C(CH3)
2-、-C(CH3)
2-Ph-C(CH3)
2-(Ph=C
6H
4)、
及び
の一種又は二種以上の組合せが挙げられる。これらのスペーサーは2つ以上連結していてもよい。
炭素数1乃至10のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基が挙げられる。
これらの中でもR
11、R
12は水素原子又はメチル基が好ましい。
【0027】
式(4)で表される化合物もしくは少なくとも2つの式(4)で表される構造がそのベンゼン環上置換されていない炭素同士がスペーサーを介してまたは単結合により連結されてなる化合物は以下に例示される。
【化11】
【0028】
【0029】
[溶媒]
本発明の製造方法においては、公知の有機溶媒を使用することができる。
有機溶媒としては、対象モノマーを溶解させることができれば、特に制限なく使用することができるが、親水性であるイオン交換樹脂との相性を考慮し、アルコール系溶媒が好ましい。その具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、アセトニトリル、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチル-2-ペンタノール、2―ヒドロキシイソ酪酸メチル、2―ヒドロキシイソ酪酸エチル、エトキシ酢酸エチル、酢酸2-ヒドロキシエチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸
エチル、乳酸ブチル、2-ヘプタノン、メトキシシクロペンタン、アニソール、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、n-へプタン、ヘキサン、イソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、4-メチルテトラヒドロピラン等が挙げられる。
【0030】
本発明では、これらの溶媒の中でメタノール、エタノール、ブタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が好ましい。特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
【0031】
有機溶媒の使用量としては対象モノマーを十分に溶解させることができる量であれば特に限定されないが、対象モノマーに対して1質量部~100質量部程度であり、1質量部~20質量部が好ましい。
【0032】
処理温度(内温)は、金属封鎖剤の分解が起きず、対象モノマーを十分に溶解させることができる-20~130℃が好ましく、20~100℃がより好ましい。また、加熱の際には、還流を行ってもよい。
【0033】
処理時間は、温度や原料物質に依存するため一概に規定できないが、通常1~30時間程度であり、概ね1~8時間程度である。
【0034】
[アニオン交換樹脂]
本発明のアニオン交換樹脂の作用機序は、金属を吸着するのではなく、金属を捕捉した金属封鎖剤を吸着することである。
【0035】
イオン交換樹脂の一例としては、スチレン・ジビニルベンゼンの共重合体からなる多孔質担体の表面にイオン交換基を固定化させたものである。樹脂のもつ固定交換基の種類によって強塩基性、弱塩基性などに分類される。強塩基性のものとしては、4級アンモニウム基が挙げられる。弱塩基性のものとしては、3級基が挙げられる。また、担体の物理的性質からゲル型、ゲル型樹脂体に細孔を形成させ、多孔質化した巨大網目(MR[Micro-Reticular])型等に分類される。
【0036】
イオン交換樹脂の触媒作用は、反応物とイオン交換樹脂表面との接触面積およびイオン交換樹脂表面上の官能基種類に依存する。ゲル型イオン交換樹脂は、一般にミクロ孔(細孔径:十数Å~数十Å)のみを有するために反応物がポリマー等の大きな分子量を有するものである場合、樹脂細孔内へ侵入しづらいことが想定される。MR型イオン交換樹脂は、メソ孔-マクロ孔(細孔径:数百Å~)を有するために反応物がポリマー等の大きな分子量を有するものである場合でも細孔内に侵入可能であり、相対的にポリマー等とイオン交換樹脂表面との接触面積が大きくなることが想定できる。本発明において用いるイオン交換樹脂は、4級アンモニウム基を有するゲル型の強塩基性イオン交換樹脂であることが好ましい。
【0037】
本特徴を有するものであればイオン交換樹脂は特に限定はされず、市販されているものを用いることができる。
【0038】
イオン交換樹脂による金属不純物を捕捉した金属封鎖剤の除去は、対象モノマー(被精製化合物)を溶解させた溶液(被処理物)が金属封鎖剤と反応した後に、該被処理物をさらに回分式又はカラム流通式によりイオン交換樹脂で処理することで行う。
回分式とは、被処理物とイオン交換樹脂を一定時間撹拌混合した後、ろ過等により樹脂を除去する方法である。又カラム流通式とは、イオン交換樹脂を充填したカラムや充填塔などの固定層に被処理物を通液することで金属不純物を被処理物から除去する方法である。
【0039】
処理の回数は通常1回であるが、2回以上行ってもよい。回分式による処理時間は、被精製化合物やイオン交換樹脂の種類や量、使用する溶媒の種類や量により異なる。同様に、カラム流通式における通液速度は、被精製化合物やイオン交換樹脂の種類や量、使用する溶媒の種類や量により異なる。
【0040】
本発明に使用されるアニオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂と併用する場合でも同様な低減効果が得られる。しかし、カチオン交換樹脂との接触により、対象モノマーやポリマーの構造が変化する場合、カチオン交換樹脂は用いないほうが好ましい。
【0041】
[フィルター]
本発明で必要に応じて使用されるフィルターは、配位して析出した金属を捕捉するので、特に限定しない。例えば、孔径範囲が0.001~1μmであり、ポリエステル(PE)、ポリプロピレン(PP)、PTFE、またはナイロン製のフィルターが使用できる。
【0042】
[金属不純物を除去する半導体材料化合物の製造方法]
本発明の金属不純物を除去する半導体材料化合物の製造方法は、被処理物を金属封鎖剤とアニオン交換樹脂で処理する第一工程を含む。
第一工程には被処理物を金属封鎖剤と接触させ、金属封鎖剤により被処理物にある残留金属が捕捉されるステップ及び、金属を捕捉した金属封鎖剤をアニオン交換樹脂が吸着するステップに分ける。ステップの前後順序を限定しない。例えば、金属封鎖剤をアニオン交換樹脂に先に吸着させ、その後被処理物にある残留金属を捕捉する手順でも残留金属を十分除去できる。金属封鎖剤が先に残留金属を捕捉し、その後アニオン交換樹脂に吸着される順番が効率よく残留金属を除去できる。
この第一工程において、アニオン交換樹脂と金属封鎖剤で処理することによって、金属イオンが捕捉され、残留金属が格段に低減される。また、上述の作用機序を重大に防げず、残留金属の低減効果に大きな影響を与えない限り、アニオン交換樹脂の他に、カチオン交換樹脂を共存させて処理することも可能である。同様に、金属封鎖剤と二種類交換樹脂の使用順序を限定しない。
【0043】
さらに、必要に応じて第二工程として、第一工程で処理した溶液をフィルターでろ過する。フィルターろ過は必要に応じて何回繰り返してもよい。またフィルターを併用することも可能である。
【0044】
本発明において除去される金属に制限はないが金属封鎖剤と配位構造を形成し除去されることを考えると2価または3価の金属が効率的に除去される。
処理後の残留金属(例えば:Al、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Sn)の残存量が、それぞれ濃度10ppb以下であることが好ましい。金属残留量は、例えば実施例に記載の誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により測定できる。
【実施例0045】
ICP-MS:アジレントテクノロジー社製、Agilent 8800
【0046】
<実施例1>
200mLフラスコにテトラメチロールビスフェノールA(旭有機材社製)(以後、TM-BIP-Aと称する。)10.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル60
.0g、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(60%水溶液)(東京化成社製)82μLを加え、55~60℃にて1時間攪拌した後、アニオン交換樹脂(ESG4002-OH)(オルガノ社製)10.0gを加え、55~60℃にて更に1時間攪拌した。室温に冷却後、得られた溶液を孔径0.1μmメンブレンフィルターで濾過し、ICP-MSで残留金属分析を行った。また0.1μmメンブレンフィルター濾過前の溶液についてもICP-MSで残留金属分析を行った。
【0047】
<実施例2>
200mLフラスコにTM-BIP-A(旭有機材社製)10.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル60.0g、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(60%水溶液)(東京化成社製)82μLを加え、55~60℃にて1時間攪拌した後、アニオン交換樹脂(ESG4002-OH)(オルガノ社製)10.0g、カチオン交換樹脂Orlite DS-4(オルガノ社製)60.0gを加え、55~60℃にて更に4時間攪拌した。室温に冷却後、得られた溶液を孔径0.1μmメンブレンフィルターで濾過し、ICP-MSで残留金属分析を行った。また0.1μmメンブレンフィルター濾過前の溶液についてもICP-MSで残留金属分析を行った。
【0048】
<比較例1>
200mLフラスコにTM-BIP-A(旭有機材社製)10.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル60.0g、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(60%水溶液)(東京化成社製)82μLを加え、55~60℃にて1時間攪拌した後、更に1時間攪拌した。室温に冷却後、得られた溶液を孔径0.1μmメンブレンフィルターで濾過し、ICP-MSで残留金属分析を行った。また0.1μmメンブレンフィルター濾過前の溶液についてもICP-MSで残留金属分析を行った。
【0049】
<比較例2>
200mLフラスコにTM-BIP-A(旭有機材社製)10.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル60.0gを加え、55~60℃にて1時間攪拌した後、アニオン交換樹脂(ESG4002-OH)(オルガノ社製)10.0gを加え、55~60℃で更に1時間攪拌した。室温に冷却後、得られた溶液を孔径0.1μmメンブレンフィルターで濾過し、ICP-MSで残留金属分析を行った。また0.1μmメンブレンフィルター濾過前の溶液についてもICP-MSで残留金属分析を行った。
【0050】
<比較例3>
200mLフラスコにTM-BIP-A(旭有機材社製)10.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル60.0g、カチオン交換樹脂Orlite DS-4(オルガノ社製)60.0gを加え、55~60℃にて8時間攪拌した。室温に冷却後、得られた溶液をICP-MSで残留金属分析を行った。
【0051】