(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183028
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】オキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/08 20060101AFI20221201BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
C07F7/08 X
C07F7/08 S
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075857
(22)【出願日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2021088116
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】殿村 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】清森 歩
【テーマコード(参考)】
4H039
4H049
【Fターム(参考)】
4H039CA42
4H039CH90
4H049VN01
4H049VP02
4H049VQ87
4H049VR23
4H049VR41
4H049VS89
4H049VT40
4H049VU36
4H049VV16
4H049VW02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】オキサジシラシクロペンタン化合物を、効率的かつ収率よく製造できる方法を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)
[式中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、炭素数1~4の非置換の1価炭化水素基を表す。]
で示されるアザジシラシクロペンタン化合物と、水とを反応させる、下記一般式(3)
(式中、R
1~R
4は、前記と同じ意味を表す。)
で示されるオキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
[式中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、炭素数1~4の非置換の1価炭化水素基を表し、R
5は、水素原子、炭素数1~20の置換もしくは非置換の1価炭化水素基または下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
1~R
4は、前記と同じ意味を表し、mは、0~5の整数、nは、1~5の整数である。破線は、結合手を表す。)
で示される基を表す。]
で示されるアザジシラシクロペンタン化合物と、水とを反応させる、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
1~R
4は、前記と同じ意味を表す。)
で示されるオキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法。
【請求項2】
触媒として、酸化合物を用いる請求項1記載のオキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記酸化合物が、カルボン酸である請求項2記載のオキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法。
【請求項4】
反応温度が、0~100℃である請求項1~3のいずれか1項記載のオキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オキサジシラシクロペンタン化合物は、耐熱材料、電子材料、光学材料、化粧品等の原料化合物として有用である。
【0003】
オキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法としては、例えば、クロロジメチルビニルシランとクロロジメチルシランのヒドロシリル化反応により得られる、1,2-ビス(クロロジメチルシリル)エタンと水とを反応させ、生成した高分子化合物を熱分解する方法(特許文献1参照)、1,3-ビス(クロロメチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとマグネシウムとを反応させる方法(非特許文献1参照)、2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタンと塩化スズ(II)から合成されるビス(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンチル)スズと二酸化炭素とを反応させ、スズの多核錯体を合成する際の副生物として得る方法(非特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Pet.Chem.56,798(2016)
【非特許文献2】Inorg.Chem.49,11133(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、1,2-ビス(クロロジメチルシリル)エタンと水との反応により2,2,5,5-テトラメチル-1-オキサ-2,5-ジシラシクロペンタンが生成するが、この反応により生成する塩化水素が触媒となり、開環反応が進行し、速やかに高分子化合物となる。このため、この高分子化合物から2,2,5,5-テトラメチル-1-オキサ-2,5-ジシラシクロペンタンを得るためには、熱分解反応が必要となる。
しかしながら、熱分解により目的のオキサジシラシクロペンタン化合物を得るためには、最低でも200℃以上、実用的な反応速度で目的物を得るには300℃以上の温度が必要となり、製造において大量のエネルギーを必要とするため工業的には有利ではない。
【0007】
また、非特許文献1の方法では、副反応を抑制するためにマグネシウムを随時添加しながら反応を実施しなければならず、操作が煩雑となり、工業的に有利でない。
さらに、非特許文献2の方法では、目的のオキサジシラシクロペンタン化合物を得るのに2段階の反応が必要なだけでなく、収率が低く、毒性の高いスズ化合物を使用しなければならないため、工業的に有利ではなかった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、オキサジシラシクロペンタン化合物を、効率的かつ収率よく製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、アザジシラシクロペンタン化合物と水とを反応させることにより、高温での反応や煩雑な操作を必要とせずにオキサジシラシクロペンタン化合物を得ることができ、しかも、このようにしてオキサジシラシクロペンタン化合物を得る方法では、反応系中でのオキサジシラシクロペンタン化合物の開環反応による高分子化合物の生成反応が抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
1. 下記一般式(1)
【化1】
[式中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、炭素数1~4の非置換の1価炭化水素基を表し、R
5は、水素原子、炭素数1~20の置換もしくは非置換の1価炭化水素基または下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
1~R
4は、前記と同じ意味を表し、mは、0~5の整数、nは、1~5の整数である。破線は、結合手を表す。)
で示される基を表す。]
で示されるアザジシラシクロペンタン化合物と、水とを反応させる、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
1~R
4は、前記と同じ意味を表す。)
で示されるオキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法、
2. 触媒として、酸化合物を用いる1記載のオキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法、
3. 前記酸化合物が、カルボン酸である2記載のオキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法、
4. 反応温度が、0~100℃である1~3のいずれかに記載のオキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱材料、電子材料、光学材料、化粧品等の原料化合物として有用なオキサジシラシクロペンタン化合物を、効率的かつ収率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のオキサジシラシクロペンタン化合物の製造方法は、下記一般式(1)で示されるアザジシラシクロペンタン化合物(以下、「化合物(1)」という。)と、水とを反応させて、下記一般式(3)で示されるオキサジシラシクロペンタン化合物(以下、「化合物(3)」という。)を得るものである。
【0013】
【0014】
一般式(1)および(3)において、R1~R4は、それぞれ独立して、炭素数1~4の非置換の1価炭化水素基を表す。
ここで、R1~R4の炭素数1~4の非置換の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれでもよく、アルキル、アルケニル基等が挙げられる。
その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル基の直鎖状のアルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル基の分岐状のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル基の環状のアルキル基;ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0015】
一般式(1)において、R5は、水素原子、炭素数1~20の置換もしくは非置換の1価炭化水素基または下記一般式(2)で示される基を表す。
【0016】
【化5】
(式中、R
1~R
4は、前記と同じ意味を表し、破線は、結合手を表す。)
【0017】
ここで、R5の炭素数1~20の置換もしくは非置換の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれでもよく、炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~6のアルキル基;炭素数2~20、好ましくは2~10、より好ましくは2~6のアルケニル基;炭素数6~20、好ましくは6~10のアリール基;炭素数7~20、好ましくは7~10のアラルキル基等が挙げられる。
その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル、n-イコシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、テキシル、2-エチルヘキシル基等の分岐状のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基;ビニル、アリル、1-ブテニル、1-ペンテニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。
また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部が置換されていてもよく、該置換基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、(n-またはイソ)プロポキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基;アミノ基;炭素数2~10のアシル基等が挙げられる。
これらの中でも、R5の1価炭化水素基としては、原料の入手容易性、生成物の有用性の観点から、メチル、エチル、(n-またはイソ)プロピル基等の炭素数1~3のアルキル基、アリル、1-ブテニル、1-ペンテニル基等の炭素数3~5のアルケニル基、フェニル基等のアリール基が好ましい。
【0018】
一般式(2)において、mは、0~5の整数、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0または1である。
nは、1~5の整数、好ましくは1~4の整数、より好ましくは2または3である。
mとnの好ましい組み合わせは、mが、0または1であり、nが、2または3の場合である。
【0019】
一般式(2)で表される基の具体例としては、(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチル、(2,2,5,5-テトラエチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチル、(2,2,5,5-テトラプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチル、(2,2,5,5-テトライソプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチル、(2,2,5,5-テトラブチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチル、(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)プロピル、(2,2,5,5-テトラエチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)プロピル、(2,2,5,5-テトラプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)プロピル、(2,2,5,5-テトライソプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)プロピル、(2,2,5,5-テトラブチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)プロピル、(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチルアミノエチル、(2,2,5,5-テトラエチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチルアミノエチル、(2,2,5,5-テトラプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチルアミノエチル、(2,2,5,5-テトライソプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチルアミノエチル、(2,2,5,5-テトラブチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチルアミノエチル、(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)プロピルアミノプロピル、(2,2,5,5-テトラエチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)プロピルアミノプロピル、(2,2,5,5-テトラプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)プロピルアミノプロピル、(2,2,5,5-テトライソプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)プロピルアミノプロピル、(2,2,5,5-テトラブチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)プロピルアミノプロピル基等が挙げられる。
これらの中でも、R5の一般式(2)で表される基としては、原料の入手容易性、生成物の有用性の観点から、(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチル基、(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチルアミノエチル基が好ましい。
【0020】
一般式(1)において、R5としては、水素原子、アリル基、2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチル基、(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチルアミノエチル基がより好ましい。
【0021】
化合物(1)の具体例としては、2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、2,2,5,5-テトラエチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、2,2,5,5-テトラプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、2,2,5,5-テトライソプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、2,2,5,5-テトラブチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、2,5-ジエチル-2,5-ジメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、2,5-ジtert-ブチル-2,5-ジメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1,2,2,5,5-ペンタメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-メチル-2,2,5,5-テトラエチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-メチル-2,2,5,5-テトラプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-メチル-2,2,5,5-テトライソプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-メチル-2,2,5,5-テトラブチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、2,5-ジエチル-1,2,5-トリメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、2,5-ジtert-ブチル-1,2,5-ジメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-エチル-2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1,2,2,5,5-ペンタエチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-エチル-2,2,5,5-テトラプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-エチル-2,2,5,5-テトライソプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-エチル-2,2,5,5-テトラブチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-エチル-2,5-ジエチル-2,5-ジメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-エチル-2,5-ジtert-ブチル-2,5-ジメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-アリル-2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-アリル-2,2,5,5-テトラエチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-アリル-2,2,5,5-テトラプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-アリル-2,2,5,5-テトライソプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-アリル-2,2,5,5-テトラブチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-アリル-2,5-ジエチル-2,5-ジメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-アリル-2,5-ジtert-ブチル-2,5-ジメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-フェニル-2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-フェニル-2,2,5,5-テトラエチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-フェニル-2,2,5,5-テトラプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-フェニル-2,2,5,5-テトライソプロピル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-フェニル-2,2,5,5-テトラブチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-フェニル-2,5-ジエチル-2,5-ジメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-フェニル-2,5-ジtert-ブチル-2,5-ジメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1,1’-(1,2-エタンジイル)ビス(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン)、ビス[(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチル]アミン等が挙げられる。
これらの中でも、原料の入手性、生成物の有用性の観点から、2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1-アリル-2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン、1,1’-(1,2-エタンジイル)ビス(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン)、ビス[(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチル]アミンが好ましい。なお、これらの化合物は、市販されているものを用いてもよいし、製造してもよい。製造する場合、従来公知の方法に従えばよく、例えば、1級アミン化合物と1,2-ビス(クロロシリル)エタン化合物を反応させる方法等によって得ることができる。
【0022】
上記化合物(1)と、水との配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、化合物(1)のアザジシラシクロペンタン部位1モルに対し、水0.5~50.0モルが好ましく、0.8~20.0モルがより好ましい。
【0023】
上記反応は無触媒でも進行するが、反応速度を向上させる目的で、触媒を用いることができる。
用いられる触媒としては、酸化合物が好ましく、その具体例としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸化合物;酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、安息香酸、フタル酸等のカルボン酸;上記酸の塩;塩化アルミニウム、塩化亜鉛、四塩化チタン等のルイス酸化合物等が挙げられる。
これらの中でも、特にカルボン酸が好ましく、酢酸がより好ましい。
【0024】
触媒を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、化合物(1)1モルに対し、0.0001~0.5モルが好ましく、0.001~0.2モルがより好ましい。
【0025】
上記反応は、無溶媒で行うことができる。
この場合、化合物(1)を水に添加しても、水を化合物(1)に添加してもよいが、反応速度向上の観点から、水中に化合物(1)を添加する方法が好ましく、水中に化合物(1)を滴下する方法がより好ましい。なお、触媒として酸化合物を用いる場合、水と混合して用いることが好ましい。
【0026】
また、上記反応は、溶媒を用いて行うこともできる。
溶媒の具体例としては、反応を阻害しないものであれば任意であり、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられ、これらは、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、水との相溶性向上による反応速度向上の点から、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、非プロトン性極性溶媒が好ましい。
【0027】
溶媒を用いる場合、化合物(1)、水および溶媒の配合順序は任意であるが、化合物(1)および溶媒の混合液と水とを混合することが好ましく、化合物(1)および溶媒の混合液に水を添加することがより好ましく、同混合液に水を滴下することがより一層好ましい。この場合、水は溶媒との混合物として用いてもよい。水と溶媒の混合比は特に限定されないが、水/溶媒の割合が、質量比で、1/0.5~1/5が好ましい。触媒を用いる場合、化合物(1)および溶媒の混合液に添加しても、水に添加してもよい。
【0028】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、0~100℃が好ましく、15~85℃がより好ましく、20~80℃がさらに好ましく、20~70℃がより一層好ましい。
また、反応時間も特に限定されないが、1~15時間が好ましく、1~10時間がより好ましく、1~7時間がさらに好ましく、1~5時間がより一層好ましい。
なお、上記反応は、大気下で行っても、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0029】
化合物(1)は、温和な条件で不可逆的に水との反応が進行し、目的とする化合物(3)に変換される。また、このようにして化合物(3)を得る方法では、反応系中での化合物(1)の開環反応による高分子化合物の生成反応が抑制される。そのため、高温での反応が必要とされる1,2-ビス(クロロジメチルシリル)エタンと水とを反応させて生成した高分子化合物を熱分解する従来の方法よりも有利である。
【0030】
このようにして得られた反応液からは、必要に応じて分液を行い、蒸留、低沸点化合物の留去等の通常の方法で目的物を得ることができる。
【実施例0031】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0032】
[実施例1]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、水200g(11.1モル)、酢酸2.0g(0.03モル)を仕込み、25~35℃で2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン159.4g(1.0モル)を30分かけて滴下し、その温度のままで3時間撹拌した。反応後、2層分離した下層を除去し、上層を蒸留した。2,2,5,5-テトラメチル-1-オキサ-2,5-ジシラシクロペンタンを沸点49-50℃/6.0kPaの留分として、105.8g得た(収率66%)。
【0033】
[実施例2]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン159.4g(1.0モル)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル400gを仕込み、45~55℃で水22.5g(1.25モル)を30分かけて滴下し、その温度のままで2時間撹拌した。反応液を蒸留し、2,2,5,5-テトラメチル-1-オキサ-2,5-ジシラシクロペンタンを沸点49-50℃/6.0kPaの留分として、115.3g得た(収率72%)。
【0034】
[実施例3]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン159.4g(1.0モル)、テトラヒドロフラン350gを仕込み、45~55℃で水18.9g(1.05モル)を2時間かけて滴下し、その温度のままで2時間撹拌した。反応液を蒸留し、2,2,5,5-テトラメチル-1-オキサ-2,5-ジシラシクロペンタンを沸点49-50℃/6.0kPaの留分として、132.0g得た(収率82%)。
【0035】
[実施例4]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、1-アリル-2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン199.4g(1.0モル)、テトラヒドロフラン400gを仕込み、45~55℃で水36.0g(1.5モル)およびテトラヒドロフラン36.0gの混合液を8時間かけて滴下し、その温度のままで2時間撹拌した。反応液を蒸留し、2,2,5,5-テトラメチル-1-オキサ-2,5-ジシラシクロペンタンを沸点49-50℃/6.0kPaの留分として、110.5g得た(収率69%)。
【0036】
[実施例5]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、1,1’-(1,2-エタンジイル)ビス(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペンタン)172.4g(0.5モル)、テトラヒドロフラン400gを仕込み、65~75℃で水36.0g(1.5モル)およびテトラヒドロフラン36.0gの混合液を8時間かけて滴下し、その温度のままで2時間撹拌した。反応液を蒸留し、2,2,5,5-テトラメチル-1-オキサ-2,5-ジシラシクロペンタンを沸点49-50℃/6.0kPaの留分として、114.5g得た(収率71%)。
【0037】
[実施例6]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、ビス[(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラシクロペント-1-イル)エチル]アミン194.0g(0.5モル)、テトラヒドロフラン400gを仕込み、65~75℃で水36.0g(1.5モル)およびテトラヒドロフラン36.0gの混合液を8時間かけて滴下し、その温度のままで2時間撹拌した。反応液を蒸留し、2,2,5,5-テトラメチル-1-オキサ-2,5-ジシラシクロペンタンを沸点49-50℃/6.0kPaの留分として、128.8g得た(収率80%)。
【0038】
[比較例1]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、1,2-ビス(クロロジメチルシリル)エタン215.3g(1.0モル)を仕込み、50~60℃で水900g(50.0モル)を1時間で滴下し、その温度で1時間撹拌した。反応後、2層分離した下層を除去し、上層に50質量%水酸化カリウム水溶液6.4gを添加し、生成した高分子化合物の熱分解反応を行った。目的の2,2,5,5-テトラメチル-1-オキサ-2,5-ジシラシクロペンタンの生成が確認できたのは、内温250℃以上となってからであった。370℃で5時間反応の後、蒸留を行った。2,2,5,5-テトラメチル-1-オキサ-2,5-ジシラシクロペンタンを沸点49-50℃/6.0kPaの留分として、78.3g得た(収率49%)。