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特開2022-183194光学システムにおける物理的効果の補償
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183194
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】光学システムにおける物理的効果の補償
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20221201BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022159242
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2019515280の分割
【原出願日】2017-10-17
(31)【優先権主張番号】15/349,600
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラファック,ロバート ジェイ
(57)【要約】
【課題】光学システムにおける物理的効果を補償する。
【解決手段】音響光学材料を出る光ビームの波面が推定され、音響光学材料を含む音響光学システムのための制御信号が生成され、制御信号は光ビームの推定された波面に基づくものであり、制御信号は音響光学材料内を伝搬する周波数チャープ音波を生成するために音響光学システムに適用され、周波数チャープ音波は音響光学材料内に過渡回折素子を形成し、過渡回折素子と光ビームとの間の相互作用は、光ビームの波面のディストーションを補償するために光ビームの波面を調節し、波面のディストーションは音響光学材料内の物理的効果によって少なくとも部分的に生じる。
【選択図】 図12A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響光学材料を出る光ビームの波面を推定すること、
前記音響光学材料を含む音響光学システムのための制御信号を生成することであって、前記制御信号は、前記光ビームの前記推定された波面に基づくものである、生成すること、及び、
前記制御信号を、前記音響光学材料内を伝搬する周波数チャープ音波を生成するために前記音響光学システムに適用することであって、前記周波数チャープ音波は、前記音響光学材料内に過渡回折素子を形成し、前記過渡回折素子と前記光ビームとの間の相互作用は、前記光ビームの前記波面のディストーションを補償するために前記光ビームの前記波面を調節し、前記波面の前記ディストーションは前記音響光学材料内の物理的効果によって少なくとも部分的に生じる、適用すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記音響光学材料を出る前記光ビームの前記波面を推定することは、
前記音響光学材料を出る前記光ビームの少なくとも一部を受信すること、及び、
前記光ビームの第1のパルスのうちの前記受信した部分に基づいて、前記音響光学材料を出る前記光ビームの前記波面を推定すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記音響光学材料の前記物理的効果は、前記音響光学材料の熱的ディストーションを含み、前記熱的ディストーションは、前記音響光学材料を出る前記光ビームの前記波面の前記ディストーションを少なくとも部分的に発生させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記音響光学材料を出る前記光ビームの前記波面を推定することは、
前記音響光学材料の複数の温度測定値を評価することであって、前記複数の温度測定値の各々は前記音響光学材料の異なる部分の温度である、評価すること、
前記評価された複数の温度に基づいて、前記音響光学材料の温度分布を推定すること、
前記音響光学材料の前記推定された温度分布に基づいて、前記音響光学材料の屈折率の空間分布を推定すること、及び、
前記音響光学材料の前記推定された屈折率を使用して、前記音響光学材料を出る前記光ビームの前記波面を推定すること、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記音響光学材料は、前記光ビーム、前記周波数チャープ音波、及び、熱として前記音響光学材料内を伝搬する前記周波数チャープ音波以外の音波のうちの、1つ以上を吸収し、前記音響光学材料の前記物理的効果は、前記吸収された熱から生じる熱的ディストーションを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記過渡回折素子は、前記音響光学材料の前記物理的効果以外の効果について前記光ビームを更に補償する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記音響光学材料の前記物理的効果以外の前記効果は、前記音響光学材料以外の光学素子の物理的効果を含み、前記光学素子は前記光ビームと相互作用するように位置決めされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光ビームはパルス光ビームを含み、
前記光ビームの少なくとも一部を受信することは、前記光ビームの第1のパルスの一部を受信することを含み、
前記光ビームの波面を決定することは、前記光ビームの前記第1のパルスのうちの前記受信した部分に基づいて波面を決定することを含み、また、
前記生成された周波数チャープ音波は、前記音響光学材料内を伝搬し、前記光ビームの第2のパルスが前記音響光学材料を通過する間に前記過渡回折素子を形成し、前記光ビームの前記第2のパルスは前記光ビームの前記第1のパルスの後に発生する、
請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び第2のパルスは100ナノ秒(ns)以下の持続時間を有し、
前記第2のパルスが前記過渡回折素子と相互作用し、前記周波数チャープ音波の周波数に依存する角度で前記過渡回折素子によって回折されるように、前記過渡回折素子は、前記第2のパルスが前記音響光学材料を通過する間に、前記音響光学材料内を500ミクロン(μm)以下で伝搬する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記音響光学材料の前記物理的効果は、前記音響光学材料の熱的ディストーションを含み、前記熱的ディストーションは少なくとも部分的に、前記音響光学材料を出る前記光ビームの前記波面のディストーションを発生させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記音響光学システムのための初期制御信号を生成することであって、前記初期制御信号は、前記光ビームの前記推定された波面とは無関係である、生成すること、及び、
前記光ビームの前記波面を推定する前に、前記音響光学材料内に一定周波数音波を生成するために、前記初期制御信号を前記音響光学システムに印加することであって、前記一定周波数音波は前記音響光学材料内に初期過渡回折素子を形成し、前記初期過渡回折素子の生成は、少なくとも部分的に前記波面の前記ディストーションを発生させる前記物理的効果である、印加すること、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
極端紫外(EUV)光源のためのシステムであって、
光学システムと、
センシング装置と、
制御システムと、
を備え、
前記光学システムは、
音波が内部を伝搬する音響光学材料であって、ビームパス上に位置決めされるように構成される音響光学材料、及び、
音波ジェネレータであって、
前記音響光学材料に結合するように構成されたトランスデューサと、
前記トランスデューサに結合するように構成された波形ジェネレータと、
を備える、音波ジェネレータ、
を備え、
前記センシング装置は、前記ビームパス上を伝搬する光ビームに関するデータ、又は前記音響光学材料の状態に関するデータを、測定するように構成され、
前記制御システムは、前記センシング装置及び前記波形ジェネレータに結合され、
前記センシング装置によって測定されたデータに基づいて前記光ビームの波面を推定するように、
前記光ビームの前記推定された波面に基づいて制御信号を生成するように、及び、
前記制御信号を前記光学システムに提供するように、
構成され、前記制御信号は、前記音波ジェネレータに周波数チャープ音波を前記音響光学材料に提供させるのに十分であり、前記周波数チャープ音波は前記音響光学材料内に過渡回折素子を形成し、前記過渡回折素子と前記光ビームとの間の相互作用が、前記音響光学材料の物理的効果を補償するように前記光ビームの前記波面を調節する、
EUV光源のためのシステム。
【請求項13】
前記音響光学材料の前記物理的効果は、前記音響光学材料内の空間的に変化する屈折率を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記音響光学材料の前記物理的効果は熱的ディストーションを含み、前記音響光学材料内の任意の特定ロケーションでの前記屈折率は、前記音響光学材料によって吸収される熱の量、及び、1つ以上の吸収ロケーションと前記特定のロケーションとの間の距離に関連し、前記吸収ロケーションは熱が吸収される結晶内の領域である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記音響光学材料は、光ビーム、前記周波数チャープ音波、及び、前記音響光学材料内を伝搬する前記周波数チャープ音波以外の音波のうちの、1つ以上を吸収し、前記音響光学材料の前記物理的効果は、前記吸収された熱から生じる熱的ディストーションを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記音響光学材料は、10μmから11μmの間の波長を有する光に対して実質的にトランスペアレントな材料を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記音響光学材料は、ゲルマニウム(Ge)又はガリウムヒ素(GaAs)を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記光学システムには音響ターミネータがなく、前記音響ターミネータは、前記音響光学材料との物理的接続の一部であるか又は物理的に接続されており、前記周波数チャープ音波の吸収、散乱、伝送、又は方向転換のうちの1つ以上を実行するように構成された、要素である、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記光源は、極端紫外(EUV)光源を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
前記光学システムは、前記波形ジェネレータ及び前記トランスデューサに結合された無線周波数(RF)電気増幅器を更に含み、前記波形ジェネレータは、前記RF電気増幅器を介して前記トランスデューサに結合するように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
前記センシング装置は、前記音響光学材料の状態に関するデータを測定するように構成され、前記状態は前記音響光学材料の温度に関する、請求項12に記載のシステム。
【請求項22】
極端紫外(EUV)光源であって、
光発生モジュール、
1つ以上の前置増幅器、
1つ以上のパワー増幅器であって、1つ以上の前置増幅器が前記光発生モジュールと前記1つ以上のパワー増幅器との間にある、1つ以上のパワー増幅器、及び、
音響光学システムであって、
前記1つ以上のパワー増幅器のうちの1つと前記光発生モジュールとの間の音響光学材料と、
波形ジェネレータと、
前記波形ジェネレータから前記音響光学材料内へ音波として波形を送信するように構成されたトランスデューサと、
前記波形ジェネレータに結合された制御システムと、
を備える、音響光学システム、
を備え、
前記制御システムは、前記音響光学材料を出る光ビームの波面を推定するように、及び、前記推定された波面に基づいて前記波形ジェネレータに制御信号を提供するように、構成され、前記制御信号は、前記トランスデューサによって前記音響光学材料内に投入されたときに、前記音響光学材料の物理的効果について前記音響光学材料内を伝搬する光ビームの前記波面を補償する周波数チャープ波形を、前記波形ジェネレータに生成させるのに十分である、
EUV光源。
【請求項23】
前記音響光学材料は、前記前置増幅器のうちの1つと前記パワー増幅器のうちの1つとの間にある、請求項22に記載のEUV光源。
【請求項24】
前記制御システムに結合された温度センサを更に含み、前記温度センサは前記音響光学材料の温度を測定するように構成され、
前記音響光学材料の特徴を決定するように構成された前記制御システムは、前記温度センサからのデータに基づいて前記音響光学材料の温度を決定するように構成された前記制御システムを含む、
請求項22に記載のEUV光源。
【請求項25】
前記音響光学材料を介して伝搬する光を受信するように、及び、前記受信した光の波面を感知するように構成された、光学センシング装置を含み、
前記音響光学材料の特徴を決定するように構成された前記制御システムは、前記光学センシング装置からのデータに基づいて前記受信した光の前記波面を決定するように構成された前記制御システムを含む、
請求項22に記載のEUV光源。
【請求項26】
前記光学センシング装置は、段階的位相マスク、波面センシングカメラ、及び干渉計のうちの、1つ以上を含む、請求項25に記載のEUV光源。
【請求項27】
一定周波数音波を音響光学材料に印加することであって、前記一定周波数音波は前記音響光学材料内に初期過渡回折素子を形成する、印加すること、
前記音響光学材料を出る光ビームの波面を、前記初期過渡回折素子と相互作用した後に推定すること、
修正された音波を形成するために前記推定された波面に基づいて前記一定周波数音波を修正することであって、前記修正された音波は周波数チャープを含む、修正すること、及び、
前記修正された音波を前記音響光学材料に印加することであって、前記修正された音波は補正過渡回折素子を形成し、前記補正過渡回折素子と前記光ビームとの間の相互作用が、前記波面のディストーションを補償するように前記光ビームの前記波面を調節し、前記ディストーションは前記初期過渡回折素子の前記生成によって少なくとも部分的に発生する、印加すること、
を含む、方法。
【請求項28】
前記音響光学材料を出る前記光ビームの前記波面は、前記音響光学材料の前記温度に基づいて推定される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記音響光学材料を出る前記光ビームの前記波面を推定することは、前記音響光学材料を出る前記光ビームの前記波面を測定することを含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は2016年11月11日出願の米国出願第15/349,600号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、光学システムにおける物理的効果に対する補償に関する。物理的効果は、音響光学材料における熱的効果であり得る。例えば、音響光学材料の加熱によって生じる波面のディストーションを補正することができる。
【背景技術】
【0003】
音響光学変調器(AOM)は、トランスデューサ及び音響光学材料を含む。トランスデューサは電気信号を受信し、電気信号を、音響光学材料内を伝搬する音波に変換する。音響光学材料上に入射する光は、音波が音響光学材料内を伝搬している間に発生する周期的な屈折率変調によって回折される。
【0004】
AOMは、極端紫外(EUV)光源内で、例えばビームパスからの迷光を、或る方向に(例えば、別のビームパス及び/又はビームダンプ内へと)及び/又は或る時点で偏向させるために使用され得る。AOMを使用して光を偏向させるために、時間の関数としての一定の周波数を有する音波は、AOMの音響光学材料内に投入され得る。AOMはコンピュータ制御され得、例えばAOMは、実行可能命令として電子メモリ内に記憶されるプロセスによって制御され得、命令は1つ以上の電子プロセッサを実行することが可能である。
【0005】
EUV光は、例えば、約13nmの波長の光を含む、約50nm以下の波長を有する電磁放射(時には、軟X線とも呼ばれる)を含む。EUV光は、基板、例えばシリコンウェーハ内に極端に小さなフィーチャを生成するために、フォトリソグラフィプロセスにおいて使用され得る。
【発明の概要】
【0006】
一つの一般態様において、音響光学材料を出る光ビームの波面が推定され、音響光学材料を含む音響光学システムのための制御信号が生成され、制御信号は光ビームの推定された波面に基づくものであり、制御信号は音響光学材料内を伝搬する周波数チャープ音波を生成するために音響光学システムに適用され、周波数チャープ音波は音響光学材料内に過渡回折素子を形成し、過渡回折素子と光ビームとの間の相互作用は、光ビームの波面のディストーションを補償するために光ビームの波面を調節し、波面のディストーションは音響光学材料内の物理的効果によって少なくとも部分的に生じる。
【0007】
実装形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。音響光学材料を出る光ビームの波面を推定することは、音響光学材料を出る光ビームの少なくとも一部を受信すること、及び、光ビームの第1のパルスのうちの受信した部分に基づいて波面を推定することを、含み得る。
【0008】
音響光学材料の物理的効果は、音響光学材料の熱的ディストーションであり得る。音響光学材料を出る光ビームの波面を推定することは、音響光学材料の複数の温度測定値を評価することであって、複数の温度測定値の各々は音響光学材料の異なる部分の温度である、評価すること、評価された複数の温度に基づいて音響光学材料の温度分布を推定すること、音響光学材料の推定された温度分布に基づいて音響光学材料の屈折率の空間分布を推定すること、及び、音響光学材料の推定された屈折率を使用して音響光学材料を出る光ビームの波面を推定することを、含み得る。
【0009】
音響光学材料は、光ビーム、周波数チャープ音波、及び、熱として音響光学材料内を伝搬する周波数チャープ音波以外の音波のうちの、1つ以上を吸収し得、音響光学材料の物理的効果は、吸収された熱から生じる熱的ディストーションであり得る。
【0010】
過渡回折素子は、音響光学材料の物理的効果以外の効果についても光ビームを補償し得る。音響光学材料の物理的効果以外の効果は、音響光学材料以外の光学素子の物理的効果を含み得、光学素子は光ビームと相互作用するように位置決めされる。
【0011】
光ビームはパルス光ビームであり得、光ビームの少なくとも一部を受信することは光ビームの第1のパルスの一部を受信することを含み得、光ビームの波面を決定することは、光ビームの第1のパルスのうちの受信した部分に基づいて波面を決定することを含み得、また、生成された周波数チャープ音波は、音響光学材料内を伝搬し得、光ビームの第2のパルスが音響光学材料を通過する間に過渡回折素子を形成し得、光ビームの第2のパルスは光ビームの第1のパルスの後に発生する。第1及び第2のパルスは100ナノ秒(ns)以下の持続時間を有し、過渡回折素子は、第2のパルスが音響光学材料を通過する間に音響光学材料内を500ミクロン(μm)以下で伝搬し得るため、第2のパルスは過渡回折素子と相互作用し、周波数チャープ音波の周波数に依存する角度で過渡回折素子によって回折される。
【0012】
音響光学材料の物理的効果は音響光学材料の熱的ディストーションを含み得、熱的ディストーションは少なくとも部分的に、音響光学材料を出る光ビームの波面のディストーションを発生させる。
【0013】
いくつかの実装形態において、音響光学システムのための初期制御信号が生成され、初期制御信号は推定された光ビームの波面とは無関係であり、初期制御信号は、光ビームの波面を推定する前に、音響光学材料内に一定周波数音波を生成するために音響光学システムに印加され、一定周波数音波は音響光学材料内に初期過渡回折素子を形成し、初期過渡回折素子の生成は、少なくとも部分的に波面のディストーションを発生させる物理的効果である。
【0014】
別の一般態様において、極端紫外(EUV)光源のためのシステムは、光学システムを備え、光学システムは、音波が内部を伝搬する音響光学材料であって、ビームパス上に位置決めされるように構成される音響光学材料と、音波ジェネレータとを備え、音波ジェネレータは、音響光学材料に結合するように構成されたトランスデューサと、トランスデューサに結合するように構成された波形ジェネレータとを備え、システムは更に、ビームパス上を伝搬する光ビームに関するデータ、又は音響光学材料の状態に関するデータを、測定するように構成されたセンシング装置、並びに、センシング装置及び波形ジェネレータに結合された制御システムを、備え、制御システムは、センシング装置によって測定されたデータに基づいて光ビームの波面を推定するように、推定された光ビームの波面に基づいて制御信号を生成するように、及び、制御信号を光学システムに提供するように、構成され、制御信号は、音波ジェネレータに周波数チャープ音波を音響光学材料に提供させるのに十分であり、周波数チャープ音波は音響光学材料内に過渡回折素子を形成し、過渡回折素子と光ビームとの間の相互作用が、音響光学材料の物理的効果を補償するように光ビームの波面を調節する。
【0015】
実装形態は以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。音響光学材料の物理的効果は、音響光学材料内の空間的に変化する屈折率を含み得る。音響光学材料の物理的効果は熱的ディストーションを含み得、音響光学材料内の任意の特定ロケーションでの屈折率は、音響光学材料によって吸収される熱の量、及び、1つ以上の吸収ロケーションと特定のロケーションとの間の距離に関連し得、吸収ロケーションは熱が吸収される結晶内の領域である。音響光学材料は、光ビーム、周波数チャープ音波、及び、音響光学材料内を伝搬する周波数チャープ音波以外の音波のうちの、1つ以上を吸収し得、音響光学材料の物理的効果は、吸収された熱から生じる熱的ディストーションを含み得る。音響光学材料は、10μmから11μmの間の波長を有する光に対して実質的にトランスペアレントな材料を含み得る。
【0016】
音響光学材料は、ゲルマニウム(Ge)又はガリウムヒ素(GaAs)を含み得る。光学システムには音響ターミネータがない場合があり、音響ターミネータは、音響光学材料との物理的接続の一部であるか又は物理的に接続されており、周波数チャープ音波の吸収、散乱、伝送、又は方向転換のうちの1つ以上を実行するように構成された、要素である。光源は、極端紫外(EUV)光源を含み得る。光学システムは、波形ジェネレータ及びトランスデューサに結合された無線周波数(RF)電気増幅器も含み得、波形ジェネレータは、RF電気増幅器を介してトランスデューサに結合するように構成される。
【0017】
センシング装置は、音響光学材料の状態に関するデータを測定するように構成され得、状態は音響光学材料の温度に関する。
【0018】
別の一般態様において、極端紫外(EUV)光源は、光発生モジュールと、1つ以上の前置増幅器と、1つ以上のパワー増幅器であって、1つ以上の前置増幅器が光発生モジュールと1つ以上のパワー増幅器との間にある、1つ以上のパワー増幅器と、音響光学システムとを、備え、音響光学システムは、1つ以上のパワー増幅器のうちの1つと光発生モジュールとの間の音響光学材料と、波形ジェネレータと、波形ジェネレータから音響光学材料内へ音波として波形を送信するように構成されたトランスデューサと、波形ジェネレータに結合された制御システムとを、備え、制御システムは、音響光学材料を出る光ビームの波面を推定するように、及び、推定された波面に基づいて波形ジェネレータに制御信号を提供するように、構成され、制御信号は、トランスデューサによって音響光学材料内に投入されたときに、音響光学材料の物理的効果について音響光学材料内を伝搬する光ビームの波面を補償する周波数チャープ波形を、波形ジェネレータに生成させるのに十分である。
【0019】
実装形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。音響光学材料は、前置増幅器のうちの1つとパワー増幅器のうちの1つとの間にあり得る。EUV光源は、制御システムに結合された温度センサも含み得、温度センサは音響光学材料の温度を測定するように構成され、音響光学材料の特徴を決定するように構成された制御システムは、温度センサからのデータに基づいて音響光学材料の温度を決定するように構成された制御システムを含む。
【0020】
いくつかの実装形態において、EUV光源は、音響光学材料を介して伝搬する光を受信するように、及び、受信した光の波面を感知するように構成された、光学センシング装置を含み、音響光学材料の特徴を決定するように構成された制御システムは、光学センシング装置からのデータに基づいて受信した光の波面を決定するように構成された制御システムを含み得る。光学センシング装置は、段階的位相マスク、波面センシングカメラ、及び干渉計のうちの、1つ以上を含み得る。
【0021】
別の一般態様において、一定周波数音波が音響光学材料に印加され、一定周波数音波は音響光学材料内に初期過渡回折素子を形成し、音響光学材料を出る光ビームの波面が、初期過渡回折素子と相互作用した後に推定され、一定周波数音波は、修正された音波を形成するために推定された波面に基づいて修正され、修正された音波は周波数チャープを有し、修正された音波は音響光学材料に印加され、修正された音波は補正過渡回折素子を形成し、補正過渡回折素子と光ビームとの間の相互作用が、波面のディストーションを補償するように光ビームの波面を調節し、ディストーションは初期過渡回折素子の生成によって少なくとも部分的に発生する。
【0022】
実装形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。音響光学材料を出る光ビームの波面は、音響光学材料の温度に基づいて推定される。音響光学材料を出る光ビームの波面を推定することは、音響光学材料を出る光ビームの波面を測定することを含み得る。
【0023】
上述の技法のうちのいずれかの実装形態は、EUV光源、システム、方法、プロセス、デバイス、又は装置を含み得る。1つ以上の実装形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に示されている。他の特徴は、説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から、明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】例示的音響光学システムを示すブロック図である。
図2】例示的音響光学システムを示すブロック図である。
図3】例示的音響光学システムを示すブロック図である。
図4A】例示的音響光学システムを示すブロック図である。
図4B図4Aの音響光学システムの音響光学材料上での熱センサの例示的配置を示すブロック図である。
図5】音響光学材料内の物理的効果を補償するための例示的プロセスを示すフローチャートである。
図6A】音響光学材料内の物理的効果の例を示す図である。
図6B】音響光学材料内の物理的効果の例を示す図である。
図6C】音響光学材料内の物理的効果の例を示す図である。
図7A】例示的過渡回折素子を伴う音響光学材料を示すブロック図である。
図7B図7Aの音響光学材料に印加される例示的周波数チャープ信号を示す線図である。
図8図1図3及び図4Aの音響光学システムが使用され得る、例示的極端紫外(EUV)光源を示すブロック図である。
図9A図1図3及び図4Aの音響光学システムが使用され得る、例示的極端紫外(EUV)光源を示すブロック図である。
図9B】例示的音響光学システムを示すブロック図である。
図9C】例示的音響光学システムを示すブロック図である。
図10図1図3及び図4Aの音響光学システムが使用され得る、例示的極端紫外(EUV)光源を示すブロック図である。
図11図1図3及び図4Aの音響光学システムが使用され得る、例示的極端紫外(EUV)光源を示すブロック図である。
図12A】極端EUV光源のためのドライブレーザシステムを示すブロック図である。
図12B】極端EUV光源のためのドライブレーザシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
音響光学デバイスの音響光学材料を通過するビーム内のスプリアス又は望ましくない波面ディストーションを補償するために、周波数チャープ音波を音響光学デバイスに印加するための技法が考察される。スプリアス又は望ましくない波面ディストーションは、音響光学材料自体における物理的効果(加熱など)から生じる。
【0026】
図1は、光源102と、音響光学材料116を含む音響光学システム104とを含む、システム100のブロック図である。光源102は、光路128(破線で示される)上にビーム106を放出する。ビーム106は、入力側107で音響光学システム104に入る。ビーム106は、出力側108で音響光学システム104を出るのに先立って音響光学材料116を通過する。
【0027】
音響光学材料116は光学システム110の一部である。光学システム110は、例えば、入力側107の代わりに出力側108で音響光学システム104に入る反射をブロックすること、又は、システム100内を伝搬し得る増幅自然放出(ASE)などの迷光をブロックすることの、主目的を有し得る。光学システム110は、例えば、反射及び/又は迷光をビームパス128から離れて偏向させることによって、反射をブロックし得る。いくつかの実装形態において、光学システム110は、光ビーム106がシステム100の別の部分へと伝搬できるように、光ビーム106(反射又は迷光ではない)をビームパス128上へと偏向させることの、主目的を有し得る。偏向は、時間的にほぼ一定な周波数を有する音波を音響光学材料116に印加することによって達成し得る。
【0028】
使用中、音響光学材料116内の物理的効果は、ビーム106の波面の意図しないディストーションを生じさせ得る。物理的効果は、音響光学材料116の光学特性における変化につながる任意の効果又はプロセスであり得る。例えば、物理的効果は、材料116の屈折率(n)及び/又は材料116における音の速さを変化させる、効果又はプロセスであり得る。屈折率(n)の変化は、熱的効果(音波が材料116に印加されたときに生じる加熱など)又は別の物理的効果(音響光学材料116に印加される外部及び非音響の機械力など)の結果であり得る。音の速さは、熱的効果(加熱など)に起因しても変化し得る。例えば、通常の動作条件下で、音波が或る方向に沿って音響光学材料116内に投入されたとき、波は同じ方向に沿って音響光学材料116を介して伝搬する。しかしながら、材料116内の音の速さの変化により、音波が材料116を介して伝搬する際に音波を湾曲させ得る。
【0029】
音響光学材料116内の物理的効果によって生じるビームディストーションは、(ビーム106が材料116を通過した後に)出力側108でのビーム106の波面を推定することによって評価される。波面は、センサ162からのデータを使用して制御システム164で推定される。センサ162は、図3のセンサ362などの波面センサ、及び/又は、図4A及び図4Bに示される温度センサ462a~462dなどの温度センサの集合であり得る。制御信号165は、推定された波面に基づいて生成される。制御信号165は、周波数チャープ音波を音響光学材料116内に投入させるために、光学システム110に印加される。
【0030】
周波数チャープ波は、周波数が時間的に変化する波である。したがって、周波数チャープ音波は、時間的に変化する周波数を有する音波である。音響光学材料116内を伝搬するとき、音波は、音波の周波数に依存する空間的配置を有する、圧縮領域(屈折率が高い)及び希薄領域(屈折率が低い)を形成する。圧縮領域及び希薄領域は、材料116内に過渡回折素子117を作成する。過渡回折素子117は、材料116内を材料116の音の速さで移動する空間的に変動する屈折率パターンである。回折素子117は、音波が音響光学材料116内を伝搬するときのみ、音響光学材料116内に存在する。言い換えれば、回折素子117は永続的とは反対に過渡的又は一時的であり、回折素子117は時間的な或る瞬間にのみ空間的に固定される。
【0031】
過渡回折素子117とビーム106との間の相互作用の結果として、ビーム106の増幅及び/又は位相変調が生じる。過渡回折素子117は、圧縮領域及び希薄領域の空間的配置に依存する角度で、ビーム106を回折する。したがって、材料116内を伝搬する音波の周波数成分は過渡回折素子117の回折特性を決定する。音波の周波数成分は、側部108で決定されるビーム106の波面に基づいて、制御システム164によって決定される。光ビームの波面は、同じ位相を有するビーム上の地点の集合である。理想的な条件の下で波面は平坦であり、これは、同じ位相を有するビーム上のすべての地点は物理的ロケーションに同時に到達することを意味する。ビーム106の波面が側部108で平坦でない場合、制御システム164は、ビーム106との相互作用によって波面ディストーションを除去又は緩和することが可能な回折特性を伴う過渡回折素子117を形成することになる、音波の周波数成分を決定する。このようにして、光学システム110は、主目的(例えば、反射をブロックすること)を実行することが可能であり、その主目的を実行することから生じ得る波面ディストーションは、いかなる付加的な光学素子をシステム100に追加することもなく補正される。
【0032】
ビーム106は、長波(LW)赤外領域(例えば、9~12ミクロン(μm)、10.26μm、10.19μm~10.26μm、又は10.59μm)内の波長を伴う、高電力(例えば、数十又は数百ワット(W))の光ビームであり得る。音響光学材料116は、ビーム106の波長で少なくとも部分的に伝達可能な材料である。例えば、波長が9~12μmの間(例えば、10.26μm又は10.59μmなど)である実装形態において、音響光学材料116はゲルマニウム(Ge)又はガリウムヒ素(GaAs)であり得る。LW赤外領域内で伝達可能な材料は、温度変化(dT)を伴う屈折率変化(dn)の量を示す測定基準である、相対的に高い熱光係数(dn/dT)と、材料がどれだけの入射エネルギーを(恐らくは熱として)吸収するかを示す測定基準である、相対的に高い吸収係数とを、有する傾向もある。例えば、Geのdn/dTは、ケルビン度当たり(K-1)396×10-6である。GaAsのdn/dTは147×10-6-1である。これに対して、シリカガラス(約4μmを超える赤外線内では伝達不能である)のdn/dTは12×10-6-1である。10.6μmでのGeの吸収係数はセンチメートル当たり(cm-1)0.027であり、GaAsの吸収係数は0.01cm-1である。1μm(シリカガラスを使用する応用例での例示の動作波長)でのシリカガラスの吸収係数は、10×10-6cm-1である。
【0033】
したがって、LW赤外線波長で光ビームを使用する応用例に好適な、Ge又はGaAsなどの音響光学材料は、より多くのエネルギーを吸収する傾向にあり、ビームが通過する容積内の温度がより大きく増加する可能性があり、また他の波長(可視波長など)に好適な材料に比べて屈折率がより大きく変動する可能性がある。加熱及び対応する屈折率の変化は、ビーム106が音響光学材料116を通過する際に、ビーム106の波面を歪曲させる可能性がある。ディストーションは、ポインティングエラー及び/又はフォーカシングエラーを生じさせる可能性がある。ポインティングエラーは、ビーム106をy-z面内の誤った及び/又は予期せぬロケーションに向かわせる。フォーカシングエラーは、ビーム106のフォーカスを、x方向に沿った予期せぬ及び/又は誤ったロケーションに発生させる。追加又は代替として、フォーカシングエラーは、フォーカス品質を低下させる可能性がある。例えばフォーカシングエラーは、最適及び/又は予測されるスポットサイズに比べて、ビーム106が焦点面内により大きいか又は小さいスポットサイズを有することにつながる可能性がある。フォーカシングエラー及びポインティングエラーは、光学システム110が所望のフォーカスポイントから相対的に遠い(例えば、数十メートル)応用例において、より顕著になる。こうした応用例の一例が、図8図11に示すようなEUV光源である。
【0034】
吸収される光パワーに加えて、音響光学材料116は、音波を音響光学材料116内に投入するために使用されるトランスデューサ(図2に示されるトランスデューサ114a及び114bなど)から吸収される音響パワーに起因して、加熱されることになり得る。EUV光源などの光学システム110を採用するいくつかの応用例において、光ビーム106は相対的に高い光パワー(例えば、数十又は数百ワット)、伝搬方向に対して垂直な片における相対的に大きな直径を有し、また、前述のように、音響光学材料116に使用される材料は、相対的に高い光吸収を有する傾向がある。したがって、音響光学材料116が相対的に大きな明らかな開口を有し、音響光学材料116を光学的に損傷させることなくビーム106を伝達できることを保証するために、音響光学材料116は、ビーム106の伝搬方向に対して垂直な平面内に大きな範囲(例えば、最高1センチメートル)を有する。音響光学材料116が大きいため、音響光学材料116に投入される音波は大量のRF音響パワーを有する。結果として、EUV光源などの応用例における音響光学材料116の加熱のためのポテンシャルは、他の応用例におけるよりも大きい可能性がある。
【0035】
上述の例は、LW赤外波長を有するビーム106を考察している。しかしながら、ビーム106は異なる波長を有し得る。例えばビーム106は、1.06μmの波長を有し得る。これらの実装形態において、音響光学材料116は、例えば、酸化テルル(TeO)、カルコゲナイドガラス、リン化インジウム(InP)、又はニオブ酸リチウム(LiNbO)であり得る。音響光学材料116の物理的効果によって生じるディストーションは、音響光学材料116の組成に関係なく、音波の周波数成分を調節することによって補償され得る。言い換えれば、本明細書で考察する光学システムにおける物理的効果を補償するための技法は、LW赤外波長で伝達可能な音響光学材料以外の音響光学材料にも適用可能である。
【0036】
加えて、音響光学材料116を出るビーム106の波面のディストーションは、制御システム164で推定され、音波の周波数成分を調節することによって補償されるため、光学システム110は、そうでなければ音響光学材料との光学的相互作用の効果を低減させるために使用され得る別の構成要素を必ずしも含むとは限らない。例えば光学システム110は、音波の複数の反射が音響光学材料116内で発生するのを防ぐために、音響光学材料116の境界で過剰な音波を吸収する音響ターミネータなどの、必ずしも別のオブジェクトを含むとは限らない。光学システム110には、別の冷却システムがない場合もある。更に音響光学材料116には、修正された境界形状(例えば、ノッチ、傾斜エッジ、又はくさびなど)がない場合がある。したがって、こうした別のオブジェクト及び/又は修正された境界を含むシステムに比べて、光学システム110は、製造及び保守が単純な可能性があり、使用する部品が少なく、主目的に使用されるシステム110の構成に比べて修正を必要としない。すなわち、本明細書で考察する補償技法は、音響ターミネータ、別の冷却システム、及び/又は他の緩和デバイスと共に、及び/又は、既存のシステムの性能を更に向上させるために修正された境界を含む材料と共に、使用され得る。例えば、本明細書で考察する技法は、既存のシステムを改造するために使用され得る。
【0037】
制御システム164は、電子ストレージ166、電子プロセッサ167、及び入力/出力インターフェース168を含む。電子プロセッサ167は、汎用又は特定用途向けマイクロプロセッサ、及び任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサなどの、コンピュータプログラムの実行に好適な1つ以上のプロセッサを含む。一般に、プロセッサは、読み取り専用メモリ又はランダムアクセスメモリ又はその両方から命令及びデータを受信する。電子プロセッサ167は、任意のタイプの電子プロセッサであり得、また複数の電子プロセッサを含み得る。電子ストレージ166は、RAMなどの揮発性メモリ又は不揮発性メモリであり得る。いくつかの実装形態において、電子ストレージ166は、不揮発性及び揮発性の部分又は構成要素を含み得る。電子ストレージ166は、実行されるとき、恐らく、プロセッサ167を、制御システム164、光学システム110、センサ162、及び/又は光源102内の、他の構成要素と通信させるコンピュータプログラムとして、命令を記憶する。I/Oインターフェース168は、制御システム164が、データ及び信号を、オペレータ、光源102、及び/又は別の電子デバイス上で実行している自動化プロセスから受信すること、及び/又はそれらに提供することを可能にする、任意の種類の電子インターフェースである。例えば、I/Oインターフェース168は、視覚ディスプレイ、キーボード、及び通信インターフェースのうちの1つ以上を含み得る。
【0038】
図2を参照すると、システム200のブロック図が示されている。システム200はシステム100(図1)の実装形態の一例である。システム200は、光源102と、入力側207でビーム106を受信する音響光学システム204とを含む。システム204は、無線周波数(RF)電気増幅器212a及び212b、波形ジェネレータ227a及び227b、並びに音響光学デバイス211a及び211bを含む、光学システム210を含む。音響光学デバイス211aは、音響光学材料216aと、境界215aにあるトランスデューサ214aとを含む。音響光学デバイス211bは、境界215bでトランスデューサ214bに取り付けられた音響光学材料216bを含む。
【0039】
音響光学デバイス211a、211bは、ビームパス128に沿って直列に配置される。図に示された例では、音響光学デバイス211aは、光源102と音響光学デバイス211bとの間にある。ビーム106は側部207で光学システムに入り、音響光学材料216a及び216bを通過して、側部208で光学システムを出る。上述のように、音響光学デバイス211a、211bは、ビームパス上へ、又はビームパスから離れて、光を偏向させるために、システム内に存在し、偏向は、一定周波数音波を音響光学材料216a、216b内へ投入することによって達成される。一定周波数音波は、それぞれの音響光学材料216a、216b内に過渡回折素子217a、217bを生成する。音響光学材料216a、216b内の物理的効果に起因して、側部208で出るビーム106の波面は歪曲することになり得る。ディストーションを補償するために、過渡回折素子217a、217bは修正され、例えば、過渡回折素子217a、217bは、一定周波数音波の代わりに、又はそれらに加えて、材料216a、216b内にチャープ周波数音波を投入することによって修正され得る。素子217a、217bの回折特性は(チャープ周波数音波に基づいて修正又は生成される場合)、光ビーム106と素子217a及び/又は217bとの間の相互作用が、波面ディストーションを除去又は緩和するものである。
【0040】
側部207でのビーム106の波面(材料216a及び216bを通過した後)は、センサ162からの情報に基づいて制御システム164によって推定される。制御システム164は、ビーム106に適用された場合、波面ディストーションを除去又は緩和することになる補正位相パターンを決定する。制御システム164は、音響光学材料216a及び/又は216b内にそれぞれ回折素子217a、217bとして存在する場合、ビーム106が材料を通過するとき、波面ディストーションを除去又は緩和するために、補正位相パターンをビーム106上に付与することになる、音波の周波数特徴も決定する。
【0041】
トランスデューサ214a、214bは、それぞれ電気信号213a、213bを提供する、RF増幅器212a、212bにそれぞれ結合される。トランスデューサ214a及び214bは、電気信号213a及び213bを、それぞれ音響光学材料216a、216bに結合される音波に変換する。生成される音波の周波数成分は、電気信号213a、213bの周波数成分に依存する。図に示された例において、トランスデューサ214aは境界215aで音響光学材料216aに接続され、トランスデューサ214bは境界215bで音響光学材料216bに接続される。境界215aは下面境界(材料216aの中心に対して-y方向)であり、境界215bは上面境界(材料216bの中心に対して+y方向)である。トランスデューサ214a、214bをそれぞれ音響光学材料216a、216bの反対側に配置することで、結果として、トランスデューサ214a、214bによって生成される音波は反対方向に伝搬することになる。図2の例において、トランスデューサ214aによって生成される音波は+y方向に伝搬し、トランスデューサ214bによって生成される音波は-y方向に伝搬する。
【0042】
トランスデューサ214aによって生成される音波は過渡回折素子217aを作成し、これが音響光学材料216a内を+y方向に伝搬し、トランスデューサ214bによって生成される音波は過渡回折素子217bを作成し、これが音響光学材料216b内を-y方向に伝搬する。過渡回折素子217a、217bの回折特性は、音波の周波数成分によって決定される。音波の周波数成分を制御することによって、光学システム210の位相プロファイル又は位相パターンも制御され得る。光学システム210の位相プロファイル又は位相パターンは、音響光学材料216a、216bを通過するビームに起因して、y-z面内でビーム106に付与される位相である。例えば、音響光学材料216a及び216bを収束回折レンズとして集合的に動作させるために、RF電気信号213aは線形チャープ周波数を有し、RF電気信号213bは、同じ線形チャープ周波数であるが、180度(°)位相外れである。他の位相プロファイルは、RF電気信号213a、213bの周波数成分を調節することによって達成され得る。
【0043】
音響光学材料216a及び216bが収束回折レンズとして集合的に働く例を続けると、ビーム106が過渡回折素子217aと相互作用の後に音響光学材料216aを出るとき、ビーム106は、過渡回折素子217aを作成した音波の周波数成分に依存する回折パターンに従って回折される。ビーム106は、ビーム106が材料216aに当たるときの伝搬の方向(この例では+x方向)に伝搬し、過渡回折素子217aは+x方向に関する角度でビーム106を回折する。過渡回折素子217aを作成した音波の周波数は時間的に変動するため、過渡回折素子217aが材料216aを介して移動するにつれて、光が材料216aの特定のロケーションで偏向される角度も変動し得る。したがって、ビーム106が回折素子217aによって偏向される角度は時間に依存する。
【0044】
偏向角度の時間依存性に対抗するために、音波は音響光学材料216b内を反対方向(-y方向)に伝搬し、材料216a内を伝搬する音波とは180°の位相外れである。過渡回折素子217bは過渡回折素子217aとは反対方向に伝搬するため、過渡回折素子217bは、過渡回折素子217aと同じ量であるが+x方向に関して反対方向にビーム106を偏向させる。したがって、偏向の時間依存性は補償され、ビーム106は+x方向に材料216bを出る。
【0045】
音響光学材料216bから出た後、ビーム106は、音響光学材料216aに入る前のビーム106の位置に比べて-y方向に変位される。変位は、ビーム106が過渡回折素子217aによって偏向された後に進む空間的距離によって生じる。変位の量は、音響光学材料216a及び216bの偏向角度及び分離によって決定される。
【0046】
図2の例において、光学システム210は単一ペアの音響光学デバイス(音響光学デバイス211a及び211b)を含む。上述のように、音響光学デバイスはビーム106上に位相パターンを付与する。音響光学デバイス211a、211bの各々は、ビームを同じ次元に収束又は発散させる位相パターンを印加し得る。例えば、過渡回折素子217aの回折特徴は、ビーム106が音響光学デバイス211aを通過した後、ビーム106をy次元に発散させ得、過渡回折素子217bの回折特徴は、音響光学デバイス211bを通過した後、(音響光学デバイス211aの通過から発散している)ビーム106をy次元に収束させ得る。したがって、こうした音響光学デバイスのペアは、円柱レンズとして動作するように構成され得る。
【0047】
光学システム210の他の実装形態が可能である。例えば、光学システム210は、ビーム106の波面を2次元に形状化するために使用される、直交するか又は垂直に交差する音響光学デバイスのペアを含み得る。これらの実装形態において、過渡回折素子217aの回折特徴はビーム106をy次元に発散させ得、過渡回折素子217bは(音響光学デバイス211aを通過した後発散している)ビーム106をz次元に収束させ得る。したがって、直交する音響光学デバイスのペアを使用して、ビーム106の振幅及び/又は位相を2次元で変調することができる。単一の直交する音響光学デバイスのペア(ペアのうちの一方の音響光学デバイスが他方の音響光学デバイスに対して直交する)は、過渡回折素子が音響光学材料内を移動する距離に比べてレーザパルス持続期間が短い実装形態において使用することができる。
【0048】
更に、いくつかの実装形態において、光学システム210は、図2に示されたものとは異なる数の音響光学デバイスを含む。例えば光学システム210は、パス128上に直列に位置決めされた複数の音響光学システム204を含み得る。言い換えれば、光学システム210は、音響光学デバイスの複数ペアを含み得る(すなわち、光学システム210は2つより多くの音響光学デバイスを含み得る)。これらの実装形態において、すべての音響光学デバイスによってビーム106上に付与される総位相パターンは、各ペアによって付与される位相パターンの合計である。例えば、直交ペア(例えば、互いに平行な2つの音響光学デバイスの第1のグループと、第1のグループに対して直交する2つの音響光学デバイスの第2のグループ)は、球面レンズとして動作するように構成され得る。レーザパルス持続時間が、過渡回折素子が音響光学材料内を移動する距離に対して大きい実装形態において、直交する音響光学デバイスの2つのペア(例えば、1つのペアはx-y面内にあり、1つのペアはy-z面内にある)を使用することができる。更に、いくつかの実装形態において、光学システム210は、他の構成で配置された音響光学デバイスのペアを含み得る。例えば光学システム210は、音響光学デバイスの3つのペアを含み得、第1のペアは互いに平行な2つの音響光学デバイスを含み、第2のペアは第1のペアに対して45°に配向され、第3のペアは第1のペアに対して直交している。光学システム210は、音響光学デバイスの3つよりも多くのペアを含み得、各ペアは他方に対して任意の様式で配向され得る。例えば光学システム210は、音響光学デバイスの4、5、又は6つのペア、或いは音響光学デバイスの6つを超えるペアを含み得る。
【0049】
各音響光学デバイスは、各音響光学デバイスが異なるRF電気信号を受信できるように、別々のRF増幅器及び別々の波形ジェネレータに接続され得る。したがって、各音響光学デバイスの位相パターンは個別に制御され得、特定の状況に対して必要な補償を提供するように適合され得る。更に、いくつかの実装形態において、光学システム210は単一の音響光学デバイスのみを含む。
【0050】
図3を参照すると、別の例示的システム300のブロック図が示されている。システム300はシステム100(図1)の別の例示的実装形態である。システム300は、図2に関連して上記で考察した音響光学システム204を含む。図3に示される実装形態において、音響光学材料216a、216bを通過した後、ビーム106は分光器305(例えば、ビームスプリッタなど)と相互作用し、分光器305はビーム106の一部分361を波面センサ362に伝送する。波面センサ362は、例えば段階的位相マスク、波面センシングカメラ、又は干渉計であり得る。波面センサ362は、部分361の波面を表すデータを制御システム164に提供する。制御システム164は、データを分析し、部分361の波面を推定する。制御システム164は、推定された部分161の波面に基づいて制御信号165を生成し、制御信号165を波形ジェネレータ227a及び227bに提供する。各波形ジェネレータ227a、227bは、制御信号165によって示される周波数成分を伴うチャープ電気信号を生成する。制御信号165は、各波形ジェネレータ227a及び227bについて別々の制御信号を含み得るため、波形ジェネレータ227a、227bは、異なる周波数特徴を有する電気信号を生成し得る。チャープ電気信号は、増幅電気信号213a、213bを形成するために、それぞれRF増幅器212a、212b内で増幅される。電気信号213a、213bはそれぞれトランスデューサ214a、214bに提供され、これらが信号213a、213bを音波に変換し、音波はそれぞれ境界215a、215bでそれぞれ音響光学材料216a、216bに投入される。
【0051】
したがって、電気信号213a及び213bは、(ビーム106が材料216a及び216bを通過した後の)出力側208でのビーム106の波面の推定に基づく周波数成分を有するチャープ周波数信号である。過渡回折素子217a及び217bによって付与される回折パターンは音波の周波数に依存するため、電気信号213a及び213bの周波数成分を(例えば、制御信号165を用いて波形ジェネレータ227aから227bを制御することによって)制御することで、材料216a及び216bによって付与される回折パターンの制御を可能にする。これにより、ビーム106の波面におけるディストーションを補正、意図的に調節、又は緩和することができる。例えば、音響光学材料216a及び/又は216b内の物理的効果(材料216a及び216bのいずれか又は両方の屈折率における変化を発生させる加熱など)によって生じるディストーションを、補正又は緩和することができる。
【0052】
図4Aは、図1のシステム100の実装形態の別の例である、システム400のブロック図である。システム400は、システム400が分光器305又は波面センサ362を含まないという点で、システム300(図3)とは異なる。システム400は、音響光学デバイス211a、211bを含む、音響光学システム404を含む。波面センサ362を用いてビーム106の波面を推定する代わりに、音響光学システム404は、音響光学材料216a及び216bの空間温度分布を推定することによってビーム106の波面を推定する。温度分布は、例えば、材料上の1つの地点から別の地点までの温度変化であり得る。システム404は、音響光学材料216a及び216b上に配置される温度センサ462を含む。温度センサ462は、例えば熱電対及び/又は抵抗温度計であり得る。
【0053】
図4Aの例において、温度センサ462の各々は、各音響光学材料216a及び216bの異なる境界に配置される。図4Bも参照すると、センサ462が音響光学材料216aでどのように位置決めされ得るかの一例が示されている。図4Bは、センサ462a~462dと標示された、センサ462の4つのインスタンスを示す。センサ462~462は、例示の目的で提示されている。他の実装形態では、より多いか又はより少ないセンサが使用され得る。図4A及び図4Bの例において、センサ362a~362dは、音響光学材料216aの周囲又は周囲近くの4つの異なるロケーションに位置決めされ、センサ462aは上側境界(材料216aの中心から+y方向)にあり、センサ462bは右境界(材料216aの中心に対して+z方向)にあり、センサ462cは下側境界(材料216aの中心に対して-y方向)にあり、センサ462dは左境界(材料216aの中心に対して-z方向)にある。他の実装形態では、センサは異なるロケーションに位置決めされ得る。
【0054】
各センサ462a~462dからの温度測定値は、制御システム164に提供される。図5でより詳細に考察するように、制御システム164は、音響光学材料216a及び216bの境界で測定された温度に基づいて、音響光学材料216a及び216b全体の温度分布を推定するモデルを実装し得る。
【0055】
図5を参照すると、光学システムにおける物理的効果を補償するための例示的プロセス500のフローチャートが示されている。例えばプロセス500を使用して、音響光学材料を通過して音響光学材料を出るビームの波面のディストーションを補償することが可能であり、ディストーションは、完全に又は部分的に、音響光学材料における物理的効果から生じる。プロセス500は、制御システム164の電子プロセッサ167によって実装され得、前述のシステム104、204、及び404のうちのいずれかと共に使用され得る。例示のために、プロセス500を、音響光学デバイス111及び関連付けられた構成要素(図6A及び図7Aに示される)に関連して考察する。プロセス500は、複数の音響光学デバイス111に適用可能である。音響光学デバイス111は、システム104、204、及び404のいずれかに含まれる音響光学デバイスのうちのいずれか又はすべてであり得る。例示の目的で、プロセス500を、図5図6A~6C、図7A、及び図7Bに関連して考察する。
【0056】
プロセス500において、図6A及び図7Aに示されるように、ビーム106が音響光学材料116を通過した後に光ビーム106の波面が推定される(510)。光ビーム106の波面は、音響光学材料内の物理的効果によって発生する意図しないディストーションを有し得る。波面の推定はディストーションの指示を含む。音響光学デバイス111のための制御信号が推定された波面に基づいて生成され(520)、制御信号は、音響光学材料116内を伝搬する周波数チャープ音波を生成するために音響光学デバイスに印加される(530)。周波数チャープ音波は、材料116内に過渡回折素子117を形成し、ビーム106と過渡回折素子117との間の相互作用が、波面ディストーションを補正又は緩和する。プロセス500の構成要素を以下でより詳細に考察する。プロセス500は、光ビームの波面を連続的に推定し、様々な制御信号を音響光学デバイスに印加する、連続するフィードバックのような(例えば、図5において(530)から(510)へと流れる線で示されるような)プロセスであり得る。いくつかの実装形態において、プロセス500は事前設定された時間的な間隔で実行可能であるか、プロセス500は(例えば、(510)、(520)、及び(530)を実行した後、プロセス500を終了することによって)1回実行可能であるか、又は、プロセス500はオンデマンドで実行可能である。
【0057】
音響光学材料116を通過して音響光学材料116を出る、光ビームの波面が推定される(510)。上述のように、波面は、波面を測定するセンサ(図3のセンサ362など)からのデータに基づいて、又は、音響光学材料の温度を(図4Aのセンサ462などを用いて)推定することによって、推定され得る。図3も参照すると、光ビーム106の波面は、波面センサ362によって提供されるデータから推定され得る。前述のように、音響光学材料116内の物理的効果は波面を歪曲させる可能性がある。図6A図6Cも参照すると、音響光学材料116内の物理的効果によって発生する波面ディストーションの一例が示されている。図6A図6Cの例において、音響光学材料116の温度は、y次元(+y及び-yの方向を含む次元)に沿った位置の関数として変動する。図6Bは、材料116の温度の線図を、+y方向に、材料116内の位置の関数として示す。図6Bに示されるように、材料の温度は、+y方向に、位置の関数として線形に増加する。この例において、材料116は一定の熱光係数(dn/dT)を有し、したがって図6Cに示されるように、材料116の屈折率(n)も、+y方向に、位置の関数として線形に増加する。
【0058】
音響光学材料116の光路長は、数式(1)に示されるように、材料116の屈折率に依存し、
【数1】
上式で、OPLは光路長であり、nは屈折率であり、dは材料116内の光線の幾何学的経路である。屈折率は音響光学材料116内で空間的に変動するため、材料116内には対応する光路長の空間的変動が存在する。結果として、ビーム106の波面は音響光学材料116によって歪曲される。図6Aの例において、ビーム106の波面は、材料116を通過した後に傾斜した波面109となる。波面109が傾斜するのは、材料116の屈折率が低い領域を通過するビーム106の部分が空間内の地点に到達した後に、屈折率の高い領域を通過するビームの部分が空間内の同じ地点に到達するためである。材料116内に物理的効果が無い場合、波面109は平坦になる(図6Aの例では、平坦な波面は、傾斜なしにy次元に沿って延在するものである)。再度図5(510)を参照すると、波面109は波面センサ362によって測定され、測定された波面を表すデータは制御システム164に提供される。
【0059】
いくつかの実装形態において、波面は、図4Bの温度センサ462a~462dなどの温度センサによって取得されるデータから推定される。温度センサ462a~462dからのデータは、音響光学材料116全体にわたる温度分布の推定を決定するために、制御システム164によって分析される。図4A及び図4Bに関連して考察するように、センサ462a~462dは音響光学材料116の様々なロケーション又は境界(例えば、様々な外周又は縁部)にある。制御システム164の電子ストレージ166は、センサ462a~462dから受信される測定された境界温度に基づいて音響光学材料116全体にわたって温度を予測するモデルを定義する、情報を記憶し得る。モデルは、例えば、(固体内に含まれる)3次元空間内の経時的な温度分布を推定する、熱伝導方程式に基づき得る。材料(例えば、音響光学材料116)の3次元矩形ブロックのための熱伝導方程式は、数式(2)に示され、
【数2】
上式で、Tは温度であり、∇はベクトル微分演算子であり、ρは音響光学材料116の質量密度であり、kは熱伝導率であり、cは材料の比熱容量であり、
【数3】
は材料内の容積熱流束である。音響光学材料116内の容積熱流束は、例えば、音響エネルギー及び/又は光エネルギーの吸収から生じる熱であり得る。
【0060】
前述のように、ビーム106はLW赤外光ビームであり得、LW赤外光と共に使用するのに適した材料は、特に熱吸収が生じやすい可能性がある。測定された温度を使用すると、音響光学材料116内の温度分布のモデルが数式(2)から取得され得る。音響光学材料116の屈折率における空間的変動の推定は、材料の温度分布及び熱光係数(dn/dT)から決定され得る。波面の推定は、屈折率の推定された空間的変動から決定され得る。
【0061】
光学システム110のための制御信号165が、波面の推定に基づいて生成される(520)。制御信号165は、過渡回折素子117を形成するために音響光学材料116に投入される周波数チャープ音波を生成するのに十分なデータ及び/又は情報を含む。例えば制御信号165は、波形ジェネレータによって形成されることになる電気信号の周波数成分、持続時間、及び/又は振幅について、波形ジェネレータ127に通知する情報を伴う、波形ジェネレータ127の入力インターフェースに送達される電気信号であり得る。制御信号165を生成するために、制御システム164は、推定された波面を基準波面と比較し得る。基準波面は平坦な波面であり得る。推定される波面及び基準波面は、例えば減算によるなど、数値的に比較され得る。
【0062】
いくつかの実装形態において、波形ジェネレータ127及び/又は制御システム164は、反復するか又は予測される物理的効果を補償する周波数チャープ音波を生成するのに十分な制御信号を記憶し得る。いくつかの実装形態において、制御信号165は、推定された波面を基準波面と比較すること、及び、複数の既存の制御信号及び記憶された制御信号のうちのいずれが、推定された波面を生み出した熱的ディストーションと最も緊密に関連付けられているかを決定することによって、生成される。
【0063】
制御信号165は、音響光学材料内の物理的効果から生じる熱的ディストーションの補正以外の目的で、音響光学材料116内への音波の投入を制御するために使用され得る。例えば、いくつかの実装形態において、たとえ推定された波面及び基準波面が実質的に同じであっても、制御信号165は生成されるが、周波数チャープ音波の生成に関するデータ又は情報は伴わない。いくつかの実装形態において、推定された波面が基準波面と実質的に同じである場合、制御信号165は生成されない。
【0064】
制御信号165は、音響光学材料116内を伝搬する周波数チャープ音波を生成するために光学システム110に印加される(530)。過渡回折素子117は、音波が音響光学材料116内を伝搬するときに形成される。制御信号165内のデータ及び/又は情報は、波面の推定、及び/又は、推定された波面と基準波面との間の相違に基づく。したがって、音波の周波数成分(制御信号165内のデータ及び/又は情報から指定される)は、材料116内の圧縮領域及び希薄領域の間隔を決定する。
【0065】
音響光学材料116内の物理的効果に起因して波面が傾斜している、上記で考察し図6Aに示される例を続けると、図7A及び図7Bは物理的効果を補償する例を示す。図7Aは、過渡回折素子117が材料116内に形成される時間的インスタンスでの音響光学材料116の概略表現である。図7Bは、時間の関数として回折素子117を生成するための、トランスデューサ114を駆動させるために使用される電気信号113の線図である。電気信号113の周波数は経時的に変動し、信号113の前の部分(図7Bにおける左側)の方が信号の後の部分(図7Bにおける右側)よりも周波数が低い。信号113における周波数は、例えば、数十メガヘルツ(MHz)、40MHz、60MHz、20~100MHz、又は1MHzから1ギガヘルツ(GHz)の間であり得る。
【0066】
電気信号113は、トランスデューサ114に提供される前に電気増幅器112によって増幅され得る。増幅された電気信号は、例えば20~100Wの電力を有し得る。トランスデューサ114は、電気信号113を、境界115でトランスデューサ114と材料116との間の物理的接触を介して音響光学材料116に結合される音波に変換する。音波の周波数は、電気信号113の周波数に比例する、及び/又は等しい。時間的に第1に発生する電気信号113の部分は、第1にトランスデューサ114に印加され、したがって、音波の低周波数部分は第1に材料116に入り、高周波数部分より前に材料116内を+y方向に伝搬する。音波は過渡回折素子117を形成し、材料116を介して+y方向に移動する。図7Aの例において、117と標示された領域内をx次元に沿って延在する線は、材料を介して進行する音波から生じる、材料116内の圧縮領域と希薄領域との間の距離を表す。過渡回折素子117の圧縮領域と希薄領域との間の距離は、音波の周波数に依存する。距離123a、123bは、それぞれ、音波の高周波数部分及び音波の低周波部分における圧縮領域と希薄領域との間の例示的な距離を表す。過渡回折素子117と相互に作用する光は、数式(3)に示されるように、音波の波長(音波の周波数に反比例する)に依存する角度で回折され、
【数4】
上式で、mは回折次数であって・・・-2、-1、0、1、2・・・に等しく、Λは音波の波長であり、λは音響光学材料116上に入射する光の波長である。回折角度θは、音波の周波数が増加するにつれて(又は、音波の波長が減少するにつれて)増加する。図7Aの例において、距離123aなどの間隔を有する素子117の部分で過渡回折素子117と相互作用する光は、角度121aで回折される。距離123bなどの間隔を有する素子117の部分で過渡回折素子117と相互作用する光は、角度121bで回折される。距離123aは距離123bよりも小さいため、角度121aは角度121bよりも大きい。
【0067】
ビーム106が材料116上に入射するインスタントにおいて、過渡回折素子117は図7Aに示されるように材料116内に配置される。ビーム106は回折素子と相互作用し、圧縮領域と希薄領域との間の距離に依存する角度で回折される。したがって、図7Aの例において、トランスデューサにより近い回折素子117の一部分と相互作用するビーム106の部分は、トランスデューサ114から(+y方向に)より遠い過渡回折素子117と相互作用するビーム106の部分よりも大きい角度で回折される。異なる回折量の結果として、波面の傾斜109(図6Aに示される)が取り除かれる。音響光学材料116から出現するビームは、平坦な波面709を有する。
【0068】
過渡回折素子117が音響光学材料116内に存在する時間量は、材料116内の音の速さ、励起信号113の持続時間、及びy次元(+y及び-yの方向を含む次元)に沿った材料116の範囲に依存する。ビーム106はバルス光ビームであり得、各パルスは、例えば100ナノ秒(ns)以下の持続時間を有し得る。Ge又はGaAs音響光学材料116の場合、パルスが過渡回折素子117と相互作用する間、過渡回折素子117は材料116内を500ミクロン(μm)以下で進行し得る。前述のように、y-z面内の材料116の開口は1cmであり得、500μmよりはるかに大きく、歪み波によって生じる圧縮領域と希薄領域との間の距離よりもはるかに大きい。したがって、過渡回折素子117は永続的でないが、回折素子117は、光のパルスが素子117と相互作用している間は識別できるほどには変化しない。このようにして、光学システム110が物理的効果の変化を補償するために使用されているが、素子117と相互作用する各単一パルスの波面を形状化及び補正するには十分安定している間に、過渡回折素子117は修正され得る。
【0069】
プロセス500は、システム100の他の部分における光学素子内の物理的効果を補償するためにも使用され得る。例えば、音響光学材料を出るビームの波面を測定するために波面センサ(図3の波面センサ362など)を使用する実装形態において、測定される波面は音響光学材料以外の要素によって発生するディストーションを含み得る。したがって、ビーム106が音響光学材料116を通過した後にビーム106の波面を推定することによって、ビーム106が材料116を通過する前に相互作用する、例えばレンズ及びミラーなどの光学素子によって発生する波面上の効果も、歪曲された波面内で反射され得る。音響光学材料116自体によって発生するディストーションに加えて、他の素子によって発生するディストーションも補正され得る。
【0070】
前述のように、プロセス500はフィードバックループ制御として実装され得る。例えば、音響光学材料116は、初期には、波面ディストーションを発生させる可能性のある音響加熱がない可能性がある。例えば初期には、材料116内を伝搬する音波が存在しない可能性がある。初期の一定周波数音波を(例えば、材料116に光を偏向させるために)材料に印加し得る。初期の一定周波数音波の生成の結果、材料116を通過する光ビームの波面にディストーションを生じさせる加熱が発生する。ディストーションが測定され(例えば、図5の510)、制御信号が生成される(例えば、図5の520)。過渡回折素子を形成するために材料116内を伝搬する周波数チャープ音波を生成するために、材料116を含む音響光学デバイスに制御信号が印加される(例えば、図5の530)。周波数チャープ音波は、初期の一定周波数音波を修正することによって生成され得る。材料116を通過する光は、周波数チャープ音波から形成される過渡回折素子との相互作用を介した、初期の一定周波数音波の生成から生じる波面に対して補正される。しかしながら、周波数成分のその修正は、わずかに異なるディストーション、及び/又は、熱平衡に達することなく異なる量の加熱を発生させる可能性がある。したがって、光ビームの波面が再度測定され、後続の修正された音波の形の更に修正された補正が材料116に適用されるように、プロセス500を繰り返すことができる。プロセス500は、定常状態に達するまで適用し続けることができる。
【0071】
図7Bのチャープ周波数電気信号113は例として示されている。異なるディストーションを補償するために異なる周波数成分を有する他の電気信号が生成され得る。例えば、Akemann等による「Fast spatial beam shaping by acousto-optic diffraction for 3D non-linear microscopy」、Optics Express、2015年10月19日、Vol.23、No.22、28191~28205ページで考察されるように、単一の音響光学デバイスで、N個の位置y(デバイスの音響光学材料の+y方向に沿ってi=1からNである)で変化する周波数を有する音波の場合、+x方向に音響光学材料を通過する光ビーム上に位相φ(y)を付与するためにyからyi+1の間に印加される音波の周波数は、数式(4)によって以下のように与えられる。
【数5】
【0072】
数式(4)において、vは音響光学材料内の音の速さであり、fは音響光学材料に印加される音波の周波数であり、φ(y)は、音響光学材料を通過するビームに印加されるべきy次元に沿った所望の位相である。数式(4)は例として提供されたものであり、他の既知の手法を使用して、印加される音波の周波数を所望の位相パターンに関係付けることもできる。例えば、Konstantinou等の「Dynamic wavefront shaping with an acousto-optic lens for laser scanning microscopy」、Optics Express、2016年3月21日、Vol.6、No.6、6283~6299ページは、音響光学デバイスのペアから出る光ビーム上の位相パターンと、音響光学デバイスに印加される音波の周波数との間の関係を導出する。
【0073】
図7Bにおいて、ビーム106は、x軸から何らかの角度であるように示されているため、過渡回折素子117上に法線入射しない。この角度は、例えば、過渡回折素子からの回折を最適にするように選択することができる。(わかりやすくするために、この角度は、図2及び図3などの様々な他の図には示されていない。)
【0074】
図8を参照すると、音響光学システム104を含む例示的なフォトリソグラフィシステム800のブロック図が示されている。図8の例は音響光学システム104を含む。しかしながら、音響光学システム204又は404のいずれかが使用可能であり、その両方とも音響光学システム104の実装形態である。
【0075】
フォトリソグラフィシステム800は、増幅光ビーム806’を生成する光源801を含む、EUV光源853を含む。増幅光ビーム806’は光源801から放出され、パス803に沿って+x方向にターゲット領域845に向かって伝搬する。ターゲット領域845はターゲット840を受け取り、ターゲット840は、増幅光ビーム806’との相互作用を介してプラズマに変換されるときにEUV光896を放出する材料を含む。EUV光896はリソグラフィツール895に提供される。リソグラフィツール895は、基板(例えば、シリコンウェーハ)を受け取り、ウェーハ上にマイクロ電子フィーチャを形成するためにEUV光896を用いて基板を露光する。
【0076】
ターゲット840は、増幅光ビーム806’の波長で反射する。ターゲット840が反射性であるため、増幅光ビーム806’がターゲット840と相互作用するとき、増幅ビーム806’のすべて又は一部は+x方向とは異なる方向のパス803に沿って反射する可能性がある。ビーム806の反射部分は、反射843と標示されている。反射843はパス803上を-x方向(+x方向とは反対)に進行し、光源801内に戻り得る。反射843などの、前進ビーム(ターゲット領域845に向かって光源801から伝搬するビーム)の反射は、「後方反射」と呼ばれる。
【0077】
光源801は、光発生モジュール844、音響光学システム104、及び光増幅器848を含む。光発生モジュール844は光源(1つ以上のレーザ、ランプ、又はそうした要素の任意の組み合わせ)である。光発生モジュール844は、例えば、10.26μm又は10.59μmの波長を有する光を放出する二酸化炭素(CO)レーザであり得る。光増幅器848は、ビームパス803上にある利得媒体849を有する。利得媒体849が励起されると、利得媒体849は光ビーム806に光子を提供し、増幅光ビーム806’を生成するために光ビーム806を増幅する。光増幅器848は、パス803上にそれぞれの利得媒体と共に配置された1つ以上の光増幅器を含み得る。光増幅器848は、図12Bのドライブレーザシステム1280などの、ドライブレーザシステムのすべて又は一部であり得る。
【0078】
光発生モジュール844は、音響光学システム104に向けてビームパス803上に光ビーム806を放出する。音響光学システム104は、光ビーム806がターゲット領域845に向けて伝搬できるようにする。しかしながら、音響光学システム104は、後方反射843をブロックする。加えて音響光学システム104は、プロセス500を使用して音響光学システム104における物理的効果も補償する。したがって、音響光学システム104は、後方反射をブロックするか又は減少させる主目的を実行し、システム800に付加的な光学要素を追加することなく音響光学システム104を使用することから生じ得る物理的効果も補償する。
【0079】
図9Aを参照すると、例示的な光源901及び音響光学システム104を含む、EUV光源953のブロック図が示されている。光源901は、光学システム800(図8)の光源801の代わりに使用され得る。光源901は、2つの光学サブシステム944a、944b、光増幅器848、及び音響光学システム104を含む、光発生モジュール944を含む。音響光学システム104は、パス903上の、光増幅器848と光発生モジュール944との間にある。
【0080】
光学サブシステム944a、944bは、それぞれ第1及び第2の光ビーム906a、906bを生成する。光学サブシステム944a、944bは、例えば2つのレーザであり得る。図9Aの例では、光学サブシステム944a、944bは2つの二酸化炭素(CO)レーザである。しかしながら他の実装形態において、光学サブシステム944a、944bは異なるタイプのレーザである。例えば、光学サブシステム944aはソリッドステートレーザであり得、光学サブシステム944bはCOレーザであり得る。
【0081】
第1及び第2の光ビーム906a、906bは異なる波長を有する。例えば、光学サブシステム944a、944bが2つのCOレーザを含む実装形態において、第1の光ビーム906aの波長は約10.26マイクロメートル(μm)であり得、第2の光ビーム906bの波長は10.18μmから10.26μmの間であり得る。第2の光ビーム906bの波長は10.59μmであり得る。これらの実装形態において、光ビーム906a、906bはCOレーザの異なるラインから生成され、結果として、光ビーム906a、906bは、どちらのビームも同じタイプのソースから生成されるが異なる波長を有することになる。光ビーム906a、906bは、異なるエネルギー又は強度も有し得る。
【0082】
光発生モジュール944は、第1及び第2のビーム906a、906bをビームパス903上へと誘導する、ビームコンバイナ949も含む。ビームコンバイナ949は、第1及び第2のビーム906a、906bをビームパス903上へと誘導することが可能な任意の光学素子又は光学素子の集合であり得る。例えば、ビームコンバイナ949はミラーの集合であり得、そのうちのいくつかは第1のビーム906aをビームパ943上へと誘導するように位置決めされ、その他は第2のビーム906bをビームパス943上へと誘導するように位置決めされる。光発生モジュール944は、光発生モジュール944内の第1及び第2のビーム906a、906bを増幅する、前置増幅器947も含み得る。
【0083】
第1及び第2のビーム906a、906bは、異なる時点でパス903上を伝搬し得るが、第1及び第2のビーム906a、906bはパス903を辿り、どちらのビーム906a、906bも実質的に同じ空間領域を音響光学システム104へと横断し、光増幅器848を介する。
【0084】
第1及び第2のビーム906a、906bは、ビームデリバリシステム955によって角度的に分配され、第1のビーム906aは初期ターゲット領域945aに向けて誘導され、第2のビーム906bは、初期ターゲット領域945aに対して-y方向に変位された、修正ターゲット領域945bに向けて誘導されることになる。いくつかの実装形態において、ビームデリバリシステム955は更に、第1及び第2のビーム906a、906bを、それぞれ初期及び修正ターゲット領域945a、945b内のロケーションへとフォーカスさせる。
【0085】
図9Aに示された例において、初期ターゲット領域945aは、初期ターゲット940a及び第1のビーム906aを受け取る。第1のビーム906aは、初期ターゲット940a内のターゲット材料の幾何分布を修正ターゲット領域945b内で受け取られる修正ターゲットへと修正するのに(又は、ターゲット材料の空間的再構成を開始するのに)十分なエネルギーを有する。第2のビーム906bは、修正ターゲット領域945b内でも受け取られる。第2のビーム906bは、修正ターゲット940b内のターゲット材料のうちの少なくとも一部を、EUV光を放出するプラズマに変換するのに十分なエネルギーを有する。この例では、第1のビーム906aは「プレパルス」と呼ばれ得、第2のビーム906bは「メインパルス」と呼ばれ得る。第1のビーム906aは初期ターゲット940aに反射して後方反射943aを生じさせ得、第2のビーム906bはターゲット940bに反射して後方反射943bを生じさせ得る。後方反射943a、943bはどちらも、パス903に沿って+x方向以外の方向に、光増幅器848内へと伝搬し得る。
【0086】
音響光学システム104は、後方反射943a及び/又は943bが光発生モジュール944に入るのを防ぎ得る。後方反射をブロックするか又は減少させる機能を実行することに加えて、音響光学システム104は、プロセス500(図5)を使用して音響光学システム104内の物理的効果も補償する。更に、例えばビームコンバイナ949又は前置増幅器947などのシステム900の他の部分で生じる物理的効果は、音響光学システム104及びプロセス500を使用して補償され得る。
【0087】
図9Bを参照すると、例示的音響光学システム904Bのブロック図が示されている。音響光学システム904Bは、光源901(図9A)、光源801(図8)、又は任意の他の光源において、音響光学システム104として使用され得る。
【0088】
音響光学システム904Bは、ダイクロイック光学素子971、反射素子972、音響光学デバイス911B、及びダイクロイック素子976を含む。音響光学システム904Bは、光学配置973、974も含み得る。光学配置973、974は、例えば、配置を通過する光ビームの直径を拡大又は縮小し得る。ダイクロイック素子971及び976は、ビームパス903上にある。ダイクロイック素子971及び976は、その波長に従って光を分離又はフィルタリングすることが可能な、任意の光学構成要素であり得る。例えば、ダイクロイック素子971及び976は、ダイクロイックミラー、ダイクロイックフィルタ、ダイクロイックビームスプリッタ、又はこうした要素の組み合わせであり得る。ダイクロイック素子971及び976は、互いに同一であり得るか、又は異なる構成を有し得る。図9Bの例において、ダイクロイック素子971及び976は、第1のビーム906aの波長(又は複数の波長)を反射し、第2のビーム906bの波長(又は複数の波長)を伝送する。
【0089】
第1のビーム906aは、ダイクロイック素子971からビームパス975上へと反射される。図9B及び図9Cの例では、パス975は一点鎖線で示されている。パス975は、ダイクロイック素子971と976との間にあり、反射素子972によって画定される空間的範囲及び形を有する。ビームパス975はビームパス903とは異なる。したがって、音響光学システム904Bでは、第1のビーム906aはビームパス903上には残らず、第1及び第2のビーム906a、906bは、素子971と976との間で空間的に異なるパス上を進行する。第1のビーム906aは、ビームパス975上を、光学配置973、974、及び音響光学デバイス911Bを介して伝搬した後、ダイクロイック素子976に到達し、ダイクロイック素子976はビーム906aを反射してビームパス903上へと戻す。第2のビーム906bは、ダイクロイック素子971及びダイクロイック素子976を通過し、音響光学システム904Bを介して伝搬する間、ビームパス903上に残る。
【0090】
音響光学デバイス911Bは、ダイクロイック素子971から976の間、ビームパス975上にある。音響光学デバイス911Bは、入射光をビームパス975上へ、又はビームパス975から離れて偏向させることが可能な、光学素子である。例えば、音響光学システム204(図2及び図3)又は404(図4A)は、音響光学デバイス911Bとして使用され得る。音響光学デバイス911Bは1つ以上の音響光学材料及び関連付けられたトランスデューサを含み、トランスデューサは振動して、音波を音響光学材料に投入する。
【0091】
音響光学デバイス911Bは、「通常オン」又は「通常オフ」モードで動作し得る。音響光学デバイス911Bが「通常オン」モードで動作するとき、音波はデバイス911Bの音響光学材料に印加され、光ビーム906aを意図的にビームパス975上へと偏向させるため、光ビーム906aは増幅器848に向かって伝搬することになる。音波は、光ビーム906aがビームパス975上へと偏向されるような周波数成分を有し、光ビーム906aの波面は、音響光学材料の物理的効果によって少なくとも部分的に発生するディストーションも補償される。例えば音波は、一定周波数波及びチャープ周波数波の重ね合わせであり得る。音波は、反射943aがパス975上を伝搬することが予測される期間中は、音響光学材料に印加されない。音波が印加されないため、音響光学材料は反射943aをパス975へと偏向させない。したがって反射943aはブロックされ、光発生モジュール944に到達しない。
【0092】
音響光学デバイス911Bが「通常オフ」モードで動作する場合、周波数チャープ音波は、光ビーム906aがビームパス975上を進行するときに音響光学材料に印加され得る。周波数チャープ音波は、ビーム906aがビームパス975上に残り、増幅器848へと伝搬するものである。周波数チャープ音波は、結果として角偏向を生じさせ得るが、デバイス911Bの下流での偏向の量及び素子の配置により、ビーム906aはパス975上に残ることになる。周波数チャープ音波は、光ビーム906a内の波面ディストーションも補償する。反射943aがパス975上に存在することが予測される時点で、周波数チャープ音波の代わりに又は周波数チャープ音波に加えて、一定周波数音波を音響光学材料に印加し得る。一定周波数音波は、反射943aが光発生モジュール944に到達しないように、反射943aをパス975から偏向させる。
【0093】
図9Cを参照すると、別の例示的音響光学システム904Cのブロック図が示されている。音響光学システム904Cは、光源901(図9A)、光源801(図8)、又は任意の他の光源において、音響光学システム104として使用され得る。
【0094】
音響光学システム904Cは、音響光学システム904Cが第2の音響光学デバイス911Cも含むことを除いて、音響光学システム904B(図9B)と同様である。音響光学システム204(図2及び図3)又は404(図4A)は、第2の音響光学デバイス911Cとして使用され得る。第2の音響光学デバイス911Cは、ダイクロイック光学素子971とダイクロイック光学素子976との間にある。前述のように、ダイクロイック光学素子971は、第2の光ビーム906bの波長を伝送する。したがって、第2の光ビーム906bはダイクロイック光学素子971を通過し、第2の音響光学デバイス911C上に入射する。
【0095】
音響光学デバイス911Bと同様に、第2の音響光学デバイス911Cは「通常オフ」モード又は「通常オン」モードで動作し得る。したがって、デバイス911Cは、光ビーム906b(図9Aのターゲットロケーション945bへと伝搬する)の波面を補償するために使用され、デバイス911Cは、反射943bが光発生モジュール944に到達するのを防ぐためにも使用される。図10及び図11は、音響光学システム104(或いはシステム204又はシステム404)を含む、付加的な例示のEUV光源を示す。図10は、別の例示的EUV光源1053のブロック図である。EUV光源1053は、音響光学システム104(或いはシステム204又はシステム404)が付加的な光分離デバイス1070と共に使用され得ることを示す。図11のX標示は、音響光学システム104(或いはシステム204、304、又は404)をEUV光源内に配置できる、様々な可能なロケーションを示す。
【0096】
EUV光源1053は、パス1003上に光ビーム1006を発生させる光源1001を含む。光源1001は、光発生モジュール944、前置増幅器947、音響光学システム104、及び増幅器848を含む。この例では、音響光学システム104は、光発生モジュール944と増幅器848との間のパス1003上にある。光分離デバイス1070は、光発生モジュール1004とターゲット領域845との間のパス1003上に配置される。図10の例では、光分離デバイス1070は音響光学システム104と光発生モジュール944との間にある。他の実装形態において、音響光学システム104及び/又は光分離デバイス1070は、パス1003に沿った他のロケーションにあってもよい。
【0097】
光分離デバイス1070は、光発生モジュール944によって発生する光ビームの反射を含む、ターゲット領域845からの反射をブロックするために使用される。光分離デバイス1070は、例えば波長ベースフィルタ、又は偏光ベースフィルタであり得る。偏光ベースの光分離デバイスは、第1の偏光の光を伝送し(こうした光をパス1003上に残すことができる)、第2の偏光の光をブロックする(この偏向を有する光はパス1003上を伝搬できないようにする)。光分離デバイス1070は、例えば、ピンホール又は他の開口などの、空間フィルタであり得る。
【0098】
図11を参照すると、EUV光源1153は、パス1103上に光ビーム1106を発生させる光源1101を含む。光源1101は、光発生モジュール1144、複数の前置増幅器947、及び複数の増幅器848を含む。光源1101は、音響光学システム104(又は、システム204、システム404)も含む。音響光学システム104は図11には示されていない。代わりに、パス1103上のX印は、音響光学システム104が配置可能な様々なロケーションを示す。音響光学システム104は、光発生モジュール1144のすぐ下流(この例では+x方向)に配置可能である。音響光学システム104は、いずれか2つの前置増幅器947の間、いずれか2つの増幅器848の間、最終前置増幅器947と第1の増幅器848との間、及び/又は、最終増幅器848の後に、配置可能である。
【0099】
図12Aを参照すると、レーザ生成プラズマ(LPP)EUV光源1200が示されている。光源102及び801~1102のうちのいずれかが、光源1200などのEUV光源の一部であり得る。LPP EUV光源1200は、ターゲットミクスチャ1214に向かってビームパスに沿って進行する増幅光ビーム1210を用いて、ターゲットロケーション1205でターゲットミクスチャ1214を照射することによって形成される。ターゲット840、940a、及び940bのターゲット材料は、ターゲットミクスチャ1214であり得るか、又はターゲットミクスチャ1214を含み得る。ターゲットロケーション1205は照射サイトとも呼ばれ、真空チャンバ1230の内部1207にある。増幅光ビーム1210がターゲットミクスチャ1214に当たると、ターゲットミクスチャ1214内のターゲット材料は、EUVレンジ内に輝線を伴う要素を有するプラズマ状態に変換される。作成されたプラズマは、ターゲットミクスチャ1214内のターゲット材料の組成に依存する、或る特徴を有する。これらの特徴は、プラズマによって生成されるEUV光の波長、及びプラズマから放出されるデブリのタイプ及び量を含み得る。
【0100】
光源1200は、液滴、液体ストリーム、固体粒子又はクラスタ、液滴に含まれる固体粒子、又は液体ストリームに含まれる固体粒子の形の、ターゲットミクスチャ1214を、送達、制御、及び誘導する、ターゲット材料デリバリシステム1225も含む。ターゲットミクスチャ1214は、例えば、水、スズ、リチウム、キセノン、又は、プラズマ状態に変換されたときにEUVレンジ内に輝線を有する任意の材料などの、ターゲット材料を含む。例えば、元素スズは、純スズ(Sn)として、スズ化合物、例えばSnBr、SnBr、SnHとして、スズ合金、例えば、スズ・ガリウム合金、スズ・インジウム合金、スズ・インジウム・ガリウム合金、又はこれらの合金の任意の組み合わせとして、使用され得る。ターゲットミクスチャ1214は、非ターゲット粒子などの不純物も含み得る。したがって、不純物が存在しない状況では、ターゲットミクスチャ1214はターゲット材料のみで作られる。ターゲットミクスチャ1214は、ターゲット材料デリバリシステム1225によって、チャンバ1230の内部1207内、及びターゲットロケーション1205へ、送達される。
【0101】
光源1200は、レーザシステム1215の利得媒体内の反転分布に起因して増幅光ビーム1210を生成する、ドライブレーザシステム1215を含む。光源1200は、レーザシステム1215とターゲットロケーション1205との間にビームデリバリシステムを含み、ビームデリバリシステムは、ビーム伝送システム1220及びフォーカスアセンブリ1222を含む。ビーム伝送システム1220は、レーザシステム1215から増幅光ビーム1210を受け取り、必要に応じて増幅光ビーム1210をステアリング及び修正して、増幅光ビーム1210をフォーカスアセンブリ1222に出力する。フォーカスアセンブリ1222は増幅光ビーム1210を受け取り、ビーム1210をターゲットロケーション1205にフォーカスさせる。
【0102】
いくつかの実装形態において、レーザシステム1215は、1つ以上のメインパルス、及びいくつかのケースでは1つ以上のプレパルスを提供するための、1つ以上の光増幅器、レーザ、及び/又はランプを含み得る。各光増幅器は、高利得で所望の波長を光学的に増幅することが可能な利得媒体、励起源、及び内部光学系を含む。光増幅器は、レーザミラー又はレーザキャビティを形成する他のフィードバックデバイスを、有するか又は有さない場合がある。したがってレーザシステム1215は、たとえレーザキャビティが存在しない場合であっても、レーザ増幅器の利得媒体内の反転分布に起因して増幅光ビーム1210を生成する。更に、レーザシステム1215は、レーザシステム1215に十分なフィードバックを提供するためのレーザキャビティが存在する場合、コヒーレントなレーザビームである増幅光ビーム1210を生成し得る。「増幅光ビーム」という用語は、単に増幅されるが、必ずしもコヒーレントなレーザ振動ではない、レーザシステム1215からの光、及び、増幅され、コヒーレントなレーザ振動でもある、レーザシステム1215からの光のうちの、1つ以上を包含する。
【0103】
レーザシステム1215内の光増幅器は、COを含む充填ガスを利得媒体として含み得、約9100から約11000nmの間の、及び特に約10600nmの波長の、800よりも大きいか又は等しい利得で、光を増幅し得る。レーザシステム1215内での使用に適した増幅器及びレーザは、例えばDC又はRF励起を伴う、約9300nm又は約10600nmでの放射を生成し、例えば10kW又はそれ以上の相対的に高い電力、及び、例えば40kHz又はそれ以上の高パルス繰り返し率で動作する、パルスレーザデバイス、例えばパルスの気体放電COレーザデバイスを含み得る。レーザシステム1215内の光増幅器は、レーザシステム1215を高い電力で動作させているときに使用可能な、水などの冷却システムも含み得る。
【0104】
図12Bは、例示的ドライブレーザシステム1280のブロック図を示す。ドライブレーザシステム1280は、光源1200内のドライブレーザシステム1215の一部として使用され得る。ドライブレーザシステム1280は、3つのパワー増幅器1281、1282、及び1283を含む。パワー増幅器1281、1282、及び1283のうちのいずれか又はすべては、内部光学要素(図示せず)を含み得る。
【0105】
光1284は、出力ウィンドウ1285を介してパワー増幅器1281を出ると、湾曲ミラー1286で反射される。反射後、光1284は空間フィルタ1287を通過し、湾曲ミラー1288で反射され、入力ウィンドウ1289を介してパワー増幅器1282に入る。光1284は、パワー増幅器1282内で増幅され、出力ウィンドウ1290を介して光1291としてパワー増幅器1282から出るように方向転換される。光1291は、折り畳みミラー1292を用いて増幅器1283に向かって誘導され、入力ウィンドウ1293を介して増幅器1283に入る。増幅器1283は光1291を増幅し、出力ウィンドウ1294を介して増幅器1283から外へ、出力ビーム1295として光1291を誘導する。折り畳みミラー1296は出力ビーム1295を上方(ページの外)へ、及び、ビーム伝送システム1220(図12A)に向けて誘導する。
【0106】
再度図12Bを参照すると、空間フィルタ1287は、約2.2mmから3mmの間の直径を有する円であり得る開口1297を画定する。湾曲ミラー1286及び1288は、例えば、それぞれ約1.7m及び2.3mの焦点距離を備える、オフアクシスパラボラミラーであり得る。空間フィルタ1287は、開口1297がドライブレーザシステム1280の焦点と一致するように位置決めされ得る。
【0107】
再度図12Aを参照すると、光源1200は、増幅光ビーム1210がターゲットロケーション1205を通過及び到達できるようにするための、開口1240を有するコレクタミラー1235を含む。コレクタミラー1235は、例えば、ターゲットロケーション1205に1次フォーカス、及び中間ロケーション1245に2次フォーカス(中間フォーカスとも呼ぶ)を有する、楕円ミラーであり得、中間ロケーションで、EUV光は光源1200から出力され、例えば集積回路リソグラフィツール(図示せず)に入力され得る。光源1200は、増幅光ビーム1210がターゲットロケーション1205に到達できるようにしながら、フォーカスアセンブリ1222及び/又はビーム伝送システム1220に入るプラズマ生成デブリの量を減少させるために、コレクタミラー1235からターゲットロケーション1205に向かって先細になる、オープンエンドの、中空円錐シュラウド1250(例えば、ガスコーン)も含み得る。このために、ターゲットロケーション1205に向かって誘導されるガス流が、シュラウド内に提供され得る。
【0108】
光源1200は、液滴位置検出フィードバックシステム1256、レーザ制御システム1257、及びビーム制御システム1258に接続された、主コントローラ1255も含み得る。光源1200は、例えばターゲットロケーション1205に対する液滴の位置を示す出力を提供し、この出力を液滴位置検出フィードバックシステム1256に提供する、1つ以上のターゲット又は液滴イメージャ1260を含み得、液滴位置検出フィードバックシステム1256は、例えば液滴の位置及び軌道を計算し得、これらから液滴ごと又は平均の液滴に関して液滴位置エラーが算出され得る。このようにして液滴位置検出フィードバックシステム1256は、主コントローラ1255への入力として、液滴位置エラーを提供する。したがって、主コントローラ1255は、レーザ位置、方向、及びタイミング補正信号を、例えば、レーザタイミング回路を制御するために使用可能なレーザ制御システム1257に、及び/又は、チャンバ1230内のビーム焦点のロケーション及び/又は焦点パワーを変更するために、ビーム伝送システム1220の増幅光ビーム位置及び形状化を制御するためのビーム制御システム1258に、提供し得る。
【0109】
ターゲット材料デリバリシステム1225は、所望のターゲットロケーション1205に到達する液滴におけるエラーを補正するために、主コントローラ1255からの信号に応答して、ターゲット材料供給装置1227から放出される液滴の放出ポイントを修正するように動作可能な、ターゲット材料デリバリ制御システム1226を含む。
【0110】
加えて、光源1200は、パルスエネルギー、波長の関数としてのエネルギー分布、波長の特定帯域内のエネルギー、波長の特定帯域外のエネルギー、並びに、EUV強度及び/又は平均パワーの角度分布を含むが限定されない、1つ以上のEUV光パラメータを測定する、光源ディテクタ1265及び1270を含み得る。光源ディテクタ1265は、主コントローラ1255による使用のためのフィードバック信号を生成する。フィードバック信号は、例えば、効果的且つ効率的なEUV光生成のために、正しい場所及び時間で液滴を遮断するための、レーザパルスのタイミング及び焦点などのパラメータにおけるエラーを示し得る。
【0111】
光源1200は、光源1200の様々なセクションを位置合わせするため、又は、増幅光ビーム1210をターゲットロケーション1205にステアリングするのを支援するために使用可能な、ガイドレーザ1275も含み得る。ガイドレーザ1275に関連して、光源1200は、ガイドレーザ1275及び増幅光ビーム1210からの光の一部をサンプリングするために、フォーカスアセンブリ1222内に配置される、メトロロジシステム1224を含む。他の実装形態において、メトロロジシステム1224は、ビーム伝送システム1220内に配置される。メトロロジシステム1224は、光のサブセットをサンプリング又は方向転換する光学素子を含み得、こうした光学素子は、ガイドレーザビーム及び増幅光ビーム1210のパワーに耐え得る、任意の材料から作られる。主コントローラ1255は、ガイドレーザ1275からサンプリングした光を分析し、この情報を使用して、ビーム制御システム1258を介してフォーカスアセンブリ1222内の構成要素を調節するため、ビーム分析システムは、メトロロジシステム1224及び主コントローラ1255から形成される。
【0112】
したがって、要約すると、光源1200は、ミクスチャ1214内のターゲット材料をEUVレンジ内の光を放出するプラズマに変換するために、ターゲットロケーション1205でターゲットミクスチャ1214を照射するために、ビームパスに沿って誘導される増幅光ビーム1210を生成する。増幅光ビーム1210は、レーザシステム1215の設計及び特性に基づいて決定される、特定の波長(ドライブレーザ波長とも呼ぶ)で動作する。加えて、ターゲット材料がコヒーレントなレーザ光を生成するのに十分なフィードバックをレーザシステム1215に戻すとき、又は、ドライブレーザシステム1215がレーザキャビティを形成するのに適した光学フィードバックを含む場合に、増幅光ビーム1210はレーザビームであり得る。
【0113】
他の実装形態は、特許請求の範囲内である。例えば、光源102は任意の種類の光源であり得るか、又は、光を音響光学システム104に向けて受動的に誘導するミラー又は光学素子であり得るが、必ずしも能動的な光源とは限らない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
【手続補正書】
【提出日】2022-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響光学材料を出るパルス光ビームの波面を推定すること、
前記音響光学材料を含む音響光学システムのための制御信号を生成することであって、前記制御信号は、前記パルス光ビームの前記推定された波面に基づくものである、生成すること、及び、
前記制御信号を、前記音響光学材料内を伝搬する周波数チャープ音波を生成するために前記音響光学システムに適用することであって、前記周波数チャープ音波は、前記音響光学材料内に過渡回折素子を形成し、前記過渡回折素子と前記パルス光ビームとの間の相互作用は、前記パルス光ビームの前記波面のディストーションを補償するために前記パルス光ビームの前記波面を調節し、前記波面の前記ディストーションは前記音響光学材料内の物理的効果によって少なくとも部分的に生じる、適用すること、
を含み、
前記音響光学材料を出る前記パルス光ビームの前記波面を推定することは、
前記音響光学材料を出る前記パルス光ビームの第1のパルスの少なくとも一部を受信すること、及び、
前記パルス光ビームの前記第1のパルスのうちの前記受信した部分に基づいて、前記音響光学材料を出る前記パルス光ビームの前記波面を推定すること、
前記パルス光ビームの前記第1のパルスのうちの前記受信した部分に基づいて前記パルス光ビームの波面を決定することを含み、
前記生成された周波数チャープ音波は、前記音響光学材料内を伝搬し、前記パルス光ビームの第2のパルスが前記音響光学材料を通過する間に前記過渡回折素子を形成し、前記パルス光ビームの前記第2のパルスは前記パルス光ビームの前記第1のパルスの後に発生する、
方法。
【請求項2】
前記第1及び第2のパルスは100ナノ秒(ns)以下の持続時間を有し、
前記第2のパルスが前記過渡回折素子と相互作用し、前記周波数チャープ音波の周波数に依存する角度で前記過渡回折素子によって回折されるように、前記過渡回折素子は、前記第2のパルスが前記音響光学材料を通過する間に、前記音響光学材料内を500ミクロン(μm)以下で伝搬する、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
極端紫外(EUV)光源であって、
光発生モジュール、
1つ以上の前置増幅器、
1つ以上のパワー増幅器であって、1つ以上の前置増幅器が前記光発生モジュールと前記1つ以上のパワー増幅器との間にある、1つ以上のパワー増幅器、及び、
音響光学システムであって、
前記1つ以上のパワー増幅器のうちの1つと前記光発生モジュールとの間の音響光学材料と、
波形ジェネレータと、
前記波形ジェネレータから前記音響光学材料内へ音波として波形を送信するように構成されたトランスデューサと、
前記波形ジェネレータに結合された制御システムと、
を備える、音響光学システム、
を備え、
前記制御システムは、前記音響光学材料を出る光ビームの波面を推定するように、及び、前記推定された波面に基づいて前記波形ジェネレータに制御信号を提供するように、構成され、前記制御信号は、前記トランスデューサによって前記音響光学材料内に投入されたときに、前記音響光学材料の物理的効果について前記音響光学材料内を伝搬する光ビームの前記波面を補償する周波数チャープ波形を、前記波形ジェネレータに生成させるのに十分である、
EUV光源。
【請求項4】
前記音響光学材料は、前記前置増幅器のうちの1つと前記パワー増幅器のうちの1つとの間にある、請求項に記載のEUV光源。
【請求項5】
前記制御システムに結合された温度センサを更に含み、前記温度センサは前記音響光学材料の温度を測定するように構成され、
前記音響光学材料の特徴を決定するように構成された前記制御システムは、前記温度センサからのデータに基づいて前記音響光学材料の温度を決定するように構成された前記制御システムを含む、
請求項に記載のEUV光源。
【請求項6】
前記音響光学材料を介して伝搬する光を受信するように、及び、前記受信した光の波面を感知するように構成された、光学センシング装置を含み、
前記音響光学材料の特徴を決定するように構成された前記制御システムは、前記光学センシング装置からのデータに基づいて前記受信した光の前記波面を決定するように構成された前記制御システムを含む、
請求項に記載のEUV光源。
【請求項7】
前記光学センシング装置は、段階的位相マスク、波面センシングカメラ、及び干渉計のうちの、1つ以上を含む、請求項に記載のEUV光源。
【外国語明細書】