(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183772
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】忌避組成物、忌避材および忌避装置
(51)【国際特許分類】
A01N 31/06 20060101AFI20221206BHJP
A01N 65/22 20090101ALI20221206BHJP
A01N 59/06 20060101ALI20221206BHJP
A01N 43/32 20060101ALI20221206BHJP
A01N 37/06 20060101ALI20221206BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20221206BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20221206BHJP
A01N 25/18 20060101ALI20221206BHJP
A01M 29/34 20110101ALI20221206BHJP
【FI】
A01N31/06
A01N65/22
A01N59/06 Z
A01N43/32
A01N37/06
A01P17/00
A01N25/00 102
A01N25/18
A01M29/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091253
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】富安 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】乾 洋治
(72)【発明者】
【氏名】潮田 会美
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121CA02
2B121CA42
2B121CA64
2B121CA67
2B121CC21
2B121CC27
2B121EA13
2B121FA13
4H011AC06
4H011BB03
4H011BB06
4H011BB08
4H011BB16
4H011BB22
4H011BC01
4H011BC07
4H011DA13
4H011DB04
4H011DC05
4H011DF02
(57)【要約】
【目的】効率的に害虫を忌避させる材料およびその忌避方法を提供すること。
【解決手段】(A)ハッカ油と、(B)脂肪酸金属塩、(C)炭素-炭素不飽和結合を有するヒドロキシ脂肪酸、(D)ベンジリデンソルビトール誘導体とを含有する忌避組成物により上記目的が達成できる。さらに、忌避組成物を通気性を有する可撓性容器に収納した忌避材、少なくとも前記忌避材と蒸散装置と構成される忌避装置を用いることにより、より効率的に害虫の忌避を行うことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ハッカ油と、(B)脂肪酸金属塩、(C)炭素-炭素不飽和結合を有するヒドロキシ脂肪酸、(D)ベンジリデンソルビトール誘導体とを含有する忌避組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の忌避組成物を、通気性を有する可撓性容器に収納した忌避材。
【請求項3】
少なくとも請求項2に記載の忌避材と蒸散装置とで構成される忌避装置。
【請求項4】
請求項3に記載の忌避装置を用いることを特徴とする害虫の忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫を忌避するための忌避組成物、忌避材および忌避装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、人や家畜が罹患する病気の多くは、害虫が媒介していることが知られている。
【0003】
たとえば、家畜である牛が罹患する牛白血病を例に説明する。
【0004】
牛白血病とは、牛の血液中の白血球が異常に増えたり、悪性リンパ肉腫を形成したりする病気で、牛白血病ウイルスによって広がる地方病型とウイルスが関与しない散発型の2種類が知られており、牛白血病の多くは地方病型である。近年、この牛白血病の発生報告数は、増加の一途をたどっており、酪農家にとって深刻な問題となっている。
【0005】
この牛白血病ウイルスによる牛白血病の感染としては、他の牛に伝搬する水平感染と、母牛から子牛へと伝播する垂直感染の2種類が知られており、牛白血病の感染は、主に水平感染が原因と言われている。この水平感染の中で最も多いのが害虫の媒介による牛白血病ウイルスの伝播である。この牛白血病ウイルスを媒介する害虫としては、サシバエ、アブ、ブユなどが知られている。よって、牛白血病の蔓延を防ぐためには、害虫の駆除・駆逐が効果的である。
【0006】
一般的に酪農の現場で実施されている害虫の駆除・駆逐の方法としては、害虫に巣を作らせない、害虫を畜舎に入れない(例えば、物理的に目の細かい防虫ネットを畜舎に設置する等)、害虫を捕獲・殺虫により駆除する(例えば、ハエ取り紙や電撃殺虫器等の使用、殺虫剤を用いての殺虫)、害虫を忌避させる(忌避成分を用いての忌避)などが挙げられる。
【0007】
これらの方法の中で、害虫を畜舎に入れない、害虫を捕獲・殺虫により駆除するという方法は、家畜を飼育している場のすべての害虫を駆除する、防虫ネット等により物理的に害虫を畜舎にいれない、と大規模の対応が必要となるため効率的ではない。
【0008】
そのため、害虫を忌避させる方法が効果的であり、中でも忌避成分を家畜に散布または所持させて害虫を忌避する方法が効果的である。
【0009】
この忌避成分としては、古くから忌避効果がある一部の天然精油が知られており、酪農家の中にはサシバエ等の害虫を忌避するため、天然精油を用いて対策をしているところがある。
【0010】
この忌避成分を用いる場合の害虫を忌避させる方法として、忌避成分を家畜へ直接散布することが多いが、天然精油等の忌避成分が高い蒸散性を有するため、持続時間は短いという課題がある。
【0011】
それを改善するため、色々な試みを行なわれている。
【0012】
例えば、特許文献1や特許文献2には、忌避成分を含有する徐放性担体が開示されており、この忌避成分を含有する徐放性担体を不織布バッグまたは通気性ビニール袋中に充填し、衣類や特定の場所に吊るして害虫を忌避する方法が開示されている。
【0013】
特許文献3には、害虫の忌避成分を担持した多孔性支持体を用いた貼付剤が開示されており、この貼付剤を家畜の皮膚に貼り付けて使用する方法が開示されている。
【0014】
特許文献4には、忌避成分をロープに含浸させ防虫ネットとして使用する方法が開示されており、この防虫ネットで畜舎を覆う方法が開示されている。
【0015】
特許文献5には、忌避成分をオクチル酸アルミニウムでゲル硬化体とし、ファンを組わせて、忌避成分を放出させる方法が開示されている。
【0016】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の忌避成分を含有する徐放性担体を不織布バッグまたは通気性ビニール袋中に充填して用いる方法は、静置型となるため、畜舎の内外を行き来する家畜に対しては、十分に効果が発揮することができない。
【0017】
特許文献3に記載の害虫の忌避成分を担持した多孔性支持体を用いた貼付剤は、それ自体の忌避効果は長時間持続するものの、家畜の皮膚に貼り付けて長期間剥がれずに維持させることは難しい。
【0018】
特許文献4に記載の忌避成分をロープに含浸させ防虫ネットとして使用する方法は、畜舎など屋内では有効ではあるが、放牧する場合などの野外では害虫から家畜を守ることは難しい。
【0019】
特許文献5に記載の忌避成分をゲル硬化体として、ファンで忌避成分を放出させる方法は、ファンと組み合わせるために自立したゲル硬化体とする必要があり、忌避成分を十分に含ませることができず、持続性という点で課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2020-011944
【特許文献2】特開2005-281153
【特許文献3】実開平02-082702
【特許文献4】特開2002-220306
【特許文献5】特開2004-059548
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、効率的に害虫を忌避させる材料およびその忌避方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、忌避成分と、特定の成分と組みわせることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0023】
すなわち、本発明は、(A)ハッカ油と、(B)脂肪酸金属塩、(C)炭素-炭素不飽和結合を有するヒドロキシ脂肪酸、(D)ベンジリデンソルビトール誘導体とを含有する忌避組成物、前記忌避組成物を通気性を有する可撓性容器に収納した忌避材、少なくとも前記忌避材と蒸散装置と構成される忌避装置、および、前記忌避装置を用いることを特徴とする害虫の忌避方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、害虫の忌避効果が長時間持続し、さらに広範囲で効果を発揮するため、効果的に害虫を忌避することができ、例えば牛白血病であれば、害虫の忌避による感染の伝播を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の忌避組成物は、(A)ハッカ油(以下、「(A)成分」ともいう)と、(B)脂肪酸金属塩(以下、「(B)成分」ともいう)、(C)炭素-炭素不飽和結合を有するヒドロキシ脂肪酸(以下、「(C)成分」ともいう)、(D)ベンジリデンソルビトール誘導体(以下、「(D)成分」ともいう)とを含んだ組成物である。
【0026】
本発明の忌避組成物の形態は、特に制限されないが、該忌避組成物がゲル状態となっていることが、害虫忌避効果を継続される点で好ましい。
【0027】
本発明の忌避組成物の製造方法は、特に制限されず、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を、公知の方法で混合すればよい。
【0028】
以下、各成分について説明する。
【0029】
<(A)ハッカ油>
本発明で用いられるハッカ油は、日本種のハッカおよび洋種のハッカの乾草を水蒸気蒸留すると留出する無色あるいは薄黄色の精油であり、その主成分はメントール成分である。ハーブ類の害虫忌避効果について、これまでハエや蚊において効果が報告されており、ハッカ油の主成分であるメントール成分が忌避効果を持っていることが報告されている。
【0030】
前記ハッカ油には、ハッカ白油、ハッカ並油、ハッカ脳などの種類がある。本発明の忌避組成物の忌避効果は、該忌避組成物からメントール成分が蒸散しきるまで持続する。
【0031】
本発明においてハッカ油の使用量は、特に制限されないが、害虫忌避効果を勘案すると、本発明の忌避組成物の0.1~99.0質量%、好ましくは40~90質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0032】
<(B)脂肪酸金属塩>
本発明で用いられる脂肪酸金属塩は、公知のものが特に制限なく用いることができるが、その中でも、脂肪酸のカルボキシル基の水素原子が、アルカリ金属以外の金属、好適にはマグネシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛やアルミニウムなどの両性金属に置換した形態の塩が好適であり、特に好ましいものとして、2-エチルヘキシル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、あるいはベヘン酸と、マグネシウム、亜鉛、あるいはアルミニウムとの塩が挙げられる。
【0033】
本発明において脂肪酸金属塩の使用量は、特に制限されないが、前記忌避組成物をゲル状態とすることを勘案すると、本発明の忌避組成物の0.1~40.0質量%、好ましくは1.0~30.0質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0034】
なお、前記脂肪酸金属塩は、本発明の忌避組成物を製造する際は炭化水素溶媒に分散してから混合することが好ましい。前記炭化水素溶媒としては、例えば、パラフィン(直鎖)、イソパラフィン(分枝鎖)及びナフテン(非芳香族環)を含む炭化水素溶媒を指し得る溶媒の群から選ばれる。
【0035】
<(C)炭素-炭素不飽和結合を有するヒドロキシ脂肪酸>
本発明で用いられる炭素-炭素不飽和結合を有するヒドロキシ不飽和高級脂肪酸としては、公知のものが特に制限なく用いることができ、例えば、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸、水酸基を有するラノリン脂肪酸、ポリヒドロキシステアリン酸が挙げられる。
【0036】
本発明において炭素-炭素不飽和結合を有するヒドロキシ不飽和高級脂肪酸の使用量は、特に制限されないが、前記忌避組成物をゲル状態とすることを勘案すると、本発明の忌避組成物の0.1~30質量%、好ましくは1.0~20質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0037】
<(D)ベンジリデンソルビトール誘導体>
本発明で用いられるジベンジリデンソルビトール誘導体としては、たとえば、1,3-2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3-2,4-ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-2,4-ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-2,4-ジ(p-クロルベンジリデン)ソルビトール、1,3-2,4-ビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトールなどの同種のベンジリデン基を有する化合物;1,3-ベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトールなどの異種のベンジリデン基を有する化合物などが挙げられる。
【0038】
本発明において、ベンジリデンソルビトール誘導体の使用量は、特に制限されないが、前記忌避組成物をゲル状態とすることを勘案すると、本発明の忌避組成物の0.05~30質量%、好ましくは0.1~20質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0039】
なお、前記ベンジリデンソルビトール誘導体は、本発明の忌避組成物を製造する際は非プロトン性極性溶媒に溶解したものを混合することが好ましい。前記非プロトン性極性溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などから選ばれる。
【0040】
本発明の忌避組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記した(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分以外の成分を含んでいてもよい。
【0041】
<忌避組成物の使用形態>
本発明の忌避組成物は、そのまま用いて忌避材としてもよいが、容器に収納して用いて忌避材とすることが好ましい。前記容器としては、たとえば、通気性を有する可撓性容器、蓋部分が通気性を有する容器、上部に開口部がある容器等が挙げられ、中でも通気性を有する可撓性容器が特に好ましい。
【0042】
本発明で用いる通気性を有する可撓性容器は、(A)成分の蒸気である気体を透過させる通気を有していれば特に制限されず、さらに水等の液体を透過させない防水性を有するものが好ましい。具体的には、気体を透過させ液体を透過させない程度の小孔が穿設されている樹脂で構成されているものが好ましい。
【0043】
前記樹脂としては、可撓性を有することができるものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ナイロン等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリルニトリル、ポリイミドなどの樹脂からなるフィルムが好ましい。前記フィルムとしては、単層フィルムでも、同種または異種の複数層を積層したフィルムでもよく、延伸フィルム、未延伸フィルムのどちらでもよい。また、前記フィルムとしては、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。さらに、密閉する際の簡便さを考慮するとヒートシール性を備えているものが好ましい。
【0044】
前記通気性を有する可撓性材料の製造方法は、特に限定されず、従来公知の通気性フィルムの製造方法を適宜採用すればよい。例えば、樹脂に溶媒に溶解する微粒子を添加・混練してフィルム状に成形した後、溶媒により、溶媒に溶解する微粒子を溶解させて、通気性を有する小孔が穿設されたフィルムとする方法、樹脂に、炭酸カルシウム等の無機微粒子を添加・混練したフィルム状に成形した後、延伸することにより、通気性を有する小孔が穿設されたフィルムとする方法が挙げられる。フィルム化や延伸の際の条件等は従来公知の技術に基づき適宜設定すればよい。また、前記通気性を有する樹脂は、種々の市販品の中から適宜選択して用いることもできる。
【0045】
本発明の忌避材は、前記通気性を有する可撓性容器に、本発明の忌避組成物を収納して構成される。
【0046】
本発明の忌避材の製造方法は、特に制限されず、公知の方法で前記忌避組成物を、通気性を有する可撓性容器に収納すればよく、たとえば、固形状または半固形状の忌避組成物を、通気性を有する可撓性容器に収納してから、シーラー等でヒートシールして密封する方法が採用される。
【0047】
本発明の忌避材は、さらに蒸散装置と組み合わせて忌避装置として用いてもよい。前記忌避材を蒸散装置と組み合わせことにより、該忌避組成物から蒸散されるメントール成分を十分に蒸散させることができ、害虫忌避効果が効率よく発揮される。
【0048】
前記蒸散装置としては、ファンにより送風されるものが好適であるが、これに限定されない。
【0049】
本発明の忌避装置は、前述したとおり、忌避材と蒸散装置と組み合わせていれば、特に制限されず、ファンを有する蒸散装置の吸気口または排気口に忌避材を密接するように設置した忌避装置としてもよいが、効率的に忌避組成物から蒸散されるメントール成分を十分に蒸散させることを勘案すると、ファンを有する蒸散装置の吸気口または排気口から少し離れた位置に忌避材を配置した忌避装置とすることが好ましい。このように少し離れた位置に配置することにより、忌避材内の忌避組成物から蒸散したメントール成分の蒸気を、効率よく蒸散装置で忌避装置外部へファンにより送風することができる。
【0050】
前記ファンの回転数は、ファンの直径や形状等により異なるために具体的な回転数を決定することができないが、大気中に効率よくメントール成分を拡散させ、かつファンから放出される空気中の忌避成分の配合量が低くなりすぎない回転数が好ましい。
【0051】
また、本発明において、前記したとおり忌避材と前記蒸散装置とは組み合わせて前記忌避装置としてもよく、前記忌避材と前記蒸散装置をそれぞれ独立させて用いてもよい。たとえば、蒸散装置の送風上に忌避材を配置する態様としてもよい。
【実施例0052】
実施例及び比較例において、忌避組成物の製造に用いた原料、並びに評価方法は、以下のとおりであるが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0053】
<原料>
(A)成分:ハッカ油; 健栄製薬株式会社製(l-メントール30%以上)
(B)成分:2-エチルヘキシル酸アルミニウム;株式会社東京化成工業製
(C)成分:リシノール酸;富士フィルム和光純薬株式会社製
(D)成分:1,3-2,4-ジベンジリデンソルビトール;新日本理化株式会社製
【0054】
<評価方法1>
以下の実施例及び比較例において、忌避組成物から蒸散する忌避成分の定量は、ガスクロマトグラフィー(GC)により、下記の装置および条件を採用して行った。
(GCに係る装置および条件)
・GC機種名:Agilent Technologies社製
「Agilent Technologies 7890B」
・GCカラム名:Agilent Technologies社製「DB-1MS」
(30mm×0.25mm I.D. 膜厚0.25μm)
・GC条件:
注入法:スプリット(スプリット比 1:50)
注入量:1mL
注入温度:200℃
カラム温度:50℃で1分→20℃/分で200℃まで加熱した後、200℃に2分維持
流速:3mL/分
【0055】
<実施例1>
流動パラフィン:23.0質量部をセパラブルフラスコ中に加え、前記流動パラフィンを高粘度用スリーワンモーターに取り付けた攪拌羽根を用いて、25℃、回転数250~300rpmで攪拌しながら、少しずつ2-エチルヘキシル酸アルミニウム:22.0質量部を加え、15分間攪拌することで、前記2-エチルヘキシル酸アルミニウムを流動パラフィン中に分散させて分散体とした。前記分散体を、25℃、回転数250~300rpmで攪拌しながら、ジベンジリデンソルビトール(溶媒:ジメチルスルホキシド):2.0質量部、ハッカ油:50.0質量部、リシノール酸:3.0質量部を順次加え、15分間攪拌した。攪拌を止めて、25℃、12時間静置して、固いゲル状態の忌避組成物を得た。
【0056】
評価は、ハッカ油中の有効成分であるl-メントールの蒸散の経時変化で評価した。まず、忌避組成物を製造後、素早く1.0mLガスタイトシリンジで、セパラブルフラスコ中のガスを1.0mL抜きとり、GCで分析を行った(この結果を経過時間0時間とした)。なお、濃度はl-メントール標準物質の検量線から算出した。次いで、前記製造した忌避組成物をシャーレ(φ90×9mm)に移し、前記シャーレを野外に開放した状態で静置して、忌避組成物から蒸散するガス中のl-メントール量の経時変化を分析した。その結果を表1に示す。
【0057】
<比較例1>
実施例1において(B)、(C)および(D)成分の代わりに、流動パラフィン:27.0質量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、液状の忌避組成物を得た。また、実施例1と同様の分析を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
【0059】
実施例1では、忌避組成物は徐々に縮んで小さくなるものの、ハッカ油由来の成分がバランスよく蒸散し、2週間後でも、忌避成分のl-メントールが持続して蒸散することがわかった。一方、比較例1では、ハッカ油由来の成分がすぐに大きく蒸散し、2週間後に忌避成分のl-メントールが検出下限以下となった。