(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183790
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】流動状食品
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20221206BHJP
【FI】
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091275
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】鷲巣 有紀子
(72)【発明者】
【氏名】益山 千絵
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健
(72)【発明者】
【氏名】村田 陸
【テーマコード(参考)】
4B036
【Fターム(参考)】
4B036LF05
4B036LH12
4B036LH22
4B036LH29
(57)【要約】
【課題】食感が改善された流動状食品を提供することにある。
【解決手段】微細な野菜・果実成分と、澱粉又は穀粉であり、原料段階での粒度が500μm以上である第1成分と、澱粉であり、原料段階での粒度が500μm未満である第2成分とを含む、流動状食品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動状食品であって、
微細な野菜・果実成分と、
澱粉又は穀粉であり、原料段階での粒度が500μm以上である第1成分と、
澱粉であり、原料段階での粒度が500μm未満である第2成分と、
を含む、流動状食品。
【請求項2】
前記第1成分の加熱時最高粘度が、1000mPa・s未満である、請求項1に記載の流動状食品。
【請求項3】
前記第2成分の加熱時最高粘度が、1000mPa・s以上である、請求項1又は2に記載の流動状食品。
【請求項4】
前記第1成分が、リン酸架橋澱粉とハイアミロースコーンスターチとの混合物のα化物を含む、請求項1~3のいずれかに記載の流動状食品。
【請求項5】
前記第1成分の含有量が、0.3~5.0質量%である、請求項1~4のいずれかに記載の流動状食品。
【請求項6】
前記第2成分の含有量が、0.3~5.0質量%である、請求項1~5のいずれかに記載の流動状食品。
【請求項7】
60℃での粘度が300~4000mPa・sである、請求項1~6のいずれかに記載の流動状食品。
【請求項8】
前記野菜・果実成分の含有量が、生換算で、5質量%以上である、請求項1~7のいずれかに記載の流動状食品。
【請求項9】
レトルト食品である、請求項1~8のいずれかに記載の流動状食品。
【請求項10】
カレーである、請求項1~9のいずれかに記載の流動状食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
カレーソース等の流動状食品が知られている。流動状食品における課題の1つは、食感の多様化である。流動状食品の食感の改善に関して、例えば、特許文献1(特開2020-80822号公報)には、水と、所定量の流動状の繊維含有植物原料と、熱感受性の加工澱粉と、未加工澱粉及び/又は熱非感受性の加工澱粉とを含有し、所定の粘度を有する食品組成物が記載されている。
すなわち、前記熱感受性の加工澱粉の、密閉状態で加熱処理(レトルト処理等)された場合に、粘性付与能力が低下する性質を利用して、前記加熱処理による、当該熱感受性の加工澱粉とそれ以外の澱粉との相互作用で、前記処理後に、食品組成物の特有のフワッとした食感と、風味と、外観を達成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、カレー等の流動状食品において、食感の更なる多様化に取り組んでいる。具体的には、流動状食品において、「あらごし野菜のような自然な繊維感」を付与しようとしている。「あらごし野菜のような自然な繊維感」とは、トマトをまるごとあらごしした、あらごしトマトに代表されるような、トマトの果肉等の繊維感を有する食感(バターチキンカレーの、あらごしトマトに代表される、見た目にも、舌触りにもざらつきを感じる性状)であることを言う。
従って、本発明の課題は、「あらごし野菜のような自然な繊維感」が付与された流動状食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、下記の手段により、上記課題が解決できることを見出した。
[1]流動状食品であって、微細な野菜・果実成分と、澱粉又は穀粉であり、原料段階での粒度が500μm以上である第1成分と、澱粉であり、原料段階での粒度が500μm未満である第2成分とを含む、流動状食品。
[2]前記第1成分の加熱時最高粘度が、1000mPa・s未満である、[1]に記載の流動状食品。
[3]前記第2成分の加熱時最高粘度が、1000mPa・s以上である、[1]又は[2]に記載の流動状食品。
[4]前記第1成分が、リン酸架橋澱粉とハイアミロースコーンスターチとの混合物のα化物を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の流動状食品。
[5]前記第1成分の含有量が、0.3~5.0質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の流動状食品。
[6]前記第2成分の含有量が、0.3~5.0質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の流動状食品。
[7]60℃での粘度が300~4000mPa・sである、[1]~[6]のいずれかに記載の流動状食品。
[8]前記野菜・果実成分の含有量が、生換算で、5質量%以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の流動状食品。
[9]レトルト食品である、[1]~[8]のいずれかに記載の流動状食品。
[10]カレーである、[1]~[9]のいずれかに記載の流動状食品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、「あらごし野菜のような自然な繊維感」が付与された流動状食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、原料水溶液の粘度と温度との測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る流動状食品は、いわゆるソース等の食品である。流動状食品は、微細な野菜・果実成分と、第1成分と、第2成分とを含む。第1成分は、澱粉又は穀粒であり、原料段階での粒度が500μm以上である。第2成分は、澱粉であり、原料段階での粒度が500μm未満である。このような組成を採用することにより、第2成分による粘性発現下で、分散する第1成分による粒状感と、野菜・果実成分の繊維による食感とが付与され、これらの相互作用で、あらごし野菜のような自然な繊維感のある食感を有する流動状食品が得られる。
【0009】
以下に、本実施形態における各構成について詳細に説明する。
(流動状食品)
本実施形態における流動状食品は、既述のように、いわゆるソース等の食品である。流動状とは、定形を有さないことをいい、一見固形であっても、それをかき混ぜると容易に形状が崩れるようなものも流動状食品に含まれる。流動状食品には、具材等の固形材料が含まれていてもよい。但し、以下の説明において、特に断りがない場合、各成分の含有量は、具材などの固形部分を除いた部分、すなわち流動状食品中における含有量を意味する。
【0010】
本明細書における流動状食品は、好ましくは、「密閉状態で加熱処理された食品」である。「密閉状態で加熱処理された食品」とは、容器に密封された食品であって、加熱殺菌済みの食品で、好ましくはレトルト食品である。一般的には、流動状食品を密閉状態での加熱処理を行うことによって、粘性や食感が損なわれる場合がある。本実施形態によれば、特定の組成を採用することによって、密閉状態で加熱処理された場合にも、あらごし野菜に似た粘性と食感を有する流動状食品が得られる。
【0011】
(微細な野菜・果実成分)
微細な野菜・果実成分は、繊維状、粒状等の微細な、野菜又は果実の成分である。例えば、微細な野菜・果実成分の原料として、粉砕物や、微細粒子の懸濁液や、ペースト状、及びゼリー状等の形状のものが挙げられる。これらの乾燥物、濃縮物であってもよい。野菜又は果実を、ミキサー等で流動状に粉砕する工程や、煮込む工程等によって、微細な野菜・果実成分を得ることができる。
【0012】
微細な野菜・果実成分は、前記の形状のものであれば、大きさは限定されないが、例えば、目開き5000μm、好ましくは3000μmのメッシュを通過するような粒度を有する。ここでいう粒度とは、流動状食品中における粒度を意味する。
流動状食品中における微細な野菜・果実成分の粒度は、下記する第1成分の場合と同様の方法により測定される。
微細な野菜・果実成分の種類としては、特に限定されるものでは無いが、好適には、例えば、トマト、タマネギ、ジンジャー、ガーリック、馬鈴薯、人参、ピーマン、セロリ、及びりんごからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、好ましくは、トマト及びタマネギからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、更に好ましくはトマトである。
【0013】
微細な野菜・果実成分の含有量は、生換算で、例えば5質量%以上、好ましくは10質量%以上である。上限に制限はないが、例えば90質量%以下である。但し、本実施形態によれば、微細な野菜・果実成分の量が少ない場合であっても、第1成分及び第2成分により、微細な野菜・果実成分が多い場合と同様の粘性及び食感が得られる。この観点から、微細な野菜・果実成分の含有量は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0014】
(第1成分)
第1成分は、既述のように、食感改善のために使用されている。第1成分により、あらごし野菜のような自然な繊維感を再現することができる。第1成分は、既述のように、澱粉又は穀粒である。
【0015】
なお、第1成分として使用される「澱粉」としては、未加工澱粉及び加工澱粉のいずれも使用できる。加工澱粉の加工処理としては、α化処理、湿熱処理、油脂加工などの物理的処理や、アセチル化処理、エーテル化処理、架橋化処理、及び酸化処理などの化学的処理が挙げられる。加工澱粉は、複数の種類の生澱粉の混合物に対して上記の加工処理が施されたものであってもよい。
一方、「穀粒」とは、穀物を粉砕したものを言う。
第1成分は、一般に、原料段階乃至流動状食品中において、全体形状及び表面形状において不定形であり、このことが好ましい。
【0016】
第1成分は、好ましくは、加水(加熱)した場合に、粒状で存在するか、膨潤して粒状となり、高粘性にならない成分である。「加水(加熱)した場合に、粒状で存在するか、膨潤して粒状となり、高粘性にならない」とは、水不溶性で、水分散性が低く、流動状食品中において、粒状で存在し、流動状食品に粘度を付与する機能が低い性質であることを言う。
具体的には、第1成分は、例えば1000mPa・s未満、好ましくは800mPa・s未満の加熱時最高粘度を有している。第1成分の加熱時最高粘度は、例えば30mPa・s以上、好ましくは200mPa・s以上である。
なお、「加熱時最高粘度」とは、7質量%水溶液を50℃から95℃まで、速度1.5℃/分で昇温させた場合における最高粘度を意味する。
すなわち、「加熱時最高粘度」とは、50℃から95℃までの昇温粘度曲線において最も高い値となる粘度を意味する。昇温粘度曲線がピークを有し、ピーク粘度が95℃達温時の粘度より大きい場合は、ピーク粘度が最高粘度となる。一方、昇温粘度曲線がピークを有しないか、またはピークを有するがピーク粘度が95℃達温時の粘度より小さい場合は、95℃達温時の粘度が最高粘度となる。
加熱時最高粘度は、例えば、PerkinElmer社製『ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)』(https://www.perkinelmer.co.jp/food/tabid/2433/Default.aspx)を用いてアミログラフで測定することにより、求めることができる。
【0017】
このような性質を有する第1成分を使用することによって、第1成分由来の粒状物が、野菜果実の食感を補強し、好ましい食感が得られる。また、このような第1成分が含まれていると、外観上も第1成分の粒があらごし野菜のように確認できるようになり、良好な外観を示す。
上記の効果を得る上で、第1成分の加熱時最高粘度は、第2成分の加熱時最高粘度の75%以下、好ましくは50%以下であることが望ましい。
【0018】
第1成分は、既述のように、原料段階で500μm以上の粒度を有する。第1成分の粒度は、ふるい法で求められる重量基準の平均径である。第1成分の粒度は、好ましくは500~2000μm、さらに好ましくは550~1000μmである。
なお、第1成分の粒度は、原料段階での大きさと、流動状食品中での大きさとが、ほとんど変わらない。例えば、流動状食品中において第1成分の粒度が500μm以上であれば、原料段階での第1成分の粒度も500μm以上であると考えられる。
第1成分は、流動状食品中において500μm以上の粒度を有することが望ましく、さらに好ましくは500~2000μmである。
流動状食品中に含まれる第1成分の粒度を求める場合は、例えば、温めて具材を除いた流動状食品を、所定の目開きの篩に通し、篩にオンした粒状物に水を掛けて、流動状食品を取り除いた後、水切りして、残った粒状物の質量及び粒度を測定することによって、所定の粒度を有する第1成分を求め得る。大きい目開きの篩から、小さい目開きの篩の順に、前記の篩別を行って、それぞれの粒度の第1成分を求め得る。
【0019】
第1成分として使用される「澱粉」は、好ましくは、α化澱粉を含んでいる。また、加工澱粉又はハイアミローススターチを含んでいることが好ましい。ハイアミロースとは、例えば、澱粉に含まれるアミロース含量が50質量%以上のものをいう。
好ましい一態様において、第1成分は、トウモロコシ由来成分と他の澱粉との混合物である。より好ましくは、第1成分は、トウモロコシ由来成分と加工澱粉との混合物である。当該混合物中のトウモロコシ由来成分の含有量は、例えば15質量%以上である。
例えば、第1成分として、リン酸架橋澱粉とハイアミロースコーンスターチとの混合物をα化した材料等を用いることができる。
【0020】
第1成分として使用される「穀粉」としては、所定の粒径を有する穀物の粉砕物であればよく、特に限定されない。例えば、米粉、及びコーングリッツ等を挙げることができ、好ましくはコーングリッツである。
【0021】
流動状食品中の第1成分の含有量は、例えば0.3~5.0質量%、好ましくは0.5~3.0質量%である。
【0022】
(第2成分)
第2成分は、粘性発現及び分散性向上のために使用される。流動状食品において第1成分及び野菜・果実成分を含有させると、これらが沈殿してしまう場合がある。これに対して、特定の第2成分を含有させることにより、沈殿を防いで、第1成分及び野菜・果実成分を全体に分散させることができる。
【0023】
第2成分は、澱粉である。好ましくは、第2成分は、加水(加熱)した場合に、粘性を発現する成分である。「加水(加熱)した場合に、粘性を発現する」とは、澱粉を糊化させるか、糊化させた澱粉により、流動状食品に粘度を付与する性質であることを言う。
具体的には、第2成分は、500mPa・s以上の前記加熱時最高粘度を有していることが好ましい。第2成分の加熱時最高粘度は、好ましくは1000~2000mPa・s、さらに好ましくは1200~1800mPa・sである。
【0024】
第2成分は、原料段階で500μm未満の粒度を有する。この粒度も、第1成分と同様に、ふるい法で求められる重量基準の平均径である。第2成分の原料段階での粒度は、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下である。下限はないが、例えば2μm以上である。
第2成分は、流動状食品中において500μm未満の粒度を有することが望ましく、好ましくは200μm以下である。第1成分の場合と同様にして、流動状食品中における、所定の粒度の第2成分を求め得る。
【0025】
第2成分は、未加工澱粉であっても加工澱粉であってもよい。
【0026】
第2成分として使用される「加工澱粉」としては、架橋処理が施された澱粉が好ましく、より好ましくはリン酸架橋処理澱粉である。具体的には、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン等が挙げられ、好ましくは、アセチル化リン酸架橋澱粉である。
また、加工澱粉の原料となる澱粉としては、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、及び米澱粉等を用いることができる。
【0027】
第2成分として使用される「未加工澱粉」としては、特に限定されるものではなく、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、及び米澱粉等を用いることができる。
【0028】
第2成分の含有量は、例えば0.3~5.0質量%、好ましくは0.5~3.0質量%である。
【0029】
(粘度)
本実施形態に係る流動状食品の粘度は、品温60℃で例えば300~4000mPa・s、好ましくは400~3000mPa・s、より好ましくは500~2000mPa・s、より好ましくは600~1500mPa・sである。
他の原料との関係を考慮した上で、既述のように第2成分を作用させ、流動状食品の粘度を、前記の範囲にすることによって、沈殿を防いで、第1成分及び野菜・果実成分を全体に分散させ、所望の食感改善効果を得ることができる。
粘度は、B型粘度計(東機産業社製TVB-25型粘度計)を使用して、ローターNo.3を品温約60℃の具材を除く流動状食品の中に入れ、30rpmで回転させて、30秒後に測定し、3回測定した平均値をとる、という方法により測定することができる。
【0030】
(小麦粉)
本実施形態に係る流動状食品には、小麦粉が含まれていてもよいが、含まれてなくてもよい。流動状食品では、粘度を調製するために、小麦粉を使用することが一般的である。しかし、本実施形態によれば、第1成分及び第2成分を使用することによって、求める良好な食感を付与しつつ、粘度を調整することができる。よって、本発明の効果を達成する上で、小麦粉を使用しないことが望ましい。
また、小麦粉を使用しなければ、アレルゲンを有さない流動状食品を実現することもできる。
【0031】
(その他の成分)
本実施形態に係るレトルト食品には、上記の成分以外にも、必要に応じて他の成分が含まれていてもよい。その他の成分として、水、油脂、及び調味料(香辛料を含む)などが挙げられる。
【0032】
油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、オリーブオイル、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、サフラワー油、パーム油、米油等の植物油脂、牛脂(ヘット)、豚脂(ラード)、魚油、バター、ギー等の動物油脂、ジアシルグリセロール、マーガリン等の加工油脂が挙げられる。
油脂の含有量は、例えば0.5~20質量%、好ましくは1~10質量%である。
【0033】
流動状食品には、既述のように、具材が含まれていてもよい。具材としては、例えば、野菜類、豆類、穀類、果物類、肉類、及び魚介類等を挙げることができる。これらは、一般に微細なものではなく、固形部分として存在し、前記の微細な野菜・果実成分と区別される。
【0034】
また、本実施形態に係る流動状食品は、例えばカレーソース、シチューソース、ハヤシソース、デミグラスソース、ホワイトソース及びパスタソース等として使用される。流動状食品は、好ましくはカレーソースであり、より好ましくは、バターチキンカレーのソースである。
【0035】
(製造方法)
本実施形態に係る流動状食品及びその加工品の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、微細な野菜・果実成分と、第1成分と、第2成分とを、必要に応じて他の原料と共に加熱混合する。加熱混合後、混合物をレトルトパウチに充填し、レトルト処理(加熱殺菌又は加圧殺菌)を行う。これにより、本実施形態に係る流動状食品及びその加工品を得ることができる。
【実施例0036】
以下に、本発明をより具体的に説明するために、実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されて解釈されるべきものではない。
【0037】
(1)比較例1(小麦粉ルウを使用したレトルトバターチキンカレー)
常法に従って、小麦粉2.5質量部とラード2.5質量部を加熱して、小麦粉ルウを調製した。更に、トマトペースト5質量部(目開き2000μmのメッシュを全通、生換算25質量%)、バター3質量部、生クリーム5質量部、カレーパウダー1質量部、調味料5質量部及び水残量(以上の原料で合計100質量部)を加えて、95℃になるまで加熱混合して、バターチキンカレーソースを調製した。
得られたカレーソースと、カットして蒸煮した鶏肉とを、レトルトパウチに充填した。充填後、レトルト処理(加熱殺菌処理)を行い、レトルトバターチキンカレーを製造した。バターチキンカレーの粘度は、品温約60℃で、約900mPa・sであった。
【0038】
(2)実施例1~6、比較例2、4、5
小麦粉に代えて表1に記載された原料を使用し、実施例1~6、比較例2、4、5に係るバターチキンカレーを得た。尚、小麦粉を使用しなかったので、予めルウを調製するのではなく、表1に記載した原料を、ラード、トマトペースト、バター、生クリーム、カレーパウダー、調味料、及び水とともに、95℃になるまで加熱混合した。その他の点では、比較例1と同様の製造工程を採用した。尚、表1に記載の粒度は、原料段階での粒度である。尚、既述の方法で測定したところ、実施例1で製造した、バターチキンカレー中に含まれる原料イは、略全て目開き1000μmの篩をパスし、かつ目開き500μmの篩にオンした粒度のものであった。
【0039】
(3)比較例3
比較例1と同様に、小麦粉ルウを調製した。更に、小麦粉ルウを、比較例1と同様に、トマトペーストなどと共に加熱混合した。この際に、表1に記載される成分についても添加した。その他の点では、比較例1と同様の製造工程を採用した。
【0040】
尚、表1において、粒度は、原料段階の粒度を示す。
また、各原料としては、以下のものを使用した。
(加工澱粉A)
アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉
(加工澱粉B)
ワキシコーンスターチのヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン
(未加工澱粉C)
コーンスターチ
(原料イ)
リン酸架橋澱粉とハイアミロースコーンスターチとの混合物のα化物
(原料ロ)
コーングリッツ
(原料ハ)
コーン由来のリン酸架橋澱粉のα化物
(原料ニ)
とうもろこし澱粉を原料とするα化物
(原料ホ)
食物繊維 シトラスファイバー
(原料へ)
リンゴパルブペースト
【0041】
(加熱時最高粘度)
尚、加工澱粉A、原料イ、原料ロ、原料ハ及び原料ニについては、加熱時最高粘度を求めた。具体的には、7質量%水溶液を調製した。調製した水溶液について、ブラベンダー粘度測定器(PerkinElmer社製『ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)』)を用いて、昇温速度1.5℃/分で、50℃から95℃まで昇温させ、温度変化に伴う粘度の変化を測定した。
図1に測定結果を示す。測定結果に基づいて、加熱時最高粘度を求めた。結果は、以下の通りであった。
加工澱粉A:1578mPa・s
原料イ:731mPa・s
原料ロ:95mPa・s
原料ハ:372mPa・s
原料ニ:193mPa・s
【0042】
(評価)
得られた各レトルト食品について、外観・食感、風味について、下記の基準により官能評価を行った。尚、外観については、レトルト処理の前後において評価した。
【0043】
(外観)
◎:あらごし野菜のような自然な繊維感がある
〇:繊維感はあるが、よく見ると小さな粒が見える
△1:〇よりも繊維感が弱い
△2:透明な粒がはっきり見える
×1:均一滑らかな粘性で繊維感がない
×2:繊維が細か過ぎて糊化する
【0044】
(食感)
◎:あらごし野菜のような自然な繊維感を感じる
〇:◎よりも繊維感はやや弱い
△:〇よりも繊維感が弱い
×:繊維感を感じられない
(風味)
◎:ソース本来の良好な風味である。ソースの風味に、表1に示される成分による影響がない
〇:表1に示される成分が、ソースの風味にやや影響する
△:表1に示される成分が、○よりもソースの風味に影響する
×:表1に示される成分が、ソースの風味に大きく影響する(添加した成分の風味を強く感じ、ソースの風味を損なう)(例えば、小麦粉を添加したものは、小麦粉ならではの重たいベース感が付き、ソースの風味が曇る。比較例5のリンゴパルブを添加したときは、酸味がつく)
【0045】
結果を表2に示す。また、アレルゲンの有無についても、併せて表2に示す。
【0046】
表2に示されるように、比較例1では、自然な外観・食感は得られず、風味も良好ではなかった。
小麦粉に代えて第2成分のみを使用した比較例2では、風味が改善されていたものの、所望する繊維感は得られなかった。外観も劣っていた。
小麦粉と第1成分を併用した比較例3では、比較例1に比べて外観および食感の点でやや改善されていた。しかし、風味は改善されなかった。
これに対して、第1成分と第2成分を併用した実施例1~6においては、外観、食感、風味が比較例1に対して改善されていた。リン酸架橋澱粉とハイアミロースコーンスターチとの混合物をα化したものを第1成分として用いた実施例1~3は、特に優れていた。
一方、比較例4~5においては、粒状原料を使用しているにもかかわらず、外観、食感、又は風味に劣っていた。このことから、単に粒状原料を用いるのではなく、特定の粒状原料である第1成分及び第2成分を併用することにより、食感が改善できることが判る。
加熱時最高粘度が95~731mPa・sの第1成分と、加熱時最高粘度が1578mPa・sの第2成分を併用することにより、食感が改善できることが判る。
【0047】