(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183922
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】接着方法及び複合部材
(51)【国際特許分類】
B29C 65/52 20060101AFI20221206BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20221206BHJP
B29C 59/16 20060101ALI20221206BHJP
F16B 11/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B29C65/52
C09J5/00
B29C59/16
F16B11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091455
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 広隆
(72)【発明者】
【氏名】見置 高士
【テーマコード(参考)】
3J023
4F209
4F211
4J040
【Fターム(参考)】
3J023EA01
3J023FA01
3J023GA01
4F209AA25
4F209AC03
4F209AF01
4F209AG03
4F209AG05
4F209PA15
4F209PB01
4F209PN03
4F209PW43
4F211AA25
4F211AD08
4F211AD24
4F211AG03
4F211TA03
4F211TC03
4F211TD02
4F211TD04
4F211TH17
4F211TN60
4J040PA00
(57)【要約】
【課題】樹脂やゴムなどの軟質材料を接着し、せん断方向に印加された力に対しも十分な接着強度が発揮できるようにする。
【解決手段】第1部材10の接合面11b及び第2部材20の接合面21bのそれぞれに、複数の溝を形成する工程と、接合面11bと接合面21bとが接着剤30の層を介在させて対向し、接着剤30の層から接着剤が延びて接合面11b及び接合面21bの複数の溝をそれぞれ埋めるように、第1部材10及び第2部材20を接着する工程とを含み、接着する工程では、接合面11bに形成された複数の溝及び接合面21bに形成された複数の溝について、少なくともそれぞれ一つの溝は接着剤30の層を挟んで少なくとも一部が互いに対向して延びるように接着する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材の第1接合面及び第2部材の第2接合面のそれぞれに複数の溝を形成する工程と、
前記第1接合面と前記第2接合面とが接着剤の層を介在させて対向し、前記接着剤の層から接着剤が延びて前記第1接合面及び前記第2接合面に形成された複数の溝をそれぞれ埋めるように、前記第1部材及び前記第2部材を接着する工程と
を含み、
前記接着する工程では、前記第1接合面に形成された複数の溝及び前記第2接合面に形成された複数の溝について、少なくともそれぞれ一つの溝は前記接着剤の層を挟んで少なくとも一部が互いに対向して延びるように接着する接着方法。
【請求項2】
前記接着する工程で接着された前記第1接合面及び前記第2接合面に形成された複数の溝について、少なくともそれぞれ一つの溝はせん断方向に印加される力の方向に直交する方向に少なくとも一部が延びている請求項1に記載の接着方法。
【請求項3】
前記第1接合面及び前記第2接合面に形成された溝は、同じ幅及び深さで形成された請求項1又は2に記載の接着方法。
【請求項4】
前記第1接合面及び前記第2接合面に形成された溝は、同じ間隔で形成された請求項3に記載の接着方法。
【請求項5】
前記互いに対向して延びる前記少なくともそれぞれ一つの溝は、前記少なくとも一部で前記接着剤の層を挟んで少なくともその溝の幅の半分が対向している請求項4に記載の接着方法。
【請求項6】
前記互いに対向して延びる前記少なくともそれぞれ一つの溝は、前記少なくとも一部で前記接着剤の層を挟んでその溝の幅の全体が対向している請求項5に記載の接着方法。
【請求項7】
前記第1接合面及び前記第2接合面には、パルス波レーザーによるアブレーションによって前記複数の溝が形成された請求項1から6のいずれか一項に記載の接着方法。
【請求項8】
前記第1部材及び前記第2部材は、樹脂及びゴムの少なくとも一方を含む材料で構成された請求項1から7のいずれか一項に記載の接着方法。
【請求項9】
複数の溝が形成された第1接合面を有する第1部材と、
複数の溝が形成された第2接合面を有する第2部材と、
前記第1接合面と前記第2接合面との間に介在し、前記第1接合面及び前記第2接合面の複数の溝に延びてそれぞれ埋める接着剤の層と
を含み、
前記第1接合面及び前記第2接合面の溝について、少なくともそれぞれ一つの溝は前記接着剤の層を挟んで少なくとも一部が互いに対向して延びている複合部材。
【請求項10】
前記第1接合面及び前記第2接合面の複数の溝について、少なくともそれぞれ一つの溝はせん断方向に印加される力の方向に直交する方向に少なくとも一部が延びている請求項9に記載の複合部材。
【請求項11】
前記第1接合面及び前記第2接合面の溝は、同じ幅及び深さで形成された請求項9又は10に記載の複合部材。
【請求項12】
前記第1接合面及び前記第2接合面の溝は、同じ間隔で形成された請求項11に記載の複合部材。
【請求項13】
前記互いに対向して延びる前記少なくともそれぞれ一つの溝は、前記少なくとも一部で前記接着剤の層を挟んで少なくともその溝の幅の半分が対向している請求項12に記載の複合部材。
【請求項14】
前記互いに対向して延びる前記少なくともそれぞれ一つの溝は、前記少なくとも一部で前記接着剤の層を挟んでその溝の幅の全体が対向している請求項13に記載の複合部材。
【請求項15】
前記第1部材及び前記第2部材は、樹脂及びゴムの少なくとも一方を含む請求項9から14のいずれか一項に記載の複合部材。
【請求項16】
前記第1部材及び前記第2部材は、均一な材料によって構成された請求項15に記載の複合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、柔軟な部材を接着する接着方法及びこのような方法で接着されてなる複合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状に形成された樹脂成型品やゴム製の部材など柔軟な部材を接合する方法として、接着、ネジ止め、溶着、カシメ加工などが知られている。これらの内でも、接着は、異なる材料で構成された部材でも接合できる簡便な方法として知られている。接着は、接着強度を向上させることにより、ネジ止め、溶着、カシメ加工など他の方法に代えて広範な分野で利用が進められている。
【0003】
接着剤や材料を変えずに接着強度を向上させるための方法としては、物理的に接合面積を増やすためサンドブラスやウエットブラスト、エッチングなどで部材の表面を粗化するような表面処理が知られている(参考文献1を参照)。また、プラズマや紫外光(UV)やコロナ放電、オゾン、レーザーなどで部材に表面処理を施し、官能基を表面に発生させて化学的に結合を上げる方法も知られている。(参考文献2を参照)。さらにまた、部材に無機繊維を含有させることにより表面面積を増やす方法も知られている(参考文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-089565号公報
【特許文献2】特開2009-132824号公報
【特許文献3】特開2015-24573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着により接合された柔軟な部材は、接合された部分に引き剥がすようなせん断方向の力が印加されるため、せん断方向の接着強度が問題になる。前述した部材の表面を粗化する方法や官能基を表面に発生させて化学的な結合を上げる方法では、せん断方向の力に対して十分な接着強度が得られなかった。また、部材に無機繊維などの充填剤を含有させる方法は、接合された部分を垂直に剥がす場合には効果が高いが、せん断方向の力に対しては効果が低く、柔軟な部材が使用時に変形することで充填剤が折損し補強強化が得られないことがあった。
【0006】
この発明は、上述のような実情に鑑みて提案されるものであって、柔軟な部材を接合し、接合された部分にせん断方向の力が印加されても十分な接着強度を発揮できるような接着方法及びこのような接着方法で接合されてなる複合部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、この発明に係る接着方法は、第1部材の第1接合面及び第2部材の第2接合面のそれぞれに複数の溝を形成する工程と、第1接合面と第2接合面とが接着剤の層を介在させて対向し、接着剤の層から接着剤が延びて第1接合面及び第2接合面に形成された複数の溝をそれぞれ埋めるように、第1部材及び第2部材を接着する工程とを含み、接着する工程では、第1接合面に形成された複数の溝及び第2接合面に形成された複数の溝について、少なくともそれぞれ一つの溝は接着剤の層を挟んで少なくとも一部が互いに対向して延びるように接着するものである。
【0008】
接着する工程で接着された第1接合面及び第2接合面に形成された複数の溝について、少なくともそれぞれ一つの溝はせん断方向に印加される力の方向に直交する方向に少なくとも一部が延びていてもよい。
【0009】
第1接合面及び第2接合面に形成された溝は、同じ幅及び深さで形成されていてもよい。第1接合面及び第2接合面に形成された溝は、同じ間隔で形成されていてもよい。
【0010】
互いに対向して延びる前記少なくともそれぞれ一つの溝は、少なくとも一部で接着剤の層を挟んで少なくともその溝の幅の半分が対向していてもよい。互いに対向して延びる前記少なくともそれぞれ一つの溝は、少なくとも一部で接着剤の層を挟んでその溝の幅の全体が対向していてもよい。
【0011】
第1接合面及び第2接合面には、パルス波レーザーによるアブレーションによって複数の溝が形成されてもよい。第1部材及び第2部材は、樹脂及びゴムの少なくとも一方を含む材料で構成されていてもよい。
【0012】
この発明に係る複合部材は、複数の溝が形成された第1接合面を有する第1部材と、複数の溝が形成された第2接合面を有する第2部材と、第1接合面と第2接合面との間に介在し、第1接合面及び第2接合面の複数の溝に延びてそれぞれ埋める接着剤の層とを含み、第1接合面及び第2接合面の溝について、少なくともそれぞれ一つの溝は接着剤の層を挟んで少なくとも一部が互いに対向して延びているものである。
【0013】
第1接合面及び第2接合面の複数の溝は、少なくともそれぞれ一つの溝がせん断方向に印加される力の方向に直交する方向に少なくとも一部が延びていてもよい。
【0014】
第1接合面及び第2接合面の溝は、同じ幅及び深さで形成されていてもよい。第1接合面及び第2接合面の溝は、同じ間隔で形成されていてもよい。
【0015】
互いに対向して延びる前記少なくともそれぞれ一つの溝は、少なくとも一部で接着剤の層を挟んで少なくともその溝の幅の半分が対向していてもよい。互いに対向して延びる前記少なくともそれぞれ一つの溝は、少なくとも一部で接着剤の層を挟んでその溝の幅の全体が対向していてもよい。
【0016】
第1部材及び第2部材は、樹脂及びゴムの少なくとも一方を含んでいてもよい。第1部材及び第2部材は、均一な材料によって構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
接着方法は、柔軟な部材を接合し、接合された部分にせん断方向の力が印加されても十分な接着強度を発揮できる。また、複合部材は、せん断方向の力が印加されても十分な接着強度を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1部材及び第2部材を示す要部平面図である。
【
図2】接着した第1部材及び第2部材を示す図である。
【
図3】接着した第1部材及び第2部材を示す写真である。
【
図4】実施例の接着の態様を示す拡大断面図である。
【
図6】実施例3の接合面を示すレーザー顕微鏡画像である。
【
図7】比較例の接着の態様を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態は、シート状に形成された樹脂成型品やゴム製の部材など柔軟な部材を接着により接合することを想定している。また、このような柔軟な部材を接着により接合することにより構成された複合部材を想定している。なお、柔軟な部材とは、シート状に形成された樹脂成型品やゴム製の部材などに限らず、例えば樹脂で形成されたテープやフィルムなど他の種類のものであってもよい。
【0020】
図1は、本実施の形態の接着方法により接着する第1部材10及び第2部材20の要部平面図である。本実施の形態においては、シート状に形成された樹脂成型品やゴム製の部材など柔軟な部材の接着強度において問題となる引き剥がすようなせん断方向の接着強度を検討するために引張試験をせん断モードで実施することにする。本実施の形態では、便宜上、ISO527によって規定された引張試験片を長手方向に中央の位置で2個の個片に切断し、これらの一対の個片を第1部材10及び第2部材20に使用することにする。なお、これに限らず、本実施の形態において第1部材10及び第2部材20は所望の形状を有するものであってもよい。
【0021】
ISO527によって規定された引張試験片は、略短冊形状を有し、長手方向に両端近くが幅広のつかみ部を形成し、中央の所定範囲はつかみ部より幅が細くなった平行部を形成している。第1部材10及び第2部材20においては、それぞれ引張試験片の平行部をつかみ部12,22とし、平行部よりも幅広となったつかみ部を接着剤により接合する接合部11,21とするものとする。第1部材10及び第2部材20は、柔軟な材料であって、無機繊維などの充填剤を含有しない均一な材料で構成するものとする。
【0022】
図1(a)は、接合部11の接合面11bに平行な複数の溝を形成した第1部材10を示している。接合部11は、平面視で略矩形状を有し、短辺の長さが20mmである。また、第1部材10は所定の厚さを有し、例えば4mmであってもよい。第1部材10の長手方向に接合部11の主表面の略中央には幅が12.5mmの範囲にわたって接着剤30により接合するための接合面11bが設けられている。なお、第2部材20も第1部材10と同様の構成を有するため、図中に示した第1部材10の構成において共通する部分に第2部材20の参照番号を附して対応関係を明らかにすることにする。以下でも同様とする。
【0023】
本実施の形態において、接合面11bには、第1部材10の短手方向に直線状に延びる平行な複数の溝が形成される。溝の間隔、幅及び深さは、全ての溝について同じであってもよい。この溝は、例えばパルス波レーザーによるアブレーションによって形成されてもよい。
【0024】
第1部材10の長手方向に接合部11側の一端と接合面11bとの間の所定幅の第1領域11aと、接合面11bからつかみ部12側に所定幅の第2領域11cとが確保され、長手方向に接合面11bを挟んで対向している。この第1領域11a及び第2領域11cには接着剤30が塗布されず、接合面11bに塗布された接着剤30が接合面11b上に留まることを確保している。
【0025】
図1(b)は接合部11の接合面11bに接着剤30が塗布された第1部材10を示している。
図1(b)に示すように、接合部11の接合面11bには、接着剤30が所定の厚さで塗布されている。接合面11bに塗布された接着剤は、接合面11bに形成された複数の溝にも延び、これら複数の溝を埋めている。接合面11bを挟んで対向する第1領域11a及び第2領域11cには、接合面11bに塗布された接着剤30が接合面11b上に留まり、接合部11の主表面に沿って広がらないように、それぞれPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート31が貼付されている。
【0026】
図2は、接着した第1部材10及び第2部材20を示す図である。
図3は、接着した第1部材10及び第2部材20を示す写真である。
図1(b)に示したように、第1部材10の接合面11bと、第2部材20の接合面21bとには、それぞれ接着剤30が塗布されている。これらの第1部材10及び第2部材20について、それぞれの長手方向に延びる軸が略同軸上にあって、それぞれのつかみ部12,22が接合部11,21を挟んで対向するような反平行な配置において、接合面11b、21bが接着剤30の層を介在させて対向するように接着する。
【0027】
このような反平行な配置において、第1部材10及び第2部材20の接合面11b,21bに短手方向に直線状に延びるように形成された平行な複数の溝は、互いに平行になる。第1部材10の接合面11bに形成された複数の溝と、第2部材20の接合面21bに形成された複数の溝とは、その少なくとも一部が、その少なくとも一部で対向している。第1部材10の接合面11b及び第2部材20の接合面21bに印加されるせん断方向の力は、前記反平行な方向に印加されるため、短手方向に延びる複数の溝は、せん断方向と直交方向する方向に延びているということができる。
【0028】
第1部材10の接合面11bに形成された平行な複数の溝と、第2部材20の接合面21bに形成された平行な複数の溝とは、同じ幅及び深さで形成されたものであってもよく、同じ間隔で形成されたものであってもよい。第1部材10の接合面11bに形成された平行な複数の溝と、第2部材20の接合面21bに形成された平行な複数の溝との少なくとも一部は、接着剤30の層を挟んで少なくともその幅の半分が対向してもよく、その幅の全部が対向してもよい。
【0029】
このように、本実施の形態の接着方法においては、第1部材10及び第2部材20の接合面11b,12bにそれぞれせん断方向と直交する方向に延びるような平行な複数の溝を形成し、第1部材10及び第2部材が反平行になるように、第1部材10及び第2部材20の接合面11b,21bを接着し、第1部材10の接合面11bに形成された平行な複数の溝と第2部材20の接合面21bに形成された平行な複数の溝との一部は、接着剤30の層を挟んで少なくともその幅の半分が対向してもよく、その幅の全部が対向してもよい。また、本実施の形態の複合部材は、このように接着された第1部材10及び第2部材20と、第1部材10及び第2部材20との間に介在する接着剤30の層とから構成される。
【0030】
本実施の形態において、第1部材10及び第2部材20の接合面11b,21bにおいて、それぞれの接合面11b,21bに形成された平行な複数の溝はせん断方向と直交する方向に直線状に延び、接合面11b,21bの間に介在する接着剤30の層からは接着剤30が延びて溝を埋めている。したがって、接合面11b,21bにおいてせん断方向に破断が発生するためには、接合面11b,21bに介在する接着剤30の層から延びて溝を埋めている接着剤30が固化した構造を機械的に破壊する必要がある。このため、本実施の形態は、せん断方向に印加された力に対して十分な接着強度を発揮することができる。
【0031】
なお、本実施の形態においては、第1部材10及び第2部材20の接合面11b,21bにおいて、それぞれの接合面11b,21bに形成された平行な複数の溝は直線状に延びているとしたが、これに限らず複数の溝は格子状、同心円状などの他の形状であっても、接合面11b,21bに形成された複数の溝について少なくともそれぞれ一つの溝が接着剤30の層を挟んで少なくとも一部が互いに対向して延びるように接着されていればよい。前記互いに対向して延びる少なくともそれぞれ一つの溝は、少なくとも一部が、その幅の半分が対向してもよく、その幅の全部が対向してもよい。また、このように接着された複数の溝について、少なくともそれぞれ一つの溝がせん断方向に印加される力の方向に直交する方向に少なくとも一部が延びていればよい。
【実施例0032】
本実施の形態を適用した実施例1について説明する。実施例1では材料にポリプラスチックス株式会社製ジュラネックス(登録商標)PBT2020を使用し、射出成型機に住友重機械工業株式会社製SE-100Dを用いてシリンダー温度260℃、金型温度80℃でISO527に規定する引張試験片を作成した。そして、この引張試験片を長手方向に中央の位置で2個の個片に切断し、これら一対の個片を第1部材10及び第2部材20とした。
【0033】
図1(a)に示すように、第1部材10の接合面11bに、キーエンス製レーザーマーカー(波長1064nm)を用いて幅175μm、深さ100μmの溝を350μmピッチで作成した。同様に、第2部材20の接合面21bにも溝を作成した。
【0034】
次に、
図1(b)に示すように、第1部材10の第1領域11a及び第2領域11cに、それぞれPTFEシート31を貼付した。そして、第1部材10の接合面11bに、接着剤30としてペルノックス株式会社製ME-382Y/HY-690Y(混合比100/50)を塗布し、接着剤30が接合面11bに形成された溝にも延びて溝を埋めるようにした。同様に、第2部材20の第1領域21a及び第2領域21cもそれぞれPTFEシート31を貼付し、接合面21bに前記の接着剤30を塗布した。
【0035】
続いて、
図2及び
図3に示すように、第1部材10及び第2部材20が反平行に配置され、第1部材10の接合面11bと第2部材20の接合面21bとが接着剤30の層を介在させて対向するように接着した。ここで、
図4の実施例1の欄の拡大断面図に示されているように、第1部材10の接合面11bに形成された溝と、第2部材20の接合面21bに形成された溝とが、溝同士の重なり合いが100%、すなわち溝の幅の全部が対向するように配置した。このように配置した第1部材10及び第2部材20を硬化条件120℃×3時間で硬化させた。第1部材10の接合面11b及び第2部材20の接合面21bで構成される接着面積は、250mm
2であった。
【0036】
接着した第1部材10及び第2部材20について、つかみ部12,22を島津製作所製万能試験機AG-20のチャックにそれぞれ取り付け、試験速度5mm/minで引っ張ってせん断モードの接着強度を測定した。接着強度の試験結果は、次の表1の実施例1の欄に示されている。引張試験により第1部材10と第2部材20とが破断したときのせん断応力は1.25MPaであり、剥離状況は接着剤破壊であった。
【0037】
【0038】
このように、第1部材10及び第2部材20の接合面11b,21bにおいて溝同士の重なり合いが100%になるように接着されたときには、せん断強度1.25MPaという十分に大きな接着強度が得られることが明らかになった。
接着強度の試験結果は、前記の表1の実施例2の欄に示されている。引張試験により第1部材10と第2部材20とが破断したときのせん断応力は1.15MPaであり、剥離状況は接着剤破壊であった。
このように、第1部材10及び第2部材20の接合面11b,21bにおいて溝同士の重なり合いが50%になるように接着されたときには、せん断強度1.15MPaという比較的大きな接着強度が得られることが明らかになった。