(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184084
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20221206BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20221206BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091726
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】藤本 怜美
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 直人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 直人
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056HA44
2H186AB11
2H186BA08
2H186DA10
2H186FB04
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB34
2H186FB36
2H186FB37
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB55
4J039AC00
4J039BC33
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE22
4J039BE27
4J039CA05
4J039EA06
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】LEDを光源とした光照射によっても硬化性及び基材との密着性に優れ、得られる塗膜(硬化物)の硬度に優れる活性エネルギー線硬化性インク組成物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるモノマーを組成物全体に対し20~60質量%、及び重合促進剤を組成物全体に対し0.1~10質量%含み、単官能重合性化合物の含有量が組成物全体に対し5質量%以下である、紫外線発光ダイオードを用いた光で硬化させる、活性エネルギー硬化性インク組成物。
CH2=CR1-COO-R2-O-CH=CH-R3 ・・・(1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数2~20の有機残基を表し、R3は水素原子又は炭素数1~11の有機残基を表す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるモノマーを組成物全体に対し20~60質量%、及び重合促進剤を組成物全体に対し0.1~10質量%含み、単官能重合性化合物の含有量が組成物全体に対し5質量%以下である、紫外線発光ダイオードを用いた光で硬化させる、活性エネルギー硬化性インク組成物。
CH2=CR1-COO-R2-O-CH=CH-R3 ・・・(1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数2~20の有機残基を表し、R3は水素原子又は炭素数1~11の有機残基を表す)
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるモノマーが、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル又はメタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルである、請求項1に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるモノマーとは相違する、重合性基を2個以上有する重合性化合物をさらに含む、請求項1又は2に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物。
【請求項4】
重合開始剤を、組成物全体に対し4~15質量%含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物。
【請求項5】
硬化させた際の鉛筆硬度が3H以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物。
【請求項6】
紫外線硬化性インクジェットインク組成物である、請求項1~7のいずれか1項に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物を記録媒体に付着させる工程と、
前記活性エネルギー硬化性インク組成物に対して紫外線発光ダイオードを用いた光を照射する工程と、を含む、インクジェット記録方法。
【請求項8】
前記紫外線発光ダイオードを用いた光の照射エネルギーが50~1000mJ/cm2である、請求項7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物を用いて記録された、記録物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な記録物、典型的には印刷物の製造に使用可能な、活性エネルギー線硬化性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置による印刷は、印刷版を必要とせず、ノズルよりインクを吐出して被記録材に印刷する方式である。ノズルと被記録材が接触しないので、紙基材だけでなく、プラスチックや金属等の、曲面や凹凸のある不規則な形状を有する表面を有する基材に対しても良好に印刷を行えるという特徴を有する。このため、インクジェット印刷方式は、広範囲な産業分野での利用拡大が期待されている。
特に、紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compounds)の含有量が低く、印刷工程での乾燥等に要するエネルギー消費が小さいため、環境対応技術としても注目されている。
活性エネルギー線硬化型インクジェットインクとして、例えば特許文献1~5のようなインク組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-280383号公報
【特許文献2】特開2009-057548号公報
【特許文献3】特開2017-149811号公報
【特許文献4】特開2018-009142号公報
【特許文献5】国際公開第2013/062090号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの硬化に用いられる光源として、水銀ランプやメタルハライドランプが広く知られている。しかし、近年、環境保護の観点から水銀フリー化が望まれており、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)が小型、高寿命、高効率かつ低コストであることから光硬化型インクジェットインク用光源として期待されている。
印刷物として使用する上で、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクには様々な基材に対する良好な接着性・密着性や硬度が要求される。一方で、メタルハライドランプによる光照射によって高硬度の塗膜を形成できるインク組成物に、LEDを用いて光照射しても必ずしも高硬度で基材への接着性・密着性に優れる塗膜を形成できるとは限らず、特許文献1~5に開示されるインク組成物は、光源を変更した場合の、得られる塗膜の硬度と接着性の両立について、なお改善の余地を有している。
高硬度の塗膜とする手法として、インク組成物中の重合開始剤の配合量を増加させることが考えられるが、塗膜が着色するという問題が生じる場合がある。
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、重合性モノマーの選択と配合量を特定範囲とし、かつ重合促進剤を特定量配合することにより、LEDを光源とした光照射によっても硬化性が良好で、得られる塗膜(硬化物)の硬度に優れる活性エネルギー線硬化性インク組成物が得られることを見出した。また、かかる組成物はインクジェット用インク組成物としての連続吐出性に優れており、形成される塗膜は着色が抑制され、特にアクリル系樹脂基材との密着性に優れることを見出した。
本発明の目的は、LEDを光源とした光照射によっても硬化性及び基材との密着性に優れ、得られる塗膜(硬化物)の硬度に優れる活性エネルギー線硬化性インク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 下記一般式(1)で表されるモノマーを組成物全体に対し20~60質量%、及び重合促進剤を組成物全体に対し0.1~10質量%含み、単官能重合性化合物の含有量が組成物全体に対し5質量%以下である、紫外線発光ダイオードを用いた光で硬化させる、活性エネルギー硬化性インク組成物。
CH2=CR1-COO-R2-O-CH=CH-R3 ・・・(1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数2~20の有機残基を表し、R3は水素原子又は炭素数1~11の有機残基を表す)
[2] 前記一般式(1)で表されるモノマーが、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル又はメタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルである、[1]に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物。
[3] 前記一般式(1)で表されるモノマーとは相違する、重合性基を2個以上有する重合性化合物をさらに含む、[1]又は[2]に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物。
[4] 重合開始剤を、組成物全体に対し4~15質量%含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物。
[5] 硬化させた際の鉛筆硬度が3H以上である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物。
[6] 紫外線硬化性インクジェットインク組成物である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物。
[7] [1]~[6]のいずれか1項に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物を記録媒体に付着させる工程と、
前記活性エネルギー硬化性インク組成物に対して紫外線発光ダイオードを用いた光を照射する工程と、を含む、インクジェット記録方法。
[8] 前記紫外線発光ダイオードを用いた光の照射エネルギーが50~1000mJ/cm2である、[7]に記載のインクジェット記録方法。
[9] [1]~[7]のいずれか1項に記載の活性エネルギー硬化性インク組成物を用いて記録された、記録物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、LEDを光源とした光照射によっても硬化性及び基材との密着性に優れ、得られる塗膜(硬化物)の硬度に優れる活性エネルギー線硬化性インク組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、下記一般式(1)で表されるモノマー(以下、単に「モノマー(1)」と称する。)を組成物全体に対し20~60質量%、及び重合促進剤を組成物全体に対し0.1~10質量%含み、単官能重合性化合物の含有量が組成物全体に対し5質量%以下である、紫外線発光ダイオードを用いた光で硬化させる、活性エネルギー硬化性インク組成物(以下、単に「本インク組成物」と称する。)である。
CH2=CR1-COO-R2-O-CH=CH-R3 ・・・(1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数2~20の有機残基を表し、R3は水素原子又は炭素数1~11の有機残基を表す)
【0009】
本明細書中において「(メタ)アクリレート」はアクリレート、メタアクリレート及びそれらの双方を総称する用語である。「(メタ)アクリル」はアクリル、メタアクリル及びそれらの双方を総称する用語である。「(メタ)アクリロイルオキシ基」は、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基及びそれらの双方を総称する用語である。
【0010】
以下、本インク組成物の構成について説明する。なお、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されず、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてもよい。
【0011】
本インク組成物はモノマー(1)を含有する。モノマー(1)は、前記一般式(1)で示される、ビニルエーテル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル化合物である。
一般式(1)中、R2が表す炭素数2~20の有機残基としては、炭素数2~20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合により酸素原子を有する炭素数2~20のアルキレン基、環を構成する炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に置換されていてもよい、炭素数6~11の芳香族基等が挙げられ、炭素数2~6のアルキレン基、構造中にエーテル結合により酸素原子を有する炭素数2~9のアルキレン基が好ましい。
R3が表す炭素数1~11の有機残基としては、炭素数1~10の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、環を構成する炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に置換されていてもよい、炭素数6~11の芳香族基等が挙げられ、炭素数1~2のアルキル基、炭素数6~8の芳香族基が好ましい。
【0012】
モノマー(1)の具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1-ジメチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
中でも、モノマー(1)として、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを用いるのが好ましく、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを用いるのが、低粘度で引火点が高く、硬化性に優れるという観点からより好ましい。
【0013】
モノマー(1)は、本インク組成物全体に対し20~60質量%の範囲で含まれる。モノマー(1)の本インク組成物全体に対する含有量は、25質量%以上が好ましく、30質量%以上が好ましく、32質量%以上がより好ましい。かかる含有量は55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。本インク組成物がモノマー(1)をかかる範囲で含有すると、本インク組成物からLEDを光源とした光照射で形成される塗膜の硬度に優れ、基材との密着性、特にアクリル系樹脂基材との密着性が向上する。
【0014】
本インク組成物は、単官能重合性化合物を、本インク組成物全体に対し5質量%以下の範囲で含有する。かかる単官能重合性化合物は、重合性二重結合を有する、25℃で液状の化合物であるのが好ましく、その分子量は60~2000であるのが好ましく、100~1000であるのがより好ましい。
また、かかる単官能重合性化合物の粘度は1000mPa・s以下であるのが好ましく、300mPa・s以下であるのがより好ましい。かかる粘度は1mPa・s以上であるのが好ましく、3mPa・s以上であるのがより好ましい。
【0015】
単官能重合性化合物としては、複素環構造を有する化合物、鎖状又は環状の脂肪族基を有する単官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレート、芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート、モノビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0016】
複素環構造を有する化合物としては、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、N-ビニルカプロラクタムが、安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、良好な硬化性及び硬化後の塗膜の被記録媒体への密着性が得られるので好ましい。
【0017】
鎖状又は環状の脂肪族基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
アルキレンオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、インクジェット吐出性、硬化させて得られる塗膜の密着性、及び低温時の柔軟性(伸長耐性)の観点から、2-フェノキシエチルアクリレートがより好ましい。
【0020】
モノビニルエーテル化合物としては、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0021】
上記した、単官能重合性化合物の本インク組成物全体に対する含有量は1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、0質量%であってもよい。単官能重合性化合物の含有量をこのように設定して、後述する、重合性基を2個以上有する重合性化合物を本インク組成物に含有させると、LEDを光源とした際の本インク組成物の硬化性及び基材との密着性、また得られる塗膜(硬化物)の硬度が良好となる。
【0022】
本インク組成物は、モノマー(1)とは相違する、重合性基を2個以上有する重合性化合物(以下、「多官能重合性化合物」と称する。)をさらに含有することができる。ここで重合性基とは、重合性の不飽和二重結合を有する基を意味する。かかる多官能重合性化合物はモノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよいが、連続吐出性等の本インク組成物の効果をより発揮する観点からは、本インク組成物が含有する多官能重合性化合物はモノマーであることが好ましい。なお、本明細書において「モノマー」とは分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が1000以下の化合物を意味する。モノマーの分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は50~1000である。「オリゴマー」とは、一般に有限個(一般的には5~100個)のモノマーに基づく構成単位を有し、重量平均分子量が1000を超え30000未満である重合体を意味する。「ポリマー」とは、重量平均分子量30000以上の重合体を意味する。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)にて測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた値である。
【0023】
多官能重合性化合物としては、例えば多官能(メタ)アクリレート、ジビニルエーテル化合物又はトリビニルエーテル化合物等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート[ネオペンチルグリコールエチレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物]、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート[ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物]等のグリコール(メタ)アクリレート;
【0024】
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
【0025】
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
ジビニルエーテル化合物又はトリビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
これらの多官能重合性化合物は1種類を単独でも、2種以上を含有していてもよい。
【0027】
本インク組成物が多官能重合性化合物をさらに含有する場合、その含有量は、本インク組成物全体に対し10~75質量%の範囲であるのが好ましい。LEDを光源とした際の硬化性及び得られる塗膜(硬化物)の硬度に優れる本インク組成物を得る観点からは、かかる含有量は12質量%以上であるのがより好ましく、15質量%以上であるのがさらに好ましく、65質量%以下であるのがより好ましく、55質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0028】
本インク組成物は、重合開始剤を本インク組成物全体に対して4~15質量%の範囲で含むことが好ましく、6~9質量%の範囲であることが、形成される塗膜の着色が抑制される観点から好ましい。重合開始剤は、光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤としては、例えばベンゾインイソブチルエーテル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。これらの中でも、アシルホスフィンオキシド系の光重合開始剤が好ましい。
【0029】
また、活性エネルギー線の光源としての、紫外線発光ダイオード(UV-LED)光源から発せられる光の波長に対応した光重合開始剤として、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、2-イソプロピルチオキサントン等を用いるのが好ましい。
【0030】
本インク組成物において、重合開始剤は重合促進剤と組み合わせて用いる。
重合促進剤としては、例えばトリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N-ジメチルベンジルアミン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、モノマー(1)、単官能重合性化合物、及び多官能重合性化合物と反応性を有さないアミンが挙げられる。
【0031】
重合促進剤の含有量は本インク組成物全体に対して0.1~10質量%の範囲であることが好ましい。重合促進剤の本インク組成物全体に対する含有量は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましい。かかる含有量は7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
また、重合促進剤の含有量は、重合開始剤及び重合促進剤の合計量に対して10~60質量%の範囲であることが好ましい。
本インク組成物が重合促進剤をかかる範囲で含有すると、本インク組成物における重合開始剤の含有量を低減できる。このため、本インク組成物から形成される塗膜の着色性を改善でき、さらにUV-LED光源を用いても低ピーク照度で硬化させることができる。
【0032】
本インク組成物は、前記したモノマー(1)、単官能重合性化合物、多官能重合性化合物のほかに、着色剤を含有させて使用できる。
着色剤としては例えば顔料や染料が挙げられる。顔料としては、例えばシアンインクに使用されるフタロシアニン顔料、マゼンタインクに使用されるキナクリドン系顔料、イエローインクに使用されるアゾ顔料、ブラックインクに使用されるカーボンブラック、ホワイトインクに使用可能な白色顔料等が挙げられる。
【0033】
シアンインクに使用されるフタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルーの1、2、3、15:3、15:4、16:6、16、17:1、75、79等が挙げられる。
マゼンタインクに使用されるキナクリドン系顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
イエローインクに使用されるアゾ顔料としては、例えばC.I.ピグメント イエローの120、151、154、175、180、181、1、65、73、74、116、12、13、17、81、83、150、155、214、128等のモノアゾ及びジアゾ顔料が挙げられる。
【0034】
ブラックインクに使用されるカーボンブラックとしては、三菱ケミカル株式会社のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA11、MA100、No.2200B等;コロンビア社製のRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700等;キャボット社製のRegal400R、同330R、同660R、Mogul L、同700、Monarch800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400等;デグッサ社製のColor Black FW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、Color Black S150、同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同140U、Special Black 6、同5、同4A、同4等;が挙げられる。
上記した各種顔料の体積平均粒径は10~300nmの範囲であることが好ましく、50~200nmであることがより好ましい。
【0035】
ホワイトインクに使用可能な白色顔料としては、公知の無機白色顔料を特に限定なく使用できる。無機白色顔料としては、例えば、アルカリ土類金属の硫酸塩又は炭酸塩、微粉ケイ酸や合成珪酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。なお、シリカ類等の表面が各種表面処理方法によって表面処理されていてもよい。
白色顔料として酸化チタンを用いる場合、その体積平均粒径は100~500nmであるのが好ましく、より一層優れた吐出安定性と印刷画像の高い発色性とを備えたインクを得る観点から、150nm~400nmであるのがより好ましい。
【0036】
上記した各種顔料は、十分な画像濃度や印刷画像の耐光性を得るため、本インク組成物全体に対して1~20質量%の範囲で含まれることが好ましく、1~10質量%の範囲で含まれることがより好ましく、1~5質量%の範囲で含まれることがさらに好ましい。また、マゼンタインクは、他の色インクよりも顔料濃度を高くすることが好ましい。具体的には他の色のインクよりも顔料濃度を1.2倍以上とすることが好ましく、1.2~4倍とすることがより好ましい。
【0037】
上記した各種顔料は、本インク組成物中における分散安定性、具体的にはモノマー(1)や多官能重合性化合物等に対する分散安定性を高める目的で、顔料分散剤や顔料誘導体(シナジスト)等と組合せて使用してもよい。顔料分散剤としては、例えば味の素ファインテクノ社製のアジスパー(アジスパーは登録商標)PB821、同PB822、PB824;Lubrizol社製のSolsperse(Solsperseは登録商標)24000GR、同32000、同33000、同39000;楠本化成株式会社製のディスパロンDA-703-50;BASF社のEFKA(EFKAは登録商標)PX4701等が挙げられる。また、顔料誘導体としては、例えば顔料のスルホン酸誘導体等が挙げられる。
【0038】
顔料分散剤の使用量は、前記顔料に対して10~100質量%の範囲が好ましく、より一層優れた吐出安定性と顔料分散性とを備えたインクを得る観点から、20~60質量%の範囲がより好ましい。
【0039】
本インク組成物は、分散性と取扱い性を向上させる観点から、分散剤としてさらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、例えばジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0040】
また、界面活性剤として、シリコーン鎖を有する化合物、ポリエーテル鎖を側鎖又は末端に有し主鎖にポリシロキサン構造を有するシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキル鎖を有するフッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)等の、好ましくは疎水性の有機フルオロ化合物を用いてもよい。
シリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤としては、BYKケミー社のBYK306,307,310,313,320,331,333,350,377,378;信越化学工業社のKFシリーズ及びX-22シリーズ、X-21シリーズの両末端を有機基に置換したシリコーン、片末端を有機基に置換したシリコーン、側鎖両末端を有機基に置換したシリコーン、側鎖を有機基に置換したシリコーン;DIC社のメガファックFシリーズが挙げられる。
本インク組成物における界面活性剤の含有量は、連続吐出性、吐出安定性を確保し、表面張力を所望の範囲にする観点から、本インク組成物全体に対し0.05~2質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることがより好ましい。
【0041】
本インク組成物は、前記した成分の他に、さらに必要に応じてハイドロキノン、ジ-t-ブチルハイドロキノン、P-メトキシフェノール、ベンゾキノン、ブチルヒドロキシトルエン、ニトロソアミン塩、ヒンダードアミン系化合物、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル(TEMPO)等の重合禁止剤をさらに含有していてもよい。重合禁止剤を含有する場合、その量は、本インク組成物の全体量に対し0.01~2質量%の範囲が好ましい。
【0042】
本インク組成物は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、褪色防止剤、導電性塩類等の添加剤を含有していてもよい。
【0043】
本インク組成物の25℃における粘度は、3~30mPa・sの範囲であることが好ましく、5~20mPa・sの範囲であることが、インクジェット連続吐出性及び吐出安定性を高められる観点からより好ましい。
【0044】
本インク組成物は、例えば前記したモノマー(1)、単官能重合性化合物、多官能重合性化合物、顔料等の着色剤、顔料分散剤を加えた混合物をビーズミル等の通常の分散機を用いて顔料を分散した後、重合開始剤及び重合促進剤を加え、さらに必要に応じ重合禁止剤、表面張力調整剤等の任意添加成分を加えて攪拌、溶解することで製造できる。
本インク組成物はまた、予めビーズミル等の通常の分散機を用いて、顔料や顔料分散剤等を含有する高濃度の顔料分散体(ミルベース)を製造後、前記したモノマー(1)、単官能重合性化合物、多官能重合性化合物、光重合開始剤、重合促進剤や任意添加成分を供給し、攪拌、混合することによっても製造できる。
ここで、分散機としては、ビーズミルの他、たとえば超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等、公知慣用の各種分散機を使用できる。
【0045】
本インク組成物は、活性エネルギー線、特に紫外線発光ダイオード(UV-LED)ランプの光を照射して硬化させるのに好適である。通常、活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インクに使用する紫外線等の光源としては、例えばメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、UV-LEDランプ等が挙げられるが、本インク組成物は、UV-LED光源を用いても低ピーク照度で硬化させることができる。
【0046】
本インク組成物は、インクジェット記録装置を用いたインクジェット記録方式での印刷に好適に使用できる。すなわち、本インク組成物の好適な態様の一つは、紫外線硬化性インクジェットインク組成物である。インクジェット記録方式としては、例えば圧電素子の振動を利用して液滴を吐出させる方法(電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッドを用いた記録方法)や熱エネルギーを利用する方法等、従来公知の方式をいずれも使用できる。
【0047】
本インク組成物を、インクジェット記録装置を用いて、被記録媒体である基材に吐出し、LEDを光源とする活性エネルギー線を照射することによって硬化させて、印刷物を製造できる。詳細には、本インク組成物を記録媒体(基材)に付着させる工程と、本インク組成物に対してUV-LEDを用いた光を照射する工程とを含むインクジェット記録方法により、記録物(印刷物)を製造できる。かかる記録物(印刷物)としては、例えば広告、看板、案内板、販促品印刷等が挙げられる。
【0048】
基材上に本インク組成物を付着させる工程は、公知のインクジェット記録装置を用いて行える。本インク組成物の吐出の際は、上述のように本インク組成物の25℃における粘度を3~30mPa・sとすることが好ましく、5~20mPa・sとすることが、インクジェット連続吐出性及び吐出安定性を高められる観点からより好ましい。吐出時の組成物の温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。
【0049】
UV-LEDを用いた光の照射エネルギーは50~1000mJ/cm2の範囲であるのが好ましく、200~800mJ/cm2の範囲がより好ましい。
本インク組成物は、硬化させた際の鉛筆硬度が好ましくは3H以上であり、このような硬度を有しながらも、各種基材との接着性に優れる。
【0050】
本インク組成物は、被記録媒体である様々な基材に対する密着性に優れており、曲面や凹凸した不規則な形状を有する基材の表面にも容易に印刷できる。
基材の材料としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂;ポリ塩化ビニル/ABS樹脂、ポリアミド/ABS樹脂、ポリカーボネート/ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート/ABS樹脂等のABS系ポリマーアロイ;アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・エチレンゴム・スチレン樹脂、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の、射出成形用に汎用される樹脂が挙げられる。
【0051】
また、基材としてフィルムを用いることも可能である。フィルムとしては、例えば食品包装材料用途の熱可塑性樹脂フィルム等が挙げられ、例えばポリエチレンレテレフタレート(PET)フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、アクリル系フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム等が挙げられる。フィルムは、一軸延伸や二軸延伸等の延伸処理されたものや、表面に火炎処理やコロナ放電処理等が施されたものも使用できる。
中でも、本インク組成物から形成される塗膜は、とりわけアクリル系樹脂を材料とする基材との密着性・接着性に優れる。
【実施例0052】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等により限定されない。
本実施例等で使用した化合物を以下に示す。
【0053】
<顔料>
・C1:Fastogen Blue TGR-J(フタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー15:4、DIC社製)
<顔料分散剤>
・Solsperse32000(Lubrizol社製)
<モノマー(1)>
・VEEA-AI:アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒製)
<多官能重合性化合物>
・Miramer M300:トリメチロールプロパントリアクリレート
(MIWON社製)
・Miramer M222:ジプロピレングリコールジアクリレート
(MIWON社製)
・Miramer M200:ヘキサンジオールジアクリレート(MIWON社製)
・Miramer M3130:トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート(MIWON社製)
<単官能重合性化合物>
・V-Cap:N-ビニルカプロラクタム(Ashland社製)
<重合性オリゴマー>
・EBECRYL 7100:アミノアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)
<光重合開始剤>
・Omnirad819:フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(アシルホスフィンオキシド系;IGM RESINS B.V.社製)
・OmniradTPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(アシルホスフィンオキシド系;IGM RESINS B.V.社製)
・SpeedCure DETX:2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン(ランブソンジャパン社製)
<重合促進剤>
・KAYACURE EPA:4-ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製)
<重合禁止剤>
・ノンフレックスAlba:2,5-ジtert-ブチルヒドロキノン(精工化学社製)
<添加剤>
・KF-351A:ポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業社製)
・KF-54:メチルフェニルポリシロキサン(信越化学工業社製)
【0054】
[顔料分散体の調製例]
10質量部の顔料(C1)、4.5質量部の顔料分散剤(Solsperse32000)を、及び85.5質量部のMiramer M222を混合し、攪拌機で1時間撹拌した後、ビーズミルで2時間処理することによって、各実施例及び比較例で用いた顔料分散体1を得た。
【0055】
実施例1~5、比較例1~8
1.インク組成物の調製
表1及び表2に記載の配合割合に従って、各顔料分散体及び各成分を容器に入れて60℃で加熱撹拌混合し、インク組成物1~13を調製した。
【0056】
2.インク組成物の評価
2-1.硬化性
得られたインク組成物をアクリル板「コモグラス」(商品名、クラレ社製)上に滴下し、スピンコーターを用い、膜厚2μm、及び膜厚6μmで塗布した。次いで、ステージ移動装置を備えたLED照射装置(浜松ホトニクス社製)を用いて、UV-LED光線(発光波長:395nm、ピーク強度:1000mW/cm2)下を通過させることにより照射を行ってインクを硬化させ、タックフリーになるまでの照射エネルギー量の積算光量(mJ/cm2)を測定した。なお、表2における「×」は未硬化を意味する。
【0057】
2-2.密着性
前記した2-1.で得られた硬化塗膜(インク組成物から得られた塗膜の膜厚:2μm)を用い、硬化塗膜に、2mm幅で5×5の25マス様にカッターナイフで切り込みを入れた。次いで、切り込みを入れた硬化塗膜上にセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付けて、爪で10回擦りつけた。その後、剥離速度1cm/sでテープを剥がし、テープで剥がれることなくアクリル板上に残った塗膜のマスを数えて評価した。
【0058】
2-3.鉛筆硬度
前記した2-1.で得られた硬化塗膜(インク組成物から得られた塗膜の膜厚:2μm)を用いて、JIS K5600-5-4に準じて鉛筆引っかき試験を行い、評価した。
【0059】
以上の評価結果を表1及び表2に示す。
【0060】
【0061】
本発明の活性エネルギー線硬化性インク組成物は、LEDを光源とした光照射によっても硬化性及び基材との密着性に優れ、得られる塗膜(硬化物)の硬度に優れるので、印刷物をはじめ、看板、サインボード、ディスプレイ展示、カード印刷、スマホカバー等のグラフィックス分野や、自動車内装品、家電用途、メンブレンスイッチ等の様々な用途に有用である。