(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184314
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】撮像素子、及び、撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/378 20110101AFI20221206BHJP
【FI】
H04N5/378
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092087
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】船水 航
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX03
5C024GX03
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY39
5C024GY41
5C024HX23
5C024HX29
5C024HX32
5C024HX35
5C024HX57
(57)【要約】
【課題】チップ面積の増大を抑制可能な撮像素子を提供する。
【解決手段】撮像素子は、光電変換により電荷を生成する第1光電変換部と、光電変換により電荷を生成する第2光電変換部と、前記第1光電変換部で生成された電荷に基づく第1信号が出力される第1信号線と、前記第2光電変換部で生成された電荷に基づく第2信号が出力される第2信号線と、前記第1信号線に出力された信号と基準信号とを比較する第1比較部と、前記第2信号線に出力された信号と基準信号とを比較する第2比較部と、前記第1信号を前記第1信号線へ出力させ、前記第2信号を前記第2信号線へ出力させる第1制御と、前記第1信号を前記第1信号線及び前記第2信号線へ出力させる第2制御とを行う制御部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換により電荷を生成する第1光電変換部と、
光電変換により電荷を生成する第2光電変換部と、
前記第1光電変換部で生成された電荷に基づく第1信号が出力される第1信号線と、
前記第2光電変換部で生成された電荷に基づく第2信号が出力される第2信号線と、
前記第1信号線に出力された信号と基準信号とを比較する第1比較部と、
前記第2信号線に出力された信号と基準信号とを比較する第2比較部と、
前記第1信号を前記第1信号線へ出力させ、前記第2信号を前記第2信号線へ出力させる第1制御と、前記第1信号を前記第1信号線及び前記第2信号線へ出力させる第2制御とを行う制御部と、
を備える撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像素子において、
前記第1信号線と前記第2信号線とを接続又は切断する第1接続部を有する撮像素子。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像素子において、
前記制御部は、前記第2制御において、前記第1接続部により前記第1信号線と前記第2信号線とを接続させ、前記第1信号を前記第1信号線及び前記第2信号線へ出力させる撮像素子。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像素子において、
前記制御部は、前記第1制御において、前記第1接続部により前記第1信号線と前記第2信号線とを切断させ、前記第1信号を前記第1信号線へ出力させ、前記第2信号を前記第2信号線へ出力させる撮像素子。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像素子において、
電荷を蓄積する第1蓄積部と、
電荷を蓄積する第2蓄積部と、
前記第1光電変換部で生成された電荷を前記第1蓄積部に転送する第1転送部と、
前記第2光電変換部で生成された電荷を前記第2蓄積部に転送する第2転送部と、
前記第1蓄積部に蓄積された電荷に基づく信号を出力する第1出力部と、
前記第2蓄積部に蓄積された電荷に基づく信号を出力する第2出力部と、
前記第1蓄積部と前記第2蓄積部とを接続又は切断する第2接続部と、を有する撮像素子。
【請求項6】
請求項5に記載の撮像素子において、
前記制御部は、前記第2接続部を制御して前記第1光電変換部で生成された電荷を前記第1蓄積部及び前記第2蓄積部へ転送させ、前記第1出力部により前記第1信号を前記第1信号線へ出力させ、前記第2出力部により前記第1信号を前記第2信号線へ出力させる撮像素子。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記制御部は、前記第1信号を前記第1信号線へ出力させ、前記第2信号を前記第2信号線へ出力させない第3制御を行う撮像素子。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1比較部は、第1基準信号と前記第1信号とを比較し、
前記第2比較部は、第1基準信号とは異なる第2基準信号と前記第1信号とを比較する撮像素子。
【請求項9】
請求項8に記載の撮像素子において、
前記第2基準信号は、前記第1基準信号の信号レベルとは異なる信号レベルから時間経過とともに信号レベルが変化する信号である撮像素子。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の撮像素子において、
前記第1比較部から出力される信号に基づいてデジタル信号を記憶する第1記憶部と、
前記第2比較部から出力される信号に基づいてデジタル信号を記憶する第2記憶部と、を有する撮像素子。
【請求項11】
請求項10に記載の撮像素子において、
前記第1記憶部は、前記第1信号と前記第1基準信号との比較により出力される信号に基づいて第1デジタル信号を記憶し、
前記第2記憶部は、前記第1信号と前記第2基準信号との比較により出力される信号に基づいて第2デジタル信号を記憶する撮像素子。
【請求項12】
請求項11に記載の撮像素子において、
前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号とを平均する処理部を有する撮像素子。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の撮像素子と、
前記撮像素子から出力される信号に基づいて画像データを生成する生成部と、
を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子、及び、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサ回路と相関二重サンプリング回路を有する撮像装置が知られている(特許文献1)。従来から回路面積の削減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、撮像素子は、光電変換により電荷を生成する第1光電変換部と、光電変換により電荷を生成する第2光電変換部と、前記第1光電変換部で生成された電荷に基づく第1信号が出力される第1信号線と、前記第2光電変換部で生成された電荷に基づく第2信号が出力される第2信号線と、前記第1信号線に出力された信号と基準信号とを比較する第1比較部と、前記第2信号線に出力された信号と基準信号とを比較する第2比較部と、前記第1信号を前記第1信号線へ出力させ、前記第2信号を前記第2信号線へ出力させる第1制御と、前記第1信号を前記第1信号線及び前記第2信号線へ出力させる第2制御とを行う制御部と、を備える。
第2の態様によると、撮像装置は、第1の態様による撮像素子と、前記撮像素子から出力される信号に基づいて画像データを生成する生成部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る撮像素子の構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態に係る撮像素子の画素の構成例を示す図である。
【
図4】実施の形態に係る撮像素子の一部の構成例を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る撮像素子による読み出し制御の一例を説明するための図である。
【
図6】実施の形態に係る撮像素子による読み出し制御の別の例を説明するための図である。
【
図7】実施の形態に係る撮像素子による読み出し制御の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図8】変形例1に係る撮像素子の一部の構成例を説明するための図である。
【
図9】変形例2に係る撮像素子の一部の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る撮像装置の一例であるカメラ1の構成例を示す図である。カメラ1は、撮影光学系(結像光学系)2、撮像素子3、制御部4、メモリ5、表示部6、及び操作部7を備える。撮影光学系2は、フォーカスレンズ(焦点調節レンズ)を含む複数のレンズと絞り(開口絞り)を有し、撮像素子3に被写体像を結像する。なお、撮影光学系2は、カメラ1から着脱可能にしてもよい。
【0007】
撮像素子3は、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等の撮像素子である。撮像素子3は、撮影光学系2を通過した光束を受光し、撮影光学系2により形成される被写体像を撮像する。撮像素子3には、光電変換部を有する複数の画素が二次元状(行方向及び列方向)に設けられる。光電変換部は、フォトダイオード(PD)によって構成され、入射した光を電荷に変換する。撮像素子3は、受光した光を光電変換して信号を生成し、生成した信号を制御部4に出力する。
【0008】
メモリ5は、不揮発性の記憶媒体等により構成される。メモリ5には、画像データ、カメラ1の各部の制御に用いるプログラム及びデータ等が記憶される。制御部4は、メモリ5へのデータの書き込み、及びメモリ5からのデータの読み出しを行う。
【0009】
表示部6は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。表示部6は、被写体のスルー画像(ライブビュー画像)、メモリ5に記憶された画像データに基づく画像、AF枠などの焦点検出領域(AFエリア)を示す画像、シャッター速度、絞り値等の撮影に関する情報、及びメニュー画面等を表示する。表示部6は、タッチパネルを含んでもよく、入出力部としても機能し得る。表示部(入出力部)6は、ユーザによる操作に基づく信号を生成し、制御部4に出力してもよい。
【0010】
操作部7は、レリーズボタン、電源ボタン(スイッチ)、操作ボタン、各種モードを切り替えるためのスイッチ等の部材を含み、カメラ1に対する操作を受け付ける。操作部7は、ユーザによる操作を検出し、操作に基づく信号を制御部4へ出力する。なお、操作部7は、表示部6のタッチパネルを含み得る。
【0011】
制御部4は、プロセッサ及びメモリを有し、カメラ1の各部の制御を行う。制御部4は、CPU、GPU、FPGA、ASIC等のデバイス、及びROM、RAM等のメモリを有する。制御部4は、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行する。制御部4は、プログラムに基づいて情報処理を行う処理部(情報処理部)ともいえる。
【0012】
制御部4は、撮像素子3を制御する信号を撮像素子3に供給し、撮像素子3の動作を制御する。制御部4は、静止画撮影を行う場合、動画撮影を行う場合、表示部6に被写体のスルー画像を表示する場合等に、撮像素子3に被写体像を撮像させて、画素の信号を出力させる。制御部4は、撮像素子3から出力される各画素の信号に各種の画像処理を行って、各画素の信号を含む画像データを生成する。制御部4は、画像データを生成する生成部4でもあり、撮像素子3から出力される信号に基づいて静止画像データ、動画像データを生成する。制御部4は、色補間処理、階調変換処理などの画像処理を行う。
【0013】
図2は、実施の形態に係る撮像素子の構成例を示すブロック図である。撮像素子3は、複数の画素10が形成された第1基板111と、複数のアナログ/デジタル変換部(AD変換部)60が形成された第2基板112とを積層して構成される。第1基板111及び第2基板112は、それぞれ半導体基板を用いて構成される。第1基板111に設けられた回路、及び第2基板112に設けられた回路は、電極、バンプ等の接続部により電気的に接続される。
【0014】
第1基板111は、複数の画素10がそれぞれ配置される複数の領域20を有する。
図2に示す例では、6つの領域20を図示している。これら6つの領域20は、それぞれ、第1基板111の画素10が配置される領域を、所定数の画素を含む領域に分けたときの1つの領域を示している。なお、各領域20は、部分的に重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。各領域20の画素の数は、2画素×2画素の4画素であってもよいし、4画素×4画素の16画素であってもよく、任意の数としてよい。以下では、領域20を画素ブロック20と称する。
【0015】
画素10は、後述する光電変換信号及びダーク信号を、第2基板112へ出力する。信号線30は、画素10とAD変換部60とを結ぶ信号線であり、画素10から信号が出力される。信号線30は、電極、バンプ等の接続部を用いた信号線である。複数の信号線30の各々に対して、電流源35とAD変換部60とが設けられる。
【0016】
第2基板112は、電流源35と、AD変換部60と、読み出し制御部80と、信号処理部100とを有する。撮像素子3では、画素ブロック20毎に、信号線30と電流源35とAD変換部60とが設けられる。電流源35は、信号線30を介して、画素ブロック20の各画素10に接続される。電流源35は、画素10から信号を読み出すための電流を生成し、生成した電流を信号線30と画素ブロック20の各画素10とに供給する。
【0017】
読み出し制御部80は、タイミングジェネレータ、論理回路(AND回路、OR回路等)、ラッチ回路、バッファ等の複数の回路により構成される。読み出し制御部80は、カメラ1の制御部4によって制御され、後述する信号TX、信号RST、信号SELなどの信号を各画素に供給して、各画素の動作を制御する。読み出し制御部80は、画素の各トランジスタのゲートに信号を供給して、トランジスタをオン状態(接続状態、導通状態、短絡状態)又はオフ状態(切断状態、非導通状態、開放状態、遮断状態)とする。なお、読み出し制御部80は、第1基板111と第2基板112に分けて配置してもよいし、第1基板111と第2基板112とは異なる基板に配置してもよい。
【0018】
AD変換部60は、後述する比較部と記憶部を含んで構成される。AD変換部60は、画素ブロック20の各画素10から信号線30を介して入力されるアナログ信号である画素の信号(光電変換信号、ダーク信号)を、所定のビット数のデジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された画素の信号は、信号処理部100に出力される。
【0019】
信号処理部100は、論理回路、メモリ回路、高速インタフェースに対応した出力回路等の複数の回路により構成される。信号処理部100は、入力された画素の信号に対して、ダーク信号と光電変換信号との差分処理を行う相関二重サンプリング、信号量を補正する処理等の信号処理を行う。信号処理部100は、処理後の信号をカメラ1の制御部4に出力する。
【0020】
また、撮像素子3には、信号線30と、その信号線30とは別の信号線30とを電気的に接続又は切断するスイッチSW1(
図2ではスイッチSW1a~スイッチSW1e)が設けられる。スイッチSW1は、トランジスタにより構成される。スイッチSW1は、接続部1であり、隣り合う2つの信号線30間を接続する。読み出し制御部80は、スイッチSW1a~SW1eの各スイッチに信号を供給して、各スイッチをオンオフ制御する。スイッチSW1(接続部1)は、接続および切断を切り替える切替部であるともいえる。
【0021】
本実施の形態に係る撮像素子3は、画素ブロック20の画素の信号をその画素ブロック20に対して設けられたAD変換部60に読み出してAD変換する処理(第1の読み出し制御)を行い得る。また、撮像素子3は、スイッチSW1を制御して、画素の信号を複数のAD変換部60に読み出してAD変換する処理(第2の読み出し制御)も行い得る。カメラ1の制御部4は、撮像素子3を制御して、画素信号の処理方法を選択(設定)する。
【0022】
第2の読み出し制御では、画素の信号は、複数のAD変換部60に入力され、複数のAD変換部60においてデジタル信号に変換される。複数のAD変換部60の各々でデジタル信号に変換された画素の信号は、信号処理部100に出力される。信号処理部100は、複数のデジタル信号に変換された画素の信号を平均化する処理を行う。撮像素子3は、1つの画素信号を複数のAD変換部60によりAD変換した後に平均化する処理を行う相関多重サンプリング(CMS;Correlated Multi Sampling)を実現することができる。撮像素子3は、全画素10のうちの特定の画素を間引いて一部の画素から信号を読み出す場合、複数の画素の信号を加算(混合)して読み出す場合等に第2の読み出し制御を行う。信号処理部100は、入力された画素の信号に対してCMS処理等の信号処理を行い、信号処理後の各画素の信号を制御部4に出力する。
【0023】
図3は、実施の形態に係る撮像素子の画素の構成例を示す図である。画素10は、光電変換部11と、転送部12と、フローティングディフュージョン(FD)13と、リセット部14と、増幅部15と、選択部16とを有する。光電変換部11は、フォトダイオードPDであり、入射した光を電荷に変換し、光電変換された電荷を蓄積する。
【0024】
転送部12は、信号TXにより制御されるトランジスタM1から構成され、光電変換部11とFD13とを電気的に接続又は切断する。転送部12は、光電変換部11で光電変換された電荷をFD13に転送する。トランジスタM1は、転送トランジスタである。FD13は、FD13に転送された電荷を蓄積(保持)する。FD13は、蓄積部13であり、光電変換部11で生成された電荷を蓄積する。
【0025】
増幅部15は、ゲート(端子)がFD13に接続されるトランジスタM3から構成される。増幅部15は、FD13に蓄積された電荷による信号を増幅して出力する。トランジスタM3のドレイン(端子)は、電源線(電源電圧VDD)に接続される。トランジスタM3のソース(端子)は、選択部16を介して信号線30に接続される。トランジスタM3は、増幅トランジスタである。増幅部15と選択部16とは、光電変換部11により生成された電荷に基づく信号を生成し出力する出力部ともいえる。
【0026】
リセット部14は、信号RSTにより制御されるトランジスタM2から構成され、FD13により蓄積された電荷をリセットする。リセット部(排出部)14は、FD13に蓄積された電荷を排出し、FD13の電圧をリセット電圧(電圧VDDに応じた電圧)にリセットする。トランジスタM2は、リセットトランジスタである。
【0027】
選択部16は、信号SELにより制御されるトランジスタM4から構成され、増幅部15と信号線30とを電気的に接続又は切断する。選択部16のトランジスタM4は、オン状態の場合に、増幅部16からの信号を信号線30に出力する。トランジスタM4は、選択トランジスタである。
【0028】
画素10は、FD13の電圧をリセットしたときの信号(ダーク信号)と、転送部12により光電変換部11からFD13に転送された電荷に応じた信号(光電変換信号)とを、信号線30に順次出力する。光電変換信号は、光電変換部11によって光電変換された電荷に基づいて生成されるアナログ信号である。ダーク信号は、光電変換信号に対する基準レベルを示すアナログ信号となり、光電変換信号の補正に用いられる。ダーク信号は、光電変換信号に含まれるノイズの除去に用いる信号ともいえる。
【0029】
読み出し制御部80(
図2参照)は、各画素10に入力される信号TX、信号RST、信号SEL等を制御することにより、ダーク信号の読み出しと、光電変換信号の読み出しとを行う。画素10から順次出力されるダーク信号及び光電変換信号は、信号線30を介してAD変換部60に入力され、デジタル信号に変換される。
【0030】
図4は、実施の形態に係る撮像素子の一部の構成例を示す図である。撮像素子3は、画素ブロック20と、供給部40と、AD変換部60と、信号処理部100とを有する。なお、
図4では、撮像素子3に設けられた複数の画素ブロック20のうちの画素ブロック20a内の1つの画素10(画素10aと称する)と、画素ブロック20b内の1つの画素10(画素10bと称する)を図示している。
【0031】
供給部40には、不図示の信号生成部(信号生成回路)から信号線38を介して、時間経過とともに信号レベルが変化する信号であるランプ信号Vrampが入力される。供給部40は、読み出し制御部80(
図2参照)により制御され、信号Vrampに基づいて信号Vinを生成し、AD変換部60に供給する。信号Vinは、時間経過とともに信号レベルが変化する信号であり、AD変換部60の比較部50により画素の信号との比較に用いられる基準信号となる。なお、供給部40をAD変換部60に含めてもよい。
【0032】
図4に示す例では、供給部40は、第1容量41と、複数の第2容量42(第2容量42a~42d)と、複数のスイッチSW2a及びSW2b(スイッチSW2a1~SW2a4、スイッチSW2b1~SW2b4)とを有する。第1容量41、及び第2容量42a~42dは、それぞれ、例えばCの容量値を有する。供給部40aは、基準信号Vin1を生成してAD変換部60aに出力する。供給部40bは、基準信号Vin2を生成してAD変換部60bに出力する。
【0033】
第1容量41は、信号線38とAD変換部60との間に接続される。第1容量41の一方の端子(電極)には、信号線38を介して、時間経過とともに信号レベルが変化するランプ信号Vrampが入力される。第1容量41の他方の端子は、信号線48を介して、複数の第2容量42とAD変換部60とに電気的に接続される。
【0034】
第2容量42は、第1容量41に電気的に接続される容量である。第2容量42の一方の端子は、第1容量41とAD変換部60とに電気的に接続される。第2容量42の他方の端子は、スイッチSW2aを介して信号線39に接続され、スイッチSW2bを介して接地線(グランド線)に接続される。信号線39には、不図示の信号生成部から、所定の電圧(例えば電源電圧または接地電圧)となる信号Voffsetが供給される。
【0035】
スイッチSW2aは、接続部2aであり、第2容量42と信号Voffsetが入力される信号線39とを電気的に接続又は切断する。スイッチSW2bは、接続部2bであり、第2容量42と接地電圧が与えられる接地線とを電気的に接続又は切断する。スイッチSW2a及びスイッチSW2bは、トランジスタにより構成される。スイッチSW2a、SW2b(接続部2a、2b)は、接続および切断を切り替える切替部であるともいえる。読み出し制御部80は、スイッチSW2a1~SW2a4及びスイッチSW2b1~SW2b4の各スイッチに信号を供給して、各スイッチをオンオフ制御する。
【0036】
信号線48に出力される基準信号Vinの大きさは、第1容量41に接続される第2容量42の接続状態によって変化する。読み出し制御部80は、供給部40の各スイッチを制御することにより、第2容量42a~42dの接続先を設定(変更)し、基準信号Vinの電圧を調整可能である。供給部40は、読み出し制御部80により制御され、AD変換部60に供給する基準信号Vinの信号レベルを変化させる。供給部40は、基準信号Vinの信号レベルを調整する調整部ともいえる。
【0037】
AD変換部60は、比較部50及び記憶部55を有し、信号線30を介して入力される画素の信号をデジタル信号に変換する。比較部50は、コンパレータ回路を含んで構成される。比較部50の第1端子51には、画素10から信号線30を介して、画素信号(光電変換信号、ダーク信号)が入力される。比較部50の第2端子52には、供給部40から信号線48を介して、時間経過とともに信号レベルが変化する基準信号Vinが入力される。比較部50は、画素10から入力される信号と信号Vinとを比較し、比較結果である出力信号を出力端子53から出力する。
【0038】
記憶部55は、記憶されるデジタル信号のビット数に対応して、複数のラッチ回路により構成される。記憶部55には、比較部50から比較結果を示す出力信号が入力され、不図示のカウント部(カウンタ回路)からカウント結果に基づくデジタル信号が入力される。記憶部55は、比較部50の出力信号とカウント部の出力信号とに基づいて、比較部50による比較開始から比較結果が反転するまでの経過時間に応じたカウント値を示すデジタル信号を、変換後の画素の信号として記憶する。
図4に示す例では、記憶部55は、比較部50から出力される信号に基づき、画素10から出力された信号のレベルと基準信号Vinのレベルとの大小関係が変化する(反転する)までの時間に応じたカウント値のデジタル信号を記憶する。
【0039】
画素10のダーク信号が比較部50に入力されると、比較部50は、ダーク信号と基準信号Vinとを比較して、比較結果を記憶部55に出力する。記憶部55は、比較部50による比較開始時から比較結果の反転時までの経過時間に応じたカウント値を示すデジタル信号を、ダーク信号に基づくデジタル信号として記憶する。また、画素10の光電変換信号が比較部50に入力されると、比較部50は、光電変換信号と基準信号Vinとを比較して、比較結果を記憶部55に出力する。記憶部55は、比較部50による比較開始時から比較結果の反転時までの経過時間に応じたカウント値を示すデジタル信号を、光電変換信号に基づくデジタル信号として記憶する。このように、AD変換部60は、アナログ信号であるダーク信号を所定のビット数のデジタル信号に変換し、アナログ信号である光電変換信号を所定のビット数のデジタル信号に変換し得る。
【0040】
AD変換部60によりデジタル信号に変換された画素の信号は、信号処理部100に順次出力される。信号処理部100には、デジタル信号に変換された画素の信号(ダーク信号に基づくデジタル信号、光電変換信号に基づくデジタル信号)が入力される。信号処理部100は、光電変換信号とダーク信号との減算によって光電変換信号を補正する相関二重サンプリングを行う。信号処理部100は、相関二重サンプリング等の信号処理を行った後、処理後の画素の信号を制御部4に出力する。
【0041】
本実施の形態では、撮像素子3は、画素の信号を1つのAD変換部60に読み出してAD変換する第1の読み出し制御と、画素の信号を複数のAD変換部60に読み出してAD変換する第2の読み出し制御とを行い得る。以下では、
図5及び
図6を参照して、第1の読み出し制御及び第2の読み出し制御について説明する。
【0042】
図5及び
図6は、実施の形態に係る撮像素子による読み出し制御の一例を説明するための図である。
図5及び
図6では、画素ブロック20a内の画素10aと、画素ブロック20b内の画素10bと、画素ブロック20c内の画素10(画素10cと称する)と、画素ブロック20d内の画素10(画素10dと称する)とを図示している。
【0043】
読み出し制御部80は、制御部4により第1の読み出し制御が指示された場合、
図5に示すように、スイッチSW1a~SW1cをオフ状態とする。また、読み出し制御部80は、
図4に示した供給部40a~40dの各々のスイッチSW2a1~SW2a4をオフ状態とし、スイッチSW2b1~SW2b4をオン状態とする。これにより、
図5に模式的に示すように、供給部40a~40dの各々において、第2容量42a~42dが共に第1容量41と接地線との間に接続された状態となる。この場合、供給部40a~40dは、ランプ信号Vrampに基づき、同等の信号レベルの基準信号Vin1~Vin4を生成し、AD変換部60a~60dに供給可能となる。
【0044】
読み出し制御部80は、画素10a~画素10dの選択部16をそれぞれオン状態とする。画素10a~10dの各々の信号は、それぞれ信号線30a~30dを介してAD変換部60a~60dに出力される。AD変換部60a~60dは、入力される画素の信号のAD変換を行う。AD変換部60aは、画素10aの信号と基準信号Vin1とを比較し、画素10aの信号をデジタル信号に変換する。
【0045】
AD変換部60bは、画素10bの信号と基準信号Vin2とを比較し、画素10bの信号をデジタル信号に変換する。AD変換部60cは、画素10cの信号と基準信号Vin3とを比較し、画素10cの信号をデジタル信号に変換する。AD変換部60dは、画素10dの信号と基準信号Vin4とを比較し、画素10dの信号をデジタル信号に変換する。AD変換部60a~60dの各々の記憶部55には、それぞれ、画素10a~画素10dのデジタル信号に変換された信号が記憶される。
【0046】
このように、第1の読み出し制御では、撮像素子3は、画素ブロック20の画素の信号をその画素ブロック20に対して設けられたAD変換部60に読み出してAD変換する。各AD変換部60によりデジタル信号に変換された画素の信号は、信号処理部100によって相関二重サンプリング等の信号処理が施された後に、制御部4に出力される。
【0047】
読み出し制御部80は、制御部4により第2の読み出し制御が指示されて相関多重サンプリングを行う場合、
図6に示すように、スイッチSW1a~SW1cをオン状態とする。スイッチSW1a~SW1cがオン状態となることで、信号線30aと信号線30bと信号線30cと信号線30dとが電気的に接続される。これにより、或る画素の信号を、複数のAD変換部60に出力することが可能となる。
【0048】
読み出し制御部80は、基準信号Vin1~Vin4が相対的にずれて(シフトして)変化するように、供給部40a~40dの各スイッチを制御する。読み出し制御部80は、
図4に示したスイッチSW2a1~SW2a4及びスイッチSW2b1~SW2b4を制御することで、第1容量41と接地線との間に接続される第2容量42の数と、第1容量41と信号線39との間に接続される第2容量42の数とを調整する。
図6に示す例では、供給部40aにおいて、第2容量42aが、第1容量41と信号線39との間に接続された状態となる。また、供給部40aの第2容量42b~42dは、それぞれ、第1容量41と接地線との間に接続された状態となる。
【0049】
供給部40bにおいては、第2容量42a及び第2容量42bが、それぞれ、第1容量41と信号線39との間に接続された状態となる。供給部40bの第2容量42c及び第2容量42dは、それぞれ、第1容量41と接地線との間に接続された状態となる。供給部40cでは、第2容量42a~42cが第1容量41と信号線39との間に接続され、第2容量42dが第1容量41と接地線との間に接続された状態となる。また、供給部40dでは、第2容量42a~42dが、共に第1容量41と信号線39との間に接続された状態となる。供給部40a~40dは、ランプ信号Vramp及び信号Voffsetに基づき、互いに異なる信号レベルから時間経過とともに信号レベルが変化する基準信号Vin1~Vin4を生成する。供給部40a~40dは、時間的にずれた基準信号Vin1~Vin4をAD変換部60a~60dに供給可能となる。
【0050】
読み出し制御部80は、画素ブロック20a~画素ブロック20dのうち、例えば画素ブロック20aの画素10aの選択部16をオン状態とする。画素10aの信号は、画素10aに接続された信号線30aを介して、AD変換部60aに出力される。また、画素10aの信号は、スイッチSW1a~SW1c及び信号線30b~30dにより、AD変換部60b~60dにもそれぞれ出力される。
【0051】
AD変換部60a~60dは、入力される画素10aの信号を、互いに異なる基準信号Vin1~Vin4と比較してデジタル信号に変換する。AD変換部60毎に異なるタイミングで、画素10aの信号をデジタル信号に変換することが可能となる。AD変換部60a~AD変換部60dの各々の記憶部55には、それぞれ、デジタル信号に変換された画素10aの信号が記憶される。AD変換部60aの記憶部55には、画素10aの信号と基準信号Vin1との比較を行ってデジタル信号に変換された画素10aの信号が記憶される。
【0052】
AD変換部60bの記憶部55には、画素10aの信号と基準信号Vin2との比較を行ってデジタル信号に変換された画素10aの信号が記憶される。AD変換部60cの記憶部55には、画素10aの信号と基準信号Vin3との比較を行ってデジタル信号に変換された画素10aの信号が記憶される。また、AD変換部60dの記憶部55には、画素10aの信号と基準信号Vin4との比較を行ってデジタル信号に変換された画素10aの信号が記憶される。AD変換部60a~60dの各々においてデジタル信号に変換された画素10aの信号は、信号処理部100に出力される。信号処理部100は、入力された複数の画素10aの信号を平均化する処理を行う相関多重サンプリングを行う。
【0053】
このように、第2の読み出し制御では、撮像素子3は、画素ブロック20の画素の信号を複数のAD変換部60に読み出してAD変換する。複数のAD変換部60によりデジタル信号に変換された画素の信号は、信号処理部100によって平均化処理等の信号処理が施された後に、制御部4に出力される。画素の信号が複数のAD変換部60において異なるタイミングでデジタル信号に変換された後に算術平均されるため、画素の信号に混入するノイズを低減することが可能となる。
【0054】
撮像素子の画素から出力される信号は、画素において生じるノイズ、他の回路で生じるノイズ等の影響を受けることが考えられる。例えば、画素の増幅トランジスタで生じるノイズに起因して、アナログ信号である画素からの信号の信号レベルが時間的に変動する場合がある。この画素信号の電圧変動のため、AD変換部においてAD変換が行われるタイミングによって、AD変換後の画素信号に含まれるノイズ量が変わることが考えられる。
【0055】
本実施の形態に係る撮像素子3は、上述したように、画素の信号を複数のAD変換部60に読み出し、複数のAD変換部60において異なるタイミングでAD変換する第2の読み出し制御を行い得る。撮像素子3は、同じ画素の信号を複数のAD変換部60においてデジタル信号に変換し、複数のデジタル信号に変換された画素の信号を平均化する相関多重サンプリングを行う。このため、画素信号に混入する電圧変動に起因するノイズ成分を低減することができる。画素の信号の品質が低下することを抑制することが可能となる。
【0056】
本実施の形態では、スイッチSW1を制御することにより、画素ブロック20の画素の信号を、その画素ブロック20に対して設けられたAD変換部60と、他の画素ブロック20に対して設けられたAD変換部60とに出力させることが可能となる。このため、撮像素子3の一部の画素から信号を読み出す場合、複数の画素の信号を加算して読み出す場合等に、撮像素子3の各AD変換部60を有効に活用して相関多重サンプリングを行うことができる。相関多重サンプリング用に画素ブロック毎に多数のAD変換部を設ける必要はなく、撮像素子の面積の増大、製造コストの増大を防ぐことができる。
【0057】
図7は、実施の形態に係る撮像素子による第2の読み出し制御の一例を説明するためのタイミングチャートである。以下では、
図5及び
図6に示す画素10aの信号を読み出す場合を例にして、撮像素子3の動作例について説明する。
図7において、ハイレベル(例えば電源電圧)の制御信号(信号SEL、信号RST、信号TX)が入力される画素10aのトランジスタはオン状態となり、ローレベル(例えば接地電圧)の制御信号が入力される画素10aのトランジスタはオフ状態となる。なお、
図7に示す時刻t1以前において、スイッチSW1a~SW1cはオン状態とされ、信号線30a~30dが互いに電気的に接続される。
【0058】
図7に示す時刻t1において、信号RSTがハイレベルになる。信号RSTがハイレベルになることで、画素10aにおいて、リセット部14のトランジスタM2がオン状態になる。リセット部14がオン状態となることで、FD13の電荷がリセットされ、FD13の電圧がリセットされる。
【0059】
また、時刻t1では、信号SELがハイレベルになる。信号SELがハイレベルになることで、画素10aの選択部16のトランジスタM4がオン状態になる。これにより、画素10aのリセット電圧に基づく信号、即ち画素10aのFD13の電荷をリセットした後の信号が、増幅部15及び選択部16により出力される。リセット電圧に基づく信号は、ダーク信号(リセット信号)として、スイッチSW1a~SW1c及び信号線30a~30dによって、AD変換部60a~60dへそれぞれ出力される。
【0060】
時刻t2では、読み出し制御部80は、供給部40a~40dのスイッチSW2a1~SW2a4及びスイッチSW2b1~SW2b4(
図4参照)に制御信号を出力して、
図6に示すように第2容量42a~42dの接続先を設定する。これにより、
図7に示すように、基準信号Vin1~Vin4の電位(レベル)が変化する。この場合、基準信号Vinの電位の変化量は、第1容量41及び信号線39間に接続される第2容量42の数によって変わることになる。こうして、供給部40a~40dは、互いに異なる初期電位となる基準信号Vin1~Vin4を出力する。
【0061】
時刻t3から時刻t4までの期間において、信号Vrampの電位の変化に伴って、基準信号Vin1~Vin4の電位が時間の経過と共に減少する。基準信号Vin1~Vin4は、互いに異なる信号レベルから時間経過とともに信号レベルが変化する。AD変換部60a~60dの比較部50は、ダーク信号の電位と基準信号Vin1~Vin4の電位との比較を行う。比較部50は、ダーク信号及び基準信号Vinの各々の電位の大小関係が変化するときに、出力信号の信号レベルを反転させる。記憶部55は、比較部50の出力信号の信号レベルが反転したときのカウント値を示すデジタル信号を記憶する。このように、画素10aのダーク信号は、AD変換部60a~60dに入力されデジタル信号に変換される。
【0062】
時刻t5において、信号TXがハイレベルになる。信号TXがハイレベルになることで、画素10aにおいて、転送部12のトランジスタM1がオン状態になる。転送部12がオン状態となることで、光電変換部11で光電変換された電荷がFD13に転送される。また、時刻t5では、信号SELがハイレベルである。このため、画素10aの光電変換部11で生成された電荷に基づく信号(光電変換信号)が、増幅部15及び選択部16により出力される。画素10aの光電変換信号は、スイッチSW1a~SW1c及び信号線30a~30dにより、AD変換部60a~60dへそれぞれ出力される。
【0063】
時刻t6から時刻t7までの期間において、信号Vrampの電位の変化に応じて、基準信号Vin1~Vin4の電位が時間の経過と共に減少する。基準信号Vin1~Vin4は、互いに異なる初期電位から時間経過とともに電位が変化する。AD変換部60a~60dの比較部50は、光電変換信号の電位と基準信号Vin1~Vin4の電位との比較を行う。比較部50は、光電変換信号及び基準信号Vinの各々の電位の大小関係が変化するときに、出力信号の信号レベルを反転させる。記憶部55は、比較部50の出力信号の信号レベルが反転したときのカウント値を示すデジタル信号を記憶する。
【0064】
このように、基準信号Vin1~Vin4の初期電位が異なるため、各比較部50の出力信号の信号レベルが反転するタイミングが異なり、異なるタイミングでデジタル信号への変換が行われる。AD変換時の時間相関がAD変換部60毎に異なるともいえる。各AD変換部60でデジタル信号に変換されたダーク信号と光電変換信号は、信号処理部100に出力されて減算処理、平均化処理等の信号処理が施される。このため、画素の信号に含まれるノイズを低減して、画素の信号の品質低下を抑制することができる。
【0065】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)撮像素子3は、光電変換により電荷を生成する第1光電変換部と、光電変換により電荷を生成する第2光電変換部と、第1光電変換部で生成された電荷に基づく第1信号が出力される第1信号線(信号線30)と、第2光電変換部で生成された電荷に基づく第2信号が出力される第2信号線と、第1信号線に出力された信号と基準信号とを比較する第1比較部(比較部50)と、第2信号線に出力された信号と基準信号とを比較する第2比較部と、第1信号を第1信号線へ出力させ、第2信号を第2信号線へ出力させる第1制御と、第1信号を第1信号線及び第2信号線へ出力させる第2制御とを行う制御部(読み出し制御部80)と、を備える。本実施の形態では、読み出し制御部80は、スイッチSW1を制御することにより、画素の信号を複数のAD変換部60に出力してAD変換した後に平均化する処理を行うことが可能となる。このため、相関多重サンプリングのために画素ブロック毎に多数のAD変換部を設ける場合と比較して、撮像素子3のチップ面積の増大を抑制することができる。
【0066】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0067】
(変形例1)
AD変換部60に基準信号Vinとして出力する信号を、複数の信号から選択可能としてもよい。
図8(a)に示すように、複数のスイッチSW3(スイッチSW3a~スイッチSW3d)を有する選択部70を設けるようにしてもよい。スイッチSW3a~スイッチSW3dは、トランジスタにより構成される。選択部70は、読み出し制御部80により制御され、基準信号Vinとして出力する信号を、ランプ信号Vramp1~Vramp4から選択する。なお、
図8(a)において第1容量41は配置しなくてもよい。信号Vramp1~Vramp4を、
図8(b)に示す例のように、相対的にずれて変化する信号としてもよい。基準信号Vin1~Vin4は、位相が異なる信号ともいえる。読み出し制御部80は、選択部70の各スイッチをオンオフ制御することにより、AD変換部60に供給する基準信号Vinを変更可能となる。
【0068】
(変形例2)
図9は、変形例2に係る撮像素子の一部の構成例を説明するための図である。撮像素子3には、画素10のFD13と、他の画素10のFD13とを電気的に接続又は切断するスイッチSW4(
図9ではスイッチSW4a~スイッチSW4c)が設けられる。スイッチSW4は、トランジスタにより構成される。スイッチSW4は、接続部4であり、複数の画素10の各々のFD13を互いに接続する。
【0069】
読み出し制御部80は、スイッチSW4a~スイッチSW4cの各スイッチに信号を供給して、各スイッチをオンオフ制御する。
図9に示すようにスイッチSW4a~スイッチSW4cがオン状態となることで、或る画素10で蓄積された電荷を他の画素10にも転送することができる。例えば、画素10aの光電変換部11で生成された電荷を、画素10aのFD13と、画素10b~画素10dの各FD13とに転送することができる。このため、画素10aの光電変換部11で生成された電荷に基づく信号を、画素10a~画素10cの各々の増幅部15及び選択部16により、信号線30a~30dに出力させることができる。本変形例に係る撮像素子3は、第2の読み出し制御の場合に、スイッチSW4を制御することにより、画素の信号を複数のAD変換部60に出力してAD変換を行うことが可能となる。
【0070】
(変形例3)
上述した実施の形態では、
図6を参照して信号読み出しの一例について説明した。読み出し制御部80は、画素ブロック20a~画素ブロック20dのうち、例えば画素ブロック20aの画素10aの信号を信号線30に出力させ、画素10b~画素10dの信号を信号線30に出力させない制御を行うようにしてもよい。
図6の回路図では、読み出し制御部80は、画素ブロック20aの画素10の選択部16をオン状態とし、画素ブロック20b~画素ブロック20dの画素10の選択部16をオフ状態にして、信号読み出しを行い得る。
【0071】
(変形例4)
上述した実施の形態では、画素ブロック20毎に信号線30及びAD変換部60等を設ける例について説明した。しかし、画素10毎に信号線30及びAD変換部60等を設けるようにしてもよい。
【0072】
(変形例5)
上述した実施の形態では、撮像素子3が第1基板111と第2基板112とを積層して構成される例について説明した。しかし、第1基板111と第2基板112とは積層されていなくてもよい。なお、撮像素子3は、3つ以上の基板によって構成してもよいし、1つの基板によって構成してもよい。
【0073】
(変形例6)
上述した実施の形態および変形例では、光電変換部としてフォトダイオードを用いる例について説明した。しかし、光電変換部として光電変換膜(有機光電膜)を用いるようにしてもよい。
【0074】
(変形例7)
上述の実施の形態及び変形例で説明した撮像素子及び撮像装置は、カメラ、スマートフォン、タブレット、PCに内蔵のカメラ、車載カメラ、無人航空機(ドローン、ラジコン機等)に搭載されるカメラ等に適用されてもよい。
【0075】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1…撮像装置、3…撮像素子、10…画素、11…光電変換部、20…画素ブロック、40…供給部、50…比較部、55…記憶部、60…AD変換部、80…読み出し制御部、100…信号処理部