(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184431
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】二酸化炭素からメタノールを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/149 20060101AFI20221206BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20221206BHJP
C07C 29/80 20060101ALI20221206BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20221206BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
C07C29/149
C07C31/04
C07C29/80
B01D53/14 210
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092276
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】星野 奈々子
(72)【発明者】
【氏名】原 靖
(72)【発明者】
【氏名】吉原 朝光
【テーマコード(参考)】
4D020
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BB10
4D020CC09
4D020CD03
4H006AA02
4H006AC42
4H006AD11
4H006BA16
4H006BA25
4H006BD33
4H006BD34
4H006BD51
4H006BD70
4H006BE20
4H006FE11
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】二酸化炭素を含む混合気体からアミンを使用して二酸化炭素を吸収させ、メタノールに転換させる方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素からメタノールを製造する製造方法であって、下記の(1)~(8)の工程を含む。(1)アミンを含む二酸化炭素吸収液に二酸化炭素を吸収させる、(2)二酸化炭素吸収液とオレフィン化合物を混合し、加熱してカルバミン酸エステルを製造する、(3)未反応オレフィン化合物を蒸留分離し、リサイクルする、(4)カルバミン酸エステルを、水素、及び金属触媒存在下で反応させ、オレフィン化合物の水和物とメタノールとアミンを製造する、(5)反応液を蒸留し、メタノールと残液を製造する、(6)残液を更に蒸留分離し、アミンをリサイクルする、(7)オレフィン化合物の水和物を加熱し、オレフィン化合物と水を製造する、(8)オレフィン化合物と水を分離し、分離したオレフィン化合物をリサイクルする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素からメタノールを製造する製造方法であって、少なくとも下記の(1)~(8)、
(1) 少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含む二酸化炭素吸収液に二酸化炭素を吸収させる工程、
(2) 前記の(1)の工程で得られた二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液とオレフィン化合物を混合し、酸触媒(A)存在下、加熱してカルバミン酸エステルを含む混合液を製造する工程、
(3) 前記の(2)の工程で得られたカルバミン酸エステルを含む混合液から前記工程で反応しなかったオレフィン化合物を蒸留分離し、当該オレフィン化合物を前記の(2)の工程にリサイクルする工程、
(4) 前記の(3)の工程でオレフィン化合物が除去されたカルバミン酸エステルを含む混合液を、水素、及び金属触媒存在下、加熱して反応させ、前記のオレフィン化合物の水和物(前記のオレフィン化合物が水和反応して生成するアルコール化合物を表す)とメタノールと少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含む反応液を製造する工程、
(5) 前記の(4)の工程で得られた反応液を蒸留し、メタノールと残液を製造する工程、
(6) 前記の(5)の工程で得られた残液を更に蒸留し、前記のオレフィン化合物の水和物と前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを製造し、当該少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを前記の(1)の工程にリサイクルする工程、
(7) 酸触媒(B)存在下、前記の(6)の工程で得られたオレフィン化合物の水和物を加熱し、オレフィン化合物と水を製造する工程、
(8) 前記の(7)の工程で得られたオレフィン化合物と水を分離し、分離したオレフィン化合物を前記の(2)の工程にリサイクルする工程、
の工程を含む、メタノールの製造方法。
【請求項2】
前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンが、少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアルカノールアミンであることを特徴とする、請求項1に記載のメタノールの製造方法。
【請求項3】
前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンが、ジエタノールアミンであることを特徴とする、請求項1に記載のメタノールの製造方法。
【請求項4】
前記の二酸化炭素吸収液が、更に3級アミン化合物、エーテル化合物、及びアルコール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物(ただし、前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを除く)を含むことを特徴とする二酸化炭素吸収液であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【請求項5】
前記の酸触媒(A)及び酸触媒(B)が、各々独立して、金属ハロゲン化物、鉱酸、有機酸、又は固体酸である、請求項1~4のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【請求項6】
前記の酸触媒(A)及び酸触媒(B)が、各々独立して、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、フッ化ホウ素、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフロロ酢酸、イオン交換樹脂、ゼオライト、及びシリカ-アルミナからなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1~4のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【請求項7】
前記のオレフィン化合物がシクロヘキセン化合物であり、前記のオレフィン化合物の水和物がシクロヘキセン化合物の水和物である、請求項1~6のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【請求項8】
前記のシクロヘキセン化合物が、シクロヘキセン、1-メチルシクロヘキセン、3-メチルシクロヘキセン、4-メチルシクロヘキセン、1,2-ジメチルシクロヘキセン、1,3-ジメチルシクロヘキセン、1,4-ジメチルシクロヘキセン、1,6-ジメチルシクロヘキセン、2,4-ジメチルシクロヘキセン、3,3-ジメチルシクロヘキセン、3,4-ジメチルシクロヘキセン、3,5-ジメチルシクロヘキセン、3,6-ジメチルシクロヘキセン、4,4-ジメチルシクロヘキセン、4,5-ジメチルシクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、及び1,4-シクロヘキサジエンから成る群より選ばれる少なくとも一種である請求項7に記載のメタノールの製造方法。
【請求項9】
前記のオレフィン化合物がシクロヘキセンであり、前記のオレフィン化合物の水和物がシクロヘキサノールである、請求項1~6のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【請求項10】
前記の金属触媒が、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銅、又は白金を含む金属触媒、又は錯体触媒である請求項1~9のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【請求項11】
少なくとも二酸化炭素と水を含む混合ガスから、脱水剤を用いて水を除去して二酸化炭素を製造し、当該二酸化炭素を前記の工程(1)に使用することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【請求項12】
少なくとも二酸化炭素と水を含むガス中の水の除去に使用した脱水剤について、前記の(1)又は(4)の工程で発生する熱を利用して、脱水再生することを特徴とする、請求項11に記載のメタノールの製造方法。
【請求項13】
前記の(2)の工程の加熱について、前記の(1)又は(4)の工程で発生する熱を利用して行うことを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【請求項14】
前記の(7)の工程の加熱について、前記の(1)又は(4)の工程で発生する熱を利用して行うことを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素からメタノールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策のため、二酸化炭素の分離・回収・有効利用が注目されており、多くの技術開発がなされている。特に、石炭火力発電は大量の二酸化炭素を発生しており、石炭からバイオマスへの燃料転換や、二酸化炭素の回収、有効利用技術などは、地球温暖化対策の重要な課題となっている。
【0003】
二酸化炭素の分離回収法としては、アミン水溶液を利用した化学吸収法が最も一般的である。化学吸収法は、二酸化炭素と選択的に反応するアミンの水溶液、特に、エタノールアミン系の水溶液を吸収剤として使用し、温度差で二酸化炭素を吸脱着する。すなわち、低温で二酸化炭素を吸収剤に吸収させ、高温で二酸化炭素を放散するというサイクルで二酸化炭素を分離回収する。化学吸収法は純度の高い二酸化炭素を効率よく製造できるという特徴を有するため、広く実用化されており、低二酸化炭素濃度で、常圧である石炭火力発電の燃焼排ガス処理に適しているが、アミンと反応した二酸化炭素を分離するために多大なエネルギーを要するという欠点がある。
【0004】
一方、二酸化炭素の有効利用としては、二酸化炭素を水素などで還元し、ギ酸、メタノール、又はメタン等に転換する方法が提案されている。これらの反応に関しては多くの研究がなされているが、反応に高温高圧が必要であるという問題がある。一般にメタノールは、二酸化炭素、一酸化炭素、及び水素から、亜鉛系触媒存在下、250~300℃という高温、50~100気圧という高圧の条件で製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
近年、特殊な均一系触媒を使用することで、比較的温和な条件で二酸化炭素からメタノールを製造する方法が提案されている。Sayan Karらは二酸化炭素をポリエチレンポリアミン水溶液に吸収させ、均一系Ru触媒を使用して水素還元することにより、70気圧、145℃というより温和な条件でメタノールが生成することを報告している(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
Ekambaram Balaramanらは二酸化炭素誘導体の尿素から均一系Ru触媒を使用して水素還元することにより、110℃、10気圧という条件でメタノールが生成することを報告しており(例えば、非特許文献2参照)、また、二酸化炭素とメタノールから脱水反応で得られたギ酸エステル、炭酸エステル、カルバミン酸エステルから均一系Ru触媒を使用して水素還元することにより、110℃、10気圧という条件でメタノールが生成することを報告している(例えば、非特許文献3参照)。
【0007】
しかし、エステルを水素還元してメタノールを製造する方法に関しては、提案されている二酸化炭素又はその誘導体とアルコールとの反応が進行しにくいことが知られており、工業化するには問題がある。また、当該非特許文献3では、安価な不均一系触媒(活性炭担持パラジウム触媒)を使用した場合は、カルバミン酸エステルからメタノールを製造できていない。
【0008】
また、これらは比較的低エネルギーの還元反応でメタノールが生成する反応ではあるが、特殊な均一系触媒を使用していることから、工業的に大量にメタノールを製造するには適さない。また、いずれの方法も、二酸化炭素を分離精製した後、この二酸化炭素を誘導するため、多大な二酸化炭素分離精製エネルギー、コストを要し、工業的に二酸化炭素の有効利用を図るには問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. 2018,140,1580-1583
【非特許文献2】Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 11702-11705
【非特許文献3】Nat. Chem. 2011, 3, 609-614
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、二酸化炭素を含む混合気体からアミンを使用して二酸化炭素を選択的に吸収させ、アミンに吸収した二酸化炭素を脱離精製することなく、メタノールに転換させる方法を提供することであって、不均一触媒を用いたとしても温和な条件で効率的にメタノールを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、アミンによる二酸化炭素の吸収及び吸収した二酸化炭素の有用化合物への転換について鋭意検討した結果、二酸化炭素を吸収した少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンとオレフィン化合物から得られたカルバミン酸エステルを水素化してメタノールを製造する方法を見出した。さらに、前記方法で副生するオレフィン化合物の水和物(前記のカルバミン酸エステルが水素化されたときに同時に生成するアルコール化合物)を脱水してオレフィン化合物を再生し、これを再使用することにより、上記課題を解決できるという新規な事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのメタノールの製造方法である。
【0014】
[1] 二酸化炭素からメタノールを製造する製造方法であって、少なくとも下記の(1)~(8)、
(1) 少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含む二酸化炭素吸収液に二酸化炭素を吸収させる工程、
(2) 前記の(1)の工程で得られた二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液とオレフィン化合物を混合し、酸触媒(A)存在下、加熱してカルバミン酸エステルを含む混合液を製造する工程、
(3) 前記の(2)の工程で得られたカルバミン酸エステルを含む混合液から前記工程で反応しなかったオレフィン化合物を蒸留分離し、当該オレフィン化合物を前記の(2)の工程にリサイクルする工程、
(4) 前記の(3)の工程でオレフィン化合物が除去されたカルバミン酸エステルを含む混合液を、水素、及び金属触媒存在下、加熱して反応させ、前記のオレフィン化合物の水和物(前記のオレフィン化合物が水和反応して生成するアルコール化合物を表す)とメタノールと少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含む反応液を製造する工程、
(5) 前記の(4)の工程で得られた反応液を蒸留し、メタノールと残液を製造する工程、
(6) 前記の(5)の工程で得られた残液を更に蒸留し、前記のオレフィン化合物の水和物と前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを製造し、当該少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを前記の(1)の工程にリサイクルする工程、
(7) 酸触媒(B)存在下、前記の(6)の工程で得られたオレフィン化合物の水和物を加熱し、オレフィン化合物と水を製造する工程、
(8) 前記の(7)の工程で得られたオレフィン化合物と水を分離し、分離したオレフィン化合物を前記の(2)の工程にリサイクルする工程、
の工程を含む、メタノールの製造方法。
【0015】
[2] 前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンが、少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアルカノールアミンであることを特徴とする、前記の[1]に記載のメタノールの製造方法。
【0016】
[3] 前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンが、ジエタノールアミンであることを特徴とする、前記の[1]に記載のメタノールの製造方法。
【0017】
[4] 前記の二酸化炭素吸収液が、3級アミン化合物、エーテル化合物、及びアルコール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物(ただし、前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを除く)を含むことを特徴とする二酸化炭素吸収液であることを特徴とする、前記の[1]~[3]のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【0018】
[5] 前記の酸触媒(A)及び酸触媒(B)が、各々独立して、金属ハロゲン化物、鉱酸、有機酸、又は固体酸である、前記の[1]~[4]のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【0019】
[6] 前記の酸触媒(A)及び酸触媒(B)が、各々独立して、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、フッ化ホウ素、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフロロ酢酸、イオン交換樹脂、ゼオライト、及びシリカ-アルミナからなる群より選ばれる少なくとも一つである、前記の[1]~[4]のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【0020】
[7] 前記のオレフィン化合物がシクロヘキセン化合物であり、前記のオレフィン化合物の水和物がシクロヘキセン化合物の水和物である、前記の[1]~[6]のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【0021】
[8] 前記のシクロヘキセン化合物が、シクロヘキセン、1-メチルシクロヘキセン、3-メチルシクロヘキセン、4-メチルシクロヘキセン、1,2-ジメチルシクロヘキセン、1,3-ジメチルシクロヘキセン、1,4-ジメチルシクロヘキセン、1,6-ジメチルシクロヘキセン、2,4-ジメチルシクロヘキセン、3,3-ジメチルシクロヘキセン、3,4-ジメチルシクロヘキセン、3,5-ジメチルシクロヘキセン、3,6-ジメチルシクロヘキセン、4,4-ジメチルシクロヘキセン、4,5-ジメチルシクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、及び1,4-シクロヘキサジエンから成る群より選ばれる少なくとも一種である前記の[7]に記載のメタノールの製造方法。
【0022】
[9] 前記のオレフィン化合物がシクロヘキセンであり、前記のオレフィン化合物の水和物がシクロヘキサノールである、前記の[1]~[6]のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【0023】
[10] 前記の金属触媒が、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銅、又は白金を含む金属触媒、又は錯体触媒である前記の[1]~[9]のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【0024】
[11] 少なくとも二酸化炭素と水を含む混合ガスから、脱水剤を用いて水を除去して二酸化炭素を製造し、当該二酸化炭素を前記の工程(1)に使用することを特徴とする前記の[1]~[10]のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【0025】
[12] 少なくとも二酸化炭素と水を含むガス中の水の除去に使用した脱水剤について、前記の(1)又は(4)の工程で発生する熱を利用して、脱水再生することを特徴とする、[11]に記載のメタノールの製造方法。
【0026】
[13] 前記の(2)の工程の加熱について、前記の(1)又は(4)の工程で発生する熱を利用して行うことを特徴とする、前記の[1]~[12]のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【0027】
[14] 前記の(7)の工程の加熱について、前記の(1)又は(4)の工程で発生する熱を利用して行うことを特徴とする、前記の[1]~[13]のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明のメタノールの製造方法は、二酸化炭素の分離回収・精製エネルギーを削減できるため、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0030】
本発明は、上記の(1)~(8)の工程を含むことを特徴とする、二酸化炭素からメタノールを製造する方法に係る。
【0031】
本発明の製造方法において、原料となる二酸化炭素は、純物質としての二酸化炭素を用いることもできるし、他のガスとの混合物(すなわち、二酸化炭素を含む混合物、又は二酸化炭素を含む混合ガス)として使用しても良いし、他のガスとの混合物から分離した後、使用しても良い。しかしながら、当該二酸化炭素については、他のガスとの混合物から分離した後、使用した場合、分離コスト及びエネルギーがかかるため、他のガスとの混合物として使用する方が好ましい。
【0032】
他のガスとの混合物としての二酸化炭素については、特に限定するものではないが、例えば、石炭火力発電、セメント、高炉などのプラントから排出される燃焼排ガスを挙げることができる。当該燃焼排ガスについては、二酸化炭素を含んでいるが、当該二酸化炭素の他に、窒素、酸素、水蒸気、窒素酸化物、硫黄酸化物、一酸化炭素、微量の金属含有蒸気などが含まれる。なお、このような燃焼排ガスの構成成分や成分濃度についてはプラントの種類や設備によって変動することが当業者常識である。これらの二酸化炭素を含む混合ガスを前処理せずに、本発明の製造方法に使用しても良いが、本発明の二酸化炭素吸収液にダメージを与える可能性のある水蒸気、硫黄酸化物、又は金属含有蒸気等については前処理で可能な限り除去しておくことが好ましい。これらの成分の除去については、乾燥機、脱硝装置、集じん装置、又は脱硫装置等を用いる一般に使用されている方法を適用することが可能である。
【0033】
前記の二酸化炭素について、他のガスとの混合物として用いる場合、二酸化炭素の濃度としては、3~99体積%であることが好ましく、5~50体積%であることがより好ましく、10~30体積%であることがより好ましい。
【0034】
当該二酸化炭素について、石炭火力発電、セメント、高炉などのプラントから排出される少なくとも二酸化炭素と水を含む混合ガスを用いる場合は、メタノールの製造効率を向上させる観点で、脱水剤を用いて水を除去した二酸化炭素を製造し、当該二酸化炭素を上記の(1)の工程に使用することが好ましい。
【0035】
前記の脱水剤については、特に限定するものではないが、例えば、シリカゲル、アルミナ、粘土、ゼオライトなど一般的なものが利用できるが、加温によって再生(脱水)が容易なシリカゲル、脱水能力の優れたゼオライトを使用することが工業的に好ましい。
【0036】
上記のように二酸化炭素を脱水する場合、脱水剤は、2基以上の塔槽類に充填することが好ましい。2基以上とするのは、二酸化炭素と水を含むガスの脱水と脱水剤の脱水乾燥(再生)を交互連続的に実施することができるためであり、工業的に一般に採用されている方法である。脱水剤の形状に特に制限は無いが、ガスの差圧が小さく、脱水効率が高くなるよう、粒状、球状、ペレット状、タブレット状などに成形したものが好ましい。
【0037】
前記の脱水剤で処理された二酸化炭素については、その含水量が、1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。
【0038】
また、二酸化炭素の脱水乾燥に用いられた前記の脱水剤につては、加熱することでいったん吸着した水分を放散し、二酸化炭素の脱水乾燥剤として再利用することができる。この時、前記の加熱については、プロセス全体のエネルギー効率を向上させる点で、(1)又は(4)の工程で発生する熱を利用して脱水し、再利用することが好ましい。
【0039】
本発明の製造法において、メタノールは、化学式CH3OHで表される物質のことを表す。当該メタノールについては、上記の(1)~(8)の工程を経て製造されるものであるが、必ずしも純物質である必要はなく、出発原料に含まれる不純物や、前記工程の過程で発生する副生成物(特に限定するものではないが、例えば、水等)を含んでいてもよい。
【0040】
本発明の製造方法において、上記の(1)の工程は、少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含む二酸化炭素吸収液に二酸化炭素を吸収させる工程、である。
【0041】
当該(1)の工程における二酸化炭素は、上記の通りである。
【0042】
当該(1)の工程における二酸化炭素吸収液は、少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含むことを特徴とする。
【0043】
前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンについては、特に限定するものではないが、例えば、モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-イソプロピルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2-アミノエチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペエンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(水添MDA)、ベンジルアミン、メチルベンジルアミン、アニリン、トルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、又はモルホリンなどを挙げることができる。これらのアミンは1種だけ使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。なお、モルホリンについては、反応系中で加水分解してジエタノールアミンを生成する。このとき、生成したジエタノールアミンについては、上記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンとして作用する。
【0044】
前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンについては、メタノールの製造効率に優れる点で、少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアルカノールアミンであることが好ましく、特に限定するものではないが、例えば、モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-イソプロピルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2-アミノエチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール等を挙げることができる。これらのアミンは1種だけ使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0045】
前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンについては、これらのうち、メタノールの製造効率に優れる(特に、本製造方法で得られる混合物からの分離容易性に優れる)点で、ジエタノールアミンがより好ましい。少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンがジエタノールアミンの場合、本発明の(1)の工程は、ジエタノールアミンを含む二酸化炭素吸収液に二酸化炭素を吸収させる工程、となるが、当該二酸化炭素吸収液については、ジエタノールアミン以外の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含んでいてもよく、また、後述する3級アミン化合物、アルコール化合物、又はエーテル化合物を含んでいてもよい。
【0046】
前記の二酸化炭素吸収液については、少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含むことを特徴とするが、その他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、特に限定するものではないが、例えば、3級アミン化合物、エーテル化合物、及びアルコール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物(ただし、前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを除く)を挙げることができる。
【0047】
前記の3級アミン化合物(ただし、前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを除く)としては、特に限定するものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、又はジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、又はN-メチルモルホリン等を挙げることができる。なお、N-メチルモルホリンについては、反応系中で加水分解してN-メチルジエタノールアミンを生成する。このとき、生成したN-メチルジエタノールアミンについては、前記の3級アミン化合物として作用する。
【0048】
前記のエーテル化合物(ただし、前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを除く)は、少なくとも2つの炭素原子に挟まれた酸素原子を有する化合物を表し、当該エーテル化合物としては、特に制限はなく、一般に流通しているものを使用することができるが、あえて例示すると、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジシクロヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、グリム、ジグリム、トリグリム、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジベンジルエーテル、ジフェネチルエーテル、テトラヒドロフラン、又はジオキサンなどが挙げられる。これらのエーテルの中で、いずれを使用しても一向に差し支えないが、加水分解した際、本発明の方法で使用するアルコールが生成するエーテルが好ましく、より具体的には、シクロヘキシルエーテルが特に好ましい。なお、本発明において、少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するエーテル化合物(モルホリン等)については、前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンとして定義した、また、ヒドロキシ基を有するエーテル化合物については、後述のアルコール化合物として定義した。
【0049】
前記のアルコール化合物(ただし、前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを除く)は、少なくとも一つのヒドロキシ基を有する化合物を表し、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、又はジプロピレングリコールモノエチルエーテル等を挙げることができる。なお、本発明において、アミノ基を有するアルコール化合物については、本発明におけるアミンとして機能するため、前述の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミン、又は前述の3級アミン(ただし、前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを除く)として定義した。
【0050】
上記の二酸化炭素吸収液は、上記の通り、少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含むことを特徴とするが、当該少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンの含有量については、特に限定するものではないが、例えば、20重量%~100重量%を挙げることができる。当該含有量については、二酸化炭素の吸収効率の観点から、40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。また、当該含有量については、析出物生成の悪影響を避ける観点で、98重量%以下であることが好ましく、96重量%以下であることがより好ましく、94重量%以下であることがより好ましい。
【0051】
当該(1)の工程は、少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含む二酸化炭素吸収液に二酸化炭素を吸収させる工程であるが、吸収させる方法については、従来公知の方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、バブリング法、又は充填塔若しくは棚段塔を用いた対向接触法などが挙げられる。
【0052】
二酸化炭素を二酸化炭素吸収液に吸収させる際の温度としては、特に制限するものではないが、通常10℃~60℃の範囲を挙げることができ、吸収効率に優れる点で、15~50℃の範囲であることが好ましく、20~40℃の範囲であることがより好ましい。
【0053】
また、本発明の二酸化炭素吸収液については、任意の担体に担持又は添着させた状態で用いることもできる。前記の担体としては、特に限定するものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、多孔性ガラス、活性炭、ポリメチルメタクリレート系の多孔性樹脂、又は繊維などを用いることができる。
【0054】
前記のシリカとしては、結晶性と非結晶性(アモルファス)があり、細孔を有するゼオライト状のシリカ、メソポーラスシリカなど多種知られている。本発明の二酸化炭素吸収放散剤において、使用できるシリカには特に制限はなく、工業的に流通しているものを使用することができるが、表面積が大きいシリカが好ましい。
【0055】
なお、(1)の工程で発生する熱とは、二酸化炭素が二酸化炭素吸収液に吸収される際に生じる溶解熱及び/又はカルバミン酸生成時に生じる反応熱を表し、当該溶解熱及び/又は反応熱については、コンデンサーで回収され、前記の脱水剤の加熱、後述する(2)の工程の加熱、又は後述する(7)の工程の加熱に用いることができる。
【0056】
本発明の製造方法において、上記の(2)の工程は、前記の(1)の工程で得られた二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液とオレフィン化合物を混合し、酸触媒(A)存在下、加熱してカルバミン酸エステルを含む混合液を製造する工程、である。
【0057】
当該(2)の工程におけるオレフィン化合物は、前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンと二酸化炭素の反応生成物であるカルバミン酸と反応して、カルバミン酸エステルを形成する。
【0058】
【0059】
当該オレフィン化合物については、少なくとも1つの二重結合(C=C)を有する化合物を表し、特に限定するものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、エチレンモノクロリド、エチレンジクロリド、ブテン、シクロブテン、ブタジエン、クロロプレン、ペンテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、ヘキセン、シクロヘキセン、1-メチルシクロヘキセン、3-メチルシクロヘキセン、4-メチルシクロヘキセン、1,2-ジメチルシクロヘキセン、1,3-ジメチルシクロヘキセン、1,4-ジメチルシクロヘキセン、1,6-ジメチルシクロヘキセン、2,4-ジメチルシクロヘキセン、3,3-ジメチルシクロヘキセン、3,4-ジメチルシクロヘキセン、3,5-ジメチルシクロヘキセン、3,6-ジメチルシクロヘキセン、4,4-ジメチルシクロヘキセン、4,5-ジメチルシクロヘキセン、1,3-シクロジエン、1,4-シクロジエン、スチレン等を挙げることができる。なお、これらについては、1種だけで使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0060】
なお、当該オレフィン化合物については、アミノ基を有しないものが好ましい。すなわち、アミノ基を有しないオレフィン化合物が好ましい。ヒドロキシル基を有するオレフィン化合物については、上記のオレフィン化合物として機能してカルバミン酸エステルを形成可能である。このため、ヒドロキシル基を有するオレフィン化合物は、前記のオレフィン化合物に包含される。
【0061】
当該オレフィン化合物については、メタノールの製造効率に優れる点で、シクロヘキセン化合物であることが好ましく、シクロヘキセン、1-メチルシクロヘキセン、3-メチルシクロヘキセン、4-メチルシクロヘキセン、1,2-ジメチルシクロヘキセン、1,3-ジメチルシクロヘキセン、1,4-ジメチルシクロヘキセン、1,6-ジメチルシクロヘキセン、2,4-ジメチルシクロヘキセン、3,3-ジメチルシクロヘキセン、3,4-ジメチルシクロヘキセン、3,5-ジメチルシクロヘキセン、3,6-ジメチルシクロヘキセン、4,4-ジメチルシクロヘキセン、4,5-ジメチルシクロヘキセン、1,3-シクロジエン、及び1,4-シクロジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、シクロヘキセンであることがより好ましい。
【0062】
二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液とオレフィン化合物を混合する際、二酸化炭素とオレフィン化合物の混合比率は、特に限定するものではないが、モル比で、オレフィン化合物が過剰となる比率であることが好ましく、二酸化炭素 1モルに対して、オレフィン化合物が1.1モル以上のモル比であることが好ましく、二酸化炭素 1モルに対して、オレフィン化合物が1.5モル以上のモル比であることがより好ましく、二酸化炭素 1モルに対して、オレフィン化合物が2モル以上のモル比であることがより好ましい。
【0063】
過剰量のオレフィン化合物については、カルバミン酸と反応することなく次の(3)で表される工程に移される。
【0064】
前記の(2)の工程における酸触媒(A)は、少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンと二酸化炭素から生成したカルバミン酸とオレフィン化合物を反応させて、カルバミン酸エステルを製造する際の反応を促進することができる。
【0065】
当該酸触媒(A)としては、特に制限はなく一般に使用されている酸、例えば、金属ハロゲン化物、鉱酸、有機酸、又は固体酸を使用できる。さらに詳細に例示すると、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化チタン、臭化アルミニウム、フッ化ホウ素、硫酸、リン酸、硫酸鉄、硫酸チタン、リン酸アルミ、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフロロ酢酸、イオン交換樹脂、ゼオライト、シリカ-アルミナ、モンモリロナイト、又はニオブ酸などが挙げることができる。なお、これらの酸触媒(A)については、単品として用いることもできるし、複数混合して用いることもできるし、上記以外の酸を単独又は併用して使用しても一向に差し支えない。
【0066】
これらのうち、反応塔に充填して使用できるという操作性に優れる点で、固体酸が好ましく、イオン交換樹脂、ゼオライト、又はシリカ-アルミナがより好ましい。
【0067】
当該(2)の工程については、加熱することを特徴とする。当該加熱については、特に限定するものではないが、反応効率を高める点で、50℃以上の加熱が好ましく、55℃以上の加熱がより好ましく、60℃以上の加熱がより好ましい。
【0068】
また、上記の加熱については、プロセス全体のエネルギー効率を向上させる点で、(1)又は(4)の工程で発生する熱を利用することが好ましい。
【0069】
本発明においては、上記の通り、オレフィン化合物を用いてカルバミン酸エステルを合成することを特徴とする。従来技術(例えば、非特許文献1)として、オレフィン化合物を用いずにカルバミン酸を合成し(カルバミン酸エステルは合成していない)、当該カルバミン酸を用いてメタノールを製造する方法が報告されているが、当該製造方法では、メタノールの製造条件が高温、高圧を要するという課題がある。カルバミン酸エステルを用いてメタノールを製造する本発明の方法では、メタノールの製造条件をより温和なものにすることができる。
【0070】
本発明の製造方法において、上記の(3)の工程は、前記の(2)の工程で得られたカルバミン酸エステルを含む混合液から未反応のまま残存したオレフィン化合物を蒸留分離し、当該分離したオレフィン化合物を前記の(2)の工程にリサイクルする工程、である。
【0071】
前記の蒸留分離については、一般公知の蒸留操作でおこなうことができるが、特に限定するものではないが、例えば、真空蒸留、減圧蒸留、常圧蒸留、又は薄膜蒸留等を挙げることができる。
【0072】
当該蒸留分離の条件としては、温度と圧力が挙げられる。圧力については、特に限定するものではないが、エネルギー効率に優れる点で、大気圧以下であることが好ましく、10kPa以下であることがより好ましく、1kPa以下であることがより好ましい。温度については、圧力条件に依存して変化する。
【0073】
当該(3)の工程によって、蒸留分離されたオレフィン化合物とオレフィン化合物が除去されたカルバミン酸エステルを含む混合液を製造することができる。前記の蒸留分離されたオレフィン化合物については、上記の(2)の工程で再利用することができる。
【0074】
前記のオレフィン化合物が除去されたカルバミン酸エステルを含む混合液については、上記の反応で得られたカルバミン酸エステルを含むことを特徴とするが、それ以外の成分を含んでいてもよい。当該それ以外の成分としては、前記の二酸化炭素吸収液を構成する成分や、原料二酸化炭素(二酸化炭素を含むガス)に含まれる成分が挙げられる。
【0075】
本発明の製造方法において、上記の(4)の工程は、前記の(3)の工程でオレフィン化合物が除去されたカルバミン酸エステルを含む混合液を、水素、及び金属触媒存在下、加熱して反応させ、前記のオレフィン化合物の水和物(前記のオレフィン化合物が水和反応して生成するアルコール化合物を表す)とメタノールと少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含む反応液を製造する工程、である。
【0076】
【0077】
前記のオレフィン化合物が除去されたカルバミン酸エステルを含む混合液については、上記の通りである。
【0078】
前記の水素については、化学式H2で表される分子を表し、一般的に入手可能なものを用いることができるが、工業的に製造されたものを用いることが好ましい。工業的に製造された水素としては、特に限定するものではないが、天然ガスから分離精製された水素、食塩電化プラントで製造された水素、水の電気分解で製造された水素、又はバイオマスから製造された水素等を挙げることができる。
【0079】
前記の金属触媒については、特に限定するものではないが、例えば、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銅及び白金からなる群より選ばれる金属を含有する金属触媒を挙げることができる。これらの金属触媒については、一般にアミド還元触媒として知られているものを用いることが好ましく、特に制限はないが敢えて例示すると、ルテニウムアセチルアセトン錯体、ルテニウムトリホス錯体、銅-クロム触媒、レニウム酸化物触媒、ルテニウム-モリブデン触媒、ロジウム-レニウム触媒、白金-バナジウム触媒、白金-レニウム触媒、又はパラジウム-レニウム触媒などが挙げられる。
【0080】
当該金属触媒としては、金属錯体のような均一系触媒を使用してもよいし、金属又は金属錯体を担体に分散担持した不均一系触媒を使用しても良いが、工業的には安価な不均一系触媒を使用することが好ましい。当該不均一系触媒に用いる担体としては、特に限定するものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ゼオライト、活性炭などが挙げられる。
【0081】
前記のオレフィン化合物の水和物は、上記の反応式通り、原料として用いたオレフィン化合物が水和反応して生成したアルコール化合物を表す。本発明を限定するものではないが、例えば、オレフィン化合物としてシクロヘキセンを用いた場合は、(4)の工程で得られる反応生成物であるオレフィン化合物の水和物は、シクロヘキサノールとなる。
【0082】
当該(4)の工程については、加熱することを特徴とする。当該加熱については、特に限定するものではないが、反応効率を高める点で、80℃以上の加熱が好ましく、100℃以上の加熱がより好ましく、120℃以上の加熱がより好ましい。
【0083】
また、(4)の工程については、反応効率を上げるために、加圧条件で行うことが好ましい。当該加圧条件については、特に限定するものではないが、反応効率を高める点で、0.5MPa以上であることが好ましく、1MPa以上であることがより好ましく、2MPa以上であることがより好ましい。また、工業生産に適する点で、当該加圧条件については、5MPa以下であることが好ましく、4MPa以下であることがより好ましく、3MPa以下であることがより好ましい。
【0084】
なお、当該(4)の工程を実施する際、発生する反応熱をコンデンサーで回収することができる。当該熱については、上記の脱水剤の脱水乾燥のための加熱、(2)の工程の加熱、又は(7)の工程の加熱に用いることが好ましい。当該(4)の工程については、好ましくは80℃以上の温度に加熱することによって反応が進行するが、反応によってさらに発熱が生じる。このため、一旦反応が始まると、それ以降、自己反応熱によって加熱状態が継続される状態となり、別途外部からの加熱エネルギーは不要となる。
【0085】
本発明においては、上記の通り、金属触媒を用いてカルバミン酸エステルからメタノール合成することを特徴とする。従来技術(例えば、非特許文献3)については、不均一触媒を用いた場合、カルバミン酸エステルからメタノールを合成できないことが開示されているが、本発明の製造方法については、実施例に示す通り、不均一触媒を用いた場合であってもカルバミン酸エステルからメタノールを合成することができるという点で顕著に優れている。
【0086】
本発明の製造方法において、上記の(5)の工程は、前記の(4)の工程で得られた反応液を蒸留し、メタノールと残液を製造する工程、である。
【0087】
前記の(4)の工程によって、メタノールと、オレフィン化合物の水和物と、少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含有する組成物が得られる。上記の(5)の工程では、当該組成物を蒸留することによって、メタノールと、少なくともオレフィン化合物の水和物及び少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含有する残液を製造することを目的とする。
【0088】
当該蒸留分離については、一般公知の蒸留操作でおこなうことができるが、特に限定するものではないが、例えば、真空蒸留、減圧蒸留、常圧蒸留、又は薄膜蒸留等を挙げることができる。
【0089】
当該蒸留分離の条件としては、温度と圧力が挙げられる。圧力については、特に限定するものではないが、エネルギー効率に優れる点で、大気圧以下であることが好ましく、10kPa以下であることがより好ましく、1kPa以下であることがより好ましい。温度については、圧力条件に依存して変化する。
【0090】
蒸留によって得られたメタノールについては、上述の通りである。なお、得られたメタノールについては、一般的に利用される用途で使用することができる。
【0091】
前記の少なくともオレフィン化合物の水和物及び少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含有する残液については、オレフィン化合物の水和物、及び少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミン以外の成分を含んでいてもよい、当該成分としては、上記の繰り返しになるが、前記の二酸化炭素吸収液を構成する成分や、原料二酸化炭素(二酸化炭素を含むガス)に含まれる成分が挙げられる。
【0092】
本発明の製造方法において、上記の(6)の工程は、前記の(5)の工程で得られた残液を更に蒸留し、前記のオレフィン化合物の水和物と前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを製造し、当該少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを前記の(1)の工程にリサイクルする工程、である。
【0093】
前記の(5)の工程によって、少なくともオレフィン化合物の水和物及び少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを含有する組成物が得られる。上記の(6)の工程では、当該組成物を蒸留することによって、オレフィン化合物の水和物と少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンを製造することを目的とする。
【0094】
当該蒸留分離については、一般公知の蒸留操作でおこなうことができるが、特に限定するものではないが、例えば、真空蒸留、減圧蒸留、常圧蒸留、又は薄膜蒸留等を挙げることができる。
【0095】
当該蒸留分離の条件としては、温度と圧力が挙げられる。圧力については、特に限定するものではないが、エネルギー効率に優れる点で、大気圧以下であることが好ましく、10kPa以下であることがより好ましく、1kPa以下であることがより好ましい。温度については、圧力条件に依存して変化する。
【0096】
蒸留によって得られた少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンについては、(1)の工程の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンとして再利用することが好ましい。
【0097】
また、上記の蒸留によって得られたオレフィン化合物の水和物については、次の(7)の工程で利用される。
【0098】
上記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミン及びオレフィン化合物の水和物以外の成分、すなわち、前記の二酸化炭素吸収液を構成する成分や、原料二酸化炭素(二酸化炭素を含むガス)に含まれる成分については、(6)の工程で別途分離することができ、分離することによって反応プロセス系外に排出することもできる。また、前記の二酸化炭素吸収液を構成する成分については、(6)の工程で分離した後に(1)の工程の二酸化炭素吸収液の一成分として再利用することもできるし、前記の少なくとも一つの1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミンに同伴させて(1)の工程に再利用することもできるし、前記のオレフィン化合物の水和物に同伴させて(1)の工程に再利用することもできる。
【0099】
本発明の製造方法において、上記の(7)の工程は、酸触媒(B)存在下、前記の(6)の工程で得られたオレフィン化合物の水和物を加熱し、オレフィン化合物と水を製造する工程、である。
【0100】
【0101】
前記の(7)の工程における酸触媒(B)は、オレフィン化合物の水和物から脱水を行ってオレフィン化合物を製造する際の反応を促進することができる。
【0102】
当該酸触媒(B)としては、特に制限はなく一般に使用されている酸、例えば、金属ハロゲン化物、鉱酸、有機酸、又は固体酸を使用できる。さらに詳細に例示すると、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化チタン、臭化アルミニウム、フッ化ホウ素、硫酸、リン酸、硫酸鉄、硫酸チタン、リン酸アルミ、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフロロ酢酸、イオン交換樹脂、ゼオライト、シリカ-アルミナ、モンモリロナイト、又はニオブ酸などが挙げることができる。なお、これらの酸触媒(B)については、単品として用いることもできるし、複数混合して用いることもできるし、上記以外の酸を単独又は併用して使用しても一向に差し支えない。
【0103】
これらのうち、反応塔に充填して使用できるという操作性に優れる点で、固体酸が好ましく、イオン交換樹脂、ゼオライト、又はシリカ-アルミナがより好ましい。
【0104】
当該(7)の工程については、加熱することを特徴とする。当該加熱については、特に限定するものではないが、反応効率を高める点で、50℃以上の加熱が好ましく、55℃以上の加熱がより好ましく、60℃以上の加熱がより好ましい。
【0105】
また、上記の加熱については、プロセス全体のエネルギー効率を向上させる点で、(1)又は(4)の工程で発生する熱を利用することが好ましい。
【0106】
本発明の製造方法において、上記の(8)の工程は、前記の(7)の工程で得られたオレフィン化合物と水を分離し、分離したオレフィン化合物を前記の(2)の工程にリサイクルする工程、である。
【0107】
(8)の工程において、オレフィン化合物と水を分離する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、二層分離法を挙げることができる。オレフィン化合物と水は相溶性が無いく、静置するだけで二層分離するため、二層分離が容易であり、好ましい。
【0108】
二層分離された水については、分液によってプロセス系外に排出することができる。この時、活性炭などで別途処理してプロセス系外に排出することが好ましい。
【0109】
以下、本発明を何ら限定的に解釈するものではないが、本発明の一例として、後述する実施例のプロセスの概要を
図1に例示した。以下、
図1を詳細に説明する。
【0110】
本プロセスは、1.吸収塔、2.エステル化反応器、4.水素還元反応器、7.脱水反応器の反応器と複数の蒸留塔から成る。
【0111】
1.吸収塔では、二酸化炭素吸収液で、二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に吸収、反応させる。水、硫黄酸化物を除去した、二酸化炭素を含む混合ガスを1.吸収塔下部から供給し、吸収塔の上部からジエタノールアミン(DEA)を含む二酸化炭素吸収液で除熱しながら吸収、カルバミン酸を製造する。
【0112】
2.エステル化反応器では、カルバミン酸とシクロヘキセン(Cy=)を反応させ、カルバミン酸エステルを製造する。2.エステル化反応器には酸触媒を充填しておき、これにカルバミン酸と過剰量のCy=を供給し、酸触媒と接触させる。この時、2.エステル化反応器の温度は60℃以上に維持する。50℃未満では、エステル化反応が工業的でないほど遅くなる。
【0113】
3.蒸留塔Aでは、2.エステル化反応器で得られた反応液から、未反応(過剰量)のCy=を留出除去する。留出除去したCy=は2.エステル化反応器に戻すことができる。なお、Cy=を分離せず、Cy=を含んだカルバミン酸エステルを次の4.水素還元反応器に供給した場合は、Cy=の還元に水素が消費され、コスト的に好ましくない。
【0114】
4.水素還元反応器では、カルバミン酸エステルを還元し、メタノール、DEA,Cy=水和物(シクロヘキサノール)とする。4.水素還元反応器で、カルバミン酸エステル混合液、水素、金属触媒と接触させる。金属触媒が不均一系触媒である場合は、水素還元反応器に充填しておき、これにカルバミン酸エステル混合液と水素を流通させ、均一系触媒の場合は、圧力釜に金属触媒溶液、カルバミン酸エステル混合液を供給し、これに水素を吹き込む。Pd-Reを活性炭に担持した触媒の場合、球状、円筒状、粒状などに成型した触媒を多管式反応器に充填し、水素加圧下、カルバミン酸エステルを還元する。温度は触媒の性能により変化するため、限定することは困難であるが、100℃以上とする。100℃未満でも還元が進行する場合があるが、工業的でないほど反応速度が遅くなる。水素の圧力は、0.1MPa以上5MPa以下、好ましくは0.5MPa以上4MPa以下である。0.1MPa未満では反応は工業的でないほど遅く、5MPaを超える圧力では、装置への負担が増加する。
【0115】
5.蒸留塔Bでは、4.水素還元反応器の反応液からメタノールを蒸留精製する。反応液からメタノールを分離した釜残は蒸留塔Cに送液する。
【0116】
6.蒸留塔Cでは、DEAとシクロヘキサノールを分離する。DEAは1.吸収塔にリサイクルする。
【0117】
7.脱水反応器では、シクロヘキサノールを酸触媒と接触させて、Cy=に変換する。7.脱水反応器は個体酸触媒を充填しておき、加熱下、これにシクロヘキサノールを流通させるという広く一般的に実施されている方法を適用できる。この温度は50℃以上とする。50℃未満では、反応速度が工業的でないほど遅くなる。7.脱水反応器で生成したCy=と水は相分離するので分離は容易である。Cy=は2.エステル化反応器にリサイクルする。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1】実施例で検討したプロセスの簡易フロー図を表す。
【実施例0119】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表記を簡潔にするため、以下の略記号を使用した。
【0120】
DEA:ジエタノールアミン
Cy=:シクロヘキセン
CyOH:シクロヘキサノール
MeOH:メタノール
CA:N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)カルバミン酸
CE:N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)カルバミン酸シクロヘキシルエステル
実施例1.
図1のプロセスフローに基づき、プロセスシミュレータASPEN PLUSで反応熱、気液平衡を求めた。CA、及びCEの物性(相平衡)はUNIF-DMDで推算した。
【0121】
石炭火力発電の排ガスから水蒸気、硫黄酸化物、窒素酸化物を除去した混合ガスを1.吸収塔に供給する。1.吸収塔に供給するガス組成の代表値は、窒素80.6体積%、酸素5.4体積%、二酸化炭素13.9体積%である。吸収塔の温度は30℃に設定した。吸収塔にはDEAを4420kg/h、溶媒としてCyOHを331kg/h供給し、二酸化炭素を1450kg/hで吸収する。ここで、DEAとCyOHの混合物が二酸化炭素吸収液として作用し、DEAが二酸化炭素を吸収した結果、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)カルバミン酸(CA)が生成する
酸型イオン交換樹脂を充填した2.エステル化反応器に、CAとCy=を供給する。2.エステル化反応器の温度は60℃に設定した。
【0122】
2.エステル化反応器でエステル化されて生成したN,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)カルバミン酸シクロヘキシルエステル(CE)を含む混合液を3.蒸留塔Aに仕込み、3.蒸留塔AのトップからCy=を留去する。Cy=は2.エステル化反応器に戻す。
【0123】
3.蒸留塔Aのボトム液をPd-Reを活性炭に担持した触媒を充填した4.水素還元反応器に供給する。これに水素を199kg/hの速度で、2MPaの圧力で供給し、CEを水素還元する。温度は100℃に設定した。
【0124】
4.水素還元反応器からの流出液について、5.蒸留塔Bで蒸留してMeOHを精製する。5.蒸留塔BのトップからMeOHを留出させ、ボトム液はさらに6.蒸留塔Cに供給する。6.蒸留塔CのトップからCyOHを留出させ、ボトムのDEAは1.吸収塔に戻す。
【0125】
CyOHは一部1.吸収塔へ供給し、残りは酸型イオン交換樹脂を充填した7.脱水反応器に供給する。7.脱水反応器でCyOHはCy=と水の混合液になる。上層のCy=は2.エステル化反応器に戻し、下層の水は処理した後、排水とする。
【0126】
以上の工程で、1450kgの二酸化炭素からMeOHは1050kg/h製造できる。この時投入されるエネルギーに相当する二酸化炭素量は、MeOH 1kgあたり、二酸化炭素 0.5kgとなり、二酸化炭素の削減を実現できる。
【0127】
本実施例の成績について、表1に示した。比較例として、非特許文献1のデータを引用した。
【0128】