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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184462
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】引張治具
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/04 20060101AFI20221206BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G01N3/04 P
G01N3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092325
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100153017
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 昭人
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】奥津 大
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】片桐 信
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AB01
2G061BA01
2G061CA01
2G061CB18
2G061DA16
2G061EA01
2G061EA02
2G061EB05
(57)【要約】
【課題】引張治具を提供する。
【解決手段】引張治具100は、供試体が挿入される筒部1、筒部1の筒の内壁10に形成された環状の溝部2、及び、筒部1の内側に嵌め込まれたリング3を備え、溝部2は、筒部1の周方向に沿い形成されており、筒部1の軸方向における一端側から他端側に向けて、溝深さが漸次深くなるように形成されており、リング3は、溝部2に嵌め込まれている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体が挿入される筒部、
前記筒部の筒の内壁に形成された環状の溝部、及び、
前記筒部の内側に嵌め込まれたリングを備え、
前記溝部は、
前記筒部の周方向に沿い形成されており、
前記筒部の軸方向における一端側から他端側に向けて、溝深さが漸次深くなるように形成されており、
前記リングは、前記溝部に嵌め込まれている引張治具。
【請求項2】
前記リングは、環の一部を切欠いたC字形状に形成されている請求項1に記載の引張治具。
【請求項3】
前記リングは、
当該リングの周方向に交差する断面の形状が、当該リングの軸方向の一方に向けて窄む尻窄み形状に形成されており、
前記断面の前記尻窄み形状における尻部側を前記筒部の一端側に向けた状態で前記溝部に嵌め込まれている請求項1又は2に記載の引張治具。
【請求項4】
前記リングは、弾性体で形成された弾性部を有し、
前記弾性部は、前記断面の前記尻窄み形状における頭部側に配置されている請求項3に記載の引張治具。
【請求項5】
前記筒部は、当該筒部の周方向において、複数個に分割された分割片を接続して形成されている請求項1から4の何れか一項に記載の引張治具。
【請求項6】
前記溝部が2つ以上形成されている請求項1から5の何れか一項に記載の引張治具。
【請求項7】
前記筒部の前記他端側に接続された板部を更に備えた請求項1から6の何れか一項に記載の引張治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張治具に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設される通信線、電気、ガス、水道などの管路は、所定長さ(例えば数m)の管を継手により接続して構築される。継手の接続形式には差込、ねじ、接着や溶接などがある。地震(特に、大地震)発生時には、管路の継手部分に離脱、屈曲、押し込みなどの破損が生じやすい(例えば、非特許文献1参照)。そのため、管路の耐震性評価のために、継手の強度や変位特性を把握する必要がある。
【0003】
管の継手には、施工性、水密性や気密性、温度変化に伴う伸縮、振動吸収など、様々な機能が要求される。継手は、これら要求に応じて様々な形状や構造のものが利用されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1には、管継手が記載されている。この管継手は、受口内面の受口溝と挿口の外面の間にゴム輪を配置し、該ゴム輪を奥側に押圧する円周方向1つ割りとなったスラストリングをその外面に設けた凸部を環状凹部に位置させ、かつ該凸部を環状突部と係止可能な状態で配置し、このスラストリングを奥側に押圧する押輪を環状テーパ面と対向するように配置している。そして、この押輪の外面に熱可塑性樹脂を埋設し、この熱可塑性樹脂と融着可能な熱可塑性樹脂を有する環状のくさび部材を、該樹脂の中に電気抵抗線を埋設して押輪の外面とテーパ面の間に配置し、このくさび部材の熱可塑性樹脂の中の電気抵抗線に通電するための穴を受口に設けている。
【0005】
特許文献2には、差し込み継手が記載されている。この差し込み継手は、止水リング装着溝付きの管挿入部を備えた継手本体と、管挿入部に軸方向に移動可能に挿通された縮径可能なロックリングと、継手入口側に至るにつれて径小とされたテーパ内面部を備え、ロックリングを覆って継手本体に連結された合成樹脂製のロックリング受け外筒と、を有する。ロックリングは引き抜き方向の引っ張りによりロックリング受け外筒のテーパ内面部に当接されるテーパ外面部を備え、この当接による縮径で被接続管外面に食い込まされる係止刃を内面側に、引き抜き方向と逆方向の押し込みでロックリング受け外筒内面に食い込まされる係止刃をテーパ外面部にそれぞれ備えている。
【0006】
継手の強度や変位特性を把握するための評価実験(評価試験)として、一般的に、軸方向の圧縮実験、引張実験及び曲げ実験が行われる(非特許文献2,3参照)。これら評価実験のうち、圧縮実験と曲げ実験を行う場合、評価対象としての継手を含む管路(以下、供試体と記載する)を試験に供するために必要な供試体への加工は比較的簡易である。また、評価実験に用いる治具も簡易で、複雑な形状や構造ではない。これに対し、引張実験を行う場合、供試体を試験に供するために必要な供試体への加工、例えば、供試体と、引っ張り力を加える載荷試験機と、を接続するための接続インタフェースを形成する加工は簡単ではない。また、引張実験に用いる治具、例えば、供試体と引っ張り力を加える載荷試験機とを接続するための接続具(以下、引張治具と記載する)も簡易なものでは十分でない場合があった。例えば従来の引張実験では、供試体の端部に、引張方向と交差する貫通孔を形成する穴あけ加工を行い、当該貫通孔に鋼棒等の棒状の引張治具を挿通して載荷試験機で引っ張るための接続インタフェースとする方法や、供試体の端部に鋼板を溶接する加工を行い、当該鋼板を接続インタフェースとして、当該鋼板を載荷試験機にボルトで固定する方法などが用いられていた。しかし、穴あけ加工や溶接は面倒である。また、供試体と、引っ張り力を加える載荷試験機と、の接続インタフェース又は引張治具による接続部の接続強度が不十分であると、引っ張り力を加えている間(以下、載荷中と記載する)に供試体と載荷試験機の接続部が外れたり、ずれたり、変形したりして評価実験を失敗することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-286692号公報
【特許文献2】特開2006-125521号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】土木学会:都市ライフラインハンドブック,pp.616,677-678,丸善,2010.
【非特許文献2】日本ポリエチレンパイプシステム協会:一般用ポリエチレン管(3主幹・PE100)設計マニュアル,pp.20-22,2019.
【非特許文献3】日本ダクタイル鉄管協会:NS形ダクタイル鉄管,pp.17-27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、管の継手に対する引張実験は、容易には行えず、失敗することも多かった。
【0010】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、管の継手に対する引張実験を容易に行える引張治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る引張治具は、
供試体が挿入される筒部、
前記筒部の筒の内壁に形成された環状の溝部、及び、
前記筒部の内側に嵌め込まれたリングを備え、
前記溝部は、
前記筒部の周方向に沿い形成されており、
前記筒部の軸方向における一端側から他端側に向けて、溝深さが漸次深くなるように形成されており、
前記リングは、前記溝部に嵌め込まれている。
【0012】
本発明に係る引張治具では、更に、
前記リングは、環の一部を切欠いたC字形状に形成されてもよい。
【0013】
本発明に係る引張治具では、更に、
前記リングは、
当該リングの周方向に交差する断面の形状が、当該リングの軸方向の一方に向けて窄む尻窄み形状に形成されており、
前記断面の前記尻窄み形状における尻部側を前記筒部の一端側に向けた状態で前記溝部に嵌め込まれてもよい。
【0014】
本発明に係る引張治具では、更に、
前記リングは、弾性体で形成された弾性部を有し、
前記弾性部は、前記断面の前記尻窄み形状における頭部側に配置されてもよい。
【0015】
本発明に係る引張治具では、更に、
前記筒部は、当該筒部の周方向において、複数個に分割された分割片を接続して形成されてもよい。
【0016】
本発明に係る引張治具では、更に、
前記溝部が2つ以上形成されてもよい。
【0017】
本発明に係る引張治具では、更に、
前記筒部の前記他端側に接続された板部を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
管の継手に対する引張実験を容易に行える引張治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】引張治具の使用時の態様を説明する図である。
図2】引張治具の上面図である。
図3図2のA-A矢視断面図を含む引張治具の側面図である。
図4】分割された引張治具を説明する図である。
図5図4のB-B矢視断面図である。
図6】リングの上面図である。
図7図6のC-C矢視断面図である。
図8】弾性部の上面図である。
図9】溝部における図2のD-D矢視断面図である。
図10】管路が筒部の筒内に挿入された状態の引張治具の部分断面図である。
図11】管路がリングに当接している部分の部分拡大断面図である。
図12】別のリングの断面図である。
図13】管路が別のリングに当接している部分の部分拡大断面図である。
図14】別の筒部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る引張治具について説明する。
【0021】
(全体構成の説明)
図1から図3には、本実施形態に係る引張治具100(以下、治具100と記載する)を示している。図1には、治具100の使用時の態様を示している。図2には、治具100の上面図を示している。図3には、側面から見た治具100の一部断面(図2のA-A矢視断面)を示している。
【0022】
図1に示すように、治具100は、引張実験(引張試験)の評価対象、すなわち、供試体としての管継手90を含む管路9の引張強度を測定するための治具である。治具100は、管路9が挿入される筒部1を備え、筒部1の筒の内壁10(図2参照)に管路9の端部を係止させる。これにより、治具100は、管路9をその軸方向において拘束することができる。治具100に拘束された管路9に引っ張り力(引張荷重)を加えることで、管路9の引張実験を実現することができる。
【0023】
図3に示すように、本実施形態に係る治具100は、上述の筒部1に加え、筒部1の筒の内壁10に形成された環状の溝部2、及び、筒部1の内側に嵌め込まれたリング3を備えている。
【0024】
溝部2は、筒部1の周方向に沿い形成されている。溝部2は、筒部1の軸方向における一端側から他端側に向けて、溝深さが漸次深くなるように形成されている。そして、リング3は、溝部2に嵌め込まれている。
【0025】
図1を参照しつつ引張実験について説明する。図1では、管路9が、管継手90と、管継手90の両端部に接続された短管91、92を有する場合を例示している。管継手90及び短管91、92の軸心は重複している。例えば二つの治具100(治具100X、100Y)を用い、短管91、92を管路9の軸方向における逆方向に引っ張る(牽引)することにより管継手90に引張荷重を加え、管継手90の引張実験を行うことができる。
【0026】
(各部の説明)
図3に示すように、本実施形態で説明する治具100は、上述した筒部1、筒部1の内壁10に形成された溝部2及び溝部2に嵌め込まれたリング3に加えて、更に、筒部1の他端側の端部に接続された板部8を備えている。
【0027】
以下では、筒部1の軸心Gに沿う方向と同じ方向を軸心方向と記載する。また、軸心方向における、一端側を上ないし上方などと称し、その逆を下ないし下方と称する。すなわち、軸心方向は上下方向と同じである。また、軸心Gを中心とした、筒部1の径方向と同じ方向を単に径方向と記載する。そして、筒部1の径方向外側を単に外側、径方向内側を単に内側と称する。また、軸心Gを中心とした、筒部1の周方向と同じ方向を、単に周方向と記載する。
【0028】
図3では、上方を方向g1、下方を方向g2、径方向外側を方向r1、径方向内側を方向r2で示している。以下の説明では、図3における、上方、下方、外側及び内側を方向の基準として説明する。
【0029】
筒部1は、図2図3に示すように、円筒状に形成された部材である。筒部1は鉄合金などの金属で形成されている。図1に示すように、筒部1の筒内部には、管路9の端部が挿入される。筒部1は、挿入された管路9を内壁10(図3参照)に係止させて、筒内部から抜けないように保持する。
【0030】
図2図4に示すように、筒部1は、筒部1の周方向において、複数個に分割されているとよい。本実施形態では一例として、筒部1が2個に分割されており、一対の分割片1a、1bを接続して形成されている場合を説明している。筒部1は、使用時は一対の分割片1a、1bを一体に接続し(図2参照)、必要時には個別の分割片1a、1bに分割可能(図4参照)な半割構造である。図2に示すように、分割片1a、1bは、一例として、軸心Gと重複する平面において面対称である。以下では、筒部1の周方向を単に周方向と記載する。
【0031】
分割片1a、1bは、図2図4に示すように、上面視で半円状である。図2から図4に示すように、周方向における分割片1a、1bのそれぞれの両端部には、リブ状のフランジ部11が形成されている。すなわち、分割片1aは、一対のフランジ部11、11を有している。また、分割片1bも、一対のフランジ部11を有している。分割片1aの一対のフランジ部11、11は互いに平行であり、同一平面状に配置されている。分割片1bの一対のフランジ部11、11も互いに平行であり、同一平面上に配置されている。
【0032】
図3に示すように、フランジ部11は、分割片1a、1bのそれぞれの両端部から、筒部1の外側に延出している。本実施形態において、フランジ部11は、径方向及び軸心方向に沿う平面上に配置されている。フランジ部11には、板面を貫通する一つ以上の貫通孔12が形成されている。
【0033】
本実施形態では、図2に示すように、分割片1a、1bのそれぞれのフランジ部11、11における貫通孔12、12にボルト18を挿通し、ナット19と螺合させて締めつけることにより、分割片1a、1bを接続して一体の筒部1としている。
【0034】
図3に示すように、溝部2は、筒部1の内壁10に形成された環状の溝である。溝部2は周方向に沿い形成されている。溝部2は、内壁10に複数個(2つ以上)形成されてよい。本実施形態では、溝部2が、軸心方向における異なる位置(上下方向における異なる高さ位置)に、2つ形成されている場合を説明している。
【0035】
溝部2の溝深さは、図5に示すように、軸心方向において、溝部2の下方に向かうほど深くなるように形成されている。なお、本実施形態において、溝部2の幅方向は、軸心方向と同じである。換言すると、溝部2の溝底面2aの下方側は、上方側よりも外側に位置している。本実施形態では、溝部2における周方向に交差する断面の形状が直角三角形状であり、その三角形状の斜辺が溝部2の溝底面2aとなる場合を例示して説明している。なお、図5は、図4のB-B矢視断面を示している。
【0036】
図6には、リング3の上面図を示している。リング3は、鉄合金などの金属材料で形成された環状の部材である。リング3は、環の一部を切欠いた切欠き部3aを有するC字形状に形成されているとよい。リング3は、溝部2に嵌め込まれて筒部1に装着される。
【0037】
図7には、図6のC-C矢視断面を示している。図7に示すように、リング3は、リング3の周方向(筒部1の周方向と同じ)に交差する断面の形状が軸方向の一方である上方に向けて窄む尻窄み形状に形成されている。本実施形態では、尻窄み形状の一例として、上方側が上底となる台形状に形成された場合を示している。尻窄み形状の他の例として、三角形状に形成されてもよいし、尻窄み形状であれば、他の形状であってもよい。リング3は、溝部2に嵌め込まれていない状態では、その外径が、筒部1(溝部2を除く)の内径よりも大きく、溝部2の最大直径と同じであることが好ましい。
【0038】
後述するように、リング3は、上述の尻窄み形状における尻部側を筒部1の一端側に向けた状態、すなわち、尻部側を上方に向けた状態で、溝部2に嵌め込まれるとよい(図3など参照)。
【0039】
リング3は、リング本体30と弾性部4とを備えてもよい。以下では、リング3がリング本体30と弾性部4とを備えている場合を例示して説明する。
【0040】
図6に示すように、リング本体30は、鉄合金などの金属材料で形成された環状の部材である。リング本体30は、リング3の形状に対応させて、環の一部を切欠いた切欠き部39を有するC字形状に形成されているとよい。リング本体30は、周方向に交差する断面の形状が、図7に示すように、軸方向の一方に向けて窄む尻窄み形状に形成されている。
【0041】
図8に示すように、弾性部4は、ゴムなどの弾性体で形成された環状の部材である。弾性部4は、リング3(図6参照)が筒部1の内面(例えば、溝部2の溝底面2aや下面2b、図5参照)に接する部分におけるクッションとなる。弾性部4は、リング本体30の形状に対応させて、環の一部を切欠いた切欠き部49を有するC字形状に形成されているとよい。本実施形態では、図7に示すように、弾性部4の周方向(筒部1の周方向と同じ)に交差する断面の形状が、径方向が長手となる矩形状に形成されている。
【0042】
弾性部4は、リング3の尻窄み形状における頭部側、すなわち、リング本体30の下面上の配置されている。弾性部4は、リング本体30の下面に、例えば接着剤により貼付されてよい。上面視において弾性部4はリング本体30と重複している。また、上面視において、切欠き部49の位置は切欠き部39の位置と重複している。
【0043】
図9に示すように、リング3は、リング本体30の尻窄み形状における尻部側を上方に向け、弾性部4を下方に位置させた状態で、溝部2に嵌め込まれている。なお、図9は、図2のD-D矢視断面を示している。リング3は溝部2に嵌め込まれた状態では、リング本体30の台形状の外側の脚部分である外面30aを溝底面2aに当接させた状態となる。リング3は溝部2に嵌め込まれた状態で、弾性部4の下面4aは、溝部2の下面2bに当接していることが好ましい。リング3は、切欠き部3a(図6参照)の隙間をやや押し縮めるようにして、溝部2に嵌め込まれるとよい。これにより、リング3が外側に広がるようにして外面30aを溝底面2aに押し当てるため、リング3が溝部2にしっかりと嵌り、意図せぬリング3の溝部2からの脱落を防止できる。なお、リング3は、外面30aが溝底面2aに沿う(例えば、平行になる)ように形成されるとよい。これにより、リング3が溝部2に安定した体勢で嵌り、意図せぬリング3の溝部2からの脱落を防止できる。
【0044】
板部8は、図1から図4に示すように、治具100において、筒部1を支持する土台である。また、板部8は、引張実験を行う際に引張装置と接続されるインタフェースとなる部分である。
【0045】
板部8は、鉄合金などの金属で形成されてよい。板部8は、板状に形成されてよい。板部8は、本実施形態では筒部1の下端部に、例えば溶接などにより固定して接続されている。板部8と筒部1との接続部分は、板部8と筒部1とに渡るリブなどで補強されてもよい。板部8は、その板面が筒部1の軸心方向と交差(直交)している。板部8には、引張装置と接続するためのボルト穴82が形成されてよい。本実施形態では、一例として、板部8に、板面を貫通する4つのボルト穴82が形成されている場合を説明する。
【0046】
本実施形態では、図2図4に示すように、板部8は、分割片1aに固定された板8aと分割片1bに固定された板8bとで構成されている。板8a、8bは、分割片1a、1bが接続されて一体の筒部1とされた際に、互いの側面同士が当接する(図2参照)ように分割片1a、1bに固定されるとよい。本実施形態では、板8a、8bのそれぞれにボルト穴82が二つずつ形成されている。
【0047】
上述のように、治具100の筒部1及び板部8は、二部材に分割可能とされている。本実施形態においては、図2図4に示すように、治具100は、分割片1a及び板8aを含む第一部材100aと、分割片1b及び板8bとを含む第二部材100bとに分割可能な半割構造とすることができる。第一部材100aと第二部材100bとは、図2に示すように、分割片1a、1bのそれぞれのフランジ部11、11をボルト18とナット19とで接続することで一体の治具100とすることができる。
【0048】
ボルト穴82には、図1に示すようにボルト89が挿通される。板部8は、ボルト89を引張装置の連結部99(図1参照)と螺合接続することにより、連結部99に固定される。これにより、治具100は引張装置による引張(牽引)が可能となる。
【0049】
以下では、管路9の治具100への取り付け、管路9の治具100による拘束、治具100を用いた引張実験及び治具100からの管路9の取り外しについて説明する。まず、管路9の治具100への取り付けについて説明する。管路9の治具100への取り付けは、管路9を筒部1へ挿入するだけの簡単な操作で行える。これにより、管路9が筒部1に拘束される。図10には、管路9が筒部1の筒内に挿入された状態の治具100の部分断面を示している。なお、図10で示す治具100の断面部分は、図3で示した一部断面に対応する部分である。
【0050】
管路9が筒部1に挿入される際には、管路9は、リング本体30の台形状の内側の脚部分である内面30bと摩擦し、リング3を下方に押し下げる。以下では、管路9の挿入によりリング3が下方に押し下げられることを、単に、リング3の押し込み、などと記載する場合がある。リング3は、リング3の押し込みにより、溝部2の下面2bに当接するまで押し下げられる。なお、リング3が下面2bに当接する際、リング3の弾性部4が下面2bに当接する。
【0051】
リング3が下面2bに当接すると、管路9の挿入に伴う更なるリング3の押し込みにより、弾性部4がクッションとして、圧縮されるように弾性変形する。これにより、リング3は、さらに下方に押し下げられる。溝部2の溝深さは、溝部2の下方に向かうほど深くなるように形成されているから、リング3の押し込みにより押し下げられたリング3は、更に、管路9により内側から外側に押し広げられて径方向外側に拡径する。この際、リング3には切欠き部3aが形成されているため、拡径が容易になる。
【0052】
リング3の拡径により、リング3の環の内側に管路9が挿通されて、リング3が管路9の外側に嵌る。リング3の拡径により、管路9とリング3との摩擦力が低減する。これにより、筒部1の筒内に管路9をスムーズに挿入可能となる。管路9は、端部が板部8に当接するまで筒部1の筒内に押し込むとよい。
【0053】
管路9が筒部1の筒内に挿入された状態では、管路9の外側にリング3が嵌った状態を維持する。すなわち、溝部2にリング3が嵌った状態のまま、管路9と筒部1との間にリング3が配置された状態となる。管路9は、筒部1の筒内に挿入された状態でリング3に当接し、リング3と強く摩擦可能となる。リング3は、管路9にやや食い込む程度に強く押し付けられて管路9に当接することが好ましい。
【0054】
管路9は、内壁10と離間、又は、内壁10に強く押し付けられたり強く摩擦したりすることがない程度に内壁10と当接する。なお、管路9が内壁10に強く押し付けられたり強く摩擦したりすることがない程度、とは、管路9とリング3との摩擦や押付の程度よりも、管路9と内壁10との摩擦や押付の程度が弱いという意味である。
【0055】
図11には、図10における、管路9がリング3に当接している部分の部分拡大断面を示している。リング3は、管路9に押し付けられ、又は、若干食い込む程度に押し付けられる。これにより、リング3は管路9を筒部1の筒内に係止して拘束する。なお、図11では、説明の便宜のため、リング3の管路9への食い込み具合(食い込みの大きさ)を誇張して表現している。
【0056】
治具100では、筒部1の筒内に管路9を挿入した状態で、治具100と管路9とに対して軸方向に引っ張り力を作用させると、治具100との位置関係において、相対的に、管路9が軸方向における引き抜き側向き(管路9が治具100の筒部1から抜ける方向、引き抜き方向)に移動する。
【0057】
管路9が軸方向における引き抜き側向きに移動する際、管路9とリング3との摩擦により、リング3が上方に引き込まれる。これにより、リング3は上方に移動する。リング3の下部に弾性部4が配置されていると、管路9が軸方向における引き抜き側向きに移動する際に弾性部4が管路9と強く摩擦する。これにより、リング3と管路9との摩擦力が大きくなり、リング3を上方に引き込む力が大きくなりやすい。以下では、管路9の引き抜きによりリング3が上方に引き込まれることを、単に、リング3の引き込み、などと記載する場合がある。
【0058】
溝部2の溝深さは、溝部2の上方に向かうほど浅くなるように形成されている。したがって、リング3が引き込まれると、リング3は、溝部2の溝底面2aにより内側に押されて、管路9を内側に強く押し付ける。これにより、リング3は、リング3の内周面が管路9に食い込むように(くさびのように)作用して、筒部1の筒内において管路9を更に強く拘束する。これにより、管路9の、軸方向における引き抜き側向きへの移動が止まる。以下では、リング3による、リング3の引き込み時の管路9の拘束を、くさび効果と記載する。また、以下では、リング3がくさび効果を作用させて、管路9の軸方向における引き抜き側向きへの移動を止めることを、単にロック、と記載する。
【0059】
リング3を上方に引き込む力がより大きいほど、リング3による管路9の拘束力がより大きくなる。すなわち、リング3を上方に引き込む力がより大きいほど、ロックが確実となる。本実施形態では、リング3が引き込まれる際に弾性部4が管路9と強く摩擦するので、リング3と管路9との摩擦力が大きくなる。これにより、リング3による管路9の拘束力が大きくなりやすい。したがって、ロックが確実となっている。
【0060】
上記のようにして、治具100は、管路9の端部を筒部1の筒内に係止させ、管路9の引張実験を実現可能とする。
【0061】
図1を参照しつつ更に引張実験の詳細を説明する。引張実験では、上述のごとく、二つの治具100(治具100X、100Y)を用い、短管91、92を管路9の軸方向における逆方向に引っ張る(牽引)することにより管継手90に引っ張り力(引張荷重)を加え、管継手90の引張実験を行う。
【0062】
図1では、短管91、92における管継手90と接続された側と反対側の端部のそれぞれを治具100X、100Yの筒部1、1に挿入して短管91、92と治具100X、100Yとを接続し、短管91、92の軸方向への移動を拘束する場合を示している。なお、この拘束は、上述のごとく、リング3のくさび効果によるものである。
【0063】
図1では、短管91を拘束する治具100を治具100Xとして示している。また、短管92を拘束する治具100を治具100Yとして示している。治具100X及び治具100Yはそれぞれ、板部8を介して引張装置の連結部99に、ボルト89などにより固定される。連結部99は、例えば、位置が固定されたと固定側連結部99Aと、管路9の軸心方向において引っ張り方向に移動する移動側連結部99Bとを有する。図1では一例として、治具100Xが固定側連結部99Aに固定されており、治具100Yが移動側連結部99Bに固定されている場合を示している。
【0064】
引張実験を開始する場合は、まず、短管91、92を治具100X、100Yで拘束する。そして、移動側連結部99Bを、軸方向において、固定側連結部99Aから離間する方向に移動させる。そうすると、治具100X、100Yに拘束された短管91、92に対して、軸心方向に沿い、且つ、管継手90から離間する向きの引っ張り力を作用させることができる。これにより、管継手90及び短管91、92の引張実験を実現できる。
【0065】
引張実験中は、短管91、92に対し、治具100X、100Yから引き抜かれる方向の引っ張り力が作用する。しかし、短管91、92は、リング3により強固に拘束されているから、引張実験中に意図せず短管91、92が治具100X、100Yから脱離して引張実験が中断してしまうことを回避できる。これにより、引張実験を確実に行える。
【0066】
引張実験を終了し、管路9から治具100を取り外す場合は、ボルト18及びナット19(図2参照)を緩めて、治具100を第一部材100aと第二部材100bとに分割するとよい。これにより、管路9を筒部1から抜き取ることができる。また、リング3が溝部2から外れ、リング3による管路9の拘束が解かれる。このようにして、管路9を治具100から極めて容易に取り外すことができる。
【0067】
このように、治具100では、管路9の取り付け、取り外しがごく簡単、容易であり、また、引張実験を確実に行える。
【0068】
引張実験における、引っ張り力(引張荷重)の加え方の手順を説明する。引張実験は、本載荷と本載荷を行う前の予備載荷とに分けて行う。予備載荷は、引っ張り力の変化を監視しながら、徐々に、管路9を軸方向における引き抜き側向きに移動させてロックさせる(ロックを完了させる)操作である。本載荷は、引張実験において、管継手90の強度や変位特性を把握する操作(狭義の引張実験、引張実験における、いわゆる「本番」)である。本載荷は、予備載荷の後に行う。引っ張り力の変化は、ロードセルなどにより検知することができる。予備載荷において、引っ張り力が上昇し始めたタイミングが、管路9がロックされたタイミング(ロックが完了したタイミング)である。このようにロックを確認してから、本載荷を行う。
【0069】
以上のようにして、管の継手に対する引張実験を容易に行える引張治具を提供することができる。
【0070】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、筒部1と板部8とが溶接により接続されている場合を例示して説明したが、筒部1と板部8との接続は溶接に限られない。筒部1と板部8とを鋳物による一体成型としてもよい。
【0071】
(2)上記実施形態では、リング3(リング本体30)が、リング3の周方向(筒部1の周方向と同じ)に交差する断面の形状が尻窄み形状である場合を例示して説明した。しかし、リング3(リング本体30)は、断面が尻窄み形状である場合に限られない。リング本体30は、図12に示すように、断面が例えば円形状であってもよい。この場合も、弾性部4は、リング本体30の下面に、例えば接着剤により貼付されてよい。リング本体30が円形状であっても、図13に示すように、リング3は、管路9に強く押し付けられ、又は、若干食い込むように押し付けられて管路9を筒部1の筒内に係止することができる。なお、図13図11と同様に、説明の便宜のため、リング3の管路9への食い込み具合を誇張して表現している。
【0072】
(3)上記実施形態では、筒部1が、分割片1a、1bのように二つに分割可能である場合を例示して説明した。しかし、筒部1は二つに分割される場合に限られない。図14に示すように、筒部1が、分割片1α、1β、1γのように三つに分割可能とされてもよいし、更に4つ以上に分割可能としてもよい。この場合、板部8も同様に3つ以上に分割してよい。直径の大きな管路9に対応させて治具100を形成すると、治具100が重たくなり、作業性が低下する場合もある。このような場合には、筒部1などの分割数を3つ以上とすることで、管路9を治具100から極めて容易に取り可能とするのみならず、部品重量を低減して作業性を向上させることもできる。
【0073】
(4)上記実施形態では、板部8が治具100において、筒部1を支持する土台となり、また、板部8は、引張実験を行う際に引張装置の連結部99と接続されるインタフェースとなる場合を説明した。そして、板部8が、筒部1の下端部に接続されている場合を説明した。しかし、治具100における、引張装置との接続は、筒部1の下端部に接続された板部8を介する場合に限られない。筒部1の筒側面に引張装置と接続されるインタフェースとなる部材を設けてもよい。
【0074】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、引張治具に適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 筒部
1a 分割片
1b 分割片
1α 分割片
1β 分割片
1γ 分割片
10 内壁
100 治具(引張治具)
100X 治具
100Y 治具
100a 第一部材
100b 第二部材
11 フランジ部
12 貫通孔
18 ボルト
19 ナット
2 溝部
2a 溝底面
2b 下面
3 リング
3a 切欠き部
30 リング本体
30a 外面
30b 内面
39 切欠き部
4 弾性部
49 切欠き部
4a 下面
8 板部
82 ボルト穴
89 ボルト
8a 板
8b 板
9 管路
90 管継手
91 短管
92 短管
99 連結部
99A 固定側連結部
99B 移動側連結部
G 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14