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特開2022-184467混合体、電気化学デバイス用電極、及び電気化学デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184467
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】混合体、電気化学デバイス用電極、及び電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20221206BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221206BHJP
   C07C 275/14 20060101ALI20221206BHJP
   C07C 311/48 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
C07C275/14
C07C311/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092338
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀之
(72)【発明者】
【氏名】森 秀晴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 有悟
【テーマコード(参考)】
4H006
5H050
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB80
5H050AA01
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050DA09
5H050DA13
5H050EA11
5H050EA22
5H050EA23
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】室温で液体状の新規な混合体を提供すること。
【解決手段】リチウム塩と、下記一般式(1)で表される化合物とを含む、混合体。


[式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又は置換アミノ基を示す。R及びRは、それぞれ独立にアルキル基を示す。R及びR並びにR及びRは、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。Rは、アルキレン基を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩と、下記一般式(1)で表される化合物とを含む、混合体。
【化1】

[式(1)中、
及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又は置換アミノ基を示す。
及びRは、それぞれ独立にアルキル基を示す。
及びR並びにR及びRは、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
は、アルキレン基を示す。]
【請求項2】
前記R及び前記Rが置換アミノ基である、請求項1に記載の混合体。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の混合体。
【化2】

[式(3)中、
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基を示す。
は、炭素原子数1~4のアルキレン基を示す。]
【請求項4】
前記リチウム塩がリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド又はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである、請求項1~3のいずれか一項に記載の混合体。
【請求項5】
集電体と、前記集電体の少なくとも一方の主面上に設けられた電極合剤層とを備え、
前記電極合剤層が、電極活物質と、電解質塩と、請求項1~4のいずれか一項に記載の混合体とを含有する、電気化学デバイス用電極。
【請求項6】
請求項5に記載の電気化学デバイス用電極を備える、電気化学デバイス。
【請求項7】
二次電池である、請求項6に記載の電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、混合体、電気化学デバイス用電極、及び電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たな有機材料又は有機流体として、水素結合供与体と水素結合受容体との共融混合体が注目されている。共融混合体は、共融(共晶)によって水素結合供与体及び水素結合受容体の融点よりも低い融点を示す性質を有するものであり、室温付近で液体であるものは深共晶溶媒(Deep Eutectic Solvent)とも呼ばれる。共融混合体は、その組み合わせによって物性を調整できることから、研究開発が活発に行われている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-538405号公報
【特許文献2】特表2016-534958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、室温で液体状である新規な混合体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らの検討によると、リチウム塩と一般式(1)で表される化合物とを混合することによって、室温において液体状の混合体が得られることが見出された。
【0006】
本開示の一側面は、混合体に関する。当該混合体は、リチウム塩と、下記一般式(1)で表される化合物とを含む。
【化1】

[式(1)中、
及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又は置換アミノ基を示す。
及びRは、それぞれ独立にアルキル基を示す。
及びR並びにR及びRは、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
は、アルキレン基を示す。]
【0007】
及びRは、置換アミノ基であってよい。
【0008】
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(3)で表される化合物であってよい。
【化2】

[式(3)中、
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基を示す。
は、炭素原子数1~4のアルキレン基を示す。]
【0009】
リチウム塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド又はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであってよい。
【0010】
本開示の他の一側面は、電気化学デバイス用電極に関する。当該電気化学デバイス用電極は、集電体と、前記集電体の少なくとも一方の主面上に設けられた電極合剤層とを備える。電極合剤層は、電極活物質と、電解質塩と、上記の混合体とを含有する。
【0011】
本開示の他の一側面は、電気化学デバイスに関する。当該電気化学デバイスは、上記の電気化学デバイス用電極を備える。当該電気化学デバイスは、二次電池であってよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、室温で液体状である新規な混合体が提供される。また、本開示によれば、このような混合体を用いた電気化学デバイス用電極及び電気化学デバイス用電極が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係る電気化学デバイスを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す電気化学デバイスの電極群を示す分解斜視図である。
図3図3(a)は、一実施形態に係る電気化学デバイス用電極(正極)を説明するための図2のI-I線矢視断面図であり、図3(b)は、他の実施形態に係る電気化学デバイス用電極(正極)を示す模式断面図である。
図4図4(a)は、一実施形態に係る電気化学デバイス用電極(負極)を説明するための図2のII-II線矢視断面図であり、図4(b)は、他の実施形態に係る電気化学デバイス用電極(負極)を示す模式断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係る電気化学デバイスの電極群を示す分解斜視図である。
図6図6(a)は、他の実施形態に係る電気化学デバイス用電極(バイポーラ電極)を説明するための図2のIII-III線矢視断面図であり、図6(b)は、他の実施形態に係る電気化学デバイス用電極(バイポーラ電極)を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0015】
本明細書における数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0016】
本明細書中、「電極」とは、正極又は負極を意味する。電極集電体、電極合剤層、電極活物質、電極活物質層、電極前駆体等の他の類似の表現においても同様である。
【0017】
本明細書中、略称として以下を用いる場合がある。
[Nf2]:ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン
[NTf2]:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン
[f3C]:トリス(フルオロスルホニル)カルボアニオン
[BOB]:ビスオキサレートボラートアニオン
【0018】
本明細書中、「室温」は25℃を意味する。
【0019】
[混合体]
一実施形態の混合体は、リチウム塩と、一般式(1)で表される化合物とを含む。リチウム塩及び一般式(1)で表される化合物は、通常、室温で固体である。本発明者らの検討によると、リチウム塩と一般式(1)で表される化合物とを混合することによって、室温において液体状の混合体が得られることが見出された。混合体におけるリチウム塩と一般式(1)で表される化合物との相互作用は必ずしも定かではないが、一般式(1)で表される化合物のカルボニル基の酸素原子がリチウム塩のリチウムカチオンと強く相互作用していると推測される。本発明者らは、この相互作用によって、液体状化が発現していると考えている。本実施形態の混合体は、イオン液体、共融混合体(深共晶溶媒)等において発現する性質と同様の性質を有することが期待される。また、リチウム塩の種類、一般式(1)で表される化合物の種類、両者の組み合わせの割合(モル比)等を調整することによって、物性を調整することが可能となる。
【0020】
(リチウム塩)
リチウム塩は、LiPF、LiBF、Li[Nf2]、Li[NTf2]、Li[f3C]、Li[BOB]、LiClO、LiBF(CF)、LiBF(C)、LiBF(C)、LiBF(C)、LiC(SOCF、LiCFSOO、LiCFCOO、LiRCOO(Rは、炭素原子数1~4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)等であってよい。これらの中でも、リチウム塩は、熱的若しくは電気化学的な安定性及び解離性の観点から、Li[Nf2]又はLi[NTf2]であってよい。解離性の高いリチウム塩を用いることによって、本実施形態の混合体のイオン伝導度を高めることができるとともに、より低温の環境でも液体状化を維持できることが期待される。リチウム塩は、市販品を用いることができる。
【0021】
(一般式(1)で表される化合物)
【化3】

[式(1)中、
及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又は置換アミノ基を示す。
及びRは、それぞれ独立にアルキル基を示す。
及びR並びにR及びRは、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
は、アルキレン基を示す。]
【0022】
及びRのアルキル基としては、例えば、直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。アルキル基の炭素原子数は、1~10、1~8、1~6、1~4、又は1~2であってよい。アルキル基は、例えば、メチル基であってよい。
【0023】
及びRの置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ジシクロアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基が挙げられる。置換アミノ基は、例えば、ジアルキルアミノ基であってよい。ジアルキルアミノ基におけるアルキル基としては、R及びRのアルキル基と同様のものが例示できる。アルキル基の炭素原子数は、1~10、1~8、1~6、1~4、又は1~2であってよい。ジアルキルアミノ基の具体例としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基等が挙げられる。ジアルキルアミノ基は、例えば、ジメチルアミノ基であってよい。
【0024】
及びRは、同一であっても異なっていてもよいが、化合物の合成の観点から、同一であることが好ましい。R及びRは、化合物の還元安定性の観点から、置換アミノ基であってよい。
【0025】
及びRのアルキル基としては、R及びRのアルキル基と同様のものが例示できる。アルキル基の炭素原子数は、1~10、1~8、1~6、1~4、又は1~2であってよい。アルキル基は、例えば、メチル基であってよい。R及びRは、同一であっても異なっていてもよいが、化合物の合成の観点から、同一であることが好ましい。
【0026】
のアルキレン基としては、例えば、直鎖状、分岐状、又は環状のアルキレン基が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、デカニレン基、ドデカニレン基等が挙げられる。アルキル基の炭素原子数は、1~20、1~16、1~12、1~8、又は1~4であってよい。アルキレン基は、例えば、エチレン基であってよい。
【0027】
及びR並びにR及びRは、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。当該環は、4員環、5員環、又は6員環であってよく、5員環であってもよい。R及びRが置換アミノ基である場合において、このような環を形成している化合物としては、例えば、一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【化4】

[式(2)中、
n1及びn2は、それぞれ独立に1~3の整数を示す。
は、上記と同義である。
及びRは、それぞれ独立にアルキル基を示す。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す。複数存在するRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。複数存在するRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0029】
n1及びn2は、1~3であり、2~3であってよく、2であってもよい。すなわち、形成されている環は、4員環、5員環、又は6員環であり、5員環又は6員環であってよく、5員環であってもよい。n1及びn2は、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0030】
及びRのアルキル基としては、R及びRのアルキル基と同様のものが例示できる。アルキル基の炭素原子数は、1~10、1~8、1~6、1~4、又は1~2であってよい。アルキル基は、例えば、メチル基であってよい。R及びRは、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0031】
及びRのアルキル基としては、R及びRのアルキル基と同様のものが例示できる。アルキル基の炭素原子数は、1~10、1~8、1~6、1~4、又は1~2であってよい。
【0032】
複数存在するRは、それぞれ同一であることが好ましい。複数存在するRは、それぞれ同一であることが好ましい。R及びRは、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。R及びRは、水素原子であってよい。
【0033】
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(3)で表される化合物であってよい。
【0034】
【化5】

[式(3)中、
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基を示す。
は、炭素原子数1~4のアルキレン基を示す。]
【0035】
、R、R、R、R、及びRのアルキル基は、例えば、直鎖状又は分岐状の炭素原子数1~4のアルキル基であってよく、メチル基であってよい。R、R、R、R、R、及びRは、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0036】
のアルキレン基は、例えば、直鎖状又は分岐状の炭素原子数1~4のアルキレン基であってよく、メチル基又はエチレン基であってよく、エチレン基であってもよい。
【0037】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、下記一般式(4)で表される化合物と、下記一般式(5)で表される化合物及び下記一般式(6)で表される化合物とを反応させることによって得ることができる。当該反応は、必要に応じて、塩基存在下で行ってもよい。
【0038】
【化6】
【0039】
一般式(1)で表される化合物において、R及びRとして同じ基を導入する場合、一般式(4)で表される化合物と、当該化合物に対して2倍モル量程度(又はそれ以上)の一般式(5)で表される化合物とを反応させることによって、所望の一般式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0040】
塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン等のアミン類、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩などが挙げられる。塩基の添加量は、特に制限されないが、一般式(4)で表される化合物に対して、2倍モル量以上であってよい。
【0041】
一般式(1)で表される化合物において、R及びRとして異なる基を導入する場合、一般式(4)で表される化合物と、当該化合物に対して等モル(1倍モル)量程度の一般式(5)で表される化合物とを反応させ、下記一般式(7)で表される中間体を得る。このとき、塩基の添加量は、特に制限されないが、一般式(4)で表される化合物に対して、等モル(1倍モル)量程度であってよい。次いで、一般式(7)で表される中間体に対して等モル(1倍モル)量程度の一般式(6)で表される化合物を加えて反応させることによって、所望の一般式(1)で表される化合物を得ることができる。このとき、塩基の添加量は、特に制限されないが、一般式(7)で表される化合物に対して、等モル(1倍モル)量程度であってよい。
【0042】
【化7】
【0043】
一般式(1)で表される化合物を合成するときの反応条件は、用いる原料に合わせて適宜選択することができる。反応条件としては、例えば、無溶媒又は溶媒存在下、-30~200℃の反応温度で0.5~48時間の反応時間で撹拌することが挙げられる。溶媒は、原料、反応条件等に合わせて、一般の有機合成で使用される有機溶媒、水、含水有機溶媒等を適宜選択することができる。
【0044】
本実施形態の混合体は、リチウム塩と、一般式(1)で表される化合物とを混合することによって得ることができる。
【0045】
リチウム塩と一般式(1)で表される化合物とを混合する際の、リチウム塩に対する一般式(1)で表される化合物のモル比(一般式(1)で表される化合物のモル/リチウム塩のモル)は、所定の混合体が得られ易いことから、1~20であってよい。リチウム塩に対する一般式(1)で表される化合物のモル比は、1.5以上、2以上、2.5以上、3以上、4以上、又は5以上であってもよく、18以下、15以下、12以下、又は10以下であってもよい。得られる混合体における、リチウム塩に対する一般式(1)で表される化合物のモル比(一般式(1)で表される化合物のモル/リチウム塩のモル)は、上記のリチウム塩と一般式(1)で表される化合物とを混合する際のモル比と同様であってよい。
【0046】
混合体を合成する際には、必要に応じて、加熱しながら混合してもよい。反応温度は、例えば、25~200℃であってよい。
【0047】
混合体は、リチウム塩と、一般式(1)で表される化合物とからなるものであってもよいが、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、炭酸ビニレン、炭酸フルオロエチレン、1,3-プロパンスルトン、スクシノニトリル等の二次電池用の添加剤等が挙げられる。
【0048】
このようにして、本実施形態の混合体を得ることができる。本実施形態の混合体は、イオン伝導性、難燃性、難揮発性、耐高温分解性等の点で優れることが期待される。本実施形態の混合体は、例えば、電気化学デバイス(二次電池)の電極合剤層における電極活物質と電解質塩との界面形成に好適に用いることができる。
【0049】
[電気化学デバイス用電極及び電気化学デバイス]
<電気化学デバイス(第1実施形態)>
図1は、第1実施形態に係る電気化学デバイスを示す斜視図である。電気化学デバイスは、例えば、二次電池であってよい。以下、二次電池の態様について説明する。
【0050】
図1に示すように、二次電池1は、電気化学デバイス用電極及びセパレータから構成される電極群2と、電極群2を収容する袋状の電池外装体3と、電池外装体3内に注入される電解液(図示せず)とを備えている。電気化学デバイス用電極は、正極であってもよく、負極であってもよい。電気化学デバイス用電極(正極及び負極)には、それぞれ正極集電タブ4及び負極集電タブ5が設けられている。正極集電タブ4及び負極集電タブ5は、それぞれ正極及び負極が二次電池1の外部と電気的に接続可能なように、電池外装体3の内部から外部へ突き出している。
【0051】
電池外装体3は、例えば、ラミネートフィルムで形成されていてもよい。ラミネートフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムと、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属箔と、ポリプロピレン等のシーラント層とがこの順で積層された積層フィルムであってもよい。
【0052】
図2は、図1に示す二次電池1における電極群2の一実施形態を示す分解斜視図である。図2に示すように、電極群2Aは、正極6と、セパレータ7と、負極8とをこの順に備えている。正極6は、正極集電体9と、正極集電体9の少なくとも一方の主面上に設けられた正極合剤層10とを備えている。正極集電体9には、正極集電タブ4が設けられている。負極8は、負極集電体11と、負極集電体11の少なくとも一方の主面上に設けられた負極合剤層12とを備えている。負極集電体11には、負極集電タブ5が設けられている。
【0053】
<電気化学デバイス用電極(第1の電気化学デバイス用電極)>
図3(a)は、図2のI-I線矢印断面図である。正極6は、第1の電気化学デバイス用電極を構成する。すなわち、図3(a)に示すように、第1の電気化学デバイス用電極13Aは、正極集電体9と、正極集電体9の少なくとも一方の主面上に設けられた正極合剤層10とを備える。
【0054】
図3(b)は、他の実施形態に係る第1の電気化学デバイス用電極を示す模式断面図である。図3(b)に示すように、第1の電気化学デバイス用電極13Bは、正極集電体9と、正極合剤層10と、セパレータ7とをこの順に備えている。
【0055】
正極集電体9は、アルミニウム、チタン、タンタル等の金属、又はそれらの合金で形成されていてよい。正極集電体9は、軽量で高い重量エネルギー密度を有するため、好ましくはアルミニウム又はその合金で形成されている。
【0056】
正極集電体9の厚さは、1μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよい。正極集電体9の厚さは、100μm以下、50μm以下、又は20μm以下であってよい。
【0057】
正極合剤層10は、一実施形態において、正極活物質と、電解質塩と、上記の混合体とを含有する。
【0058】
正極活物質は、例えば、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属リン酸塩等のリチウム遷移金属化合物であってよい。
【0059】
リチウム遷移金属酸化物は、例えば、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム等であってよい。リチウム遷移金属酸化物は、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム等に含有されるMn、Ni、Co等の遷移金属の一部を、1種若しくは2種以上の他の遷移金属、又はMg、Al等の金属元素(典型元素)で置換したリチウム遷移金属酸化物であってもよい。すなわち、リチウム遷移金属酸化物は、LiM又はLiM (Mは少なくとも1種の遷移金属を含む)で表される化合物であってよい。リチウム遷移金属酸化物は、具体的には、Li(Co1/3Ni1/3Mn1/3)O、LiNi1/2Mn1/2、LiNi1/2Mn3/2等であってよい。
【0060】
リチウム遷移金属酸化物は、エネルギー密度を更に向上させる観点から、好ましくは下記式(1)で表される化合物である。
LiNiCo 2+e (A)
[式(A)中、Mは、Al、Mn、Mg及びCaからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、a、b、c、d、及びeは、それぞれ0.2≦a≦1.2、0.5≦b≦0.9、0.1≦c≦0.4、0≦d≦0.2、-0.2≦e≦0.2、かつb+c+d=1を満たす数である。]
【0061】
リチウム遷移金属リン酸塩は、LiFePO、LiMnPO、LiMn 1-xPO(0.3≦x≦1、MはFe、Ni、Co、Ti、Cu、Zn、Mg、及びZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である)等であってよい。
【0062】
正極活物質の含有量は、正極合剤層全量を基準として、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。正極活物質の含有量は、正極合剤層全量を基準として、99質量%以下であってよい。
【0063】
電解質塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0064】
電解質塩のアニオンは、ハロゲン化物イオン(I、Cl、Br等)、SCN、BF 、BF(CF、BF(C、PF 、ClO 、SbF 、[Nf2]、[NTf2]、N(SO 、BPh 、B(C 、[f3C]、C(CFSO 、CFCOO、CFSO、CSO、[BOB]等であってよい。これらの中でも、電解質塩のアニオンは、好ましくはPF 、BF 、[Nf2]、[NTf2]、[BOB]、及びClO からなる群より選ばれる少なくとも1種、より好ましくは[NTf2]又は[Nf2]である。
【0065】
リチウム塩としては、上記混合体におけるリチウム塩と同様のものが例示できる。リチウム塩は、LiPF、LiBF、Li[Nf2]、Li[NTf2]、Li[f3C]、Li[BOB]、LiClO、LiBF(CF)、LiBF(C)、LiBF(C)、LiBF(C)、LiC(SOCF、LiCFSOO、LiCFCOO、LiRCOO(Rは、炭素原子数1~4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)等であってよい。
【0066】
ナトリウム塩は、NaPF、NaBF、Na[Nf2]、Na[NTf2]、Na[f3C]、Na[BOB]、NaClO、NaCFBF、NaCBF、NaCBF、NaCBF、Na[C(SOCF]、NaCFSO、NaCFCOO、及びNaRCOO(Rは、炭素原子数1~4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0067】
カルシウム塩は、Ca(PF、Ca(BF、Ca[Nf2]、Ca[NTf2]、Ca[f3C]、Ca[BOB]、Ca(ClO、Ca(CFBF、Ca(CBF、Ca(CBF、Ca(CBF、Ca[C(SOCF、Ca(CFSO、Ca(CFCOO)、及びCa(RCOO)(Rは、炭素原子数1~4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0068】
マグネシウム塩は、Mg(PF、Mg(BF、Mg[Nf2]、Mg[NTf2]、Mg[f3C]、Mg[BOB]、Mg(ClO、Mg(CFBF、Mg(CBF、Mg(CBF、Mg(CBF、Mg[C(SOCF、Mg(CFSO、Mg(CFCOO)、及びMg(RCOO)(Rは、炭素原子数1~4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0069】
これらの中でも、解離性及び電気化学的安定性の観点から、電解質塩は、好ましくはリチウム塩、より好ましくはLiPF、LiBF、Li[Nf2]、Li[NTf2]、Li[f3C]、Li[BOB]、及びLiClOからなる群より選ばれる少なくとも1種、さらに好ましくはLi[NTf2]又はLi[Nf2]である。
【0070】
電解質塩の含有量は、例えば、正極合剤層全量を基準として、0.1~5質量%であってよい。
【0071】
正極合剤層10は、上記の混合体を含有する。混合体の含有量は、例えば、正極合剤層全量を基準として、0.1~10質量%であってよい。
【0072】
正極合剤層10は、導電剤、バインダ、溶融塩、炭酸エステル等をさらに含有していてもよい。
【0073】
導電剤は、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック等であってよい。
【0074】
導電剤の含有量は、例えば、正極合剤層全量を基準として、1~15質量%であってよい。
【0075】
バインダは、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシ・メチルセルロース、フッ素ゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリアクリル酸、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂;これら樹脂を主骨格として有する共重合体の樹脂(例えば、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体等)などであってよい。
【0076】
バインダの含有量は、例えば、正極合剤層全量を基準として、1~15質量%であってよい。
【0077】
溶融塩は、カチオン成分とアニオン成分とから構成されるものである。溶融塩は、特に制限されずに、通常のイオン液体又は柔粘性結晶(プラスチッククリスタル)を使用することができる。なお、ここでいう「溶融塩」には、上記の混合体は包含されない。
【0078】
本明細書において、「イオン液体」は、30℃で液体である溶融塩、すなわち、融点が30℃以下である溶融塩を意味し、「柔粘性結晶」は30℃で固体である溶融塩、すなわち、融点が30℃より高い溶融塩を意味する。
【0079】
溶融塩の含有量は、例えば、正極合剤層全量を基準として、1~15質量%であってよい。
【0080】
炭酸エステルとしては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の環状炭酸エステル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の鎖状炭酸エステルなどが挙げられる。
【0081】
炭酸エステルの含有量は、例えば、正極合剤層全量を基準として、1~15質量%であってよい。
【0082】
正極合剤層10の厚さは、特に制限されないが、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってよい。正極合剤層10の厚さは、100μm以下、80μm以下、又は60μm以下であってよい。
【0083】
正極合剤層10の合剤密度は、例えば、1g/cm以上であってよい。
【0084】
セパレータ7は、正極と負極との間に介在するように設けられ、正極と負極とを絶縁するものである。セパレータは、正極側における酸化耐性及び負極側における還元耐性を備えるものであれば特に制限されず、通常の電解液型のイオン電池の分野でセパレータとして使用されるものを用いることができる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン多孔質膜;ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、ガラス繊維、セルロース繊維、ポリイミド繊維等の不織布などが挙げられる。
【0085】
電解液は、通常の電解液型のイオン電池の分野で電解液として使用されるものを用いることができる。電解液は、例えば、非水溶媒と、電解質塩とを含んでいてもよい。電解液は、溶融塩、上記混合体等をさらに含んでいてもよい。また、電解液として、混合体を含む電解液を用いることができる。混合体を含む電解液は、混合体のみから構成される電解液であってもよく、混合体と電解質塩とを含む電解液であってもよい。
【0086】
非水溶媒は、例えば、炭酸エステルであってよい。炭酸エステルとしては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ビニレン等の環状炭酸エステル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の鎖状炭酸エステルなどが挙げられる。
【0087】
電解質塩としては、正極合剤層10に含有され得る電解質塩と同様のものが例示できる。溶融塩としては、正極合剤層10に含有され得る溶融塩と同様のものが例示できる。
【0088】
<電気化学デバイス用電極(第2の電気化学デバイス用電極)>
図4(a)は、図2のII-II線矢印断面図である。負極8は、第2の電気化学デバイス用電極を構成する。すなわち、図4(a)に示すように、第2の電気化学デバイス用電極14Aは、負極集電体11と、負極集電体11の少なくとも一方の主面上に設けられた負極合剤層12とを備える。
【0089】
図4(b)は、他の実施形態に係る第2の電気化学デバイス用電極を示す模式断面図である。図4(b)に示すように、第2の電気化学デバイス用電極14Bは、負極集電体11と、負極合剤層12と、セパレータ7とをこの順に備えている。セパレータ7は、上記の第1の電気化学デバイス用電極におけるセパレータ7と同様であるので、以下では説明を省略する。
【0090】
負極集電体11は、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス等の金属、それらの合金などであってよい。負極集電体11は、軽量で高い重量エネルギー密度を有するため、好ましくはアルミニウム及びその合金である。負極集電体11は、薄膜への加工のし易さ及びコストの観点から、好ましくは銅である。
【0091】
負極集電体11の厚さは、1μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよい。
負極集電体11の厚さは、100μm以下、50μm以下、又は20μm以下であってよい。
【0092】
負極合剤層12は、一実施形態において、負極活物質と、電解質塩と、上記の混合体とを含有する。
【0093】
負極活物質は、二次電池等の通常のエネルギーデバイスの分野の負極活物質として使用されるものを使用することができる。負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウム合金、金属化合物、炭素材料、金属錯体、有機高分子化合物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用していてもよい。これらの中でも、負極活物質は、炭素材料であることが好ましい。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人工黒鉛等の黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、非晶質炭素、炭素繊維などが挙げられる。
【0094】
負極活物質の含有量は、負極合剤層全量を基準として、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上であってよい。負極活物質の含有量は、負極合剤層全量を基準として、99質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0095】
電解質塩としては、正極合剤層10の電解質塩と同様のものが例示できる。電解質塩の含有量は、例えば、負極合剤層全量を基準として、0.1~5質量%であってよい。
【0096】
負極合剤層12は、上記の混合体を含有する。混合体の含有量は、例えば、負極合剤層全量を基準として、0.1~10質量%であってよい。
【0097】
負極合剤層12は、上記の正極合剤層10に含有され得る導電剤、バインダ、溶融塩、炭酸エステル等をさらに含有していてもよい。これらの含有量は、正極合剤層10と同様であってよい。
【0098】
負極合剤層12の厚さは、特に制限されないが、10μm以上、15μm以上、又は20μm以上であってもよい。負極合剤層12の厚さは、50μm以下、45μm以下、又は40μm以下であってよい。
【0099】
負極合剤層12の合剤密度は、1g/cm以上であってよい。
【0100】
続いて、上記の二次電池1の製造方法について説明する。第1実施形態に係る二次電池1の製造方法は、第1の電気化学デバイス用電極13A(正極6)を製造する第1の工程と、第2の電気化学デバイス用電極14A(負極8)を製造する第2の工程と、第1の電気化学デバイス用電極13A(正極6)と第2の電気化学デバイス用電極14A(負極8)との間にセパレータ7を配置し、電解液を注入して二次電池(二次電池の電池外装体)を封止する第3の工程とを備える。
【0101】
上記の第1の工程における第1の電気化学デバイス用電極13A(正極6)の製造方法は、正極集電体の少なくとも一方の主面上に正極活物質を含む正極活物質層が設けられた正極前駆体を用意する工程と、正極前駆体の正極活物質層に、電解質塩、混合体等と、分散媒とを含有するスラリを加える工程と、正極活物質層に加えられたスラリから揮発成分を除去して、正極合剤層を形成する工程とを備える。正極合剤層は、揮発成分(分散媒)が除去されることから、正極活物質、電解質塩、混合体等で構成され得る。
【0102】
正極前駆体における正極活物質層は、例えば、正極活物質、導電剤、バインダ等を含む材料を分散媒に分散させた正極活物質層形成用スラリを調製し、当該正極活物質層形成用スラリを正極集電体9に塗布・乾燥することによって作製することができる。分散媒は、特に制限されないが、水、アルコールと水との混合溶媒等の水系溶剤、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤であってよい。
【0103】
次いで、電解質塩、混合体、溶融塩等を含む材料を分散媒に分散させたスラリ(正極合剤層形成用スラリ)を調製し、当該スラリを正極活物質層に加える。スラリを加える方法としては、特に制限されず、滴下、塗布、印刷等が挙げられる。分散媒は、特に制限されないが、アセトン、エチルメチルケトン、γ-ブチロラクトン等であってよい。
【0104】
その後、正極活物質層に加えられたスラリから揮発成分を除去して、正極合剤層10を形成する。揮発成分を除去する方法としては、特に制限されず、通常用いられる方法で行うことができる。
【0105】
第2の工程における第2の電気化学デバイス用電極14A(負極8)は、上記の第1の工程における第1の電気化学デバイス用電極13A(正極6)と同様の製造方法によって作製することができる。すなわち、第2の電気化学デバイス用電極14A(負極8)の製造方法は、負極集電体の少なくとも一方の主面上に負極活物質を含む負極活物質層が設けられた負極前駆体を用意する工程と、負極前駆体の負極活物質層に、電解質塩、混合体等と、分散媒とを含有するスラリを加える工程と、負極活物質層に加えられたスラリから揮発成分を除去して、負極合剤層を形成する工程とを備える。負極合剤層は、揮発成分(分散媒)が除去されることから、負極活物質、電解質塩、混合体等で構成され得る。
【0106】
第3の工程において、第1の電気化学デバイス用電極13A(正極6)と第2の電気化学デバイス用電極14A(負極8)との間にセパレータ7を配置し、電解液を注入して二次電池(二次電池の電池外装体)を封止することによって、二次電池1を得ることができる。電解液を注入した後において、減圧環境下で電解液を、第1の電気化学デバイス用電極13A(正極6)、第2の電気化学デバイス用電極14A(負極8)、及びセパレータ7に浸漬する工程を備えてもよい。
【0107】
<電気化学デバイス(第2実施形態)>
次に、第2実施形態に係る二次電池について説明する。図5は、第2実施形態に係る二次電池の電極群を示す分解斜視図である。図5に示すように、第2実施形態における二次電池が第1実施形態における二次電池と異なる点は、電極群2Bが、バイポーラ電極15をさらに備えている点である。すなわち、電極群2Bは、正極6と、第1のセパレータ7Aと、バイポーラ電極15と、第2のセパレータ7Bと、負極8とをこの順に備えている。なお、液体の電解液を用いる場合には、第2実施形態に係る二次電池においては、バイポーラ電極15の正極6と負極8との間の電解液の移動(液絡)を抑制するための二次電池の構造上の工夫が必要である。また、第2実施形態に係る二次電池においては、液絡(短絡)の観点から、第1のセパレータ7A、第2のセパレータ7B、及び電解液に代えて、ゲル状又は固形状の電解質層を用いることが好ましい。このような電解質層としては、例えば、電解液をゲル化したゲル電解質、後述の固体電解質等が挙げられる。
【0108】
バイポーラ電極15は、バイポーラ電極集電体16と、バイポーラ電極集電体16の負極8側の面に設けられた正極合剤層10と、バイポーラ電極集電体16の正極6側の面に設けられた負極合剤層12とを備えている。
【0109】
図6(a)は、図5のIII-III線矢視断面図である。バイポーラ電極15は、第3の電気化学デバイス用電極を構成する。すなわち、図6(a)に示すように、第3の電気化学デバイス用電極17Aは、バイポーラ電極集電体16と、バイポーラ電極集電体16の一方の面上に設けられた正極合剤層10と、バイポーラ電極集電体16の他方の面上に設けられた負極合剤層12とを備えるバイポーラ電極部材である。
【0110】
図6(b)は、他の実施形態に係る第3の電気化学デバイス用電極(バイポーラ電極部材)を示す模式断面図である。図6(b)に示すように、第3の電気化学デバイス用電極17Bは、バイポーラ電極集電体16と、バイポーラ電極集電体16の一方の面上に設けられた正極合剤層10と、正極合剤層10のバイポーラ電極集電体16と反対側に設けられた第2のセパレータ7Bと、バイポーラ電極集電体16の他方の面上に配置された負極合剤層12と、負極合剤層12のバイポーラ電極集電体16と反対側に配置された第1のセパレータ7Aとを備えている。
【0111】
バイポーラ電極集電体16は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等であってよく、アルミニウムと銅又はステンレス鋼と銅とを圧延接合してなるクラッド材等であってよい。
【0112】
第1のセパレータ7Aと第2のセパレータ7Bとは、互いに同種であっても異種であってもよい。
【0113】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、電気化学デバイス用電極及びセパレータから構成される電極群と、電解液とを備える二次電池を例示したが、二次電池は、電気化学デバイス用電極及び電解質層から構成される電極群を備えるものであってもよい。
【0114】
電解質層は、例えば、固体電解質、電解質塩、溶融塩、上記の混合体等を含む材料を分散媒に分散させた電解質層形成用スラリから形成することができる。分散媒は、特に制限されないが、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤であってもよい。
【0115】
固体電解質としては、例えば、ポリマ電解質、無機固体電解質等が挙げられる。ポリマ電解質及び無機固体電解質は、特に制限されず、通常の二次電池用のポリマ電解質及び無機固体電解質として使用されるものを用いることができる。ポリマ電解質は、例えば、下記一般式(B)で表される構造単位を有するポリマ電解質等であってよい。
【0116】
【化8】

[式(C)中、X は、対アニオンを示す。]
【0117】
の対アニオンとしては、上記の電解質塩のアニオンと同様のものが例示できる。
【0118】
無機固体電解質は、例えば、LiLaZr12(LLZ)等であってよい。
【0119】
電解質塩及び溶融塩としては、上述した正極合剤層に含有され得る電解質塩及び溶融塩と同様のものが例示できる。
【0120】
電解質層形成用スラリは、必要に応じて、ホウ酸エステル、アルミン酸エステル等のリチウム塩解離能を有する添加剤などをさらに含有していてもよい。
【0121】
電解質層の厚さは、強度を高め安全性を向上させる観点から、例えば、5~200μmであってよい。
【実施例0122】
以下、実施例により本開示をさらに具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0123】
(製造例1)
<N,N’-ジメチル-N,N’-ビス(ジメチルアミノカルボニル)エチレンジアミン(化合物(1A)、R、R、R、R、R、及びRがメチル基であり、Rがエチレン基である、一般式(3)で表される化合物)の合成>
氷浴上で窒素置換したナスフラスコに、ジクロロメタン(42mL)、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(1.11g、12.6mmol)、及びトリエチルアミン(3.82g、37.8mmol)を加えた。次いで、氷浴上でナスフラスコに、ジメチルカルバモイルクロライド(1.49g、13.86mmol)を滴下し、1時間撹拌した。その後、室温で24時間撹拌した。その後、得られた溶液をろ過し、ろ過した溶液を重曹水とともに分液し、炭酸ナトリウムで不要な水分を除去して黄色液体を得た。黄色液体を、エバポレーターを用いて溶媒を除去することによって、白色固体として、化合物1A(0.72g)を得た。得られた化合物のH-NMRを以下に示す。
【0124】
H-NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)3.37(s,4H),2.86(s,6H),2.77(s,12H).
【0125】
(実施例1-1)
<混合体の合成>
Li[NTf2]を準備した。サンプル瓶に、Li[NTf2]に対する化合物(1A)のモル比が5となるように、Li[NTf2]及び化合物(1A)を加えた。サンプル瓶のキャップを閉め、サンプル瓶をホットプレート上で、100℃で2時間加熱したところ、液体状態にある実施例1の混合体を得た。混合体は、室温で2時間放置しても、液体のままであった。
【0126】
<混合体のイオン伝導度の測定>
シリコンゴムシート(アズワン株式会社製、厚さ1mm)をφ16mmで打ち抜き、φ16mmで打ち抜いたシリコンゴムをさらにφ10mmで打ち抜くことによってドーナツ状の試料固定用シリコンゴムを得た。試料固定用シリコンゴムをSUS板上に貼り付け、試料固定用シリコンゴム内に25℃で液体であった実施例1の混合体を配置した。次いで、混合体を60℃で24時間減圧乾燥し、さらに露点-90℃以下のアルゴン雰囲気下で24時間静置することによって水分を除去した。その後、試料固定用シリコンゴムにφ16mmのSUS板を被せ、2極セル(東洋システム株式会社製)内に封入することによって、イオン伝導度測定用セルを作製した。なお、イオン伝導度測定用セルの組み立ては露点-90℃以下のアルゴン雰囲気下のグローブボックス中で実施した。イオン伝導度の測定は、ポテンショガルバノスタット1287型が接続された周波数応答アナライザ1260型(それぞれSolartron社製)を用い、70℃、55℃、40℃、又は25℃で2MHz~1Hzの範囲で掃引することによって行った。ナイキストプロットにおける実軸との交点の値を電解質のバルク抵抗とし、下記数式(X)に基づき、実施例1の混合体のイオン伝導度を算出した。結果を表1に示す。
【0127】
【数1】
【0128】
式(X)中、σはイオン伝導度(S/cm)を示し、Rは電解質のバルク抵抗(Ω)を示し、Lは電極間距離(0.1cm)を示し、Sは電極面積(0.78cm)を示す。
【0129】
<混合体の10%重量減少温度(T(d10))の測定>
10%重量減少温度を示差熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツル株式会社製、TG/DTA7200)を用いて行った。アルミニウム製のパンに混合体を約10mg加え、200mL/分の窒素気流下、5℃/分の昇温速度で測定した。結果を表1に示す。なお、表1中の「-」は未測定であることを意味する。
【0130】
(実施例1-2)
Li[NTf2]に対する化合物(1A)のモル比が10となるように変更した以外は、実施例1-1と同様にして、液体状態にある実施例1-2の混合体を得た。混合体は、室温で2時間放置しても、液体のままであった。実施例1-2の混合体のイオン伝導度を実施例1-1と同様にして算出した。結果を表1に示す。
【0131】
(実施例2-1)
Li[NTf2]をLi[Nf2]に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、液体状態にある実施例2-1の混合体を得た。混合体は、室温で2時間放置しても、液体のままであった。実施例2-1の混合体のイオン伝導度を実施例1-1と同様にして算出した。結果を表1に示す。
【0132】
(実施例2-2)
Li[Nf2]に対する化合物(1A)のモル比が10となるように変更した以外は、実施例2-1と同様にして、液体状態にある実施例2-2の混合体を得た。混合体は、室温で2時間放置しても、液体のままであった。実施例2-2の混合体のイオン伝導度を実施例1-1と同様にして算出した。結果を表1に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
上記のとおり、本開示の混合体は、固体同士を混合してなるものであり、室温で液体状であることが確認された。表1に示すとおり、本開示の混合体は、イオン伝導性を有し、耐熱性を有していることが判明した。
【符号の説明】
【0135】
1…二次電池、2,2A,2B…電極群、3…電池外装体、4…正極集電タブ、5…負極集電タブ、6…正極、7…セパレータ、8…負極、9…正極集電体、10…正極合剤層、11…負極集電体、12…負極合剤層、13A,13B…第1の電気化学デバイス用電極、14A,14B…第2の電気化学デバイス用電極、15…バイポーラ電極、16…バイポーラ電極集電体、17A,17B…第3の電気化学デバイス用電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6