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特開2022-184515光走査装置、光走査装置の駆動方法、及び画像描画システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184515
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】光走査装置、光走査装置の駆動方法、及び画像描画システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20221206BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20221206BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20221206BHJP
   G09G 3/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/10 C
G02B26/08 E
B81B3/00
G09G3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092418
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】園田 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 慶一
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸也
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
3C081
5C080
【Fターム(参考)】
2H045AB06
2H045AB13
2H045AB24
2H045AB38
2H045AB44
2H045AB81
2H045BA14
2H141MA12
2H141MB24
2H141MC09
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD20
2H141MD24
2H141ME25
2H141MF12
2H141MG06
2H141MZ06
2H141MZ13
2H141MZ15
2H141MZ16
3C081AA01
3C081AA13
3C081BA22
3C081BA28
3C081BA33
3C081BA44
3C081BA47
3C081BA55
3C081BA76
3C081DA03
3C081DA24
3C081EA07
3C081EA11
3C081EA12
5C080CC02
5C080CC03
5C080JJ02
5C080JJ05
5C080JJ06
5C080JJ07
(57)【要約】
【課題】安定して画像を描画することができる光走査装置、光走査装置の駆動方法、及び画像描画システムを得る。
【解決手段】駆動制御部は、第1軸の周りにミラー部を揺動させる第1アクチュエータに第1駆動周波数を有する第1駆動信号を付与し、第1軸に交差する第2軸の周りにミラー部を揺動させる第2アクチュエータに第2駆動周波数を有する第2駆動信号を付与し、第1駆動周波数が第1軸周りの第1共振周波数未満となる第1アクチュエータの第1駆動条件を導出する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を反射する反射面を有するミラー部と、
前記ミラー部の静止時の前記反射面を含む平面内にある第1軸の周りに前記ミラー部を揺動させる第1アクチュエータと、
前記ミラー部の静止時の前記反射面を含む平面内であって前記第1軸に交差する第2軸の周りに前記ミラー部を揺動させる第2アクチュエータと、
少なくとも1つのプロセッサと、
を備える光走査装置であって、
前記プロセッサは、
前記第1アクチュエータに第1駆動周波数を有する第1駆動信号を付与し、
前記第2アクチュエータに第2駆動周波数を有する第2駆動信号を付与し、
前記第1駆動周波数が前記第1軸周りの第1共振周波数未満となる前記第1アクチュエータの第1駆動条件を導出する
光走査装置。
【請求項2】
前記ミラー部の前記第1軸周りの角度に応じた信号を出力する第1角度検出センサを更に備え、
前記プロセッサは、
前記第1角度検出センサの出力信号に基づいて、前記ミラー部の前記第1軸周りの第1角度を導出し、
前記第1駆動周波数及び前記第2駆動周波数のうちの前記第1駆動周波数のみを変更しながら前記第1駆動信号を前記第1アクチュエータに付与した場合における前記第1角度が最大となるときの前記第1駆動信号と前記第1角度検出センサの出力信号との位相差を第1基準値として取得し、
前記第1駆動信号と前記第1角度検出センサの出力信号との位相差が前記第1基準値未満となる前記第1駆動条件を導出する
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記第1基準値を、前記第1駆動信号を基準とした正の値として取得する
請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
画像の描画前の初期設定値として、
予め設定された前記第1駆動信号の駆動電圧において前記第1共振周波数未満となる前記第1駆動周波数を導出する
請求項2又は請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
画像の描画前に、前記初期設定値に基づいて前記第1アクチュエータを駆動させ、
前記第1角度が予め設定された範囲内の角度となり、かつ前記第1駆動周波数が前記第1共振周波数未満となる前記第1駆動条件を導出する処理を複数回繰り返す
請求項4に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
画像の描画中に、前記第1角度が予め設定された範囲内の角度となり、かつ前記第1駆動周波数が前記第1共振周波数未満となる前記第1駆動条件を導出する処理を複数回繰り返す
請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記第2駆動周波数が前記第2軸周りの第2共振周波数よりも大きくなる前記第2アクチュエータの第2駆動条件を導出する
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記ミラー部の前記第2軸周りの角度に応じた信号を出力する第2角度検出センサを更に備え、
前記プロセッサは、
前記第2角度検出センサの出力信号に基づいて、前記ミラー部の前記第2軸周りの第2角度を導出し、
前記第1駆動周波数及び前記第2駆動周波数のうちの前記第2駆動周波数のみを変更しながら前記第2駆動信号を前記第2アクチュエータに付与した場合における前記第2角度が最大となるときの前記第2駆動信号と前記第2角度検出センサの出力信号との位相差を第2基準値として取得し、
前記第2駆動信号と前記第2角度検出センサの出力信号との位相差が前記第2基準値よりも大きくなる前記第2駆動条件を導出する
請求項7に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記第2基準値を、前記第2駆動信号を基準とした正の値として取得する
請求項8に記載の光走査装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
画像の描画前の初期設定値として、
予め設定された前記第2駆動信号の駆動電圧において前記第2共振周波数よりも大きくなる前記第2駆動周波数を導出する
請求項8又は請求項9に記載の光走査装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、
画像の描画前に、前記初期設定値に基づいて第2アクチュエータを駆動させ、
前記第2角度が予め設定された範囲内の角度となり、かつ前記第2駆動周波数が前記第2共振周波数よりも大きくなる前記第2駆動条件を導出する処理を複数回繰り返す
請求項10に記載の光走査装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、
画像の描画中に、前記第2角度がそれぞれ予め設定された範囲内の角度となり、かつ前記第2駆動周波数が前記第2共振周波数よりも大きくなる前記第2駆動条件を導出する処理を複数回繰り返す
請求項11に記載の光走査装置。
【請求項13】
前記第1駆動周波数は、前記第2駆動周波数よりも高い
請求項1から請求項12の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項14】
前記第1駆動条件は、前記第1駆動周波数及び前記第1駆動信号の駆動電圧の少なくとも一方である
請求項1から請求項13の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項15】
前記第2駆動条件は、前記第2駆動周波数及び前記第2駆動信号の駆動電圧の少なくとも一方である
請求項7から請求項12の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項16】
前記第1角度検出センサは、前記第1軸又は前記第2軸を挟んで対向する位置に配置された一対の角度検出センサであり、
前記第1角度検出センサの出力信号は、一対の角度検出センサから出力された一対の出力信号を加算又は減算することにより得られる出力信号である
請求項2から請求項6の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項17】
前記第2角度検出センサは、前記第1軸又は前記第2軸を挟んで対向する位置に配置された一対の角度検出センサであり、
前記第2角度検出センサの出力信号は、一対の角度検出センサから出力された一対の出力信号を加算又は減算することにより得られる出力信号である
請求項8から請求項12の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項18】
請求項1から請求項17の何れか1項に記載の光走査装置と、
前記ミラー部に光を照射する光源と、
を備える画像描画システム。
【請求項19】
入射光を反射する反射面を有するミラー部と、
前記ミラー部の静止時の前記反射面を含む平面内にある第1軸の周りに前記ミラー部を揺動させる第1アクチュエータと、
前記ミラー部の静止時の前記反射面を含む平面内であって前記第1軸に交差する第2軸の周りに前記ミラー部を揺動させる第2アクチュエータと、
を備える光走査装置の駆動方法であって、
前記第1アクチュエータに第1駆動周波数を有する第1駆動信号を付与し、
前記第2アクチュエータに第2駆動周波数を有する第2駆動信号を付与し、
前記第1駆動周波数が前記第1軸周りの第1共振周波数未満となる前記第1アクチュエータの第1駆動条件を導出する
光走査装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光走査装置、光走査装置の駆動方法、及び画像描画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)の微細加工技術を用いて作製される微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)デバイスの1つとしてマイクロミラーデバイス(マイクロスキャナともいう)が知られている。このマイクロミラーデバイスを備える光走査装置は、小型かつ低消費電力であることから、レーザーディスプレイ又はレーザープロジェクタ等の画像描画システムへの応用が期待されている。
【0003】
マイクロミラーデバイスは、ミラー部が、互いに直交する第1軸及び第2軸の周りに揺動可能に形成されており、ミラー部が各軸の周りに揺動することで、ミラー部が反射した光を二次元的に走査する。また、ミラー部を各軸の周りに共振させることにより、光をリサージュ走査することを可能とするマイクロミラーデバイスが知られている。
【0004】
特許文献1には、第1軸の駆動周波数として第1軸の共振周波数を選択し、第1軸の共振周波数に基づき、1フィールド内で重複しないリサージュ図形を提供可能なフレームレート及び第2軸の駆動周波数の組合せの候補を計算する光偏向装置が開示されている。この光偏向装置は、計算したフレームレート及び第2軸の駆動周波数の組合せの候補から、最も第2軸の共振周波数に近い周波数を含むフレームレート及び第2軸の駆動周波数の組合せの候補を選択する。
【0005】
特許文献2には、ミラー部の回転角を検出するセンサと、そのセンサから得られるミラー部の回転角の振幅及び位相を補正するための補正量であって、各温度に対応する補正量が格納されるルックアップテーブルとを有する光走査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-184018号公報
【特許文献2】特開2018-101040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ミラー部を第1軸周りに揺動させるための駆動信号の周波数が、特定の周波数(例えば、共振周波数)を超えると、ミラー部の第1軸周りの振れ角が急激に変化する特性を持つマイクロミラーデバイスが知られている。ミラー部の第1軸周りの振れ角が急激に変化すると、ミラー部の第2軸周りの振れ角に影響を及ぼすため、画像の描画領域が縦長の領域になったり、横長の領域になったりを繰り返してしまう場合がある。この場合、安定して画像を描画することができない。
【0008】
本開示は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、安定して画像を描画することができる光走査装置、光走査装置の駆動方法、及び画像描画システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の光走査装置は、入射光を反射する反射面を有するミラー部と、ミラー部の静止時の反射面を含む平面内にある第1軸の周りにミラー部を揺動させる第1アクチュエータと、ミラー部の静止時の反射面を含む平面内であって第1軸に交差する第2軸の周りにミラー部を揺動させる第2アクチュエータと、少なくとも1つのプロセッサと、を備える光走査装置であって、プロセッサは、第1アクチュエータに第1駆動周波数を有する第1駆動信号を付与し、第2アクチュエータに第2駆動周波数を有する第2駆動信号を付与し、第1駆動周波数が第1軸周りの第1共振周波数未満となる第1アクチュエータの第1駆動条件を導出する。
【0010】
なお、本開示の光走査装置は、ミラー部の第1軸周りの角度に応じた信号を出力する第1角度検出センサを更に備え、プロセッサが、第1角度検出センサの出力信号に基づいて、ミラー部の第1軸周りの第1角度を導出し、第1駆動周波数及び第2駆動周波数のうちの第1駆動周波数のみを変更しながら第1駆動信号を第1アクチュエータに付与した場合における第1角度が最大となるときの第1駆動信号と第1角度検出センサの出力信号との位相差を第1基準値として取得し、第1駆動信号と第1角度検出センサの出力信号との位相差が第1基準値未満となる第1駆動条件を導出してもよい。
【0011】
また、本開示の光走査装置は、プロセッサは、第1基準値を、第1駆動信号を基準とした正の値として取得してもよい。
【0012】
また、本開示の光走査装置は、プロセッサが、画像の描画前の初期設定値として、予め設定された第1駆動信号の駆動電圧において第1共振周波数未満となる第1駆動周波数を導出してもよい。
【0013】
また、本開示の光走査装置は、プロセッサが、画像の描画前に、初期設定値に基づいて第1アクチュエータを駆動させ、第1角度が予め設定された範囲内の角度となり、かつ第1駆動周波数が第1共振周波数未満となる第1駆動条件を導出する処理を複数回繰り返してもよい。
【0014】
また、本開示の光走査装置は、プロセッサが、画像の描画中に、第1角度が予め設定された範囲内の角度となり、かつ第1駆動周波数が第1共振周波数未満となる第1駆動条件を導出する処理を複数回繰り返してもよい。
【0015】
また、本開示の光走査装置は、プロセッサが、第2駆動周波数が第2軸周りの第2共振周波数よりも大きくなる第2アクチュエータの第2駆動条件を導出してもよい。
【0016】
また、本開示の光走査装置は、ミラー部の第2軸周りの角度に応じた信号を出力する第2角度検出センサを更に備え、プロセッサが、第2角度検出センサの出力信号に基づいて、ミラー部の第2軸周りの第2角度を導出し、第1駆動周波数及び第2駆動周波数のうちの第2駆動周波数のみを変更しながら第2駆動信号を第2アクチュエータに付与した場合における第2角度が最大となるときの第2駆動信号と第2角度検出センサの出力信号との位相差を第2基準値として取得し、第2駆動信号と第2角度検出センサの出力信号との位相差が第2基準値よりも大きくなる第2駆動条件を導出してもよい。
【0017】
また、本開示の光走査装置は、プロセッサは、第2基準値を、第2駆動信号を基準とした正の値として取得してもよい。
【0018】
また、本開示の光走査装置は、プロセッサが、画像の描画前の初期設定値として、予め設定された第2駆動信号の駆動電圧において第2共振周波数よりも大きくなる第2駆動周波数を導出してもよい。
【0019】
また、本開示の光走査装置は、プロセッサが、画像の描画前に、初期設定値に基づいて第2アクチュエータを駆動させ、第2角度が予め設定された範囲内の角度となり、かつ第2駆動周波数が第2共振周波数よりも大きくなる第2駆動条件を導出する処理を複数回繰り返してもよい。
【0020】
また、本開示の光走査装置は、プロセッサが、画像の描画中に、第2角度がそれぞれ予め設定された範囲内の角度となり、かつ第2駆動周波数が第2共振周波数よりも大きくなる第2駆動条件を導出する処理を複数回繰り返してもよい。
【0021】
また、本開示の光走査装置は、第1駆動周波数が、第2駆動周波数よりも高くてもよい。
【0022】
また、本開示の光走査装置は、第1駆動条件が、第1駆動周波数及び第1駆動信号の駆動電圧の少なくとも一方であってもよい。
【0023】
また、本開示の光走査装置は、第2駆動条件が、第2駆動周波数及び第2駆動信号の駆動電圧の少なくとも一方であってもよい。
【0024】
また、本開示の光走査装置は、第1角度検出センサは、第1軸又は第2軸を挟んで対向する位置に配置された一対の角度検出センサであり、第1角度検出センサの出力信号は、一対の角度検出センサから出力された一対の出力信号を加算又は減算することにより得られる出力信号であってもよい。
【0025】
また、本開示の光走査装置は、第2角度検出センサは、第1軸又は第2軸を挟んで対向する位置に配置された一対の角度検出センサであり、第2角度検出センサの出力信号は、一対の角度検出センサから出力された一対の出力信号を加算又は減算することにより得られる出力信号であってもよい。
【0026】
また、本開示の画像描画システムは、上記の何れかの光走査装置と、ミラー部に光を照射する光源と、を備える。
【0027】
また、本開示の光走査装置の駆動方法は、入射光を反射する反射面を有するミラー部と、ミラー部の静止時の反射面を含む平面内にある第1軸の周りにミラー部を揺動させる第1アクチュエータと、ミラー部の静止時の反射面を含む平面内であって第1軸に交差する第2軸の周りにミラー部を揺動させる第2アクチュエータと、を備える光走査装置の駆動方法であって、第1アクチュエータに第1駆動周波数を有する第1駆動信号を付与し、第2アクチュエータに第2駆動周波数を有する第2駆動信号を付与し、第1駆動周波数が第1軸周りの第1共振周波数未満となる第1アクチュエータの第1駆動条件を導出するものである。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、安定して画像を描画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】画像描画システムの概略図である。
図2】マイクロミラーデバイスの外観斜視図である。
図3】第1駆動信号の一例を示すグラフである。
図4】第2駆動信号の一例を示すグラフである。
図5】第1駆動周波数と第1振れ角との関係の一例を示す図である。
図6】画像の描画領域が安定しない場合の描画領域の一例を示す図である。
図7】画像の描画領域が安定しないことの原因を説明するための図である。
図8】駆動制御部の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図9】一対の第1角度検出センサから出力される信号の一例を示す図である。
図10】一対の第2角度検出センサから出力される信号の一例を示す図である。
図11】第1信号処理部の構成の一例を示す回路図である。
図12】第1信号処理の一例を示す図である。
図13】第2信号処理の一例を示す図である。
図14】第1角度とP-P値との関係の一例を示す図である。
図15】第1基準値の導出処理を説明するための図である。
図16】第1基準値の導出処理を説明するための図である。
図17】第2基準値の導出処理を説明するための図である。
図18】第1ゼロクロスパルスの生成処理を説明するための図である。
図19】第2ゼロクロスパルスの生成処理を説明するための図である。
図20】基準値導出処理の一例を示すフローチャートである。
図21】初期設定値導出処理の一例を示すフローチャートである。
図22】第1駆動条件導出処理の一例を示すフローチャートである。
図23】第2駆動条件導出処理の一例を示すフローチャートである。
図24】変形例に係るマイクロミラーデバイスの平面図である。
図25】変形例に係る第1信号処理部の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0031】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る画像描画システム10の構成を説明する。図1に示すように、画像描画システム10は、光走査装置2と光源3とを有する。光走査装置2は、マイクロミラーデバイス(以下、「MMD(Micro Mirror Device)」という)4と、駆動制御部5とを含む。駆動制御部5は、開示の技術に係るプロセッサの一例である。
【0032】
画像描画システム10は、駆動制御部5の制御に従って、光源3から照射された光ビームLをMMD4により反射して被走査面6を光走査することにより、画像を描画する。被走査面6は、例えば、画像を投影するためのスクリーン、又は人の目の網膜等である。
【0033】
画像描画システム10は、例えば、リサージュ走査方式のレーザーディスプレイに適用される。具体的には、画像描画システム10は、AR(Augmented Reality)グラス又はVR(Virtual Reality)グラス等のレーザースキャンディスプレイに適用可能である。
【0034】
MMD4は、第1軸aと、第1軸aに直交する第2軸aとの周りに、ミラー部20(図2参照)を揺動させることを可能とする圧電型2軸駆動方式のマイクロミラーデバイスである。以下、第2軸aと平行な方向をX方向、第1軸aと平行な方向をY方向、第1軸a及び第2軸aに直交する方向をZ方向という。本実施形態では、第1軸aと第2軸aとが直交する(すなわち、垂直に交差する)例を示しているが、第1軸aと第2軸aとは90°以外の角度で交差してもよい。ここでいう交差とは、90度を中心として、許容誤差を含む一定の角度範囲内のことを意味する。
【0035】
光源3は、光ビームLとして、例えばレーザ光を発するレーザ装置である。光源3は、例えば、R(Red)、G(Green)、及びB(Blue)の3色のレーザ光を出力する。光源3は、MMD4のミラー部20が静止した状態において、ミラー部20が備える反射面20A(図2参照)に垂直に光ビームLを照射することが好ましい。なお、光源3から反射面20Aに垂直に光ビームLを照射する場合、光ビームLを被走査面6に走査して描画する際に、光源3が障害物となる可能性がある。このため、光源3から発せられた光ビームLを、光学系で制御して、反射面20Aに垂直に照射することが好ましい。光学系は、レンズを含むものであってもいし、レンズを含まないものであってもよい。また、光源3から発せられた光ビームLを反射面20Aに照射する角度は垂直に限られず、光ビームLを反射面20Aに対して斜めに照射してもよい。
【0036】
駆動制御部5は、光走査情報に基づいて光源3及びMMD4に駆動信号を出力する。光源3は、入力された駆動信号に基づいて光ビームLを発生してMMD4に照射する。MMD4は、入力された駆動信号に基づいて、ミラー部20を第1軸a及び第2軸aの周りに揺動させる。
【0037】
駆動制御部5がミラー部20を第1軸a及び第2軸aの周りにそれぞれ共振させることにより、ミラー部20で反射される光ビームLが被走査面6上においてリサージュ波形を描くように走査される。この光走査方式は、リサージュ走査方式と呼ばれる。
【0038】
次に、図2を参照して、本実施形態に係るMMD4の構成を説明する。図2に示すように、MMD4は、ミラー部20、第1支持部21、第1可動枠22、第2支持部23、第2可動枠24、接続部25、及び固定枠26を有する。MMD4は、いわゆるMEMSスキャナである。
【0039】
ミラー部20は、入射光を反射する反射面20Aを有する。反射面20Aは、ミラー部20の一面に設けられ、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、又は銀の合金等の金属薄膜で形成されている。反射面20Aの形状は、例えば、第1軸aと第2軸aとの交点を中心とした円形状である。
【0040】
第1軸a及び第2軸aは、ミラー部20が静止した静止時において反射面20Aを含む平面内に存在する。MMD4の平面形状は、矩形状であって、第1軸aに関して線対称であり、かつ第2軸aに関して線対称である。
【0041】
第1支持部21は、ミラー部20の外側に、第2軸aを挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。第1支持部21は、第1軸a上でミラー部20と接続されており、ミラー部20を第1軸a周りに揺動可能に支持している。本実施形態では、第1支持部21は、第1軸aに沿って延伸したトーションバーである。
【0042】
第1可動枠22は、ミラー部20を取り囲む矩形状の枠体であって、第1軸a上で第1支持部21を介してミラー部20と接続されている。第1可動枠22の上には、第1軸aを挟んで対向する位置にそれぞれ圧電素子30が形成されている。このように、第1可動枠22上に2つの圧電素子30が形成されることにより、一対の第1アクチュエータ31が構成されている。
【0043】
一対の第1アクチュエータ31は、第1軸aを挟んで対向する位置に配置されている。第1アクチュエータ31は、ミラー部20に、第1軸a周りの回転トルクを作用させることにより、ミラー部20を第1軸a周りに揺動させる。
【0044】
第2支持部23は、第1可動枠22の外側に、第1軸aを挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。第2支持部23は、第2軸a上で第1可動枠22と接続されており、第1可動枠22及びミラー部20を、第2軸a周りに揺動可能に支持している。本実施形態では、第2支持部23は、第2軸aに沿って延伸したトーションバーである。
【0045】
第2可動枠24は、第1可動枠22を取り囲む矩形状の枠体であって、第2軸a上で第2支持部23を介して第1可動枠22と接続されている。第2可動枠24の上には、第2軸aを挟んで対向する位置にそれぞれ圧電素子30が形成されている。このように、第2可動枠24上に2つの圧電素子30が形成されることにより、一対の第2アクチュエータ32が構成されている。
【0046】
一対の第2アクチュエータ32は、第2軸aを挟んで対向する位置に配置されている。第2アクチュエータ32は、ミラー部20及び第1可動枠22に、第2軸aの周りの回転トルクを作用させることにより、第2軸aの周りにミラー部20を揺動させる。
【0047】
接続部25は、第2可動枠24の外側に、第1軸aを挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。接続部25は、第2軸a上で第2可動枠24と接続されている。
【0048】
固定枠26は、第2可動枠24を取り囲む矩形状の枠体であって、第2軸a上で接続部25を介して第2可動枠24と接続されている。
【0049】
また、第1可動枠22には、第1支持部21の近傍に、第1軸aを挟んで対向する位置に一対の第1角度検出センサ11A、11Bが設けられている。一対の第1角度検出センサ11A、11Bは、それぞれ圧電素子により構成されている。第1角度検出センサ11A、11Bは、それぞれ、ミラー部20の第1軸a周りの回動に伴う第1支持部21の変形により加わる力を電圧に変換して信号を出力する。すなわち、第1角度検出センサ11A、11Bは、ミラー部20の第1軸a周りの角度に応じた信号を出力する。
【0050】
また、第2可動枠24には、第2支持部23の近傍に、第2軸aを挟んで対向する位置に一対の第2角度検出センサ12A、12Bが設けられている。一対の第2角度検出センサ12A、12Bは、それぞれ圧電素子により構成されている。第2角度検出センサ12A、12Bは、それぞれ、ミラー部20の第2軸a周りの回動に伴う第2支持部23の変形により加わる力を電圧に変換して信号を出力する。すなわち、第2角度検出センサ12A、12Bは、ミラー部20の第2軸a周りの角度に応じた信号を出力する。
【0051】
図2では、第1アクチュエータ31及び第2アクチュエータ32に駆動信号を与えるための配線及び電極パッドについては図示を省略している。また、図2では、第1角度検出センサ11A、11B及び第2角度検出センサ12A、12Bから信号を出力するための配線及び電極パッドについても図示を省略している。電極パッドは、固定枠26上に複数設けられる。
【0052】
ミラー部20の第1軸a周りの振れ角(以下、「第1振れ角」という)は、駆動制御部5が第1アクチュエータ31に与える駆動信号(以下、「第1駆動信号」という)により制御される。第1駆動信号は、例えば正弦波の交流電圧である。第1駆動信号は、一対の第1アクチュエータ31の一方に印加される駆動電圧波形V1A(t)と、他方に印加される駆動電圧波形V1B(t)とを含む。駆動電圧波形V1A(t)と駆動電圧波形V1B(t)は、互いに逆位相(すなわち位相差180°)である。
【0053】
なお、第1振れ角は、反射面20Aの法線が、XZ平面においてZ方向に対して傾斜する角度である。また、本実施形態に係る第1振れ角とは、その周期内において、反射面20Aの法線が、XZ平面においてZ方向に対して最も傾斜したときの角度を意味する。第1振れ角は、第1駆動信号の駆動周波数及び駆動電圧により制御される。
【0054】
ミラー部20の第2軸a周りの振れ角(以下、「第2振れ角」という)は、駆動制御部5が第2アクチュエータ32に与える駆動信号(以下、「第2駆動信号」という)により制御される。第2駆動信号は、例えば正弦波の交流電圧である。第2駆動信号は、一対の第2アクチュエータ32の一方に印加される駆動電圧波形V2A(t)と、他方に印加される駆動電圧波形V2B(t)とを含む。駆動電圧波形V2A(t)と駆動電圧波形V2B(t)は、互いに逆位相(すなわち位相差180°)である。
【0055】
なお、第2振れ角は、反射面20Aの法線が、YZ平面においてZ方向に対して傾斜する角度である。また、本実施形態に係る第2振れ角とは、その周期内において、反射面20Aの法線が、YZ平面においてZ方向に対して最も傾斜したときの角度を意味する。第2振れ角は、第2駆動信号の駆動周波数及び駆動電圧により制御される。
【0056】
図3に、第1駆動信号の一例を示し、図4に、第2駆動信号の一例を示す。図3は、第1駆動信号に含まれる駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)を示す。図4は、第2駆動信号に含まれる駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)を示す。
【0057】
駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)は、それぞれ次のように表される。
1A(t)=Voff1+Vsin(2πfd1t)
1B(t)=Voff1+Vsin(2πfd1t+α)
【0058】
ここで、Vは振幅電圧である。Voff1はバイアス電圧である。Voff1はゼロでもよい。fd1は駆動周波数(以下、「第1駆動周波数」という)である。tは時間である。αは、駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)の位相差である。本実施形態では、例えば、α=180°とする。
【0059】
駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)が一対の第1アクチュエータ31に印加されることにより、ミラー部20は、第1駆動周波数fd1で第1軸a周りに揺動する。
【0060】
駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)は、それぞれ次のように表される。
2A(t)=Voff2+Vsin(2πfd2t+φ)
2B(t)=Voff2+Vsin(2πfd2t+β+φ)
【0061】
ここで、Vは振幅電圧である。Voff2はバイアス電圧である。Voff2はゼロでもよい。fd2は駆動周波数(以下、「第2駆動周波数」という)である。tは時間である。βは、駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)の位相差である。本実施形態では、例えば、β=180°とする。また、φは、駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)と、駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)との位相差である。
【0062】
駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)が一対の第2アクチュエータ32に印加されることにより、ミラー部20は、第2駆動周波数fd2で第2軸a周りに揺動する。
【0063】
本実施形態では、第1駆動周波数fd1が第2駆動周波数fd2よりも高く設定される。すなわち、ミラー部20は、第1軸a周りの揺動周波数が、第2軸a周りの揺動周波数よりも高い。
【0064】
ところで、光をリサージュ走査するマイクロミラーデバイスの中には、アクチュエータに付与する駆動信号の周波数が、特定の周波数を超えると、ミラー部の角度が急激に変化する特性を持つマイクロミラーデバイスがあることが知られている。本実施形態に係るMMD4は、その特性を有するマイクロミラーデバイスである。このような特性は、いわゆるハードスプリング効果に起因するものであり、例えば、以下の参考文献1の図9にも示されている。ハードスプリング効果とは、振幅が大きくなるにしたがって共振周波数が高周波数側に移動する現象である。
[参考文献1]G.Mendicino, M.Merli, R.Carminati, N.Boni, A.Opreni, A.Frangi, "Electromechanical validation of a resonant MEMS mirror with PZT actuation and PZR sensing," Proc. SPIE 11697, MOEMS and Miniaturized Systems XX, 1169715 (5 March 2021).
【0065】
具体的には、本実施形態に係るMMD4では、一例として図5に示すように、第1駆動周波数が高くなるに従って第1振れ角が大きくなるが、第1駆動周波数が特定の周波数Aを超えると、第1振れ角が急激に小さくなる。特定の周波数Aは、例えば、第1軸a周りの共振周波数である。このような特性は、比較的高い第1駆動周波数の帯域(すなわちハードスプリング効果が生じる帯域)で観測される場合が多い。
【0066】
このような特性を持つMMD4を用いてリサージュ走査によって画像を描画した際に、画像の描画領域の形状が不安定になる現象が観測された。具体的には、一例として図6に示すように、目標とする矩形の描画領域R1に対して、縦長の描画領域R2と横長の描画領域R3とが交互に繰り返される現象が観測された。なお、描画領域の形状は、第1振れ角及び第2振れ角の大きさによって決まる。
【0067】
図7を参照して、この現象の原因として考えられることを説明する。図7のF1は第1駆動周波数を示し、F2は第2駆動周波数を示し、Aは第1軸a周りの共振周波数を示す。図7の最も左側のグラフに示すように、最初に、第1駆動周波数F1は共振周波数Aに一致するように設定され、かつ第2駆動周波数F2は第1駆動周波数F1との比が予め設定された比となるように設定されているものとする。第1駆動周波数F1が、共振周波数Aに一致するように設定されているのは、効率的にミラー部20を揺動させるためである。第2駆動周波数F2が、第1駆動周波数F1との比が予め設定された比となるように設定されているのは、リサージュ波形の緻密さを調整することによって、目標とする画質で画像を描画するためである。また、本実施形態では、第1駆動周波数F1は、比較的高く、ハードスプリング効果が生じる帯域に設定され、第2駆動周波数F2は、比較的低く、ハードスプリング効果が生じない帯域に設定されている。
【0068】
この場合に、例えば、ミラー部20の第2軸a周りの揺動の影響及び環境温度の変化の影響等により、第1軸a周りの共振周波数Aが若干低くなったとする。この場合、第1駆動周波数F1が共振周波数Aよりも高くなるため、第1振れ角が急激に小さくなる(図7上段の左から2番目のグラフ参照)。そして、第1振れ角が急激に小さくなったことの影響を受けることによって第2軸a周りの共振周波数が低くなる。これにより、第2駆動周波数F2は変わらなくても第2振れ角が大きくなる(図7下段の左から2番目のグラフ参照)。次に、第2振れ角が大きくなったことの影響を受けることにより、第1軸a周りの共振周波数Aが高くなる。これにより、第1振れ角が急激に大きくなる(図7上段の左から3番目のグラフ参照)。このような第1振れ角及び第2振れ角の変化を繰り返すことによって、描画領域の形状が不安定になると考えられる。
【0069】
そこで、本実施形態に係る駆動制御部5は、第1駆動周波数が共振周波数未満となるように、第1アクチュエータ31の駆動条件を導出する機能を有する。
【0070】
次に、図8を参照して、駆動制御部5の機能的な構成を説明する。図8に示すように、駆動制御部5は、第1駆動信号生成部60A、第2駆動信号生成部60B、第1信号処理部61A、第2信号処理部61B、第1位相シフト部62A、第2位相シフト部62B、第1角度導出部63A、第2角度導出部63B、第1導出部64A、第2導出部64B、第1ゼロクロスパルス出力部65A、第2ゼロクロスパルス出力部65B、及び光源駆動部66を有する。
【0071】
第1駆動信号生成部60Aは、基準波形に基づいて、上述の駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)を含む第1駆動信号を生成し、生成した第1駆動信号を、第1位相シフト部62Aを介して一対の第1アクチュエータ31に付与する。これにより、ミラー部20は、第1軸a周りに揺動する。
【0072】
第2駆動信号生成部60Bは、基準波形に基づいて、上述の駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)を含む第2駆動信号を生成し、生成した第2駆動信号を、第2位相シフト部62Bを介して一対の第2アクチュエータ32に付与する。これにより、ミラー部20は、第2軸a周りに揺動する。
【0073】
第1駆動信号生成部60Aが生成する第1駆動信号と、第2駆動信号生成部60Bが生成する第2駆動信号とは、第2駆動信号に含まれる駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)を示す式において、φで示したとおり、位相同期されている。
【0074】
第1角度検出センサ11A、11Bは、ミラー部20の第1軸a周りの角度に応じた信号を出力する。第2角度検出センサ12A、12Bは、ミラー部20の第2軸a周りの角度に応じた信号を出力する。
【0075】
図9は、一対の第1角度検出センサ11A、11Bから出力される信号の一例を示す。図9において、S1a及びS1aは、ミラー部20を第2軸a周りには揺動させずに、第1軸a周りにのみ揺動させた場合に一対の第1角度検出センサ11A、11Bから出力される信号を表している。信号S1a、S1aは、第1駆動周波数fd1を有する正弦波に近似した波形信号であり、互いに逆位相となる。
【0076】
ミラー部20を第1軸a及び第2軸aの周りに同時に揺動させた場合には、一対の第1角度検出センサ11A、11Bの出力信号には、ミラー部20の第2軸a周りの揺動に起因する振動ノイズRN1が重畳される。S1bは、信号S1aに振動ノイズRN1が重畳された信号を表している。S1bは、信号S1aに振動ノイズRN1が重畳された信号を表している。なお、図9の例では、本実施形態の説明のために、振動ノイズRN1を強調して示している。
【0077】
図10は、一対の第2角度検出センサ12A、12Bから出力される信号の一例を示す。図10において、S2a及びS2aは、ミラー部20を第1軸a周りには揺動させずに、第2軸a周りにのみ揺動させた場合に一対の第2角度検出センサ12A、12Bから出力される信号を表している。信号S2a、S2aは、第2駆動周波数fd2を有する正弦波に近似した波形信号であり、互いに逆位相となる。
【0078】
ミラー部20を第1軸a及び第2軸aの周りに同時に揺動させた場合には、一対の第2角度検出センサ12A、12Bの出力信号には、ミラー部20の第1軸a周りの揺動に起因する振動ノイズRN2が重畳される。S2bは、信号S2aに振動ノイズRN2が重畳された信号を表している。S2bは、信号S2aに振動ノイズRN2が重畳された信号を表している。なお、図10の例では、本実施形態の説明のために、振動ノイズRN2を強調して示している。
【0079】
第1信号処理部61Aは、一対の第1角度検出センサ11A、11Bから出力されたS1a、S1aに基づいて、振動ノイズRN1が除去された信号(以下、「第1角度検出信号」という)S1cを生成する。第2信号処理部61Bは、一対の第2角度検出センサ12A、12Bから出力されたS2a、S2aに基づいて、振動ノイズRN2が除去された信号(以下、「第2角度検出信号」という)S2cを生成する。
【0080】
第1信号処理部61Aは、例えば、一例として図11に示す構成の回路によって実現が可能である。図11に示すように、第1信号処理部61Aは、バッファーアンプ71、可変ゲインアンプ72、減算回路73、及びゲイン調整回路74により構成されている。ゲイン調整回路74は、第1BPF(Band Pass Filter)回路75A、第2BPF回路75B、第1検波回路76A、第2検波回路76B、減算回路77により構成されている。減算回路73及び減算回路77は、オペアンプで構成された差動増幅回路である。
【0081】
第1角度検出センサ11Aから出力された信号S1bは、バッファーアンプ71を経由して、減算回路73のプラス入力端子(非反転入力端子)に入力される。また、バッファーアンプ71から出力される信号は、減算回路73に入力されるまでの間に途中で分岐されて、ゲイン調整回路74内の第1BPF回路75Aに入力される。
【0082】
第1角度検出センサ11Bから出力された信号S1bは、可変ゲインアンプ72を経由して、減算回路73のマイナス入力端子(反転入力端子)に入力される。また、可変ゲインアンプ72から出力される信号は、減算回路73に入力されるまでの間に途中で分岐されて、ゲイン調整回路74内の第2BPF回路75Bに入力される。
【0083】
第1BPF回路75A及び第2BPF回路75Bは、それぞれ、第2駆動周波数fd2を中心周波数とする通過帯域B1を有する。通過帯域B1は、例えば、fd2±5kHの周波数帯である。振動ノイズRN1は、第2駆動周波数fd2を有するので、通過帯域B1を通過する。したがって、第1BPF回路75Aは、バッファーアンプ71から入力された信号から、振動ノイズRN1を抽出して出力する。第2BPF回路75Bは、可変ゲインアンプ72から入力された信号から、振動ノイズRN1を抽出して出力する。
【0084】
第1検波回路76A及び第2検波回路76Bは、それぞれ、例えば、RMS-DCコンバータ(Root Mean Squared value to Direct Current converter)により構成されている。第1検波回路76Aは、第1BPF回路75Aから入力された振動ノイズRN1の振幅をDC電圧信号に変換して、減算回路77のプラス入力端子に入力する。第2検波回路76Bは、第2BPF回路75Bから入力された振動ノイズRN1の振幅をDC電圧信号に変換して、減算回路77のマイナス入力端子に入力する。
【0085】
減算回路77は、第1検波回路76Aから入力されたDC電圧信号から第2検波回路76Bから入力されたDC電圧信号を減算した値dを出力する。値dは、第1角度検出センサ11Aから出力された信号S1bに含まれる振動ノイズRN1の振幅と、第1角度検出センサ11Bから出力された信号S1bに含まれる振動ノイズRN1の振幅との差に対応する。減算回路77は、値dを、ゲイン調整値として可変ゲインアンプ72のゲイン調整端子に入力する。
【0086】
可変ゲインアンプ72は、ゲイン調整値として入力された値dを、第1角度検出センサ11Bから入力される信号S1bに乗じることにより、信号S1bの振幅レベルを調整する。このように、ゲイン調整回路74によりフィードバック制御が行われることで、可変ゲインアンプ72を通過した後の信号S1bに含まれる振動ノイズRN1の振幅が、バッファーアンプ71を通過した後の信号S1bに含まれる振動ノイズRN1の振幅と一致するように調整される。
【0087】
減算回路73は、プラス入力端子に入力された信号S1bから、マイナス入力端子に入力された信号S1bを減算した値を出力する。上記のフィードバック制御により両信号に含まれる振動ノイズRN1の振幅が一致しているので、減算回路73による減算処理により、両信号に含まれる振動ノイズRN1が相殺される。従って、減算回路73からは、振動ノイズRN1が除去された信号である第1角度検出信号S1c(図12参照)が出力される。
【0088】
図12は、一対の第1角度検出センサ11A、11Bから出力されたS1b、S1bに基づいて、第1角度検出信号S1cが生成される様子を示している。第1角度検出信号S1cは、信号S1bから振動ノイズRN1が除去された信号の振幅を2倍とした信号に対応する。
【0089】
ミラー部20の第1軸a周りの揺動が共振状態を維持している場合には、図12に示すように、第1信号処理部61Aから出力される第1角度検出信号S1cは、第1駆動信号に含まれる駆動電圧波形V1A(t)に対して、位相に90°の遅れが生じる。
【0090】
第2信号処理部61Bは、第1信号処理部61Aと同様の構成により実現が可能であるため、説明を省略する。
【0091】
図13は、一対の第2角度検出センサ12A、12Bから出力されたS2b、S2bに基づいて、第2角度検出信号S2cが生成される様子を示している。第2角度検出信号S2cは、信号S2bから振動ノイズRN2が除去された信号の振幅を2倍とした信号に対応する。
【0092】
ミラー部20の第2軸a周りの揺動が共振状態を維持している場合には、図13に示すように、第2信号処理部61Bから出力される第2角度検出信号S2cは、第2駆動信号に含まれる駆動電圧波形V2A(t)に対して、位相に90°の遅れが生じる。
【0093】
第1位相シフト部62Aは、第1駆動信号生成部60Aから出力された駆動電圧波形の位相をシフトする。第1位相シフト部62Aは、例えば、位相を90°シフトさせる。第2位相シフト部62Bは、第2駆動信号生成部60Bから出力された駆動電圧波形の位相をシフトする。第2位相シフト部62Bは、例えば、位相を90°シフトさせる。
【0094】
第1角度導出部63Aは、第1角度検出信号S1cに基づいて、ミラー部20の第1軸a周りの角度(以下、「第1角度」という)を導出する。具体的には、第1角度導出部63Aは、第1角度検出信号S1cの振幅に対応するP-P(Peak To Peak)値Vp-p1を求める(図12参照)。第1角度導出部63Aは、一例として図14に示す第1角度と、第1角度検出信号S1cのP-P値との関係を示すデータを保持している。第1角度導出部63Aは、このデータに基づいて、第1角度検出信号S1cから求めたP-P値Vp-p1に対応する第1角度θm1を導出する。このように、本実施形態に係る第1角度導出部63Aが導出する第1角度とは、その周期内でのミラー部20の第1軸a周りの角度の最大値(すなわち、第1振れ角)の2倍に相当する。
【0095】
第2角度導出部63Bは、第2角度検出信号S2cに基づいて、ミラー部20の第2軸a周りの角度(以下、「第2角度」という)を導出する。具体的には、第2角度導出部63Bは、第2角度検出信号S2cの振幅に対応するP-P値Vp-p2を求める(図13参照)。第2角度導出部63Bも、第1角度導出部63Aと同様に、第2角度と、第2角度検出信号S2cのP-P値との関係を示すデータを保持している。第2角度導出部63Bは、このデータに基づいて、第2角度検出信号S2cから求めたP-P値Vp-p2に対応する第2角度を導出する。このように、本実施形態に係る第2角度導出部63Bが導出する第2角度とは、その周期内でのミラー部20の第2軸a周りの角度の最大値(すなわち、第2振れ角)の2倍に相当する。
【0096】
第1導出部64Aは、第1駆動周波数及び第2駆動周波数のうちの第1駆動周波数のみを変更しながら第1駆動信号を第1アクチュエータ31に付与した場合における第1角度が最大となるときの第1駆動信号と第1角度検出信号S1cとの位相差を基準値(以下、「第1基準値」という)として取得する。この際、第2アクチュエータ32には、第2駆動信号を付与しない。すなわち、第1導出部64Aは、ミラー部20を第2軸a周りには揺動させずに、第1軸a周りにのみ揺動させて第1基準値を取得する。
【0097】
具体的には、第1導出部64Aは、第1駆動周波数のみを変更しながら第1駆動信号を第1アクチュエータ31に付与させた際に第1角度導出部63Aにより導出された第1角度を取得する。一例として図15に示すように、複数の第1駆動周波数それぞれについて第1角度が取得される。図15の例では、第1駆動周波数がfd1maxのときに第1角度が最大のθ1maxになっている。
【0098】
次に、第1導出部64Aは、取得した複数の第1駆動周波数及び第1角度のうち第1角度が最大であるときの第1駆動周波数の第1駆動信号と、その第1駆動信号を第1アクチュエータ31に付与させたときに検出された第1角度検出信号S1cとの位相差を第1基準値として導出する。第1導出部64Aは、この第1基準値を、第1駆動信号を基準とした正の値として導出する。具体的には、一例として図16に示すように、対応する周期の第1駆動周波数がfd1maxの第1駆動信号がゼロである時点から、第1角度検出信号S1cがゼロである時点までの時間t1を第1基準値として導出する。本実施形態では、第1駆動信号は、バイアス電圧Voff1の分だけオフセットされているため、第1駆動信号がゼロである時点とは、第1駆動信号がVoff1である時点を意味する。この第1基準値は、複数周期の時間t1の平均値、最頻値、又は中央値等の統計値であってもよい。
【0099】
また、第1導出部64Aは、第1駆動周波数が第1軸a周りの共振周波数(以下、「第1共振周波数」という)未満となる第1アクチュエータ31の駆動条件(以下、「第1駆動条件」という)を導出する。第1駆動条件は、第1駆動信号の駆動電圧(以下、「第1駆動電圧」という)でもよいし、第1駆動周波数でもよいし、第1駆動電圧及び第1駆動周波数の両方であってもよい。第1駆動信号の駆動電圧とは、例えば、第1駆動信号の振幅に相当する。
【0100】
本実施形態では、第1導出部64Aは、第1駆動信号と第1角度検出信号S1cとの位相差(以下、「第1位相差」という)が第1基準値未満となる第1駆動条件を導出する。これは、第1共振周波数を直接求めることが困難であり、第1位相差が第1基準値であるときの第1駆動周波数を第1共振周波数と見なしているためである。
【0101】
また、第1導出部64Aは、画像の描画前の初期設定値として、予め設定された駆動電圧において第1位相差が第1基準値未満となる第1駆動周波数を導出する。例えば、第1導出部64Aは、第1駆動電圧を予め設定された電圧値とし、第1駆動周波数を変更しながら第1駆動信号を第1アクチュエータ31に付与したときの第1位相差が第1基準値未満となる第1駆動周波数を探索する。
【0102】
また、第1導出部64Aは、画像の描画前に、導出した初期設定値に基づいて第1アクチュエータを駆動させた後に、第1角度が予め設定された範囲内の角度となり、第1位相差が第1基準値未満となる第1駆動条件を導出する。
【0103】
例えば、第1導出部64Aは、第1角度が予め設定された範囲の下限値未満の場合は第1駆動電圧として、それまでよりも大きい電圧値を導出し、第1角度が予め設定された範囲の上限値を超える場合は第1駆動電圧として、それまでよりも小さい電圧値を導出する。この際、第1導出部64Aは、直前の第1位相差が第1基準値よりもどの程度小さいかを表す値V1に基づいて、第1位相差が第1基準値未満となる第1駆動条件を導出する。例えば、第1導出部64Aは、第1駆動条件を導出する際に、値V1に基づいて、第1駆動電圧の電圧値を変更するだけでは第1位相差が第1基準値未満にならないと推定される場合は、第1駆動周波数も変更した値を導出する。第1導出部64Aは、この第1駆動条件を導出する処理を複数回繰り返す。これにより、画像の描画前に、第1角度が予め設定された範囲内となり、かつ第1駆動周波数が第1共振周波数未満となる第1駆動条件が導出される。
【0104】
また、画像の描画中も環境温度等の影響により、第1共振周波数が変わることが発生しうるため、第1導出部64Aは、画像の描画中も、上記の第1駆動条件を導出する処理を複数回繰り返してもよい。
【0105】
第2導出部64Bは、第1駆動周波数及び第2駆動周波数のうちの第2駆動周波数のみを変更しながら第2駆動信号を第2アクチュエータ32に付与した場合における第2角度が最大となるときの第2駆動信号と第2角度検出信号S2cとの位相差を基準値(以下、「第2基準値」という)として取得する。この際、第1アクチュエータ31には、第1駆動信号を付与しない。すなわち、第2導出部64Bは、ミラー部20を第1軸a周りには揺動させずに、第2軸a周りにのみ揺動させて第2基準値を取得する。
【0106】
具体的には、第2導出部64Bは、第2駆動周波数のみを変更しながら第2駆動信号を第2アクチュエータ32に付与させた際に第2角度導出部63Bにより導出された第2角度を取得する。第1導出部64Aによる処理と同様に、複数の第2駆動周波数それぞれについて第2角度が取得される。この複数の第2駆動周波数及び第2角度の組み合わせのうち、第2角度が最大となるときの第2駆動周波数をfd2maxと表す。
【0107】
次に、第2導出部64Bは、取得した複数の第2駆動周波数及び第2角度のうち第2角度が最大であるときの第2駆動周波数の第2駆動信号と、その第2駆動信号を第2アクチュエータ32に付与させたときに検出された第2角度検出信号S2cとの位相差を第2基準値として導出する。第2導出部64Bは、この第2基準値を、第2駆動信号を基準とした正の値として導出する。具体的には、一例として図17に示すように、対応する周期の第2駆動周波数がfd2maxの第2駆動信号がゼロである時点から、第2角度検出信号S2cがゼロである時点までの時間t2を第2基準値として導出する。本実施形態では、第2駆動信号は、バイアス電圧Voff2の分だけオフセットされているため、第2駆動信号がゼロである時点とは、第2駆動信号がVoff2である時点を意味する。この第2基準値は、複数周期の時間t2の平均値、最頻値、又は中央値等の統計値であってもよい。
【0108】
また、第2導出部64Bは、第2駆動周波数が第2軸a周りの共振周波数(以下、「第2共振周波数」という)よりも大きくなる第2アクチュエータ32の駆動条件(以下、「第2駆動条件」という)を導出する。第2駆動条件は、第2駆動信号の駆動電圧(以下、「第2駆動電圧」という)でもよいし、第2駆動周波数でもよいし、第2駆動電圧及び第2駆動周波数の両方であってもよい。第2駆動信号の駆動電圧とは、例えば、第2駆動信号の振幅に相当する。
【0109】
本実施形態では、第2導出部64Bは、第2駆動信号と第2角度検出信号S2cとの位相差(以下、「第2位相差」という)が第2基準値よりも大きくなる第2駆動条件を導出する。これは、第2共振周波数を直接求めることが困難であり、第2位相差が第2基準値であるときの第2駆動周波数を第2共振周波数と見なしているためである。
【0110】
第2導出部64Bは、画像の描画前の初期設定値として、予め設定された駆動電圧において第2位相差が第2基準値よりも大きくなる第2駆動周波数を導出する。例えば、第2導出部64Bは、第2駆動電圧を予め設定された電圧値とし、第2駆動周波数を変更しながら第2駆動信号を第2アクチュエータ32に付与させ、第2位相差が第2基準値よりも大きくなる第2駆動周波数を探索する。
【0111】
また、第2導出部64Bは、画像の描画前に、導出した初期設定値に基づいて第2アクチュエータ32を駆動させた後に、第2角度が予め設定された範囲内の角度となり、第2位相差が第2基準値よりも大きくなる第2駆動条件を導出する。
【0112】
例えば、第2導出部64Bは、第2角度が予め設定された範囲の下限値未満の場合は第2駆動電圧として、それまでよりも大きい電圧値を導出し、第2角度が予め設定された範囲の上限値を超える場合は第2駆動電圧として、それまでよりも小さい電圧値を導出する。この際、第2導出部64Bは、直前の第2位相差が第2基準値よりもどの程度大きいかを表す値V2に基づいて、第2位相差が第2基準値よりも大きくなる第2駆動条件を導出する。例えば、第2導出部64Bは、第2駆動条件を導出する際に、値V2に基づいて、第2駆動電圧の電圧値を変更するだけでは第2位相差が第2基準値よりも大きくならないと推定される場合は、第2駆動周波数も変更した値を導出する。第2導出部64Bは、この第2駆動条件を導出する処理を複数回繰り返す。これにより、画像の描画前に、第2角度が予め設定された範囲内となり、かつ第2駆動周波数が第2共振周波数よりも大きくなる第2駆動条件が導出される。
【0113】
また、画像の描画中も環境温度等の影響により、第2共振周波数が変わることが発生しうるため、第2導出部64Bは、画像の描画中も、上記の第2駆動条件を導出する処理を複数回繰り返してもよい。
【0114】
第1ゼロクロスパルス出力部65Aは、第1角度検出信号S1cに基づいて、基準信号(以下、「第1基準信号」という)を生成する。第1基準信号は、ミラー部20の第1軸a周りの角度が基準角となったことを表す信号である。本実施形態では、この基準角としてゼロを適用した例を説明する。すなわち、第1ゼロクロスパルス出力部65Aは、第1角度検出信号S1cに基づいて、第1基準信号の一例としてのゼロクロスパルス(以下、「第1ゼロクロスパルス」という。)ZC1を生成する。第1ゼロクロスパルス出力部65Aは、ゼロクロス検出回路により構成されている。第1ゼロクロスパルスは、ミラー部20の第1軸a周りの角度がゼロになったことを表すゼロクロス信号である。
【0115】
一例として図18に示すように、第1ゼロクロスパルス出力部65Aは、第1角度検出信号S1cがゼロを横切るタイミングで第1ゼロクロスパルスZC1を生成する。第1ゼロクロスパルス出力部65Aは、生成した第1ゼロクロスパルスZC1を光源駆動部66に出力する。
【0116】
第2ゼロクロスパルス出力部65Bは、第2角度検出信号S2cに基づいて、基準信号(以下、「第2基準信号」という)を生成する。第2基準信号は、ミラー部20の第2軸a周りの角度が基準角となったことを表す信号である。本実施形態では、この基準角としてゼロを適用した例を説明する。すなわち、第2ゼロクロスパルス出力部65Bは、第2角度検出信号S2cに基づいて、第2基準信号の一例としてのゼロクロスパルス(以下、「第2ゼロクロスパルス」という。)ZC2を生成する。第2ゼロクロスパルス出力部65Bは、ゼロクロス検出回路により構成されている。第2ゼロクロスパルスは、ミラー部20の第2軸a周りの角度がゼロになったことを表すゼロクロス信号である。
【0117】
一例として図19に示すように、第2ゼロクロスパルス出力部65Bは、第2角度検出信号S2cがゼロを横切るタイミングで第2ゼロクロスパルスZC2を生成する。第2ゼロクロスパルス出力部65Bは、生成した第2ゼロクロスパルスZC2を光源駆動部66に出力する。
【0118】
なお、第1ゼロクロスパルス出力部65A及び第2ゼロクロスパルス出力部65Bは、正弦波が負から正に向けてゼロになるタイミング及び正弦波が正から負に向けてゼロになるタイミングの双方でゼロクロスパルスを出力しているが、これに限定されない。例えば、第1ゼロクロスパルス出力部65A及び第2ゼロクロスパルス出力部65Bは、正弦波が負から正に向けてゼロになるタイミング及び正弦波が正から負に向けてゼロになるタイミングの何れか一方でゼロクロスパルスを出力してもよい。
【0119】
光源駆動部66は、例えば、画像描画システム10の外部から供給される描画データに基づいて、光源3を駆動する。また、光源駆動部66は、光源3によるレーザ光の照射タイミングが、第1ゼロクロスパルスZC1及び第2ゼロクロスパルスZC2と同期するように照射タイミングを制御する。これにより、画像が被走査面6に描画される。
【0120】
次に、図20を参照して、第1基準値及び第2基準値を導出する基準値導出処理の流れを説明する。例えば、基準値導出処理は、光走査装置2の起動時、又はユーザによって実行指示が入力されたタイミング等に実行される。
【0121】
図20のステップS10で、第1駆動信号生成部60Aは、第1駆動信号を生成し、生成した第1駆動信号を、第1位相シフト部62Aを介して一対の第1アクチュエータ31に付与する。これにより、ミラー部20は、第2軸a周りには揺動せずに、第1軸a周りにのみ揺動する。
【0122】
ステップS12で、第1角度導出部63Aは、前述したように、第1角度検出信号S1cに基づいて、第1角度を導出する。ステップS10及びS12の処理は、第1駆動周波数を変更しながら繰り返し実行される。これにより、複数の第1駆動周波数それぞれについて第1角度が取得される。ステップS10及びS12の繰り返し処理が終了すると、第1駆動信号生成部60Aは、第1駆動信号の生成を停止する。
【0123】
ステップS14で、第1導出部64Aは、ステップS10及びS12の繰り返し処理により取得された複数の第1駆動周波数及び第1角度のうち第1角度が最大であるときの第1駆動周波数の第1駆動信号と、その第1駆動信号を第1アクチュエータ31に付与させたときに検出された第1角度検出信号S1cとの位相差を第1基準値として導出する。
【0124】
ステップS16で、第2駆動信号生成部60Bは、第2駆動信号を生成し、生成した第2駆動信号を、第2位相シフト部62Bを介して一対の第2アクチュエータ32に付与する。これにより、ミラー部20は、第1軸a周りには揺動せずに、第2軸a周りにのみ揺動する。
【0125】
ステップS18で、第2角度導出部63Bは、前述したように、第2角度検出信号S2cに基づいて、第2角度を導出する。ステップS16及びS18の処理は、第2駆動周波数を変更しながら繰り返し実行される。これにより、複数の第2駆動周波数それぞれについて第2角度が取得される。ステップS16及びS18の繰り返し処理が終了すると、第2駆動信号生成部60Bは、第2駆動信号の生成を停止する。
【0126】
ステップS20で、第2導出部64Bは、ステップS16及びS18の繰り返し処理により取得された複数の第2駆動周波数及び第2角度のうち第2角度が最大であるときの第2駆動周波数の第2駆動信号と、その第2駆動信号を第2アクチュエータ32に付与させたときに検出された第2角度検出信号S2cとの位相差を第2基準値として導出する。ステップS20の処理が終了すると、基準値導出処理が終了する。
【0127】
次に、図21を参照して、初期設定値導出処理の流れを説明する。例えば、初期設定値導出処理は、上記基準値導出処理の実行終了後で、かつ画像の描画前に実行される。
【0128】
図21のステップS30で、第1駆動信号生成部60Aは、予め設定された駆動電圧の第1駆動信号を生成し、生成した第1駆動信号を、第1位相シフト部62Aを介して一対の第1アクチュエータ31に付与する。ステップS32で、第1導出部64Aは、第1位相差を導出する。ステップS30及びS32の処理は、第1駆動周波数を変更しながら繰り返し実行される。これにより、複数の第1駆動周波数それぞれについて第1位相差が取得される。ステップS30及びS32の繰り返し処理が終了すると、第1駆動信号生成部60Aは、第1駆動信号の生成を停止する。
【0129】
ステップS34で、第1導出部64Aは、第1駆動条件の初期設定値として、ステップS30及びS32の繰り返し処理の結果の中から、第1位相差が上記ステップS14で導出された第1基準値未満である第1駆動周波数を探索する。これにより、第1導出部64Aは、初期設定値として、第1駆動周波数を導出する。上記予め設定された駆動電圧及びステップS34で導出された第1駆動周波数が、第1駆動条件の初期設定値となる。
【0130】
ステップS36で、第2駆動信号生成部60Bは、予め設定された駆動電圧の第2駆動信号を生成し、生成した第2駆動信号を、第2位相シフト部62Bを介して一対の第2アクチュエータ32に付与する。ステップS38で、第2導出部64Bは、第2位相差を導出する。ステップS36及びS38の処理は、第2駆動周波数を変更しながら繰り返し実行される。これにより、複数の第2駆動周波数それぞれについて第2位相差が取得される。ステップS36及びS38の繰り返し処理が終了すると、第2駆動信号生成部60Bは、第2駆動信号の生成を停止する。
【0131】
ステップS40で、第2導出部64Bは、第2駆動条件の初期設定値として、ステップS36及びS38の繰り返し処理の結果の中から、第2位相差が上記ステップS20で導出された第2基準値よりも大きくなる第2駆動周波数を探索する。これにより、第2導出部64Bは、初期設定値として、第2駆動周波数を導出する。上記予め設定された駆動電圧及びステップS40で導出された第2駆動周波数が、第2駆動条件の初期設定値となる。ステップS40の処理が終了すると、初期設定値導出処理が終了する。
【0132】
次に、図22を参照して、第1駆動条件導出処理の流れを説明する。例えば、第1駆動条件導出処理は、上記初期設定値導出処理の実行終了後で、かつ画像の描画前に実行される。
【0133】
図22のステップS50で、第1駆動信号生成部60Aは、上記ステップS34で導出された初期設定値に従って第1駆動信号を生成し、生成した第1駆動信号を、第1位相シフト部62Aを介して一対の第1アクチュエータ31に付与する。ステップS52で、第1角度導出部63Aは、前述したように、第1角度検出信号S1cに基づいて、第1角度を導出する。
【0134】
ステップS54で、第1導出部64Aは、ステップS52で導出された第1角度が予め設定された範囲内であるか否かを判定する。この範囲は、例えば、被走査面6に描画される画像のX方向の長さ等に応じて予め設定される。この判定が否定判定となった場合、処理はステップS56に移行する。
【0135】
ステップS56で、第1導出部64Aは、前述したように、第1角度が予め設定された範囲内の角度となり、第1位相差が第1基準値未満となる第1駆動条件を導出する。この第1駆動条件に従って第1駆動周波数及び第1駆動電圧が変更される。ステップS56の処理が終了すると、第1駆動条件導出処理が終了する。また、ステップS54の判定が肯定判定となった場合、第1駆動条件導出処理が終了する。ステップS52~S56の処理は、繰り返して複数回実行される。これにより、第1角度が予め設定された範囲内となり、第1位相差が第1基準値未満となる第1駆動条件が設定される。
【0136】
なお、この第1駆動条件導出処理のステップS52~S56の処理は、画像の描画中にも繰り返し実行されてもよい。この場合の実行間隔としては、例えば、第1駆動周波数の一周期又は複数周期に相当する時間間隔等が挙げられる。
【0137】
次に、図23を参照して、第2駆動条件導出処理の流れを説明する。例えば、第2駆動条件導出処理は、上記初期設定値導出処理の実行終了後で、かつ画像の描画前に実行される。
【0138】
図23のステップS60で、第2駆動信号生成部60Bは、上記ステップS40で導出された初期設定値に従って第2駆動信号を生成し、生成した第2駆動信号を、第2位相シフト部62Bを介して一対の第2アクチュエータ32に付与する。ステップS62で、第2角度導出部63Bは、前述したように、第2角度検出信号S2cに基づいて、第2角度を導出する。
【0139】
ステップS64で、第2導出部64Bは、ステップS62で導出された第2角度が予め設定された範囲内であるか否かを判定する。この範囲は、例えば、被走査面6に描画される画像のY方向の長さ等に応じて予め設定される。この判定が否定判定となった場合、処理はステップS66に移行する。
【0140】
ステップS66で、第2導出部64Bは、前述したように、第2角度が予め設定された範囲内の角度となり、第2位相差が第2基準値よりも大きくなる第2駆動条件を導出する。この第2駆動条件に従って第2駆動周波数及び第2駆動電圧が変更される。ステップS66の処理が終了すると、第2駆動条件導出処理が終了する。また、ステップS64の判定が肯定判定となった場合、第2駆動条件導出処理が終了する。ステップS62~S66の処理は、繰り返して複数回実行される。これにより、第2角度が予め設定された範囲内となり、第2位相差が第2基準値よりも大きくなる第2駆動条件が設定される。
【0141】
なお、この第2動条件導出処理のステップS62~S66の処理は、画像の描画中にも繰り返し実行されてもよい。この場合の実行間隔としては、例えば、第2駆動周波数の一周期又は複数周期に相当する時間間隔等が挙げられる。
【0142】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1駆動周波数が第1共振周波数未満となる第1駆動条件に従って第1アクチュエータ31が駆動する。これにより、第1駆動周波数が第1共振周波数を超えることが抑制されるため、第1振れ角が急激に変化することが抑制される。従って、安定して画像を描画することができる。
【0143】
なお、上記実施形態で示したMMD4の構成は一例である。MMD4の構成は、種々の変形が可能である。例えば、ミラー部20を第1軸a周りの揺動させる第1アクチュエータ31を第2可動枠24に配置し、ミラー部20を第2軸a周りの揺動させる第2アクチュエータ32を第1可動枠22に配置してもよい。
【0144】
また、上記実施形態では、一対の第1角度検出センサ11A、11Bが、第1軸aを挟んで対向する位置に配置されている場合について説明したが、これに限定されない。例えば、図24に示すように、一対の第1角度検出センサ11A、11Bは、第2軸aを挟んで対向する位置に配置されてもよい。図24の例では、一対の第1角度検出センサ11A、11Bは、第1可動枠22上において、それぞれ第1支持部21の近傍に配置されている。第1角度検出センサ11Aは、ミラー部20の一方に接続された第1支持部21の近傍に配置されている。第1角度検出センサ11Bは、ミラー部20の他方に接続された第1支持部21の近傍に配置されている。従って、一対の第1角度検出センサ11A、11Bは、第2軸aを挟んで対向し、かつミラー部20を挟んで対向する位置に配置されている。また、一対の第1角度検出センサ11A、11Bは、第1軸aから同じ方向(図24の例では-X方向)にずれた位置に配置されている。
【0145】
上記実施形態のように一対の第1角度検出センサ11A、11Bが第1軸aを挟んで対向する位置に配置されている場合には、両者の出力信号のうち、一方から他方を減算することにより、振動ノイズを除去することができる。これに対し、この形態例のように、一対の第1角度検出センサ11A、11Bが第2軸aを挟んで対向する位置に配置されている場合には、両者の出力信号を加算することにより、振動ノイズを除去することができる。
【0146】
この形態例における第1信号処理部61Aの構成の一例を図25に示す。図25に示すように、この形態例では、第1信号処理部61Aは、減算回路73に代えて、加算回路73Aを有している。加算回路73Aは、第1角度検出センサ11Aからバッファーアンプ71を経由して入力された信号S1bと、第1角度検出センサ11Bから可変ゲインアンプ72を経由して入力された信号S1bとを加算した値を出力する。
【0147】
また、上記実施形態では、一対の第2角度検出センサ12A、12Bが、第2軸aを挟んで対向する位置に配置されている場合について説明したが、これに限定されない。例えば、図24に示すように、一対の第2角度検出センサ12A、12Bは、第1軸aを挟んで対向する位置に配置されてもよい。図24の例では、一対の第2角度検出センサ12A、12Bは、第2可動枠24上において、それぞれ第2支持部23の近傍に配置されている。第2角度検出センサ12Aは、第1可動枠22の一方に接続された第2支持部23の近傍に配置されている。第2角度検出センサ12Bは、第1可動枠22の他方に接続された第2支持部23の近傍に配置されている。従って、一対の第2角度検出センサ12A、12Bは、第1軸aを挟んで対向し、かつミラー部20及び第1可動枠22を挟んで対向する位置に配置されている。また、一対の第2角度検出センサ12A、12Bは、第2軸aから同じ方向(図24の例では+Y方向)にずれた位置に配置されている。
【0148】
上記実施形態のように一対の第2角度検出センサ12A、12Bが第2軸aを挟んで対向する位置に配置されている場合には、両者の出力信号のうち、一方から他方を減算することにより、振動ノイズを除去することができる。これに対し、この形態例のように、一対の第2角度検出センサ12A、12Bが第1軸aを挟んで対向する位置に配置されている場合には、両者の出力信号を加算することにより、振動ノイズを除去することができる。この形態例における第2信号処理部61Bの構成は、図25に示す第1信号処理部61Aと同様の構成により実現が可能であるため、説明を省略する。
【0149】
また、上記実施形態において、一対の第1角度検出センサ11A、11Bのうちの何れか1つがMMD4に設けられる形態としてもよい。同様に、一対の第2角度検出センサ12A、12Bのうちの何れか1つがMMD4に設けられる形態としてもよい。
【0150】
また、上記実施形態において、第1導出部64A及び第2導出部64Bが導出した第1駆動条件及び第2駆動条件が複数候補あった場合は、消費電力が最も低くなる第1駆動条件及び第2駆動条件を選択することが好ましい。
【0151】
また、駆動制御部5のハードウェア構成は種々の変形が可能である。駆動制御部5は、アナログ演算回路及びデジタル演算回路の少なくとも一方を用いて構成することが可能である。駆動制御部5は、1つのプロセッサで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせで構成されてもよい。プロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、プログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、及び専用電気回路等が含まれる。CPUは、周知のとおりソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサである。PLDは、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の、製造後に回路構成を変更可能なプロセッサである。専用電気回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである。
【符号の説明】
【0152】
2 光走査装置
3 光源
4 マイクロミラーデバイス(MMD)
5 駆動制御部
6 被走査面
10 画像描画システム
11A、11B 第1角度検出センサ
12A、12B 第2角度検出センサ
20 ミラー部
20A 反射面
21 第1支持部
22 第1可動枠
23 第2支持部
24 第2可動枠
25 接続部
26 固定枠
30 圧電素子
31 第1アクチュエータ
32 第2アクチュエータ
60A 第1駆動信号生成部
60B 第2駆動信号生成部
61A 第1信号処理部
61B 第2信号処理部
62A 第1位相シフト部
62B 第2位相シフト部
63A 第1角度導出部
63B 第2角度導出部
64A 第1導出部
64B 第2導出部
65A 第1ゼロクロスパルス出力部
65B 第2ゼロクロスパルス出力部
66 光源駆動部
71 バッファーアンプ
72 可変ゲインアンプ
73、77 減算回路
73A 加算回路
74 ゲイン調整回路
75A 第1BPF回路
75B 第2BPF回路
76A 第1検波回路
76B 第2検波回路
L 光ビーム
RN1、RN2 振動ノイズ
S1c 第1角度検出信号
S2c 第2角度検出信号
ZC1 第1ゼロクロスパルス
ZC2 第2ゼロクロスパルス
第1軸
第2軸
d1 第1駆動周波数
d2 第2駆動周波数
図1
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