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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018459
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】物品の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/50 20060101AFI20220120BHJP
   C11D 7/30 20060101ALI20220120BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20220120BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20220120BHJP
   C23G 5/028 20060101ALI20220120BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C11D7/50
C11D7/30
C11D7/26
B08B3/08 A
C23G5/028
H01L21/304 647Z
H01L21/304 647A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121572
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】光岡 宏明
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
4K053
5F157
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201BB02
3B201BB82
3B201BB94
3B201CB15
4H003BA12
4H003CA18
4H003DA05
4H003DA14
4H003DA15
4H003DA16
4H003DB01
4H003ED26
4H003ED28
4H003ED29
4K053PA17
4K053QA07
4K053RA36
4K053RA38
4K053SA06
4K053YA02
4K053YA03
5F157AA73
5F157AA74
5F157AA75
5F157BC04
5F157BD02
5F157BE12
5F157BF03
5F157BF04
5F157BF05
5F157BF22
5F157BF23
5F157CB03
5F157DB03
5F157DC61
(57)【要約】
【課題】 物品の洗浄および乾燥において、乾燥後にシミが残らず、残渣が残存する問題のない洗浄方法の提供。
【解決手段】 被洗浄物品を、水溶性の洗浄剤で洗浄する第1工程、炭素数1~3のアルコールを含有する有機溶剤で洗浄する第2工程、含フッ素オレフィンを含有する溶剤と接触させる第3工程の順に実施することを特徴とする物品の洗浄方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物品を、水溶性の洗浄剤で洗浄する第1工程、炭素数1~3のアルコールを含有する有機溶剤で洗浄する第2工程、含フッ素オレフィンを含有する溶剤と接触させる第3工程の順に実施することを特徴とする物品の洗浄方法。
【請求項2】
前記第3工程を、前記被洗浄物品を前記含フッ素オレフィンを含有する溶剤中に浸漬させることによって行う請求項1に記載の物品の洗浄方法。
【請求項3】
前記含フッ素オレフィンの沸点が30~120℃である請求項1または2に記載の物品の洗浄方法。
【請求項4】
前記含フッ素オレフィンが、ハイドロフルオロオレフィンおよびハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の物品の洗浄方法。
【請求項5】
前記ハイドロフルオロオレフィンが、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンおよびメチルパーフルオロヘプテンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種からなり、前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンおよび(Z)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項4に記載の物品の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品、電子部品、半導体部品、精密金属部品、高分子材料からなる精密部品、ガラス部品等の、物品の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の洗浄方法として多槽式浸漬型の洗浄装置を用いた洗浄方法が知られている。これは、カチオン系、アニオン系またはノニオン系の界面活性剤を含む水系の洗浄剤で洗浄した後に、純水で洗浄し、次いで、2-プロパノール等の有機溶剤で洗浄し、さらに2-プロパノール等の有機溶剤の蒸気乾燥により仕上げる方法である。
ところが、有機溶剤の洗浄槽に水が持ち込まれ、有機溶剤中の水分の濃度が高くなってくると、有機溶剤を用いた蒸気乾燥を行っても乾燥後に水分が残り、乾燥速度が遅くなる、さらには物品の表面にシミとして観察される、残渣が残存する等の問題があった。
【0003】
この問題を解決する方法として、被洗浄物品を2-プロパノール等の有機溶剤で洗浄した後に、炭化水素系溶剤またはシリコーン系溶剤中に浸漬し、超音波振動を与えた後に、引き上げて乾燥させる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、特許文献1に記載の方法では、多量の引火性有機物を取り扱うため、取扱いに十分留意する必要がある。
【0004】
この問題の解決する方法として、不燃性の溶剤である含フッ素エーテルと接触させる仕上げ方法が知られている(特許文献2参照)。しかし、地球環境への影響をさらに低減するために含フッ素エーテルよりも地球温暖化係数の小さな溶剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-3778号公報
【特許文献2】特開2005-171147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、物品の洗浄および乾燥において、乾燥後にシミが残らず、残渣が残存する問題のない洗浄方法の提供を目的とする。特に、不燃性であり、かつ地球環境に悪影響を及ぼさない溶剤を用いた物品の蒸気乾燥による仕上げ方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の構成を有する物品の洗浄法を提供する。
[1]被洗浄物品を、水溶性の洗浄剤で洗浄する第1工程、炭素数1~3のアルコールを含有する有機溶剤で洗浄する第2工程、含フッ素オレフィンを含有する溶剤と接触させる第3工程を有することを特徴とする物品の洗浄方法。
[2]上記第3工程を、被洗浄物品を含フッ素オレフィンを含有する溶剤中に浸漬させることによって行う[1]に記載の物品の洗浄方法。
[3]含フッ素オレフィンの沸点が30~120℃である[1]または[2]に記載の物品の洗浄方法。
[4]含フッ素オレフィンが、ハイドロフルオロオレフィンおよびハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、[1]~[3]のいずれか一項に記載の物品の洗浄方法。
[5]ハイドロフルオロオレフィンが、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンおよびメチルパーフルオロヘプテンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種からなり、ハイドロクロロフルオロオレフィンが、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンおよび(Z)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、[4]に記載の物品の洗浄方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第3工程で使用する溶剤は、不燃性であり、地球環境に悪影響を及ぼさないことから、蒸気乾燥に適する。
さらに、本発明の洗浄方法によれば、乾燥後にシミが残らず、残渣が残存する問題が起こらない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<洗浄物品>
本発明の洗浄方法において、適用可能な物品の材質としては、金属、樹脂、エストラマー、ガラス、セラミックスが挙げられる。また、物品としては、これらの2種以上の材料を有する複合材料からなる物品であってもよい。複合材料としては、金属と樹脂の積層体等が挙げられる。
【0010】
物品の具体例としては、光学部品、電子部品、半導体部品、精密金属部品、高分子材料からなる精密部品、ガラス部品およびそれらの部品等が挙げられる。光学部品、電子部品、半導体部品、精密金属部品、高分子材料からなる精密部品、ガラス部品およびそれらの部品の具体例としては、IC、コンデンサ、プリンタ基板、マイクロモーター、リレー、ペアリング、光学レンズ、ガラス基板等が挙げられる。
【0011】
<汚れ>
本発明の洗浄方法において、洗浄除去される汚れとしては、各種被洗浄物に付着した微粒子、加工油、離型剤、界面活性剤、フラックス、これらを介して付着した塵埃等が挙げられる。加工油としては、切削油、焼き入れ油、圧延油、潤滑油、機械油、プレス加工油、打ち抜き油、引き抜き油、組立油、線引き油等が挙げられる。
【0012】
<第1工程>
本発明における第1工程では、水溶性の洗浄剤を用いて、被洗浄物品の表面に付着した汚れを除去する。ここで、水溶性の洗浄剤としては、カチオン系、アニオン系またはノニオン系の界面活性剤を含む水系の洗浄剤、または準水系の洗浄剤を用いることができる。ここで、準水系の洗浄剤とは、炭化水素系溶剤やグリコール系溶剤と、水とを含有する洗浄剤であって、界面活性剤を含有する場合もある。このような準水系の洗浄剤を用いた場合は、洗浄後に水でリンスすることが必要となる。
【0013】
また、洗浄方法としては、被洗浄物品を洗浄剤中に浸漬し、浸漬した被洗浄物に超音波を照射する方法、被洗浄物品を洗浄剤中で揺動する方法、洗浄剤中で洗浄剤を被洗浄物に強制的に吹き付ける方法(いわゆる、液中シャワー洗浄、噴流洗浄。)等が、洗浄効率を向上できることから好ましい。この他の方法としては、被洗浄物品に洗浄剤をスプレーで吹き付けて洗浄する方法も採用できる。このような浸漬による洗浄方法、スプレーによる洗浄方法は、単独で行ってもよいが、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
【0014】
この第1工程の後、必要に応じて、純水、水道水、地下水等の水を用いてリンスすることが好ましい。被洗浄物品が、レンズ等の光学部品である場合は、純水を用いるのが好ましい。リンスの方法は、第1工程の洗浄方法と同様に、被洗浄物品を水に浸漬する方法や、被洗浄物品に水をスプレーする方法を用いることができる。
【0015】
第1工程における洗浄を行う際の洗浄剤の温度や、水を用いたリンスを行う際の水の温度は特に限定されない。洗浄剤は、引火点を有しない場合は加温して用いてもよいが、引火点を有する場合は、引火点以下の温度で用いることが好ましい。
【0016】
第1工程を終了した被洗浄物品は、第2工程に送られるが、その間、被洗浄物品の表面に付着した水が完全に乾燥する前に第2工程に送ることが好ましい。これは、被洗浄物品表面の乾燥状態が不均一になるとしみの発生等の原因となるためである。そのため、第1工程の最終段階で洗浄剤の温度を下げる、第1工程が終了した場合であっても第2工程に導入できるまでの間、水の中に浸漬して待機する、搬送速度を早くする等の処置が必要となる場合がある。
【0017】
<第2工程>
次に、第2工程では、炭素数1~3のアルコールを含有する有機溶剤(以下、有機溶剤(A)ともいう。)を用いて被洗浄物品を洗浄する。この工程では、前工程の洗浄により水が付着した被洗浄物品を、有機溶剤(A)と接触させることにより付着した水を除去する。
【0018】
炭素数1~3のアルコールとしては、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノールが挙げられる。これらは単独で用いてもよいが、2種以上の混合物として用いてもよい。これらの化合物は、付着した水に対して十分な相溶性を有することから水切りに適しているとともに、第3工程で使用する含フッ素オレフィンとも適度な相溶性を有する。なお、有機溶剤(A)は、目的によっては、さらにケトンやエーテル等のその他の有機溶剤を含有していてもよい。
【0019】
有機溶剤(A)の100質量%のうち、炭素数1~3のアルコールの含有量は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。上記範囲内であれば、被洗浄物品から水が除去され、乾燥後のシミの発生を抑制することができる。
【0020】
第2工程における洗浄は、多量の水分が残存すると第3工程で被洗浄物品の表面に付着した水が除去しきれずに乾燥後にシミが発生する、第3工程で浸漬を行った場合に液面に水が浮上して、それが被洗浄物品を引き上げられる際に再付着してシミの原因となる等の場合もあることから、被洗浄物品を有機溶剤(A)中に浸漬させる浸漬洗浄によって行うことが好ましい。浸漬洗浄の具体的な方法としては、第1工程における洗浄と同様の方法が挙げられる。また、さらに、被洗浄物品に付着している有機溶剤(A)の水分濃度を下げるという観点からは、浸漬洗浄の後に、上記有機溶剤を用いて蒸気洗浄、スプレー洗浄等を行うことが好ましい。
【0021】
なお、第2工程を終了した被洗浄物品は、第3工程に送られるが、その間、被洗浄物品の表面に付着したアルコールが乾燥する前に第3工程に送られることが好ましい。これは、被洗浄物品表面の乾燥状態が不均一になるとシミ発生等の原因となるためである。そのため、第2工程での最終段階で洗浄剤の温度を下げる、第2工程が終了した場合であっても第3工程に導入できるまでの間、アルコールの中に浸漬して待機する、搬送速度を早くする等の処置が必要となる場合がある。
【0022】
<第3工程>
次に、第3工程では、被洗浄物品を含フッ素オレフィンを含有する溶剤(以下、溶剤(B)ともいう。)と接触させて洗浄を行う。この工程では、被洗浄物品に溶剤(B)を接触させることにより、被洗浄物品表面に付着したアルコールを除去する。
含フッ素オレフィンの沸点は30~120℃が好ましい。上記範囲内であれば、蒸気洗浄を行った場合であっても、被洗浄物品に与える熱衝撃が小さいこと、アルコールと任意の濃度で迅速に溶解することから、特に好ましい。
【0023】
含フッ素オレフィンとしては、ハイドロフルオロオレフィン(以下、HFOともいう。)またはハイドロクロロフルオロオレフィン(以下、HCFOともいう。)が挙げられる。
HFOとしては、たとえば、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(以下、1336mzzともいう。)、メチルパーフルオロヘプテンエーテル(以下、MPHEともいう。)等が挙げられる。また、HCFOとしては、たとえば、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(以下、1233ydともいう。)、(Z)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(以下、1233zd(Z)ともいう。)が挙げられる。これらのHFOまたはHCFOは、全て単独もしくは混合物として本発明の洗浄方法に使用できる。
【0024】
1233ydには、1233ydのZ異性体(以下、1233yd(Z)ともいう。)および1233ydのE異性体(以下、1233yd(E)ともいう。)の立体異性体があることが知られている。溶剤(B)に含有される1233ydとしては、生産性を考慮すると1233yd(Z)と1233yd(E)の異性体混合物を用いることが好ましく、特には1233yd(Z)の含有割合が1233yd(E)の含有割合より高い混合物を用いるのが好ましい。
【0025】
また、第3工程において、溶剤(B)は含フッ素オレフィンのみからなることが好ましいが、目的によっては、含フッ素オレフィンにその他の有機溶剤(以下、他の有機溶剤(C)ともいう。)を含有させたものを被洗浄物品に接触させてもよい。例えば、アルコールの溶解力を高めるため、または乾燥速度を調節するためである。また、溶剤(B)と他の有機溶剤(C)の混合物が、共沸組成を有する場合は、共沸組成で使用するのが好ましい。
【0026】
他の有機溶剤(C)としては、例えば、炭化水素、アルコール、ケトン、ハロゲン化炭化水素、エーテル、およびエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
炭化水素としては、n-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタンが好ましい。
アルコールとしては、炭素数1~16のアルコールが好ましく、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和アルコールであってもよく、不飽和アルコールであってもよい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
ケトンとしては、炭素数3~9のケトンが好ましく、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和ケトンであってもよく、不飽和ケトンであってもよい。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトンが好ましい。
ハロゲン化炭化水素としては、炭素数1~6の飽和または不飽和の塩素化または塩素化フッ素化炭化水素が好ましい。
ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、trans-1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレンがより好ましい。
エーテル類としては、炭素数2~8の鎖状または環状の飽和または不飽和エーテル類が
好ましく、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランが好ましい。
エステルとしては、炭素数2~19のエステルが好ましい。エステルは、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和エステルであってもよく、不飽和エステルであってもよい。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチルが好ましい。
【0027】
また、第3工程において、必要に応じて溶剤(B)は、含フッ素オレフィンの分解を抑制する安定剤を含有することが好ましい。安定剤としては1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記安定剤として、具体的には、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、tert-ブチルアミン、α-ピコリン、N-メチルベンジルアミン、ジアリルアミン、N-メチルモルホリン、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、チモール、p-tert-ブチルフェノール、tert-ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o-メトキシフェノールp-メトキシフェノール、4,4’-ジヒドロキシフェニル-2,2-プロパン、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[(N,N-ビス-2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1,2-プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,4-ジオキサン、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、イソアミレン、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン、2,4,4-トリメチル-2-ペンテン、2-メチルペンテン、ジイソブチレン等が挙げられる。
【0028】
溶剤(B)における含フッ素オレフィンの含有割合は、溶剤(B)の100質量%のうち、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
含フッ素オレフィンとして1233ydを用いた場合、1233yd(Z)の含有量は、1233ydの100質量%のうち、50質量%以上であることが好ましく、75~98質量%であることがより好ましく、90~98質量%であることが特に好ましい。
【0029】
他の有機溶剤(C)の含有量の下限は、添加する目的を達成し得る最低限の量とするが、一般的な目安としては、溶剤全量における他の有機溶剤の含有割合は20質量%以下、特には10質量%以下とするのが好ましい。
【0030】
溶剤(B)が安定剤を含む場合は、安定剤の量は、溶剤(B)中の含フッ素オレフィンの全量に対して、1質量ppm以上であることが好ましく、3質量ppm以上であることがより好ましく、5質量ppm以上であることが特に好ましい。安定剤の量の上限としては5質量%が好ましく、1質量%が特に好ましい。上記範囲であれば、加熱条件等の過酷な条件下であっても溶剤が分解されることなく使用できる。
【0031】
第3工程において、被洗浄物品を溶剤(B)と接触させる方法としては、浸漬洗浄、蒸気洗浄、スプレー洗浄等を用いることができるが、第2工程で被洗浄物品に付着したアルコールを確実に溶剤(B)と接触させ、かつ第3工程終了時に被洗浄物品に付着する溶剤(B)に含まれるアルコール濃度を低く保つことでシミの発生を完全になくすという観点から、被洗浄物品を溶剤(B)中に浸漬させることによって行う浸漬洗浄を用いるのが好ましい。
【0032】
浸漬洗浄の方法としては、被洗浄物品を溶剤(B)中に浸漬し、浸漬した被洗浄物に超音波を照射する方法、被洗浄物品を溶剤(B)中で揺動する方法、溶剤(B)中で溶剤(B)を被洗浄物に強制的に吹き付ける方法(いわゆる、液中シャワー洗浄、噴流洗浄。)等が好ましい。
また、このような浸漬洗浄、スプレー洗浄、蒸気洗浄は、単独で行ってもよいが、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
【0033】
特に、浸漬洗浄またはスプレー洗浄を行った後、含フッ素オレフィンを用いて蒸気洗浄を行うと、被洗浄物品を短時間で容易に乾燥できるという利点がある。これは、被洗浄物品の洗浄および乾燥が、以下のようなプロセスを経ることによる。
すなわち、溶剤(B)で浸漬洗浄またはスプレー洗浄した後に、沸騰した溶剤(B)から発生した蒸気に被洗浄物品を曝して蒸気洗浄を行うと、被洗浄物品の表面の温度が溶剤(B)の沸点以下の温度である間は、被洗浄物品の表面で溶剤(B)の蒸気が凝縮するとともに、被洗浄物品の表面の温度は徐々に上昇する。これにより、被洗浄物品の表面に残存していたアルコール等は除去される。そして、被洗浄物品の表面の温度は、最高で溶剤(B)の沸点まで上昇する。
【0034】
その後、溶剤(B)の蒸気層から取り出された被洗浄物品は、液体状の溶剤(B)の付着が少なく、沸点もしくは沸点近くにまで加温されているため、付着している溶剤(B)は短時間で蒸発し、乾燥する。
【実施例0035】
(例1)
あらかじめよく洗浄したガラス試験片(25mm×30mm×厚さ2mm)を用いて、ビーカーにて洗浄試験を実施した。ガラス試験片を加工油(ユシローケンEC50 20倍希釈液)に10秒間浸漬し、5分間静置したものを試験に用いた。加工油を付着させた試験片を、水酸化カリウムを1重量%添加したpH14のアルカリ洗浄剤に1分間超音波浸漬洗浄、さらに別の同じアルカリ洗浄剤に1分間超音波浸漬洗浄を実施したのち、水道水に1分間浸漬、純水に1分間浸漬し、さらに純水に1分間浸漬した後に、イソプロパノールに1分間浸漬した。ガラス試験片をイソプロパノールから取り出し、次いで、含フッ素オレフィンであるAS-300(AGC株式会社製)の蒸気に3分間接触させ、物品表面のイソプロパノールをハイドロクロロフルオロオレフィンで置換した。蒸気発生装置としては、冷却コイルを装着した3Lガラス製ビーカーを用い、ハイドロクロロフルオロオレフィンを300ml入れ、これを54℃に加熱して蒸気を発生させた。
本試験後のガラス試験片の状態を目視で確認したところ、加工油の残留や乾燥不良などの異常はみられなかった。
【0036】
(例2)
実施例の含フッ素オレフィンを1233zd(Z)に変更した以外は同じ方法で試験片の洗浄試験を実施した。
【0037】
(例3)
同様に、含フッ素オレフィンを1336mzzに変更した以外は同じ方法で試験片の洗浄試験を実施した。どちらの場合でも試験後のガラス試験片に加工油の残留や乾燥不良はみられなかった。
【0038】
(例4)
また、実施例のイソプロパノールをメタノールに変更して同様の試験を実施したところ、試験後のガラス試験片に加工油の残留や乾燥不良はみられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、光学部品、電子部品、半導体部品、精密金属部品、高分子材料からなる精密部品、ガラス部品等の洗浄乾燥に使用できる。