(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184627
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】セリシン含有粉末、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20221206BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20221206BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221206BHJP
C07K 1/02 20060101ALI20221206BHJP
A61K 8/64 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
C08J3/12 Z
A61K38/17
A61P19/02
A61P43/00 111
C07K1/02
A61K8/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092578
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 英敏
(72)【発明者】
【氏名】亀田 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】虫賀 澄人
(72)【発明者】
【氏名】中之庄 正弘
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4F070
4H045
【Fターム(参考)】
4C083AD411
4C083AD451
4C083EE16
4C084BA44
4C084CA43
4C084DC50
4C084ZC20
4F070AA62
4F070AB22
4F070DA33
4F070DC11
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA10
4H045CA50
4H045GA01
4H045HA31
(57)【要約】
【課題】高分子量のセリシンを含有し、且つ含有されるセリシンの溶解性が良好なセリシン含有粉末、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】SDS-PAGE法により150kDa以上の分子量に対応する範囲に少なくとも1つのバンドが検出されるセリシンを含有し、含有されるセリシンの温度80℃の水に対する溶解度が0.45g/水溶液100g以上であるセリシン含有粉末。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SDS-PAGE法により150kDa以上の分子量に対応する範囲に少なくとも1つのバンドが検出されるセリシンを含有し、含有されるセリシンの温度80℃の水に対する溶解度が0.45g/水溶液100g以上であるセリシン含有粉末。
【請求項2】
アニオン性界面活性剤及び尿素から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載のセリシン含有粉末。
【請求項3】
前記アニオン性界面活性剤が、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、及びN-アシルアミノ酸塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のセリシン含有粉末。
【請求項4】
前記アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩から選ばれる少なくとも1種が式(1)で表される化合物であり、前記N-アシルアミノ酸塩が式(2)で表される化合物である請求項3に記載のセリシン含有粉末。
【化1】
(式中、R
1は炭素数1~3のアルキレン基を示し、R
2は炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基を示す。nは0以上の整数を示し、X
+は1価のカチオンを示す。
R
3は炭素数8~20のアルキル基を示し、R
4は炭素数1~3のアルキル基を示す。mは0~3の整数を示し、Y
+は1価のカチオンを示す。)
【請求項5】
繭及び水を接触することによって得られるセリシン抽出液とアニオン性界面活性剤及び尿素から選ばれる少なくとも1種とを混合し、得られる混合物を乾燥するセリシン含有粉末の製造方法。
【請求項6】
アニオン性界面活性剤の存在下で繭と水とを接触させるセリシン抽出液の製造方法。
【請求項7】
尿素の存在下で繭と水とを接触させて得られるセリシン抽出液、又は請求項6に記載のセリシン抽出液を乾燥するセリシン含有粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリシン含有粉末、及びその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、高分子量のセリシンを含有し、含有されるセリシンの溶解性に優れたセリシン含有粉末、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蚕等が吐糸する繭糸は、セリシンとフィブロインという2種類のタンパク質から主に構成されている。このうち、フィブロインは繭の繊維を構成するタンパク質であり、セリシンはフィブロインが形成する繊維の外側を層状に覆い、その接着などに関わるタンパク質である。
【0003】
繭に含まれるセリシンは、例えば、絹糸の精練工程において繭をアルカリ性の熱水で煮てフィブロインを取り出す際に可溶化する。従って、通常、セリシンは、この精練工程の廃液から得られるが、加水分解によって低分子量化している。
【0004】
一方、低分子量化されたセリシンよりも高分子量のセリシンを含む方が、優れたチロシナーゼ阻害活性を示したり(引用文献1)、コラゲナーゼ阻害作用に優れたり(引用文献2)、エラスターゼ阻害作用に優れたり(引用文献3)することが知られている。
【0005】
また高分子量のセリシンを得る方法としては、100℃を超える温度において尿素水溶液で抽出し、該抽出液から分子ふるいクロマトを用いる方法等でセリシンを分離する方法が知られている(引用文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-40905号公報
【特許文献2】特開2020-132539号公報
【特許文献3】特開2020-132540号公報
【特許文献4】特開平11-92564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし一般的に、高分子量のセリシンは溶解性が悪いため、特に高分子量のセリシンが粉末状である場合には化粧品剤形等への配合が困難という課題があった。また高分子量のセリシンを水溶液で取得した場合も、経時的にゲル化してしまうため、安定な状態での取得や化粧品剤型等への配合が困難という課題があった。
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、高分子量のセリシンを含有し、且つ含有されるセリシンの溶解性が良好なセリシン含有粉末、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] SDS-PAGE法により150kDa以上の分子量に対応する範囲に少なくとも1つのバンドが検出されるセリシンを含有し、含有されるセリシンの温度80℃の水に対する溶解度が0.45g/水溶液100g以上であるセリシン含有粉末。
[2] アニオン性界面活性剤及び尿素から選ばれる少なくとも1種を含む[1]に記載のセリシン含有粉末。
[3] 前記アニオン性界面活性剤が、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、及びN-アシルアミノ酸塩から選ばれる少なくとも1種である[1]又は[2]に記載のセリシン含有粉末。
[4] 前記アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩から選ばれる少なくとも1種が式(1)で表される化合物であり、前記N-アシルアミノ酸塩が式(2)で表される化合物である[3]に記載のセリシン含有粉末。
【化1】
(式中、R
1は炭素数1~3のアルキレン基を示し、R
2は炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基を示す。nは0以上の整数を示し、X
+は1価のカチオンを示す。
R
3は炭素数8~20のアルキル基を示し、R
4は炭素数1~3のアルキル基を示す。mは0~3の整数を示し、Y
+は1価のカチオンを示す。)
[5] 繭及び水を接触することによって得られるセリシン抽出液とアニオン性界面活性剤及び尿素から選ばれる少なくとも1種とを混合し、得られる混合物を乾燥するセリシン含有粉末の製造方法。
[6] アニオン性界面活性剤の存在下で繭と水とを接触させるセリシン抽出液の製造方法。
[7] 尿素の存在下で繭と水とを接触させて得られるセリシン抽出液、又は[6]に記載のセリシン抽出液を乾燥するセリシン含有粉末の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高分子量のセリシンを含有しながらも、含有されるセリシンの溶解性(特に水に対する溶解性)が良好なセリシン含有粉末、及びその製造方法を提供することができる。本発明のセリシン含有粉末は含有されるセリシンの溶解性が良好であるため、化粧品剤形等への配合性が高く扱い易い。またセリシンを溶液の状態で保存すると、保存時等にセリシンの加水分解や、特に高分子量の場合は望まないゲル化が起きるおそれがあるが、本発明ではセリシンを粉末状としているため、保存時の安定性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1~9、比較例1で得られたセリシンについてのSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【
図2】
図2は、実施例10~17、比較例1で得られたセリシンについてのSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【
図3】
図3は、実施例20で得られたセリシンについてのSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【
図4】
図4は、実施例22~27で得られたセリシンについてのSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【
図5】
図5は、実施例28で得られたセリシンについてのSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【
図6】
図6は、実施例29、30で得られたセリシンについてのSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【
図7】
図7は、実施例31で得られたセリシンについてのSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【
図8】
図8は、実施例32~35で得られたセリシンについてのSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【
図9】
図9は、実施例36~39、比較例2で得られたセリシンについてのSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(セリシン含有粉末)
本発明のセリシン含有粉末に含有されるセリシンは、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)法において、バンドが確認できなかったり、スメアになるのではなく、明確なバンドが検出されるものである。具体的には、150kDa以上の分子量に対応する範囲において、少なくとも1つのバンドが検出されるものである。前記バンドとしては、150kDa以上の分子量に対応する範囲に検出されればよいが、好ましくは160kDa以上、より好ましくは180kDa以上の分子量に対応する範囲に検出されることが望ましい。また前記の範囲に検出されるバンド数は、1以上であればよく、上限は特に制限されないが、前記の範囲に検出されるバンド数としては、1~5本が好ましく、2~5本がより好ましい。SDS-PAGE法により250kDa付近に明確なバンドが検出されるセリシンを含有するセリシン含有粉末が特に好ましい。またSDS-PAGE法により315kDa付近に明確なバンドが検出されるセリシンを含有するセリシン含有粉末も好ましい。これらのバンドが検出されるようなセリシンを含有するセリシン含有粉末であれば、含有されるセリシンは低分子量化されておらず、高分子量のセリシン特有の性状を示す。
なおSDS-PAGE法において検出されるバンドに対応する分子量は、マーカータンパク質(例えば、プレシジョン Plus プロテインTM2色スタンダード;BIO-RAD製、製品番号1610374等)の分子量画分のバンドとの対比により決定することができる。またバンドの濃さからバンドの構成比率を算出することができるが、本発明のセリシン含有粉末に含有されるセリシンは、150kDa以上の分子量に対応する範囲において、少なくとも1つのバンドが検出されるような高分子量であればよく、その構成は特に制限されない。
【0012】
本発明のセリシン含有粉末に含有されるセリシンは、溶解性に優れる。前記溶解性に優れるとは、具体的には、水に対する溶解度が高いことが好ましく、例えば、セリシン含有粉末に含有されるセリシンの温度80℃の水に対する溶解度が0.45g/水溶液100g以上であることがより好ましい。セリシン含有粉末に含有されるセリシンの溶解度は、下記の方法で求めることができる。
セリシン濃度が1質量%となるように、純水にセリシン含有粉末を添加し、80℃で30分間溶解する。溶解後、9,500×gの加速度で5分間遠心分離し、上澄みを回収して得られた水溶液におけるセリシン濃度を、Bradford法又は280nmの吸光度から算出する。該算出したセリシン濃度から溶解したセリシンの質量を求める。なお吸光度からのセリシン濃度算出は、検量線を作成することにより行う。そして溶解したセリシンの質量と、はじめに添加したセリシンの質量から、下記式にて溶解率を算出し、該溶解率を用いて溶解度を求める。
セリシンの溶解率(wt%)=(溶解したセリシンの質量/添加したセリシンの質量)×100
セリシンの溶解度(g/水溶液100g)=100(g)×1(wt%)×セリシンの溶解率(wt%)
【0013】
セリシン含有粉末に含有されるセリシンの温度80℃の水に対する溶解度は、0.45g/水溶液100g以上であればよいが、0.50g/水溶液100g以上が好ましく、0.60g/水溶液100g以上がより好ましく、0.70g/水溶液100g以上がさらに好ましい。またセリシン含有粉末に含有されるセリシンの溶解度は、前記測定法の上限値(1.00g/水溶液100g)であってもよい。セリシン含有粉末は、含有されるセリシンが前記のような溶解度を有することにより、化粧品剤形等への配合が容易となる。
【0014】
セリシン含有粉末としては、溶解性に優れることが好ましく、特に水に対する溶解度が高いことが好ましい。セリシン含有粉末としては、例えば、温度80℃の水に対する溶解度が0.50g/水溶液100g以上であることが好ましい。セリシン含有粉末の溶解度は、下記の方法で求めることができる。
純水に濃度が1質量%となるようにセリシン含有粉末を添加し、80℃で30分間溶解する。溶解後、9,500×gの加速度で5分間遠心分離し、上澄みを回収して得られた水溶液を加熱乾燥させて得られた固形分濃度をセリシン含有粉末の濃度とする。該セリシン含有粉末の濃度から溶解したセリシン含有粉末の質量を求める。そして溶解したセリシン含有粉末の質量と、はじめに添加したセリシン含有粉末の質量から、下記式にて溶解率を算出し、該溶解率を用いて溶解度を求める。
セリシン含有粉末の溶解率(wt%)=(溶解したセリシン含有粉末の質量/添加したセリシン含有粉末の質量)×100
セリシン含有粉末の溶解度(g/水溶液100g)=100(g)×1(wt%)×セリシン含有粉末の溶解率(wt%)
【0015】
セリシン含有粉末の温度80℃の水に対する溶解度は、0.55g/水溶液100g以上であることがより好ましく、0.60g/水溶液100g以上がより好ましく、0.70g/水溶液100g以上がさらに好ましい。またセリシン含有粉末の溶解度は、前記測定法の上限値(1.00g/水溶液100g)であってもよい。
【0016】
本発明のセリシン含有粉末は、アニオン性界面活性剤及び尿素から選ばれる少なくとも1種を含む粉末であることが好ましい。
【0017】
前記アニオン性界面活性剤としては、特に制限はされないが、例えば、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩等の硫酸系アニオン界面活性剤;アルキルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルグリシジルエーテルスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、N-アシルメチルタウリン塩等のスルホン酸系アニオン界面活性剤;ポリカルボン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩、アシル乳酸塩等のカルボン酸系アニオン界面活性剤;アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩等のリン酸系アニオン界面活性剤等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、硫酸系アニオン界面活性剤、スルホン酸系アニオン界面活性剤、カルボン酸系アニオン界面活性剤が好ましく、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、N-アシルアミノ酸塩がより好ましく、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸塩がさらに好ましい。
なお前記「塩」としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アミン塩;アンモニウム塩等が挙げられ、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましい。
【0018】
セリシン含有粉末がアニオン性界面活性剤を含む場合、アニオン性界面活性剤は、1種のみでもよく、2種以上を含んでいてもよく、上限は特に限定されないが、5種以下が好ましく、3種以下がより好ましい。
【0019】
前記アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩から選ばれる少なくとも1種としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0020】
【化2】
(式中、R
1は炭素数1~3のアルキレン基を示し、R
2は炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基を示す。nは0以上の整数を示し、X
+は1価のカチオンを示す。)
【0021】
R1で示される炭素数1~3のアルキレン基としては、メチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基が挙げられ、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基が好ましく、エタン-1,2-ジイル基がより好ましい。なおnが2以上の整数の場合、複数のR1は同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0022】
R2で示される炭素数8~20のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよく、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、(2-メチル)ヘプチル基、(2-エチル)ヘプチル基、(3-エチル)ヘプチル基、(1-ヘキシル)ヘプチル基、(2-メチル)オクチル基、(2-エチル)オクチル基、(1-ヘプチル)オクチル基、(2-エチル)ノニル基、(1-オクチル)ノニル基等が挙げられる。R2で示される炭素数8~20のアルキル基としては、直鎖アルキル基が好ましい。またR2で示されるアルキル基の炭素数としては、8~15が好ましく、10~13がより好ましい。
【0023】
R2で示される炭素数8~20のアルケニル基としては、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよく、例えば、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデシニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、1,1-ジメチル-2-オクテニル基、1-エチル-2-オクテニル基、1,2-ジメチル-1-オクテニル基等が挙げられる。R2で示される炭素数8~20のアルケニル基としては、直鎖アルケニル基が好ましい。またR2で示されるアルケニル基の炭素数としては、8~16が好ましく、10~14がより好ましい。
【0024】
nで示される0以上の整数としては、0~50の整数が好ましく、0~25の整数がより好ましく、0~15の整数がさらに好ましく、0~10の整数がよりさらに好ましく、0であることがいっそう好ましい。
【0025】
X+で示される1価のカチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属のイオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属のイオン;アンモニウムイオン(NH4+)、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオン、第4級アンモニウムイオン等のオニウムイオン等が挙げられる。X+で示される1価のカチオンとしては、アルカリ金属のイオン、オニウムイオンが好ましく、アルカリ金属のイオン、アンモニウムイオン(NH4+)、トリエタノールアンモニウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン(NH4+)がさらに好ましい。
【0026】
式(1)で表される化合物としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0027】
前記N-アシルアミノ酸塩としては、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0028】
【化3】
(式中、R
3は炭素数8~20のアルキル基を示し、R
4は炭素数1~3のアルキル基を示す。mは0~3の整数を示し、Y
+は1価のカチオンを示す。)
【0029】
R3で示される炭素数8~20のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよく、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、(2-メチル)ヘプチル基、(2-エチル)ヘプチル基、(3-エチル)ヘプチル基、(1-ヘキシル)ヘプチル基、(2-メチル)オクチル基、(2-エチル)オクチル基、(1-ヘプチル)オクチル基、(2-エチル)ノニル基、(1-オクチル)ノニル基等が挙げられる。R3で示される炭素数8~20のアルキル基としては、直鎖アルキル基が好ましい。またR3で示されるアルキル基の炭素数としては、8~16が好ましく、10~14がより好ましい。
【0030】
R4で示される炭素数1~3のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。R4で示される炭素数1~3のアルキル基としては、直鎖アルキル基が好ましい。またR4で示されるアルキル基の炭素数としては、1~2が好ましく、1がより好ましい。
【0031】
mで示される0~3の整数としては、0~2の整数が好ましく、1がより好ましい。
【0032】
Y+で示される1価のカチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属のイオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属のイオン;アンモニウムイオン(NH4+)、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオン、第4級アンモニウムイオン等のオニウムイオン等が挙げられる。Y+で示される1価のカチオンとしては、アルカリ金属のイオン、オニウムイオンが好ましく、アルカリ金属のイオン、アンモニウムイオン(NH4+)、トリエタノールアンモニウムイオンがより好ましく、アルカリ金属のイオンがさらに好ましく、ナトリウムイオンがよりさらに好ましい。
【0033】
式(2)で表される化合物としては、例えば、カプロイルメチルβアラニンナトリウム、ラウロイルメチルβアラニンナトリウム、ミリストイルメチルβアラニンナトリウム等が挙げられる。
【0034】
前記アニオン性界面活性剤及び/又は尿素のセリシン含有粉末における含有率は、セリシン含有粉末の溶解度向上の観点から、セリシン含有粉末の総量中、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、また90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
なおセリシン含有粉末に、アニオン性界面活性剤及び尿素から選ばれる2種以上を含む場合には、それらの合計含有率が前記含有率の範囲内であることが好ましい。
【0035】
セリシン含有粉末中のアニオン性界面活性剤及び/又は尿素の含有量は、抽出液の上澄みを回収して得られた水溶液におけるセリシン濃度を、Bradford法又は280nmの吸光度から算出し、上澄みを回収して得られた水溶液を加熱乾燥させて得られた固形分濃度から減ずることで得られる。またガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー等の周知の分析手段を用いてセリシン含有粉末から目的化合物(アニオン性界面活性剤又は尿素)を分離し、標準物質を用いて検量線を作成することにより測定することができる。また尿素を公知の方法で誘導化した後にクロマトグラフィーで分析してもよい。
【0036】
本発明のセリシン含有粉末におけるセリシンの含有率は、セリシンが有するチロシナーゼ阻害作用、コラゲナーゼ阻害作用、エラスターゼ阻害作用等の機能を十分に発揮する観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上がよりさらに好ましく、60質量%以上がいっそう好ましく、またセリシン含有粉末の溶解度の観点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
本発明のセリシン含有粉末は、高分子量のセリシンを含有する点、及び含有されるセリシンが良好な溶解性を有する点を損なわない限りは、セリシン、アニオン性界面活性剤及び尿素以外のその他の成分を含んでいてもよいが、その含有率はセリシン含有粉末の総量中、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、セリシン含有粉末は前記その他の成分を含んでいないことが特に好ましい。
【0037】
(セリシン含有粉末の製造方法)
従来、セリシンは、繭、該繭を構成する繭糸や生糸に対して、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解等の加水分解法により加水分解し、溶出して得られていた。しかしながら、本発明のセリシン含有粉末は、例えば、繭、繭糸、生糸等から前記した加水分解法を経ずにセリシンを抽出して、該抽出液を乾燥することにより得られる。よって本発明のセリシン含有粉末は、加水分解されていないセリシンを含有する。なお本発明のセリシン含有粉末は、高分子量のセリシン(SDS-PAGE法により150kDa以上の分子量に対応する範囲にバンドを有するセリシン)が含有されるならば、前記抽出の際に加水分解されたセリシンが含まれることになってもよい。また本発明のセリシン含有粉末は、フィブロインを含んでいてもよい。
【0038】
前記繭、繭糸及び生糸は、蚕等の絹糸虫類から産生されたものであれば特に限定されず、クワコ、ウスバクワコといったカイコガ科の野蚕、テンサン(天蚕)、サクサン(柞蚕)、タサールサンといったヤママユガ科の野蚕、ミツバチ、スズメバチ、クモ、トビケラ等の昆虫から産生された絹糸を用いてもよく、産地も特に限定されない。また蚕としては、天然のものであっても、突然変異や品種改良、遺伝子操作を行ったものであってもよい。例えば、高分子量のセリシンを効率よく抽出できる傾向にあることから、フィブロインの産生能が劣る蚕を用いることができ、具体的には、突然変異や品種改良によりフィブロインの産生能が低下した蚕(例えば、セリシンホープ(セリシンC)、セリシンN、Nd蚕、Nd-s蚕、MNS300、MCS300等)を用いることができる。
【0039】
蚕の繭は、蚕の幼虫が蛹化の際に絹糸腺内の絹タンパクを分泌して作る構造体であり、繭から蛹を分離することにより得られる。また、蚕の生糸とは、前記繭から取り出した繭糸(絹繊維)を何本か合一させて糸状にすることにより得られる。
【0040】
セリシン含有粉末の製造において、繭はそのままの状態で用いてもよく、裁断や破砕、乾燥等の加工した繭を用いてもよい。
【0041】
本発明のセリシン含有粉末を製造する方法としては、例えば、下記製造方法A及び製造方法Bが挙げられる。
【0042】
((製造方法A))
製造方法Aは、繭(前記繭糸や生糸であってもよい)及び水を接触することによって得られるセリシン抽出液とアニオン性界面活性剤及び尿素から選ばれる少なくとも1種とを混合し、得られる混合物を乾燥する方法である。
【0043】
製造方法Aにおいてセリシン抽出時、水以外にも有機溶媒を抽出溶媒として用いてもよい。前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が4以下の低級アルコール;プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルモルホリン-N-オキシド等の非プロトン性溶媒等が挙げられる。抽出溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。抽出溶媒としては、好ましくは水単独である。
【0044】
また高分子量のセリシンを抽出する観点から、前記抽出溶媒に無機塩を含有させることが好ましい。前記無機塩としては、特に限定されず、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩を用いることができ(特に、アルカリ金属ハロゲン化物が好ましい)、具体的には、臭化リチウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸カリウム等が挙げられ、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
無機塩を含有する抽出溶媒としては、例えば、臭化リチウム水溶液、臭化カリウム水溶液、塩化リチウム水溶液、塩化カリウム水溶液、チオシアン酸リチウム水溶液、チオシアン酸カリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化カルシウム/エタノール溶液、強電解水、硝酸カルシウム/メタノール溶液等が挙げられ、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。無機塩を含有する抽出溶媒としては、臭化リチウム水溶液が好ましい。
【0046】
水等の抽出溶媒が無機塩を含有する場合、無機塩の濃度としては、セリシンを効率的に抽出でき、またセリシンが加水分解を受けない又は受け難い限りは特に限定されずに適宜設定できるが、例えば、3molL-1以上が好ましく、4molL-1以上がより好ましく、5molL-1以上がさらに好ましく、6molL-1以上がよりさらに好ましく、7molL-1以上がいっそう好ましく、8molL-1以上がよりいっそう好ましく、また20molL-1以下が好ましく、15molL-1以下がより好ましい。
【0047】
製造方法Aにおける抽出溶媒の使用量としては、適宜設定できるが、例えば、繭に対して質量比で10~60倍量であることが好ましく、15~50倍量であることがより好ましい。
【0048】
製造方法Aにおける抽出温度としては、例えば、100℃以下であればよいが、加水分解を抑制する観点から、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、また抽出効率の観点から、0℃以上が好ましい。
【0049】
製造方法Aにおける抽出時間としては、抽出に供する原料等の使用量や装置に応じて適宜設定できるが、例えば、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下がさらに好ましく、6時間以下がよりさらに好ましく、また抽出効率の観点から、0.5時間以上が好ましい。
【0050】
製造方法Aにおいて、繭及び水等の抽出溶媒を接触することによって得られるセリシン抽出液には、ろ過、遠心分離、精製、濃縮、限外ろ過、透析及び分画からなる群から選ばれる1種又は2種以上の処理を、公知の方法に従って行ってもよく、遠心分離及び/又は透析を行うことが好ましい。また必要により、常圧下又は減圧下で前記処理を行ってもよい。前記処理により、例えば、抽出時に用いた無機塩等の不溶物等を除去することができる。例えば、臭化リチウム水溶液を用いて抽出した場合には、透析等の処理を行って臭化リチウムを除去することが好ましい。また得られた抽出液に、例えば、Gly-NaOH(pH9程度)等を加えて、液性を調整することも好ましい。
【0051】
抽出液におけるセリシンの濃度は、抽出条件に応じて適宜設定できるが、例えば、0.0001~50質量%が好ましく、0.001~20質量%がより好ましい。
【0052】
製造方法Aにおけるアニオン性界面活性剤としては、上述したアニオン性界面活性剤と同じ例が挙げられ、その好ましい態様も同じであり、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩がいっそう好ましく、上記式(1)で表される化合物が特に好ましい。
【0053】
アニオン性界面活性剤の使用量としては、用いる種類により適宜設定できるが、得られるセリシン含有粉末に含有されるセリシンの溶解度向上の観点から、例えば、抽出液と混合した際の濃度が、0.05~5.0質量%となるような量を添加するのが好ましい。前記抽出液と混合した際の濃度としては、0.10~4.0質量%がより好ましく、0.15~3.5質量%がさらに好ましい。なおアニオン性界面活性を2種以上使用する場合には、それらの合計量が、前記抽出液と混合した際の濃度範囲内となる量であることが好ましい。
【0054】
またアニオン性界面活性剤の使用量としては、得られるセリシン含有粉末に含有されるセリシンの溶解度向上の観点から、例えば、抽出液中のセリシンに対して質量比で0.05~5.0倍量であることが好ましく、0.10~4.0倍量であることがより好ましく、0.15~3.5倍量であることがさらに好ましい。なおアニオン性界面活性を2種以上使用する場合には、それらの合計量が、前記質量比の範囲内となる量であることが好ましい。
【0055】
尿素の使用量としては、得られるセリシン含有粉末に含有されるセリシンの溶解度向上の観点から、例えば、抽出液と混合した際の濃度が、0.01~2.0molL-1となるような量を添加するのが好ましい。前記抽出液と混合した際の濃度としては、0.03~1.5molL-1がより好ましく、0.05~1.2molL-1がさらに好ましく、0.08~1.0molL-1がよりさらに好ましい。
【0056】
また尿素の使用量としては、得られるセリシン含有粉末に含有されるセリシンの溶解度向上の観点から、例えば、抽出液中のセリシンに対して質量比で0.1~10倍量であることが好ましく、0.2~8.0倍量であることがより好ましく、0.3~6.0倍量であることがさらに好ましく、0.4~5.0倍量であることがよりさらに好ましい。
【0057】
セリシン抽出液とアニオン性界面活性剤及び尿素から選ばれる少なくとも1種との混合としては、特に制限はされず、両者が十分に混合される方法を適宜選択することができ、例えば、公知の混合装置を用いて撹拌することにより混合してもよい。
【0058】
製造方法Aにおいてセリシン含有粉末は、セリシン抽出液とアニオン性界面活性剤及び尿素から選ばれる少なくとも1種とを混合することにより得られる混合物を乾燥することにより得られる。
【0059】
セリシン抽出液とアニオン性界面活性剤及び尿素から選ばれる少なくとも1種とを混合することにより得られる混合物を乾燥する方法としては、特に限定はされないが、例えば、凍結乾燥法、減圧(真空、低真空)乾燥法、噴霧乾燥法等が挙げられ、凍結乾燥法、噴霧乾燥法が好ましく、凍結乾燥法がより好ましい。これらの乾燥方法は、いずれも公知の乾燥装置を用いて行えばよく、乾燥温度や乾燥時間等の乾燥条件は、各乾燥方法に応じて適宜設定すればよい。
【0060】
((製造方法B))
製造方法Bは、アニオン性界面活性剤及び尿素から選ばれる少なくとも1種の存在下で繭(前記繭糸や生糸であってもよい)と水とを接触させることによりセリシン抽出液を得て、該セリシン抽出液を乾燥する方法である。
【0061】
製造方法Bにおけるアニオン性界面活性剤としては、上述したアニオン性界面活性剤と同じ例が挙げられ、その好ましい態様も同じであり、上記式(1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物が特に好ましい。
【0062】
アニオン性界面活性剤の使用量としては、用いる種類により適宜設定できるが、得られるセリシン含有粉末に含有されるセリシンの溶解度向上及び抽出効率の観点から、例えば、抽出溶媒と混合した際の濃度が、0.10~8.0質量%となるような量が好ましい。前記抽出溶媒と混合した際の濃度としては、0.20~5.0質量%がより好ましく、0.23~4.0質量%がさらに好ましく、0.25~3.5質量%がよりさらに好ましい。なおアニオン性界面活性を2種以上使用する場合には、それらの合計量が、前記抽出液と混合した際の濃度範囲内となる量であることが好ましい。
【0063】
またアニオン性界面活性剤の使用量としては、得られるセリシン含有粉末に含有されるセリシンの溶解度向上及び抽出効率の観点から、例えば、抽出に使用する繭(又は繭糸或いは生糸)に対して質量比で0.01~3.5倍量であることが好ましく、0.05~3.0倍量であることがより好ましく、0.10~2.5倍量であることがさらに好ましく、0.13~2.0倍量であることがよりさらに好ましい。なおアニオン性界面活性を2種以上使用する場合には、それらの合計量が、前記質量比の範囲内となる量であることが好ましい。
【0064】
アニオン性界面活性剤の存在下で繭と水とを接触させてセリシン抽出液を製造する方法によれば、高分子量のセリシンを抽出することが可能である。そして該製造方法により得られるセリシン抽出液を用いれば、高分子量のセリシンを含有し、且つ含有されるセリシンの溶解性に優れるセリシン含有粉末を製造することができる。
【0065】
尿素の使用量としては、得られるセリシン含有粉末に含有されるセリシンの溶解度向上及び抽出効率の観点から、例えば、抽出溶媒と混合した際の濃度が、0.10~10molL-1となるような量を添加するのが好ましい。前記抽出液と混合した際の濃度としては、0.20~8.0molL-1がより好ましく、0.30~6.0molL-1がさらに好ましく、0.40~5.0molL-1がよりさらに好ましい。
【0066】
また尿素の使用量としては、得られるセリシン含有粉末に含有されるセリシンの溶解度向上及び抽出効率の観点から、例えば、抽出に使用する繭(又は繭糸或いは生糸)に対して質量比で0.1~12倍量であることが好ましく、0.2~10倍量であることがより好ましく、0.3~8.0倍量であることがさらに好ましく、0.4~6.0倍量であることがよりさらに好ましい。
【0067】
製造方法Bにおいて、アニオン性界面活性剤及び/又は尿素存在下での繭と水との接触時、つまりセリシン抽出時、水以外にも有機溶媒を抽出溶媒として用いてもよい。前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルモルホリン-N-オキシド等の非プロトン性溶媒等が挙げられる。抽出溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。抽出溶媒としては、好ましくは水単独である。
【0068】
製造方法Bにおける抽出溶媒の使用量としては、適宜設定できるが、例えば、繭に対して質量比で10~150倍量であることが好ましく、15~130倍量であることがより好ましい。
【0069】
製造方法Bにおける抽出温度としては、例えば、150℃以下であればよいが、高分子量のセリシンを抽出する観点から、130℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下がさらに好ましく、また抽出効率の観点から、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。
【0070】
製造方法Bにおける抽出時間としては、抽出に供する原料等の使用量や装置に応じて適宜設定できるが、高分子量のセリシンを抽出する観点から、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、4時間以下がさらに好ましく、3時間以下がよりさらに好ましく、また抽出効率の観点から、0.1時間以上が好ましい。抽出中、アニオン性界面活性剤及び/又は尿素を含有する繭と水との混合物は、公知の混合装置を用いて撹拌することにより混合してもよい。
【0071】
製造方法Bにおけるセリシンの抽出率としては、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、27質量%以上がさらに好ましく、また上限は特に限定されずに100質量%であってもよいが、95質量%以下であってもよい。前記セリシンの抽出率は、下記方法で求めることができる。
まずセリシン抽出液におけるセリシン濃度を、Bradford法又は280nmの吸光度から算出し、算出したセリシン濃度から抽出により得られたセリシンの質量を求める。なお吸光度からのセリシン濃度算出は、検量線を作成することにより行う。そして抽出により得られたセリシンの質量と、セリシンの抽出に使用した繭(又は繭糸或いは生糸)の質量から、下記式にて抽出率を算出する。
抽出率(wt%)=(抽出により得られたセリシンの質量/セリシンの抽出に使用した繭の質量)×100
【0072】
製造方法Bにおいて得られるセリシン抽出液には、乾燥を行う前に、ろ過、遠心分離及び濃縮からなる群から選ばれる1種又は2種以上の処理を、公知の方法に従って行ってもよく、ろ過及び/又は遠心分離を行うことで抽出液から不溶物を除去することが好ましい。また必要により、常圧下又は減圧下で前記処理を行ってもよい。
【0073】
製造方法Bにおいてセリシン含有粉末は、前記セリシン抽出液を乾燥することにより得られる。
【0074】
セリシン抽出液を乾燥する方法としては、特に限定はされないが、例えば、凍結乾燥法、減圧(真空、低真空)乾燥法、噴霧乾燥法等が挙げられ、凍結乾燥法、噴霧乾燥法が好ましく、凍結乾燥法がより好ましい。これらの乾燥方法は、いずれも公知の乾燥装置を用いて行えばよく、乾燥温度や乾燥時間等の乾燥条件は、各乾燥方法に応じて適宜設定すればよい。
【0075】
上述した製造方法により得られるセリシン含有粉末は、高分子量のセリシンを含有し、且つ含有されるセリシンの溶解性に優れる粉末である。該セリシン含有粉末に含有されるセリシンが溶解性に優れるため、化粧品剤形等への配合性が高く扱い易い。また高分子量セリシンを含有するが粉末状であるため、溶液状の場合と比して、溶液のゲル化やセリシンの加水分解といった不安定化が起こり難い。
【実施例0076】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0077】
なお実施例及び比較例における測定は、下記の方法にて行った。
(1)セリシンの抽出率
まずセリシン抽出液におけるセリシン濃度を、Bradford法又は280nmの吸光度から算出し、算出したセリシン濃度から抽出により得られたセリシンの質量を求めた。なお吸光度からのセリシン濃度算出は、検量線を作成することにより行った。
そして抽出により得られたセリシンの質量と、セリシンの抽出に使用したセリシンホープ繭の質量から、下記式にて抽出率を算出した。
抽出率(wt%)=(抽出により得られたセリシンの質量/セリシンの抽出に使用したセリシンホープ繭の質量)×100
(2)セリシンの分子量
SDS-PAGE法により測定した。なおゲルにはマルチゲルIIミニ グラジェントゲル2-15% 17ウェル(コスモ・バイオ株式会社製)、又は4-15%ミニプロティアンTGX Stain-Freeゲル(BIO-RAD製)を用い、分子量マーカーにはプレシジョン Plus プロテインTM2色スタンダード(BIO-RAD製、製品番号1610374)、Multicolor Protein Ladder(10~350kPa)(ニッポン・ジーン製)、又はHiMarkTM Unstained(invitrogen製)を使用した。
測定した結果、150kDa以上の分子量に対応する範囲に少なくとも1つのバンドが検出されたセリシンの分子量評価を○、150kDa以上の分子量に対応する範囲にバンドが1つも検出されなかったセリシンの分子量評価を×と判定した。
(3)セリシンの溶解度
セリシン濃度が1質量%となるように、純水にセリシン含有粉末を添加し、80℃で30分間溶解した。溶解後、9,500×gの加速度で5分間遠心分離し、上澄みを回収して得られた水溶液におけるセリシン濃度を、Bradford法又は280nmの吸光度から算出した。算出したセリシン濃度から溶解したセリシンの質量を求めた。なお吸光度からのセリシン濃度算出は、検量線を作成することにより行った。
そして溶解したセリシンの質量と、はじめに添加したセリシンの質量から、下記式にて溶解率を算出し、溶解度を求めた。
セリシンの溶解率(wt%)=(溶解したセリシンの質量/添加したセリシンの質量)×100
セリシンの溶解度(g/水溶液100g)=100(g)×1(wt%)×セリシンの溶解率(wt%)
【0078】
(実施例1)
フラスコに、品種改良によって作出された蚕から得られるセリシンホープ繭1g、8M LiBr(富士フイルム和光純薬株式会社製)水溶液を20mL仕込み、35℃で5時間撹拌した。得られた溶液を遠沈管に移し、フラスコ内をGly-NaOH緩衝液(pH9)5mLで洗浄し遠沈管に合一した。4℃、9,500×gの加速度で5分間遠心分離し、透析膜(Spectra/Por 4)へ流し入れ透析を開始した。外液にはまずイオン交換水を用い、2.5時間、5.5時間経過時に外液を交換した。次に0.1mM炭酸バッファーを用い翌日朝、翌日夕方、翌々日朝に外液を交換した。合計48時間経過後、透析を停止し、遠沈管に移し替え、溶液を4℃、9,500×gの加速度で1時間遠心分離した。上澄みを回収し、得られた水溶液を加熱乾燥し、固形分をセリシン濃度とした結果、1.0質量%であった。
前記セリシン濃度1.0質量%の水溶液に、添加後の濃度が0.15質量%となるように、ラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名;エマール0S)を添加して、凍結乾燥し、セリシン含有粉末を得た。得られたセリシン含有粉末を用いて、含有されるセリシンの分子量及び溶解度を測定した。測定結果を表1に示す。なおセリシンの分子量は、溶解度測定における溶解、遠心分離後に回収して得られる水溶液を用いて測定を行った。またSDS-PAGEの結果を
図1に示す。なおゲルにはマルチゲルIIミニ グラジェントゲル2-15% 17ウェル(コスモ・バイオ株式会社製)を使用した。
図1中のレーン1が分子量マーカー(プレシジョン Plus プロテイン
TM2色スタンダード;BIO-RAD製;製品番号1610374)、レーン3が実施例1の結果である。
【0079】
(実施例2~9)
ラウリル硫酸ナトリウムの添加量を、添加後の水溶液中の濃度が表1に示す濃度となるように変更する以外は、実施例1と同様にしてセリシン含有粉末を得た。得られたセリシン含有粉末を用いて測定した、含有されるセリシンの分子量及び溶解度の結果を表1に示す。なおセリシンの分子量は、溶解度測定における溶解、遠心分離後に回収して得られる水溶液を用いて測定を行った。またSDS-PAGEの結果を
図1に示す。なおゲルにはマルチゲルIIミニ グラジェントゲル2-15% 17ウェル(コスモ・バイオ株式会社製)を使用した。
図1中のレーン1が分子量マーカー(プレシジョン Plus プロテイン
TM2色スタンダード;BIO-RAD製;製品番号1610374)、レーン4が実施例2、レーン5が実施例3、レーン6が実施例4、レーン7が実施例5、レーン8が実施例6、レーン9が実施例7、レーン10が実施例8、レーン11が実施例9の結果である。
【0080】
(実施例10~13)
添加する化合物をラウリル硫酸ナトリウムからポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名;エマールE-27C)に、その添加量を、添加後の水溶液中の濃度が表1に示す濃度となるように変更する以外は、実施例1と同様にしてセリシン含有粉末を得た。得られたセリシン含有粉末を用いて測定した、含有されるセリシンの分子量及び溶解度の結果を表1に示す。なおセリシンの分子量は、溶解度測定における溶解、遠心分離後に回収して得られる水溶液を用いて測定を行った。またSDS-PAGEの結果を
図2に示す。なおゲルにはマルチゲルIIミニ グラジェントゲル2-15% 17ウェル(コスモ・バイオ株式会社製)を使用した。
図2中のレーン1が分子量マーカー(プレシジョン Plus プロテイン
TM2色スタンダード;BIO-RAD製;製品番号1610374)、レーン3が実施例10、レーン4が実施例11、レーン5が実施例12、レーン6が実施例13の結果である。
【0081】
(実施例14~17)
添加する化合物をラウリル硫酸ナトリウムからラウリル硫酸アンモニウム(花王株式会社製、商品名;エマールAD-25R)に、その添加量を、添加後の水溶液中の濃度が表1に示す濃度となるように変更する以外は、実施例1と同様にしてセリシン含有粉末を得た。得られたセリシン含有粉末を用いて測定した、含有されるセリシンの分子量及び溶解度の結果を表1に示す。なおセリシンの分子量は、溶解度測定における溶解、遠心分離後に回収して得られる水溶液を用いて測定を行った。またSDS-PAGEの結果を
図2に示す。なおゲルにはマルチゲルIIミニ グラジェントゲル2-15% 17ウェル(コスモ・バイオ株式会社製)を使用した。
図2中のレーン1が分子量マーカー(プレシジョン Plus プロテイン
TM2色スタンダード;BIO-RAD製;製品番号1610374)、レーン7が実施例14、レーン8が実施例15、レーン9が実施例16、レーン10が実施例17の結果である。
【0082】
(実施例18~21)
添加する化合物をラウリル硫酸ナトリウムから尿素に、その添加量を、添加後の水溶液中の濃度が表1に示す濃度となるように変更する以外は、実施例1と同様にしてセリシン含有粉末を得た。得られたセリシン含有粉末を用いて測定した、含有されるセリシンの分子量及び溶解度の結果を表1に示す。なおセリシンの分子量は、溶解度測定における溶解、遠心分離後に回収して得られる水溶液を用いて測定を行った。またSDS-PAGEの結果を
図3に示す。なおゲルにはマルチゲルIIミニ グラジェントゲル2-15% 17ウェル(コスモ・バイオ株式会社製)を使用した。
図3中のレーン1が分子量マーカー(プレシジョン Plus プロテイン
TM2色スタンダード;BIO-RAD製;製品番号1610374)、レーン3が実施例20の結果である。なお
図3中のレーン2は、実施例1における透析液の遠心分離後の上澄み液を用いてSDS-PAGEを行った結果である。
【0083】
(比較例1)
ラウリル硫酸ナトリウムを添加しない以外は、実施例1と同様にしてセリシン含有粉末を得た。得られたセリシン含有粉末を用いて測定した、含有されるセリシンの分子量及び溶解度の結果を表1に示す。なおセリシンの分子量は、溶解度測定における溶解、遠心分離後に回収して得られる水溶液を用いて測定を行った。またSDS-PAGEの結果を
図1及び2に示す。なおゲルにはマルチゲルIIミニ グラジェントゲル2-15% 17ウェル(コスモ・バイオ株式会社製)を使用した。
図1のレーン2及び
図2のレーン2が比較例1の結果である。
【0084】
(実施例22)
試験管に、品種改良によって作出された蚕から得られるセリシンホープ繭の添加濃度が1質量%となるように、セリシンホープ繭と0.25質量%のラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名;エマール0S)水溶液とを添加して、95℃で30分間セリシンを抽出した。抽出後、遠心分離で不溶分を除去し、上清のセリシンの濃度からセリシンの抽出率を求め、また該上清を用いてセリシンの分子量を測定した。測定結果を下記表2に示す。またSDS-PAGEの結果を
図4に示す。なおゲルにはマルチゲルIIミニ グラジェントゲル2-15% 17ウェル(コスモ・バイオ株式会社製)を使用した。
図4中のレーン1が分子量マーカー(プレシジョン Plus プロテイン
TM2色スタンダード;BIO-RAD製;製品番号1610374)、レーン2が実施例22の結果である。
次に前記上清を凍結乾燥し、セリシン含有粉末を得た。得られたセリシン含有粉末を用いて、含有されるセリシンの溶解度を測定した。測定結果を表3に示す。
【0085】
(実施例23~31)
セリシンホープ繭の添加濃度、ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の濃度、セリシン抽出条件(抽出温度、抽出時間)、及び乾燥方法を表2に示すように変更する以外は、実施例22と同様にしてセリシン含有粉末を得た。各実施例におけるセリシンの抽出率、セリシンの分子量及びセリシンの溶解度の測定結果を表3に示す。またSDS-PAGEの結果を
図4~7に示す。なおゲルには、実施例23~27ではマルチゲルIIミニ グラジェントゲル2-15% 17ウェル(コスモ・バイオ株式会社製)を、実施例28~31では4-15%ミニプロティアンTGX Stain-Freeゲル(BIO-RAD製)を使用した。
図4中のレーン1が分子量マーカー(プレシジョン Plus プロテイン
TM2色スタンダード;BIO-RAD製;製品番号1610374)、レーン3が実施例24、レーン4が実施例26、レーン5が実施例23、レーン6が実施例25、レーン7が実施例27の結果である。
図5中のレーン1が分子量マーカー(Multicolor Protein Ladder(10~350kPa);ニッポン・ジーン製)、レーン2が実施例28の結果である。
図6中のレーン1が分子量マーカー(Multicolor Protein Ladder(10~350kPa);ニッポン・ジーン製)、レーン2が実施例29、レーン3が実施例30の結果である。
図7中のレーン1が分子量マーカー(HiMark
TM Unstained;invitrogen製)、レーン2が実施例31、レーン3が分子量マーカー(Multicolor Protein Ladder(10~350kPa);ニッポン・ジーン製)の結果である。
【0086】
(実施例32~35)
ラウリル硫酸ナトリウム水溶液をラウロイルメチルβアラニンナトリウム水溶液に変更(つまり添加する化合物をラウリル硫酸ナトリウムからラウロイルメチルβアラニンナトリウムに変更)し、セリシンホープ繭の添加濃度、前記ラウロイルメチルβアラニンナトリウム水溶液の濃度及びセリシン抽出条件(抽出時間)を表2に示すように変更する以外は、実施例22と同様にしてセリシン含有粉末を得た。各実施例におけるセリシンの抽出率、セリシンの分子量及びセリシンの溶解度の測定結果を表3に示す。またSDS-PAGEの結果を
図8に示す。なおゲルにはマルチゲルIIミニ グラジェントゲル2-15% 17ウェル(コスモ・バイオ株式会社製)を使用した。
図8中のレーン1が分子量マーカー(プレシジョン Plus プロテイン
TM2色スタンダード;BIO-RAD製;製品番号1610374)、レーン3が実施例32、レーン4が実施例33、レーン5が実施例34、レーン6が実施例35の結果である。なお
図8中のレーン2は、実施例1における透析液の遠心分離後の上澄み液を用いてSDS-PAGEを行った結果である。
【0087】
(実施例36~39)
ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を尿素水溶液に変更(つまり添加する化合物をラウリル硫酸ナトリウムから尿素に変更)し、セリシンホープ繭の添加濃度、前記尿素水溶液の濃度及びセリシン抽出条件(抽出時間)を表2に示すように変更する以外は、実施例22と同様にしてセリシン含有粉末を得た。各実施例におけるセリシンの抽出率、セリシンの分子量及びセリシンの溶解度の測定結果を表3に示す。またSDS-PAGEの結果を
図9に示す。なおゲルにはマルチゲルIIミニ グラジェントゲル2-15% 17ウェル(コスモ・バイオ株式会社製)を使用した。
図9中のレーン1が分子量マーカー(プレシジョン Plus プロテイン
TM2色スタンダード;BIO-RAD製;製品番号1610374)、レーン3が実施例36、レーン4が実施例37、レーン5が実施例38、レーン6が実施例39の結果である。
【0088】
(比較例2、3)
ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を純水に変更し、セリシンホープ繭の添加濃度及びセリシン抽出条件(抽出温度、抽出時間)を表2に示すように変更する以外は、実施例22と同様にしてセリシン含有粉末を得た。各比較例におけるセリシンの抽出率、セリシンの分子量及びセリシンの溶解度の測定結果を表3に示す。またSDS-PAGEの結果を
図9に示す。なおゲルにはマルチゲルIIミニ グラジェントゲル2-15% 17ウェル(コスモ・バイオ株式会社製)を使用した。
図9中のレーン1が分子量マーカー(プレシジョン Plus プロテイン
TM2色スタンダード;BIO-RAD製;製品番号1610374)、レーン2が比較例2の結果である。
【0089】
【0090】
【0091】