(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184694
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】油中水型固形化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20221206BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20221206BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20221206BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221206BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/31
A61Q1/04
A61Q19/00
A61K8/67
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207249
(22)【出願日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2021091555
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021156078
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下野 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】田代 朋子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA082
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB051
4C083AB212
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB432
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC482
4C083AC552
4C083AC642
4C083AC912
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD492
4C083AD572
4C083AD621
4C083AD622
4C083AD632
4C083AD642
4C083AD661
4C083AD662
4C083BB12
4C083CC01
4C083CC03
4C083CC13
4C083DD11
4C083DD32
4C083DD47
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】色変化が抑制され、塗布時の形状安定性に優れ、かつ、みずみずしさに優れた油中水型固形化粧料の提供。
【解決手段】アスタキサンチンと、油中水型固形化粧料の全質量に対して25質量%~40質量%の水と、炭化水素ワックスと、を含有する油中水型固形化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチンと、
油中水型固形化粧料の全質量に対して25質量%~40質量%の水と、
炭化水素ワックスと、
を含有する油中水型固形化粧料。
【請求項2】
前記炭化水素ワックスの含有率が、油中水型固形化粧料の全質量に対して、3.5質量%以上である、請求項1に記載の油中水型固形化粧料。
【請求項3】
ロウを更に含有する、請求項1又は請求項2に記載の油中水型固形化粧料。
【請求項4】
前記炭化水素ワックスと前記ロウとの含有比率が、質量基準で2.5:1~10:1である、請求項3に記載の油中水型固形化粧料。
【請求項5】
前記ロウが、キャンデリラロウ含む、請求項3又は請求項4に記載の油中水型固形化粧料。
【請求項6】
ビタミンEを更に含有する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の油中水型固形化粧料。
【請求項7】
前記炭化水素ワックスが、セレシンを含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の油中水型固形化粧料。
【請求項8】
金属製の容器に収容された、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の油中水型固形化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油中水型固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイド類の一種であるアスタキサンチンは、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、シミ、しわ等の抑制効果などの種々の機能を有することが知られており、化粧品又は医薬部外品に適用される油中水型又は油性の組成物に広く配合されている。
【0003】
特許文献1には、(a)疎水化処理無機粉体、(b)シロキサン主鎖にオルガノポリシロキサン基と親水基がグラフトしたシリコーン系界面活性剤、(c)シリコーン油、(d)トリグリセライド、(e)アスタキサンチンを配合することを特徴とする油中水型乳化化粧料が開示されている。
特許文献2には、(a)アスタキサンチン、(b)部分架橋型乳化性シリコーンエラストマー、(c)IOB値1.80~3.50の多価アルコールを含有する固形化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-211114号公報
【特許文献2】特開2017-132706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固形化粧料でありながらも、みずみずしい使用感を得る手段の一つとして、油中水型固形化粧料に水を高配合することが挙げられる。しかし、水を含有する油中水型固形化粧料は、ほぼ全ての含有成分が油性成分で構成されている一般的な固形化粧料とは異なり、経時により水分が蒸散することにより化粧料に含有される成分の濃縮化が生じ易い。特に、水を高配合した油中水型固形化粧料においては、化粧料に含有される成分の濃縮化がより顕著に生じ得る。
【0006】
アスタキサンチンを含有し、かつ水を高配合した油中水型固形化粧料は、調製された当初は淡橙色~赤色を呈するが、経時による水分蒸散に伴うアスタキサンチンの濃縮化に起因して、アスタキサンチンに由来する色味が濃色化することがある。このような濃色化は、水分蒸散が速い油中水型固形化粧料の外気に接する表面部に生じ易いことから、油中水型固形化粧料の外観において、変色、色ムラ等の色変化を生じさせる原因になり得る。化粧料には、その特性上、特に高い審美性が求められるため、変色、色ムラ等の色変化は、需要者が許容できる範囲内に留める必要がある。
【0007】
また、固形化粧料には、収容容器内から分取せずに、繰り出し容器のような容器から直接皮膚に塗布する使用形態も想定されることから、このような使用形態に固形化粧料を適用した場合であっても、塗布する際の形状の崩れ(潰れ、欠け等)の発生が抑制されることは、固形化粧料に要求される性能の一つである。
【0008】
本開示は、上記の事情に鑑みなされた。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、色変化が抑制され、塗布時の形状安定性に優れ、かつ、みずみずしさに優れた油中水型固形化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] アスタキサンチンと、油中水型固形化粧料の全質量に対して25質量%~40質量%の水と、炭化水素ワックスと、を含有する油中水型固形化粧料。
[2] 炭化水素ワックスの含有率が、油中水型固形化粧料の全質量に対して、3.5質量%以上である、[1]に記載の油中水型固形化粧料。
[3] ロウを更に含有する、[1]又は[2]に記載の油中水型固形化粧料。
[4] 炭化水素ワックスとロウとの含有比率が、質量基準で2.5:1~10:1である、[3]に記載の油中水型固形化粧料。
[5] ロウが、キャンデリラロウを含む、[3]又は[4]に記載の油中水型固形化粧料。
[6] ビタミンEを更に含有する、[1]~[5]のいずれか1つに記載の油中水型固形化粧料。
[7] 炭化水素ワックスが、セレシンを含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載の油中水型固形化粧料。
[8] 金属製の容器に収容された、[1]~[7]のいずれか1つに記載の油中水型固形化粧料。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、色変化が抑制され、塗布時の形状安定性に優れ、かつ、みずみずしさに優れた油中水型固形化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の油中水型固形化粧料(以下、単に「固形化粧料」とも称する。)の実施形態の一例について説明する。但し、本開示の固形化粧料は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示が目的とする範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値それぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
【0013】
本開示では、段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本開示において、固形化粧料中の各成分の量は、各成分に該当する物質が固形化粧料中に複数存在する場合には、特に断らない限り、固形化粧料中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0015】
本開示において「油相」とは、固形化粧料を形成する油中水型組成物の連続相を意味する。本開示において、油相組成物は、連続相を構成する媒体と、その媒体に分散又は溶解している成分と、を含む。本開示において「水相」とは、固形化粧料を形成する油中水型組成物の分散相を意味する。本開示において、水相組成物は、分散相を構成する液状媒体と、その液状媒体に分散又は溶解している成分と、を含む。
【0016】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0017】
本開示において、固形化粧料の「色変化」とは、固形化粧料を経時させた際に、固形化粧料の外観に、部分的に、変色、色ムラ等の色味の変化が生じることを意味する。色変化の態様は限定されない。例えば、固形化粧料の表面全体が変色すること、固形化粧料の表面上にグラデーション状に色ムラが生じること、及び固形化粧料の表面にスポット状の変色部分が生じることは、いずれも色変化に包含される。色変化は、例えば、繰り出し容器から繰り出したスティック状の固形化粧料の表面であれば、濃色化した先端部から淡色の非先端部に亘るグラデーション状の色ムラとして視認される。
【0018】
本開示において、「固形化粧料が塗布時の形状安定性」を有するとは、容器に収容せずに室温(25℃)下に静置した場合において成形状態が保持され、かつ、塗布時に付与される押圧による形状の崩れ(潰れ、欠け等)が抑制されることを意味する。
【0019】
本開示において「みずみずしさ」とは、固形化粧料の塗布直後において、皮膚に水分の存在が感じられる感触を意味する。
【0020】
本開示において、ワックスとは、油剤の一態様であり、25℃で固体であり、加熱すると溶融する有機物を総称するものとする。本開示において、「油剤」とは、化粧料の分野で一般に油剤として使用される成分を意味する。
【0021】
本開示において、炭化水素ワックスは、炭化水素のみから構成されるワックスを意味する。炭化水素ワックスの詳細は後述する。
【0022】
本開示において、ロウは、植物又は動物に由来し、かつエステル結合を構造中に含むワックスを意味する。ロウの詳細は後述する。
【0023】
<油中水型固形化粧料>
本開示の固形化粧料は、アスタキサンチンと、油中水型固形化粧料の全質量に対して25質量%~40質量%の水と、炭化水素ワックスと、を含有する油中水型固形化粧料である。
【0024】
本開示の固形化粧料は、色変化が抑制され、塗布時の形状安定性に優れ、かつ、みずみずしさに優れる。色変化の抑制、塗布時の形状安定性、及び、みずみずしさは、少なくとも、本開示の固形化粧料に設定される保管期間において維持されればよい。
【0025】
本開示の固形化粧料が、このような効果を発揮する理由については、明らかではないが、本発明者らは、以下のように推察している。
【0026】
本開示の固形化粧料が、アスタキサンチンと、固形化粧料の全質量に対して25質量%~40質量%の水とを含有することにより、固形化粧料の表面からの水分の相対的な蒸散量が少なくなり、アスタキサンチンの濃縮による濃色化(即ち、色変化)が効果的に抑制され、かつ、水の高配合によるみずみずしさが得られると推察される。さらに、本開示の固形化粧料が、炭化水素ワックスと固形化粧料の全質量に対して25質量%~40質量%の水とを含有することにより、塗布時の形状安定性にも優れると推察される。
なお、上記の推察は、本開示の油中水型化粧料を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0027】
一方、特許文献1に記載される油中水型乳化化粧料には、色変化の抑制、塗布時の形状安定性、及び、みずみずしさに関する着目はない。特許文献2に記載される固形化粧料は、水の含有が想定されておらず、経時による水分蒸散に起因するアスタキサンチンの濃色化は生じ得ない。
【0028】
以下、本開示の固形化粧料が含有する各成分について、詳細に説明する。
【0029】
〔アスタキサンチン〕
本開示の固形化粧料は、アスタキサンチンを含有する。アスタキサンチンは、アスタキサンチン及びアスタキサンチンのエステル等の誘導体の少なくとも一方を包含する。本開示では特に断らない限り、これらを総称して「アスタキサンチン」とする。
【0030】
アスタキサンチンとしては、植物類、藻類、甲殻類及びバクテリア等の天然物から得られるアスタキサンチンの他、常法に従って得られるいずれのアスタキサンチンも使用することができる。
【0031】
天然物であるアスタキサンチンとしては、例えば、赤色酵母ファフィア、ヘマトコッカス藻、海洋性細菌(例えば、パラコッカス)、オキアミ、アドニス(福寿草)等が挙げられる。また、その培養物からの抽出物を挙げることができる。
【0032】
アスタキサンチンは、アスタキサンチンを含有する天然物から分離又は抽出物として得られるアスタキサンチン含有油として、本開示の固形化粧料に含まれていてもよい。
【0033】
アスタキサンチンは、更に、アスタキサンチンを含有する天然物から分離又は抽出したものを必要に応じて適宜精製したものでもよく、又は、合成品であってもよい。
【0034】
アスタキサンチン又はアスタキサンチン含有油としては、ヘマトコッカス藻から抽出されるもの(ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)、及び、オキアミ由来の色素(オキアミ抽出物ともいう。)が、品質又は生産性の点から特に好ましい。
【0035】
アスタキサンチン又はアスタキサンチン含有油としては、広く市販されている、ヘマトコッカス藻抽出物、及びオキアミ抽出物を用いることができる。ヘマトコッカス藻抽出物の市販品としては、例えば、富士フイルム(株)のFUJIFILM アスタキサンチン SS、FUJIFILM アスタキサンチン S、FUJIFILM アスタキサンチン 10OS、FUJIFILM アスタキサンチン 50S、FUJIFILM アスタキサンチン 10O、FUJIFILM アスタキサンチン 5O、富士化学工業(株)のアスタリール(登録商標)オイル50F、アスタリール(登録商標)オイル5F等、東洋酵素化学(株)のBioAstin(登録商標)SCE7等が入手できる。オキアミ抽出物の市販品としては、(株)マリン大王のアスタックスST(商品名)等が入手できる。
【0036】
アスタキサンチンの含有率は、アスタキサンチンを含有することで期待される効果と色変化の抑制(具体的には濃色化の抑制)との観点から、固形化粧料の全質量に対して、0.00001質量%~0.002質量%が好ましく、0.0001質量%~0.001質量%がより好ましく、0.0001質量%~0.0005質量%が更に好ましい。
【0037】
アスタキサンチンの含有率が、固形化粧料の全質量に対して、0.00001質量%以上であることで、アスタキサンチンを含有することで期待される効果が良好に発揮される。アスタキサンチンの含有率が、固形化粧料の全質量に対して、0.002質量%以下であることで、アスタキサンチンが呈する橙色が濃くなり過ぎず、水分蒸散に伴う濃色化の視認性が抑制される。
【0038】
〔水〕
本開示の固形化粧料は、固形化粧料の全質量に対して、25質量%~40質量%の含有率で水を含有する。
【0039】
水としては、化粧料に適用し得る水であれば特に制限されない。
【0040】
水の含有率は、みずみずしさと色変化の抑制とを両立する観点から、固形化粧料の全質量に対して、25質量%~40質量%であり、30質量%~40質量%がより好ましい。
【0041】
水の含有率が、固形化粧料の全質量に対して、25質量%以上であることで、みずみずしさが良好に発揮でき、40質量%以下であることで、水の相対的な蒸散量が少なくなり、アスタキサンチンの濃縮度が抑制されて、色変化を小さくできる。
【0042】
〔炭化水素ワックス〕
本開示の固形化粧料は、炭化水素ワックスを含有する。
本開示の固形化粧料は、炭化水素ワックスを含有することで、塗布時の形状安定性を向上させることができる
【0043】
炭化水素ワックスとしては、例えば、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ワセリン、及び、フィッシャートロプシュワックスが挙げられる。
炭化水素ワックスは、市販品であってもよいし、合成品であってもよい。
【0044】
炭化水素ワックスは、塗布時の形状安定性の観点から、セレシンを含むことが好ましい。
セレシンは、直鎖アルカンと分岐アルカンの混合物であり、パラフィンやマイクロクリスタリンワックスなどが含まれる。セレシンは、直鎖状アルカンと分岐鎖状アルカンが適度な配合比で混合されており、かつ高精製されていることから、固形化粧料の硬度をより高め、塗布時の形状安定性の向上に寄与し得る。セレシンとしては、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス及び高融点マイクロクリスタリンワックスの混合物であることが好ましい。
【0045】
炭化水素ワックスは、固形化粧料に、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0046】
炭化水素ワックスの含有率は、塗布時の形状安定性の観点から、固形化粧料の全質量に対して、3.5質量%以上が好ましく、4.0質量%以上がより好ましく、4.5質量%以上が更に好ましい。炭化水素ワックスの含有率の上限としては、塗布時の形状安定性及び固形化粧料の硬度の観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。炭化水素ワックスが多すぎると固形化粧料が硬くなる傾向があり、所望の塗布量が皮膚に塗布されなくなる傾向がある。
【0047】
〔ロウ〕
本開示の固形化粧料は、塗布時の形状安定性とみずみずしさとを両立させる観点から、ロウを含有することが好ましい。
【0048】
ロウは、固形化粧料に、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0049】
ロウは、植物由来であっても、動物由来であってもよい。ロウとしては、例えば、ミツロウ、モクロウ、ゲイロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、及びモンタンロウが挙げられる。
【0050】
ロウは、炭化水素ワックスに比べて低融点で柔らかく、極性も比較的に高い。このため、本開示の固形化粧料においてロウを含有することは、固形化粧料に保湿成分を含有させる場合においても有利である。
【0051】
炭化水素ワックスとロウとの含有比率(炭化水素ワックス:ロウ)は、塗布時の形状安定性とみずみずしさの両立の観点から、質量基準で2.5:1~10:1の範囲であることが好ましく、3:1~8:1がより好ましく、3.5:1~6:1が更に好ましい。
【0052】
ロウの含有率は、塗布時の形状安定性とみずみずしさの両立の観点から、固形化粧料の全質量に対して、0.1質量%~5質量%が好ましく、0.1質量%~4質量%以上がより好ましく、0.1質量%~3質量%が更に好ましい。
【0053】
みずみずしさの観点から、ロウは、キャンデリラロウを含むことが好ましい。
キャンデリラロウは、炭化水素を40質量%~50質量%含み、かつ残部がエステルと高級アルコールで構成されている。そのため、キャンデリラロウは、炭化水素ワックスと、相溶性が高く、親和性を有する。また、キャンデリラロウは、トウダイグサ科の植物であるキャンデリラ草(学名:Euphorbia antisyphilitica = Euphorbia cerifera 英名:Candelilla)の茎から抽出・精製して得られるロウである。このキャンデリラ草は、葉の表面にロウ成分を分泌することで、水分蒸散を抑制していることからも分かるように、キャンデリラロウは保湿性に優れたロウ成分でもある。
【0054】
〔その他の油剤〕
本開示の固形化粧料は、上記した炭化水素ワックス及びロウ以外のその他の油剤を含有してもよい。
【0055】
その他の油剤としては、例えば、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、シリコーンゲル、高級脂肪酸、高級アルコール、及び、天然動植物油剤に属する油剤のうち、炭化水素ワックス及びロウに該当するもの以外の油剤が挙げられる。
【0056】
炭化水素油としては、流動パラフィン、イソパラフィン、エチレン・プロピレンコポリマー、水添ポリイソブテン、スクワラン等が挙げられる。
【0057】
エステル油としては、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、エチルヘキサン酸セチル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、トリイソステアリン、ステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、パルミチン酸イソプロピル、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、イソノナン酸イソトリデシル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル-10、ポリソルベート60等が挙げられる。
【0058】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン等の環状ポリシロキサン、カプリリルメチコン等が挙げられる。
【0059】
シリコーンゲルとは、主鎖骨格をなすシリコーン鎖同士がポリエーテル鎖、ポリグリセリン鎖、シリコーン鎖等で架橋しているシリコーン架橋物を指す。架橋に用いた鎖の構造により、ポリエーテル変性シリコーンゲル、ポリグリセリン変性シリコーンゲル、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンゲル、及びポリグリセリン・アルキル共変性シリコーンゲルといった種類がある。
【0060】
シリコーンゲルとして、具体的には、(ジメチコン/(PEG-10/15)クロスポリマー、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG-10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー、(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー、(ポリグリセリル-3/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビスビニルジメチコン)クロスポリマー等が挙げられる。
【0061】
高級脂肪酸としては、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベへニン酸等が挙げられる。
【0062】
高級アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0063】
天然動植物油剤としては、ホホバ種子油、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ヒマシ油、ブドウ油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、ローズヒップ油、ダイズ油、卵黄油、硬化ヒマシ油、硬化ヤシ油、硬化カカオ油、硬化タートル油、硬化ミンク油、牛油、ミンク油、ラノリン(所謂、羊毛脂)等が挙げられる。
【0064】
その他の油剤の含有率は、油中水型である本開示の固形化粧料が目的とする形態に応じて、適宜決定することができる。
【0065】
その他の油剤は、固形化粧料に、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0066】
〔ビタミンE〕
本開示の固形化粧料は、アスタキサンチンの安定性を向上させる観点から、ビタミンEを含有することが好ましい。本開示において、ビタミンEは油剤の一態様に含まれないものとする。
【0067】
アスタキサンチンを含有する油中水型固形化粧料の内部においては、アスタキサンチンの劣化によって橙色が減退する傾向にある。このため、アスタキサンチンを含有する油中水型固形化粧料の外気に接する表面では、水分蒸散に起因するアスタキサンチンの濃縮による濃色化が進行し、かつ、内部では橙色の減退が進行して、固形化粧料の表面と内部とで色味の濃淡差が大きくなる場合がある。これに対して、本開示の固形化粧料がビタミンEを含有する場合には、アスタキサンチンの安定性が向上して、固形化粧料の内部における橙色の減退も抑制できることから、固形化粧料の色変化をより効果的に抑制することができる。
【0068】
本開示において、「ビタミンE」は、植物および穀物類に多く含まれる複数種のトコフェロール及びトコトリエノールの総称を意味する。トコフェロール、トコトリエノール、それらの塩及び誘導体を含む概念である。
【0069】
トコフェロール又はその誘導体からなる化合物群としては、例えば、d-α-トコフェロール、d-β-トコフェロール、d-γ-トコフェロール、d-δ-トコフェロール、l-α-トコフェロール、l-β-トコフェロール、l-γ-トコフェロール、l-δ-トコフェロール、それらの混合物であるdl-α-トコフェロール、dl-β-トコフェロール、dl-γ-トコフェロール、dl-δ-トコフェロール、それらの誘導体である酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、リン酸トコフェロール、アスパラギン酸トコフェロール、グルタミン酸トコフェロール、パルミチン酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、リノール酸トコフェロール、及び、ポリエトキシル化トコフェロールが挙げられる。
トコフェロールは、合成したトコフェロールであってもよい。
更に、これらのトコフェロール及びトコフェロール誘導体は、医薬品、化粧品等の分野で許容される塩であってもよい。
【0070】
トコトリエノール又はその誘導体からなる化合物群としては、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノール、それらの誘導体である酢酸トコトリエノール、コハク酸トコトリエノール、リン酸トコトリエノール、アスパラギン酸トコトリエノール、グルタミン酸トコトリエノール、パルミチン酸トコトリエノール、ニコチン酸トコトリエノール、及び、ポリエトキシル化トコトリエノールが挙げられる。
トコトリエノールは、合成したトコトリエノールであってもよい。
また、これらのトコトリエノール及びトコトリエノール誘導体は、医薬品、医薬部外品、又は化粧品等の分野で許容される塩であってもよい。
【0071】
ビタミンEは、固形化粧料に、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0072】
ビタミンEの含有率は、アスタキサンチンの安定性向上の観点から、固形化粧料の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.01質量%~0.5質量%がより好ましく、0.01質量%~0.3質量%が更に好ましい。
【0073】
〔金属酸化物〕
本開示の固形化粧料は、表面の色変化を抑制する観点から、金属酸化物を含有してもよい。金属酸化物を含有する場合、光の散乱及び着色によって、固形化粧料に生じた色変化を目立たなくさせることができる。
【0074】
金属酸化物としては、固形化粧料に使用できる公知の金属酸化物から選択することができる。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム等が挙げられる。金属酸化物は、無機物質又は有機物質との複合粉体でもよい。複合粉体に用いられる無機物質又は有機物質としては、シリカ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、マイカ、タルク等が挙げられる。
【0075】
金属酸化物を含有する場合、金属酸化物の含有率としては、固形化粧料の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%~5質量%がより好ましく、0.1質量%~3質量%が更に好ましい。固形化粧料は、金属酸化物を含有しない態様であること、すなわち、金属酸化物の含有率が、固形化粧料の全質量に対して、0質量%であってもよい。
【0076】
〔シリコーン系界面活性剤〕
本開示の固形化粧料は、シリコーン系界面活性剤を含有することが好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、医薬品、医薬部外品、又は化粧品の分野において用いられるものであれば特に限定されない。
【0077】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーン系界面活性剤、ポリグリセリン変性シリコーン系界面活性剤、又はポリグリセリン・アルキル共変性シリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0078】
シリコーン系界面活性剤として、具体的には、PEG-10ジメチコン、PEG-3ジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、ポリシリコーン13、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤;
メチルポリシロキサン・セチルメチルポリシロキサン・ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシ
エチルジメチコン等のポリエーテル・アルキル共変性シリコーン系界面活性剤;ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ポリグリセリル-3ジシロキサンジメチコン等のポリグリセリン変性シリコーン系界面活性剤;及び、
ラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等のポリグリセリン・アルキル共変性シリコーン系界面活性剤が挙げられる。
本開示において、「PEG」はポリエチレングリコールを表し、「PPG」はポリプロピレングリコールを表す。
【0079】
シリコーン系界面活性剤は、市販品であってもよいし、又は合成品であってもよい。
【0080】
シリコーン系界面活性剤は、固形化粧料に、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0081】
シリコーン系界面活性剤の含有率は、油相の均一性の観点から、固形化粧料の全質量に対して、1質量%以上が好ましく、1.0質量%~5.0質量%がより好ましく、1.5質量%~4.0質量%が更に好ましく、2.0質量%~3.0質量%が特に好ましい。
【0082】
〔紫外線吸収剤〕
本開示の固形化粧料は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収する作用を有する有機化合物であることが好ましい。
【0083】
紫外線吸収剤は、UV-A領域(すなわち、波長320nm以上400nm以下)の紫外線を吸収する紫外線吸収剤(以下、UVA吸収剤ともいう。)であっても、UV-B領域(すなわち、波長280nm以上320nm未満)の紫外線を吸収する紫外線吸収剤(以下、UVB吸収剤ともいう。)であってもよく、UVA吸収剤及びUVB吸収剤の両方の機能を有する紫外線吸収剤であってもよい。
【0084】
本開示の固形化粧料は、紫外線吸収剤を1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。紫外線吸収剤の好ましい組み合わせとしては、UVA吸収剤の1種以上と、UVB吸収剤の1種以上との組み合わせが挙げられるが、これに限定されない。
【0085】
本開示の固形化粧料は、医薬部外品又は化粧品の分野に用い得る有機紫外線吸収剤を含有することができる。有機紫外線吸収剤としては、公知の各種文献に記載される有機紫外線吸収剤を挙げることができる。例えば、特許第6359947号公報の段落0018及び0021に記載の化合物群は、本開示の固形化粧料が含有する有機紫外線吸収剤として用いることができる。
【0086】
有機紫外線吸収剤としては、トリアジン化合物、安息香酸化合物、アントラニル酸化合物、サリチル酸化合物、ケイ皮酸化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ジベンゾイルメタン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾイルピペラジン化合物、ジベンゾイルメタン化合物、ベンゾオキサゾール化合物、フェニルアクリレート化合物、イミダゾリン化合物、カンファー化合物、ベンザルマロネート化合物等の有機紫外線吸収剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
紫外線吸収剤は、本開示の固形化粧料において、少なくとも油相に含有させることが好ましいが、その種類に応じて、油相及び水相のいずれに含有させてもよい。紫外線遮蔽能向上の観点からは、油相及び水相の両方に含有させることも好ましい。
【0088】
本開示の固形化粧料が含有する紫外線吸収剤の含有率は、紫外線吸収遮蔽効果を得る観点から、固形化粧料の全質量に対して5質量%以上であることが好ましく、5質量%~12質量%であることが好ましく、6質量%~11質量%であることがより好ましく、7質量%~10質量であることが更に好ましい。
【0089】
〔他の成分〕
本開示の固形化粧料は、前述した成分以外の、他の成分を含有していてもよい。
他の成分としては、医薬部外品又は化粧品の分野に用い得る成分であればよく、例えば、水以外の水性媒体(エタノール等の低級アルコール;グリセリン、1,3ーブチレングリコール等の多価アルコール等)、他の界面活性剤、防腐剤(フェノキシエタノール、メチルパラベン等)、pH調整剤、エモリエント剤、保湿剤、ビタミンE以外の酸化防止剤、美白剤、着色剤、香料、などが挙げられる。
【0090】
〔油相及び水相の比率〕
本開示の固形化粧料において、油相と水相との比率(油相:水相)は、質量比率として、例えば、65:35~35:65が好ましく、60:40~40:60がより好ましく、55:45~45:55が更に好ましい。
【0091】
〔固形化粧料の形態〕
本開示の固形化粧料は、成形可能な硬度を有し、かつ、成形物を容器に収容せずに室温(25℃)下に静置した場合において、成形状態が保持される形態を有する。
【0092】
〔固形化粧料の硬度〕
本開示の固形化粧料の室温(25℃)における押し込み硬度は、10g以上であることが好ましく、15g以上がより好ましく、20g以上が更に好ましい。
硬すぎて押し込み硬度を測定できない場合には、本開示の固形化粧料の硬度は、針入硬度を測定する。固形化粧料の室温(25℃)における針入硬度は、30g~200gであることが好ましい。
【0093】
押し込み硬度(g/cm2)は、例えば、レオメーター((株)レオテック製)を用いて、測定条件(アダプター:円盤状20mmφ、速度:6cm/min、深さ:20mm)にて測定することができる。針入硬度(g/cm2)は、レオメーター((株)レオテック製)を用いて、測定条件(アダプター:3φ棒状アダプター、速度:6cm/min、深さ:15mm)にて測定することができる。
【0094】
[固形化粧料の容器]
本開示の固形化粧料を収容する容器は、固形化粧料を収容できる容器であれば特に限定されない。容器としては、繰り出し容器(例えば、リップスティック容器)が好ましい。本開示の固形化粧料は、ジャー容器、コンパクト容器等の容器に充填することもできる。
【0095】
容器の材質としては、例えば、金属、プラスチック及びガラスが挙げられる。ある実施形態において、容器としては金属製の容器を用いることができる。金属製の容器は、容器の全体が金属で構成されていてもよく、金属とプラスチックなどの他の材料とで構成されていてもよい。
【0096】
ある実施形態において、本開示の固形化粧料は、水分蒸散を効果的に抑制する観点から、金属製の容器に収容された固形化粧料であることが好ましい。金属製の容器は、容器の開口部からの水分蒸散のみならず、容器の壁面からの水分透過も生じるプラスチック製の容器に比較して、水分の蒸散抑制効果がより高いことから好ましい。金属製の容器の形態としては、例えば、金属製の繰り出し容器が挙げられる。
【0097】
金属製の容器(例えば、繰り出し容器)を用いた場合であっても、容器の本体と蓋との隙間から容器内の収容物に含まれる水分が経時で容器外に蒸散してしまうことがある。しかし、本開示の固形化粧料は、固形化粧料を形成する油中水型の組成物自体が水分の蒸散を効果的に抑制することから、金属製の容器を用いた場合において、金属製の容器自体が有する水分の蒸散抑制効果と相俟って、色変化に対する優れた抑制効果が得られる。
【0098】
[固形化粧料の用途]
本開示の固形化粧料の用途としては、スキンケア化粧料、メイクアップ化粧料、頭髪化粧料等が挙げられる。ある実施形態において、本開示の固形化粧料は、スキンケア化粧料であることが好ましい。
【0099】
[固形化粧料の製造方法]
本開示の固形化粧料の製造方法は、特に制限されず、公知の油中水型固形化粧料の製造方法に従って製造することができる。
【0100】
本開示の固形化粧料の好適な製造方法の一つは、
アスタキサンチンと、炭化水素ワックス、及び、その他の任意成分を含む油相成分を加熱し、混合して油相組成物を得る工程、
水、及び、その他の任意成分を含む水相成分を混合して、水相組成物を得る工程、及び、
加熱された油相組成物と、別途加熱した水相組成物とを混合し、乳化する工程、
を含むことが好ましい。
【0101】
各工程における加熱温度は、例えば、80℃~90℃とすることができる。
乳化混合の手段として、公知の手段を用いればよく、例えば、ホモミキサーを用いることができる。
乳化の際の条件は、固形化粧料を形成する油中水型組成物に求められる粘度、乳化粒子の大きさ等に応じて、せん断速度、処理時間等を調整し、決定されればよい。
得られた油中水型組成物は、流動性のある状態で、適宜容器に充填し、冷却固化することで、本開示の固形化粧料とすることができる。
【実施例0102】
以下、本開示の固形化粧料を実施例により更に具体的に説明するが、本開示の固形化粧料は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0103】
[実施例1~19、比較例1~3]
表1、表2、表3、又は表4の油相欄に記載の各成分を、80℃で加熱混合し、油相組成物を調製した。
表1、表2、表3、又は表4の水相欄に記載の各成分を混合して、水相組成物を調製し、得られた水相組成物を80℃に加熱した。
【0104】
油相組成物に水相組成物を混合し、80℃に温度を維持しながら、ホモミキサーで、回転数:3000rpm(revolutions per minutes、以下同じ)の条件下、10分間、せん断力の付与及び撹拌を行い、乳化物を得た。得られた乳化物を70℃±10℃で容器に充填した。充填物の上部に凹凸が生じる場合は、加熱装置(ドライアー等)で溶解させ平坦化するプロセスを入れた。容器としては、リップスティック容器(金属製の繰り出し容器)を用いた。
【0105】
以上により、リップスティック容器に収容されたスティック状の固形化粧料を得た。
【0106】
実施例1~19及び比較例1~3に用いた各成分の種類及びその含有率(質量%)は、表1、表2、表3又は表4の組成の欄に示す。
表1、表2、表3又は表4中、組成の欄における「-」はその成分を含有しないことを示す。
表1、表2、表3又は表4中、「油剤」の項に表示される成分は、炭化水素ワックス及びロウ以外のその他の油剤である。
【0107】
[評価]
得られた固形化粧料を用いて、色変化、塗布時の形状安定性、及び、みずみずしさの各評価を行った。評価の詳細は、以下のとおりである。結果は、表1、表2、表3及び表4に示す。
【0108】
(色変化)
得られた固形化粧料を、リップスティック容器の蓋をした状態で、50℃で2週間経時させた。
【0109】
経時後の固形化粧料を容器から繰り出して、5名の専門評価者に色変化の有無を目視で観察してもらい、以下の評価基準に示す4段階の点数により、経時前の固形化粧料からの色変化を評価してもらった。そして、5名の評価点の合計を平均し、小数点第1位を四捨五入した数値を、色変化の評価結果とした。
なお、評価に供した固形化粧料の調製直後の色味は、いずれも均一であり色ムラは無いものであった。
本評価において色変化は、スティック状の固形化粧料の外気に触れやすい先端部側(即ち、容器の開口部側)の色味が非先端部側の色味よりも濃い状態の色ムラとして視認された。
評価ランクが「4」及び「3」であれば実用上許容されるレベルであり、「4」がより好ましい。
【0110】
-評価結果-
4:色変化が分からない。
3:若干の色変化は分かるが、気にならない。
2:色変化が分かる。
1:色変化が明らかに分かる。
【0111】
(塗布時の形状安定性)
5名の専門評価者に、リップスティック容器から2mm程度繰り出した固形化粧料を、評価者の前腕に、皮膚が僅かにたわむ程度に、直接軽く押し当てながら塗布してもらい、塗布する際の固形化粧料の形状安定性について、以下の評価基準に示す4段階の点数により評価してもらった。そして、5名の評価点の合計を平均し、小数点第1位を四捨五入した数値を、塗布時の形状安定性の評価結果とした。
評価ランクが「4」及び「3」であれば実用上許容されるレベルであり、「4」がより好ましい。
【0112】
-評価基準-
4:塗布時に崩れることなく、良好に塗布ができた。
3:塗布時に押圧により僅かに崩れが生じて容器の外側に付着が生じたが、塗布は問題無くできた。
2:塗布時の押圧により崩れた固形化粧料が塗布面に移行し、所望とする塗布ができなかった。
1:固形状に成形不可、又は、塗布時の押圧により大きく崩れが生じた。
【0113】
(みずみずしさ)
5名の専門評価者に、リップスティック容器から繰り出した固形化粧料を顔に塗布してもらい、みずみずしさを、以下の評価基準に示す4段階の点数により評価してもらった。そして、5名の評価点の合計を平均し、小数点第1位を四捨五入した数値を、みずみずしさの評価結果とした。評価ランクが「4」及び「3」であれば実用上許容されるレベルであり、「4」がより好ましい。
【0114】
-評価基準-
4:みずみずしさを感じた。
3:少しみずみずしさを感じた。
2:みずみずしさが、あまり感じられなかった。
1:みずみずしさが、感じられなかった。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
表1、表2及び表3に示されるように、実施例1~19の固形化粧料は、色変化の抑制、塗布時の形状安定性、及び、みずみずしさに優れていた。
【0120】
比較例1は、水の含有率が、固形化粧料の全質量に対して、25質量%未満であり、みずみずしさが、実用上許容できないレベルであった。
比較例2は、水の含有率が、固形化粧料の全質量に対して、40質量%を超えており、色変化及び塗布時の形状安定性が、実用上許容できないレベルであった。
比較例3は、炭化水素ワックスを含有しておらず、塗布時の形状安定性が実用上許容できないレベルであった。
【0121】
[実施例20~24]
表5に記載の各成分について、実施例1~19、比較例1~3と同様の製法にて、リップスティック容器に収容されたスティック状の固形化粧料を得た。
実施例20~24に用いた各成分の種類及びその含有率(質量%)は、表5の組成の欄に示す。
表5中、組成の欄における「-」はその成分を含有しないことを示す。
【0122】
得られた固形化粧料について、実施例1~19、比較例1~3と同様の評価を行った。
評価詳細は上述のとおりである。結果は、表5に示す。
【0123】
【0124】
表5に示されるように、実施例20~24の固形化粧料は、色変化の抑制、塗布時の形状安定性、及び、みずみずしさに非常に優れていた。
【0125】
表1、表2、表3、表4及び表5中、「%」は「質量%」を示す。
表1、表2、表3、表4及び表5に記載の各成分を、以下に纏めて示す。
【0126】
<水相組成物>
~水~
・水:精製水
~その他の成分~
・グリセリン〔花王(株)製〕
・BG:1,3-ブチレングリコール〔(株)ダイセル製〕
・ペンチレングリコール〔シムライズ社製〕
・ナイアシンアミド〔商品名:ナイアシンアミドPC、DSM社製〕
・塩化ナトリウム
・エチルヘキシルグリセリン〔(株)成和化成製〕
・フェノキシエタノール〔富士フイルム和光純薬(株)製〕
【0127】
<油相組成物>
・アスタキサンチン〔商品名:ASTAX-ST、(株)マリン大王製〕
【0128】
~炭化水素ワックス~
・セレシン
・パラフィンワックス
・マイクロクリスタリン
・ポリエチレンワックス
【0129】
~ロウ~
・キャンデリラロウ
・カルナウバロウ
・ミツロウ
【0130】
~ビタミンE~
・トコフェロール
【0131】
~金属酸化物~
・酸化チタン
・酸化亜鉛
【0132】
~油剤~
・ジメチコン
・メチルフェニルポリシロキサン
・デカメチルテトラシロキサン
・パルミチン酸エチルヘキシル
【0133】
~紫外線吸収剤~
・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル〔UVA吸収剤、商品名:ユビナールA Plus GranuLar、BASFジャパン(株)〕
・パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル〔UVB吸収剤〕
【0134】
~シリコーン系界面活性剤~
・PEG-9 ポリジメチルシロキシエチルジメチコン
【0135】
~その他の成分~
・2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール
・トリメトキシシロキシケイ酸
・架橋型シリコーン・網状シリコーンブロック共重合体
・香料(高砂香料(株))
【0136】
[実施例25:油中水型スティック状美容液]
下記組成を有する油中水型スティック状美容液を常法により調製した。
〔組成〕 〔含有量(質量%)〕
・ナイアシンアミド 5.0
・水 35.0
・ジメチコン 8.5
・ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 8.0
・メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 7.0
・ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 6.0
・1,3-ブチレングリコール 5.0
・セレシン 5.0
・グリセリン 3.7
・イソノナン酸イソノニル 3.5
・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2.9
・PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチジコン 2.5
・1,2-ペンチレングリコール 2.0
・(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)
クロスポリマー 1.5
・キャンデリラロウ 1.0
・トリメチルシロキシケイ酸 0.9
・マイカ 0.7
・塩化ナトリウム 0.5
・高融点マイクロクリスタリンワックス 0.4
・酸化チタン 0.4
・雲母チタン 0.3
・エタノール 0.2
・フェノキシエタノール 0.2
・エチルヘキシルグリセリン 0.1
・マイクロクリスタリンワックス 0.1
・トコフェロール 0.05
・香料 適量
・水添レシチン 0.02
・塩酸ピリドキシン 0.005
・メチルパラベン 0.005
・アスタキサンチン 0.004
・コレステロール 0.003
・ポリオキシエチレンフィトステロール 0.002
・テトラヘキシルデカン酸アスコルビル 0.001
【0137】
上記処方中、セレシンは、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、高融点マイクロクリスタリンワックスの3成分からなるセレシンを使用した。
【0138】
実施例25に示す油中水型スティック状美容液は、色変化が抑制され、塗布時の形状安定性に優れ、かつ、みずみずしさに優れていた。